(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163829
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】原木運搬機
(51)【国際特許分類】
A01G 23/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A01G23/00 551F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068895
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 博樹
(57)【要約】
【課題】精密なセンサ及び油圧が不要で且つ安価な原木運搬機を提供することを課題とする。
【解決手段】原木運搬機10は、電動クローラ車であり、傾斜したターンテーブル50を備えている。ターンテーブル50の原木72の一端73を載せてロープ76で固定する。作業者77は、ハンドル15を握りつつ、原木運搬機10を矢印(1)のように、前進させる。前進中に、作業者77は、原木72を見続ける。また、ハンドル15に背面モニター78としての背面視認鏡79を設けておけば、前進中に、適宜、背面を視認することができる。作業者77が原木72を見続けるため、精密なセンサは不要である。ロープ76で固定するため、油圧は不要である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木の一端を載せ、前記原木の他端を地面に載せた状態で、前記原木を引きずって運搬する原木運搬機であって、
前記原木運搬機は、機体と、この機体の左右に設けられた左右のクローラと、
前記機体に設けられ前記左右のクローラを回す電動モータと、
前記機体に設けられ前記電動モータへ電気エネルギーを供給するバッテリと、
前記機体から延ばされ前記地面を歩く作業者が握るハンドルと、
前記機体に斜めに設けられ前記原木の前記一端を支持するターンテーブルと、を備え、
前記電動モータは1個であり、
前記左右のクローラは同方向に等速で回され、
前記ハンドルは、前記作業者が前記原木を目視しながら握る形状とされ、
前記ターンテーブルは、前記機体に立てられた支軸と、この支軸で回転自在に支持され前記原木の前記一端を支持する回転板と、前記機体に回転自在に設けられ前記回転板の下面を支える支持体とからならなることを特徴とする原木運搬機。
【請求項2】
請求項1記載の原木運搬機であって、
前記回転板に第1ピン穴を備え、前記機体に第2ピン穴を備え、前記第1ピン穴を通って前記第2ピン穴へ差し込まれるロックピンを備えていることを特徴とする原木運搬機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸太と呼ばれる原木を引きずりながら運搬する原木運搬機に関する。
【背景技術】
【0002】
成長した樹木は、伐採現場で斧とチェーンソーを用いて切り倒される。倒された樹木(以下、原木と呼ぶ。)は、原木置き場に集められる。原木置き場は林道に面して設けられるため、原木置き場からは原木はトラック輸送が可能となる。伐採現場から原木置き場までの原木の運搬はトラック以外の手段が必要となる。
【0003】
伐採現場から原木置き場までは、斜面であり、重機を入れることは容易でない。そこで、重機に代わる、小型軽量の搬送装置が提案されてきた(例えば、特許文献1(
図1)参照)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は従来の搬送装置の基本構成を説明する図であり、搬送装置100は、1条のクローラ101と、このクローラ101に内蔵される制御部102と、クローラ101で支持され上へ延びるフレーム103と、このフレーム103で支持され上へ延びる蟹鋏み形状のクランプ104と、一対のクランプ104間に配置されるくさび105と、一対のクランプ104で挟まれた原木106に取付けられる搬送対象物用センサ107とからなる。
【0005】
搬送対象物用センサ107で原木106の左右のずれなどを検知し、この検知情報に基づいて制御部102が走行方向などの制御し、原木106の左右のずれを是正する。
このように是正するため、原木106の外径よりも狭い幅のクローラ101が採用できる。
【0006】
しかし、特許文献1に示される搬送装置100には、次に述べる問題点がある。
搬送対象物用センサ107及び複雑な制御を行う制御部102が必須であるため、搬送装置100は高価になる。
【0007】
また、搬送対象物用センサ107は森林作業に慣れた作業者が取り扱うことになるが、搬送対象物用センサ107はCCDカメラやGPSや方位センサや角度センサを内蔵する(特許文献1、段落0022)。搬送対象物用センサ107は精密機械であるため、これを取り扱うには、作業者に森林作業とは異なる知識が求められ、作業者の負担が大きくなる。
【0008】
さらには、運搬中は原木106は上下に大きく移動する。このような原木106に搬送対象物用センサ107が取付けられる。搬送対象物用センサ107は精密機械であるため、激しい上下動を受けると、故障がしやすくなり、搬送対象物用センサ107の点検、調整、交換が必要となる。
【0009】
よって、搬送対象物用センサ107が必須である搬送装置100は、伐採現場から原木置き場までの斜面を走行させるには、好適とはいえない。
【0010】
また、原木106の重量でくさび105が下がり、くさび105で一対のクランプ104を閉じるようになっているが、伐採現場から原木置き場までの斜面を走行する過程で振動などにより一対のクランプ104の締付け力が弱まることがある。安定して原木106を保持させることが難しい。
【0011】
対策として、油圧力で一対のクランプ104を開閉することが考えられる。この対策を講じると、フレーム103に、油圧シリンダや油圧ポンプや耐圧ホースや油圧バルブを搭載する必要があり、搬送装置100が重くなると共に高価になる。
【0012】
作業者の負担軽減及び搬送装置のコストダウンが求められる中、精密なセンサ及び油圧が不要で且つ安価な原木運搬機が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、精密なセンサ及び油圧が不要で且つ安価な原木運搬機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、原木の一端を載せ、前記原木の他端を地面に載せた状態で、前記原木を引きずって運搬する原木運搬機であって、
前記原木運搬機は、機体と、この機体の左右に設けられた左右のクローラと、
前記機体に設けられ前記左右のクローラを回す電動モータと、
前記機体に設けられ前記電動モータへ電気エネルギーを供給するバッテリと、
前記機体から延ばされ前記地面を歩く作業者が握るハンドルと、
前記機体に斜めに設けられ前記原木の前記一端を支持するターンテーブルと、を備え、
前記電動モータは1個であり、
前記左右のクローラは同方向に等速で回され、
前記ハンドルは、前記作業者が前記原木を目視しながら握る形状とされ、
前記ターンテーブルは、前記機体に立てられた支軸と、この支軸で回転自在に支持され前記原木の前記一端を支持する回転板と、前記機体に回転自在に設けられ前記回転板の下面を支える支持体とからならなることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の原木運搬機であって、
前記回転板に第1ピン穴を備え、前記機体に第2ピン穴を備え、前記第1ピン穴を通って前記第2ピン穴へ差し込まれるロックピンを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、原木運搬機は、ターンテーブルにスパイク部材とフックを備え、スパイク部材に原木の一端を食い込ませ、この原木の一端をロープ(又は紐、ワイヤ)とフックでターンテーブルに固定する。一対のクランプを油圧で開閉する従来技術に比較して、本発明では油圧は不要である。
【0018】
また、本発明の原木運搬機は、運搬中、作業者が原木を目視し続ける。このことにより、原木の状態を監視するセンサが不要となる。
【0019】
また、仮に、左のクローラと右のクローラとに速度差を設ける場合は、電動モータを2個にすることが有効であるが、コストが嵩むとともに重くなる。また、電動モータを1個として左右のサイドクラッチを設けることも有効であるが、コストが嵩むとともに重くなる。
この点、本発明では、原木運搬機は左右のクローラを備えているが、左右のクローラは同方向に等速で回されるため、電動モータは1個で済み、左右のサイドクラッチが不要であって、原木運搬機の軽量化とコストダウンとが図れる。
【0020】
以上に述べたように請求項1により、精密なセンサ及び油圧が不要で且つ安価な原木運搬機が提供される。
【0021】
請求項2に係る発明では、ロックピンを差し込むことで、ターンテーブルを回転不能にすることができる。
仮に、任意の回転位置で制動を掛けるブレーキを備えた場合、ブレーキの分だけコストが嵩み重くなる。
この点、本発明ではロックピンは安価で軽量であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】ターンテーブルを除いた状態の原木運搬機の平面図(概念図)である。
【
図10】従来の搬送装置の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0024】
図1において、方位矢印で示すように、ハンドル15が延びる方向を「前」、逆を「後」、右グリップ16側を「右」、左グリップ18側を「左」と呼ぶ。
図2以降についても同様である。
【0025】
図1に示すように、原木運搬機10は、機体11の上部にターンテーブル50を備え、機体11の左右に駆動輪13を含むクローラ14を備え、機体11に前方へ延びるハンドル15を備え、このハンドル15に作業者が右手で握る右グリップ16及び右手で操作する走行速度制御レバー(
図3、符号17)を備え、ハンドル15に作業者が左手で握る左グリップ18を備えている。
【0026】
機体11の構造は、パイプフレーム構造、プレート構造など構成は任意である。
ハンドル15には、右グリップ16の近傍に、メインスイッチ箱21が付設されている。
また、機体11に遊転輪23が回転自在に取付けられ、この遊転輪23と駆動輪13とにクローラ14が巻かれる。
【0027】
図2に示すように、ターンテーブル50の構成要素の一つである回転板52は、後ろ(図では左)へ下がるように、機体11に斜めに取付けられている。
【0028】
図1のターンテーブル50を省いた状態での平面図を
図3に示す。
図3に示すように、機体11に左右の駆動輪13を駆動する駆動軸26、この駆動軸26を駆動する大小のスプロケット27、28及びチェーン29、小径側のスプロケット28を駆動する大小のギヤ31、32、小径側のギヤ32を駆動する電動モータ33、ポテンショメータ35が搭載されている。ハンドル15(又は機体11)に、電動モータ33に給電するバッテリ34が取付けられている。
【0029】
ポテンショメータ35は、入力軸を有し、この入力軸を外から回すと、抵抗値が変化し、電圧を調整することができるデバイスであって、内部構造が単純で、振動に強く、且つ安価である。
【0030】
ポテンショメータ35の入力軸にレバー36が取付けられ、このレバー36からワイヤ37が延ばされ、このワイヤ37の先端が走行速度制御レバー17に連結されている。
走行速度制御レバー17の握り量に応じて、原木運搬機10の走行速度を増減させることができる。
【0031】
電動モータ33は1個であり、駆動軸26が1本であるため、左右のクローラ14は同方向に等速で回される。方向変換は、作業者がハンドル15を持ち上げ、左右のクローラ14の接地面積を減らした状態でハンドル15を右又は左に移動することで、実施する。
【0032】
仮に、左のクローラ14と右のクローラ14とに速度差を設ける場合は、電動モータ33を2個にすることが有効であるが、コストが嵩むとともに重くなる。また、電動モータ33を1個として左右のサイドクラッチを設けることも有効であるが、コストが嵩むとともに重くなる。
この点、本発明によれば、電動モータ33が1個であり、駆動軸26が1本であるため、原木運搬機10の軽量化が図れると共にコストダウンが図れる。
【0033】
右グリップ16の近傍にメインスイッチ箱21が配置されており、このメインスイッチ箱21の上面に、シーソー型スイッチの前後進切換えスイッチ38が設けられている。前後進切換えスイッチ38は、操作された位置で保持されるタイプのスイッチであれば種類、形式は任意である。
【0034】
図4(a)に示すように、前後進切換えスイッチ38を操作しないときには、作業者は右グリップ16を右手39で握る。
前進から後進に切換える場合は、
図4(b)に示すように、拇指41以外の指42(人差し指、中指、薬指、小指の全て又は一部)で右グリップ16を握りつつ、拇指41を延ばして、前後進切換えスイッチ38を操作する。
後進から前進に切換える場合は、
図4(c)に示すように、拇指41以外の指42で右グリップ16を握りつつ、拇指41を延ばして、前後進切換えスイッチ38を操作する。
【0035】
図5に示すように、メインスイッチ箱21は、ロータリー式のキースイッチ43を内蔵し、このキースイッチ43のキー穴44が露出している。キースイッチ43は、「切」、「運転」の他に「起動」のポジションを有する、三位置型スイッチである。
【0036】
図6に示すように、原木運搬機は、制御部45を搭載し、この制御部45で電気的制御される。制御部45は、CPU46を含み、このCPU46で諸々の処理を行う。制御部45に、キースイッチ43と前後進切換えスイッチ38が接続され、制御部45はスイッチング情報を取得する。制御部45にポテンショメータ43が接続される。その上で、制御部45はモータドライバー47を制御し、バッテリ34から電気エネルギーを電動モータ33に供給する。
【0037】
本発明のターンテーブル50を、
図7に基づいて詳しく説明する。
図7に示すように、ターンテーブル50は、機体11に立てられた支軸51と、この支軸51に回転自在に支持される回転板52と、機体11に回転自在に設けられ回転板52の下面を支える支持体53とからなる。
支持体53は、樹脂板や金属板などの滑り板で差し支えないが、好ましくは複数個(例えば120°ピッチで配置された3個)の支持ローラ53とする。
【0038】
支軸51は、詳しくは、機体11に立てられたブラケット54に、ベアリング55を介して回転自在に取付けられている。ベアリング55は、安価な玉軸受が好ましいが、ローラ軸受であってもよく、種類は任意である。なお、支軸51は回転軸の他、非回転軸であってもよい。非回転軸の場合は、支軸51と回転板52との間にベアリングを配置すればよい。
【0039】
支持ローラ53は、詳しくは、機体11に立てられた一対のブラケット56に、ベアリング57を介して回転自在に取付けられている。ベアリング57は、種類は任意であるが、玉軸受、ローラ軸受、平軸受が好ましい。玉軸受は安価である。ローラ軸受は玉軸受より高価であるが、耐久性が高い。平軸受は玉軸受やローラ軸受より回転抵抗が大きいが、耐久性は極めて高い。平軸受としては、黒鉛の粒を含む焼結金属平軸受が採用できる。
【0040】
回転板52の上面に、原木に食い込むスパイク部材60が複数条(この例では2条)設けられている。
スパイク部材60は、細長い鋼板61の上辺を円弧状にくり抜き、この円弧状の上辺に鋸歯部62を形成したものである。スパイク部材60は、回転板52に直接立てた複数本の針であってもよい。
【0041】
回転板52に、原木を結束するロープを掛けるフック63が設けられている。フック63の数、形態は任意であるが、次に述べる形態が推奨される。
フック63は、例えば、コ字状のガードレール兼用フック64と、このガードレール兼用フック64が途切れている部分に配置されるL字フック65とからなる。
ガードレール兼用フック64は、端部64aが回転板52に固定され、中央部64bがプレート66を介して回転板52に固定される。
L字フック65は、回転板52の後端から張り出すようにして、基部が回転板52に溶接される
【0042】
なお、原木を止める手段は、スパイク部材60とロープとの組合せの他、スパイク部材60のみ、ロープ(ワイヤ、紐を含む。)のみ、又はその他のツールであってもよい。
【0043】
回転板52の前部に第1ピン穴67が設けられている。
機体11にブラケット68が設けられ、このブラケット68に第2ピン穴69が設けられている。この第2ピン穴69は第1ピン穴67と連通可能な位置に設けられている。
回転板52をニュートラル位置にすると、第1ピン穴67が第2ピン穴69に重なり、上からロックピン71を差し込むことができる。
【0044】
本発明の原木運搬機10は、原木の運搬の他、備品の運搬に供することができる。
原木の運搬のときには、ロックピン71は、第1ピン穴67及び第2ピン穴69から抜き、回転板52の回転を自在にしておく。
【0045】
備品としては、原木置き場から伐採現場まで運ばれるチェーンソー、斧、ロープ、紐、チェーン、チェーンブロック、作業員の手荷物などが挙げられる。
これらの資材を運搬するときには、ロックピン71を、第1ピン穴67及び第2ピン穴69に差し込んで、回転板52を非回転にする。
【0046】
以上の構成からなる原木運搬機10の作用を、次に説明する。
図8において、伐採現場にて原木72の一端73を、人手、チェーンブロック、滑車、簡易起重機その他の手段で持ち上げる。そして、原木72の一端73に原木運搬機10を差し入れる。原木72の一端73を下げる。
【0047】
結果、原木72の一端73が回転板52に載る。原木72の他端74は地面75に載ったままである。原木72の一端73に、スパイク部材60が食い込む。この状態でロープ76を原木72の一端73に巻き、ロープ76をフック63に掛ける。以上により、原木72の一端が回転板52に固定される。ロープ76は紐やチェーンやワイヤであってもよい。
【0048】
作業者77は、ハンドル15を握りつつ、原木運搬機10を矢印(1)のように、前進させる。前進中に、作業者77は、原木72を見続ける。また、ハンドル15に背面モニター78としての背面視認鏡79を設けておけば、前進中に、適宜、背面を視認することができる。
【0049】
背面視認鏡79は、自転車(又は自動二輪車)用のバックミラーを転用できるため、入手容易で安価である。ハンドル15の外形を自転車のハンドルと同じ外径にすれば、市販の自転車用のバックミラーが採用できて、好ましい。
【0050】
また、背面モニター78は、近年、車両に搭載される車庫入れモニターや、いわゆるドライブレコーダを流用できる。すなわち、背面カメラをハンドル15に取付け、モニターをハンドル15に取付ければよい。
【0051】
前後両方向が録画可能なドライブレコーダであれば、作業記録を残すことができる。作業中に不具合が生じた場合に、不具合の検証が可能となり、便利である。
【0052】
次に、方向変換の手順を、
図9に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、原木運搬機10を矢印(2)のように、前進している。
方向を変える必要があれば、
図9(b)に示すように、作業者の手で、原木運搬機10を矢印(3)のように、方向転換する。このとき、回転板52は回転せず、支軸51を中心に機体11及びハンドル15が方向を変える。よって、原木運搬機10の方向変換は容易である。次に、矢印(4)のように、原木運搬機10を前進させる。
【0053】
すると、原木72が引きずられ、結果、
図9(c)に示すように、原木72及び原木運搬機10は、変換された方向へ前進する。
【0054】
本発明の原木運搬機10は、
図1~
図3で説明したように、精密なセンサや油圧は不要であって、小型、軽量で且つ安価であり、このような原木運搬機10で原木72を伐採現場から原木置き場まで運搬することができる。
【0055】
図7で説明したロックピン71は、第1ピン穴67と第2ピン穴69とを連通する部材である。
図9(a)~(c)で説明した運搬作業中は、ロックピン71は連通させないで、ハンドル15に付設したピン差し板(
図3、符号81)に差し込んでおく。すなわち、ピン差し板81は、非連通時のロックピン71の保管場所である。
【0056】
ところで、ロックピン71は、紛失しやすい。紐や鎖でロックピン71をハンドル15に繋いでもよいが、紐や鎖が邪魔になる。
伐採現場では下草が茂っており、落としたロックピン71は、見つかりにくい。
【0057】
対策として、ハンドル15(又は機体11)に複数個のピン差し板81を設けておき、ピン差し板81の各々に、ロックピン71を差し込んでおく。複数本のロックピン71の1本が正で、残りは予備となる。紛失したときには、予備を使用する。
【0058】
ピン差し板81を大きくして、1個のピン差し板81に、複数本のロックピン71を差し込んでおくようにしてもよい。又は、ピン差し板81を、蓋が付いたピン収納箱に変えてもよい。ピン収納箱であれば、複数本のロックピン71が保管できる。
ただし、ピン差し板81は、単純な矩形薄鋼板で構成でき、差し込んだロックピン71が露出していた常に目視できるため、ロックピン71を探す手間が省けるという利点がある。
【0059】
尚、本発明の原木運搬機は、伐採現場から原木置き場までの原木の運搬に供する他、その他の場所での原木の運搬に供することは差し支えない。
また、原木運搬機の主用途が原木運搬であり、副用途として原木とは異なる物品(例えば備品)の運搬に供することは差し支えない。ただし、ターンテーブルが常時傾斜しているため、副用途は限定的である。
10…原木運搬機、11…機体、14…クローラ、15…ハンドル、33…電動モータ、34…バッテリ、50…ターンテーブル、51…支軸、52…回転板、53…支持体(支持ローラ)、60…スパイク部材、63…フック、67…第1ピン穴、69…第2ピン穴、71…ロックピン、72…原木、73…原木の一端、74…原木の他端、75…地面、76…ロープ、78…背面モニター、81…ピン差し板。