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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163891
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】塗工装置用乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20221020BHJP
   F26B 21/00 20060101ALI20221020BHJP
   F26B 21/12 20060101ALI20221020BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F26B13/10 C
F26B21/00 C
F26B21/12
B05C9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069007
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】592037077
【氏名又は名称】クリーン・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】西澤 和夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 智康
【テーマコード(参考)】
3L113
4F042
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC35
3L113AC44
3L113AC47
3L113AC52
3L113AC54
3L113AC55
3L113AC65
3L113BA32
3L113BA34
3L113CA11
3L113CB24
3L113DA04
3L113DA24
4F042AA22
4F042BA06
4F042BA11
4F042BA19
4F042DB10
4F042DB26
4F042DB31
4F042DB33
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】適正な(所望の)風速を設定することで、この設定値となるようにフィードバックされる風量検知部10からの検知データに基づいてブロワー装置6が自動制御され、剥離強度を低下させない適正な(最速な)乾燥スピードで乾燥でき、たとえば各種条件、各乾燥ゾーンでの最適な風速で熱風乾燥でき、適正な乾燥を短時間で行なえスループットが向上できる優れた塗工装置用乾燥装置を提供することを目的としている。
【解決手段】設定した熱風送出風速値となるように、風量検知部10の検知データと温度検知部11の検知データとに基づいてブロワー装置6の送風出力が制御される構成とした塗工装置用乾燥装置を提供すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工装置により塗工液が上面に塗工されこの塗工装置から送出されるフィルム状の基材を搬送通過させる乾燥室内に、この基材に対して少なくとも下側に配設され、この基材の上面に塗工されている前記塗工液をこの基材下側から乾燥するための熱風が送出される熱風送出部が設けられ、
この熱風送出部に前記熱風を送風するためのブロワー装置と、このブロワー装置から送風される送風気体を加熱し前記熱風とする加熱装置と、この熱風を前記熱風送出部に導風する導風路部とが備えられていて、
前記ブロワー装置の送風出力を制御する送風出力制御装置が備えられているとともに、前記熱風送出部に導風される前記熱風の送風圧または風量を検知し検知データを前記送風出力制御装置に出力する風量検知部と、この熱風の温度を検知し検知データを前記送風出力制御装置に出力する温度検知部または前記送風出力制御装置に設けられる熱風温度設定入力部とが備えられていて、
前記送風出力制御装置には、前記熱風送出部での熱風送出風速値または熱風送出風量値を入力する所望値設定入力部が備えられていて、
この送風出力制御装置は、前記所望値設定入力部で設定された前記熱風送出部での熱風送出風速値または熱風送出風量値となるように、前記風量検知部の検知データと、前記温度検知部の検知データまたは前記熱風温度設定入力部の熱風温度設定データとに基づいて前記ブロワー装置の送風出力が制御される構成とされていることを特徴とする塗工装置用乾燥装置。
【請求項2】
前記熱風送出部は前記基材の上下に配設されていて、この上下各熱風送出部から送出される熱風により前記基材の前記塗工液が上下から熱風乾燥されるように構成されていて、
少なくとも前記基材の下側に配設されている前記熱風送出部から送出される熱風が、前記送風出力制御装置の前記所望値設定入力部に入力設定された前記熱風送出風速値または前記熱風送出風量値に制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗工装置用乾燥装置。
【請求項3】
1つの乾燥ゾーンとしての前記乾燥室が前記基材の搬送方向に複数連設されていて、この複数の乾燥ゾーンを搬送通過させ前記基材の前記塗工液が熱風乾燥されるように構成されている、または1もしくは複数の前記熱風送出部からなる熱風送出部群を1乾燥ゾーンとしてこの熱風送出部群が前記基材の搬送方向に複数配設されていて、この複数の乾燥ゾーンを搬送通過させて前記基材の前記塗工液が熱風乾燥されるように構成されていて、
前記各乾燥ゾーンの少なくとも前記基材の下側に配設されている前記熱風送出部から送出される熱風が、それぞれ前記送風出力制御装置により所定の前記熱風送出風速値または前記熱風送出風量値に制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の塗工装置用乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置により塗工液が塗工されたフィルム状の基材を、熱風が送出される乾燥室内を搬送通過させて、この基材の塗工液(塗工膜)を乾燥する塗工装置用乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の正極・負極の量産装置として、巻取ロールから引き出したフィルム状の基材(集電体)を、塗工用ノズル部やこれと対向配設される支持ローラ等を備える塗工装置に引き出し搬送し、この塗工装置に備えられる塗工用ノズル部から活物質やバインダー等を含む塗工液を吐出させて、支持ローラで支承されている基材の上面に塗工した後、塗工装置と連設される乾燥装置(の乾燥室)内を、たとえば支持ローラで支持して水平搬送通過させ乾燥し、回収ロールに巻き取るように構成した塗工装置用乾燥装置が用いられている。
【0003】
たとえばこのようにリチウムイオン電池の正極・負極の量産装置として用いる乾燥装置とする場合、単に基材上面に塗工された塗工液をこの基材の上面側から温風(熱風)により加熱し乾燥すると、バインダーが表面側(上面側)に移動するバインダーマイグレーションが生じ、活物質と集電体との密着性が低下してしまう問題が生じる。すなわち、送出する熱風の風速や風量を増やせば乾燥スピードは上がるが、このように密着性が低下し剥離強度が低下する問題が生じてしまう。
【0004】
また、このバインダーマイグレーションを抑制するため、単に基材の下面側からの熱風により加熱し乾燥した場合は、熱風の風圧により基材が支承ローラから浮き上がってしまい不安定な状態で搬送され均一に乾燥することができない等の不具合も生じ得る。また一方、この熱風(温風)乾燥排気方式の替わりにIRヒータを用いた乾燥方式の場合は、バインダーマイグレーションの問題(密着性低下の問題)は解決できるとしても、熱風乾燥に比べてコストアップとなり、また、溶剤系の塗工液を使用する場合の安全対策も必要となる。
【0005】
そこで、従来、基材の下側にたとえばコアンダノズルを有する熱風送出部を配置し、このコアンダノズルから送出される熱風によりコアンダ効果を生じさせて、すなわちコアンダガイド板に沿って送風させることにより生じる負圧によって基材を下方側に引き寄せる効果(吸引作用)を生じさせて、基材の下面側から熱風を送出しても基材が支承ローラから浮き上がってしまうことを抑制する構成のもの(このため安定的に搬送されず均一に乾燥することができなくなる不具合を抑制し、バインダーマイグレーションの問題をも解決することができるもの)なども提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン電池は、近年、増産が求められている電気自動車やハイブリッド自動車をはじめとして、様々な業界・分野において需要が高まり、供給側では、この需要の高まりに対応すべく増産対応が急務となっている。
【0007】
上述したリチウムイオン電池の正極・負極の量産装置である塗工装置用乾燥装置においても例外ではなく、電極の生産性(量産性)を向上させることが喫緊の課題となっている。
【0008】
この塗工装置用乾燥装置の生産性(量産性)を向上させるためのスループット向上策としては、乾燥装置の大型化(乾燥エリアの長尺化)や熱風の温度や風量を上げることが先ず考えられるが、装置の大型化はコストが掛かる上に装置の占有面積が大きくなり容易に実施することができず、また、単に熱風の温度や風量を上げた場合、基材の搬送の安定性の低下や、剥離強度が低下するおそれ、塗工液から発生する蒸発ガスの増加による乾燥の妨げ等の様々な問題が生じる懸念がある。
【0009】
本発明は、このような問題を見出し、これを解決するもので、乾燥室内の熱風送出部からの熱風送出(突出)の風速や風量を精密に設定制御することができ、適正な(所望の)風速や風量を設定することで、熱風を送出するためのブロワー装置の送風出力が検知データに基づいてこの設定値(希望値)となるように自動制御され、剥離強度を低下させない適正な(最速な)乾燥スピードで乾燥でき、たとえば各種条件、各乾燥ゾーンでの最適な風速や風量で熱風乾燥でき、適正な乾燥を短時間で行なえスループットが向上できる極めて実用性に優れた塗工装置用乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
塗工装置1により塗工液が上面に塗工されこの塗工装置1から送出されるフィルム状の基材2を搬送通過させる乾燥室3内に、この基材2に対して少なくとも下側に配設され、この基材2の上面に塗工されている前記塗工液をこの基材2下側から乾燥するための熱風4が送出される熱風送出部5が設けられ、この熱風送出部5に前記熱風4を送風するためのブロワー装置6と、このブロワー装置6から送風される送風気体を加熱し前記熱風4とする加熱装置7と、この熱風4を前記熱風送出部5に導風する導風路部8とが備えられていて、前記ブロワー装置6の送風出力を制御する送風出力制御装置9が備えられているとともに、前記熱風送出部5に導風される前記熱風4の送風圧または風量を検知し検知データを前記送風出力制御装置9に出力する風量検知部10と、この熱風4の温度を検知し検知データを前記送風出力制御装置9に出力する温度検知部11または前記送風出力制御装置9に設けられる熱風温度設定入力部とが備えられていて、前記送風出力制御装置9には、前記熱風送出部5での熱風送出風速値または熱風送出風量値を入力する所望値設定入力部が備えられていて、この送風出力制御装置9は、前記所望値設定入力部で設定された前記熱風送出部5での熱風送出風速値または熱風送出風量値となるように、前記風量検知部10の検知データと、前記温度検知部11の検知データまたは前記熱風温度設定入力部の熱風温度設定データとに基づいて前記ブロワー装置6の送風出力が制御される構成とされていることを特徴とする塗工装置用乾燥装置に係るものである。
【0012】
また前記熱風送出部5は前記基材2の上下に配設されていて、この上下各熱風送出部5から送出される熱風4により前記基材1の前記塗工液が上下から熱風乾燥されるように構成されていて、少なくとも前記基材2の下側に配設されている前記熱風送出部5から送出される熱風4が、前記送風出力制御装置9の前記所望値設定入力部に入力設定された前記熱風送出風速値または前記熱風送出風量値に制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗工装置用乾燥装置に係るものである。
【0013】
1つの乾燥ゾーン12としての前記乾燥室3が前記基材2の搬送方向に複数連設されていて、この複数の乾燥ゾーン12を搬送通過させ前記基材2の前記塗工液が熱風乾燥されるように構成されている、または1もしくは複数の前記熱風送出部5からなる熱風送出部群12を1乾燥ゾーン12としてこの熱風送出部群12が前記基材2の搬送方向に複数配設されていて、この複数の乾燥ゾーン12を搬送通過させて前記基材2の前記塗工液が熱風乾燥されるように構成されていて、前記各乾燥ゾーン12の少なくとも前記基材2の下側に配設されている前記熱風送出部5から送出される熱風4が、それぞれ前記送風出力制御装置9により所定の前記熱風送出風速値または前記熱風送出風量値に制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の塗工装置用乾燥装置に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、乾燥室内の熱風送出部からの熱風送出(突出)の風速や風量を精密に設定制御することができ、適正な(所望の)風速や風量を設定することで、熱風を送出するためのブロワー装置の送風出力が検知データに基づいてこの設定値(希望値)となるように自動制御され、剥離強度を低下させない適正な(最速な)乾燥スピードで乾燥でき、たとえば各種条件、各乾燥ゾーンでの最適な風速や風量で熱風乾燥でき、適正な乾燥を短時間で行なえスループットが向上できる極めて実用性に優れた塗工装置用乾燥装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の要部の概略構成説明図である。
図2】本実施例の概略構成説明図である。
図3】本実施例のダクト(導風路部)に設ける風量計(風量検知部)で測定される送風動圧Pv(検知データ)と温度測定部で測定されたダクト内の熱風温度(検知データ)と初期入力される固定値などから熱風送出風速値を算出する演算式と、この演算式(熱風送出風速値Vnとダクトの送風動圧Pvとの関係を示す計算式)に基づいて、測定される送風動圧Pvが、入力設定された希望の熱風送出風速値Vnとなる送風動圧Pvとなるように、ブロワー装置の送風出力をインバーター制御することとを説明する制御説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0017】
塗工装置1により塗工液が上面に塗工され送出されるフィルム状の基材2は、搬送装置により搬送され本装置の乾燥室3内(炉内)を搬送通過する。この際、少なくとも乾燥室3内の基材2の下側に配設した熱風送出部5から熱風(温風)が送出され、この基材2の上面に塗工されている塗工液は乾燥する。
【0018】
本装置は、この乾燥室3内の前記熱風送出部5に熱風4を送風するためのブロワー装置6と、このブロワー装置6から送風される送風気体を加熱し前記熱風とする加熱装置7と、この加熱された熱風4を前記熱風送出部5に導風する導風路部8(ダクトやノズル整流部など)とを備え、このブロワー装置6には送風出力を制御する送風出力制御装置9を備えた構成としている。
【0019】
また前記熱風送出部5に導風される前記熱風4の送風圧(たとえばダクトの送風動圧Pv)または風量を検知する風量検知部10と、この熱風4の温度(たとえばダクトの熱風温度T)を検知する温度検知部11または送風出力制御装置9に設けられる熱風温度設定入力部とを備え、送風出力制御装置9には前記熱風送出部5での希望する熱風送出風速値(Vn)または熱風送出風量値を入力する所望値設定入力部を備えた構成としている。
【0020】
したがって、この送風出力制御装置9の前記所望値設定入力部に前記熱風送出部5での熱風送出風速値または熱風送出風量値を入力設定することで、この送風出力制御装置9により、前記風量検知部10の検知データと、前記温度検知部11の検知データまたは前記熱風温度設定入力部に設定した熱風温度設定データとに基づいて、前記ブロワー装置6の送風出力がその設定値(送出する熱風4の希望の熱風送出風速値または希望の熱風送出風量値)となるように自動制御されることとなる。
【0021】
たとえば、送風出力制御装置9はインバーター制御によりブロワー装置6の送風出力を調整できる構成とし、単に周波数(回転数)を調整してブロワー装置6の出力を調整するのではなく、このインバーター制御によりたとえば、希望する熱風送出風速値となるようにブロワー装置6の出力が検知データに基づいてフィードバック制御される。
【0022】
さらに説明すると、ブロワー装置6の出力調整によりこのブロワー装置6から調整送出された送風を、たとえば温度調整できる蒸気式の前記加熱装置7により所定温度に加熱し、この所定温度の熱風4を導風路部8へ導風し、たとえばこの導風路部8(ダクト、整流部13)を介して乾燥室3内のこの整流部13に複数並設した熱風送出部5へと導風して、この熱風送出部5(ノズル部)から送出(吐出)し、上面塗工済み基材2を下側から熱風乾燥する構成としている。
【0023】
そして、たとえばこの送出する熱風4の希望の熱風送出風速値を所望設定値として入力設定すると、たとえば導風路部8に設けた風量検知部10(風量計や差圧計)からの検知データ(たとえば熱風4の送風動圧Pvデータ)と、熱風温度検知部11からの検知データ(熱風4の測定熱風温度Tデータ)または熱風温度設定入力部に入力された熱風温度設定データとに基づいて、ブロワー装置6の送風出力が、このフィードバックによりこの希望の熱風送出風速値Vnとなる送風動圧Pvとなるようにインバーター制御されて、常に熱風送出部5から吐出される熱風4の風速が管理、制御されることとなる。
【0024】
これにより、たとえば、基材2の上面に塗工された塗工液を、諸条件に応じて決定された(入力設定された)風速に管理された熱風4で常に下側から熱風乾燥することができ、たとえば各種諸条件に応じてまたは搬送方向の乾燥条件を異ならせるための乾燥ゾーン12ごとに、この吐出される熱風4の風速を容易に制御管理でき、これにより塗工液の剥離強度を低下させずに乾燥スピードを高めることができ、乾燥時間の短縮が図られ、乾燥装置のスループットを向上させることができる。
【実施例0025】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、塗工装置1により塗工液が上面に塗工されこの塗工装置1から送出されるフィルム状の基材2を搬送装置により乾燥室3内を水平搬送通過させ、この乾燥室3内には、この基材2上面に塗工されている塗工液を乾燥するための熱風4を送出する熱風送出部5を設け、この熱風送出部5から送出(突出)する熱風4により塗工液(塗工膜)を熱風乾燥する構成としている。
【0027】
この熱風送出部5は、基材2の上下に複数設けた構成としているが、上下とも基材搬送方向に間隔を置いて複数並設状態に設けた構成としている。具体的には、基材搬送方向に長さを有する熱風整流部13に基材幅方向に吐出スリットを有するノズル部として複数並設した構成とし、本実施例では、基材2の下側に配設した熱風送出部5は、コアンダノズル構造、すなわち吐出スリットの熱風送出角度やコアンダ効果により基材2を下方へ引き込む作用を生じさせ風速を上げても基材2の浮上や歪みなどを抑制するコアンダ誘導板を設けたコアンダノズルに構成し、これを各支承ローラ15を境にしてその下方に互いに逆向きに(背合わせにして)一対ずつ配設した構成としている。
【0028】
また本実施例のこの基材2の下側に配設したコアンダノズル構造の熱風送出部5は、基材搬送方向に間隔を置いてこの熱風整流部13の上部に複数並設状態に突設した構成として、この熱風整流部13に導風された熱風4が整流されほぼすべて同じ風速で基材2に向けて吐出しコアンダ誘導板に沿って送風されるように構成している。
【0029】
また本実施例では、このように、この熱風整流部13に設けた熱風送出部5を、前記基材2の下側に配設して、基材2の下側から熱風乾燥する構成としているが、本実施例では、この下側からの熱風4の希望風速値(熱風送出風速値Vn)を入力設定し、この風速値となるようにブロワー装置6の送風出力がフィードバックされる測定データ(検知データ)に基づいてインバーター制御されるように構成している。
【0030】
また本実施例では、基材2の上側に設けた熱風送出部5からも熱風4を送出し基材2に対して上下双方から熱風乾燥する構成としている。しかし本実施例では、この上側の熱風4は、ブロワー装置6の導風路部8から分岐させて導風した構成としているが、フィードバック自動制御はしない構成で、この導風路部8の設けた風量検知部10の検知などに基づいて適宜手動でダンパー調整し風速を調整する構成としている。
【0031】
なお、この上側の熱風送出部5についても、たとえば別にブロワー装置6を設けて下側と同様にこのブロワー装置6の送風出力もフィードバックインバーター制御して希望の熱風送出風速値を入力設定するだけでこの風速値となるように自動制御される構成としてもよい。
【0032】
またさらに説明すると、本実施例では、前記熱風4を送風するためのブロワー装置6と、このブロワー装置6から送風される送風気体を蒸気で加熱し前記熱風4とする加熱装置7と、この熱風4を前記熱風送出部5(熱風整流部13)に導風する導風路部8とを備えた構成としているが、このブロワー装置6は前述したとおり送風出力制御装置9によるインバーター制御により送風出力を調整できる構成としている。すなわち、前述したとおりこのインバーター制御によりブロワー装置6から調整され送出された送風を、温度調整できる蒸気熱交換式の前記加熱装置7により加熱して所定温度の熱風4に加熱し、この熱風4をフィルタ14を介して導風路部8(導風用ダクト)を介して乾燥室3(炉)内の熱風送出部5(前記熱風整流部13)に導風してこの熱風送出部5(ノズル部)から熱風4を送出(吐出)し、上面塗工済み基材2を少なくとも下側から制御管理された風速の熱風4により熱風乾燥する構成としている。
【0033】
そしてまた本実施例では、このようにブロワー装置6の送風出力をインバーター制御する送風出力制御装置9に入力されるフィードバック検知データを取得するため、前記熱風送出部5に導風される前記熱風4の導風路部8(ダクト)の送風動圧Pvを検知する風量検知部10と、このダクト内の熱風4の温度Tを検知する温度検知部11(TC)とをこのダクトに設け、また送風出力制御装置9には、この前記熱風送出部5での希望の熱風送出風速値Vnを入力する所望値設定入力部を備えた構成としている。
【0034】
さらに具体的に説明すると、この送風出力制御装置9は、前記所望値設定入力部で設定された前記熱風送出部5での熱風送出風速値Vnとなるように、前記風量検知部10の検知データ(ダクトに設けたたとえばピトー管式風量計と差圧計とで検知される熱風4の送風動圧Pvデータ)と、前記温度検知部11の検知データ(ダクトに設けた温度センサーTCで検知される熱風温度Tデータ)とに基づいて前記ブロワー装置6の送風出力をインバーター制御する構成としている。
【0035】
具体的には、たとえば図3に示し説明しているように、導風路部8(ダクト)に設けた風量計と差圧計(風量検知部10)で測定される送風動圧Pv(検知データ)と、温度測定部11で測定されたダクト内の熱風温度T(検知データ)と、初期入力される固定値などから熱風送出風速値Vnを図示したような演算式で演算するが、この演算式(熱風送出風速値Vnとダクトの送風動圧Pvとの関係を示す計算式)に基づいて、測定される送風動圧Pvが、入力設定された希望の熱風送出風速値Vnとなる送風動圧Pvとなるように、ブロワー装置6の送風出力をインバーター制御する構成としている。
【0036】
すなわち、本実施例では、この熱風送出部5から吐出する熱風4の希望の熱風送出風速値Vnを所望設定値として入力設定すると、前記演算式に基づいて、この希望の熱風送出風速値Vnとなる送風動圧Pvとなるように、ブロワー装置6の送風出力がフィードバック制御されて、常に熱風送出部5から吐出される熱風4の風速がこの熱風送出風速値Vnに管理、制御されるように構成している。
【0037】
言い換えると、測定される送風動圧Pvから測定される熱風送出部5での熱風送出風速値Vnを求め、この熱風送出風速値Vnが希望の(入力設定された)熱風送出風速値Vnとなるように、ブロワー装置6の送風出力がフィードバック制御されて、常に熱風送出部5から吐出される熱風4の風速がこの熱風送出風速値Vnに管理、制御されるように構成している。
【0038】
また本実施例では、1つの乾燥ゾーン12としての前記乾燥室3を基材2の搬送方向に複数連設した構成として、この複数の乾燥ゾーン12を搬送通過させ基材2の塗工液を順次乾燥ゾーンごと制御管理された風速の熱風で乾燥する構成としている。
【0039】
具体的にはこの各乾燥ゾーン12ごとに分けた各乾燥室3内に、複数の前記熱風送出部5からなる熱風送出部群(1の前記熱風整流部13)を1乾燥ゾーン12として各乾燥室3内に配設し、この複数の乾燥ゾーン12を順次搬送通過させて前記基材2の前記塗工液を熱風乾燥するように構成している。
【0040】
すなわち、前記各乾燥ゾーン12の基材2の下側に配設した前記熱風送出部5から送出される熱風4が、それぞれ前記送風出力制御装置9により所定の前記熱風送出風速値に制御され管理されるように構成している。
【0041】
これにより、たとえば各乾燥ゾーン12ごと(各乾燥室3ごと、各熱風整流部13ごと、各熱風送出部群12ごと)に、この各乾燥ゾーン12の熱風送出部5の風速が、前記所望値設定入力部で設定された熱風送出風速値となるように、ブロワー装置6の送風出力がインバーター制御され、(この各乾燥ゾーン12ごとに適正な風速で熱風4が送出されるように制御され)、各乾燥ゾーン12それぞれの風速を容易に設定管理できる構成としている。
【0042】
たとえば上面に塗工液が塗工されている基材2の上側からの熱風4の風速は、全乾燥ゾーン12においてやや抑えた風速としながらも、各乾燥ゾーン12の基材2の下側から吐出する熱風4の風速4は、入力設定された希望の熱風送出風速値に自動的にフィードバック制御されるように構成し、たとえばいずれの乾燥ゾーン12でもこの下側の風速は上側の風速よりも高めた風速値とするが、各乾燥ゾーンごとにそれぞれぞ風速を希望の風速値に設定して、この風速値となるように風量検知データや温度検知データを常にフィードバックしブロワー装置6をインバーター制御する構成としている。
【0043】
なお、この風速値は、基材2の材質、寸法、塗工液、基材2の搬送時の張力、熱風温度、熱風送出部のノズル構造、形状、熱風整流部13の形状、許容される剥離強度などの製品要求条件などの様々な諸条件により決定され、入力設定されもので、本実施例では、前述のように、導風路部8に設けた風量計や温度センサーなどの検知データをフィードバックさせ予め制御ソフトに設定した図3に示す演算式に基づき測定送風動圧Pvから算出された熱風送出風速値(演算値)と希望の入力設定された熱風送出風速値とに基づいて、ブロワー装置6の送風出力が所定風量(希望の熱風送出風速値となる送風動圧)となるようにインバーター制御し、熱風送出部5から突出する熱風4の各風速が容易に自動制御できる構成としている。
【0044】
したがって、たとえば、さらに乾燥スピードを上げて基材2の搬送速度を高め、乾燥時間の短縮を図るため、基材2の塗工液を乾燥するに際して、予熱期に当てる第1乾燥ゾーンでは、上側の熱風4はやや低めの風速としながらも下側の熱風4の風速は高い風速値に入力設定し、恒率期に当てる第2、第3乾燥ゾーンでは下側の風速をやや下げた風速値に入力設定して剥離強度が低下しないように制御管理し、減率期に当てる第4乾燥ゾーンではまた風速を上げる(再び高い風速値に設定する)という制御管理が容易に行えることとなる。
【0045】
なお、この場合乾燥ゾーン12ごとの各熱風送出部5から送出される熱風4をそれぞれ所定の風速値に設定制御できるようにブロワー装置6他各装置をそれぞれに設けた構成としているが、各乾燥ゾーン12のブロワー装置6他所定装置を共有する構成に設計してもよい。
【0046】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0047】
1 塗工装置
2 基材
3 乾燥室
4 熱風
5 熱風送出部
6 ブロワー装置
7 加熱装置
8 導風路部
9 送風出力制御装置
10 風量検知部
11 温度検知部
12 乾燥ゾーン(熱風送出部群)
図1
図2
図3