(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163787
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】仕口部の接合構造及び接合工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20221020BHJP
E04B 1/21 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04B1/58 505A
E04B1/21 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068823
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】521162654
【氏名又は名称】株式会社MIYABI’S
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】松野 史郎
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC02
2E125AC07
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG43
2E125BA02
2E125BA55
2E125BB02
(57)【要約】
【課題】低コスト且つ短工期で耐震性に優れた仕口部の接合構造及び接合工法を提供する。
【解決手段】仕口部4の接合構造であって、PC製の下部柱1と、下部柱1の柱主筋11を貫通させる貫通孔31が形成され、下部柱1の上端に設けられた鉄筋コンクリート製の複数の梁3と、仕口部4を塞ぐように敷設されたデッキプレート5と、デッキプレート5上に立設されたPC製の上部柱2と、ジョイントデッキプレート5に設けられ、下部柱1の柱主筋11及び上部柱2の柱主筋21をグラウト接合するスリーブ51と、を備え、仕口部4には、コンクリートCが打設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕口部の接合構造であって、
プレキャストコンクリート製の下部柱と、
前記下部柱の主筋を貫通させる貫通孔が形成され、前記下部柱の上端に設けられた鉄筋コンクリート製の複数の梁と、
前記仕口部を塞ぐように敷設されたデッキプレートと、
前記デッキプレート上に立設されたプレキャストコンクリート製の上部柱と、
前記デッキプレートに設けられ、前記下部柱の主筋及び前記上部柱の主筋をグラウト接合するスリーブと、
を備え、
前記仕口部には、コンクリートが打設されていることを特徴とする仕口部の接合構造。
【請求項2】
前記下部柱の上方の仕口部を挟んで対向する前記梁の梁主筋同士を接合するジョイントをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の仕口部の接合構造。
【請求項3】
前記上部柱とデッキプレートとの間には、モルタルが充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の仕口部の接合構造。
【請求項4】
仕口部の接合工法であって、
プレキャストコンクリート製の下部柱を設け、
前記下部柱の主筋を貫通孔に貫通させた状態で、前記下部柱の上端に鉄筋コンクリート製の複数の梁を設け、
前記下部柱の主筋をデッキプレートのスリーブに挿通させた状態で、前記仕口部を塞ぐように前記デッキプレートを敷設し、
前記仕口部にコンクリートを打設し、
前記スリーブに主筋に挿通させた状態で、前記デッキプレート上にプレキャストコンクリート製の上部柱を設け、
前記スリーブ内にグラウトを注入して、前記下部柱及び上部柱の主筋同士を接合することを特徴とする仕口部の接合工法。
【請求項5】
前記下部柱の上方の仕口部を挟んで対向する前記梁の梁主筋同士をジョイントで接合することを特徴とする請求項4に記載の仕口部の接合工法。
【請求項6】
前記上部柱とデッキプレートとの間にモルタルを充填して、前記上部柱とデッキプレートとを接合させることを特徴とする請求項4又は5に記載の仕口部の接合工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕口部の接合構造及び接合工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、柱及び梁の仕口部の接合構造として、プレキャストコンクリート(PC)製の柱に顎部を設け、PC製の梁の端部が顎部に支持され、梁にプレストレスを導入するPC鋼線が現場打ち鉄筋コンクリートの連結部を貫通して隣り合う梁に達することにより、梁同士が連結部を介して一体接合されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した仕口部の接合構造では、コストが高く、工期が長くなりがちな上に、鉛直耐震性に劣るという問題があった。
【0005】
そこで、低コスト且つ短工期で耐震性に優れた仕口部の接合構造及び接合工法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る仕口部の接合構造は、仕口部の接合構造であって、プレキャストコンクリート製の下部柱と、前記下部柱の主筋を貫通させる貫通孔が形成され、前記下部柱の上端に設けられた鉄筋コンクリート製の複数の梁と、前記仕口部を塞ぐように敷設されたデッキプレートと、前記デッキプレート上に立設されたプレキャストコンクリート製の上部柱と、前記デッキプレートに設けられ、前記下部柱の主筋及び前記上部柱の主筋をグラウト接合するスリーブと、を備え、前記仕口部には、コンクリートが打設されている。
【0007】
また、本発明に係る仕口部の接合構造は、前記下部柱の上方の仕口部を挟んで対向する前記梁の梁主筋同士を接合するジョイントをさらに備えていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る仕口部の接合構造は、前記デッキプレートと前記仕口部との隙間には、モルタルが充填されていることが好ましい。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る仕口部の接合工法は、仕口部の接合工法であって、プレキャストコンクリート製の下部柱を設け、前記下部柱の主筋を貫通孔に貫通させた状態で、前記下部柱の上端に鉄筋コンクリート製の複数の梁を設け、前記下部柱の主筋をデッキプレートのスリーブに挿通させた状態で、前記仕口部を塞ぐように前記デッキプレートを敷設し、前記仕口部にコンクリートを打設し、前記スリーブに前記上部柱の主筋に挿通させた状態で、前記デッキプレート上にプレキャストコンクリート製の上部柱を設け、前記スリーブ内にグラウトを注入して、前記下部柱及び上部柱の主筋同士を接合する。
【0010】
また、本発明に係る仕口部の接合工法は、前記下部柱の上方の仕口部を挟んで対向する前記梁の梁主筋同士をジョイントで接合することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る仕口部の接合工法は、前記デッキプレートと前記仕口部との隙間にモルタルを注入して、前記デッキプレートと前記仕口部とを接合させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、下部柱、上部柱及び梁が、仕口部を介して低コスト、短工期且つ優れた耐震性で接合される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る仕口部の接合構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る仕口部の接合構造について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0015】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0016】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0017】
図1~3に示すように、上下に連続する下部柱1及び上部柱2並びに下部柱1に架設された梁3が、仕口部4を介して一体接合されている。なお、柱の上下関係は、相対的なものであり、例えば、3本の柱が上下に積層されている場合には、中央の柱は、最下段の柱に対しては上部柱であり、最上段の柱に対しては下部柱に相当する。また、
図1では、後述する上部柱2及びデッキプレート5を省略している。
【0018】
下部柱1は、プレキャストコンクリート(PC)製である。16本の柱主筋11は、下部柱1の上端面から突出して仕口部4を縦断するように延伸されている。下部柱1の断面形状は、例えば1000mm角の矩形である。
【0019】
梁3は、鉄筋コンクリート製である。梁3は、端部が隣り合う下部柱1の上端面に架設されるように配置されている。梁3は、例えば幅寸法700mm、高さ寸法900mmに設定される。梁3が下部柱1に支持される奥行寸法は、例えば250mmに設定される。隣り合う梁3の角部は、平面視で下部柱1の対角線に沿って面取りされている。梁3の端部には、梁3を上下に貫通する断面円状の貫通孔31及び断面半円状の溝部32が形成されている。貫通孔31に、柱主筋11が挿通されている。また、隣り合う梁3の溝部32が組み合わさることにより、断面円状の貫通孔31を構成する。
【0020】
仕口部4を挟んで対向する梁3の梁主筋33同士が、機械式ジョイント34で接合されている。また、梁3の外周面に切り欠きを設け、隣り合う梁3の切り欠きに接合キーを挿入しても構わない。なお、梁3には、図示しないスターラップや梁3にプレストレスを付与する緊張材等が含まれている。
【0021】
仕口部4を塞ぐようにデッキプレート5が敷設されている。デッキプレート5には、下部柱1の柱主筋11及び上部柱2の柱主筋21を挿通するスリーブ51が設けられている。柱主筋11、21は、スリーブ51を介してグラウト接合されている。
【0022】
仕口部4には、コンクリートCが打設されている。また、床6は、梁3に架設された図示しないデッキ上に、梁3とデッキプレート5との隙間を介してコンクリートCが打設されることにより形成されている。
【0023】
上部柱2は、PC製である。上部柱2は、デッキプレート5上に立設されている。上部柱2の下部(上部柱2とデッキプレート5との隙間)には、モルタルMが充填されて上部柱2とデッキプレート5とが一体接合されている。上部柱2の断面形状は、例えば1000mm角の矩形である。
【0024】
次に、仕口部4を接合する手順について、図面に基づいて説明する。
【0025】
PC製の下部柱1を設ける(S1)。下部柱1は、例えば図示しない基礎や下部柱1の下方に構築された仕口部4等に立設される。
【0026】
次に、
図3に示すように、柱主筋11を貫通孔31に貫通させた状態で、下部柱1の上端に4本の梁3の端部をそれぞれ載置し(S2)、その後、仕口部4を挟んで対向する梁3の梁主筋33同士を機械式ジョイント34で接合させる(S3)。これにより、仕口部4の水平耐震性が向上する。
【0027】
次に、仕口部4を塞ぐようにデッキプレート5を敷設する(S4)。このとき、柱主筋11の上部は、仕口部4を縦断してスリーブ51内に到達している。
【0028】
次に、仕口部4にコンクリートCを打設する(S5)。また、仕口部4のコンクリート打設と並行して、梁3とデッキプレート5との隙間を介して梁3に架設された図示しないデッキ上にコンクリートCが打設されて、床6が形成される。
【0029】
仕口部4のコンクリート硬化後に、デッキプレート5上に上部柱2を設ける(S6)。このとき、上部柱2の柱主筋21の下部が、スリーブ51に挿通されている。
【0030】
次に、スリーブ51内にグラウトを注入して、柱主筋11、21同士を接合する(S7)。これにより、仕口部4の鉛直耐震性が向上する。
【0031】
次に、上部柱2とデッキプレート5との隙間にモルタルMを注入して(S8)、上部柱2と仕口部4とが一体接合されている。
【0032】
このようして、本実施形態に係る仕口部4の接合構造は、仕口部4の接合構造であって、PC製の下部柱1と、柱主筋11を貫通させる貫通孔31が形成され、下部柱1の上端に設けられた鉄筋コンクリート製の複数の梁3と、仕口部4を塞ぐように敷設されたデッキプレート5と、デッキプレート5上に立設されたPC製の上部柱2と、デッキプレート5に設けられ、柱主筋11、21をグラウト接合するスリーブ51と、を備え、仕口部4には、コンクリートCが打設されている構成とした。
【0033】
この構成により、下部柱1、上部柱2及び梁3が、仕口部4を介して低コスト、短工期且つ優れた耐震性で接合される。
【0034】
このようして、本実施形態に係る仕口部4の接合工法は、仕口部4の接合工法であって、PC製の下部柱1を設け、柱主筋11を貫通孔31に貫通させた状態で、下部柱1の上端に鉄筋コンクリート製の複数の梁3を設け、柱主筋11をデッキプレート5のスリーブ51に挿通させた状態で、仕口部4を塞ぐようにデッキプレート5を敷設し、仕口部4にコンクリートCを打設し、スリーブ51に柱主筋21に挿通させた状態で、デッキプレート5上にPC製の上部柱2を設け、スリーブ51内にグラウトを注入して、柱主筋11、21を接合する構成とした。
【0035】
この構成により、下部柱1、上部柱2及び梁3が、仕口部4を介して低コスト、短工期且つ優れた耐震性で接合される。
【0036】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0037】
1 :下部柱
11 :柱主筋
2 :上部柱
21 :柱主筋
3 :梁
31 :貫通孔
32 :溝部
33 :梁主筋
34 :機械式ジョイント
4 :仕口部
5 :デッキプレート
51 :スリーブ
6 :床
C :コンクリート