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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163775
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】騒音測定装置、及び騒音測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20221020BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20221020BHJP
【FI】
G01H3/00 A
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068809
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中原 葵
(72)【発明者】
【氏名】藤 耕一郎
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA15
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】騒音レベルを測定する騒音測定装置において、騒音レベルの測定に不要な低い周波数の音を削減するハイパスフィルタを不要にする。
【解決手段】騒音測定装置は、騒音レベルを測定する騒音測定装置であって、前記騒音レベルの一の測定結果を測定する測定期間より短い複数のサンプリング期間中に騒音のレベルをサンプリングしたサンプリングデータを取得するデータ取得部と、前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリング期間中の中心電圧値を算出する中心電圧算出部と、前記サンプリングデータが示す電圧値と前記中心電圧値との差の二乗平均平方根から、前記騒音レベルを算出する騒音レベル算出部と、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音レベルを測定する騒音測定装置であって、
前記騒音レベルの一の測定結果を測定する測定期間より短い複数のサンプリング期間中に騒音のレベルをサンプリングしたサンプリングデータを取得するデータ取得部と、
前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリング期間中の中心電圧値を算出する中心電圧算出部と、
前記サンプリングデータが示す電圧値と前記中心電圧値との差の二乗平均平方根から、前記騒音レベルを算出する騒音レベル算出部と、
を有する、騒音測定装置。
【請求項2】
騒音レベル算出部は、前記複数のサンプリング期間ごとの前記騒音レベルを算出し、
前記騒音測定装置は、前記複数のサンプリング期間ごとの前記騒音レベルの平均値を出力する出力部を有する、請求項1に記載の騒音測定装置。
【請求項3】
前記中心電圧算出部は、前記サンプリングデータを移動平均処理して、前記中心電圧値を算出する、請求項1に記載の騒音測定装置。
【請求項4】
前記騒音測定装置は、周波数Fより低い周波数の音を遮断する場合、前記サンプリング期間を1/Fとする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の騒音測定装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、前記サンプリング期間の間に所定の測定間隔を空けて前記騒音レベルをサンプリングし、前記測定間隔をランダムに変更する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の騒音測定装置。
【請求項6】
騒音レベルを測定する騒音測定方法であって、
データ取得部が、前記騒音レベルの一の測定結果を測定する測定期間より短い複数のサンプリング期間中に騒音のレベルをサンプリングしたサンプリングデータを取得し、
中心電圧算出部が、前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリング期間中の中心電圧値を算出し、
騒音レベル算出部が、前記サンプリングデータと前記中心電圧値との差の二乗平均平方根から、前記騒音レベルを算出する、
騒音測定方法。
【請求項7】
騒音レベルを測定する騒音測定装置であって、
前記騒音レベルを測定するサンプリング期間中に騒音のレベルをサンプリングしたサンプリングデータを取得するデータ取得部と、
前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリング期間中の中心電圧値を算出する中心電圧算出部と、
前記サンプリングデータが示す電圧値と前記中心電圧値との差の二乗平均平方根から、前記騒音レベルを算出する騒音レベル算出部と、
を有し、
前記騒音測定装置は、周波数Fより低い周波数の音を遮断する場合、前記サンプリング期間を1/Fとする、騒音測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音測定装置、及び騒音測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音レベルを測定する騒音測定装置が知られている。
【0003】
また、使用者の手振れの振動や一時的な環境騒音の影響を低減するために、基準周波数より低いカットオフ周波数で低周波成分を減衰させるハイパスフィルタを備えた音響校正器が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-20277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
騒音測定装置は、測定対象の周波数ではない低い周波数の音を測定に反映させないことが望ましい。この場合、十分に長い期間でサンプリングしたサンプリングデータを信号処理して不要な周波数領域のデータをカットすることが考えられる。しかし、この方法では大量のデータとデータ処理能力が必要となるため、消費電力が大きいという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に開示された技術では、基準周波数への影響が少ない、固定のカットオフ周波数のハイパスフィルタを用いて不要な低い周波数の音を削減することにより、比較的小型の音響校正器を実現している。しかし、測定装置では、測定対象となる騒音によって周波数分布が異なるため、固定のカットオフ周波数のハイパスフィルタを用いることは望ましくない。
【0007】
また、短い期間でサンプリングしたサンプリングデータを信号処理する場合、状況にそぐわない、例えば常時静音状態の中での一瞬の音の値を代表値としてしまう虞がある。
【0008】
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされてものであって、騒音レベルを測定する騒音測定装置において、騒音レベルの測定に不要な低い周波数の音を削減するハイパスフィルタを不要にする。また、状況にそぐわない音の影響を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る騒音測定装置は、騒音レベルを測定する騒音測定装置であって、前記騒音レベルの一の測定結果を測定する測定期間より短い複数のサンプリング期間中に騒音のレベルをサンプリングしたサンプリングデータを取得するデータ取得部と、前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリング期間中の中心電圧値を算出する中心電圧算出部と、前記サンプリングデータが示す電圧値と前記中心電圧値との差の二乗平均平方根から、前記騒音レベルを算出する騒音レベル算出部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、騒音レベルを測定する騒音測定装置において、騒音レベルの測定に不要な低い周波数の音を削減するハイパスフィルタが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る騒音測定装置の構成を示す図である。
図2】一実施形態に係る周波数300Hzの音声の音圧レベル測定を示す図である。
図3】一実施形態に係る周波数40Hzの音声の音圧レベル測定を示す図(1)である。
図4】一実施形態に係る周波数40Hzの音声の音圧レベル測定を示す図(2)である。
図5】一実施形態に係るサンプリングデータの取得を示す図(1)である。
図6】一実施形態に係るサンプリングデータの取得を示す図(2)である。
図7】一実施形態に係るサンプリング期間の長さに応じた周波数特性を示す図である。
図8】一実施形態に係る騒音測定装置の機能構成を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る騒音測定装置の処理を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係る騒音測定装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
<騒音測定装置の構成>
図1は、一実施形態に係る騒音測定装置100の構成を示す図である。騒音測定装置100は、騒音レベルを測定し、測定結果をBluetooth(登録商標) Low Energy(以下、BLEと呼ぶ)等の無線通信で情報端末、ゲートウェイ等の外部装置に送信する装置である。
【0014】
騒音測定装置100は、バッテリ101、DC(Direct Current)/DCコンバータ102、LDO(Low Drop Out)103、通信ユニット110、及びマイクユニット120を有する。
【0015】
バッテリ101は、騒音測定装置100に電力を供給する電池である。騒音測定装置100は設置場所で電源を確保できるとは限らないため、コイン電池等の小型で低容量の電池で動作することが望ましい。
【0016】
DC/DCコンバータ102は、バッテリ101の出力電圧を昇圧又は降圧する回路であり、通信ユニット110に所定の電源電圧を供給する。LDO103は、低い入出力間の電位差でも動作する定電圧回路であり、通信ユニット110、マイクユニット120等に所定の電圧の電力を供給する。なお、バッテリ101、DC/DCコンバータ102、及びLDO103は、騒音測定装置100が備える電源回路の一例である。騒音測定装置100が備える電源回路は、通信ユニット110、及びマイクユニット120に電力を供給するものであれば、他の構成であっても良い。
【0017】
通信ユニット110は、BLE通信等の無線通信で騒音レベルの測定結果を送信する回路、モジュール、基板、IC(Integrated )等である。通信ユニット110は、例えば、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと呼ぶ)111、AD(Analog to Digital)コンバータ112、無線回路113、アンテナ114、水晶振動子116、117を含む。
【0018】
マイコン111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュROM(Read Only Memory)等を含み、所定のプログラムを実行することにより、騒音測定装置100が備える様々な機能を実現するプロセッサである。
【0019】
ADコンバータ112は、アナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路である。
【0020】
無線回路113は、BLE通信等の無線通信方式で外部装置と通信する回路であり、無線信号を送受信する高周波回路、ベースバンド信号を処理する信号処理回路、アンテナ114とのインピーダンス整合を行うマッチング回路等を含む。
【0021】
なお、マイコン111、ADコンバータ112、無線回路113は、一体化された通信用IC115で構成されても良い。
【0022】
騒音測定装置100は、Zigbee(登録商標)、Wirepas Mesh等のBLE以外の無線通信方式で外部装置と通信を行うものであっても良い。また、騒音測定装置100は、PLC(Power Line Communication)等の有線通信で通信を行うものであっても良い。ここでは、一例として、騒音測定装置100が、BLEによる無線通信で通信可能であるものとして、以下の説明を行う。
【0023】
マイクユニット120は、騒音測定装置100の周辺の音を収音するマイク(マイクロフォン)121、及びマイクから出力される音波信号を増幅するオペアンプ122を含む。
【0024】
マイクユニット120は、騒音測定装置100の周辺の騒音を取得し、音波信号(アナログ信号)に変換して通信ユニット110に出力する。通信ユニット110は、マイクユニット120から出力される音波信号をサンプリングして取得したサンプリングデータに基づいて算出した騒音レベルを、測定結果として送信先に送信する。
【0025】
一例として、騒音測定装置100は、測定結果を、BLE通信で、PC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン等の情報機器や、ゲートウェイ等の受信装置に送信する。受信装置は、インターネット、無線/有線LAN(Local Area Network)、無線WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークを介して、サーバやクラウド等に送信しても良い。これにより、測定結果を受信した受信装置、又はサーバやクラウドでデータ解析を行うことができる。
【0026】
<処理の概要>
騒音測定装置100で室内の騒音レベルを測定する場合、室内の騒音レベルは常時変化するため、ある1点での測定データだけでは正確な騒音レベルを計測するには不十分であり、複数回測定データを取得する必要がある。このとき、測定データのサンプル数は多いほどより正確な測定結果が得られるが、測定データをサンプリングするサンプリング期間が長くなるため、消費電力が増大し、コイン電池等の小型で低容量のバッテリでは、すぐに電池交換が必要になる。
【0027】
一方で、低消費電力化のためにサンプリング期間を短くしてしまうと、常時静音状態の中で発生する一瞬の騒音などの状況にそぐわない計測値を代表値としてしまう可能性があり、正確な騒音レベルを測定できない場合がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る騒音測定装置100は、騒音レベルの一の測定結果を測定する測定期間より短い複数のサンプリング期間中に、騒音レベルをサンプリングしたサンプリングデータを取得する。ここで、サンプリング期間は、サンプリングデータを取得する期間である。一例として、測定期間が1秒である場合、騒音測定装置100は、サンプリング周波数40kHz(サンプリング周期25μs)で、1024回サンプリングした、サンプリング期間25.6ミリ秒のサンプリングを、4回実行する。
【0029】
また、騒音測定装置100は、取得したサンプリングデータに基づいて、サンプリング期間ごとに中心電圧値を算出する。例えば、騒音測定装置100は、サンプリング期間ごとの代表値(例えば平均電圧値)を算出して、中心電圧値とする。なお、代表値は、平均電圧値に限られず、中央値、最頻値等の他の代表値であっても良い。また、騒音測定装置100は、サンプリングデータを移動平均処理して中心電圧値を算出しても良い。
【0030】
さらに、騒音測定装置100は、算出した中心電圧値を基準電圧として、騒音レベルを算出する。例えば、騒音測定装置100は、サンプリング期間中に取得したサンプリングデータと算出した中心電圧値との差分の二乗平均平方根(RMS: Root Mean Square)から、サンプリング期間における騒音レベルを算出する。これにより、騒音測定装置100は、ノイズ等の影響により異常な値がサンプリングされた場合、中心電圧値も変動するのでノイズ等の影響を抑制することができる。
【0031】
騒音測定装置100は、上記の中心電圧値の算出処理、及び騒音レベルの算出処理を、測定期間内の複数のサンプリング期間のそれぞれで実行し、複数のサンプリング期間において算出した各騒音レベルの平均値を、測定期間の騒音レベルとして出力する。
【0032】
<不要な周波数の低減について>
騒音測定装置100は、騒音レベルを測定することを目的としているため、人の可聴域ではない低い周波数の音は測定結果に反映させないことが望ましい。この場合、十分に長い期間でサンプリングしたサンプリングデータを信号処理して、不要な周波数領域のデータをカットすることが考えられる。しかし、この方法では大量のデータとデータ処理能力が必要となるため、消費電力が大きくなってしまうという問題がある。
【0033】
また、測定対象となる騒音によって周波数分布が異なる場合、固定のカットオフ周波数のハイパスフィルタを用いることは望ましくない。
【0034】
そこで、本実施形態に係る騒音測定装置100は、騒音レベルをサンプリングするサンプリング期間の設定により、ハイパスフィルタを用いることなく、騒音レベルの測定に不要な低い周波数の音を削減する機能を有している。本実施形態では、周波数Fより低い周波数の音を遮断する場合、サンプリング期間を1/Fとしている。例えばサンプリング期間を4ミリ秒としたとき、騒音測定装置100は250Hzより低い周波数の音を低減することができる。
【0035】
図2は、一実施形態に係る周波数300Hzの音声の音圧レベル測定を示す図である。図2は、騒音測定装置100が、周波数が300Hzの音波信号201を、サンプリング周波数40kHzで、それぞれ4ms、62.5msのサンプリング期間にサンプリングして音圧レベルを測定した例を示している。
【0036】
図2では、騒音測定装置100は、300Hzの音波信号201を4msのサンプリング期間内にサンプリング周波数40kHzでサンプリングして、サンプリングデータを取得する。
【0037】
その後、騒音測定装置100は、サンプリング期間内に取得したサンプリングデータの平均電圧値202を算出する。さらに、騒音測定装置100は、取得したサンプリングデータと算出した平均電圧値202との差分のRMSから、サンプリング期間における音圧レベルを求める。
図2に示す例では、サンプリング期間を4msとしたときの音圧レベルの測定結果は75.613dB SPLとなった。
【0038】
同様に、騒音測定装置100は、300Hzの音波信号201をサンプリング周波数40kHzで62.5msのサンプリング期間にサンプリングして、サンプリング期間に取得したサンプリングデータの平均電圧値203を算出する。その後、騒音測定装置100は、取得したサンプリングデータと算出した平均電圧値203との差分のRMSから、サンプリング期間における音圧レベルを求める。図2の例では、サンプリング期間を62.5msとしたときの音圧レベルの測定結果は75.867dB SPLとなった。
【0039】
このように、4msのサンプリング期間内に測定対象となる周波数の音波信号201の波形が1周期以上含まれている場合、サンプリング期間が十分に長い62.6msのときと同様の測定結果が得られる。
【0040】
図3は、一実施形態に係る周波数40Hzの音声の音圧レベル測定を示す図(1)である。図3は、周波数が40Hzの音波信号301を、サンプリング周波数40kHで、それぞれ4ms、62.5msのサンプリング期間にサンプリングして音圧レベルを測定した例を示している。
【0041】
図3では、騒音測定装置100は、40Hzの音波信号301を、サンプリング周波数40kHzで、4msのサンプリング期間にサンプリングしてサンプリングデータを取得して、サンプリング期間内の平均電圧値302を算出する。
【0042】
その後、騒音測定装置100は、取得したサンプリングデータと算出した平均電圧値302との差分のRMSから、サンプリング期間における音圧レベルを求める。図3の例では、サンプリング期間を4msとしたときの音圧レベルの測定結果は65.284dB SPLとなった。
【0043】
同様にして、騒音測定装置100は、40Hzの音波信号301を、サンプリング周波数40kHzで、62.5msのサンプリング期間にサンプリングしてサンプリングデータを取得して、サンプリング期間内の平均電圧値303を算出する。その後、騒音測定装置100は、取得したサンプリングデータと算出した平均電圧値303との差分のRMSから、サンプリング期間における音圧レベルを求める。図3の例では、サンプリング期間を62.5msとしたときの音圧レベルの測定結果は75.774dB SPLとなった。
【0044】
このように、サンプリング期間に、測定対象となる周波数の音波信号301の波形が1周期以上含まれていない場合、サンプリング期間が62.5msのときのように音波信号301の波形が1周期分以上含まれている場合と比較して、測定される音圧レベルが低周波ノイズの分低く測定される。
【0045】
図4は、一実施形態に係る周波数40Hzの音声の音圧レベル測定を示す図(2)である。図4は、図3と同様に、周波数が40Hzの音波信号301を、サンプリング周波数40kHで、それぞれ4ms、62.5msのサンプリング期間にサンプリングして音圧レベルを測定した場合の別の例を示している。図4では、図3と異なるタイミングで4msのサンプリング期間を設定している。図4でも、図3と同様に、音圧レベルを求めると、サンプリング期間を4msとしたときの音圧レベルの測定結果は55.108dB SPLとなった。
【0046】
このように、サンプリング期間を4msとした場合、サンプリングタイミングにより、音圧レベルの測定結果にばらつきがあるものの、サンプリング期間を62.5msとした場合よりも、周波数40Hzの音圧レベルを低減できることが分かる。
【0047】
なお、測定結果のばらつきは、例えば、サンプリング期間4msで複数回サンプリングを行い、測定結果を平均化することにより抑制することができる。
【0048】
上記の結果を踏まえて、本実施形態では、例えば、次のようにして、サンプリングデータを取得する。
【0049】
図5は、一実施形態に係るサンプリングデータの取得を示す図(1)である。本実施形態に係る騒音測定装置100は、図5に示すように、騒音レベルを測定する測定期間Tより短いサンプリング期間を複数回設定し、各サンプリング期間にサンプリングしてサンプリングデータを取得する。図5の例では、1測定期間T内に4msのサンプリング期間が4回設定されている。
【0050】
ここで、騒音測定装置100は測定結果を測定期間Tごとに送信しているが、測定結果を送信する送信間隔は測定期間Tと異なっていてもよい。
【0051】
図5では、騒音測定装置100は、時間t0からt1までのサンプリング期間501に1回目のサンプリングを行い、時間t2からt3までのサンプリング期間502に2回目のサンプリングを行う。また、騒音測定装置100は、時間t4からt5までのサンプリング期間503に3回目のサンプリングを行い、時間t6からt7までのサンプリング期間504に4回目のサンプリングを行う。また、各サンプリング期間の間には、測定間隔511~513が設けられている。
【0052】
本実施形態に係る騒音測定装置100は、複数回のサンプリング期間を設定してサンプリングを行うときに、サンプリング期間を連続させて測定を行うのではなく、サンプリング期間の間に所定の測定間隔511~513を空けて測定を行う。これにより、静音状況下で発生する一瞬の音など、ある状況にそぐわない音を続けて測定しないようにしている。また、騒音測定装置100は、サンプリング期間が特定の周波数の音と同期しないように、測定間隔511~513をランダムに変更しても良い。
【0053】
なお、測定間隔は、サンプリング期間と、測定期間におけるサンプリング期間の回数によって決まる。測定期間におけるサンプリング期間の回数を減らすことにより、測定間隔が長くなり、消費電力を抑制することができるが、平均化の効果が低減するため、測定結果のばらつきが大きくなる恐れがある。
【0054】
騒音測定装置100は、複数のサンプリング期間501~504の各々の騒音レベル(音圧レベル)を算出し、各サンプリング期間501~504で算出した騒音レベルの平均値を測定期間Tの騒音レベルの測定結果とする。図5の例では、騒音レベルの測定結果は、63.782dB SPLとなった。
【0055】
図6は、一実施形態に係るサンプリングデータの取得を示す図(2)である。この図は、図5と同様の処理を、サンプリング期間を設定するタイミングを変えて実行した例を示している。
【0056】
図5と同様に、騒音測定装置100は、複数のサンプリング期間501~504の各々で騒音レベルを算出し、各サンプリング期間501~504で算出した騒音レベルの平均値を測定期間Tの騒音レベルの測定結果とする。図6の例では、騒音レベルの測定結果は、66.675dB SPLとなった。
【0057】
このように、複数のサンプリング期間501~504の騒音レベルの平均値を1測定期間の騒音レベルの測定結果とすることにより、図3、4で説明したサンプリングタイミングによる音圧レベルの測定結果のばらつきを平均化することができる。
【0058】
図7は、サンプリング期間の長さに応じた周波数特性を示す図である。図7のグラフは、横軸が周波数、縦軸が音圧を示している。曲線701は、図2~4のようにサンプリング期間を62.5msとしたときにサンプリングされた音波信号の周波数特性を示している。曲線702は、図2~4のように、4msのサンプリング期間を1回設定したときにサンプリングされた音波信号の周波数特性を示している。曲線703は、図5、6のように、1測定期間に4msのサンプリング期間を複数回設定したときにサンプリングされた音波信号の周波数特性を示している。
図7からわかるように、曲線701では250Hzより低い周波数成分の音圧も高いが、曲線702、曲線703では250Hzより低い周波数の音声の音圧が低減されていることがわかる。また、曲線703は、曲線702と同様の周波数特性を示しているが、4回の各サンプリング期間で取得した測定結果を平均化することにより、曲線702と比較して低い周波数における音圧の低減度合いのばらつきが少なくなっている。
【0059】
このように、騒音測定装置100は、サンプリング期間を4msに設定することにより、250Hzより低い周波数の音を遮断することができる。周波数Fより低い周波数の音を遮断したい場合、サンプリング期間を1/F秒に設定すれば良いため、遮断周波数はサンプリング期間の長さを変更することにより変更可能である。
【0060】
このように、本実施形態によれば、騒音測定装置100においてハイパスフィルタが不要になる。また、本実施形態では、サンプリング期間を変更することにより遮断周波数を変更することができるので、測定対象となる騒音に合わせて適切な遮断周波数を設定することができる。
【0061】
<機能構成>
図8は、一実施形態に係る騒音測定装置の機能構成を示す図である。騒音測定装置100は、マイコン111でプログラムを実行することにより、データ取得部801、中心電圧算出部802、騒音レベル算出部803、出力部804、無線通信部805、設定受付部806、及び記憶部807の機能を実現している。
【0062】
なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0063】
データ取得部801は、ADコンバータ112を用いて、騒音レベルを測定する測定期間Tより短いサンプリング期間に、マイクユニット120から送られてくる音波信号をサンプリングしてサンプリングデータを取得する。例えば、データ取得部801は、図5に示すように、測定期間Tより短い複数回のサンプリング期間501~504のそれぞれで、音波信号をサンプリングする。これにより、騒音測定装置100の周辺の騒音レベルを示す信号が得られる。
【0064】
データ取得部801は、周波数Fより低い周波数を遮断する場合、サンプリング期間を1/F秒に設定して音波信号のサンプリングを行う。
【0065】
中心電圧算出部802は、データ取得部801が取得するサンプリングデータに基づいて、サンプリング期間ごとに中心電圧値を算出する。図6の例では、中心電圧算出部802は、サンプリング期間501~504の各々において電圧値をサンプリングしたサンプリングデータを平均して、各サンプリング期間501~504の中心電圧値505~508を算出する。
【0066】
騒音レベル算出部803は、データ取得部801が取得したサンプリングデータが示す測定電圧値と中心電圧算出部802が算出した中心電圧値との差分のRMSを求めて、サンプリング期間ごとの騒音レベルを算出する。
【0067】
例えば、騒音レベル算出部803は、次の式(1)により、サンプリングデータが示す測定電圧値と中心電圧値との差分のRMSを求める。
【0068】
【数1】
ここで、Vはサンプリングデータが示す測定電圧値(V)、Vは中心電圧値(V)、Nはサンプリング数を示す。
【0069】
また、騒音レベル算出部803は、算出したRMSと、次の式(2)により、騒音レベルLを算出する。
【0070】
【数2】
ここで、Sはマイク感度(V/Pa)、Gainは電源電圧比率によるゲイン(dB)を示す。
【0071】
出力部804は、騒音レベル算出部803が算出した複数のサンプリング期間の騒音レベルを平均し、その平均値を、測定期間Tの騒音レベルとして出力する。例えば、出力部804は、サンプリング期間501~504それぞれにおける騒音レベルを平均化して求めた測定期間Tの騒音レベルを、無線通信部805を用いて外部装置に無線送信する。
【0072】
なお、出力部804は、騒音測定装置100が表示部を有している場合には、騒音レベルの測定結果(測定期間Tの騒音レベル、最大騒音レベル、平均騒音レベル等)を表示部に出力するものであっても良い。また、出力部804は、騒音レベルの測定結果を記憶部807等に出力するものであっても良い。
【0073】
無線通信部805は、無線回路113等を用いて、BLE通信等の無線通信で外部装置と通信を行う。例えば、無線通信部805は、出力部804の制御に従って、騒音レベルの測定結果を含むビーコン(アドバタイズメントパケット等)を間欠送信する。なお、無線通信部805は、BLE通信以外の無線通信で外部装置と通信を行うものであっても良い。
【0074】
無線通信部805は、外部機器からの要求に応じて通信リンクを確立し、外部機器からのサンプリング期間の変更要求等の要求情報を受信することができる。
【0075】
設定受付部806は、無線通信部805が外部機器から受信した要求情報を受け付ける。例えば、無線通信部805が、外部機器からサンプリング期間の変更要求を受信した場合、設定受付部806は変更要求に従って騒音測定装置100のサンプリング期間の設定を変更する。
【0076】
記憶部807は、例えば、マイコン111で実行されるプログラム、及びマイコン111に含まれるメモリ(RAM、フラッシュROM等)によって実現され、騒音測定装置100の設定値、サンプリングデータ等の様々な情報やデータを記憶する。
【0077】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る騒音測定方法の処理について説明する。
【0078】
[第1の実施形態]
図9は、第1の実施形態に係る騒音測定装置の処理を示すフローチャートである。騒音測定装置100は、例えば、図9の処理を実行することにより、騒音レベルを測定し、測定結果を外部装置に送信する。
【0079】
S901において、騒音測定装置100は、タイマ値、現在時刻等に基づいて、測定開始タイミングであるか否かを判断し、測定開始タイミングである場合、S902以降の処理を実行する。
【0080】
S902において、データ取得部801は、所定の長さのサンプリング期間(例えば、4ms)に、電圧値をサンプリングしてサンプリングデータを取得する。例えば、データ取得部801は、1つのサンプリング期間に、予め設定されたサンプリング数(例えば、160回)だけ、ADコンバータ112から電圧値を示すサンプリングデータを取得して、記憶部807等に記憶する。
【0081】
S903において、中心電圧算出部802は、データ取得部801が取得したサンプリングデータに基づいて、サンプリングデータを取得したサンプリング期間における中心電圧値を算出する。例えば、中心電圧算出部802は、サンプリング期間内のサンプリングデータが示す電圧を平均化した平均電圧値を算出して、記憶部807に記憶する。
【0082】
S904において、騒音レベル算出部803は、算出した中心電圧値を基準電圧値として、サンプリングデータから騒音レベルを算出する。例えば、騒音レベル算出部803は、サンプリングデータが示す電圧値と中心電圧値とのRMS(二乗平均平方根)から、サンプリング期間における騒音レベルを算出する。この場合、騒音レベル算出部803は、式(1)を用いてサンプリング期間におけるRMSを算出し、式(2)と算出したRMSとを用いて、騒音レベルLを算出する。
【0083】
S905において、騒音測定装置100は、測定期間内におけるサンプリング期間の回数である測定回数が所定数(例えば4回)に達したか否かを判断する。測定回数が所定数に達していない場合、騒音測定装置100は、S906において、測定間隔だけ待機した後にS902以降の処理を再び実行する。
【0084】
一方、所定の測定回数に達した場合、出力部804は、騒音レベル算出部803が算出した各サンプリング期間の騒音レベルを平均した測定結果を、無線通信部805を介して外部装置に送信する。
【0085】
上記の処理により、騒音測定装置100は、固定のカットオフ周波数のハイパスフィルタを有していなくても、図7の曲線703に示されるように、騒音レベルの測定に不要な低い周波数を低減させて騒音レベルを測定できる。
【0086】
[第2の実施形態]
図10は、第2の実施形態に係る騒音測定装置の処理を示すフローチャートである。図10の処理は、騒音測定装置100が実行する騒音レベル測定処理の別の例を示している。図10では、測定期間Tより測定結果を送信する送信間隔が長く設定されている場合の処理の例について説明する。なお、S901からS906は図9と同様なので説明を省略する。
【0087】
S1001において、出力部804は、騒音レベル算出部803が算出した各サンプリング期間の騒音レベルを平均した測定結果を記憶部807に記憶する。
【0088】
S1002において、出力部804は、タイマ値、現在時刻等に基づいて、測定結果の送信タイミングであるか否かを判断する。測定結果の送信タイミングでない場合、出力部804は、処理をS901に戻す。一方、測定結果の送信タイミングである場合、出力部804は、処理をS1003に移行させる。
【0089】
S1003に移行すると、出力部804は、記憶部307に記憶した測定結果を、無線通信部805を介して外部装置に送信する。
【0090】
図10の処理のように、騒音レベルを測定する測定期間Tと測定結果を送信する送信間隔とは、異なっていても良い。
【0091】
第2の実施形態においても、騒音測定装置100は、固定のカットオフ周波数のハイパスフィルタを有していなくても、図7の曲線703に示されるように、騒音レベルの測定に不要な低い周波数を低減させて、騒音レベルを測定できるようになる。また、第2の実施形態によれば、騒音測定装置100は、任意の送信タイミングで測定結果を外部装置に送信することができる。
【0092】
以上、本発明の各実施形態によれば、騒音測定装置100において、騒音レベルの測定に不要な低い周波数の音を削減するハイパスフィルタが不要になる。
【0093】
また、騒音測定装置100は、サンプリング期間の設定を変更することにより、測定対象となる騒音に応じて、騒音レベルの測定に不要な低い周波数の音を削減するカットオフ周波数を変更可能にする。
【0094】
さらに、騒音測定装置100は、複数のサンプリングデータに基づいて算出した中心電圧値を基準電圧値としているので、マイクユニットから送られてくるアナログ信号と回路上に設けられた基準電圧値との差分から騒音レベルを算出する場合と異なり、オペアンプや周辺回路部品の経年変化によるオフセットの変動を無視することができ、オペアンプ等の基準電圧値の補正が不要になる。
【0095】
また、中心電圧値に移動平均処理を施すことでノイズの影響等によりサンプリングデータに異常な値が含まれる場合でも、その影響を抑制することができる。
【0096】
さらにまた、騒音測定装置100は、複数のサンプリング期間の間に所定の測定間隔を空けることにより、状況にそぐわない、静音状況下において発生する音を連続して測定してしまうことを抑制することができる。これにより、例えば、一瞬の音の発生が測定値全体に及ぼす影響を低減することができる。
【0097】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
100 騒音測定装置、801 データ取得部、802 中心電圧算出部、
803 騒音レベル算出部、804 出力部、805 無線通信部、806 設定受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10