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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163760
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】改良地盤品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20221020BHJP
   E02D 1/04 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068793
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040AB06
2D040GA02
2D043AA01
2D043AB01
2D043AC03
2D043BA08
2D043BA10
2D043BB02
(57)【要約】
【課題】原位置において簡易に複数の測定データを採取して改良地盤の評価を行うことを可能とした改良地盤品質評価方法を提案する。
【解決手段】セメント改良地盤1に測定孔2を形成する削孔工程と、測定孔2の孔壁21に対して針貫入試験を行う貫入試験工程と、針貫入試験のデータに基づいてセメント改良地盤1の強度を推定する強度推定工程とを備えている。貫入試験工程では、測定孔2に進入させた針貫入試験測定装置4を測定孔2内において縦軸を中心に回転させるとともに上下動させることで、測定孔2に対して周方向に複数個所の測定を深度方向に複数段行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント改良地盤に測定孔を形成する削孔工程と、
前記測定孔の孔壁に対して針貫入試験を行う貫入試験工程と、
前記針貫入試験のデータに基づいて前記セメント改良地盤の強度を推定する強度推定工程と、を備える改良地盤品質評価方法であって、
前記貫入試験工程では、前記測定孔に進入させた針貫入試験測定装置を前記測定孔内において縦軸を中心に回転させるとともに上下動させることで、前記測定孔に対して周方向に複数個所の測定を深度方向に複数段行うことを特徴とする、改良地盤品質評価方法。
【請求項2】
同一の前記測定孔に対して、前記貫入試験工程を所定材齢毎に複数回実施することを特徴とする、請求項1に記載の改良地盤品質評価方法。
【請求項3】
前記貫入試験工程は、規定の強度評価材齢に至る前段階の養生期間中に行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の改良地盤品質評価方法。
【請求項4】
前記貫入試験工程では、前記針貫入試験測定装置に搭載した方位センサに基づき、前記針貫入試験測定装置を前記測定孔内において縦軸を中心に回転させることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の改良地盤品質評価方法。
【請求項5】
前記セメント改良地盤から採取した供試体に対して試験を行う比較試験工程をさらに備えており、
前記削孔工程では、前記セメント改良地盤にパイプを挿入する作業と、
前記パイプを引き抜くことにより測定孔を形成する作業と、を行い、
前記比較試験工程では、前記パイプを引き抜いた際に当該パイプ内に残存する材料を前記供試体として採取する作業と、
前記供試体に対して試験を実施する作業と、を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の改良地盤品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤に固化材等を混合してなる改良地盤について、所望の品質を確保していることを確認するために品質評価試験を行う場合がある。改良地盤に関する品質評価試験の方法としては、施工時に採取した試料を室内で養生した後、所定の材齢で強度試験を行う方法や、施工後に原位置から試料を採取して強度試験を行う方法等がある。なお、供試体等の一軸圧縮強度を測定する方法として、非特許文献1には、地盤等の強度を簡易に確認できる針貫入試験が開示されている。針貫入試験は、地盤等に貫入針を貫入し、貫入長さLと針貫入時の荷重Pを測定し、針貫入長さに対する荷重Pの比率である針貫入勾配Np(=P/L)を求め、この針貫入勾配から一軸圧縮強さを推定するものである。また、強度試験は、規定の強度評価材齢に至るまでの材齢(例えば、3日、7日、14日)における強度を、所定の深さ毎に実施する必要がある。
室内で養生した試料に対して強度試験を行う方法は、養生条件の違いから原位置の改良体とは品質に差が生じることを考慮する必要がある。また、原位置で供試体を採取する場合には、所定の材齢毎に所定の深さ位置から供試体を採取する必要があるため、供試体の採取に手間がかかるとともに、供試体の運搬や取り扱いに手間がかかる。
そのため、本出願人は、特許文献1において、改良地盤に対して原位置において強度試験を行う方法として、改良地盤中に形成した測定孔に試験装置を進入させて、試験装置から孔壁に向けてロッドを貫入させた際の貫入抵抗や貫入量により改良地盤の強度を測定する方法を開示している。特許文献1の試験装置は、測定孔を上下動することで、異なる深度における測定を可能としている。
また、本出願人は、1つの供試体に対して25箇所において針貫入抵抗を測定する方法の有効性を示している(特許文献2)。
なお、改良地盤の品質を評価するためには、同一材齢、同一深度における複数の測定データを統計的に評価するのが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】地盤工学会基準、基準番号:JGS3431-2012、規格・基準名:針貫入試験方法
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-159237号公報
【特許文献2】特開2020-020181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、原位置において簡易に複数の測定データを採取して改良地盤の評価を行うことを可能とした改良地盤品質評価方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の改良地盤品質評価方法は、セメント改良地盤に測定孔を形成する削孔工程と、前記測定孔の孔壁に対して針貫入試験を行う貫入試験工程と、前記針貫入試験のデータに基づいて前記セメント改良地盤の強度を推定する強度推定工程と、を備える改良地盤品質評価方法である。前記貫入試験工程では、前記測定孔に進入させた針貫入試験測定装置を前記測定孔内において縦軸を中心に回転させるとともに上下動させることで、前記測定孔に対して周方向に複数個所の測定を深度方向に複数段行う。
かかる改良地盤品質評価方法によれば、測定孔内において針貫入試験測定装置を回転させることで、同一の深度において複数点の貫入試験を実施できる。また、針貫入試験測定装置は、測定孔内において上下動可能なため、異なる深度における貫入試験を実施することも可能である。そのため、同一の測定孔を利用して、多数の貫入試験を実施することが可能である。
【0007】
なお、同一の前記測定孔を利用して、前記貫入試験工程を所定材齢毎に複数回実施すれば、所定の材齢毎に測定孔を形成する必要がない。材齢毎に貫入試験工程を行う場合には、他の材齢において測定した位置とは測定孔の周方向に異なる位置において測定を行うのが望ましい。
この方法によれば、規定の強度評価材齢に至る前段階(養生期間中)に強度の材齢変化とばらつきを検証することが可能であるとともに、規定の強度材齢に達した段階でも原位置試験で強度を把握できる。そのため、養生期間の試験結果と養生後の試験結果とを併せた豊富な数の試験データにて品質評価を行うことが可能となる。
また、方位センサに基づいて針貫入試験測定装置を回転させれば、所定の角度と間隔で針貫入の位置を調整することができる。
また、前記セメント改良地盤から採取した供試体に対して試験を行う比較試験工程をさらに備えていれば、原位置における測定結果と、供試体を使用した測定結果とを比較することで、針貫入試験の検証および精度向上に向けた検討に活用できる。具体的には、前記削孔工程において前記セメント改良地盤にパイプを挿入するステップと前記パイプを引き抜くことにより測定孔を形成するステップとを行い、前記比較試験工程において前記パイプを引き抜いた際に当該パイプ内に残存する材料を前記供試体として採取するステップと 前記供試体に対して試験を実施するステップとを行えばよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の改良地盤品質評価方法によれば、原位置において簡易に複数の測定データを採取して改良地盤の評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る改良地盤品質評価方法のフローチャートである。
図2】削孔工程の例を示す概念図であって、(a)はパイプ挿入作業、(b)はパイプ引抜作業である。
図3】針貫入試験装置の概要を示す断面図である。
図4】貫入試験工程の例を示す概念図であって、(a)は斜視図、(b)は挿入孔の展開図である。
図5】強度推定曲線の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、セメント改良地盤に対して、原位置にて材齢変化と強度特性を検証する場合について説明する。図1に本実施形態の改良地盤品質評価方法を示す。本実施形態の改良地盤品質評価方法は、図1に示すように、削孔工程S1、貫入試験工程S2、強度推定工程S3、比較試験工程S4および強度比較工程S5を備えている。
削孔工程S1は、セメント改良地盤1に測定孔2を形成する工程である。本実施形態では、セメント改良地盤1にパイプ3を挿入するパイプ挿入作業S11と、パイプ3を引き抜くことにより測定孔2を形成するパイプ引抜作業S12とを行う。図2は削孔工程S1の概念図である。
パイプ挿入作業S11では、図2(a)に示すように、地盤改良後のセメント改良土11が硬化する前に、薄肉パイプ(パイプ3)をセメント改良地盤1に挿入する(押し込む)。このとき、パイプ3内には、未固結のセメント改良土11が入り込む。本実施形態では、複数本のパイプ3を間隔をあけてセメント改良地盤1に挿入する。
パイプ引抜作業S12では、セメント改良土11が自立可能な強度(パイプ3を撤去しても測定孔2の孔壁21が崩落しない程度の強度)に至った段階で、図2(b)に示すように、パイプ3を引き抜く。このとき、パイプ3内のセメント改良土11がパイプ3とともに引き上げられる。パイプ3を引き抜くことで、セメント改良地盤1にパイプ3の外径と同等の直径の測定孔2が形成される。
【0011】
貫入試験工程S2は、測定孔2の孔壁21に対して針貫入試験を行う工程である。図3に貫入試験工程S2の施工状況を示す。本実施形態では、測定孔2に進入させた針貫入試験測定装置4を、測定孔2内において縦軸(すなわち測定孔2の中心軸)を中心に回転させるとともに上下動させることで、測定孔2に対して周方向に複数個所の測定を深度方向に複数段行う。本実施形態では、3本の測定孔2を形成し、3日,7日,14日材齢にて、それぞれ水平方向に5点、深さ方向に5段(1本の測定孔2につき25点)で針貫入試験を行うものとする。
【0012】
本実施形態の針貫入試験測定装置4は、図3に示すように、筐体41と、測定孔2の孔壁21に向けて進退可能となるように筐体41に設けられた貫入針42と、測定孔2の周方向に回動可能となるように筐体41に支持された回転ホイール43と、筐体41に対して進退可能あるいは回動可能な反力アーム44と、筐体41を吊持する吊り下げ手段45と、筐体41に設けられた方位センサ46と、動力源47と、ビデオサーバ48とカメラ49とを備えている。
【0013】
筐体41は、上端及び下端が遮蔽された中空の筒状部材からなる。筐体41には、貫入針42、反力アーム44、方位センサ46、動力源47、ビデオサーバ48およびカメラ49が収納されている。筐体41の中心部には、各装置を固定するための棒状または壁状の固定部41bが形成されている。また、筐体41には、内外に貫通する開口41aが貫入針42と反力アーム44の位置に対応して2箇所に形成されている。
貫入針42は、開口41aに面して筐体41の下部に設けられている。貫入針42は、固定部41bに固定された基部42aに対して進退可能である。貫入針42は、図示せぬ針貫入用モーターにより、筐体41の中心軸に対して直交する方向(すなわち測定孔2の径方向)に進出することで、開口41aから孔壁21に向かって突出する。本実施形態では、貫入針42の近傍にカメラ(CCDカメラ)49が設けられていて、貫入針42の進退方向を撮影可能に構成されている。カメラ49により撮影された画像は、ビデオサーバ48を介して測定孔2の外の設けられた端末(パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等)に送信される。針貫入用モーター、カメラ49は動力源47から供給された電力により作動する。
【0014】
筐体41の上部には、複数の回転ホイール43が設けられている。回転ホイール43は、筐体41の外面よりも外側に張り出している、あるいは、筐体41に対して側方に進退可能に設けられていて、孔壁21に当接可能である。回転ホイール43は、ホイール用モーター(図示せず)の回転力により縦軸を中心に水平に回転する。ホイール用モーターは、動力源47から供給された動力(電力)により回転する。回転ホイール43が、測定孔2の孔壁21面を走行することで筐体41が縦軸を中心に回転する。
反力アーム44は、貫入針42の上方に設けられている。反力アーム44は、固定部41bに固定されたアーム基部44aに対して回動可能に取り付けられている。反力アーム44は、アーム用モーター(図示せず)の動力により回動することで、開口41aから筐体41の外側に突出して、孔壁21に当接する。筐体41は、反力アーム44を孔壁21に押し当てることで測定孔2に固定される。アーム用モーターは、動力源47から供給された動力(電力)により駆動する)
【0015】
吊り下げ手段45は、測定孔2の孔口に設けられていて、筐体41を吊持している。吊り下げ手段45は、例えば、筐体41に取り付けられたワイヤー45aと、ワイヤー45aが巻きつけられるリール45bと、リール45bに回転力を付与するモーター45cと、リール45bおよびモーター45cを支持する架台4dとにより構成されている。モーター45cの動力によりリール45bを回転させることで、リール45bに巻き付けられたワイヤー45aの巻き取りおよび送り出しを行い、これに伴って筐体41が測定孔2内において上下動する。
方位センサ46は、筐体41(貫入針42)の向きを測定する。本実施形態では、方位センサ46の測定結果に基づいて、回転ホイール43を制御することで、筐体41を測定孔2内において縦軸を中心に回転させる。
【0016】
貫入試験工程S2では、筐体41を測定孔2に挿入し、吊り下げ手段45を利用して測定孔2内の所定の深さまで下降させる。筐体41が所定の深さに到達したら、回転ホイール43を利用して、貫入針42の位置が方位0度になるように、筐体41の向きを調整する。筐体41の方位調整が完了したら、反力アーム44を孔壁21に押し当てることで、筐体41を測定孔2内に固定する。反力アーム44を孔壁21に押し当てると、反力アーム44とは反対側において筐体41の側面が孔壁21に当接する。筐体41を固定したら、貫入針42を孔壁21に向けて突出させて、針貫入試験(貫入力、貫入量等の測定)を行う。測定後、反力アーム44による固定を解除するとともに、同一深さにおいて回転ホイール43を操作して、筐体41を所定量(本実施形態では72°)回転させる。筐体41を回転させたら、反力アーム44を利用して筐体を固定し、針貫入試験を実施する。同様に筐体41の回転および針貫入試験を複数回実施する。同一深さにおいて所定回数(本実施形態では5回)の針貫入試験を実施したら、吊り下げ手段45を操作して、筐体41を所定深度(本実施形態では20mm)下降させる。筐体41を下降させたら、針貫入試験および筐体41の回転を複数回実施する。同様の作業を必要深度まで繰り返す。
測定データは、測定孔2の外の設けられた端末(パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等)に送信される。
【0017】
貫入試験工程S2は、同一の測定孔2に対して、所定材齢毎に複数回実施する。本実施形態では、規定の強度評価材齢に至る前段階のセメント改良地盤1の養生期間中に針貫入試験を開始するものとし、3日材齢、7日材齢、14日材齢において貫入試験工程S2を実施する。図4(b)は、図4(a)に示す測定孔2内の展開図である。本実施形態では、測定孔の直径約115mmにおいて、3日、7日、14日材齢で25点の針貫入抵抗Npを測定した場合である。図4(b)に示すように、本実施形態では、各材齢において、同一深さにおいて、異なる方位に対して針貫入試験を行う。すなわち、3日材齢において、方位0°で針貫入試験を開始した場合には、7日材齢では方位24°から針貫入試験を開始し、14日材齢では方位48°から針貫入試験を開始することで、材齢毎の針貫入位置が重ならないようにする。本実施形態の測定孔直径約115mmでは、図4(b)の展開図の横方向間隔24mm、深度間隔20mmとなる。なお、貫入針42の測定位置をカメラ49で撮影することで、針貫入試験の位置が、以前(前の材齢)の測定位置と重ならないことを確認するのが望ましい。なお、カメラ49とともに、カメラ49の撮影方向に光を照射する照明手段を有しているのが望ましい。
【0018】
強度推定工程S3は、針貫入試験のデータに基づいてセメント改良地盤の強度を推定する工程である。
針貫入試験測定装置4を用いて針貫入抵抗Npを取得したら、複数の針貫入抵抗Npの平均値および変動係数と一軸圧縮強さquを関連付けて、強度換算式(式1)を用いて換算一軸圧縮強さquを算出する。なお、式1は、式2により求められる。式2は、一軸圧縮強さquを推定する相関式(式3)において、針貫入抵抗Npのばらつきを考慮して、針貫入抵抗Npの変動係数NCOVの影響を、係数a,b,cを介して考慮する補正推定式である(特許文献2参照)。すなわち、式1における0.896、2.560、-2.071、1.863は、変動する係数である。
そして、材齢毎の換算一軸圧縮強さquに基づいて、図5に示すように、強度推定曲線を作成し、規定の強度評価材齢日に至る前に改良地盤の強度を推定する。
log(qu)=0.896×log(NpAVE)+2.560-2.071×(NpCOV)1.863 ・・・式1
ここで、qu :一軸圧縮強さ
NpAVE :針貫入抵抗の平均値
NpCOV :針貫入抵抗の変動係数
log(qu)=αlog(Np)+a+b×(NCOV)c ・・・式2
log(qu)=αlog(Np)+β ・・・式3
ここで、α、β:換算係数
【0019】
比較試験工程S4は、セメント改良地盤1から採取した供試体に対して試験を行う工程である。比較試験工程S4では、パイプ3を引き抜いた際に当該パイプ3内に残存する材料を供試体として採取する供試体成形作業S41と、供試体に対して強度試験を実施する供試体試験作業S42とを行う。
供試体成形作業S41は、パイプ3内に残存するセメント改良土11(残存改良土12)が硬化した後に行う。供試体成形作業S41では、残存改良土12を成形し、所定形状の供試体を作成する。残存改良土12は、柱状を呈しているため、本実施形態では、残存改良土12を所定の長さ毎に切断して、所定の深度毎に複数の供試体を成形する。
供試体試験作業S42では、供試体に対して強度試験を行う。本実施形態では、各供試体に対して一軸圧縮試験を実施する。各供試体に対して一軸圧縮試験を実施することで、深さ毎の一軸圧縮強さを測定する。
【0020】
強度比較工程S5では、強度推定工程S3において推定した針貫入試験による一軸圧縮強さと、比較試験工程S4において測定した一軸圧縮強さとを比較して、比較結果や精度の検証を行う。
【0021】
本実施形態の改良地盤品質評価方法によれば、測定孔2内において針貫入試験測定装置4を回転させることで、同一の深度において複数点の貫入試験を実施できる。また、方位センサ46で確認しつつ、針貫入試験測定装置4を回転させることで所定の角度と間隔で針貫入の位置を調整できる。そのため、異なる材齢の針貫入試験を、同一の測定孔2を利用して実施することができ、多数の供試体を利用する必要があった従来の測定方法に比べて作業性に優れている。また、同一の測定孔2を利用することで、より正確に材齢変化や強度のばらつきを検証できる。また、所定の材齢毎に測定孔2を形成する必要がないことから、作業性に優れている。また、針貫入試験測定装置4を回転させることで、他の材齢において測定した位置とは測定孔2の周方向に異なる位置において測定を行うことができる。また、規定の強度材齢に達した段階でも原位置試験で強度を把握し、規定の強度材齢に達する前の試験データと併せた品質評価を行うことができる。
なお、従来の品質管理方法に基づいて、原位置においてコアボーリングを実施して採取したサンプルに対して強度試験を行う場合、多数のボーリング孔を現地に形成して試料を採取する必要がある。そのため、多数の試料採取に要する手間がかかるとともに、現地に形成された多数のボーリング孔に対する補修工が必要となる。一方、本実施形態の改良地盤品質管理評価方法によれば、必要最小限の測定孔2のみで済むため、作業性に優れている。
【0022】
また、針貫入試験測定装置4は、測定孔2内において上下動可能なため、異なる深度において貫入試験を実施することも可能である。そのため、同一の測定孔2を利用して、多数の貫入試験を実施することが可能である。
また、原位置で測定を行うため、セメント改良地盤1の強さを直接的に把握できる。
また、規定の強度評価材齢に至る前段階(養生期間中)に強度の材齢変化とばらつきを検証することが可能であるとともに、規定の強度材齢に達した段階でも原位置試験で強度を把握できる。そのため、養生期間の試験結果と養生後の試験結果とを併せた豊富な数の試験データにて品質評価を行うことが可能となる。
また、比較試験工程S4において、セメント改良地盤1から採取した供試体に対して試験を行い、原位置における針貫入試験の測定結果と比較することで、針貫入試験の検証および精度向上に向けた検討に活用できる。供試体は、削孔工程S1においてセメント改良地盤1に挿入したパイプ3内に残存するセメント改良土11を使用するため、別途試料を採取する手間を省略できる。また、試料はパイプ3によって覆われているため、養生環境の変化の影響を受けにくい。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、比較試験工程S4として、原地盤において採取した供試体に対して一軸圧縮試験を行うものとしたが、供試体に対して実施する試験は一軸圧縮試験に限定されるものではない。例えば、携行型の装置や机上型の装置を利用した針貫入試験を供試体に対して実施してもよい。
また、比較試験工程S4および強度比較工程S5は必要に応じて実施すればよい。
前記実施形態では、パイプ3を利用して測定孔2を形成するものとしたが、測定孔2を形成方法は限定されるものではなく、例えば、アースドリル等を利用して削孔してもよい。
【0024】
前記実施形態では、硬化前のセメント改良地盤1に対してパイプ3を挿入して測定孔2を形成し、3日,7日,14日材齢のセメント改良地盤1に対して試験を行うものとしたが、セメント改良土11が硬化してから原位置での針貫入試験を実施してもよい。すなわち、硬化したセメント改良地盤1に対して、コアボーリングにより測定孔2を形成し、測定孔2に針貫入試験測定装置4を挿入して針貫入試験を実施してもよい。このとき、コアボーリングにより採取した試料を利用して針貫入試験や一軸圧縮試験を行うのが望ましい。こうすることで、硬化前のセメント改良地盤1に対して実施した試験結果と比較することが可能になるので、試験結果の検証および精度向上に向けた検討に活用できる。
針貫入試験測定装置4の構成は限定されるものではない。例えば、貫入針42は、ガイドレールに沿って進退するものでもよい。また、筐体41は、回転ホイール43により縦軸を中心に回転するものとしたが、回転ホイール43に代えて、無端状の帯状部材を用いてもよい。この場合には、帯状部材を孔壁21に当接させた状態で回転させることにより、筐体41を回転させる。また、回転ホイール43の数は限定されるものではなく、例えば1つであってもよいし、複数であってもよい。また、反力アーム44は必ずしも回動可能である必要はなく、例えば、シリンダー状部材からなり、伸縮可能に構成されていてもよい。吊り下げ手段45の構成は限定されるものではなく、適宜構成すればよい。
針貫入試験測定装置4は、自動制御してもよいし、操作者が針貫入試験測定装置4から送信されたデータやカメラ49による撮影画像を確認しながら操作してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 セメント改良地盤
11 セメント改良土
2 測定孔
21 孔壁
3 パイプ
4 針貫入試験測定装置
41 筐体
42 貫入針
43 回転ホイール
44 反力アーム
45 吊り下げ手段
46 方位センサ
S1 削孔工程
S11 パイプ挿入作業
S12 パイプ引抜作業
S2 貫入試験工程
S3 強度指定工程
S4 比較試験工程
S41 供試体成形作業
S42 供試体試験作業
S5 強度比較工程
図1
図2
図3
図4
図5