(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163887
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】チョコレート及びチョコレート菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/40 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A23G1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069000
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳子
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB04
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP12
4B014GP14
4B014GQ01
(57)【要約】
【課題】これまでにない斬新な食感を有し、比較的容易に製造できるチョコレート菓子を提供する。
【解決手段】このチョコレート菓子は、微粒化工程及び精錬工程を経て得られたチョコレート生地と、前記チョコレート生地とは別に添加された油脂と、前記チョコレート生地とは別に添加された、下記吸油力測定方法で測定される吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類とを含有し、前記糖類の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して(63X-0.8-10)~(63X-0.8+10)質量部であり、非焼成で成形されている。吸油力測定方法は、試験品及び菜種油を25℃に調温し、試験品5.0gに対して、菜種油を0.5gずつ添加し、添加のたびにヘラで撹拌し、試験品の載置面を45°傾けても流動しない状態が保たれる、試験品1gに対する菜種油の最大添加量を吸油力Xとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒化工程及び精錬工程を経て得られたチョコレート生地と、前記チョコレート生地とは別に添加された油脂と、前記チョコレート生地とは別に添加された、下記吸油力測定方法で測定される吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類とを含有し、
前記糖類の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して(63X-0.8-10)~(63X-0.8+10)質量部であり、
非焼成で成形されていることを特徴とするチョコレート菓子。
(吸油力測定方法)
試験品及び菜種油を25℃に調温し、試験品5.0gに対して、菜種油を0.5gずつ添加し、添加のたびにヘラで撹拌し、試験品の載置面を45°傾けても流動しない状態が保たれる、試験品1gに対する菜種油の最大添加量を吸油力Xとする。
【請求項2】
前記油脂の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して10~30質量部である、請求項1記載のチョコレート菓子。
【請求項3】
前記糖類は、マルトース、マルトデキストリンから選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1~2記載のチョコレート菓子。
【請求項4】
前記糖類は、マルトースの多孔質粉末である、請求項3記載のチョコレート菓子。
【請求項5】
微粒化工程及び精錬工程を経て得られたチョコレート生地を溶解するチョコレート生地溶解工程と、
このチョコレート生地に、油脂と、下記吸油力測定方法で測定される吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類とを、前記糖類の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して(63X-0.8-10)~(63X-0.8+10)質量部となるように混合する原料混合工程と、
混合された原料を成形する成形工程とを含むことを特徴とするチョコレート菓子の製造方法。
(吸油力測定方法)
試験品及び菜種油を25℃に調温し、試験品5.0gに対して、菜種油を0.5gずつ添加し、添加のたびにヘラで撹拌し、試験品の載置面を45°傾けても流動しない状態が保たれる、試験品1gに対する菜種油の最大添加量を吸油力Xとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成しなくても焼きチョコのホロホロした食感を有し、延ばしてカットできるチョコレート菓子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、カカオ豆から作られるカカオマスをベースにして、ココアバター、粉乳、砂糖などの原料によって作られている。一般的なチョコレートは、カカオマスにココアバター、粉乳、砂糖などの原料をまぜあわせる混合工程と、混合された原料をロールにかけて、舌の先でもざらつきを感じないほどに、なめらかにする微粒化工程と、コンチェという機械で長時間かけて練り上げる精錬工程と、チョコレートの温度を調節して、含まれているココアバターを安定した結晶にする調温工程と、型に流し込み、振動を与え、気泡を除く充填工程と、冷却コンベアにのせて冷やして固める冷却工程と、型からチョコレートをはがす型抜工程などを経て製造されている。
【0003】
このようなチョコレートの1つとして、下記特許文献1には、結晶性糖質を56重量%以上、カカオマスを18重量%以上含むことを特徴とする、優れたチョコレート風味と、シャリシャリした結晶感のある軽快な食感を有する、耐熱性の菓子が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、チョコレート生地からなるチョコレート成形品の表層を焼成して得られ、40℃において表面の組織が手指に付着しない焼成チョコレート菓子であって、 菓子内部は、40℃において、マイクロメーターによって測定した場合の固形物の最大粒度が40μm以下の軟質部分を含むことを特徴とする、チョコレート菓子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO2017/170676号公報
【特許文献2】特開2014-87308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のチョコレートは、滑らかな食感と口溶け感が重要視されており、食感の変化に乏しいものであった。
【0007】
前記特許文献1の菓子は、シャリシャリした結晶感を有するものであるが、結晶性糖質の含有量が多いので、チョコレート本来の食感や風味が損なわれる傾向があった。
【0008】
また、特許文献2の焼成チョコレートは、表面のサクっとした食感と、内部のしっとりとした食感とが味わえるが、焼成工程が必要となるため、製造に手間がかかるという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、これまでにない斬新な食感を有し、延ばしてカットでき、比較的容易に製造できるチョコレート菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明らは鋭意研究した結果、微粒化工程及び精錬工程を経たチョコレート生地に対して、特定の糖類を添加混合することによって、これまでのチョコレートにはない、ホロホロした食感のチョコレート菓子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のチョコレート菓子は、微粒化工程及び精錬工程を経て得られたチョコレート生地と、前記チョコレート生地とは別に添加された油脂と、前記チョコレート生地とは別に添加された、下記吸油力測定方法で測定される吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類とを含有し、
前記糖類の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して(63X-0.8-10)~(63X-0.8+10)質量部であり、
非焼成で成形されていることを特徴とする。
(吸油力測定方法)
試験品及び菜種油を25℃に調温し、試験品5.0gに対して、菜種油を0.5gずつ添加し、添加のたびにヘラで撹拌し、試験品の載置面を45°傾けても流動しない状態が保たれる、試験品1gに対する菜種油の最大添加量を吸油力Xとする。
【0012】
また、前記油脂の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して10~30質量部であることが好ましい。
【0013】
更に、前記糖類は、マルトース、マルトデキストリンから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0014】
更にまた、前記糖類は、マルトースの多孔質粉末であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のチョコレート菓子の製造方法は、微粒化工程及び精錬工程を経て得られたチョコレート生地を溶解するチョコレート生地溶解工程と、
このチョコレート生地に、油脂と、前記吸油力測定方法で測定される吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類とを、前記糖類の含有量が、前記チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して(63X-0.8-10)~(63X-0.8+10)質量部となるように混合する原料混合工程と、
混合された原料を成形する成形工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微粒化工程及び精錬工程を経て得られたチョコレート生地を溶解するチョコレート生地に、特定の吸油力を有する糖類を混合することによって、これまでのチョコレート菓子にはない、焼成しなくても焼きチョコのようなホロホロした食感(口の中で軽く噛むだけでバラバラに崩れる食感)を有し延ばしてカットできるチョコレート菓子を得ることができる。また、チョコレート生地に特定の吸油力を有する糖類を添加混合して、成形、固化するだけでよく、焼成工程等を必要としないので、製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】吸油力Xと最適添加量Y′の関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、チョコレートとは、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、カカオマス、ココアパウダー、ココアバター、ココアバター代用油脂等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。また、チョコレート生地としては、例えば、純チョコレート生地、準チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準ミルクチョコレート生地、純ミルクチョコレート生地、ホワイトチョコレート生地、その他の一般的に用いられているチョコレート生地を採用することができる。
【0019】
チョコレート生地の原料としては、カカオマス、ココアバター及び/又はココアバター代用油脂、ココアパウダー、糖類、粉乳、香料等を用いることができる。
【0020】
糖類としては、例えば、砂糖に、必要に応じてトレハロースなどの他の糖類や、糖アルコールなどを配合したものが好ましく用いられる。
【0021】
粉乳としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等を用いることができる。
【0022】
本発明で用いるチョコレート生地は、常法に従って上記原料をミキシング(混合工程)し、リファイニング(微粒化工程)を行った後、コンチング(精錬工程)を行うことで製造できる。
【0023】
本発明では、上記の微粒化工程及び精錬工程を経たチョコレート生地に、上記チョコレート生地に含まれている油脂、糖類とは別に、油脂と、下記吸油力測定方法で測定される吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類とを添加混合する。
(吸油力測定方法)
試験品及び菜種油を25℃に調温し、試験品5.0gに対して、菜種油を0.5gずつ添加し、添加のたびにヘラで撹拌し、試験品の載置面を45°傾けても流動しない状態が保たれる、試験品1gに対する菜種油の最大添加量を吸油力Xとする。
【0024】
上記のような吸油力を有する糖類としては、例えばマルトース、マルトデキストリンなどから選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。特に好ましくは、マルトースの多孔質粉末が用いられる。マルトースの多孔質粉末としては、例えば「サンマルトミドリ」(商品名、株式会社林原製)、「サンマルトシロ」(商品名、株式会社林原製)などが挙げられるが、特に微粉品である「サンマルトミドリ」が好ましく採用される。マルトデキストリンとしては、タピオカ由来のマルトデキストリンである「マルトセック」(商品名、販売元 サンエイト貿易株式会社)が挙げられる。
【0025】
糖類の最適添加量は、使用する糖類の吸油力によって変わってくる。すなわち、吸油力が高いものほど、添加量は少なくてよい。後述する試験例1の結果から、チョコレート生地と、チョコレート生地とは別に添加される油脂との合計100質量部に対する、糖類の最適添加量Y′は、吸油力Xに対して、Y′=63X-0.8の関係で求められることがわかった。
【0026】
また、後述する試験例2,3,6の結果から、上記で求められる最適添加量に対して±10質量部の範囲であれば、良好な結果が得られることがわかった。このため、チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対する糖類の添加量Y(質量部)は、下記式(1)の範囲であることが好ましい。
(63X-0.8-10)≧Y≧(63X-0.8+10)…(1)
【0027】
食用油脂としては、特に限定はなく、一般に食用に用いられる油脂であればよく、例えば、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、米糠油、サフラワー油、高オレイン酸サフラワー油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、カポック油、落花生油、胡麻油、椰子油、パ-ム油、パーム核油等の植物性油脂、牛脂、ラ-ド、乳脂、鶏油等の動物性油脂、及び上記動植物油脂の硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂、を用いることができる。これらの油脂は1種或いは2種以上を混合して用いることもできる。中でも急冷可塑化した食用油脂が好ましく、例えばショートニング、などが好ましく用いられる。
【0028】
本発明で用いる食用油脂の融点は40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。食用油脂の固体脂含有量は10℃で0~40%、30℃で0~20%が好ましく、10℃で0~35%、30℃で0~10%がより好ましい。
【0029】
食用油脂の添加量は、チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して、10~30質量部が好ましく、10~25質量部がより好ましい。
【0030】
本発明のチョコレート菓子の原料としては、上記の他に、例えば、イチゴ、マンゴー、レーズン、パイナップル、キウイなどの乾燥果実、ピーナッツ、アーモンド、マカデミアナッツ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、ピスタチオ、カシューナッツなどのナッツ類、甘納豆、キャンディなどの飴類や,水分の無いチーズ、コーン、野菜などのフリーズドライ製品などからなる具材を添加することができる。
【0031】
また、これらの具材の添加量は、チョコレート生地と前記油脂との合計100質量部に対して、0~50質量部が好ましく、0~30質量部がより好ましい。
【0032】
本発明のチョコレート菓子は、次のような方法で製造することができる。
(1)チョコレート生地を45~55℃に加熱して溶解させる。加熱方法は、特に限定されないが、湯煎、レンジによる加熱、オーブンによる加熱、チョコレートウォーマーによる加熱などの方法を採用できる。
(2)上記チョコレート生地に食用油脂を添加混合する。
(3)更に吸油力Xが3.5>X>0.9である糖類を添加混合する。
(4)更に乾燥果実、ナッツ類などの具材や、その他の原料を添加混合する。
(5)全ての原料を混合した後、生地を成形し、冷やして固める。
【0033】
なお、成形は、生地を所定厚さのシート状に伸ばし、所定の大きさ、形状にカットしたり、打ち抜いたりする方法などを採用することができる。
【0034】
こうして得られる本発明のチョコレート菓子は、口の中で軽く噛むことによってバラバラに崩れ、ホロホロした食感を有し、崩れた後は溶けてチョコレート本来のしっとりとした食感が楽しめる。また、乾燥果実、ナッツ類、甘納豆などの具材を添加することにより、カリカリとした食感や、いろいろな食感を付与することもできる。
【実施例0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0036】
試験例1(糖の吸油性試験)
下記表1に示す糖類について、吸油性試験を行った。試験方法は次の通りである。
(1)試験品及び菜種油を25℃に調温する。
(2)試験品5.0gに対して、菜種油を0.5gずつ添加し、添加のたびにスパチュラで撹拌混合する。
(3)容器を45°傾けて流動しない添加量を求める。
【0037】
上記方法により測定した結果を下記表1に示す。なお、試験品の糖類としては下記のものを用いた。
「サンマルトミドリ」(商品名、株式会社林原製、マルトース多孔質粉末、微粉)
「サンマルトシロ」(商品名、株式会社林原製、マルトース多孔質粉末)
「サンマルトS」(商品名、株式会社林原製、マルトース粉末、スプレードライ品)
「ファイバリクサ」(商品名、株式会社林原製、でん粉に酵素を作用させて作った水溶性食物繊維)
「マルトセック」(商品名、販売元 サンエイト貿易株式会社、タピオカ由来のマルトデキストリン)
【0038】
【0039】
試験例2(実施例1~7、比較例1,2)
下記表2の配合により、チョコレート菓子を製造した。表中の原材料名は、下記の通りである。
「クーベルホワイトペレット」(商品名、東京フード株式会社製、ホワイトチョコレート生地のペレット)
「カノーアショート」(商品名、月島食品工業株式会社製、ショートニング)
「サンマルトミドリ」は、前述したものと同じである。
【0040】
表2のチョコレート菓子の製造工程は下記の通りである。
(1)「クーベルホワイトペレット」を湯煎溶解し、粗熱をとる。
(2)「カノーアショート」を加え、混合する。
(3)「サンマルトミドリ」を加え混合する。
(4)生地を1.5mm厚に伸ばし、2cm×2cmにカットし、冷蔵庫で冷やし固める。
【0041】
上記製造工程における生地の状態の評価、得られたチョコレート菓子の官能評価を行い、その結果を表2に示した。
【0042】
【0043】
生地の状態の評価基準は、下記の通りである。
◎…非常に良好
〇…良好
△…やや悪い(ややべた付く、又はやや硬い)
×…悪い(べた付く、又は硬い)
【0044】
官能評価の評価基準は、下記の通りである。ホロホロ感があって、砕けた後の口溶けがよいものを良好とした。
◎…非常に良好
〇…良好
△…やや悪い
×…悪い
【0045】
なお、表2における計算値は、糖類の吸油力Xに基づいて、チョコレート生地及び油脂100質量部に対する糖類の適切な添加量Yを、下記式(1)により計算した値を示し、表中の〇はその範囲に入っていることを示している(以下の表においても同様)。
(63X-0.8-10)≧Y≧(63X-0.8+10)…(1)
【0046】
表2に示すように、チョコレート生地に、マルトース多孔質粉末(微粉)「サンマルトミドリ」を加え混合することにより、非焼成で成形可能で、ホロホロ感があって、砕けた後の口溶けがよいチョコレートが得られることがわかる。なお、チョコレート生地とチョコレート生地とは別に添加される油脂との合計100質量部に対する糖類の添加量が上記計算値の範囲にないと、生地がべた付いたり、硬すぎたりすることがある。
【0047】
試験例3(実施例8~10、比較例3,4)
下記表3の配合により、チョコレート菓子を製造した。表中の原材料名は、前述した通りである。製造工程は、試験例2の製造工程と同じである。
【0048】
試験例2と同様にして、製造工程における生地の状態の評価、得られたチョコレート菓子の官能評価を行い、その結果を表3に示した。
【0049】
【0050】
表3に示すように、チョコレート生地に、マルトース多孔質粉末「サンマルトシロ」を加え混合することにより、非焼成で成形可能で、ホロホロ感があるチョコレートが得られることがわかる。ただし、食感はややざらつく傾向があった。
【0051】
試験例4(比較例5~9)
下記表4の配合により、チョコレート菓子を製造した。表中の原材料名は、前述した通りである。製造工程は、試験例2の製造工程と同じである。
【0052】
試験例2と同様にして、製造工程における生地の状態の評価、得られたチョコレート菓子の官能評価を行い、その結果を表4に示した。
【0053】
【0054】
表4に示すように、チョコレート生地に、マルトース粉末(スプレードライ品)「サンマルトS」を加え混合することにより、非焼成で成形可能なチョコレートが得られることがわかる。ただし、食感は、ざらついて良くなかった。
【0055】
試験例5(比較例10~13)
下記表5の配合により、チョコレート菓子を製造した。表中の原材料名は、前述した通りである。製造工程は、試験例2の製造工程と同じである。
【0056】
試験例2と同様にして、製造工程における生地の状態の評価、得られたチョコレート菓子の官能評価を行い、その結果を表5に示した。
【0057】
【0058】
表5に示すように、チョコレート生地に、でん粉に酵素を作用させて作った水溶性食物繊維「ファイバリクサ」を加え混合することにより、非焼成で成形可能なチョコレートが得られることがわかる。ただし、食感は、溶けにくく、口の中で塊になって残るため、良くなかった。
【0059】
試験例6(実施例11,12、比較例14,15)
下記表6の配合により、チョコレート菓子を製造した。表中の原材料名は、前述した通りである。製造工程は、試験例2の製造工程と同じである。
【0060】
試験例2と同様にして、製造工程における生地の状態の評価、得られたチョコレート菓子の官能評価を行い、その結果を表6に示した。
【0061】
【0062】
表6に示すように、チョコレート生地に、タピオカ由来のマルトデキストリン「マルトセック」を加え混合することにより、非焼成で成形可能なチョコレートが得られることがわかる。食感は、若干異味があるものの、口溶けがよく、良好であった。
【0063】
<吸油力Xと、チョコレート生地とチョコレート生地とは別に添加される油脂との合計100質量部に対する糖類の最適添加量Y′との関係>
前記試験例2,3,6の結果から、チョコレート生地とチョコレート生地とは別に添加される油脂との合計100質量部に対するサンマルトミドリ、サンマルトシロ、マルトセックの最適添加量(質量部)を求めたところ、下記表7の関係にあることがわかった。
【0064】
【0065】
表7の吸油力Xと最適添加量Y′の関係をExcelのグラフ機能を使って図表化し、近似曲線(回帰曲線)を求めたものが
図1である。この
図1に基づいて、吸油力Xと最適添加量Y′の関係を求めると、下記式のようになった。
Y′=62.724X
-0.797 (R
2=0.9938)
(R
2 は相関係数、1に近いほど相関関係が強いことを表す。)
そこで、Y′=62.724X
-0.797 を簡略化して Y′=63X
-0.8 とした。
【0066】
また、前記試験例2,3,6の結果から、上記で求められる最適添加量Y′に対して±10質量部の範囲であれば、良好な結果が得られることがわかった。
【0067】
その結果、チョコレート生地とチョコレート生地とは別に添加される油脂との合計100質量部に対する糖類の添加量Y(質量部)は、下記式(1)の範囲であることが好ましいことがわかった。
(63X-0.8-10)≧Y≧(63X-0.8+10)…(1)
【0068】
試験例7(実施例13、14、15、16、17、18、比較例16、17、18、19)
下記表8の配合により、チョコレート菓子を製造した。表中の原材料名は、前述した通りである。製造工程は、試験例2の製造工程と同じである。
【0069】
試験例2と同様にして、製造工程における生地の状態の評価、得られたチョコレート菓子の官能評価を行い、その結果を表8に示した。
【0070】
【0071】
表8に示すように、チョコレート生地(クーベルホワイトペレット)に対する油脂(カノーアショート)の割合を、チョコ:油脂=90:10、70:30に変えた場合であっても、サンマルトミドリの、チョコレート生地とチョコレート生地とは別に添加される油脂との合計100質量部に対する添加量を、前記式(1)で求められる44.4~64.4質量部の範囲とした実施例13、14、15、16、17、18は、生地状態及び官能評価を許容可能な範囲(△以上)にすることができることがわかる。また、サンマルトミドリの添加量が上記範囲を外れる比較例16,17,18は、生地状態及び官能評価が不合格(×)であることがわかる。