(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163791
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20221020BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L25/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068829
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】入江 康行
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC063
4J002CG011
4J002CG012
4J002EU176
4J002FD056
4J002FD067
4J002FD168
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】透明性に優れ且つ複屈折が小さいポリカーボネート樹脂組成物。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を10~90質量部含有し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)中のスチレン由来の単位の量が75質量%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を10~90質量部含有し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)中のスチレンに由来する単位の量が75質量%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含む請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はメチル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
【化2】
のいずれかを示し、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子Cと結合し、置換基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
【請求項3】
樹脂組成物から成形された1mm厚の成形体のヘイズが10%以下である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
複屈折が低減された請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
【請求項6】
光学用成形体である請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
ディスプレイ装置の前面部材である請求項5または6に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、透明性に優れ且つ複屈折が小さいポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性等に優れ、これらの特性のバランスも良好であることから、各種の分野で広く使用されている。特にビスフェノール化合物を原料としたポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れ、軽く割れにくいという利点があることから、ガラスの代替材料として、自動車部品や建材、またレンズ等の光学用部品に採用されている。また、近年では、スマートホン等の各種携帯端末、タブレット型パソコン、カーナビやカーオーディオ、携帯ゲーム機、デジタルカメラ等に利用されるディスプレイ装置のパネル用部材、特にタッチパネル等の前面部材等としても大いに利用されている。
【0003】
樹脂を光学部材とする場合に考慮しなければならない光学特性は、透明性に加えて、複屈折が重要である。透明性に優れていても大きな複屈折性を持つことは好ましくない。特に、カメラ、液晶表示パネル等の各種ディスプレイ装置、プロジェクター等において、複屈折が大きい光学部材が光路中に存在すると、画質や信号読み取り性能に悪影響を及ぼすため、複屈折性をできるだけ小さく抑えた透明樹脂が強く要求される。
一般的なポリカーボネート樹脂は複屈折が大きいので、例えば、ディスプレイ装置の前面部材では、複屈折が大きいと位相差ムラが発生し、虹模様が生じたり、偏光サングラスをかけて画面を見た場合には虹模様がさらに酷くなって視認不可となる等、視認性の低下、意匠性(見栄え)が著しく低下する問題がある。汎用のビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂は、複屈折が大きく、この問題が顕著である。
【0004】
従来から、ポリカーボネート樹脂の複屈折を低減するために様々な手法が検討されており、樹脂自身を特定構造のビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂を使用することが知られており、例えば、特許文献1では、スピロビスインダンビスフェノールをビスフェノールAと共重合した特殊なポリカーボネート共重合体が、複屈折が小さいことが開示されている。しかし、このような特殊な樹脂は、汎用の樹脂ではないので、その特性(機械特性)や成形条件が特殊になる他、価格面からもその使用には制限がある。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂が有する正の複屈折特性を、負の複屈折特性を有する樹脂をブレンドすることにより、複屈折を低減する技術も提案されている。
本出願人は、特許文献2にて、ポリカーボネート樹脂(A)にα,β-不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)、具体的にはスチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)を配合した樹脂組成物が低複屈折性であることを提案した。しかしながら、このものは透明性と低複屈折性の両者を、近年のハイエンドな製品の要求されるような高度なレベルでバランスよく達成するものでは必ずしもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-313035公報
【特許文献2】特開2015-143985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したSMA樹脂のような負の複屈折を有する樹脂を、正の複屈折特性をもつポリカーボネート樹脂に配合することは複屈折の改良には有効ではある。しかし、SMA樹脂はポリカーボネート樹脂とは基本的には非相溶であり、これからなる樹脂組成物はポリカーボネート樹脂のマトリックスの海にSMA樹脂が島状に存在するモルフォロジーを形成し、両者の屈折率には差があるのでSMA樹脂の島に入射した光は直進せずに屈折して散乱することになり、透明性(ヘイズ)を低下させることになる。
本発明は、上記したような状況に鑑みなされたものであり、その目的(課題)は透明性(ヘイズ)に優れ且つ複屈折が小さいポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的(課題)を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)が負の複屈折性を有するが、その中でもスチレン量が多いAS樹脂が、負の複屈折性を示し且つ屈折率も高くなって、ポリカーボネート樹脂との屈折率が同等となるとの知見を得、これを配合したポリカーボネート樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物および成形体に関する。
【0009】
1.ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を10~90質量部含有し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)中のスチレンに由来する単位の量が75質量%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.ポリカーボネート樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含む上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はメチル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
【化2】
のいずれかを示し、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子Cと結合し、置換基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
【0010】
3.樹脂組成物から成形された1mm厚の成形体のヘイズが10%以下である上記1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.複屈折が低減された上記1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5.上記1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
6.光学用成形体である上記5に記載の成形体。
7.ディスプレイ装置の前面部材である上記5または6に記載の成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、複屈折が小さく、透明性が高く低いヘイズ値を達成することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が含有するスチレン-アクリロニトリル共重合体(B)はスチレン由来の単位の量が75質量%以上と大きいので、共重合体の側鎖のベンゼン量が多いため高い負の複屈折性を有し、またスチレン由来の単位の量が大きいと屈折率も高くなり、官能基を有するアクリロニトリルの量を25質量%以下と少なくすることでヘイズを低下させることができる。そして、これらの結果として、ポリカーボネート樹脂(A)の正の複屈折性を十分相殺しながら、屈折率がポリカーボネート樹脂(A)と同程度となり、透明性と低複屈折性の両方を同時に高いレベルで達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分等につき、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いてその前後を数値又は物性値で挟んで範囲を表現する場合、その前後の値を含む範囲を意味する。
【0013】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を10~90質量部含有し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)中のスチレンに由来する単位の量が75質量%以上であることを特徴とする。
【0014】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂(A)としては、主鎖中に芳香環を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が、複屈折の低減効果が大きい点で好ましい。
【0015】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0016】
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(則ち、ビスフェノールA)等が挙げられる。
【0017】
本発明に使用する特に好適な芳香族ポリカーボネート樹脂としては、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)と屈折率が同じレベルになりやすい点で、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)が挙げられる。
【化3】
(一般式(1)中、R
1はメチル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
【化4】
のいずれかを示し、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子Cと結合して置換基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
【0018】
上記一般式(1)において、R1はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R2及びR3は特には水素原子であることが好ましい。
【0019】
また、Xは、
【化5】
である場合、R
4及びR
5の両方がメチル基であるイソプロピリデン基であることが好ましく、また、Xが、
【化6】
の場合、Zは、上記一般式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素原子Cと結合して、炭素数6~12の二価の脂環式炭化水素基を形成するが、かかる二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらにメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で示されるポリカーボネート樹脂(A1)としての好ましい具体例としては、以下のイ)~ニ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ちR1がメチル基、R2とR3が水素原子、Xがイソプロピリデン基である、ビスフェノールC由来の構造単位を有するもの、
ロ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン構造単位、即ちR1がメチル基、R2とR3が水素原子、Xがシクロドデシリデン基である構造単位を有するもの。
ハ)2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちR1がメチル基、R2とR3がメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ニ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン構造単位、即ちR1がメチル基、R2とR3が水素原子、Xがシクロヘキシリデン基である構造単位を有するもの、
これらの中で、より好ましくは上記イ)、ロ)またはハ)、さらに好ましくは上記イ)またはロ)、特には上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0021】
これらポリカーボネート樹脂は、それぞれ、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
【0022】
ポリカーボネート樹脂(A1)は、上記一般式(1)以外の他のカーボネート単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂であってもよい。他のカーボネート単位のため原料のジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
共重合ポリカーボネート樹脂とする場合は、上記一般式(1)で表される構造単位が50モル%超であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、中でも90モル%以上、特には95モル%以上であることが好ましい。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(A1)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0025】
ポリカーボネート樹脂(A)として上記ポリカーボネート樹脂(A1)を使用する場合、ポリカーボネート樹脂(A1)以外の他のポリカーボネート樹脂(A2)と併用することも好ましい。他のポリカーボネート樹脂(A2)としては、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)を出発原料とするポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0026】
ポリカーボネート樹脂(A)として、他のポリカーボネート樹脂(A2)を併せて含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量%中、50質量%未満が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、中でも25質量%以下、20質量%以下、特には15質量%以下であることが好ましい。
なお、ここでポリカーボネート樹脂(A1)は、共重合単位としてビスフェノールA由来単位を含んでいる場合でも、上記一般式(1)で表される構造単位を有する限り、ポリカーボネート樹脂(A1)として扱われる。
【0027】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量Mvは、10000~50000の範囲にあることが好ましく、より好ましくは45000以下、さらに好ましくは40000以下、特に好ましくは38000以下である。光学用成形体の場合は、10000~30000であることが好ましく、粘度平均分子量がこのような範囲にあることで、流動性(成形加工性)、色相、機械的強度に優れ、光学用成形体に好適となる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0028】
なお、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量Mvは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、η=1.23×10
-4Mv
0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[η
sp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0029】
[スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、スチレン由来の単位の量が75質量%以上であるスチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を含有する。
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)は、アクリロニトリルとスチレン系単量体との共重合体である。
【0030】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0031】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)は、アクリロニトリルとスチレン系単量体以外の他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。スチレン系単量体とアクリロニトリル以外の他の共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体や、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。
これらの中では(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく挙げられ、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にメチルメタアクリレートを挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレートの表記はメタクリレート及びアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。
【0032】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)は、全100質量%中、スチレン由来の単位の量が75質量%以上であり、アクリロニトリル単量体に由来する単位の量は25質量%以下である。共重合体(B)中のスチレン由来の単位の量を75質量%以上とすることで、高度の透明性、具体的には1mm厚でのヘイズが好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、特には5%以下という優れた透明性と、低い複屈折値(リタデーション)を達成することが可能となる。
【0033】
スチレン由来単位の量は、好ましくは77質量%以上であり、より好ましくは78質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、中でも88質量%以下、特には85質量%以下が好ましい。アクリロニトリル単量体に由来する単位の量は、好ましくは23質量%以下、より好ましくは22質量%以下であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、中でも12質量%以上、特には15質量%以上が好ましい。
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)は、共重合体でありスチレンホモポリマーを含まない。スチレンホモポリマー(ポリスチレン)では透明性が悪く、前記したようなヘイズとすることは困難である。
【0034】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)が、アクリロニトリルとスチレン系単量体以外の他の共重合可能な単量体との共重合体である場合、スチレン系単量体とアクリロニトリル以外の他の共重合可能な単量体に由来する単位の量は、共重合体(B)100質量%中、20質量%以下が好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5質量%以下、中でも3質量%以下、中でも2質量%以下、特に1質量%以下であることが好ましい。
【0035】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)は、通常AS樹脂とも言われるアクリロニトリルとスチレンからなるアクリロニトリル-スチレン樹脂が好ましい。
【0036】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)を製造する方法は、制限はなく、公知の方法が採用でき、例えば、塊状重合、乳化重合、溶液重合、懸濁重合等の方法が用いられる。
【0037】
スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10~90質量部である。このような範囲にあることで、透明性(ヘイズ)と低複屈折を高いレベルで両立させることができる。含有量が10質量部未満では複屈折改善効果が低く、90質量部を超えるとヘイズが悪化することに加え耐熱性が低下しやすい。スチレン-アクリロニトリル共重合体(B)の含有量は、好ましくは12質量部以上であり、13質量部以上がより好ましく、好ましくは80質量部以下であり、より好ましくは70質量部以下、さらには60質量部以下、特には50質量部以下であることが好ましい。
【0038】
[添加剤等]
樹脂組成物は、添加剤、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤(滴下防止剤)、蛍光増白剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は1種または2種以上を配合してもよい。
【0039】
[紫外線吸収剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0040】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、中でも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0041】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0042】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0044】
[安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましく、安定剤としてはリン系安定剤やフェノール系安定剤が好ましい。
【0045】
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物や有機ホスフェート化合物が特に好ましい。
【0046】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0047】
有機ホスフェート化合物としては、有機ホスフェート金属塩も含め好適に使用できる。具体的にはジステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩とモノステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩の混合物、モノ-及びジ-ステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0048】
リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0049】
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0050】
フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0052】
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フェノール系安定剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0053】
[離型剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物が好ましい。
【0054】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、重量平均分子量が、700~10000、更には900~8000のものが好ましい。
【0055】
脂肪酸エステル系化合物としては、飽和又は不飽和の1価又は2価の脂肪族カルボン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられる。中でも、炭素数11~28、好ましくは炭素数17~21の脂肪酸とアルコールで構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。
【0056】
脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、脂肪酸は、脂環式であってもよい。
アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0057】
脂肪酸エステル系化合物の具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン-12-ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ぺンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート、ステアリルステアレート、エチレングリコールモンタン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~3質量部であるが、0.2~2.5質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.25~2質量部である。0.1質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下しやすく、一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下しやすく、また成形体表面に曇りが生じやすい。
【0059】
[樹脂組成物の製造]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)とスチレン-アクリロニトリル共重合体(B)、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
【0060】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記した樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して各種成形体を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形体にすることもできる。
【0061】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は透明性に優れており、そのヘイズとしては、樹脂組成物から成形された1mm厚の成形体のヘイズが好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下、中でも6%以下であり、特に好ましくは5%以下である。
なお、ヘイズ値の測定法の具体的な方法は、実施例に記載する通りである。
【0062】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性に優れ且つ複屈折が極めて低減されており、また成形時の流動性や金型汚染の問題もない。従って、その用途としては光学用成形体、具体的には各種レンズ、例えば、各種カメラ、望遠鏡、顕微鏡、プロジェクター、光学測定装置等のレンズ、各種光ディスク、家庭用テレビ、パソコン用ディスプレイ、カーナビ、カーオーディオ等の車載ディスプレイ装置、スマートホン、ヘッドマウントディスプレイ、バーコードリーダー、スキャナー等に用いるディスプレイ装置のパネル部材やフィルム等が好ましく挙げられる。特に、スマートホン等の各種携帯端末、タブレット型パソコン、カーナビやカーオーディオ、携帯ゲーム機、デジタルカメラ等に利用されるディスプレイ装置のパネル用部材、特にはディスプレイ装置の前面部材として好適に使用できる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0064】
以下の実施例及び比較例で使用した原料は、以下の表1の通りである。
【表1】
【0065】
(実施例1~7、比較例1~5)
[樹脂組成物ペレットの製造]
表1に記載の各原料を、表2に示す割合(質量部)で配合し、タンブラーで20分混合後、スクリュー径50mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS50-34V」)により、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数80rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを、90℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業社製「SE50DUZ」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で射出成形を行って、111mm×36mm、厚みが1mmと3mmの2段のプレート状試験片を作成した。
得られた試験片について、以下の評価を行い、結果を表2に示した。
【0066】
[ヘイズ(単位:%)]
上記で得られた2段プレート状試験片の1mm厚部について、分光ヘイズメーター(日本電色工業社製「SH7000」)を用い、JIS K7375に基づき、ヘイズ(単位:%)を測定した。
【0067】
[複屈折(単位:nm)]
上記で得られた2段プレート状試験片の1mm厚部について、測定波長525nm,543nm,575nmを用いて、ワイドレンジ2次元複屈折評価システム(Photonic Lattice社製「WPA-200」)により、複屈折(単位:nm)を測定した。
以上の評価結果を、以下の表2に示す。
【0068】