(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163780
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】インナーカップ及び組容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/06 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
B65D77/06 F
B65D77/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068814
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 広史
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康司
(72)【発明者】
【氏名】土田 雅子
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA04
3E067AB81
3E067AC01
3E067BA02C
3E067BA11B
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067BB15B
3E067BB16C
3E067FA04
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減できる組容器及びそれに用いられるインナーカップを提供する。
【解決手段】外装容器5内に着脱可能に配される薄肉の樹脂成形品により形成されたインナーカップ10であって、内容物を収納する有底筒状の収納部11と、収納部11の上端に連結して下方外側に延びて収納部11の外周面に対向した環状のスカート部13とを備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装容器内に着脱可能に配される薄肉の樹脂成形品により形成されたインナーカップであって、内容物を収納する有底筒状の収納部と、前記収納部の上端に連結して下方外側に延びて前記収納部の外周面に対向した環状のスカート部とを備えたことを特徴とするインナーカップ。
【請求項2】
前記スカート部が下端から径方向外側に突出する環状の突出部を有することを特徴とする請求項1に記載のインナーカップ。
【請求項3】
前記収納部の上端から径方向外側に延びる水平なフランジ部を備え、前記フランジ部により前記収納部の上端と前記スカート部とを連結したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインナーカップ。
【請求項4】
前記フランジ部に引き剥がし可能に熱接着した積層フィルムから成る蓋材により前記収納部が密封されることを特徴とする請求項3に記載のインナーカップ。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載のインナーカップを外装容器内に配した組容器であって、前記スカート部が前記外装容器の内周面を押圧して前記インナーカップが弾性支持されることを特徴とする組容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装容器内に配されるインナーカップ及びインナーカップを外装容器内に配した組容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアワックス等のクリーム状の内容物を保管する従来の容器は特許文献1に開示される。この容器は射出成形により形成された容器本体及び蓋を備える。容器本体は内容物を充填した収納部を備え、上部外周面に雄ネジ部を有する。蓋は内周面に容器本体に螺合する雌ネジ部を有し、容器本体を密封する。収納部内の内容物は手指により掻き出して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-81031号公報(第4頁-第7頁、第1図)
【特許文献2】実全平5-74411号(第6頁-第8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の容器によると、内容物を使い切ると樹脂使用量の多い射出成形品の容器が廃棄されるため環境負荷が大きくなる問題があった。
【0005】
本発明は、環境負荷を低減できる組容器及びそれに用いるインナーカップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、外装容器内に着脱可能に配される薄肉の樹脂成形品により形成されたインナーカップであって、内容物を収納する有底筒状の収納部と、前記収納部の上端に連結して下方外側に延びて前記収納部の外周面に対向した環状のスカート部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
また本発明は上記構成のインナーカップにおいて、前記スカート部の下端から径方向外側に突出する環状の突出部を備えたことを特徴としている。
【0008】
また本発明は上記構成のインナーカップにおいて、前記収納部の上端から径方向外側に延びる水平なフランジ部を備え、前記フランジ部により前記収納部の上端と前記スカート部とを連結したことを特徴としている。
【0009】
また本発明は上記構成のインナーカップにおいて、前記フランジ部に引き剥がし可能に熱接着した積層フィルムから成る蓋材により前記収納部が密封されることを特徴としている。
【0010】
また本発明は上記構成のインナーカップを外装容器内に配した組容器であって、前記スカート部が前記外装容器の内周面を押圧して前記インナーカップが弾性支持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、外装容器内に着脱可能に配されるインナーカップが有底筒状の収納部の上端に連結して下方外側に延びて収納部の外周面に対向した環状のスカート部を備える。これにより、組容器に保管された内容物を使い切るとインナーカップを廃棄すればよいため、環境負荷を低減することができる。また、スカート部が外装容器の内周面を押圧するようにインナーカップを外装容器内に配置すると、スカート部の弾性によってインナーカップが弾性支持される。これにより、内容物を取り出す際のインナーカップの回転を簡単な構成で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の組容器を示す分解斜視図
【
図2】本発明の第1実施形態のインナーカップを示す上面図
【
図3】本発明の第1実施形態のインナーカップを示す正面断面図
【
図4】本発明の第1実施形態の外装容器にインナーカップを収納した状態を示す正面断面図
【
図5】本発明の第2実施形態のインナーカップを示す正面断面図
【
図6】本発明の第2実施形態の外装容器にインナーカップを収納した状態を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は第1実施形態の組容器の分解斜視図を示している。組容器1はヘアワックス、ハンドクリーム等の手指等で掻き出すクリーム状の内容物を保管する。組容器1は外装容器5及びインナーカップ10を備えている。
【0014】
外装容器5は射出成形された硬質樹脂(ポリプロピレン等)の樹脂成形品により形成され、本体部7及び上蓋部6を備えている。本体部7は有底筒状に形成され、インナーカップ10が配される保管部7bを有する。本体部7の上端部の外周面上には雄ネジ部7aが形成される。
【0015】
上蓋部6は本体部7に被嵌して本体部7の上面を閉塞する。上蓋部6の内周面上には雄ネジ部7aに螺合する雌ネジ部(不図示)が設けられる。上蓋部6の上壁内面に本体部7の上端面と当接する合成ゴム等のパッキンを設けてもよい。
【0016】
図3、
図4はインナーカップ10の上面図及び正面断面図を示している。インナーカップ10は射出成形、シート成形等により形成された薄肉の樹脂成形品により形成される。インナーカップ10の材質として、バイオマス由来のポリエチレンを3%以上含んでもよく、バイオアマス由来のポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。
【0017】
シート成形によりインナーカップ10を形成する場合は、リサイクル樹脂のポリエチレンテレフタレート等の樹脂シートを用いてもよく、バージン樹脂、リサイクル樹脂、バージン樹脂を順に積層した積層シートを用いてもよい。これらにより、環境負荷を低減することができる。
【0018】
また、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリプロピレンを順に積層した積層シートを用いてもよい。これにより、酸素、水蒸気等に対するガスバリア性が付与され、内容物を長期保存することができる。
【0019】
インナーカップ10は収納部11、フランジ部12及びスカート部13を備えている。また、インナーカップ10は蓋材18(
図1参照)により収納部11を密封される。
【0020】
収納部11は有底筒状に形成され、内容物を収納する。フランジ部12は収納部11の上端から径方向外側に水平に延びた環状に形成される。スカート部13はフランジ部12の外周端から下方外側に延びた環状に形成され、収納部11の外周面に対向する。これにより、スカート部13はフランジ部12を介して収納部11の上端に連結される。また、スカート部13は下端から径方向外側に水平に突出した環状の突出部14を有している。
【0021】
蓋材18(
図1参照)は下面に熱接着性樹脂層を有した易剥離性の積層フィルムにより形成され、インナーカップ10のフランジ部12に引き剥がし可能に熱接着される。蓋材18には径方向外側に突出する摘持部18aが設けられる。蓋材18は積層フィルムをフランジ部12に熱接着した後にフランジ部12の外側を切刃によりトリミングして形成される。インナーカップ10を外装容器5に装着する際に摘持部18aを摘持して蓋材18がフランジ部12から引き剥がされる。
【0022】
図4はインナーカップ10を外装容器5の本体部7に配した状態の正面断面図を示している。インナーカップ10は蓋材18を引き剥がして外装容器5の本体部7に挿入される。インナーカップ10の突出部14の外径は一点鎖線Dで示すように本体部7の内径よりも所定量(例えば、1mm)大きく形成される。本体部7に挿入されたインナーカップ10のスカート部13は径方向内側に弾性変形し、スカート部13の突出部14は本体部7の内周面を押圧する。これにより、インナーカップ10が弾性支持され、内容物を手指で掻き出した際にインナーカップ10の回転を防止することができる。
【0023】
内容物を使い切ると外装容器5からインナーカップ10が取り出されて廃棄され、内容物が充填されたインナーカップ10と取り替えられる。これにより、薄肉のインナーカップ10を廃棄すればよいため、環境負荷を低減することができる。
【0024】
ここで、スカート部13が設けられずにフランジ部12と本体部7の内周面との当接によりインナーカップ10を保持すると、以下の不具合がある。即ち、インナーカップ10を外装容器5の本体部7に挿入した際に収納部11の周壁が変形して内側に部分的に突出する場合がある。このため、突出部分に手指が係り、内容物を取り出しにくくなるとともにインナーカップ10が回転して組容器1の利便性が悪くなる。
【0025】
また、蓋材18を熱接着した際にフランジ部12が変形してフランジ部12の外径寸法がばらつき、本体部7との間の弾性力が不安定になるためインナーカップ10が回転する虞がある。
【0026】
また、組容器1に保管される内容物を初めて使用する場合は、蓋材18により密封されたインナーカップ10が予め外装容器5内に収納されている。蓋材18はトリミングの切刃とフランジ部12との干渉を防止するためにフランジ部12よりも径方向外側をトリミングされる。このため、インナーカップ10が予め外装容器5内に収納される場合に、フランジ部12よりも大径の蓋材18によってインナーカップ10を外装容器5の本体部7に円滑に挿入できない。従って、組容器1の利便性が悪くなる。
【0027】
これに対して本実施形態はインナーカップ10がスカート部13を備えるため、本体部7に挿入したインナーカップ10が変形してもスカート部13の変形に留まり、収納部11の変形が防止される。また、蓋材18を熱接着した際にフランジ部12が変形してもスカート部13の下端に設けた突出部14の外径寸法のばらつきが抑制される。また、突出部14を蓋材18よりも大径に形成できるため、密封されたインナーカップ10を外装容器5の本体部7に円滑に挿入することができる。
【0028】
本実施形態によると、薄肉のインナーカップ10が有底筒状の収納部11の上端に連結して下方外側に延びて収納部11の外周面に対向した環状のスカート部13を備える。これにより、組容器1に保管される内容物を使い切るとインナーカップ10を廃棄すればよいため、環境負荷を低減することができる。
【0029】
また、スカート部13に設けた突出部14が外装容器5の本体部7の内周面を押圧するようにインナーカップ10を外装容器5内に配置すると、スカート部13の弾性によってインナーカップ10が弾性支持される。これにより、内容物を取り出す際のインナーカップ10の回転を簡単な構成で防止することができる。
【0030】
また、スカート部13が下端から径方向外側に突出する環状の突出部14を有するので、スカート部13の下端が部分的に径方向内側に変形することを抑制できる。このため、インナーカップ10を外装容器5に装着した際にスカート部13の下端の全周が本体部7の内周面に当接し、インナーカップ10を確実に弾性支持することができる。
【0031】
また、収納部11の上端から径方向外側に延びる水平なフランジ部12を設けたので、フランジ部12に蓋材18を容易に熱接着することができる。尚、蓋材18との接着強度が弱くてもよい場合や、蓋材18が設けられない場合等に、フランジ部12を省いてスカート部13を収納部11の上端から下方に屈曲して形成してもよい。
【0032】
また、フランジ部12に引き剥がし可能に熱接着した積層フィルムから成る蓋材18により収納部11が密封されるので、取り替え前のインナーカップ10の内容物を長期保存することができる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、
図5は第2実施形態の組容器1のインナーカップ10の正面断面図を示している。説明の便宜上、前述の
図1~
図4に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態に対して、インナーカップ10の突出部14(
図3参照)が省かれている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0034】
第1実施形態と同様に、フランジ部12は収納部11の上端から径方向外側に水平に延びた環状に形成される。スカート部13はフランジ部12の外周端から下方外側に延びた環状に形成され、収納部11の外周面に対向する。これにより、スカート部13はフランジ部12を介して収納部11の上端に連結される。
【0035】
図6はインナーカップ10を外装容器5の本体部7に配した状態の正面断面図を示している。インナーカップ10のスカート部13の外径は一点鎖線Dで示すように本体部7の内径よりも所定量(例えば、1mm)大きく形成される。本体部7に挿入されたインナーカップ10のスカート部13は径方向内側に弾性変形し、スカート部13は本体部7の内周面を押圧する。これにより、インナーカップ10が弾性支持され、内容物を手指で掻き出した際にインナーカップ10の回転を防止することができる。
【0036】
本実施形態によると、組容器1に保管される内容物を使い切るとインナーカップ10を廃棄すればよいため、環境負荷を低減することができる。また、スカート部13が外装容器5の本体部7の内周面を押圧するようにインナーカップ10を外装容器5内に配置すると、スカート部13の弾性によってインナーカップ10が弾性支持される。これにより、内容物を取り出す際のインナーカップ10の回転を簡単な構成で防止することができる。
【0037】
尚、蓋材18との接着強度が弱くてもよい場合や、蓋材18が設けられない場合等に、フランジ部12を省いてスカート部13を収納部11の上端から下方に屈曲して形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によると、ヘアワックス、ハンドクリーム等のクリーム状の内容物を収納する組容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 組容器
5 外装容器
6 上蓋部
7 本体部
7b 保管部
10 インナーカップ
11 収納部
12 フランジ部
13 スカート部
14 突出部
18 蓋材
18a 摘持部