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特開2022-163858鳥害防止具の施工方法、これに用いる施工キット、鳥害防止具、及びリール具
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  • 特開-鳥害防止具の施工方法、これに用いる施工キット、鳥害防止具、及びリール具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163858
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】鳥害防止具の施工方法、これに用いる施工キット、鳥害防止具、及びリール具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20221020BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20221020BHJP
   A01M 29/26 20110101ALI20221020BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
A01M29/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068950
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】池側 勝己
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝弘
【テーマコード(参考)】
2B121
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB25
2B121BB26
2B121FA13
5G352AC02
5G367BB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】施工を容易に行うことができる鳥害防止具の施工方法、これに用いる施工キット、鳥害防止具及びリール具を提供する。
【解決手段】鳥害防止具の施工方法は、n個の鳥害防止具2と、棒状工具と、リール具3と、を準備する第1ステップと、リール具のロールから巻き出された索条Wを第k鳥害防止具(1≦k<n)の把持部に取り付けるとともに、第k鳥害防止具を架空電線Cに取り付ける第2ステップと、リール具のガイド部を架空電線に載せた状態で、棒状工具によってリール具を第k鳥害防止具から施工方向に離間させることで、ロールから索条を繰り出す第3ステップと、第k鳥害防止具から施工方向に離間した位置に、第(k+1)鳥害防止具を架空電線に取り付けるとともに、第(k+1)鳥害防止具の把持部に、ロールから繰り出された索条を取り付ける第4ステップと、を備え、第2ステップから第4ステップを、n以下の所定回数繰り返す。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空電線に取付けられる電線取付け部、及び前記電線取付け部よりも上方に設けられ、鳥害防止用の索条が取り付けられる、把持部、を備えた、n個の(nは自然数)鳥害防止具と、
長尺工具と、
前記索条が巻き取られたロール、前記架空電線に沿って移動可能なガイド部、及び前記長尺工具に係合可能な取付部、を有するリール具と、
を準備する第1ステップと、
前記リール具の前記ロールから巻き出された前記索条を前記第k鳥害防止具(1≦k<n)の把持部に取り付けるとともに、当該第k鳥害防止具を前記架空電線に取り付ける第2ステップと、
前記リール具の前記ガイド部を前記架空電線に載せた状態で、前記長尺工具によって前記リール具を前記第k鳥害防止具から施工方向に離間させることで、前記ロールから前記索条を繰り出す第3ステップと、
前記第k鳥害防止具から前記施工方向に離間した位置に、前記第(k+1)鳥害防止具を前記架空電線に取り付けるとともに、前記第(k+1)鳥害防止具の前記把持部に、前記ロールから繰り出された前記索条を取り付ける第4ステップと、
を備え、
前記第2ステップから前記第4ステップを、前記n以下の所定回数繰り返す、鳥害防止具の施工方法。
【請求項2】
前記架空電線に障害物が設けられているとき、前記第3ステップにおいては、前記棒状工具によって、前記リール具を前記架空電線から上方に持ち上げ、前記施工方向へ前記障害物を乗り越えた後、当該リール具を前記架空電線に載せる、請求項1に記載の鳥害防止具の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鳥害防止具の施工方法に用いる施工キットであって、
前記n個の鳥害防止具と、
前記リール具と、
を備えている、施工キット。
【請求項4】
請求項1または2に記載の鳥害防止具の施工方法に用いる鳥害防止具であって、
前記電線取付け部と、
前記把持部と、
を備え、
前記把持部は、
前記電線取付部から上方に延びる第1挟持部材と、
前記第1把持部に対して近接離間し、前記第1挟持部材との間で、前記索条を挟むように構成された第2挟持部材と、
を備え、
前記第2挟持部材は、
前記第1挟持部材側に延びる係合部と、
前記係合部の基端付近から上方に延びる延在部と、
を備え、
前記第1挟持部材は、
前記第2挟持部材の係合部が係合可能な被係合部と、
前記被係合部よりも上方に設けられ、前記第2挟持部材とは反対側の面から突出する突出部と、
を備え、
前記係合部が前記被係合部に係合したときに、前記延在部と対向する位置に、前記突出部が配置されるように構成されている、鳥害防止具。
【請求項5】
前記被係合部は、貫通孔により形成され、
前記係合部が前記被係合部に係合したときに、前記係合部の一部が前記貫通孔を通過し、前記第1挟持部材において前記第2挟持部材とは反対側の面から突出するように構成されており、
前記係合部が、前記貫通孔を介して前記反対側の面から突出したときの当該係合部の先端が、前記突出部の先端よりも前記反対側の面側に位置している、請求項4に記載の鳥害防止具。
【請求項6】
請求項1または2に記載の鳥害防止具の施工方法に用いるリール具であって、
前記ロールと、
前記ガイド部と、
少なくとも1つの前記取付部と、
を備え、
前記取付部に沿って、前記ガイド部に至る前記架空電線の案内路が形成されている、リール具。
【請求項7】
一対の前記取付部が、所定間隔をおいて水平方向に並ぶように配置され、
前記案内路が、前記一対の取付部の間に形成されている、請求項6に記載のリール具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具の施工方法、これに用いる施工キット、鳥害防止具、及びリール具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に鳥が止まるのを防止するための索条を取り付けるための種々の鳥害防止具が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の鳥害防止具が取り付けられたユニットが開示されている。各鳥害防止具には予め索条が取り付けられており、このユニットを電線に配置した上で、複数の鳥害防止具を離間させれば、これによって索条が鳥害防止具間で張ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6437898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のユニットでは、予め各鳥害防止具に索条を取り付けておく必要があり、また、電線上で鳥害防止具をユニットから分離させなければならないため、施工が煩雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、施工を容易に行うことができる、鳥害防止具の施工方法、これに用いる施工キット、鳥害防止具、及びリール具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鳥害防止具の施工方法は、架空電線に取付けられる電線取付け部、及び前記電線取付け部よりも上方に設けられ、鳥害防止用の索条が取り付けられる、把持部、を備えた、n個の(nは自然数)鳥害防止具と、棒状工具と、前記索条が巻き取られたロール、前記架空電線に沿って移動可能なガイド部、及び前記棒状工具に係合可能な取付部、を有するリール具と、を準備する第1ステップと、前記リール具の前記ロールから巻き出された前記索条を前記第k鳥害防止具(1≦k<n)の把持部に取り付けるとともに、当該第k鳥害防止具を前記架空電線に取り付ける第2ステップと、前記リール具の前記ガイド部を前記架空電線に載せた状態で、前記棒状工具によって前記リール具を前記第k鳥害防止具から施工方向に離間させることで、前記ロールから前記索条を繰り出す第3ステップと、前記第k鳥害防止具から前記施工方向に離間した位置に、前記第(k+1)鳥害防止具を前記架空電線に取り付けるとともに、前記第(k+1)鳥害防止具の前記把持部に、前記ロールから繰り出された前記索条を取り付ける第4ステップと、を備え、前記第2ステップから前記第4ステップを、前記n以下の所定回数繰り返す。
【0007】
上記鳥害防止具の取付方法では、前記架空電線に障害物が設けられているとき、前記第3ステップにおいては、前記棒状工具によって、前記リール具を前記架空電線から上方に持ち上げ、前記施工方向へ前記障害物を乗り越えた後、当該リール具を前記架空電線に載せるように構成することができる。
【0008】
本発明に係る施工キットは、上述したいずれかの鳥害防止具の施工方法に用いる施工キットであって、前記n個の鳥害防止具と、前記リール具と、を備えている。
【0009】
本発明に係る鳥害防止具は、上述したいずれかの鳥害防止具の施工方法に用いる鳥害防止具であって、前記電線取付け部と、前記把持部と、を備え、前記把持部は、前記電線取付部から上方に延びる第1挟持部材と、前記第1把持部に対して近接離間し、前記第1挟持部材との間で、前記索条を挟むように構成された第2挟持部材と、を備え、前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材側に延びる係合部と、前記係合部の基端付近から上方に延びる延在部と、を備え、前記第1挟持部材は、前記第2挟持部材の係合部が係合可能な被係合部と、前記被係合部よりも上方に設けられ、前記第2挟持部材とは反対側の面から突出する突出部と、を備え、前記係合部が前記被係合部に係合したときに、前記延在部と対向する位置に、前記突出部が配置されるように構成されている。なお、この鳥害防止具は、上述した施工方法以外にも、適用することができる。すなわち、電線に取り付けられ、索条を固定するように使用されるのであれば、施工方法は特には限定されない。
【0010】
上記鳥害防止具においては、前記被係合部は、貫通孔により形成され、前記係合部が前記被係合部に係合したときに、前記係合部の一部が前記貫通孔を通過し、前記第1挟持部材において前記第2挟持部材とは反対側の面から突出するように構成することができ、前記係合部が、前記貫通孔を介して前記反対側の面から突出したときの当該係合部の先端が、前記突出部の先端よりも前記反対側の面側に位置するように構成することができる。
【0011】
本発明に係るリール具は、上述したいずれかの鳥害防止具の施工方法に用いるリール具であって、前記ロールと、前記ガイド部と、少なくとも1つの前記取付部と、を備え、前記取付部に沿って、前記ガイド部に至る前記架空電線の案内路が形成されている。
【0012】
上述したリール具においては、一対の前記取付部が、所定間隔をおいて水平方向に並ぶように配置され、前記案内路が、前記一対の取付部の間に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】架空電線に取付けた状態で、架空電線の軸方向から見た第1鳥害防止具の正面である。
図2図1の第1鳥害防止具の斜視図である。
図3図2とは反対側から見た第1鳥害防止具の斜視図である。
図4】棒状部材の例である。
図5】第1鳥害防止具が鳥害防止用索条を挟持している状態を示す断面図である。
図6】索条の取付を説明する図である。
図7】架空電線に取付けた状態で、架空電線の軸方向から見た第2鳥害防止具の正面図である。
図8図7の第2鳥害防止具の斜視図である。
図9図7とは反対側から見た第2鳥害防止具の斜視図である。
図10】第2鳥害防止具への電線の取付を説明する図である。
図11】リール具の正面図である。
図12】施工対象となる電線を示す図である。
図13】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図14】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図15】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図16】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図17】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図18】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図19】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
図20】鳥害防止具の施工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る鳥害防止具の施工方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。この施工方法では、架空電線に複数の鳥害防止具を所定間隔をおいて取り付けるとともに、取り付けられた複数の鳥害防止具に亘って、鳥害防止のための索条を取り付ける。以下では、まず、この施工方法に用いる施工キットについて説明し、その後、この施工キットを用いた鳥害防止具の施工方法について説明する。
【0016】
<1.施工キット>
本実施形態に係る施工キットは、第1鳥害防止具、第2鳥害防止具、及びリール具により構成されている。以下、各器具について、詳細に説明する。
【0017】
<1-1.第1鳥害防止具>
図1は架空電線に取付けた状態で、架空電線の軸方向から見た第1鳥害防止具の正面図、図2図1の第1鳥害防止具の斜視図、図3図2とは反対側から見た第1鳥害防止具の斜視図である。以下では、説明の便宜のため、図1図3に示す方向にしたがって説明を行う。但し、本発明は、これらの方向に限定されるものではない。
【0018】
図1図3に示すように、第1鳥害防止具1は、架空電線である電線Cに取付けられる電線取付け部10と、電線取付け部10から上方に延びる第1挟持部材20と、第1挟持部材20との間で、索条Wを把持する第2挟持部材30と、を備えている。
【0019】
電線取付け部10は、第1挟持部材20の下端部から下方に延びる保持具本体11と、保持具本体11の上端部近傍に形成され、水平方向(前後方向)に延びる軸部12と、この軸部12の軸線L1まわりに旋回可能に連結される保持具蓋体13と、を備えている。
【0020】
保持具本体11は、第1挟持部材20から延びる上部111と、この上部111から下方に延びる中間部112と、この中間部112の下端部に連結された下部113と、を有し、全体として正面視C字状に形成されている。下部113には、これを貫通するねじ孔(図示省略)が設けられている。ねじ孔にはボルト14が螺合されており、その上端部には電線支持部15が設けられている。この電線支持部15は、保持具本体11の内部、つまり上部111と下部113との間に位置しており、板状に形成されている。また、この電線支持部15は、電線Cを下側から支持するように、電線Cの軸方向に延びる凹部が形成されている。一方、ボルト14の下端部、つまり保持具本体11の下方には操作部16が設けられている。この操作部16を回動させることで、ボルト14とともに電線支持部15が上下方向に移動し、電線Cを保持具本体11の上部111の下面との間で挟み込んで固定することができる。また、作業性を高めるために、保持具本体11の中間部112と下部113との連結部分付近には、グリップ11gが形成されている。
【0021】
操作部16は、円筒状に形成されており、その壁部には、図4に示すような棒状工具5(長尺工具)の突部51が嵌まる切り欠き161が形成されている。したがって、施工作業者は、棒状工具5の先端を操作部16に挿入するとともに、突部51を切り欠き161に係合させた状態で、棒状工具5を軸周りに回転させる。これにより、操作部16が回転し、上記のようにボルト14を進退させることができるようになっている。
【0022】
上述した軸部12は、保持具本体11の上部111の前端部に設けられており、この軸部12に保持具蓋体13の上端部が取り付けられている。これにより、保持具蓋体13は、軸部12周りに旋回可能に連結されている。保持具蓋体13の下端部は、保持具本体11の下部113の前端部に着脱可能に固定されるようになっている。すなわち、保持具蓋体13の下端部に形成された固定孔131と、下部113の前端部に設けられた突部116とが着脱自在に係合するようになっている。この構成により、保持具蓋体13は、軸部12周りに旋回し、上部111の前端部と下部113の前端部との間を閉じる閉位置と、これらの間を開く開位置とを選択的に取り得るようになっている。
【0023】
以上の構成により、電線Cは次のように取り付けられる。まず、保持具蓋体13を開位置に移動させる。次に、電線Cを、電線支持部15上に配置し、操作部16を回転させることで、電線支持部15を上昇させる。そして、保持具本体11の上部111と電線支持部15との間で電線Cが強固に挟まれるまで、操作部16を回転させる。その後、保持具蓋体13を閉位置に移動させれば、電線Cの取り付けが完了する。
【0024】
なお、図1図3に示すように、保持具本体11は、第1挟持部材20に対して、斜め下方に延びている。すなわち、ボルト14の軸方向が、第1挟持部材20の延びる上下方向に対して傾斜し、操作部16が第1挟持部材20よりも左側に位置するようになっている。これにより、施工作業者側に操作部を向けることができ、作業性を向上することができる。
【0025】
次に、第1挟持部材20について説明する。第1挟持部材20は、板状に形成された本体部21を有し、この本体部21が電線取付け部10の上端から上方に方向に延びている。本体部21の下端部には、水平方向(前後方向)に延びる軸部22が形成されており、この軸部22に後述する第2挟持部材30が旋回可能に取り付けられる。第2挟持部材30は、第1挟持部材20に対して旋回し、第1挟持部材20と重なる閉位置と、第1挟持部材20から離れる開位置とを取り得るようになっている。そして、第2挟持部材30が閉位置にあるとき、第1挟持部材20との間で索条Wを挟むようになっている。
【0026】
本体部21の左側の面には、上下方向に延びる窪み部29が設けられており、この窪み部29を挟むように、左側に突出する一対の第1爪部26と、一対の第2爪部27とが設けられている。各第1爪部26は本体部21の中間付近に配置されており、各第2爪部27は第1爪部26よりも下方に配置されている。後述するように、施工作業者は、いずれかの爪部26,27に索条Wを載せるように施工を行う。
【0027】
本体部21において、第1爪部26の上方には、後述する第2挟持部材30の係合爪32が係合する係合孔23が形成されている。さらに、本体部21の右側の面において、この係合孔23よりも上方には、右側へ突出する板状の掛合部25が形成されている。掛合部25は、本体部21から突出する第1部位251と、この第1部位の先端から上方に突出する第2部位252とを有している。
【0028】
次に、第2挟持部材30について説明する。第2挟持部材30は、板状に形成された本体部31を有している。第2挟持部材30の下端部は上述したように、第1挟持部材20の軸部に旋回可能に取り付けられている。本体部31の右側の面には、水平方向(前後方向)に所定間隔をおいて配置される一対の板状の押圧部34が設けられている。第2挟持部材30が閉位置にあるとき、両押圧部34は、第1挟持部材20の窪み部29に係合するようになっている。
【0029】
各押圧部34には、上下方向に間隔をおいて形成された凹部が設けられている。ここでは、上側の凹部を第1凹部341、下側の凹部を第2凹部342と称することとする。第2挟持部材30が閉位置にあるとき、第1凹部341は第1爪部26と対応する位置に配置され、第2凹部342は第1爪部26と対応する位置に配置されるようになっている。
【0030】
図5は、鳥害防止具1が鳥害防止用索条Wを挟持している状態を示す断面図である。図5に示すように、索条Wは、第1挟持部材20の窪み部29と第2挟持部材30の押圧部34の間に挟持され、水平方向に動かないように保持されている。また、索条Wを第1爪部26に載せる場合、索条Wは、第1爪部26上に位置するとともに、第1凹部341内に位置するので、上下方向に動かないように保持される。同様に、索条Wを第2爪部27に載せる場合、索条Wは、第2爪部27上に位置するとともに、第2凹部342内に位置するので、上下方向に動かないように保持される。
【0031】
本体部31の右側の面において、押圧部34の上方には、板状の係合爪32が形成されており、上述したように、この係合爪32は第1挟持部材20の係合孔23に係合するようになっている。第2挟持部材30が閉位置にあるとき、係合爪32は、係合孔23を貫通し、その先端が第1挟持部材20の右側に突出するようになっている。このとき、後述する図6(b)に示すように、掛合部25が、係合爪32よりも右側に突出するように、掛合部25及び係合爪32の長さが調整されている。
【0032】
また、本体部31の上端には、正面視L字状の延在部38が設けられている。この延在部38は、本体部31の上端の左側の面から上方に延びる板状の第1部位381と、第1部位381の上端から右側へ延びる板状の第2部位382とを有している。そして、第2挟持部材30が閉位置にあるときには、第2部位382の先端が第1挟持部材20において、掛合部25と対応する位置に当接するようになっている。
【0033】
第1挟持部材20および第2挟持部材30は、耐候性および電気絶縁性の高い熱可塑性合成樹脂で形成することができ、例えば、射出成形によって形成される。耐候性および電気絶縁性の高い熱可塑性合成樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、AES(Acrylonitrile Ethylene Styrene)のいずれかを好適に用いることができる。この点は、第2鳥害防止具2においても同様である。
【0034】
次に、索条の取付について、図6を参照しつつ説明する。まず、先端にヤットコのような挟持具が取り付けられた挟持用工具(長尺工具)を準備する。次に、図6(a)に示すように、索条Wを第1爪部26又は第2爪部27上に配置する。図6(a)の例では、第1爪部26上に配置している。次に、挟持用工具で、第2挟持部材30の延在部38及び第1挟持部材20の掛合部25を挟み、第2挟持部材30を閉位置に移動させる。これにより、図6(b)に示すように、係合爪32が、係合孔23に係合し、第2挟持部材30が第1挟持部材20に保持されるとともに、索条Wが両挟持部材20,30の間に挟持される。
【0035】
<1-2.第2鳥害防止具>
図7は架空電線に取付けた状態で、架空電線の軸方向から見た第2鳥害防止具の正面図、図8図7の第2鳥害防止具の斜視図、図9図7とは反対側から見た第2鳥害防止具の斜視図である。以下では、説明の便宜のため、図7図9に示す方向にしたがって説明を行う。但し、本発明は、これらの方向に限定されるものではない。
【0036】
図7図9に示すように、第2鳥害防止具2は、架空電線である電線Cに取付けられる電線取付部40と、電線取付部40から上方に延びる第1挟持部材50と、第1挟持部材50との間で、索条Wを把持する第2挟持部材60と、を備えている。第2鳥害防止具において、第1挟持部材50と第2挟持部材60の構成は、第1鳥害防止具1と同じであるため、説明を省略する。
【0037】
電線取付部40は、外形が矩形状の基台部41と、この基台部41の右前端部から上方に延びる正面視L字状の第1保持部42と、基台部41の左後端部から上方に延びる正面視L字状の第2保持部と、を有している。したがって、第1保持部42と第2保持部43とは前後方向に間隔をおいて配置されている。
【0038】
第1保持部42は、基台部41から上方に延びる第1部位421と、第1部位421の上端から左側へ延びる第2部位422とを有している。同様に、第2保持部43は、基台部41から上方に延びる第1部位431と、第1部位431の上端から右側へ延びる第2部位432とを有している。上述した第1挟持部材50は、第1保持部42の第2部位422から上方に延びるように連結されている。
【0039】
基台部41の中央には、下方に延びる円筒状の筒部材44が配置されており、この筒部材44には、図示を省略するバネによって上方に付勢される棒状部材45が取り付けられている。そして、この棒状部材45の上端には、板状に形成された電線支持部46が取り付けられている。この構成により、図5図7に示すように、電線Cは、第1保持部42及び第2保持部43の第2部位422,432と、電線支持部46との間で保持されるようになっている。また、電線支持部46は、バネによって上方に付勢されているため、電線支持部46上にある電線Cは、第1保持部42及び第2保持部43の第2部位422,432に押しつけられ、これによって電線Cは、電線取付部40に保持されるようになっている。
【0040】
筒部材44の下端部には、円筒状の操作部47が取り付けられている。この操作部47の壁部には、後述する棒状工具(長尺工具)5の突部51が嵌まる切り欠き471が形成されている。したがって、施工作業者は、棒状工具5の先端を操作部47に挿入するとともに、突部51を切り欠き471に係合させた状態で、第2鳥害防止具2を移動させることができる。
【0041】
この電線取付部40に対しては、図10に示すように、電線Cが取り付けられる。図10においては、グレーの矢印が施工作業者による第2鳥害防止具2の動作を示し、破線の矢印が第2鳥害防止具2に対する電線Cの相対的な移動を示している。まず、第2鳥害防止具2の操作部47に棒状工具5を取り付けた状態で、電線Cの下方から第2鳥害防止具2を上昇させ、電線Cを第1保持部42と第2保持部43との間に挿入する。これにより、電線Cが電線支持部46上に配置される。この状態で第2鳥害防止具2を押し上げると、電線Cによって電線支持部46が押し下げられる。そして、電線Cが、第1保持部42の第2部位422の先端と基台部41との隙間、及び第2保持部43の第2部位432の先端と基台部41との隙間まで達すると、棒状工具5によって第2鳥害防止具2を筒部材44の軸方向周りに回転させながら、電線Cをこれらの隙間に挿入する。これにより、図5図7に示す位置に電線Cが配置される。そして、長尺工具を取り外せば、電線支持部46によって電線Cが押し上げられ、電線取付部40に保持されるようになっている。
【0042】
第2鳥害防止具2に対する索条Wの取付方法は、第1鳥害防止具1と同じであるため、説明を省略する。
【0043】
<1-3.リール具>
次に、リール具3について説明する。図11はリール具の正面図である。図11に示すように、リール具3は、正面視矩形状の第1取付部70と、この第1取付部70と隙間(案内路)を空けて隣接する第2取付部80と、を備えている。両取付部70,80は、空洞を有する枠状に形成されており、上辺71,81が水平方向に延びるように形成されている。そして、両取付部70,80の上辺71,81同士が、水平方向に延びる棒状の連結部85によって連結されており、これによって両取付部70,80の間に隙間が形成されている。また、両取付部70,80の間の隙間の上端付近には、ガイド部87が設けられている。このガイド部87は、電線Cに載るように鼓型に形成されており、連結部85と平行な軸周りに回転可能となっている。
【0044】
また、第1取付部70の左の下端部には下方に延びる第1部位751と、この第1部位751の下端部から右側へ延びる第2部位752と、を有する正面視L字状の延在部75が設けられている。そして、この延在部75の第2部位752には、索条Wが巻き取られたロール90が回転可能に取り付けられている。したがって、索条Wはロール90が回転することで繰り出されるようになっている。また、電線Cは、第2取付部80とロール90との間を通り、さらに両取付部70,80の間の隙間を通ってガイド部87まで達するように取り付けられる。
【0045】
<2.鳥害防止具の施工方法>
次に、上記のように構成された施工キットを用いた鳥害防止具の施工方法について説明する。まず、2個の第1鳥害防止具1と、施工する電線の長さに応じた数の第2鳥害防止具2を準備する。第1鳥害防止具1は、施工する電線Cの両端部に配置され、その間に複数の第2鳥害防止具2が配置される。隣接する鳥害防止具1,2の間隔は約2mにするのが一般的ではあるが、施工状況に応じて適宜変更できるため、特には限定されない。以下では、電線C及び索条Wの各鳥害防止具1,2への取付は、上述したため、説明を省略する。
【0046】
ここでは、図12に示すような、平行に配置された複数の架空電線Cの1つに鳥害防止具を施工する例について説明する。また、複数の電線Cは、連結用の線材Bによって所定間隔おきに連結されている。なお、以下では、説明の便宜のため、鳥害防止具を施工する方向の基端側を上流側、その反対側を下流側と称することとする。また、図13図16及び図20においては、説明の便宜のため、施工を行う電線のみ記載している。
【0047】
まず、リール具3から索条Wを繰り出し、その先端を第1鳥害防止具1に取り付ける。そして、リール具3を電線C上に配置する。すなわち、電線C上にリール具3のガイド部87を配置する。次に、図13に示すように、第1鳥害防止具1をリール具3よりも上流側において電線Cに固定する。
【0048】
続いて、図14に示すように、挟持用工具100をリール具3のいずれかの取付部70,80に係合し、挟持用工具100を下流側に移動させる。これにより、リール具3が電線C上で下流側にスライドし、リール具3から索条Wが繰り出される。このとき、リール具3は、第1鳥害防止具1から2m以上離す。次に、第2鳥害防止具2を準備し、図15に示すように、第2挟持部材60を開状態にした第2鳥害防止具2を棒状部材5によって上方に持ち上げながら、いずれかの爪部26,27に繰り出された索条Wを載せる。そして、この状態のまま、リール具3よりも上流側で第2鳥害防止具2を電線Cに取り付ける。これに続いて、図16に示すように、第2鳥害防止具2において、爪部26,27に索条Wを載せたまま第2挟持部材60を閉状態とする。これにより、索条Wが第2鳥害防止具2に取り付けられる。その後、以上のようにしてリール具3のスライドと第2鳥害防止具2との取付を繰り返す。
【0049】
上記のように電線Cには線材Bが設けられているため、施工においてはこれがリール具3のスライドの障害になるときがある。この場合には、次のように施工を行う。まず、図17に示すように、リール具3を線材Bの上流側の近傍に配置する。続いて、図18に示すように、挟持用工具100の先端が、線材Bの上流側から線材Bの上方を通るように操作し、挟持用工具100の先端を、リール具3のいずれかの取付部70,80に係合させる。次に、続いて、図19に示すように、挟持用工具100によってリール具3を電線Cから持ち上げ、線材Bの上方で下流側に向かって通過させた後、線材Bの下流側でリール具3を電線C上に配置する。この操作によって、障害となる線材Bを避けてリール具3を電線C上で移動させることができる。
【0050】
こうして、施工が進むと、図20に示すように、最後の鳥害防止具として、第1鳥害防止具1を電線Cに取り付け、さらに索条Wを取り付ける。最後に、第1鳥害防止具1よりも下流側に延びる索条Wを切断すれば、施工が完了する。
【0051】
<3.特徴>
以上のように本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
(1)上記施工方法によれば、電線に鳥害防止具1,2を取り付けるとともに、リール具3によって索条Wを繰り出しながら、繰り出された索条Wに、電線Cに取り付けられた鳥害防止具1,2を取り付けるという作業を繰り返すことで、鳥害防止具の施工を行うことができる。したがって、従来技術に比べ施工が簡易である。なお、索条Wを介して電線Cと作業者(あるいは作業者用のバケット)とを橋渡しすると感電のおそれがあるが、上記のようなリール具3を用いると、作業者が索条Wに直接触れないため、これを防止することができる。
【0052】
(2)各鳥害防止具1,2には、索条Wを取り付けるための機構として、第1及び第2挟持部材20,30が設けられている。第2挟持部材30には、係合爪32よりも上方に延在部38が設けられており、この延在部38を挟持用工具100で第1挟持部材20側に押圧することで、第2挟持部材30を閉位置に移動させている。ここで、係合爪32の付近を挟持用工具100で押圧することもできるが、延在部38は係合爪32よりも上方、つまり軸部22よりも離れた位置に配置されているため、延在部38を押圧することで、第2挟持部材30を、より強い力で旋回させることができる。したがって、係合爪32を係合孔23に対して強い力で係合させることができる。特に、掛合部25と対応する位置に延在部38が接するため、掛合部25と延在部38に対して効率的に力を作用させることができる。したがって、作業性を向上することができる。
【0053】
(3)図6(b)に示すように、第2挟持部材30が閉位置にあるとき、掛合部25の先端が、係合爪32の先端よりも突出するように構成されている。このため、係合爪32が、掛合部25に当接する挟持用工具に干渉するのを防止することができ、作業を効率的に行うことができる。
【0054】
(4)リール具3においては、両取付部70,80の間に隙間が形成されており、この隙間を案内路として通って電線Cをガイド部87に誘導するため、電線Cをガイド部87に位置決めしやすいという利点がある。
【0055】
(5)本実施形態では、施工領域の最上流側と最下流側とに第1鳥害防止具1を取り付けているが、これは、第1鳥害防止具1では、電線支持部15によって電線Cを強固に固定できるため、施工領域での鳥害防止具のズレを防止することができるからである。
【0056】
(6)なお、棒状工具5及び挟持用工具100の長さが法規によって定められている長さ(60cm)以上であれば、施工作業者は電線から60cm以上離れて作業ができるため、絶縁手袋などの絶縁装備が不要になり、安全に作業を行うことができる。
【0057】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0058】
<4-1>
上記実施形態では、電線Cの施工領域の両端に第1鳥害防止具1を取り付け、その間に第2鳥害防止具2を取り付けているが、これに限定されず、いずれかの鳥害防止具1,2を取り付けることができる。例えば、第1鳥害防止具1のみを用いて施工を行うこともできる。なお、上記実施形態では、施工開始から1個目の鳥害防止具として第1鳥害防止具1を用い、2個目の鳥害防止具として第2鳥害防止具2を用いているが、例えば、第1鳥害防止具1を2個、第2鳥害防止具2を5個用いる場合には、本発明のnは7になり、2個目に施工した第2鳥害防止具2は、k=2の鳥害防止具となる。
【0059】
また、上記第1及び第2鳥害防止具1,2は、鳥害防止具の一例である。鳥害防止具としては、少なくとも、電線Cへの取付が可能な電線取付け部と、索条Wの取り付けが可能な挟持部材が設けられていればよく、これらの構成も特には限定されない。
【0060】
<4-2>
上述したリール具3の構成は一例であり、種々の変更が可能である。例えば、取付部は1つでもよく、また、長尺工具5,100を引っ掛けることができれば、枠状以外の形態でもよい。そして、索条Wが巻き取られたロール、長尺工具を引っ掛けることができる少なくとも1つの取付部、及び電線上を移動するガイド部が、少なくとも設けられていれば、その他の構成は特には限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1 第1鳥害防止具
2 第2鳥害防止具
3 リール具
23 係合孔(被係合部)
25 掛合部(突出部)
32 係合爪(係合部)
38 延在部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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