(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163838
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】振動低減部材
(51)【国際特許分類】
F16F 7/01 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
F16F7/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068909
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原塚 透
【テーマコード(参考)】
3J066
【Fターム(参考)】
3J066AA26
3J066BA06
3J066BD03
(57)【要約】
【課題】防振支持できない配管の振動を簡易な構造で低減する振動低減部材を提供することを課題とする。提供することを課題とする。
【解決手段】管材Pに載置される振動低減部材1であって、管材Pの長手方向に沿う仕切り3で区画された複数の収容部4を有する袋体2と、収容部4に詰め込まれた粒状体5と、を備えることを特徴とする。仕切り3は、袋体2を構成するシートの対向部分を貼り合わせて形成されている。粒状体5は、ゼオライト、パーライト、天然ガラス発泡体、砂、木炭廃材のうち少なくとも一つ以上を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材に載置される振動低減部材であって、
前記管材の長手方向に沿う仕切りで区画された複数の収容部を有する袋体と、
前記収容部に詰め込まれた粒状体と、を備えることを特徴とする振動低減部材。
【請求項2】
前記仕切りは、前記袋体を構成するシートの対向部分を貼り合わせて形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の振動低減部材。
【請求項3】
前記粒状体は、ゼオライト、パーライト、天然ガラス発泡体、砂、木炭廃材のうち少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動低減部材。
【請求項4】
少なくとも一つの前記収容部が前記管材の頂部に載置され、
少なくとも二つの前記収容部が前記管材の側部に当接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動低減部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動低減部材に関する。
【背景技術】
【0002】
静けさが要求される建物では、設備機器やそれに付属する配管などを防振支持することにより建物躯体に入力される振動を低減している。しかし、配管の中には熱伸びや耐震上の理由から防振支持できない場合があり、防振支持できない配管では、居室側に対策を行う場合もある。また、防振支持できる配管では、防振デバイスを設置する作業を行う必要があるため、工期が長くなったり、コストがかかるという問題があった。また、設置場所の制約があり対応できない場合もあった。
防振支持できない配管の防振方法としては、配管に制振性能のあるシート材を直接巻き付ける方法が採用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制振方法では、配管にシート部材を巻き付ける必要があるため、他の配管や電気設備等がある狭隘部においては、シートの取り付けが困難な場合がある。また、劣化した際に交換する必要がある場合にも作業が煩雑になってしまう。
このような観点から、本発明は、防振支持できない配管の振動を簡易な構造で低減する振動低減部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の振動低減部材は、管材に載置される振動低減部材であって、前記管材の長手方向に沿う仕切りで区画された複数の収容部を有する袋体と、前記収容部に詰め込まれた粒状体とを備えることを特徴とする。
かかる振動低減部材によれば、管材に振動が発生した際、粒状体が収容部の内部を移動して振動エネルギーを減衰させるため、優れた振動低減効果が発現される。
また、管材に被せるだけで振動低減効果を得ることができるため、狭隘部においても振動低減部材を容易に設置あるいは交換できる。
【0006】
また、前記仕切りは、前記袋体を構成するシートの対向部分を貼り合わせて形成されていることが好ましい。かかる振動低減部材によれば、容易に袋体を分割することができるため生産コストを低減できる。
また、前記粒状体は、ゼオライト、パーライト、天然ガラス発泡体、砂、木炭廃材のうち少なくとも一つ以上を含んでいることが好ましい。かかる振動低減部材によれば、効率的に振動を軽減できる。
また、少なくとも一つの前記収容部が前記管材の頂部に載置され、少なくとも二つの前記収容部が前記管材の側部に当接すること好ましい。かかる振動低減部材によれば、振動低減部材を管材の形状に合わせて載置できるので、設置しやすいと共により効果的に振動を軽減できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る振動低減部材によれば、防振支持できない配管を簡易な構造で振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る振動低減部材を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る振動低減部材を示す平面図である。
【
図4】振動測定試験を示す側面図であって(a)は、振動低減部材なし、(b)は、振動低減部材ありの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではない。
振動低減部材1は、管材Pの振動を軽減するための部材であり、
図1に示すように、管材Pに載置される。管材Pは、躯体に比べて曲げ剛性が十分低く、管材Pと躯体とのインピーダンス比が高いものであるほど、振動低減部材1による振動低減効果が高まる。管材Pの材質に制限はないが、例えば、塩化ビニルやポリエチレンなどの合成樹脂、炭素繊維等であると、躯体とのインピーダンス比が高くなる。
【0010】
袋体2は、シート状の部材であり、
図2示すように、複数の収容部4,4,…を備えている。各収容部4,4,…には、粒状体5が詰め込まれている。袋体2は、例えば不織布や織布等の通気性・透水性のある材料からなる。なお、本実施形態では、袋体2は4つの収容部4に分割されている。具体的には袋体2は、管材Pの頂部P1に当接する左右二つの収容部4,4と、管材Pの側部P2に当接する左右二つの収容部4,4を備えている。本実施形態では、頂部P1に当接する部分において、袋体2が2分割されているが、袋体2の分割方法は特に制限されず、例えば頂部P1に当接する収容部を1つにしてもよいし、3分割以上にしてもよい。
【0011】
図3に示すように、各収容部4,4,…の間には、管材Pの長手方向に沿うように仕切り3が形成されている。仕切り3は、袋体2を構成するシートの対向部分を貼り合わせて形成されている。
仕切り3同士の間隔は特に限定されるものではないが、各収容部4,4,…同士の隙間が大きすぎると、粒状体5に偏りが発生し、振動を軽減する効果が低下する恐れがあるため、仕切り3同士の間隔は大きくし過ぎないことが好ましい。
【0012】
本実施形態の粒状体5は、パーライトにより構成されている。なお、粒状体5を構成する材料は限定されるものでなく、パーライトの他、ゼオライト、天然ガラス発泡体、砂、木炭廃材またはこれらのうち少なくとも2つを混合した混合体であってもよいが、吸湿性を有する材料(パーライト、ゼオライト、木炭廃材など)を含むことが好ましい。粒状体5の形状寸法は限定されるものではないが、例えば、平均粒径が1~5mmの範囲内のものを使用するとよい。
【0013】
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係る振動低減部材1によれば、管材Pに振動が発生した際、粒状体5が収容部4の内部を移動して振動エネルギーを減衰させるため、優れた振動低減効果が発現される。また、管材Pに被せるだけで振動低減効果を得ることができるため、狭隘部においても振動低減部材1を容易に設置あるいは交換できる。
ここで、管材Pの振動は、支点間の長さで決まる曲げ振動、管材Pの長さで決まる気柱共鳴、管材Pの円周方向などの固有モード等が、強制振動を引き起こすポンプなどの回転数や、圧力変動などの周期に励振され、高次の固有モードと一致した場合に大きな振動となる。本実施形態の振動低減部材1によれば、管材Pに制振性能を加えることにより、管材P自体の振動を低減することができる。
【0014】
また、仕切り3は、袋体2を構成するシートの対向部分を貼り合わせて形成されているため、容易に袋体2を分割することができる。そのため生産コストを低減できる。
また、少なくとも一つの収容部4が管材Pの頂部P1に載置され、少なくとも二つの収容部4が管材Pの側部P2に当接しているので、振動低減部材を管材Pの形状に合わせて、袋体2を管材Pに密着させることができる。つまり、振動低減部材1を容易に設置できるとともに効果的に振動を低減できる。
また、袋体2は、通気性・透水性を有しているため、空気中の湿気や管材Pについた結露水を粒状体5に取り入れることができる。粒状体5が吸湿すると重量が増すため、高い振動低減効果を得ることができる。
【0015】
[振動測定]
以下に示す3つの条件で長さ4mの管材の一端から振動を加え、他端の振動を測定することにより、振動低減部材1による振動低減効果を確認した。
・
図4(a)に示すように、比較例として、横引き管材に振動低減部材1を載置しない状態で測定を行った。
・
図4(b)に示すように、実施例1,2として、横引き管材に複数の振動低減部材1を載置した状態で測定を行った。実施例1では、粒状体として、乾燥状態のゼオライトを用いた。実施例2では、粒状体として、水分(湿気)を吸着させたゼオライトを用いた。
図5に示すように、振動低減部材1を管材に載置する実施例1,2では、設置しなかった比較例と比べて、振動を低減することができた。また、ゼオライトに湿気を吸わせると(実施例2)、乾燥状態のゼオライトを使用する場合(実施例1)よりも振動を低減することできた。
【0016】
以上、本願発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に限らず各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、本実施形態の振動低減部材は、横引きされた配管上部に載置したがこれに限定されるものではない。例えば、竪管に使用する際には、粘着テープ等によって振動低減部材を巻き付けて固定してもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 振動低減部材
2 袋体
3 仕切り
4 収容部
5 粒状体
P 管材
P1 頂部
P2 側部