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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163881
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068988
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真行
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC03
5F136BC06
5F136DA04
5F136FA02
(57)【要約】
【課題】酸化ガリウムの半導体素子に適した半導体モジュールの構造を提供する。
【解決手段】半導体モジュールは、半導体素子10と、第1導体板22と、第2導体板26とを備える。半導体素子10は、酸化ガリウム基板12と下面電極14と上面電極16とを有する。第1導体板は、半導体素子の下面電極に接合された第1接合面22aを有し、第2導体板は、半導体素子の上面電極に接合された第2接合面26aを有する。酸化ガリウム基板は、アクティブエリア(12X)と、アクティブエリアを取り囲んでいる非アクティブエリア12Yとを有する。酸化ガリウム基板に垂直な方向において、アクティブエリアの全体は、第1導体板の第1接合面に対向しており、かつ、第2導体板の第2接合面に対向している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウム基板(12)と、前記酸化ガリウム基板の下面に位置する下面電極(14)と、前記酸化ガリウム基板の上面に位置する上面電極(16)とを有する半導体素子(10)と、
前記半導体素子の前記下面電極に接合された第1接合面(22a)を有する第1導体板(22)と、
前記半導体素子の前記上面電極に接合された第2接合面(26a)を有する第2導体板(26、126、226、326)と、
を備え、
前記酸化ガリウム基板は、前記下面電極と前記上面電極との間で電流が流れるアクティブエリア(12X)と、前記酸化ガリウム基板の周縁(12e)に沿って設けられ、前記アクティブエリアを取り囲んでいる非アクティブエリア(12Y)とを有し、
前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記アクティブエリアの全体は、前記第1導体板の前記第1接合面に対向しており、かつ、前記第2導体板の前記第2接合面に対向している、
半導体モジュール(2、102、202、302)。
【請求項2】
前記半導体素子は、前記上面電極の周縁に沿って設けられているとともに前記上面電極が露出する開口(18a)を画定している保護膜(18)をさらに有し、
前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記アクティブエリアの全体が、前記保護膜の前記開口に対向している、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第2導体板の前記第2接合面は、前記第2導体板の前記半導体素子に対向する下面の一部であり、
前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記第2導体板の前記下面の他の一部(126b、326b)が、前記保護膜に対向している、請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第2導体板の前記第2接合面は、はんだ層(34)を介して、前記半導体素子の前記上面電極に接合されており、
前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記アクティブエリアの全体が、前記はんだ層に対向している、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記半導体素子及び前記第2導体板を介して前記第1導体板に対向するとともに、前記第2導体板に接合された第3導体板(24)をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記半導体素子を封止する封止体(20)をさらに備え、
前記第1導体板は、前記封止体の下面(20a)に露出しており、
前記第2導体板は、前記封止体の内部に位置しており、
前記第3導体板は、前記封止体の上面(20b)に露出している、請求項5に記載の半導体モジュール(2、102)。
【請求項7】
前記第2導体板(224、324)は、前記第1導体板と平行に延びる板状部(225、325)と、前記板状部から前記半導体素子に向けて突出するとともに前記第2接合面を有する突出部(226、326)とを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体モジュール(202、302)。
【請求項8】
前記突出部は、錐台形状を有する、請求項7に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記半導体素子及び前記第1導体板を封止する封止体(20)をさらに備え、
前記第1導体板は、前記封止体の下面(20a)に露出しており、
前記第2導体板の前記板状部は、前記封止体の上面(20b)に露出している、請求項7又は8に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、半導体モジュールに関する。
【0002】
特許文献1に、半導体モジュールが開示されている。この半導体モジュールは、半導体素子と、半導体素子の下面電極に接合された第1導体板と、半導体素子の上面電極に接合された第2導体板とを備える。このような構成によると、半導体素子で生じた熱が、第1導体板及び第2導体板を通じて拡散されて、半導体素子の温度上昇が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-079957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体素子を構成する半導体材料として、酸化ガリウム(Ga)の採用が検討されている。酸化ガリウムは、様々なメリットを有する一方で、熱伝導率が低いという特徴を有する。例えば、炭化シリコン(SiC)の熱伝導率が490W/mKであるのに対して、酸化ガリウムの熱伝導率は14.1W/mKとされている。そのことから、酸化ガリウムを採用した半導体素子では、半導体素子の内部で熱拡散が生じ難く、不均一な温度分布が形成され易い。このような半導体素子に対して、従来の半導体モジュールの構造では、半導体素子の局所的な温度上昇を抑制することができないおそれがある。
【0005】
上記を鑑み、本明細書は、酸化ガリウムを採用した半導体素子に適した半導体モジュールの構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体モジュール(2、102、202、302)は、半導体素子(10)と、第1導体板(22)と、第2導体板(26、126、226、326)とを備える。前記半導体素子(10)は、酸化ガリウム基板(12)と、前記酸化ガリウム基板の下面に位置する下面電極(14)と、前記酸化ガリウム基板の上面に位置する上面電極(16)とを有する。前記第1導体板は、前記半導体素子の前記下面電極に接合された第1接合面(22a)を有する。第2導体板は、前記半導体素子の前記上面電極に接合された第2接合面(26a)を有する。
【0007】
前記酸化ガリウム基板は、前記下面電極と前記上面電極との間で電流が流れるアクティブエリア(12X)と、前記酸化ガリウム基板の周縁(12e)に沿って設けられ、前記アクティブエリアを取り囲んでいる非アクティブエリア(12Y)とを有する。前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記アクティブエリアの全体は、前記第1導体板の第1接合面に対向しており、かつ、前記第2導体板の第2接合面に対向している。言い換えると、前記酸化ガリウム基板に垂直な平面視において、前記アクティブエリアの全体は、前記第1導体板の第1接合面に重なり合うとともに、前記第2導体板の第2接合面にも重なり合う。
【0008】
上記した半導体モジュールでは、半導体素子に電流が流れることによって、酸化ガリウム基板のアクティブエリアが発熱する。アクティブエリアの全体が、第1導体板の第1接合面に対向しているとともに、第2導体板の第2接合面にも対向している。このような構成によると、アクティブエリアで発生した熱が、酸化ガリウム基板から第1導体板及び第2導体板へ直接的に拡散される。これにより、熱伝導率の低い酸化ガリウム基板においても、不均一な温度分布が形成され難く、局所的な温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の半導体モジュール2の構成を模式的に示す断面図。全ての図面において、図中の上下方向は、半導体基板12に対して垂直な方向に一致している。また、図示明瞭化のために、封止体20のハッチングは省略されている。
図2図1中のII部を拡大して示す拡大図。
図3】実施例2の半導体モジュール102の要部であって、図2に示す実施例1のII部に対応する部分を示す拡大図。
図4】実施例3の半導体モジュール202の構成を模式的に示す断面図。
図5図4中のV部を拡大して示す拡大図。
図6】実施例4の半導体モジュール302の要部であって、図5に示す実施例3のV部に対応する部分を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本技術の一実施形態において、前記半導体素子は、前記上面電極の周縁に沿って設けられているとともに前記上面電極が露出する開口(18a)を画定している保護膜(18)をさらに有してもよい。この場合、前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記アクティブエリアの全体が、前記保護膜の前記開口に対向していてもよい。言い換えると、酸化ガリウム基板に垂直な平面視において、前記アクティブエリアの全体が、前記保護膜の前記開口内に包含されてもよい。このような構成によると、前記半導体素子が前記保護膜を有する場合でも、前記アクティブエリアから前記第2導体板への熱拡散が、前記保護膜によって阻害されることがない。
【0011】
上記の実施形態において、前記第2導体板の前記第2接合面は、前記第2導体板の前記半導体素子に対向する下面の一部であってもよい。この場合、前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記第2導体板の前記下面の他の一部(126b、326b)が、前記保護膜に対向していてもよい。即ち、前記第2導体板の前記下面が、前記保護膜の前記開口よりも大きく、当該下面の一部のみが、前記第2接合面として、前記半導体素子の前記上面電極に接合されていてもよい。
【0012】
本技術の一実施形態において、前記第2導体板の前記第2接合面は、はんだ層(34)を介して、前記半導体素子の前記上面電極に接合されていてもよい。この場合、前記酸化ガリウム基板に垂直な方向において、前記アクティブエリアの全体が、前記はんだ層に対向していてもよい。言い換えると、酸化ガリウム基板に垂直な平面視において、前記アクティブエリアの全体が、前記はんだ層に重なり合ってもよい。但し、他の実施形態として、前記第2導体板の前記第2接合面は、はんだ層に限られず、他の材料層を介して、あるいは直接的に、前記半導体素子の前記上面電極へ接合されていてもよい。
【0013】
本技術の一実施形態において、前記半導体モジュール(2、102)は、第3導体板(24)をさらに備えてもよい。この場合、第3導体板(24)は、前記半導体素子及び前記第2導体板を介して、前記第1導体板に対向するとともに、前記第2導体板に接合されていてもよい。このような構成によると、前記第2導体板をスペーサとして設計することで、前記第1導体板と前記第2導体板との間に所望の間隔を設けることができる。
【0014】
上記の実施形態において、前記半導体モジュールは、前記半導体素子を封止する封止体(20)をさらに備えてもよい。この場合、前記第1導体板は、前記封止体の下面(20a)に露出しており、前記第2導体板は、前記封止体の内部に位置しており、前記第3導体板は、前記封止体の上面(20b)に露出していてもよい。このような構成によると、半導体素子で発生した熱を、前記第1導体板及び前記第3導体板から前記封止体の外部へ放出することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、前記第2導体板(224、324)は、前記第1導体板と平行に延びる板状部(225、325)と、前記板状部から前記半導体素子に向けて突出するとともに前記第2接合面を有する突出部(226、326)とを有してもよい。このような構成によると、前記第2導体板の前記突出部をスペーサとして設計することで、前記第1導体板と前記第2導体板との間に所望の間隔を設けることができる。
【0016】
上記した実施形態において、前記突出部は、錐台形状を有してもよい。この場合、錐台形状は、角錐台形状であってもよいし、円錐台形状であってもよい。このような構成によると、半導体素子で発生した熱を、放射状に広く拡散させることができる。
【0017】
上記した実施形態において、前記半導体モジュールは、前記半導体素子及び前記第1導体板を封止する封止体(20)をさらに備えてもよい。この場合、前記第1導体板は、前記封止体の下面(20a)に露出しており、前記第2導体板の前記板状部は、前記封止体の上面(20b)に露出していてもよい。このような構成によると、半導体素子で発生した熱を、前記第1導体板及び前記第3導体板から前記封止体の外部へ放出することができる。
【0018】
本明細書における「上」、「下」、「上面」、「下面」といった表現は、互いに反対方向の位置関係を便宜的に示すものであり、半導体モジュールの使用や製造における姿勢を限定するものではない。例えば、酸化ガリウム基板の上面とは、酸化ガリウム基板の一方の主表面を意図するに過ぎず、半導体素子の下面とは、当該上面の反対側に位置する酸化ガリウム基板の他方の主表面を意図するに過ぎない。
【実施例0019】
(実施例1) 図面を参照して、実施例1の半導体モジュール2について説明する。本実施例の半導体モジュール2は、特に限定されないが、例えば電動車両といった電気機器において、コンバータやインバータといった電力変換装置に採用することができる。ここで、電動車両とは、路面を走行する車両であって、車輪を駆動する走行用モータを有する車両を広く意味する。このような電動車両には、例えば、ハイブリッド車、燃料電池車、再充電式の電気自動車、ソーラーカーなどが挙げられる。
【0020】
図1図2に示すように、半導体モジュール2は、半導体素子10と、半導体素子10を封止している封止体20とを備える。封止体20は、絶縁体材料で構成されている。特に限定されないが、封止体20を構成する絶縁体材料は、例えばエポキシ樹脂といった、熱硬化性の樹脂材料であってよい。半導体素子10は、パワー半導体素子であり、例えばダイオード素子、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)素子又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子であってよい。半導体モジュール2は、複数の半導体素子10を備えてもよい。この場合、複数の半導体素子10は、互いに並列に接続されてもよいし、互いに直列に接続されてもよい。
【0021】
半導体素子10は、半導体基板12と、下面電極14と、上面電極16と、保護膜18とを有する。半導体基板12は、主に酸化ガリウムで構成された酸化ガリウム基板である。下面電極14は、半導体基板12の下面に設けられており、半導体基板12の下面にオーミック接触している。上面電極16は、半導体基板12の上面に設けられており、半導体基板12の上面にオーミック接触している。なお、上面電極16の一部又は全部が、半導体基板12に対してショットキー接触していてもよい。下面電極14についても同様である。下面電極14と上面電極16とを構成する材料は、特に限定されないが、例えばアルミニウム(Al)やニッケル(Ni)といった金属であってよい。保護膜18は、例えばポリイミド樹脂といった、絶縁体材料で構成されている。保護膜18は、上面電極16の周縁に沿って設けられており、上面電極16が露出する開口18aを画定している。
【0022】
半導体基板12は、アクティブエリア12Xと、非アクティブエリア12Yとを有する。アクティブエリア12Xは、半導体基板12に垂直な平面視において、半導体基板12の中央部分に設けられている。一方、非アクティブエリア12Yは、半導体基板12の周縁12eに沿って設けられており、アクティブエリア12Xを取り囲んでいる。アクティブエリア12Xには、ダイオード、MOSFET又はIGBTといった素子構造が設けられている。そして、下面電極14と上面電極16との間は、半導体基板12内の素子構造を介して、互いに電気的に接続されている。即ち、アクティブエリア12Xは、下面電極14と上面電極16との間で電流が流れる領域であり、半導体基板12において通電により発熱する領域である。
【0023】
半導体モジュール2はさらに、下側導体板22と、上側導体板24と、導体スペーサ26とを備える。下側導体板22は、半導体素子10の下面電極14に接合されている。詳しくは、下側導体板22の上面の一部22aと、半導体素子10の下面電極14との間が、はんだ層32を介して接合されている。下側導体板22は、例えば銅といった金属で構成されている。これにより、下側導体板22は、半導体素子10と電気的に接続されており、半導体モジュール2において電気回路の一部を構成する。また、下側導体板22は、封止体20の下面20aに露出しており、半導体素子10で発生した熱を、封止体20の外部へ放出する放熱板としても機能する。
【0024】
上側導体板24は、導体スペーサ26を介して、半導体素子10の上面電極16に接合されている。詳しくは、上側導体板24の下面と、導体スペーサ26の上面との間が、はんだ層36を介して接合されている。また、導体スペーサ26の下面26aと、半導体素子10の上面電極16との間が、はんだ層34を介して接合されている。上側導体板24及び導体スペーサ26は、例えば銅といった金属で構成されている。これにより、上側導体板24は、導体スペーサ26を介して半導体素子10と電気的に接続されており、半導体モジュール2において電気回路の一部を構成する。また、上側導体板24は、封止体20の上面20bに露出しており、半導体素子10の熱を外部へ放出する放熱板としても機能する。即ち、本実施例の半導体モジュール2は、封止体20の両面20a、20bに放熱板が露出する両面冷却構造を有する。
【0025】
ここで、本実施例における下側導体板22は、本技術における第1導体板の一例である。そして、下側導体板22の上面の一部22aは、本技術における第1接合面の一例であり、以下では第1接合面22aと称することがある。また、本実施例における導体スペーサ26は、本技術における第2導体板の一例である。そして、導体スペーサ26の下面26aは、本技術における第2接合面の一例であり、以下では第2接合面26aと称することがある。本実施例における上側導体板24は、本技術における第3導体板の一例である。
【0026】
本実施例の半導体モジュール2では、半導体基板12に垂直な方向において、アクティブエリア12Xの全体が、下側導体板22の第1接合面22aに対向している。さらに、アクティブエリア12Xの全体は、導体スペーサ26の第2接合面26aに対向している。即ち、第1接合面22aと第2接合面26aのそれぞれは、半導体基板12のアクティブエリア12Xよりも大きく、半導体基板12に垂直な平面視において、アクティブエリア12Xの全体は、第1接合面22aと第2接合面26aとのそれぞれに重なり合う。なお、アクティブエリア12Xの大きさは、第1接合面22aと第2接合面26aとの一方又は両方と、同じ大きさであってもよい。
【0027】
前述したように、半導体素子10に電流が流れることによって、半導体基板12のアクティブエリア12Xは発熱する。半導体基板12は、酸化ガリウム基板であり、他の半導体材料と比較して、酸化ガリウムの熱伝導率は低い。従って、半導体基板12の内部では、熱拡散が生じ難く、不均一な温度分布が生じ易い。そのことから、仮に、アクティブエリア12Xに対して、導体スペーサ26の第2接合面26aが小さく、アクティブエリア12Xの一部が、導体スペーサ26の第2接合面26aに対向していないと、その位置で半導体基板12の温度が局所的に上昇するおそれがある。
【0028】
これに対して、本実施例の半導体モジュール2では、アクティブエリア12Xの全体が、下側導体板22の第1接合面22aに対向しているとともに、導体スペーサ26の第2接合面26aにも対向している。このような構成によると、アクティブエリア12Xで発生した熱が、半導体基板12から下側導体板22及び導体スペーサ26へ直接的に拡散される。これにより、熱伝導率の低い半導体基板12においても、不均一な温度分布が形成され難く、局所的な温度上昇を抑制することができる。
【0029】
本実施例の半導体モジュール2では、保護膜18の開口18aを通じて、半導体素子10の上面電極16が、導体スペーサ26の第2接合面26aに接合されている。保護膜18の開口18aは、半導体基板12のアクティブエリア12Xよりも大きく、アクティブエリア12Xの全体が、保護膜18の開口18aに対向していてもよい。言い換えると、半導体基板12に垂直な平面視において、アクティブエリア12Xの全体は、保護膜18の開口18a内に包含される。このような構成によると、半導体素子10が保護膜18を有する場合でも、アクティブエリア12Xから導体スペーサ26への熱拡散が、保護膜18によって阻害されることがない。
【0030】
本実施例の半導体モジュール2では、前述したように、導体スペーサ26の第2接合面26aが、はんだ層34を介して、半導体素子10の上面電極16に接合されている。但し、他の実施形態として、導体スペーサ26の第2接合面26aは、はんだ層34に限られず、他の材料層を介して、あるいは直接的に、半導体素子10の上面電極16へ接合されていてもよい。なお、はんだ層34は、半導体基板12のアクティブエリア12Xよりも大きく、アクティブエリア12Xの全体が、当該はんだ層34に対向している。これにより、アクティブエリア12Xで発生した熱が、はんだ層34を介して導体スペーサ26へ直接的に拡散される。
【0031】
(実施例2) 図3を参照して、実施例2の半導体モジュール102について説明する。本実施例の半導体モジュール102では、実施例1の半導体モジュール2と比較して、導体スペーサ126のサイズが変更されている。以下では、実施例1に対する相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。本実施例における導体スペーサ126は、本技術における第2導体板の一例である。
【0032】
本実施例においても、導体スペーサ126の下面は、半導体素子10の上面電極16に接合されている。但し、この導体スペーサ126の下面は、保護膜18の開口18aよりも大きく、当該下面の一部のみが、上面電極16に接合された第2接合面126aとなっている。従って、導体スペーサ126の下面のうち、その周縁に位置する他の一部126bは、半導体基板12に垂直な方向において、保護膜18に対向している。このように、導体スペーサ126のサイズを拡大することで、導体スペーサ126の熱容量を増大させることができ、それによって半導体素子10の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0033】
(実施例3) 図4図5を参照して、実施例3の半導体モジュール202について説明する。本実施例の半導体モジュール202は、実施例1の半導体モジュール2と比較して、上側導体板224の形状が変更されている。以下では、実施例1に対する相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。本実施例における上側導体板224は、本技術における第2導体板の一例である。
【0034】
図4図5に示すように、本実施例の半導体モジュール202では、上側導体板224の形状が変更されているとともに、導体スペーサ26が省略されている。本実施例における上側導体板224は、下側導体板22と平行に延びる板状部225と、板状部225から半導体素子10に向けて突出する突出部226とを有する。板状部225は、封止体20の上面20bに露出しており、突出部226は、半導体素子10の上面電極16に接合されている。即ち、本実施例の半導体モジュール202では、突出部226の下端に位置する表面が、上面電極16に接合された第2接合面226aとなっている。このように、本実施例における上側導体板224は、実施例1における上側導体板24及び導体スペーサ26を、概して一体化した形状を有している。
【0035】
特に限定されないが、突出部226は、錐台形状を有しており、板状部225に近づくにつれて断面積が拡大している。このような構成によると、半導体素子10で発生した熱を、放射状に広く拡散させることができる。この場合、突出部226の形状は、角錐台形状であってもよいし、円錐台形状であってもよい。また、突出部226の具体的な形状については、錐台形状に限られず、特に限定されない。
【0036】
(実施例4) 図6を参照して、実施例4の半導体モジュール302について説明する。本実施例の半導体モジュール302は、実施例3の半導体モジュール202と比較して、上側導体板324の形状が変更されている。以下では、実施例3に対する相違点を主に説明し、実施例3と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。本実施例における上側導体板324は、本技術における第2導体板の一例である。
【0037】
本実施例においても、上側導体板324は、下側導体板22と平行に延びる板状部325と、板状部325から半導体素子10に向けて突出する突出部326とを有する。板状部325は、封止体20の上面20bに露出しており、突出部326は、半導体素子10の上面電極16に接合されている。但し、突出部326の下端面は、保護膜18の開口18aよりも大きく、当該下端面の一部のみが、上面電極16に接合された第2接合面326aとなっている。従って、突出部326の下端面のうち、その周縁に位置する他の一部326bは、半導体基板12に垂直な方向において、保護膜18に対向している。このように、突出部326のサイズを拡大することで、突出部326の熱容量を増大させることができ、それによって半導体素子10の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0038】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
2、102、202、302:半導体モジュール; 10:半導体素子; 12:半導体基板; 14:下面電極; 16:上面電極; 18:保護膜; 20:封止体; 22:下側導体板; 22a:第1接合面; 24、224、324:上側導体板; 26、126:導体スペーサ; 26a、126a、226a、326a:第2接合面; 32、34、36:はんだ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6