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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163794
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221020BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068836
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505CC05
5H505DD03
5H505EE49
5H505EE56
5H505HB01
5H505JJ26
5H505LL07
5H505LL22
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA07Z
5H770LA01W
5H770LA02W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】モータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の変動を好適に抑制できるようにする。
【解決手段】直流電源からの電力をモータ制御装置に供給する電力供給路の電圧変動の抑制を行う処理装置であって、一又は複数の所定の受動素子を有する回路要素と、該回路要素への電流供給を制御する半導体スイッチとを有する所定ユニットを複数含み、電力供給路に接続されるフィルタ回路と、電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、フィルタ回路に含まれる複数の所定ユニットの半導体スイッチのスイッチングを制御する制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電力をモータ制御装置に供給する電力供給路の電圧変動の抑制を行う処理装置であって、
一又は複数の所定の受動素子を有する回路要素と、該回路要素への電流供給を制御する半導体スイッチとを有する所定ユニットを複数含み、前記電力供給路に接続されるフィルタ回路と、
前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記フィルタ回路に含まれる前記複数の所定ユニットの前記半導体スイッチのスイッチングを制御する制御部と、
を備える、処理装置。
【請求項2】
前記フィルタ回路は、前記所定ユニットにおける前記半導体スイッチのスイッチングにより回路全体の共振特性を調整可能に構成され、
前記制御部は、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記モータ制御装置により駆動電流が供給されるモータの回転数、又は、該モータ制御装置におけるPWM周波数に基づいて、前記半導体スイッチのスイッチングを制御する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記フィルタ回路を含む前記電力供給路の共振周波数が、前記モータの回転速度又は前記モータ制御装置のPWM周波数に基づく前記駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲から外れるように、前記複数の所定ユニットにおける前記半導体スイッチのスイッチングを制御する、
請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動を検知し、その検知結果に基づいて、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記半導体スイッチのスイッチングを制御することにより前記フィルタ回路を含む前記電力供給路のインピーダンスを調整する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記複数の所定ユニットは、前記電力供給路を形成するプラス側の配線とマイナス側の配線との間に、該複数の所定ユニットのそれぞれが配置されて構成される、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記複数の所定ユニットは、前記電力供給路を形成するプラス側の配線及びマイナス側の配線の一方の配線に、該複数の所定ユニットのそれぞれが配置されて構成される、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記電力供給路には、複数の前記モータ制御装置が接続され、前記直流電源からの電力が該複数のモータ制御装置に分配供給される、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記処理装置は、一対の入力端子と、該一対の入力端子とそれぞれ電気的に接続された一対の出力端子と、を備え、前記電力供給路を形成するプラス側の配線及びマイナス側の配線に該一対の入力端子と該一対の出力端子が接続されるコネクタである、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
前記処理装置は、前記直流電源に組み込まれ、前記フィルタ回路の出力が前記電力供給
路に出力されるように構成される、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記モータ制御装置は、供給される直流を、サーボモータを駆動するための交流に変換するためのインバータ回路を有し、
前記処理装置は、前記モータ制御装置に組み込まれ、前記フィルタ回路の出力が前記インバータ回路に出力されるように構成される、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源からの電力をモータ制御装置に供給する電力供給路の電圧変動の抑制を行う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では、複数の電動機が、離れた場所に配置された複数のサーボドライバにてPWM駆動されるシステム(ロボットとその制御装置とで構成されたシステム等)が使用されている。そのようなシステムには、電動機・サーボドライバ間の長いケーブルからの放射ノイズを低減するために、スイッチングスピードを速くできない、電動機・サーボドライバ間の接続に多数のケーブルが必要とされる、といった問題がある。
【0003】
各電動機の近傍に、サーボドライバからコンバータを除去した装置(以下、モータ制御装置と表記する)を配置し、1つの直流電源装置からDCバスにて各モータ制御装置に電力を供給する構成を採用しておけば、上記問題が発生しないようにすることが出来る。ただし、この構成を採用したシステムでは、DCバス側のLC回路とモータ制御装置側とが干渉してDCバスの電圧が変動(振動)する場合がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】横尾真志,近藤圭一郎,「直流電気鉄道車両におけるベクトル制御された誘導電動機駆動システムのダンピング制御系設計法」、電気学会論文誌D,Vol.135 No.6 pp.622-631(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直流電源装置からモータ制御装置に至るまでの電力供給路(上記のDCバス等)における電圧変動の要因は様々である。例えば、モータ制御装置によって駆動電流が供給されるモータの挙動に起因して、電力供給路における共振が生じ、電圧変動に繋がる場合がある。本願発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、モータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の変動を好適に抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る処理装置は、直流電源からの電力をモータ制御装置に供給する電力供給路の電圧変動の抑制を行う処理装置であって、一又は複数の所定の受動素子を有する回路要素と、該回路要素への電流供給を制御する半導体スイッチとを有する所定ユニットを複数含み、前記電力供給路に接続されるフィルタ回路と、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記フィルタ回路に含まれる前記複数の所定ユニットの前記半導体スイッチのスイッチングを制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、上記処理装置において、前記フィルタ回路は、前記所定ユニットにおける前記半導体スイッチのスイッチングにより回路全体の共振特性を調整可能に構成されてもよく、前記制御部は、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記モータ制御装置により駆動電流が供給されるモータの回転数、又は、該モータ制御装置におけるPWM周波数に基づいて、前記半導体スイッチのスイッチングを制御してもよい。
【0008】
モータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧変動が生じる要因の一つとして、モ
ータ制御装置により生成される駆動電流の周波数と関連するモータの回転速度やモータ制御装置におけるPWM周波数が挙げられる。モータの回転速度の変動やモータ制御装置におけるPWM周波数に伴う駆動電流の周波数が、電力供給路の共振周波数の近傍の値となると電気的な共振により電圧変動が生じる恐れがある。そこで、上記処理装置は、電力供給路に接続されるフィルタ回路を有し、制御部によってフィルタ回路に含まれる複数の所定ユニットのそれぞれの半導体スイッチのスイッチングが制御される。
【0009】
各所定ユニットは、回路要素と半導体スイッチの組合せを有しており、半導体スイッチがスイッチングされることで回路要素への供給電流が制御される。回路要素としては、キャパシタンス、インダクタンス、抵抗等の受動素子が例示でき、キャパシタンス、インダクタンス、抵抗の何れかを含み、又は、キャパシタンス、インダクタンス、抵抗を適宜組み合わせて含んでもよい。その結果、このような所定ユニットを複数有するフィルタ回路は、半導体スイッチがスイッチングされることで、フィルタ回路全体の共振特性を調整することが可能である。共振特性としては、共振周波数やQ値が例示できる。したがって、上記のように制御部により半導体スイッチのスイッチングを制御することで、例えば、フィルタ回路の共振周波数を、モータの回転速度やモータ制御装置におけるPWM周波数に関連する駆動電流の周波数から十分に遠ざけた周波数とし、以て電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動を抑制することが可能となる。
【0010】
ここで、上記処理装置において、前記制御部は、前記フィルタ回路を含む前記電力供給路の共振周波数が、前記モータの回転速度又はモータ制御装置におけるPWM周波数に基づく前記駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲から外れるように、前記複数の所定ユニットにおける前記半導体スイッチのスイッチングを制御するように構成されてもよい。この構成により、より好適に電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動を抑制することが可能となる。
【0011】
また、別法として、上記処理装置において、前記制御部は、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動を検知し、その検知結果に基づいて、前記電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記半導体スイッチのスイッチングを制御することにより前記フィルタ回路を含む前記電力供給路のインピーダンスを調整してもよい。電力供給路の電圧の変動は、モータ制御装置により制御されるモータ側(例えば、インバータ回路とモータ本体とからなる部分)のインピーダンスが、電力供給路側のインピーダンスよりも小さいときに生じる場合がある。そこで半導体スイッチのスイッチング制御によって、電力供給路側のインピーダンスのピーク値を小さくし、以て電力供給路の電圧の変動を抑制することができる。
【0012】
ここで、上述までの処理装置において、フィルタ回路における複数の所定ユニットの具体的な構成は、特定の構成に限定されない。例えば、前記複数の所定ユニットは、前記電力供給路を形成するプラス側の配線とマイナス側の配線との間に、該複数の所定ユニットのそれぞれが配置されて構成されてもよい。例えば、所定ユニットにおける回路要素と半導体スイッチの形態に応じて、複数の所定ユニットのそれぞれは、プラス側の配線とマイナス側の配線との間に、並列に配置されてもよく又は直列に配置されてもよい。また、別法として、前記複数の所定ユニットは、前記電力供給路を形成するプラス側の配線及びマイナス側の配線の一方の配線に、該複数の所定ユニットのそれぞれが配置されて構成されてもよい。例えば、所定ユニットにおける回路要素と半導体スイッチの形態に応じて、複数の所定ユニットのそれぞれは、プラス側の配線とマイナス側の配線の一方の配線に、並列に配置されてもよく又は直列に配置されてもよい。なお、フィルタ回路に含める所定ユニットは、全て同じ種類の回路要素と半導体スイッチとの組合せで構成されてもよく、別法として、2種類以上の回路要素と半導体スイッチとの組合せで構成されてもよい。
【0013】
ここで、上述までの処理装置において、前記電力供給路には、複数の前記モータ制御装置が接続され、前記直流電源からの電力が該複数のモータ制御装置に分配供給されてもよい。すなわち、電力供給路を介して複数のモータ制御装置に直流電力を供給する構成に対しても本願の処理装置を適用でき、その上で半導体スイッチのスイッチングが制御されることで、電力供給路における直流の電圧変動又は電流変動を抑制することが可能となる。
【0014】
ここで、上述までの処理装置の具体的な態様を例示する。第1の態様として、前記処理装置は、一対の入力端子と、該一対の入力端子とそれぞれ電気的に接続された一対の出力端子と、を備え、前記電力供給路を形成するプラス側の配線及びマイナス側の配線に該一対の入力端子と該一対の出力端子が接続されるコネクタであってもよい。第2の態様として、前記処理装置は、前記直流電源に組み込まれ、前記フィルタ回路の出力が前記電力供給路に出力されるように構成されてもよい。第3の態様として、前記モータ制御装置は、供給される直流を、サーボモータを駆動するための交流に変換するためのインバータ回路を有する場合、前記処理装置は、前記モータ制御装置に組み込まれ、前記フィルタ回路の出力が前記インバータ回路に出力されるように構成されてもよい。なお、本願の処理装置は、上記の3つの態様以外の態様により、具体的に構成されても構わない。
【発明の効果】
【0015】
モータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の変動を好適に抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成の説明図である。
図2】サーボDC給電システム内のモータ制御装置の概略構成の説明図である。
図3】サーボDC給電システムに用いられている直流電源装置の概略構成を示す第1の図である。
図4】直流電源装置に組み込まれた処理装置で行われる電圧変動を抑制するための制御フローを示す図である。
図5】サーボDC給電システムに用いられている直流電源装置の概略構成を示す第2の図である。
図6】サーボDC給電システムの等価回路の説明図である。
図7図6に示した等価回路が不安定となる領域を説明するための図である。
図8】フィルタ回路の機能を説明するための図である。
図9】サーボDC給電システム内のモータ制御装置の他の概略構成を示す第1の図である。
図10】サーボDC給電システム内のモータ制御装置の他の概略構成を示す第2の図である。
図11】本発明の他の実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成の第1の図である。
図12】本発明の他の実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成の第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成を示し、図2に、サーボDC給電システムに含まれるモータ制御装置10の概略構成を示す。
【0018】
<第1の実施形態>
図1に示してあるように、本実施形態に係るサーボDC給電システムは、直流電源装置
30と複数のモータ制御装置10との間を、電力供給路35にて接続したシステムである。直流電源装置30は、所定の直流電圧を出力する電源であり、内部に電源部31を有する(後述の図6を参照)。電源部31は、所定の直流電圧を出力するユニットである。電源部31として、三相交流電源50からの三相交流を直流電圧に変換するユニットであってもよく、又は、電源部31は、単相交流を直流電圧に変換するユニットであってもよい。また、電源部31は、ダイオードを組み合わせた整流回路(例えば、全波整流回路)であっても、スイッチング素子が用いられたAC-DCコンバータ(例えば、電源回生コンバータ)であってもよい。さらに、電源部31は、二次電池であってもよい。モータ制御装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)等の上位装置からの指令(位置指令、速度指令等)に従って、サーボモータ40(以下、単に、モータ40とも表記する)を制御する装置である。図2に示してあるように、モータ制御装置10は、インバータ回路11と制御部12とを備えている。
【0019】
インバータ回路11は、電力供給路35を介して入力される直流電源装置30からの直流電圧を三相交流に変換するための回路である。インバータ回路11は、プラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に、U相用のレグ、V相用のレグ及びW相用のレグを並列接続した構成を有しており、モータ制御装置10には、インバータ回路11の各レグの出力電流を測定するための電流センサ28が設けられている。
【0020】
制御部12は、上位装置(PLC等)からの指令に従って、インバータ回路11をPWM(Pulse Width Modulation)制御するユニットである。制御部12は、プロセッサ(マイクロコントローラ、CPU等)とその周辺回路とから構成されており、制御部12は、各電流センサ28からの信号、モータ40に取り付けられたエンコーダ41(アブソリュートエンコーダやインクリメンタルエンコーダ)からの信号等が入力されている。
【0021】
図1に示すように、電力供給路35は、直流電源装置30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の各モータ制御装置10に分配供給できるように複数の電力ケーブルを組み合わせた給電路である。電力供給路35の各モータ制御装置10との接続部分(各モータ制御装置10の電源端子間)には、通常、平滑コンデンサ18が設けられる。
【0022】
図3に、本実施形態に係るサーボDC給電システムに用いられているモータ制御装置10の概略構成を示す。図示してあるように、モータ制御装置10は、インバータ回路11とフィルタ回路32とを備える。フィルタ回路32は、モータ制御装置10において電力供給路35と接続される位置に配置され、電力供給路35から供給される直流電力がフィルタ回路32を通して、インバータ回路11に出力される構成となっている。
【0023】
フィルタ回路32は、電力供給路35における直流を安定化するための回路である。図示してあるように、フィルタ回路32は、制御回路21と、プラス側の電力線及びマイナス側の電力線間に配置された複数の安定化ユニット81とを備えており(図3に示す例では3個の安定化ユニット81が含まれる)、当該安定化ユニットのそれぞれは、コンデンサ23と半導体スイッチとして機能するトランジスタ24の直列接続体と、トランジスタ24の駆動回路22とを有している。駆動回路22は、制御回路21からの制御信号に応じて、トランジスタ24のゲートに電圧印加を行うことで、トランジスタ24を半導体スイッチとして機能させる回路である。
【0024】
制御回路21には、上位装置からモータ制御装置10の制御部12に付与される指令に含まれるモータ40の回転速度に関連する情報が入力され、制御回路21はその回転速度に関連する情報に基づいて、複数の安定化ユニット81のそれぞれの駆動回路22に対して電圧印加を行い、対応するトランジスタ24のスイッチングを制御するように構成されている。
【0025】
ここで、電力供給路35において、L1を電力供給路35のインダクタンス、C1を電力供給路35のキャパシタンスと平滑コンデンサ18のキャパシタンスの合成キャパシタンスとする。更に、フィルタ回路32における各安定化ユニット81に含まれる、受動素子であるコンデンサ23のキャパシタンスをC2とする。この結果、制御回路21によって1個の安定化ユニット81においてのみトランジスタ24がオンにされた場合(ケース1)、制御回路21によって2個の安定化ユニット81においてのみトランジスタ24がオンにされた場合(ケース2)、制御回路21によって全ての安定化ユニット81においてトランジスタ24がオンにされた場合(ケース3)の、電力供給路35の共振周波数は、それぞれ下記の通りとなる。
(ケース1)
【数1】

(ケース2)
【数2】

(ケース3)
【数3】

このとき、f3<f2<f1となる。
【0026】
このように制御回路21によってトランジスタ24のスイッチングが制御されることで、電力供給路35の共振周波数を制御することが可能となる。ここで、各モータ制御装置10における、制御回路21によるトランジスタ24のスイッチング制御について、図4に基づいて説明する。図4に示す処理は、制御回路21において所定の制御プログラムが所定間隔で繰返し実行されることで実現される。先ず、S101では、図1に示すサーボDC給電システムにおいて、各モータ制御装置10に対応するモータ40の速度情報(回転速度に関連する情報)が取得される。
【0027】
続いて、S102では、フィルタ回路32の共振周波数の調整が必要であるか否かが判定される。具体的には、モータ40の駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲の中に、現時点での各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態(オン状態もしくはオフ状態の何れかの状態)から導かれる電力供給路35の共振周波数が属している場合には、フィルタ回路32の共振周波数の調整が必要であると判定される。S102で肯定判定されると処理はS103へ進み、否定判定されるとS104へ進む。そして、S103では、電力供給路35の共振周波数が、モータ40の駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲から外れるように、フィルタ回路32における各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態を変更する。また、S104では、共振によ
る電力供給路35での電圧変動の恐れは低いため、フィルタ回路32における各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態は現状維持される。
【0028】
上記の通り、図4に示す制御に従って、電力供給路35の共振周波数が、モータ40の回転速度に基づく駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲から外れるように、制御回路21がトランジスタ24のスイッチングを制御することで、モータの駆動に関連して生じる直流電圧の共振に起因した、電力供給路35における電圧変動を効果的に回避することが可能となる。
【0029】
なお、フィルタ回路32における各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態を調整しても、モータ40の駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲の中に電力供給路35の共振周波数が含まれることを避けられない場合には、モータ40の駆動電流の周波数と電力供給路35の共振周波数とが可及的に離れた状態となるように、トランジスタ24のスイッチング状態を調整すればよい。
【0030】
なお、図4に示す制御では、制御回路21にはモータ40の回転速度に関連する情報が入力され、制御回路21はその回転速度に関連する情報に基づいて、トランジスタ24のスイッチングを制御するように構成されているが、その態様に代えて、制御回路21にはインバータ回路11におけるPWM周波数に関連する情報が渡されてもよい。そして、制御回路21はそのPWM周波数に関連する情報に基づいて、トランジスタ24のスイッチングを制御することで、インバータ回路11でのスイッチング動作に起因する電力供給路35の電圧変動を抑制することができる。
【0031】
<変形例>
直流電源装置32に組み込まれるフィルタ回路の変形例について、図5に基づいて説明する。本変形例のフィルタ回路32Aは、プラス側の電力線及びマイナス側の電力線の何れか一方に配置される。図5においては、電源部31からのプラス側の電力線にフィルタ回路32Aが配置されている。フィルタ回路32Aは、制御回路21と複数の安定化ユニット82とを備えており(図5に示す例では2個の安定化ユニット82が含まれる)、当該安定化ユニットのそれぞれは、受動素子であるインダクタンス25と半導体スイッチとして機能するトランジスタ24の並列接続体と、トランジスタ24の駆動回路22とを有している。フィルタ回路32Aにおいて、安定化ユニット82のぞれぞれは互いに並列に接続されている。制御回路21と駆動回路22については、上記の第1の実施形態と実質的に同じであるため詳細な説明は割愛する。
【0032】
本変形例においても、制御回路21にはモータ40の回転速度に関連する情報が入力され、その回転速度に関連する情報に基づいて、複数の安定化ユニット82のそれぞれの駆動回路22に対して電圧印加を行い、対応するトランジスタ24のスイッチングを制御するように構成されている。このような構成によっても、電力供給路35の共振周波数を制御することが可能となる。
【0033】
また、安定化ユニット82に含まれる受動素子としては、上述までのようにキャパシタンス、インダクタンスだけではなく、抵抗も含めてもよい。また、キャパシタンス、インダクタンス、抵抗を適宜組み合わせて、安定化ユニット82のための受動素子として採用してもよい。
【0034】
<第2の実施形態>
上記の実施形態では、トランジスタ24のスイッチング制御によって、電力供給路35の共振周波数を制御し、その電圧変動を抑制したが、本実施形態では、電力供給路35における直流の電圧変動又は電流変動を検知し、その検知結果に基づいてトランジスタ24
のスイッチング制御を行って、フィルタ回路32、32Aを含む電力供給路35のインピーダンスを調整し、電力供給路における電圧変動又は電流変動を抑制する。
【0035】
具体的には、本願開示のサーボDC給電システム(即ち、従来のサーボDC給電システム)について、モータ側(図1において複数のモータ制御装置10と複数のモータ40からなる部分)のインピーダンスをZmと表記すると、図6に示した等価回路で表すことができる。この図6において、L1は、電力供給路35のインダクタンス、rLは、L1の直列抵抗である。また、C1は、電力供給路35のキャパシタンスと平滑コンデンサ18のキャパシタンスの合成キャパシタンス、rCは、C1の直列抵抗である。
【0036】
この等価回路(図6)における電源側の出力インピーダンスのピーク値Zo-peakは、以下の式により表される。
【数4】

そして、図7に模式的に示してあるように、“Zo-peak>Zm”が成立する場合に、電力供給路35の電圧が不安定となる。従って、Zo-peak値を減少させれば、電力供給路35の電圧が不安定になること(変動すること)を抑止することができる。
【0037】
フィルタ回路32、32Aにおけるトランジスタ24を含む安定化ユニット81、82は、トランジスタ24のスイッチング制御によって、フィルタ回路32、32Aが接続されている電力供給路35のインピーダンスを変化させることが可能である。そこで、制御回路21は、電力供給路35の電圧変動又は電流変動を検知し、図8に示すように、その検知結果に基づいてZo-peak値がZmを下回るようにトランジスタ24のスイッチング制御を実行する。これにより、電力供給路35の電圧が不安定になること(変動すること)が抑止される。
【0038】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、フィルタ回路32、32Aはモータ制御装置10の中に組み込まれたが、本実施形態では、図9図10に示すように、フィルタ回路32、32Aは直流電源装置30の中に組み込まれる。フィルタ回路32、32Aについては、第1の実施形態に示したとおりである。図9においては、直流電源装置30にフィルタ回路32が組み込まれている。当該フィルタ回路32は、電力供給路35と接続される位置に配置され、電源部31から出力される直流電力がフィルタ回路32を通して、電力供給路35に出力される構成となっている。また、図10においては、直流電源装置30内のプラス側の電力線33pにフィルタ回路32Aが組み込まれている。当該フィルタ回路32Aは、電力供給路35のプラス側の配線33pと接続される位置に配置され、電源部31から出力される直流電力がフィルタ回路32Aを通して、電力供給路35に出力される構成となっている。なお、フィルタ回路32Aは直流電源装置30のマイナス側の配線33mに組み込まれてもよい。
【0039】
ここで、第3の実施形態における、制御回路21によるトランジスタ24のスイッチング制御について、上述の図4に基づいて説明する。先ず、S101では、図1に示すサーボDC給電システムにおいて、駆動される全てのモータ40の速度情報(回転速度に関連する情報)が取得される。具体的には、3台のモータ40に対応するモータ制御装置10のそれぞれから、各モータ40の速度情報が制御回路21に伝えられる。
【0040】
続いて、S102では、フィルタ回路32の共振周波数の調整が必要であるか否かが判定される。S102で肯定判定されると処理はS103へ進み、否定判定されるとS104へ進む。そして、S103では、電力供給路35の共振周波数が、3台のモータ40のそれぞれの駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲から外れるように、フィルタ回路32における各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態を変更する。また、S104では、共振による電力供給路35での電圧変動の恐れは低いため、フィルタ回路32における各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態は現状維持される。
【0041】
このように、電力供給路35の共振周波数が、モータ40の回転速度に基づく駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲から外れるように、制御回路21がトランジスタ24のスイッチングを制御することで、モータの駆動に関連して生じる直流電圧の共振に起因した、電力供給路35における電圧変動を効果的に回避することが可能となる。なお、フィルタ回路32における各安定化ユニット81のトランジスタ24のスイッチング状態を調整しても、3台のモータ40のそれぞれの駆動電流の周波数を中心とした所定の周波数範囲の中に電力供給路35の共振周波数が含まれることを避けられない場合には、3台のモータ40のそれぞれの駆動電流の周波数と電力供給路35の共振周波数とが可及的に離れた状態となるように、トランジスタ24のスイッチング状態を調整すればよい。また、3台のモータ40のうち電力供給路35の直流電圧の変動に支配的に影響を及ぼすモータがある場合(例えば、1台のモータ40が他のモータ40よりも駆動電流が大きい等)、当該モータ40の速度情報のみに基づいて、図4に示す制御を行うようにしてもよい。
【0042】
なお、本実施形態においても、制御回路21に入力される情報は、モータ40の回転速度に関連する情報に代えて、インバータ回路11におけるPWM周波数に関連する情報であってもよい。そして、制御回路21はそのPWM周波数に関連する情報に基づいて、トランジスタ24のスイッチングを制御することで、インバータ回路11でのスイッチング動作に起因する電力供給路35の電圧変動を抑制することができる。
【0043】
<第4の実施形態>
第1の実施形態では、フィルタ回路32、32Aは直流電源装置30の中に組み込まれたが、本実施形態では、図11図12に示すように、電力供給路35を構成するコネクタ20の中に組み込まれる。フィルタ回路32、32Aについては、第1の実施形態に示したとおりである。
【0044】
図11においては、電力供給路35に置かれるコネクタ20にフィルタ回路32が組み込まれている。コネクタ20は、上流側(直流電源装置30側)の電力ケーブルを接続するための一対の入力端子21p、21mを備える。なお、入力端子21pが、プラス側の入力端子であり、入力端子21mがマイナス側の入力端子である。更に、コネクタ20は、下流側の電力ケーブルを接続するための一対の出力端子22p、22mも備える。出力端子22p、22mは、それぞれ、コネクタ内部の配線により、入力端子21p、21mと接続されている。また、コネクタ20は、その内部で配線が分岐され、他のモータ制御装置10のための電力供給路35を接続できるように端子が設けられている。そして、コネクタ20において、フィルタ回路32が電力供給路35と接続される位置に配置され、電力供給路35における直流電力は、フィルタ回路32を介して直流電源装置30からモータ制御装置10に供給される構成となっている。
【0045】
また、電力供給路35において、コネクタ20の下流側に、更に供給路を分岐するためのコネクタ55が配置されている。しかし、コネクタ55は供給路を分岐するための従来のコネクタであり、その内部にはフィルタ回路32は設けられていない。別法として、コ
ネクタ55にもフィルタ回路32を設けてもよい。
【0046】
図12においては、電力供給路35に置かれるコネクタ20にフィルタ回路32が組み込まれている。コネクタ20は、上流側(直流電源装置30側)の電力ケーブルを接続するための一対の入力端子21p、21mと、下流側の電力ケーブルを接続するための一対の出力端子22p、22mとを備え、出力端子22p、22mは、それぞれ、コネクタ内部の配線により、入力端子21p、21mと接続されている。そして、コネクタ20において、フィルタ回路32Aが、コネクタ内部のプラス側の電力線に配置され、電力供給路35における直流電力は、フィルタ回路32Aを介して直流電源装置30からモータ制御装置10に供給される構成となっている。なお、図12におけるコネクタ20、55における供給路の分岐形態については、図11に示す形態と同様である。
【0047】
このような形態によっても、フィルタ回路32、32A内の制御回路21がトランジスタ24のスイッチングを制御することで、モータの駆動に関連して生じる直流電圧の共振に起因した、電力供給路35における電圧変動を効果的に回避することが可能となる。
【0048】
<付記1>
直流電源(30)からの電力をモータ制御装置(10)に供給する電力供給路(35)の電圧変動の抑制を行う処理装置であって、
所定のキャパシタンスと所定のインダクタンスのうち少なくとも何れかを有する回路要素(23、25)と、該回路要素(23、25)への電流供給を制御する半導体スイッチ(24)とを有する所定ユニット(81、82)を複数含み、前記電力供給路(35)に接続されるフィルタ回路(32、32A)と、
前記電力供給路(35)における直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、前記フィルタ回路(32、32A)に含まれる前記複数の所定ユニット(81、82)の前記半導体スイッチのスイッチングを制御する制御部(21)と、
を備える、処理装置。
【符号の説明】
【0049】
10 モータ制御装置
20 コネクタ
21 制御回路
23 キャパシタ
24 トランジスタ
25 インダクタンス
30 直流電源装置
32、32A フィルタ回路
35 電力供給路
81、82 安定化ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12