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特開2022-163783スラブ軌道における填充層の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163783
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】スラブ軌道における填充層の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 37/00 20060101AFI20221020BHJP
   E01B 1/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E01B37/00 C
E01B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068817
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲
(72)【発明者】
【氏名】神津 大輔
【テーマコード(参考)】
2D056
2D057
【Fターム(参考)】
2D056AA05
2D057CA04
2D057CA05
(57)【要約】
【課題】既設のスラブ軌道において短時間にCAモルタル層を補修することができるスラブ軌道における填充層の補修方法を提供する。
【解決手段】スラブ軌道において路盤コンクリートと軌道スラブの間に設けられている填充層を、スラブ軌道の側方から掘削して補修材を充填するスラブ軌道補修方法において、前記填充層をスラブ軌道の側方から所定の奥行深さまで掘削する第1工程と、第1工程により掘削された掘削部の奥行とほぼ同一の幅を有し前記軌道スラブの長さの1/n(nは正の整数)の長さを有し充填剤注入口が設けられた複数の袋の内部に、予め製造された所定形状および所定以上の強度を有するブロックをそれぞれ1つずつ装填する第2工程と、前記袋の内部にブロックが装填されたブロック充填体を、第1工程により掘削された掘削部へ1列に並べて挿入する第3工程と、前記袋の内部へ硬化型補修剤を注入する第4工程と、を含むようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ軌道において路盤コンクリートと軌道スラブの間に設けられている填充層を、スラブ軌道の側方から掘削して補修材を充填するスラブ軌道における填充層の補修方法であって、
前記填充層をスラブ軌道の側方から所定の奥行深さまで掘削する第1工程と、
前記第1工程により掘削された掘削部の奥行とほぼ同一の幅を有し前記軌道スラブの長さの1/n(nは正の整数)の長さを有し充填剤注入口が設けられた複数の袋の内部に、予め製造された所定形状および所定以上の強度を有するブロックがそれぞれ1つずつ装填
されたブロック充填体を、前記第1工程により掘削された掘削部へ1列に並べて挿入する第2工程と、
前記袋の内部へ硬化型補修剤を注入する第3工程と、
を含むことを特徴とするスラブ軌道における填充層の補修方法。
【請求項2】
前記袋は、内部の充填剤が滲み出さない性質のシート状の素材によって形成され、前記第1工程で形成される掘削空間の奥部に面する内側面には弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスラブ軌道における填充層の補修方法。
【請求項3】
前記袋は、内部の充填剤が滲み出す性質の不織布によって形成され、外側面は、注入された充填剤が滲み出さない性質の布材で構成あるいは貼付されていることを特徴とする請求項2に記載のスラブ軌道における填充層の補修方法。
【請求項4】
前記袋には、外側面に前記充填剤注入口が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のスラブ軌道における填充層の補修方法。
【請求項5】
1つの前記軌道スラブに対応した数の前記ブロック充填体の長さは、1つの前記軌道スラブの長さに軌道スラブ間の隙間分を加算した長さを有し、隣接する軌道スラブと路盤コンクリートとの間に挿入された端部のブロック充填体同士が接触するように配設されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のスラブ軌道における填充層の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ軌道の補修技術に関し、特に路盤コンクリートと軌道スラブの間に設けられている填充層としてのCAモルタル層(セメントアスファルトモルタル)層を補修する填充層の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブ軌道には、路盤コンクリートとその上方に敷設されたコンクリート板からなる軌道スラブとの間に緩衝機能を有するCAモルタル層製の填充層が設けられている。従来、このCAモルタル層には、型枠を設けその内側への充填剤を注入して硬化させる型枠方式で造られたものと、不織布製の袋にモルタルを注入したロングチューブで造られたものとがある。
このうち、ロングチューブ方式のCAモルタル層を介在させた軌道スラブの築造方法に関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
近年、積雪寒冷地域のスラブ軌道においては、融雪のために散水した水や雨水がCAモルタル層に浸み込み凍結融解を繰り返すことで、CAモルタル層の劣化が進行している。そこで、CAモルタル層の劣化が少ないスラブ軌道部分では、CAモルタル層が露出している側面部分に樹脂をコーティングすることで、CAモルタル層に水が浸み込むことを防ぐ対策が講じられている。
一方、CAモルタル層の劣化がかなり進んでいるスラブ軌道部分では、掘削機によって、CAモルタル層の側面から比較的奥の方までモルタルを掘削し除去した後、補修材を注入してCAモルタル層を補修する工事が行われている。なお、ロングチューブ方式のCAモルタル層の場合、表面を覆う不織布も除去する必要があるため、それに適したスラブ軌道補修用研削装置も開発されている。
【0004】
また、従来、スラブ軌道における填充層(CAモルタル層)の補修装置や補修方法に関する発明として、特許文献2や3に記載されている発明がある。
このうち、特許文献2の発明は、路盤コンクリートと軌道スラブの間の填充層を側方より掘削してから、軌道スラブの外側に型枠を設けた後に、レール上に載置された走行式の填充層補修装置が備えるミキサのノズルから型枠の内側へ2液混合式の充填剤を注入して硬化させ、その後型枠を撤去するというものである。
【0005】
特許文献3の発明は、劣化したCAモルタル層を軌道スラブの周囲から水平方向の適宜深さまで除去することにより軌道スラブの外周に開口する空隙を形成し、空隙に外側から補修用袋を装填した後、補修用袋に補修用充填剤を注入して補修用袋を膨張させ、空隙の少なくとも上面および下面に密着固定させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-203178号公報
【特許文献2】特開2015-224418号公報
【特許文献3】特開2012-180634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載されている填充層補修方法の場合、路盤コンクリートへの型枠の設置作業と撤去作業が必要であるため、作業工程が多く、かなりの時間と費用がかかるという課題がある。
一方、上記特許文献3の填充層補修方法の場合、型枠の設置と撤去の作業が不要であるという利点があるものの、CAモルタル層を部分的に除去することにより生じた空隙に、複数の補修用袋を挿入し、補修用袋内に充填剤を順次注入するという繰り返し作業を行う必要がある。
【0008】
また、特許文献3の填充層補修方法においては、補修用袋を挿入した空隙の奥部に残存する隙間を埋めるため、予め軌道スラブに上下方向の注入孔を設けておいて、充填剤を注入するようにしているため、依然として多くの時間がかかり費用が充分に低減されない。しかも、充填剤が硬化するのに時間がかかるため、夜間の営業列車が走行しない時間帯にCAモルタル層を広範囲にわたって補修する作業を実施する場合には、スラブ軌道の沈み込みを防止する工事をしておく必要があり大規模補修には向いていないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記のような背景のもとになされたもので、夜間の営業列車が走行しない時間帯にスラブ軌道の路盤コンクリートと軌道スラブとの間の填充層としてのCAモルタル層を広範囲にわたって補修する作業を実施することができるスラブ軌道における填充層の補修方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、既設のスラブ軌道において、路盤コンクリートへの大掛かりな型枠の設置を行うことなく、填充層としてのCAモルタル層を短時間に補修することができるスラブ軌道における填充層の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明は、
スラブ軌道において路盤コンクリートと軌道スラブの間に設けられている填充層を、スラブ軌道の側方から掘削して補修材を充填するスラブ軌道における填充層の補修方法において、
前記填充層をスラブ軌道の側方から所定の奥行深さまで掘削する第1工程と、
前記第1工程により掘削された掘削部の奥行とほぼ同一の幅を有し前記軌道スラブの長さの1/n(nは正の整数)の長さを有し充填剤注入口が設けられた複数の袋の内部に、予め製造された所定形状および所定以上の強度を有するブロックがそれぞれ1つずつ装填
されたブロック充填体を、前記第1工程により掘削された掘削部へ1列に並べて挿入する第2工程と、
前記袋の内部へ硬化型補修剤を注入する第3工程と、
を含むようにしたものである。
【0011】
かかる方法によれば、所定以上の強度を有するブロックを装填したブロック充填体を、填充層(CAモルタル層)を掘削した部位に挿入するため、ロングチューブ方式のCAモルタル層を構築する際のように、セメントアスファルトが硬化するまで路盤コンクリートと軌道スラブとの間隔を保持する必要がないので、夜間の営業列車が走行しない時間帯にスラブ軌道の填充層を補修する作業を実施することができる。また、型枠の設置作業と撤去作業が必要であるため、作業時間と費用を低減することができる。
【0012】
また、1つのブロックの重量を小さくすることができるため、手作業によるブロックの取り扱いが容易になり、大型の機械や重機を軌道内に持ち込む必要がなく補修作業の準備時間を短縮することができる。さらに、袋の内部へ硬化型補修剤を注入するため、ブロック間の隙間や袋と掘削部の壁面との隙間が狭くなり、填充層の強度を高めることができるとともに、袋に挿入する1つ1つ1つのブロックの重量を小さくすることができるため、手作業によるブロックの取り扱いが容易になり、大型の機械や重機を軌道内に持ち込む必要がなく補修作業の準備時間を短縮することができる。
【0013】
ここで、望ましくは、前記袋は、内部の充填剤が滲み出さない性質のシート状の素材によって形成され、前記第1工程で形成される掘削空間の奥部に面する内側面には弁が設けられているようにする。
かかる方法によれば、袋の内部へ注入した硬化型補修剤が内側面の弁から溢れて掘削空間の奥部や上下の隙間を埋めることができるため、雨水の侵入を防止することができ、填充層(CAモルタル層)の劣化を抑制することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記袋は、内部の充填剤が滲み出す性質の不織布によって形成され、外側面は、注入された充填剤が滲み出さない性質の布材で構成あるいは貼付されているようにする。
かかる方法によれば、袋の内部へ注入した硬化型補修剤が袋の表面から滲み出して掘削空間の奥部や上下の隙間を埋めることができるため、雨水の侵入を防止することができ、填充層(CAモルタル層)の劣化を抑制することができる。また、袋の外側面から補修剤が滲み出して軌道スラブの側方へはみ出すのを防止することができる。
【0015】
また、望ましくは、前記袋には、外側面に前記充填剤注入口が設けられているようにする。
かかる方法によれば、複数のブロック充填体を構成する袋(ショートチューブ)の内部へ補修剤を注入する作業を効率よく進めることができる。
【0016】
さらに、望ましくは、1つの前記軌道スラブに対応した数の前記ブロック充填体の長さは、1つの前記軌道スラブの長さに軌道スラブ間の隙間分を加算した長さを有し、隣接する軌道スラブと路盤コンクリートとの間に挿入された端部のブロック充填体同士が接触するように配設されるようにする。
スラブ軌道を構成する軌道スラブは数メートル単位で分割されているため、上記のような方法によれば、軌道スラブごとに填充層(CAモルタル層)の補修を進めて行く場合に、隣接する軌道スラブ間で隣接するブロック充填体同士を連結させることができるため、ブロック充填体の横ずれを防止してブロックが飛び出すのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスラブ軌道における填充層の補修方法によれば、夜間の営業列車が走行しない時間帯にスラブ軌道の路盤コンクリートと軌道スラブとの間の填充層としてのCAモルタル層を広範囲にわたって補修する作業を実施することができる。また、既設のスラブ軌道において、路盤コンクリートへの大掛かりな型枠の設置を行うことなく、填充層としてのCAモルタル層を短時間に補修することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る填充層としてのCAモルタル層の補修方法の適用対象であるスラブ軌道の構造を示す斜視図である。
図2】本発明を適用した大規模補修によるスラブ軌道の構造の一例を示す斜視説明図である。
図3】(A)はCAモルタル層の掘削部へ挿入されるショートチューブの内側面の様子を示す斜視図、(B),(C)はそれぞれショートチューブの内側面に設けられる弁の構成例を示す斜視図である。
図4】掘削部へのCAブロックの挿入後に行う充填剤の注入工程の様子を示す斜視説明図である。
図5】実施形態のCAモルタル層の補修に使用するCAブロックの他の構成例を示す平面図である。
図6】実施形態のCAモルタル層の補修に使用するCAブロックの他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るスラブ軌道における填充層としてのCAモルタル層の補修方法の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本発明に係る填充層の補修方法の適用対象であるスラブ軌道の構造が示されている。図1に示されているように、スラブ軌道は、図示しないコンクリート床版の上に軌道延設方向に沿って設けられた所定の厚さの路盤コンクリート11と、この路盤コンクリート11上にCAモルタル層12を介して軌道スラブ13(長さ4.95m, 幅2. 34m, 厚さ16cm)が敷設された構造を有している。なお、CAモルタル層12の幅は軌道スラブ13の幅と同じである。
【0020】
軌道スラブ13は、上面視で矩形状をなす複数のコンクリート板をレール延設方向に並べることで構成されており、軌道スラブ13上にレール20が延設され、レール20はレール締結器21によって軌道スラブ13に締結されている。
より詳細には、路盤コンクリート11の中央に所定の間隔をおいて、円柱状の係止突起14が設けられ、軌道スラブ13を構成する各矩形状のコンクリート板の前端中央と後端中央にはそれぞれ上記係止突起14の径よりも若干大きな径を有する半円形状の切欠きが形成されており、この切欠きに係止突起14が係合することによって軌道スラブ13を構成するコンクリート板が位置決めされるように構成されている。なお、係止突起14の周囲の軌道スラブ13との間には充填剤15が注入、硬化されることで隙間が埋められている。
【0021】
CAモルタル層12には、型枠方式で造られたものと、不織布製の袋にCAモルタルを注入したロングチューブで造られたものとがある。ロングチューブ方式のCAモルタル層12は、路盤コンクリート11と軌道スラブ13との隙間にロングチューブを設置し、チューブの一方に設けた注入口からセメントアスファルト混合物をチューブ全体に充填するように注入し、硬化後に軌道スラブ13から側方へ突出している注入口の端部を切り取ることで構成される。ロングチューブには、例えばポリエステルや、ポリエチレンテレフタレートなどからなる長繊維不織布等で形成されたものが用いられている。
【0022】
ロングチューブに注入されるセメントアスファルト混合物には、例えばセメント/アスファルト/細骨材を所定の比率で含有するものが使用されている。アスファルト成分はアスファルト乳剤として添加され、水分が抜けて固まると弾性体として靭性を呈することとなる。 なお、ロングチューブの耐候性を向上するために、ロングチューブの側面が耐光処理されることがある。
【0023】
ここで、耐光処理としては、不織布を構成する繊維の耐光性を向上させる方法、ロングチューブ側面を含む表面を耐光性樹脂で被覆する方法、ロングチューブ側面をアスファルトで完全に被覆する方法などがある。
このうち、不織布の構成繊維の耐光性を向上させる方法としては、構成繊維に耐光剤を混入して繊維化する方法がある。 一方、ロングチューブ側面を含む表面を耐光性樹脂で被覆する方法としては、例えば、セメントアスファルト混合物をロングチューブに注入後に、露出するロングチューブ側面にアクリル系耐光性塗料などを塗布する方法などがある。
【0024】
上記のような構成を有するCAモルタル層12が劣化した場合には、前述したように、劣化の程度に応じて部分補修または大規模補修(大断面はつり補修)が行われる。本発明は、このうち、大規模補修を対象とするものである。実施形態における大規模補修は、幅約2.5mの軌道スラブ13に対して、その下方のCAモルタル層12を、両側からそれぞれおよそ70cm奥まで掘削して、新たに填充層を形成することで行われる。CAモルタル層12の掘削深さは70cm前後に限定されるものではない。
【0025】
以下、大規模補修によるスラブ軌道の構造と方法について詳しく説明する。
図2には、本発明を適用した大規模補修によるスラブ軌道の構造の一例が示されている。図2に示されているように、本実施形態のスラブ軌道の補修は、軌道スラブ13の下方のCAモルタル層12の両側部をそれぞれレール延設方向全体に亘って掘削して生じた空間に、上面視で矩形状をなすブロック16Bを、一回り大きな袋状のショートチューブ16A内に装填したもの(以下、ブロック充填体と称する)を、互いに接した状態で並ぶようにして複数挿入し、ショートチューブ16Aの注入口16cより、チューブ内部にセメントアスファルト等の充填剤を順に注入するようにしたものである。
【0026】
なお、図2においては、軌道スラブ13がCAモルタル層12から離間しているように示されているが、実際の工事では軌道スラブ13を持ち上げることはせず、CAモルタル層12の両側部をそれぞれ掘削することでブロック充填体16を挿入するための空間が形成される。また、1つ1つのブロック16Bの長さを短くして軽量化し、ショートチューブ16A内へブロック16Bを装填したものを複数個、1枚の軌道スラブ13の下に挿入する方式であるため、ブロック充填体16の人手による搬送が容易となり、軌道内への大型の機械や重機の持ち込みが不要となる。なお、ショートチューブ16A内へのブロック16Bの装填は現場にて行なっても良いが、予め工場等でショートチューブ16A内へのブロック16Bを装填したものを現場へ運ぶようにしても良い。
【0027】
ブロック16Bには、従来のロングチューブに使用されていた例えばポリエステルや、ポリエチレンテレフタレートなどの素材をシート状に形成して、内部に注入するセメントアスファルトが表面から滲み出さない性質を有するように形成したものを使用し、図3(A)に示すように、掘削空間の奥部に対向する側の面に所定の間隔をおいて複数の弁16bを設けておく。また、ショートチューブ16Aの前面側には、例えば中央のような位置にセメントアスファルトの注入口16cを設けておく。
【0028】
図3(B)には、弁16bの具体的な構成例が示されている。
図3(B)に示されている弁16bは、ショートチューブ16Aの背面(内側面)に形成された各開口穴16aの内側に設けられており、ショートチューブ16Aの充填剤が外部へ流出可能であって流出した充填剤が戻り難い構造を有する逆止弁が用いられている。
【0029】
図3(C)には、弁16bの他の構成例が示されている。
図3(C)に示されている弁16bは、ショートチューブ16Aの背面(内側面)に形成された直径数mm~数cmの開口穴16aを覆うように、開口穴16aよりも一回り大きな径を有する円板状の弾性体の中央に十文字状の切れ目を設けたものである。弁16bの素材は、例えばペットボトルの素材であるポリエチレンテレフタレートなど、弾性変形可能で強靭なものであればどのような材料であっても良い。なお、上記弁16bの構成は一例であって、上記構成に限定されるものでない。
【0030】
上記のようなショートチューブ16Aを使用した場合、CAモルタル層12の側部を掘削してその掘削部に複数のブロック充填体16を並べて挿入した後に、注入口16cよりセメントアスファルトを注入する。すると、セメントアスファルトがショートチューブ16A内に充満されるとともに、背面側に設けられた弁16bが内圧で外側へ変形して切れ目が開き、セメントアスファルトが流れ出て、掘削空間の奥部とブロック充填体16との隙間を埋める。また、奥部の隙間が埋まるとセメントアスファルトは、外側面側へ移動して掘削部の上壁や下壁とブロック充填体16との隙間を埋めることとなる。その結果、CAモルタル層12の掘削部とブロック充填体16との隙間に雨水が侵入して劣化を早まるのを抑制することができる。
【0031】
また、ショートチューブ16Aには、最初のスラブ軌道構築時に填充層を設ける際に使用するロングチューブと同様な長繊維不織布等を使用しても良い。長繊維不織布からなるチューブは、注入したセメントアスファルトが表面から滲み出す性質を有しているため、本実施形態においても、CAモルタル層12を掘削することで生じた空間へ挿入されたブロック充填体16のショートチューブ16A内へセメントアスファルトを充填すると、表面から滲み出して上方の軌道スラブ13や下方の路盤コンクリート11との隙間を埋めることができる。
【0032】
また、ブロック充填体16同士の隙間さらにはブロック充填体16の奥部の掘削したCAモルタル層12の側面との間に生じている隙間を埋めることができるため、それらの隙間に雨水が侵入して劣化が早まるのを防止することができる。なお、ブロック充填体16の上方や下方よりも掘削部の奥の方が、隙間空間が多くなると予想されるので、ショートチューブ16Aの奥側の側面に所定のピッチで弁を設けて、弁を通してより多くの充填剤(セメントアスファルト)を掘削部の奥の隙間へ流し込めるように構成しても良い。
【0033】
また、ショートチューブ16Aの一側には、ブロック16Bを装填し易くするためにファスナーを設けても良い。そして、このファスナーには、セメントアスファルトが滲み出さない材料を使用し、ファスナーが外向きになるようにしてブロック充填体16をCAモルタル層12の掘削部へ挿入することで、型枠なしでも軌道スラブ外側方へのセメントアスファルトのはみ出しを防止することができる。また、ショートチューブ16Aの外側面は、ファスナーでなく充填剤が滲み出さない性質の布材で構成あるいは貼付するようにしても良い。
【0034】
上記のようにショートチューブ16Aとブロック16Bからなるブロック充填体16を使用した本実施形態の修繕方法によれば、ショートチューブ16A内へ充填するセメントアスファルトの量が少ないため、水の搬入量も少なくて済み作業者への負担が減少するとともに、セメントアスファルトの硬化に要する時間も短縮される。そのため、セメントアスファルトが未硬化のまま長時間軌道上に放置されるのを回避することができるので、施工直後に軌道上を列車が走行しても何ら支障はない。従って、補修工事を営業列車が走行していない夜間の時間帯に実施することが可能になる。
【0035】
また、特許文献3の補修方法のように、CAモルタル層を掘削した箇所に空っぽの補修用袋を挿入して充填剤を注入する方式の場合、工事終了後にCAブロックが未硬化の状態で列車が走行すると、軌道スラブ13が沈み込みその状態のまま硬化してしまうというリスクがあるが、本実施形態の補修方法によれば、充填剤の量が少なく効果に要する時間が短いため、そのようなリスクを回避することができる。なお、充填剤を注入した後に、補修層の端面に耐光性樹脂や塗料を塗布して、コーティング層を形成するようにしても良い。
【0036】
さらに、ショートチューブ16Aとブロック16Bからなるブロック充填体16を、CAモルタル層12の掘削部に挿入した後、ショートチューブ16A内に充填剤を注入する前に、図4に示すように、挿入されたブロック充填体16の外側面全体を覆うシールタイプの型枠17を設けてから、ショートチューブ16Aに充填剤を注入してブロック充填体16の周囲の隙間を埋めるようにしても良い。このようにすることで、ショートチューブ16A全体が、充填剤が滲み出す性質の不織布等で形成されている場合に、ショートチューブ16Aの外側面から充填剤が滲み出して軌道スラブ13の側方へはみ出すのを防止することができる。
【0037】
ところで、図2に示すブロック充填体16は、上面視で矩形状をなしているため、ひとつでも接合力が弱いブロック充填体16があると、走行する列車の振動が繰り返し作用することで横ずれを起こして徐々に側方へ飛び出してくるおそれがある。
図5および図6には、そのような飛び出しを抑制する機能を備えたブロック充填体16の例が示されている。このうち、図5のブロック充填体16は、ショートチューブ16AおよびCAブロック16Bのレール方向の前端または後端の一方の辺に凸部16dを形成するとともに、対向する他の辺に前記凸部16dと係合可能な凹部16eを設けて、隣接するブロック充填体16の凸部16dと凹部16eを噛み合わせた状態で並べて配設するようにしたものである。
【0038】
図6のブロック充填体16は、ショートチューブ16AおよびCAブロック16Bの前端側と後端側の辺の中央に、同一高さの段差を設けて各辺に辺の長さの半分の長さを有する係合段差部16f,16gを形成して、隣接するブロック充填体16の係合段差部16f,16gを係合させた状態で並べて配設するようにしたものである。
ブロック充填体16を、図5または図6に示すような形状にすることによって、走行する列車の振動が繰り返し作用することで、あるブロック充填体16に対して横方向の力が作用したとしても、互いに係合する複数(図では8個)のブロック充填体16全体で抵抗して、横ずれを起こすのを防止して軌道スラブの側方への飛び出しを防止することができる。なお、ショートチューブ16Aは、柔軟性を有するものであれば、凹凸や段差のない矩形状の袋として形成しても良い。
【0039】
さらに、図5図6に示す実施例においては、1つの軌道スラブ13に対応するn個(例えば8個)のブロック充填体16の全体の長さを、1つの軌道スラブ13の長さに隣接する軌道スラブとの隙間分を加算した長さになるように設定して、隣接する軌道スラブと路盤コンクリートとの間に挿入されたブロック充填体16の端部同士が接触または係合するように配設するのが良い。これにより、走行する列車の振動で挿入したブロック充填体16に作用する横方向の力に対する抵抗力を高め、ブロック充填体16が横ずれを起こして側方へ飛び出すのを防止することができる。
【0040】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、ショートチューブ16Aに装填するブロック16Bとしてセメントアスファルトで形成されたブロックを使用しているが、CAブロックと同等もしくはそれ以上の強度を有するものであれば、セメントアスファルト以外の材料により形成されたブロックを装填するようにしてもよい。
また、隣接するブロック充填体16同士を結合するためショートチューブ16Aの接合面に、例えば面ファスナーのような結合手段を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0041】
11 路盤コンクリート
12 CAモルタル層(填充層)
13 軌道スラブ
14 係止突起
16 ブロック充填体
16A ショートチューブ
16B CAブロック
16a 開口穴
16b 弁
16c 充填剤注入口
16d 凸部(係合部)
16e 凹部(係合部)
16f,16g 係合段差部(係合部)
20 レール
21 レール締結器
図1
図2
図3
図4
図5
図6