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特開2022-163855分岐エリア出入判別システム、無人搬送車及び分岐エリア出入判別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163855
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】分岐エリア出入判別システム、無人搬送車及び分岐エリア出入判別方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221020BHJP
【FI】
G05D1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068946
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸丸 耕太
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA09
5H301BB05
5H301EE04
5H301EE12
5H301FF04
5H301GG07
5H301HH12
(57)【要約】
【課題】誘導路の脇に別途磁気マーカーを設置せず、かつライントレース用の磁気検知センサのみを用いることで無人搬送車が分岐路に進入したことを把握できるようにする。
【解決手段】分岐エリア出入判別システム100は、無人搬送車10と、無人搬送車10を誘導する誘導路20と、を備え、誘導路20のうち第1分岐エリアA及び第2分岐エリアBの誘導路20には、S極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aが敷設され、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアB以外の誘導路20には、N極の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bが敷設され、無人搬送車10は、センサユニット15によって第1磁気テープ20A及び第2磁気テープ20Bから磁気を検知し、制御部11によってセンサユニット15により検知された磁気の時間変化量を導出し、導出された磁気の時間変化量に基づいて、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアBへの自車の出入を判別する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車と、前記無人搬送車を誘導する誘導路と、を備え、
前記誘導路のうち分岐エリアの誘導路には、一方の磁極の磁気を帯びた第1磁気テープが敷設され、
前記分岐エリア以外の誘導路には、他方の磁極の磁気を帯びた第2磁気テープが敷設され、
前記無人搬送車は、
前記第1磁気テープ及び前記第2磁気テープから磁気を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された磁気の時間変化量を導出する第1の導出手段と、
前記第1の導出手段により導出された前記磁気の時間変化量に基づいて、前記分岐エリアへの自車の出入を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする分岐エリア出入判別システム。
【請求項2】
前記無人搬送車は、
前記検知手段として、自車の進行方向と直交する方向に配列された複数の磁気検知センサを有し、
前記複数の磁気検知センサの夫々により検知される磁気の検知量と、当該複数の磁気検知センサの各配置に対応した座標情報と、に基づいて、所定の各進行方向パターンに対応する偏位量を導出する第2の導出手段と、
前記判別手段により前記分岐エリアへ自車が進入したと判別された場合、予め指定された進行方向パターンに対応する偏位量に基づいて、自車の進行方向を制御する進行方向制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の分岐エリア出入判別システム。
【請求項3】
前記無人搬送車は、
自車の走行速度を制御する走行速度制御手段を備え、
前記走行速度制御手段は、前記判別手段により前記分岐エリアへ自車が進入したと判別された場合、自車の走行速度を通常よりも低速である所定の速度に制御し、当該分岐エリアから自車が退出したと判別された場合、自車の走行速度を前記通常の速度に制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分岐エリア出入判別システム。
【請求項4】
前記分岐エリア以外の誘導路には、前記他方の磁極の磁気であって、且つ、磁気量が互いに異なる複数種の第2磁気テープが敷設され、
前記無人搬送車は、前記検知手段により検知される磁気量が前記第2磁気テープの磁気量に対応する所定の閾値を超えた場合、当該閾値に対応するコマンドの動作を行う動作制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の分岐エリア出入判別システム。
【請求項5】
一方の磁極の磁気を帯びた第1磁気テープが敷設された分岐エリアの誘導路、及び、他方の磁極の磁気を帯びた第2磁気テープが敷設された前記分岐エリア以外の誘導路を走行する無人搬送車であって、
前記第1磁気テープ及び前記第2磁気テープから磁気を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された磁気の時間変化量を導出する導出手段と、
前記導出手段により導出された前記磁気の時間変化量に基づいて、前記分岐エリアへの自車の出入を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする無人搬送車。
【請求項6】
一方の磁極の磁気を帯びた第1磁気テープが敷設された分岐エリアの誘導路、及び、他方の磁極の磁気を帯びた第2磁気テープが敷設された前記分岐エリア以外の誘導路を走行する無人搬送車に備えられた検知手段によって前記第1磁気テープ及び前記第2磁気テープから磁気を検知する検知工程と、
前記検知工程によって検知された磁気の時間変化量を導出する導出工程と、
前記導出工程により導出された前記磁気の時間変化量に基づいて、前記分岐エリアへの前記無人搬送車の出入を判別する判別工程と、
を含むことを特徴とする分岐エリア出入判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐エリア出入判別システム、無人搬送車及び分岐エリア出入判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面に敷設された磁気テープの磁気を検知することで当該磁気テープのルートに沿って自動で走行するライントレース機能を有した無人搬送車(AGV;Automated Guided Vehicle)が知られている。この無人搬送車にあっては、例えば、分岐路において予め指定された方向へ走行制御可能なものも実用化されている。
【0003】
ここで、無人搬送車を分岐路において所望の方向へ誘導するためには、まず自車が分岐路に進入したことを無人搬送車に把握させる必要がある。分岐路に進入したことを無人搬送車に把握させる手法としては、例えば、ルートの脇であり、且つ、分岐路の直前に磁気マーカーを敷設しておき、この磁気マーカーの磁気を検知させることで分岐路に進入したことを無人搬送車に把握させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-204195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、例えば誘導路のレイアウトが複雑である等の理由により磁気マーカーを適切な位置に設置するスペースが無い場合に対処することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、誘導路の脇に別途磁気マーカーを設置せず、かつライントレース用の磁気検知センサのみを用いることで無人搬送車が分岐路に進入したことを把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の分岐エリア出入判別システムは、
無人搬送車と、前記無人搬送車を誘導する誘導路と、を備え、
前記誘導路のうち分岐エリアの誘導路には、一方の磁極の磁気を帯びた第1磁気テープが敷設され、
前記分岐エリア以外の誘導路には、他方の磁極の磁気を帯びた第2磁気テープが敷設され、
前記無人搬送車は、
前記第1磁気テープ及び前記第2磁気テープから磁気を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された磁気の時間変化量を導出する第1の導出手段と、
前記第1の導出手段により導出された前記磁気の時間変化量に基づいて、前記分岐エリアへの自車の出入を判別する判別手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、無人搬送車は、誘導路を走行している際に、第1磁気テープ及び第2磁気テープから磁気を検知し、検知された磁気の時間変化量を導出し、導出された磁気の時間変化量に基づいて、分岐エリアへの自車の出入を判別するので、誘導路の脇に別途磁気マーカーを設置しなくても無人搬送車の分岐エリアへの出入を把握することができる。また、分岐エリアへの無人搬送車の出入を判別するにあたり、磁気の時間変化量を用いることで、S極とN極との極性変化を変化している途中で捉えることができるので、検知手段によって検知される磁気量を基準として分岐エリアへの出入を判別する方法よりも比較的早い段階で分岐エリアへの出入を判別することができる。また、上記の磁気量を基準とした判別方法の場合、誘導路を構成する床面に多少の凸凹を有しているだけでも検知手段により検知される磁気量が大きく変動してしまうため、判別用の閾値の設定が難しく、分岐エリアへの出入を精確に判別することができないが、磁気の時間変化量を用いた判別方法の場合、磁気量を基準とした判別方法に比べて判別用の閾値の設定が容易であるため、分岐エリアへの出入を精確に判別することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記無人搬送車は、
前記検知手段として、自車の進行方向と直交する方向に配列された複数の磁気検知センサを有し、
前記複数の磁気検知センサの夫々により検知される磁気の検知量と、当該複数の磁気検知センサの各配置に対応した座標情報と、に基づいて、所定の各進行方向パターンに対応する偏位量を導出する第2の導出手段と、
前記判別手段により前記分岐エリアへ自車が進入したと判別された場合、予め指定された進行方向パターンに対応する偏位量に基づいて、自車の進行方向を制御する進行方向制御手段と、
を備えるとよい。
この構成によれば、無人搬送車の進行方向の制御用として別途検知手段や磁気マーカーを設けることなく当該無人搬送車を分岐エリアにおいて所望の進行方向へ適切に誘導することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記無人搬送車は、
自車の走行速度を制御する走行速度制御手段を備え、
前記走行速度制御手段は、前記判別手段により前記分岐エリアへ自車が進入したと判別された場合、自車の走行速度を通常よりも低速である所定の速度に制御し、当該分岐エリアから自車が退出したと判別された場合、自車の走行速度を前記通常の速度に制御するとよい。
この構成によれば、分岐エリア内では無人搬送車の走行速度を通常よりも低速である所定の速度に制御することで、分岐により自車の進行方向が変更される際に、検知手段による磁気の検知が空振りとなることを抑制することができるので、無人搬送車を分岐エリアにおいて所望の進行方向へより適切に誘導することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記分岐エリア以外の誘導路には、前記他方の磁極の磁気であって、且つ、磁気量が互いに異なる複数種の第2磁気テープが敷設され、
前記無人搬送車は、前記検知手段により検知される磁気量が前記第2磁気テープの磁気量に対応する所定の閾値を超えた場合、当該閾値に対応するコマンドの動作を行う動作制御手段を備えるようにするとよい。
この構成によれば、誘導路の脇に別途コマンド用の磁気マーカーを設置しなくても第2磁気テープの磁気量が変化する所定の位置で所望のコマンドに対応した動作を無人搬送車に行わせることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明の無人搬送車は、
一方の磁極の磁気を帯びた第1磁気テープが敷設された分岐エリアの誘導路、及び、他方の磁極の磁気を帯びた第2磁気テープが敷設された前記分岐エリア以外の誘導路を走行する無人搬送車であって、
前記第1磁気テープ及び前記第2磁気テープから磁気を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された磁気の時間変化量を導出する導出手段と、
前記導出手段により導出された前記磁気の時間変化量に基づいて、前記分岐エリアへの自車の出入を判別する判別手段と、
を備えることを特徴としている。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明の分岐エリア出入判別方法は、
一方の磁極の磁気を帯びた第1磁気テープが敷設された分岐エリアの誘導路、及び、他方の磁極の磁気を帯びた第2磁気テープが敷設された前記分岐エリア以外の誘導路を走行する無人搬送車に備えられた検知手段によって前記第1磁気テープ及び前記第2磁気テープから磁気を検知する検知工程と、
前記検知工程によって検知された磁気の時間変化量を導出する導出工程と、
前記導出工程により導出された前記磁気の時間変化量に基づいて、前記分岐エリアへの前記無人搬送車の出入を判別する判別工程と、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誘導路の脇に別途磁気マーカーを設置せずかつ、ライントレース用の磁気検知センサのみを用いることで無人搬送車が分岐路に進入したことを把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の分岐エリア出入判別システムの概略構成図である。
図2図1に示した第1分岐エリアの拡大図である。
図3】無人搬送車の機能構成を示すブロック図である。
図4】無人搬送車におけるセンサユニットの設置箇所を示す正面図である。
図5】分岐エリア出入判別処理の制御手順を示すフローチャートである。
図6】分岐エリアへの出入を判別する手法を示す説明図である。
図7】走行制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0017】
[分岐エリア出入判別システムの構成]
まず、図1を参照して、本実施形態の構成を説明する。図1は、本実施形態の分岐エリア出入判別システム100の概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、分岐エリア出入判別システム100は、無人搬送車10と、誘導路20と、を備えて構成される。
【0019】
無人搬送車10は、例えば、工場や倉庫において荷物等を搬送する無人の台車ロボットである。
【0020】
誘導路20は、無人搬送車10を誘導するためのコースである。誘導路20は、所望のコースとなるように磁気テープを床面に敷設することで構成されている。図1に示すように、本実施形態の誘導路20には、誘導路20が2又に分かれる第1分岐エリアAと第2分岐エリアBとが設けられている。
【0021】
図2は、図1に示した第1分岐エリアAの拡大図である。
図2に示すように、第1分岐エリアAの誘導路20は、S極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aで構成されている。なお、図示は省略するが、第2分岐エリアBの誘導路20も同様に、S極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aで構成されている。
一方、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアB以外の誘導路20、すなわち分岐がなされていない一本道の誘導路20は、N極の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bで構成されている。
【0022】
[無人搬送車の構成]
次に、図3を参照して、無人搬送車10の機能構成について説明する。図3は、無人搬送車10の機能構成を示すブロック図である。
【0023】
図3に示すように、無人搬送車10は、制御部11、記憶部12、操作部13、通信部14、センサユニット15、駆動部16等を備える。
【0024】
制御部(第1の導出手段、判別手段、第2の導出手段、進行方向制御手段、走行速度制御手段)11は、記憶部12に記憶されている各種のプログラムを実行して所定の演算や各部の制御を行うCPU(Central Processing Unit)とプログラム実行時の作業領域となるメモリとを備えている(いずれも図示省略)。制御部11は、記憶部12に記憶されているプログラムとの協働により、各種の処理を実行する。
【0025】
記憶部12は、不揮発性の半導体メモリ等により構成される。記憶部12には、制御部11で実行されるシステムプログラムやアプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ等が記憶されている。
【0026】
操作部13は、各種機能キーを備え、ユーザーによる各キーの押下入力を受け付けてその操作情報を制御部11に出力する。
【0027】
通信部14は、無線により通信ネットワークに接続し、通信ネットワークに接続された外部機器との通信を行う。
【0028】
センサユニット(検知手段)15は、誘導路20を構成する磁気テープ(第1磁気テープ20A及び第2磁気テープ20B)から発せられる磁気を検知可能な複数(例えば、6つ)の磁気検知センサ151~156を備え、各磁気検知センサ151~156により検知された磁気の磁束密度(磁気検知量)を制御部11に出力する。
【0029】
図4は、無人搬送車10におけるセンサユニット15の設置箇所を示す正面図である。
図4に示すように、センサユニット15は、無人搬送車10の前部(図1参照)であり、無人搬送車10の筐体部分の下部に設けられている。センサユニット15の下面には、上述した6つの磁気検知センサ151~156がそれぞれ床面と対向するように設けられている。これらの6つの磁気検知センサ151~156は、例えば、無人搬送車10の走行方向(図4におけるY方向(紙面の表方向))と直交する方向(X方向)に一列に等間隔で配設されている。なお、上記のセンサユニット15の設置箇所、及び、磁気検知センサ151~156の配置は、あくまでも一例であり、例えば誘導路20の幅等に応じて適宜変更可能である。また、磁気検知センサの数も6つに限定されるものではない。
【0030】
ここで、記憶部12には、磁気検知センサ151~156のX方向における各位置座標x1~x6(図4参照)、並びに、センサユニット15のX方向における中心位置の位置座標xc(図4参照)のデータが記憶されている。制御部11は、無人搬送車10の走行時において、センサユニット15のX方向における中心位置xcと誘導路20の幅方向における中心位置との差分が0となるように、すなわち、センサユニット15のX方向における中心位置xcと誘導路20の幅方向における中心位置とが一致するように走行制御を行い、当該走行制御に係る指示情報を駆動部16に出力する。
【0031】
駆動部16は、制御部11から出力される走行制御に係る指示情報に基づいて車輪等の動作を制御する。
【0032】
[無人搬送車の動作]
次に、図5及び図6を参照して、無人搬送車10の分岐エリア出入判別処理について説明する。図5は、分岐エリア出入判別処理の制御手順を示すフローチャートである。この分岐エリア出入判別処理は、無人搬送車10が誘導路20を走行している際に実行される処理である。図6は、分岐エリアへの出入を判別する手法を示す説明図である。より具体的には、図6の上段は、無人搬送車10が第1分岐エリアAを図中の矢印方向に進行した際の各進行過程(状態1~状態4)を模式的に表した図である。また、図6の中段のグラフは、図4に示した位置座標x3の磁気検知センサ(第3の磁気検知センサ)153及び位置座標x4の磁気検知センサ(第4の磁気検知センサ)154により検知された磁気の磁束密度(磁気検知量)を無人搬送車10の進行過程に対応させて経時的に表したグラフである。また、図6の下段のグラフは、同図の中段のグラフに示された磁束密度の時間変化量(単位時間あたりの磁束密度の変化量)を経時的に表したグラフである。
【0033】
図5に示すように、分岐エリア出入判別処理が開始されると、まず、無人搬送車10の制御部11は、第3の磁気検知センサ153及び第4の磁気検知センサ154により検知された磁気の磁束密度(磁気検知量)を逐次取得する(ステップS1)。
【0034】
次いで、制御部11は、ステップS1で逐次取得された磁束密度に基づいて単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])を導出する(ステップS2)。
【0035】
次いで、制御部11は、ステップS2で導出された単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])が第1の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、第1の閾値は、当該時間変化量が0である通常時よりも小さい負の値であるものとする。
【0036】
ステップS3において、ステップS2で導出された単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])が第1の閾値以下ではないと判定された場合(ステップS3;NO)、制御部11は、ステップS4の処理をスキップして処理をステップS5へ進める。
【0037】
例えば、図6の上段に示すように、状態1すなわち無人搬送車10のセンサユニット15がN極の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bの上を通過している際は、図6の中段のグラフに示すように、第3の磁気検知センサ153及び第4の磁気検知センサ154により検知される磁気の磁束密度は概ね正の一定値となる。したがって、図6の下段のグラフに示すように、状態1では、単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])は概ね0となる。この結果、状態1では、制御部11によって第1の閾値以下ではないと判定され、分岐エリア(例えば、第1分岐エリアA)へ進入したとの判断がなされないようになっている。
【0038】
また、ステップS3において、ステップS2で導出された単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])が第1の閾値以下であると判定された場合(ステップS3;YES)、制御部11は、分岐エリアへ進入したと判断、すなわち分岐エリアへの進入を開始したと判断する(ステップS4)。
【0039】
例えば、図6の上段に示すように、状態2すなわち無人搬送車10のセンサユニット15がN極の磁気を帯びた第2磁気テープ20BとS極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aとの境界線上を通過している際は、図6の中段のグラフに示すように、第3の磁気検知センサ153及び第4の磁気検知センサ154により検知される磁気の磁束密度は上述した正の一定値から徐々に下がっていく。したがって、図6の下段のグラフに示すように、状態2では、単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])は第1の閾値よりも小さい負の値となる。この結果、状態2では、制御部11によって第1の閾値以下であると判定され、分岐エリア(例えば、第1分岐エリアA)へ進入したとの判断がなされるようになっている。
【0040】
次いで、制御部11は、ステップS2で導出された単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])が第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、第2の閾値は、当該時間変化量が0である通常時よりも大きい正の値であるものとする。
【0041】
ステップS5において、ステップS2で導出された単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])が第2の閾値以上ではないと判定された場合(ステップS5;NO)、制御部11は、処理をステップS1へ戻してそれ以降の処理を繰り返し行う。
【0042】
例えば、図6の上段に示すように、状態3すなわち無人搬送車10のセンサユニット15がS極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aの上を通過している際は、図6の中段のグラフに示すように、第3の磁気検知センサ153及び第4の磁気検知センサ154により検知される磁気の磁束密度は概ね負の一定値となる。したがって、図6の下段のグラフに示すように、状態3では、単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])は概ね0となる。この結果、状態3では、制御部11によって第2の閾値以上ではないと判定され、分岐エリア(例えば、第1分岐エリアA)から退出したとの判断がなされないようになっている。
【0043】
また、ステップS5において、ステップS2で導出された単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])が第2の閾値以上であると判定された場合(ステップS5;YES)、制御部11は、分岐エリアから退出したと判断、すなわち分岐エリアへの進入を終了したと判断する(ステップS6)。制御部11は、ステップS6の処理の行った後、処理をステップS1へ戻してそれ以降の処理を繰り返し行う。
【0044】
例えば、図6の上段に示すように、状態4すなわち無人搬送車10のセンサユニット15がS極の磁気を帯びた第1磁気テープ20AとN極の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bとの境界線上を通過している際は、図6の中段のグラフに示すように、第3の磁気検知センサ153及び第4の磁気検知センサ154により検知される磁気の磁束密度は上述した負の一定値から徐々に上がっていく。したがって、図6の下段のグラフに示すように、状態4では、単位時間あたりの磁束密度の変化量(時間変化量[G/s])は第2の閾値よりも大きい正の値となる。この結果、状態4では、制御部11によって第2の閾値以上であると判定され、分岐エリア(例えば、第1分岐エリアA)から退出したとの判断がなされるようになっている。
【0045】
次に、図7を参照して、無人搬送車10の走行制御処理について説明する。図7は、走行制御処理の制御手順を示すフローチャートである。この走行制御処理は、上述した分岐エリア出入判別処理と同様に、無人搬送車10が誘導路20を走行している際に実行される処理である。無人搬送車10の制御部11は、誘導路20の走行中常に、図4に示した位置座標x1~x6のそれぞれの磁気検知センサ151~156から検知される磁気の磁束密度(磁気検知量)M1~M6と当該位置座標x1~x6とに基づいて、下記式(1)~(3)の3種類の偏位量e、eR、eLを逐次導出しているものとする。なお、下記式(1)~(3)は、あくまでも一例であり、例えば磁気検知センサの設置数等に応じて適宜変更可能である。
【数1】
【数2】
【数3】
【0046】
図7に示すように、走行制御処理が開始されると、まず、無人搬送車10の制御部11は、走行中の誘導路20が分岐エリア内であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0047】
ステップS11において、走行中の誘導路20が分岐エリア内ではない、すなわち第1分岐エリアA内と第2分岐エリアB内のいずれでもないと判定された場合(ステップS11;NO)、制御部11は、通常速度である第1の速度で且つ上述した偏位量eに基づいて走行制御を行う(ステップS12)。そして、制御部11は、処理をステップS11に戻してそれ以降の処理を繰り返し行う。
【0048】
また、ステップS11において、走行中の誘導路20が分岐エリア内である、すなわち第1分岐エリアA内又は第2分岐エリアB内であると判定された場合(ステップS11;YES)、制御部11は、予め指定された進行方向が直進であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0049】
ステップS13において、予め指定された進行方向が直進であると判定された場合(ステップS13;YES)、制御部11は、第1の速度よりも低速の第2の速度で且つ上述した偏位量eに基づいて走行制御を行う(ステップS14)。ただし、かかる場合(分岐エリア内で直進する場合)は、上述の式(1)のM1をM6に置換するとともにM2をM5に置換した式によって偏位量eを導出しているものとする。そして、制御部11は、処理をステップS11に戻してそれ以降の処理を繰り返し行う。
【0050】
また、ステップS13において、予め指定された進行方向が直進ではないと判定された場合(ステップS13;NO)、制御部11は、予め指定された進行方向が右方向であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0051】
ステップS15において、予め指定された進行方向が右方向であると判定された場合(ステップS15;YES)、制御部11は、第1の速度よりも低速の第2の速度で且つ上述した偏位量eRに基づいて走行制御を行う(ステップS16)。そして、制御部11は、処理をステップS11に戻してそれ以降の処理を繰り返し行う。
【0052】
また、ステップS15において、予め指定された進行方向が右方向ではない、すなわち予め指定された進行方向が左方向であると判定された場合(ステップS15;NO)、制御部11は、第1の速度よりも低速の第2の速度で且つ上述した偏位量eLに基づいて走行制御を行う(ステップS17)。そして、制御部11は、処理をステップS11に戻してそれ以降の処理を繰り返し行う。
【0053】
以上のように、本実施の形態の分岐エリア出入判別システム100は、無人搬送車10と、無人搬送車10を誘導する誘導路20と、を備え、誘導路20のうち分岐エリア(第1分岐エリアA及び第2分岐エリアB)の誘導路20には、S極(一方の磁極)の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aが敷設され、分岐エリア以外の誘導路20には、N極(他方の磁極)の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bが敷設され、無人搬送車10は、センサユニット15によって第1磁気テープ20A及び第2磁気テープ20Bから磁気を検知し、制御部11によってセンサユニット15により検知された磁気の時間変化量を導出し、導出された磁気の時間変化量に基づいて、分岐エリア(第1分岐エリアA及び第2分岐エリアB)への自車の出入を判別したこととなる。
【0054】
これにより、無人搬送車10は、誘導路20を走行している際に、第1磁気テープ20A及び第2磁気テープ20Bから磁気を検知し、検知された磁気の時間変化量を導出し、導出された磁気の時間変化量に基づいて、分岐エリアへの自車の出入を判別するので、誘導路20の脇に別途磁気マーカーを設置しなくても無人搬送車10の分岐エリアへの出入を把握することができる。また、分岐エリアへの無人搬送車10の出入を判別するにあたり、磁気の時間変化量を用いることで、S極とN極との極性変化を変化している途中で捉えることができるので、センサユニット15によって検知される磁気量を基準として分岐エリアへの出入を判別する方法よりも比較的早い段階で分岐エリアへの出入を判別することができる。また、上記の磁気量を基準とした判別方法の場合、誘導路20を構成する床面に多少の凸凹を有しているだけでもセンサユニット15により検知される磁気量が大きく変動してしまうため、判別用の閾値の設定が難しく、分岐エリアへの出入を精確に判別することができないが、磁気の時間変化量を用いた判別方法の場合、磁気量を基準とした判別方法に比べて判別用の閾値の設定が容易であるため、分岐エリアへの出入を精確に判別することができる。
【0055】
また、本実施の形態の分岐エリア出入判別システム100において、無人搬送車10は、センサユニット15として、自車の進行方向と直交する方向に配列された複数の磁気検知センサ151~156を有し、制御部11によって、複数の磁気検知センサ151~156の夫々により検知される磁気の検知量と、当該複数の磁気検知センサ151~156の各配置に対応した座標情報と、に基づいて、所定の各進行方向パターンに対応する偏位量e、eR、eLを導出し、分岐エリアへ自車が進入したと判別された場合、予め指定された進行方向パターンに対応する偏位量に基づいて、自車の進行方向を制御したこととなる。
【0056】
したがって、本実施の形態の分岐エリア出入判別システム100によれば、無人搬送車10の進行方向の制御用として別途センサユニットや磁気マーカーを設けなくても当該無人搬送車10を分岐エリアにおいて所望の進行方向へ適切に誘導することができる。
【0057】
また、本実施の形態の分岐エリア出入判別システム100において、無人搬送車10は、制御部11によって、自車の走行速度を制御し、分岐エリアへ自車が進入したと判別された場合、自車の走行速度を通常よりも低速である第2の速度に制御し、当該分岐エリアから自車が退出したと判別された場合、自車の走行速度を通常の第1の速度に制御したこととなる。
したがって、本実施の形態の分岐エリア出入判別システム100によれば、分岐エリア内では無人搬送車10の走行速度を通常よりも低速である第2の速度に制御することで、分岐により自車の進行方向が変更される際に、センサユニット15による磁気の検知が空振りとなることを抑制することができるので、無人搬送車10を分岐エリアにおいて所望の進行方向へより適切に誘導することができる。
【0058】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアBの誘導路20をそれぞれS極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aで構成するとともに、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアB以外の誘導路20をN極の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bで構成したが、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアBの誘導路20をそれぞれN極の磁気を帯びた第2磁気テープ20Bで構成するとともに、第1分岐エリアA及び第2分岐エリアB以外の誘導路20をS極の磁気を帯びた第1磁気テープ20Aで構成するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、例えば、分岐エリア以外の誘導路20において、磁気量が互いに異なる複数種の第2磁気テープ20Bを敷設し、無人搬送車10が誘導路20を走行している際に、制御部11によって、センサユニット15により検知される磁気量が上記の第2磁気テープ20Bの磁気量に対応する所定の閾値を超えたと判定された場合、当該閾値に対応するコマンドの動作を行うように制御してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、無人搬送車10の通信部14は、無線により通信ネットワークに接続し、通信ネットワークに接続された外部機器との通信を行う構成に限定されるものではなく、例えば、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)の通信方式により、外部機器と近距離無線通信を行う構成でもよいし上記の各構成を兼ね備えていてもよい。
【0062】
また、工場や倉庫において無人搬送車10を用いて荷物等を搬送するケースで上述の分岐エリア出入判別システム100を適用する以外にも、例えば、カメラ等を搭載した無人ロボットを用いて所定のコースを巡回監視するケースで分岐エリア出入判別システム100を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 分岐エリア出入判別システム
10 無人搬送車
11 制御部
12 記憶部
13 操作部
14 通信部
15 センサユニット
151~156 磁気検知センサ
16 駆動部
20 誘導路
20A 第1磁気テープ
20B 第2磁気テープ
A 第1分岐エリア
B 第2分岐エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7