(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163867
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】配線基板、モジュール、配線基板の製造方法およびモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20221020BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01Q1/38
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068969
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】細田 昌太郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】武 誠司
【テーマコード(参考)】
5E338
5J046
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA13
5E338AA16
5E338BB75
5E338CC01
5E338CC04
5E338CD15
5E338EE11
5J046AA09
5J046AB06
5J046PA07
5J046PA09
(57)【要約】
【課題】給電線と給電部との間の電気的な接続性を向上させることが可能な、配線基板、モジュール、配線基板の製造方法およびモジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板10は、基板11と、基板11上に配置され、複数の配線21を含むメッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された給電部40と、基板11上に配置され、メッシュ配線層20および給電部40を覆う保護層17と、を備えている。基板11は、波長400nm以上700nm以下の光線の透過率が85%以上である。保護層17の厚みT
2は、0.05μm以上1.8μm以下である。保護層17の表面の鉛筆硬度は、B以上2H以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
基板と、
前記基板上に配置され、複数の配線を含むメッシュ配線層と、
前記メッシュ配線層に電気的に接続された給電部と、
前記基板上に配置され、前記メッシュ配線層および前記給電部を覆う保護層と、を備え、
前記基板は、波長400nm以上700nm以下の光線の透過率が85%以上であり、
前記保護層の厚みは、0.05μm以上1.8μm以下であり、
前記保護層の表面の鉛筆硬度は、B以上2H以下である、配線基板。
【請求項2】
前記保護層の誘電正接は、0.005以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記保護層は、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂を含む、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記保護層は、二酸化ケイ素を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
電波送受信機能を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板と、
導電粒子を含む異方性導電フィルムを介して、前記配線基板に圧着された給電線と、を備え、
前記異方性導電フィルムは、前記給電部に対向するように配置され、
前記給電線は、前記導電粒子が前記保護層内に入り込むことにより、前記給電部に電気的に接続されている、モジュール。
【請求項7】
配線基板の製造方法であって、
基板を準備する工程と、
前記基板上に、複数の配線を含むメッシュ配線層と、前記メッシュ配線層に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、
前記基板上に、前記メッシュ配線層および前記給電部を覆うように、保護層を形成する工程と、を備え、
前記基板は、波長400nm以上700nm以下の光線の透過率が85%以上であり、
前記保護層の厚みは、0.05μm以上1.8μm以下であり、
前記保護層の表面の鉛筆硬度は、B以上2H以下である、配線基板の製造方法。
【請求項8】
モジュールの製造方法であって、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板を準備する工程と、
導電粒子を含む異方性導電フィルムを介して、給電線を前記配線基板に圧着させる工程と、を備え、
前記異方性導電フィルムは、前記給電部に対向するように配置され、
前記給電線は、前記導電粒子が前記保護層内に入り込むことにより、前記給電部に電気的に接続されている、モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、配線基板、モジュール、配線基板の製造方法およびモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化および軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域に搭載することができるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナにおいて、アンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-66610号公報
【特許文献2】特許第5636735号明細書
【特許文献3】特許第5695947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルムアンテナにおいては、導電体メッシュ層や、導電体メッシュ層を外部の機器に電気的に接続させるための給電部を保護するために、導電体メッシュ層および給電部を保護層で覆うことが好ましい。しかしながら、給電部を保護層で覆った場合、フィルムアンテナを外部の機器に接続させるための給電線と、給電部との間の電気的な接続が不安定になる可能性がある。
【0006】
本実施の形態は、給電線と給電部との間の電気的な接続性を向上させることが可能な、配線基板、モジュール、配線基板の製造方法およびモジュールの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態による配線基板は、基板と、前記基板上に配置され、複数の配線を含むメッシュ配線層と、前記メッシュ配線層に電気的に接続された給電部と、前記基板上に配置され、前記メッシュ配線層および前記給電部を覆う保護層と、を備え、前記基板は、波長400nm以上700nm以下の光線の透過率が85%以上であり、前記保護層の厚みは、0.05μm以上1.8μm以下であり、前記保護層の表面の鉛筆硬度は、B以上2H以下である、配線基板である。
【0008】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記保護層の誘電正接は、0.005以下であってもよい。
【0009】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記保護層は、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
【0010】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記保護層は、二酸化ケイ素を含んでいてもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記配線基板は、電波送受信機能を有していてもよい。
【0012】
本開示の一実施の形態によるモジュールは、本開示による配線基板と、導電粒子を含む異方性導電フィルムを介して、前記配線基板に圧着された給電線と、を備え、前記異方性導電フィルムは、前記給電部に対向するように配置され、前記給電線は、前記導電粒子が前記保護層内に入り込むことにより、前記給電部に電気的に接続されている、モジュールである。
【0013】
本開示の一実施の形態による配線基板の製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板上に、複数の配線を含むメッシュ配線層と、前記メッシュ配線層に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、前記基板上に、前記メッシュ配線層および前記給電部を覆うように、保護層を形成する工程と、を備え、前記基板は、波長400nm以上700nm以下の光線の透過率が85%以上であり、前記保護層の厚みは、0.05μm以上1.8μm以下であり、前記保護層の表面の鉛筆硬度は、B以上2H以下である、配線基板の製造方法である。
【0014】
本開示の一実施の形態によるモジュールの製造方法は、本開示による配線基板を準備する工程と、導電粒子を含む異方性導電フィルムを介して、給電線を前記配線基板に圧着させる工程と、を備え、前記異方性導電フィルムは、前記給電部に対向するように配置され、前記給電線は、前記導電粒子が前記保護層内に入り込むことにより、前記給電部に電気的に接続されている、モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の実施の形態によると、給電線と給電部との間の電気的な接続性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施の形態による配線基板を示す平面図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(
図1のII部拡大図)である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図2のIII-III線断面図)である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図2のIV-IV線断面図)である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による画像表示装置を示す平面図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による画像表示装置を示す断面図(
図5のVI-VI線断面図)である。
【
図7】
図7(a)-(f)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)-(c)は、一実施の形態によるモジュールの製造方法を示す断面図である。
【
図9】
図9は、一実施の形態による配線基板の変形例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、
図1乃至
図8により、一実施の形態について説明する。
図1乃至
図8は本実施の形態を示す図である。
【0018】
以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0019】
本実施の形態において、「X方向」とは、基板の1つの辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ基板の他の辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向およびY方向の両方に垂直かつ配線基板の厚み方向に平行な方向である。また、「表面」とは、Z方向プラス側の面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面をいう。なお、本実施の形態において、メッシュ配線層20が、電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有するメッシュ配線層20である場合を例にとって説明するが、メッシュ配線層20は電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有していなくても良い。
【0020】
[配線基板の構成]
図1乃至
図4を参照して、本実施の形態による配線基板の構成について説明する。
図1乃至
図4は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態による配線基板10は、例えば画像表示装置のディスプレイ上に配置されるものである。このような配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された給電部40と、基板11上に配置され、メッシュ配線層20および給電部40を覆う保護層17と、を備えている。
【0022】
このうち基板11は、平面視で略長方形状であり、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行となっている。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。基板11の長手方向(Y方向)の長さL1は、例えば2mm以上300mm以下の範囲で選択することができ、好ましくは100mm以上200mm以下の範囲で選択することができる。基板11の短手方向(X方向)の長さL2は、例えば2mm以上300mm以下の範囲で選択することができ、好ましくは50mm以上100mm以下の範囲で選択することができる。なお、基板11は、その角部がそれぞれ丸みを帯びていても良い。
【0023】
基板11の誘電率は、特に制限はないが、2.0以上、10.0以下であっても良い。基板11の誘電率は、IEC 62562に準拠して測定することができる。具体的には、まず、基板11のうち、メッシュ配線層20が配置されていない部分を切り出して試験片を準備する。または、基板11のうち、メッシュ配線層20が配置された部分を切り出し、エッチング等によりメッシュ配線層20を除去しても良い。試験片の寸法は、幅が10mm以上20mm以下、長さが50mm以上100mm以下とする。次に、IEC 62562に準拠し、誘電率を測定する。基板11の誘電率は、ASTM D150に準拠して測定することもできる。
【0024】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性および電気絶縁性を有する材料であればよい。本実施の形態において基板11の材料はポリエチレンテレフタレートであるが、これに限定されない。基板11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂材料等の有機絶縁性材料を用いることが好ましい。あるいは、基板11の材料としては、シクロオレフィンポリマー(例えば日本ゼオン社製ZF-16)、ポリノルボルネンポリマー(住友ベークライト社製)等の有機絶縁性材料を用いても良い。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、セラミックス等を適宜選択することもできる。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であってもよい。また、基板11はフィルム状であっても、板状であってもよい。このため、基板11の厚さは特に制限はなく、用途に応じて適宜選択できるが、一例として、基板11の厚みT
1(Z方向の長さ、
図3参照)は、例えば10μm以上200μm以下の範囲とすることができる。
【0025】
また、基板11の誘電正接は、0.002以下であっても良く、0.001以下であることが好ましい。なお、基板11の誘電正接の下限は特にないが、0超としても良い。基板11の誘電正接が上記範囲であることにより、とりわけメッシュ配線層20が送受信する電磁波(例えばミリ波)が高周波である場合に、電磁波の送受信に伴う利得(感度)の損失を小さくすることができる。なお、基板11の誘電正接の下限は、特に限定されない。基板11の誘電率は、特に制限はないが、2.0以上、10.0以下であっても良い。
【0026】
基板11の誘電正接は、IEC 62562に準拠して測定することができる。具体的には、まず、メッシュ配線層20が形成されてない部分の基板11を切り出して試験片を準備する。または、メッシュ配線層20が形成された基板11を切り出し、エッチング等によりメッシュ配線層20を除去しても良い。試験片の寸法は、幅10mmから20mm、長さ50mmから100mmとする。次に、IEC 62562に準拠し、誘電正接を測定する。基板11の誘電率と誘電正接は、ASTM D150に準拠して測定することもできる。
【0027】
また、基板11は、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率は85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、基板11の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下としても良い。基板11の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、配線基板10の透明性を高め、画像表示装置90のディスプレイ91(後述)を視認しやすくすることができる。なお、可視光線とは、波長が400nm~700nmの光線のことをいう。また、可視光線の透過率が85%以上であるとは、公知の分光光度計(例えば、日本分光株式会社製の分光器:V-670)を用いて基板11に対して吸光度の測定を行った際、400nm~700nmの全波長領域でその透過率が85%以上となることをいう。
【0028】
図1において、メッシュ配線層20は、基板11上に複数(3つ)存在しており、それぞれ異なる周波数帯に対応している。すなわち、複数のメッシュ配線層20は、その長さ(Y方向の長さ)L
aが互いに異なっており、それぞれ特定の周波数帯に対応した長さを有している。なお、対応する周波数帯が低周波であるほどメッシュ配線層20の長さL
aが長くなっている。配線基板10が例えば画像表示装置90のディスプレイ91(後述する
図5参照)上に配置される場合、各メッシュ配線層20は、配線基板10が電波送受信機能を有する場合、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。あるいは、配線基板10が電波送受信機能を有していない場合、各メッシュ配線層20は、例えばホバリング(使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能)、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を果たしても良い。また、メッシュ配線層20は、基板11の全面に存在するのではなく、基板11上の一部領域のみに存在していても良い。
【0029】
各メッシュ配線層20は、それぞれ平面視で略長方形状である。各メッシュ配線層20は、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向(幅方向)がX方向に平行となっている。各メッシュ配線層20の長手方向(Y方向)の長さLaは、例えば1mm以上100mm以下の範囲で選択することができ、各メッシュ配線層20の短手方向(X方向)の幅Waは、例えば1mm以上25mm以下の範囲で選択することができる。とりわけメッシュ配線層20は、ミリ波用アンテナであっても良い。メッシュ配線層20がミリ波用アンテナである場合、メッシュ配線層20の長さLaは、1mm以上10mm以下、より好ましくは1.5mm以上5mm以下の範囲で選択することができる。
【0030】
メッシュ配線層20は、それぞれ金属線が格子形状または網目形状に形成され、X方向およびY方向に均一な繰り返しパターンを有している。すなわち
図2に示すように、メッシュ配線層20は、X方向に延びる部分(第2方向配線22)とY方向に延びる部分(第1方向配線21)とから構成されるL字状の単位パターン形状20a(
図2の網掛け部分)の繰り返しから構成されている。
【0031】
図2に示すように、各メッシュ配線層20は、アンテナとしての機能をもつ複数の第1方向配線(アンテナ配線(配線))21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22とを含んでいる。具体的には、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、規則的な格子形状または網目形状を形成している。各第1方向配線21は、アンテナの周波数帯に対応する方向(Y方向)に延びており、各第2方向配線22は、第1方向配線21に直交する方向(X方向)に延びている。第1方向配線21は、所定の周波数帯に対応する長さL
a(上述したメッシュ配線層20の長さ、
図1参照)を有することにより、主としてアンテナとしての機能を発揮する。一方、第2方向配線22は、これらの第1方向配線21同士を連結することにより、第1方向配線21が断線したり、第1方向配線21と給電部40とが電気的に接続しなくなったりする不具合を抑える役割を果たす。
【0032】
各メッシュ配線層20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。また、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。すなわち複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP
1(
図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP
2(
図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、各メッシュ配線層20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、メッシュ配線層20を肉眼で視認しにくくすることができる。また、第1方向配線21のピッチP
1は、第2方向配線22のピッチP
2と等しい。このため、各開口部23は、それぞれ平面視略正方形状となっており、各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。このため、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23の一辺の長さL
3(
図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。なお、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに直交しているが、これに限らず、互いに鋭角または鈍角に交差していてもよい。また、開口部23の形状は、全面で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0033】
図3に示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形形状又は略正方形形状となっている。この場合、第1方向配線21の断面形状は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。また、
図4に示すように、各第2方向配線22の長手方向に垂直な断面(Y方向断面)の形状は、略長方形形状又は略正方形形状であり、上述した第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一である。この場合、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。第1方向配線21と第2方向配線22の断面形状は、必ずしも略長方形形状又は略正方形形状でなくても良く、例えば表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形形状、あるいは、幅方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0034】
本実施の形態において、第1方向配線21の線幅W
1(X方向の長さ、
図3参照)および第2方向配線22の線幅W
2(Y方向の長さ、
図4参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。例えば、第1方向配線21の線幅W
1は0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができ、第2方向配線22の線幅W
2は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。また、第1方向配線21の高さH
1(Z方向の長さ、
図3参照)および第2方向配線22の高さH
2(Z方向の長さ、
図4参照)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0035】
第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であればよい。本実施の形態において第1方向配線21および第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。
【0036】
本実施の形態において、メッシュ配線層20の全体の開口率は、例えば87%以上100%未満の範囲とすることができる。メッシュ配線層20の全体の開口率をこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保することができる。なお、開口率とは、所定の領域(例えばメッシュ配線層20の一部)の単位面積に占める、開口領域(第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域)の面積の割合(%)をいう。
【0037】
再度
図1を参照すると、給電部40は、各メッシュ配線層20にそれぞれ電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形状の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。この給電部40は、配線基板10が画像表示装置90(
図5参照)に組み込まれた際、給電線95を介して画像表示装置90の無線通信用回路92と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の表面に設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。
【0038】
図2に示すように、複数の第1方向配線21は、Y方向マイナス側においてそれぞれ給電部40に電気的に接続されている。この場合、給電部40は、メッシュ配線層20と一体に形成されている。給電部40の厚みT
3(
図4参照)は、第1方向配線21の高さH
1(
図3参照)および第2方向配線22の高さH
2(
図4参照)と同一とすることができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0039】
さらに、
図3および
図4に示すように、基板11の表面上には、メッシュ配線層20および給電部40を覆うように保護層17が形成されている。保護層17は、メッシュ配線層20および給電部40を保護するものであり、基板11の表面の略全域に形成されていても良い。
【0040】
本実施の形態では、保護層17の厚みT
2(
図3参照)は、0.05μm以上1.8μm以下になっている。保護層17の厚みT
2が0.05μm以上であることにより、保護層17の耐擦過性や耐候性を高くすることができる。また、保護層17の厚みT
2が1.8μm以下であることにより、後述する異方性導電フィルム(ACF)95cの導電粒子95dが保護層17内に入り込んだ際に、当該導電粒子95dが給電部40に接触しやすくすることができる。このため、給電部40と、給電線95(
図5参照)との間の電気的な接続を確保することができる。なお、本明細書中、保護層17の厚みT
2とは、給電部40の表面から保護層17の表面までのZ方向距離をいう。
【0041】
また、保護層17の表面の鉛筆硬度は、B以上2H以下である。保護層17の表面の鉛筆硬度がB以上であることにより、保護層17の耐擦過性や耐候性を高くすることができる。また、保護層17の表面の鉛筆硬度が2H以下であることにより、後述する異方性導電フィルム(ACF)95cの導電粒子95dが保護層17内に入り込みやすくすることができ、給電部40と、給電線95との間の電気的な接続性を向上できる。なお、鉛筆硬度は、JISK5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験に準拠して測定することができる。
【0042】
さらに、保護層17の誘電正接は、0.005以下である。これにより、保護層17がメッシュ配線層20における電波の送受信に影響を与えてしまうことを効果的に抑制できる。このため、アンテナ性能が低下してしまうことを抑制できる。なお、保護層17の誘電正接は、基板11の誘電率を測定する方法と同様の方法により、IEC 62562またはASTM D150に準拠して測定することができる。
【0043】
保護層17の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0044】
保護層17は、特にアクリル樹脂またはポリエステル樹脂を含んでいることが好ましい。これにより、第1方向配線21および第2方向配線22や基板11との間の密着性をより向上させることができ、第1方向配線21および第2方向配線22の耐擦過性や耐候性を高くすることができる。更には不可視性を維持し、アンテナ性能を維持することができる。
【0045】
さらに、保護層17は、二酸化ケイ素を含んでいることが好ましい。二酸化ケイ素は、粉末として樹脂に添加しても良い。または、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の手法により、樹脂を実質的に含有しない膜として形成しても良い。これにより、保護層17の表面の滑り性および保護層17の反射防止性を向上できる。
【0046】
ここで、
図5に示すように、本実施の形態による配線基板10は、ディスプレイ91を有する画像表示装置90に組み込まれる。配線基板10は、ディスプレイ91上に配置される。このような画像表示装置90としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。配線基板10のメッシュ配線層20は、給電部40および給電線95を介して画像表示装置90の無線通信用回路92に電気的に接続される。このようにして、メッシュ配線層20を介して、所定の周波数の電波を送受信することができ、画像表示装置90を用いて通信を行うことができる。
【0047】
給電部40と無線通信用回路92とを電気的に接続する給電線95は、例えば、フレキシブルプリント基板であってもよい。
図6に示すように、給電線95は、基材95aと、基材95aに積層された金属配線部95bとを有している。このうち、基材95aは、例えばポリイミド等の樹脂材料や液晶ポリマーを含んでいてもよい。また、金属配線部95bは、例えば、銅を含んでいてもよい。この金属配線部95bは、後述する導電粒子95dを介して、給電部40と電気的に接続されている。なお、
図6において、ディスプレイ91の図示は省略している。
【0048】
このような給電線95は、異方性導電フィルム(ACF)95cを介して、配線基板10に圧着されている。異方性導電フィルム95cは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料と、導電粒子95dとを含んでいる。また、異方性導電フィルム95cは、給電部40に対向するように配置されている。この際、異方性導電フィルム95cの導電粒子95dは、給電線95を配線基板10に圧着する際に、保護層17の表面を突き破り、保護層17内に入り込んでいる。そして、導電粒子95dの一部は、給電部40に接触している。このように、導電粒子95dが保護層17内に入り込むことにより、給電線95が給電部40に電気的に接続されている。なお、異方性導電フィルム95cの一部は、給電線95を配線基板10に圧着する際に、給電線95の周囲に溶出していてもよい。また、導電粒子95dの粒径は、例えば、7μm程度であってもよい。本実施の形態において、配線基板10と、導電粒子95dを含む異方性導電フィルム95cを介して、配線基板10に圧着された給電線95と、を備えるモジュール90Aも提供する。
【0049】
[配線基板の製造方法]
次に、
図7(a)-(f)を参照して、本実施の形態による配線基板の製造方法について説明する。
図7(a)-(f)は、本実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【0050】
まず、透明性を有する基板11を準備する。
【0051】
次に、
図7(a)に示すように、基板11上に、複数の第1方向配線21を含むメッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された給電部40とを形成する。この際、まず、基板11の表面の略全域に金属箔51を積層する。本実施の形態において金属箔51の厚さは、0.1μm以上5.0μm以下であってもよい。本実施の形態において金属箔51は、銅を含んでいてもよい。
【0052】
次に、
図7(b)に示すように、金属箔51の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。この光硬化性絶縁レジスト52としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂を挙げることができる。
【0053】
続いて、
図7(c)に示すように、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト52をパターニングし、絶縁層54(レジストパターン)を形成する。この際、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する金属箔51が露出するように、絶縁層54を形成する。
【0054】
次に、
図7(d)に示すように、基板11の表面上の金属箔51を除去する。この際、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸・塩酸等の強酸、過硫酸塩、過酸化水素またはこれらの水溶液、または以上の組合せ等を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の表面が露出するように金属箔51をエッチングする。
【0055】
続いて、
図7(e)に示すように、絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドン、酸またはアルカリ溶液等を用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、金属箔51上の絶縁層54を除去する。
【0056】
なお、配線基板10の別の製造方法として、いわゆるリフトオフ法と呼ばれる以下の方法を用いることができる。この場合、まず、基板11の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。次に、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト52をパターニングし、絶縁層54(レジストパターン)を形成する。続いて、絶縁層54の表面および絶縁層54から露出する基板11の表面の略全域に金属箔51を積層する。その後、絶縁層54を除去することで、基板11上に形成された金属箔51がパターン状に残る。
【0057】
このようにして、基板11上に配置されたメッシュ配線層20が得られる。この場合、メッシュ配線層20は、第1方向配線21および第2方向配線22を含む。このとき、金属箔の一部によって、給電部40が形成されても良い。あるいは、平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40をメッシュ配線層20に電気的に接続しても良い。
【0058】
その後、
図7(f)に示すように、基板11上に、メッシュ配線層20および給電部40を覆うように、保護層17を形成する。この際、保護層17の厚みT
2が0.05μm以上1.8μm以下となり、保護層17の表面の鉛筆硬度がB以上2H以下となるように、保護層17を形成する。保護層17を形成する方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、スロットダイコート、ダイコート、ナイフコート、インクジェットコート、ディスペンサーコート、キスコート、スプレーコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷を用いても良い。
【0059】
このようにして、基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された給電部40と、基板11上に配置され、メッシュ配線層20および給電部40を覆う保護層17と、を備える配線基板10が得られる。
【0060】
[モジュールの製造方法]
次に、
図8(a)-(c)を参照して、本実施の形態によるモジュールの製造方法について説明する。
図8(a)-(c)は、本実施の形態によるモジュールの製造方法を示す断面図である。
【0061】
まず、
図8(a)に示すように、配線基板10を準備する。この際、例えば、
図7(a)-(f)に示す方法により、配線基板10を作製する。
【0062】
次に、導電粒子95dを含む異方性導電フィルム95cを介して、給電線95を配線基板10に圧着させる。この際、まず、
図8(b)に示すように、配線基板10上に異方性導電フィルム95cを配置する。このとき、異方性導電フィルム95cは、給電部40に対向するように配置される。
【0063】
次いで、
図8(c)に示すように、給電線95を配線基板10に圧着させる。このとき、給電線95に対して圧力および熱を加えることにより、給電線95を配線基板10に圧着させる。この際、異方性導電フィルム95cの導電粒子95dは、保護層17の表面を突き破り、保護層17内に入り込む。そして、導電粒子95dの一部が、給電部40に接触する。このように、導電粒子95dが保護層17内に入り込むことにより、給電線95が給電部40に電気的に接続される。
【0064】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる配線基板の作用について述べる。
【0065】
上述したように、配線基板10は、ディスプレイ91を有する画像表示装置90に組み込まれる(
図5参照)。このようにして、メッシュ配線層20を介して、所定の周波数の電波を送受信することができ、画像表示装置90を用いて通信を行うことができる。
【0066】
ところで、一般に、給電部40を保護するために、給電部40が保護層17によって覆われている場合、配線基板10を画像表示装置90の無線通信用回路92に接続させるための給電線95と、給電部40との間の電気的な接続が不安定になる可能性がある。
【0067】
これに対して本実施の形態によれば、保護層17の厚みT2が、0.05μm以上1.8μm以下であり、保護層17の表面の鉛筆硬度が、B以上2H以下である。これにより、異方性導電フィルム95cの導電粒子95dが保護層17内に入り込むことができるとともに、導電粒子95dが保護層17内に入り込んだ際に、当該導電粒子95dが給電部40に接触しやすくすることができる。このため、給電部40と、給電線95との間の電気的な接続性を向上できる。また、保護層17の耐擦過性や耐候性を高くすることができる。
【0068】
また、配線基板10は、基板11と、基板11上に配置され、複数の第1方向配線21を含むメッシュ配線層20とを備え、基板11が、波長400nm以上700nm以下の光線の透過率が85%以上であるので、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10がディスプレイ91上に配置されたとき、メッシュ配線層20の開口部23からディスプレイ91を視認することができ、ディスプレイ91の視認性が妨げられることがない。
【0069】
また、本実施の形態によれば、保護層17の誘電正接が、0.005以下である。これにより、保護層17がメッシュ配線層20における電波の送受信に影響を与えてしまうことを効果的に抑制できる。このため、アンテナ性能が低下してしまうことを抑制できる。
【0070】
さらに、本実施の形態によれば、保護層17が、二酸化ケイ素を含んでいる。これにより、保護層17の表面の滑り性および保護層17の反射防止性を向上できる。
【0071】
(変形例)
次に、
図9を参照して、本実施の形態による配線基板の変形例について説明する。
図9に示す変形例は、メッシュ配線層20の構成が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図8に示す実施の形態と略同一である。
図9において、
図1乃至
図8に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
図9は、一変形例によるメッシュ配線層20を示す拡大平面図である。
図9において、第1方向配線21と第2方向配線22とは、斜め(非直角)に交わっており、各開口部23は、平面視で菱形状に形成されている。第1方向配線21および第2方向配線22は、それぞれX方向およびY方向のいずれにも平行でないが、第1方向配線21および第2方向配線22のうちのいずれか一方がX方向またはY方向に平行であっても良い。
【0073】
[実施例]
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0074】
(実施例1)
図6に示す構成をもつモジュールを作製した。この場合、配線基板の基板としては、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート製基板を用いた。また、第1方向配線および第2方向配線として、線幅1μm、高さ1μmの銅配線をポリエチレンテレフタレート製基板上に形成した。さらに、保護層として、昭和電工マテリアルズ社製の転写用のハードコート(HC)剤(製品名PA-1000)を、ポリエチレンテレフタレート製基板上および銅配線上に形成した。保護層の厚みは、1.0μmであった。その後、給電線を配線基板に圧着させた。
【0075】
(1)鉛筆硬度測定試験
次に、鉛筆硬度測定試験を行い、保護層17の表面の鉛筆硬度を測定した。この際、保護層の鉛筆硬度は、JISK5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験に準拠して測定した。
【0076】
(2)接続性評価
次いで、配線基板の給電部と、給電線との間の電気的な接続性を確認した。
【0077】
(3)耐スクラッチ性試験
次いで、耐スクラッチ性試験を行った。この際、まず、100gのスチールウールを取付けた治具を準備した。次に、保護層に対してスチールウールを擦りつけて、銅配線に断線が生じていたか否かについて確認した。このとき、スチールウールを保護層に対して擦りつける際に、スチールウールの移動距離が往復で約2cm~約5cmとなるように治具を移動させた。そして、スチールウールを10往復させた。
【0078】
(実施例2)
保護層として、有機溶剤に溶解させたアクリル樹脂を、ポリエチレンテレフタレート製基板上および銅配線上に形成したこと、保護層の厚みが、0.1μmであったこと、以外は、実施例1と同様にしてモジュールを作製し、鉛筆硬度測定試験、接続性評価および耐スクラッチ性試験を行った。
【0079】
(実施例3)
保護層の厚みが、1.5μmであったこと、以外は、実施例2と同様にしてモジュールを作製し、鉛筆硬度測定試験、接続性評価および耐スクラッチ性試験を行った。
【0080】
(比較例1)
保護層の厚みが、4.0μmであったこと、以外は、実施例1と同様にしてモジュールを作製し、鉛筆硬度測定試験、接続性評価および耐スクラッチ性試験を行った。
【0081】
(比較例2)
保護層の厚みが、2.1μmであったこと、以外は、実施例2と同様にしてモジュールを作製し、鉛筆硬度測定試験、接続性評価および耐スクラッチ性試験を行った。
【0082】
(比較例3)
保護層の厚みが、0.03μmであったこと、以外は、実施例3と同様にしてモジュールを作製し、鉛筆硬度測定試験、接続性評価および耐スクラッチ性試験を行った。
【0083】
以上の結果を表1に示す。下記表中、「○」は、結果が良好であったこと(good)を意味し、「×」は、結果が良好でなかったこと(poor)を意味する。
【0084】
【0085】
この結果、表1に示すように、比較例1および比較例2によるモジュールでは、配線基板の給電部と、給電線との間の電気的な接続性が良好ではなかった。
【0086】
これに対して、実施例1乃至実施例3によるモジュールでは、配線基板の給電部と、給電線との間の電気的な接続性が良好であった。このため、本実施の形態によるモジュールでは、配線基板の給電部と、給電線との間の電気的な接続性を向上できることがわかった。
【0087】
また、表1に示すように、比較例3によるモジュールでは、耐スクラッチ性が良好ではなく、銅配線に一箇所以上の断線が生じていた。
【0088】
これに対して、実施例1乃至実施例3によるモジュールでは、耐スクラッチ性が良好であり、銅配線に断線が生じていなかった。このため、本実施の形態によるモジュールでは、耐スクラッチ性を向上できることがわかった。
【0089】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 配線基板
11 基板
17 保護層
20 メッシュ配線層
21 第1方向配線
40 給電部
95 給電線
95c 異方性導電フィルム
95d 導電粒子
90A モジュール