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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163903
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】通気シール材及び通気シール構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20221020BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20221020BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B1/68 A
E04B1/684 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069024
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知城
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001EA08
2E001FA04
2E001FA53
2E001GA72
2E001KA02
2E001LA06
2E001MA02
2E001MA04
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC01
2E001ND14
(57)【要約】
【課題】外壁通気工法において十分な通気量を確保しつつ横目地からの浸水を防止することが可能な通気シール材及びそれに関連する技術の提供。
【解決手段】通気シール材1は、外壁51,52と躯体6との間に形成された通気層AZに設けられる。通気シール材1は、水切板3とリップ取付板4とを含む屈曲板2と、リップ取付板4のうち室外側を向く面41に設けられるリップ411と、リップ411と離間するようにリップ411の上側に設けられるリップ412とを備える。リップ411,412は、リップ取付板4から外壁51,52に向けて延在する横方向に長尺な部材である。水切板3のうち室外側の端部は、横目地7を塞ぐことなく横目地7の隙間に配置される。リップ411には、第一切り欠きが形成されている。リップ412には、上下方向に関して第一切り欠きと重ならない位置に第二切り欠きが形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁と前記外壁のうち室内側を向く面に対向する躯体との間に形成された通気層に設けられる通気シール材であって、
前記建物に形成される横目地から前記躯体に向けて延在する横方向に長尺な水切板と、前記水切板のうち前記躯体の側の端部から上側に向けて延在する横方向に長尺なリップ取付板とを含む屈曲板と、
前記リップ取付板のうち室外側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記外壁との間の空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する横方向に長尺な第一リップと、
前記リップ取付板のうち前記室外側を向く面において前記第一リップと離間するように前記第一リップの上側に設けられ、前記空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する前記横方向に長尺な第二リップと、
を備え、
前記水切板のうち前記室外側の端部は、前記横目地を塞ぐことなく前記横目地の隙間に配置され、
前記第一リップには、第一切り欠きが形成され、
前記第二リップには、前記上下方向に関して前記第一切り欠きと重ならない位置に第二切り欠きが形成されていることを特徴とする通気シール材。
【請求項2】
前記リップ取付板のうち前記室内側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記躯体との間の隙間を塞ぐように前記リップ取付板から前記躯体に向けて延在する横方向に長尺な突起板を更に備え、
前記突起板には、通気孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の通気シール材。
【請求項3】
前記リップ取付板のうち前記室外側を向く面において前記第二リップの上側に離間して設けられ、前記空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する前記横方向に長尺な第三リップを更に備え、
前記第三リップには、前記上下方向に関して前記第二切り欠きと重ならない位置に第三切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通気シール材。
【請求項4】
前記第一横リップ及び前記第二横リップの横方向の一端側を塞ぐように設けられる縦方向に長尺な第一止水部材と、
前記第一横リップ及び前記第二横リップの横方向の他端側を塞ぐように設けられる縦方向に長尺な第二止水部材と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の通気シール材。
【請求項5】
建物に形成された横目地による通気を確保しつつ前記横目地からの浸水を防止する通気シール構造であって、
前記建物の外壁のうち室内側を向く面に対向する躯体に向けて前記横目地から延在する横方向に長尺な水切板と、前記水切板のうち前記躯体の側の端部から上側に向けて延在する横方向に長尺なリップ取付板とを含む屈曲板と、
前記リップ取付板のうち室外側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記外壁との間の空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する横方向に長尺な第一リップと、
前記リップ取付板のうち前記室外側を向く面において前記第一リップと離間するように前記第一リップの上側に設けられ、前記空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する前記横方向に長尺な第二リップと、
を備え、
前記第一リップには、第一切り欠きが形成され、
前記第二リップには、前記上下方向に関して前記第一切り欠きと重ならない位置に第二切り欠きが形成されていることを特徴とする通気シール構造。
【請求項6】
前記リップ取付板のうち前記室内側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記躯体との間の隙間を塞ぐように前記リップ取付板から前記躯体に向けて延在する突起板を更に備え、
前記突起板には、通気孔が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の通気シール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気シール材及びそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隣接する外壁パネル間に形成される目地から建物内部に雨水等が侵入することを防止するための外壁目地の防水構造が提案されている。例えば、特許文献1に記載の防水構造(1)では、上下に隣接して設けられる外壁パネル(2)間に形成される横目地(4)に横目地シーリング材(8)が充填されている。横目地シーリング材(8)には、ポリウレタン系、シリコン系、ポリサルファイド系等の公知の湿式のシーリング材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-188497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外壁と躯体との間に通気層を設け、空気(外気)を通気層に取り込むことによって壁体内の湿度上昇(すなわち壁体内に水分が溜まること)を防ぐ外壁通気工法が知られている。
【0005】
この点、上述した特許文献1では、横目地が湿式のシーリング材によって完全に塞がれているため、外壁通気工法において通気層に空気を取り込む入口が基礎側に形成された換気口に限定される。つまり、外壁に形成された横目地を介して空気を取り込むことができず、外壁通気工法において十分な通気量を確保できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、外壁通気工法において十分な通気量を確保しつつ横目地からの浸水を防止することが可能な通気シール材及びそれに関連する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、建物の外壁と前記外壁のうち室内側を向く面に対向する躯体との間に形成された通気層に設けられる通気シール材であって、前記建物に形成される横目地から前記躯体に向けて延在する横方向に長尺な水切板と、前記水切板のうち前記躯体の側の端部から上側に向けて延在する横方向に長尺なリップ取付板とを含む屈曲板と、前記リップ取付板のうち室外側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記外壁との間の空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する横方向に長尺な第一リップと、前記リップ取付板のうち前記室外側を向く面において前記第一リップと離間するように前記第一リップの上側に設けられ、前記空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する前記横方向に長尺な第二リップと、を備え、前記水切板のうち前記室外側の端部は、前記横目地を塞ぐことなく前記横目地の隙間に配置され、前記第一リップには、第一切り欠きが形成され、前記第二リップには、前記上下方向に関して前記第一切り欠きと重ならない位置に第二切り欠きが形成されていることを特徴とする通気シール材を提供している。
【0008】
ここで、前記リップ取付板のうち前記室内側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記躯体との間の隙間を塞ぐように前記リップ取付板から前記躯体に向けて延在する横方向に長尺な突起板を更に備え、前記突起板には、通気孔が形成されているのが好ましい。
【0009】
また、前記リップ取付板のうち前記室外側を向く面において前記第二リップの上側に離間して設けられ、前記空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する前記横方向に長尺な第三リップを更に備え、前記第三リップには、前記上下方向に関して前記第二切り欠きと重ならない位置に第三切り欠きが形成されているのが好ましい。
【0010】
また、前記第一横リップ及び前記第二横リップの横方向の一端側を塞ぐように設けられる縦方向に長尺な第一止水部材と、前記第一横リップ及び前記第二横リップの横方向の他端側を塞ぐように設けられる縦方向に長尺な第二止水部材と、を備えるのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、建物に形成された横目地による通気を確保しつつ前記横目地からの浸水を防止する通気シール構造であって、前記建物の外壁のうち室内側を向く面に対向する躯体に向けて前記横目地から延在する横方向に長尺な水切板と、前記水切板のうち前記躯体の側の端部から上側に向けて延在する横方向に長尺なリップ取付板とを含む屈曲板と、前記リップ取付板のうち室外側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記外壁との間の空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する横方向に長尺な第一リップと、前記リップ取付板のうち前記室外側を向く面において前記第一リップと離間するように前記第一リップの上側に設けられ、前記空隙を塞ぐように前記リップ取付板から前記外壁に向けて延在する前記横方向に長尺な第二リップと、を備え、前記第一リップには、第一切り欠きが形成され、前記第二リップには、前記上下方向に関して前記第一切り欠きと重ならない位置に第二切り欠きが形成されていることを特徴とする通気シール構造を提供している。
【0012】
ここで、前記リップ取付板のうち前記室内側を向く面に設けられ、前記リップ取付板と前記躯体との間の隙間を塞ぐように前記リップ取付板から前記躯体に向けて延在する突起板を更に備え、前記突起板には、通気孔が形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外壁に形成された横目地を塞ぐことなく当該横目地からの浸水を防止する通気シール部材が通気層に設けられるため、外壁通気工法において十分な通気量を確保しつつ横目地からの浸水を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による通気シール材を室外側から見た斜視図(A)及び室内側から見た斜視図(B)。
図2】木造住宅の外壁と躯体との間の通気層に通気シール材が設置された状態を示す斜視図。
図3図2の斜視図から上側(2階部分)の外壁を取り外した図。
図4図2のIV矢視図。
図5図4の破線領域を拡大した拡大図。
図6】横目地から取り込まれた外気の流れを示す概略側面図(A)及び概略斜視図(B)。
図7】鉄骨住宅の外壁と躯体との通気層に通気シール材が設置された状態を示す側面図。
図8】リップの両端部に設けられる止水部材の一方を図示した斜視図。
図9】止水部材にシーリングが施された状態を示す斜視図。
図10】変形例に係る止水部材の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による通気シール材及び通気シール構造について図1から図9に基づいて説明する。以下では、本発明による通気シール材の一例として、図1(A)及び(B)に示す通気シール材1を例示する。通気シール材1は、木造住宅や鉄骨住宅において外壁と躯体との間に形成される通気層に設けられ、外壁に形成された横目地からの通気を確保しつつ当該横目地からの浸水を防止するための部材である。
【0016】
図2及び図4に示すように、通気シール材1は、例えば木造住宅の外壁51,52と躯体6との間の通気層AZに設置される。なお、通気層AZには、複数の縦胴縁60が設置されている。
【0017】
なお、本実施形態では、下側の外壁51が1階の外壁パネルに対応し、上側の外壁52が2階の外壁パネルに対応する。1階の外壁51の上縁と2階の外壁52の下縁との間には、横目地7が形成されている。端的に言えば、横目地7は、1階と2階との間の取り合い部に形成される横目地である。
【0018】
また、躯体6は、透湿防水シートが貼付された合板、断熱材、防湿シート及び内装シートなどで構成される公知の構造物である。図4に示すように、躯体6は、外壁51,52のうち室内側を向く面511,521に対して間隙(通気層AZ)を隔てて対向するように設けられている。
【0019】
図4に示すように、外壁51,52のうち室内側を向く面511,521と躯体6のうち室外側を向く面61との間に形成される隙間が外壁通気工法における通気層AZとして機能する。
【0020】
図1(A)及び(B)に示すように、通気シール材1は、水切板3及びリップ取付板4を含む屈曲板2と、3枚のリップ411,412,413と、2枚の突起板421,423とを備えて構成される。なお、通気シール材1を構成する各部材は、公知の押出成形によって加工されている。
【0021】
図1(A)及び図5に示すように、水切板3は、横目地7から躯体6に向けて略水平方向に延在する横方向に長尺な部材として構成されている。
【0022】
図5に示すように、水切板3の下面は外壁51の上縁に対して接続され、水切板3の上面は外壁52の下縁に間隙を隔てて対向している。その結果、水切板3は、横目地7を塞ぐことなく横目地7の隙間に配置されている。
【0023】
図1(A)及び図5に示すように、リップ取付板4は、水切板3の室内側端部から上方に延在する横方向に長尺な部材として構成されている。より詳細には、図5に示すように、リップ取付板4は、水切板3の室内側端部から室内側にやや傾斜しながら上方に延在する傾斜領域と、傾斜領域の上端からほぼ真上に延在する鉛直領域とからなる。
【0024】
以上のような構成により、屈曲板2は、略水平方向に延在する水切板3と、上方に延在するリップ取付板4とにより、断面L字状を有している。
【0025】
図1(A)に示すように、3枚のリップ411,412,413は、いずれも、リップ取付板4のうち室外側を向く面41に対して上下方向に離間して設けられている。
【0026】
具体的には、3枚のリップ411,412,413は、いずれも、上述したリップ取付板4の鉛直領域に対して設けられている。3枚のリップ411,412,413は、この順で下から上に離間して設けられている。すなわち、リップ411が一番下に設けられ、リップ413が一番上に設けられ、リップ412がリップ411とリップ413との間に設けられている。
【0027】
図5に示すように、3枚のリップ411,412,413は、いずれも、リップ取付板4と外壁51,52との間の空隙(通気層AZの一部)を塞ぐようにリップ取付板4から外壁51,52に向けて延在する横方向に長尺な部材として構成されている。
【0028】
また、3枚のリップ411,412,413は、外壁52のうち室内側を向く面521に対してそれぞれ先端(室外側の端部)が当接するように設けられている。
【0029】
図1(A)に示すように、3枚のリップ411,412,413には、それぞれ、切り欠き411H,412H,413Hが形成されている。切り欠き411H,412H,413Hは、横目地7から取り込んだ空気を通気層AZの上方に通すための通気経路として機能する。
【0030】
つまり、リップ取付板4と外壁51,52との間の空隙の大半は上述したリップ411,412,413によって塞がれるものの、当該空隙の一部は切り欠き411H,412H,413Hによって開放されている。
【0031】
図1(A)に示すように、切り欠き412Hは、上下方向に関して切り欠き411Hと重ならない位置に形成されている。換言すれば、上下方向に隣接されたリップ411,412において切り欠き411Hと切り欠き412Hとが上下方向に関してずれた位置に設けられている。
【0032】
また、切り欠き412Hは、上下方向に関して切り欠き413Hと重ならない位置に形成されている。換言すれば、上下方向に隣接されたリップ412,413において切り欠き412Hと切り欠き413Hとが上下方向に関してずれた位置に設けられている。
【0033】
なお、本実施形態では、一番下のリップ411に形成された切り欠き411Hと一番上に形成されたリップ413の切り欠き413Hとは、上下方向に関して重なっている(同じ位置に形成されている)。
【0034】
切り欠き411H,412H,413Hが交互に形成されることにより、横目地7から侵入した水が切り欠き411Hを通過してリップ411とリップ412との間に上がってきたとしても、リップ412(切り欠き412H以外の部分)によって水が堰き止められる。
【0035】
また、切り欠き411Hを通過した一部の水が横方向に移動し、万が一切り欠き412Hを通過してリップ412とリップ413との間に上がってきたとしても、リップ413(切り欠き413H以外の部分)によって堰き止められる。
【0036】
ここで、一番下のリップ411を横目地7に近づけ過ぎると(必要以上に低い位置に設けると)、リップ411に形成された切り欠き411Hから想定以上の水が浸水し、一番上のリップ413に形成された切り欠き413Hに横目地7から侵入した水が到達する可能性がある。
【0037】
そのため、一番下のリップ411は、横目地7から浸水した水が切り欠き411Hから一定以上浸水しない(切り欠き411Hを通過する水量が一定以下になる)程度の高さ(本実施形態では約35mm(ミリメートル))に配置される。
【0038】
このように、リップ411,412,413を三段に構成し、かつ、切り欠き411H,412H,413Hを上下方向に重ならないように配置することで、通気層AZへの浸水を阻止しつつ横目地7からの通気も確保している。
【0039】
なお、リップ411は本発明に係る「第一リップ」、リップ412は本発明に係る「第二リップ」、リップ413は本発明に係る「第三リップ」の一例である。また、切り欠き411Hは本発明に係る「第一切り欠き」、切り欠き412Hは本発明に係る「第二切り欠き」、切り欠き413Hは本発明に係る「第三切り欠き」の一例である。
【0040】
図1(B)に示すように、2枚の突起板421,423は、いずれも、リップ取付板4のうち室内側を向く面42(室外側を向く面41の反対側の面)において上方向に離間して設けられている。
【0041】
具体的には、2枚の突起板421,423は、いずれも、上述したリップ取付板4の鉛直領域に対して設けられている。突起板421は、上述した一番下のリップ411よりも下側に位置するように設けられている。突起板423は、上述した一番上のリップ413とほぼ同じ高さに位置するように設けられている。
【0042】
図5に示すように、2枚の突起板421,423は、いずれも、リップ取付板4と躯体6との間の空隙(通気層AZの一部)を塞ぐようにリップ取付板4から躯体6に向けて延在する横方向に長尺な部材である。
【0043】
また、2枚の突起板421,423は、躯体6のうち室外側を向く面61に対してそれぞれ先端(室内側の端部)が当接するように設けられている。
【0044】
図1(B)に示すように、2枚の突起板421,423には、それぞれ、通気孔421H,423Hが形成されている。通気孔421H,423Hは、通気層AZの下側から上がってきた空気(詳細には、基礎側の換気口から取り込まれ、1階側から2階側に向かって上がってきた空気)を通すための通気経路として機能する。
【0045】
通気孔421H,423Hは、上述した切り欠き411H,412H,413Hとは異なり、上下方向に関して重なる位置(同じ位置)に形成されている。また、通気孔421H,423Hは、上述した切り欠き411H,412H,413Hよりも大きく(幅広に)形成されている。
【0046】
突起板421,423には、リップ411,412,413のような防水壁としての役割がなく、通気孔421H,423Hを上方方向に関して重なる位置に配置したり、比較的大きく(幅広に)形成したりしても浸水のおそれがない。逆に、通気孔421H,423Hを上方方向に関して重なる位置に配置することにより、空気をよりスムーズに通すことができる。また、通気孔421H,423Hを大きく形成することにより、十分な通気量が確保される。
【0047】
なお、突起板421,423は共に本発明に係る「突起板」の一例であり、通気孔421H,423Hは共に本発明に係る「通気孔」の一例である。
【0048】
図6(A)に示すように、本実施形態では、通気シール材1を用いることにより、従来のように横目地7をシーリング材で塞ぐ必要がない。そのため、基礎側の換気口のみならず、横目地7からも外気が通気層AZに取り込まれる(図6(A)の破線矢印参照)。
【0049】
図6(B)に示すように、横目地7を介して通気層AZに取り込まれた外気は、上方に向かって移動する。具体的には、横目地7から取り込まれた外気は、リップ411に形成された切り欠き411H、リップ412に形成された切り欠き412H、リップ413に形成された切り欠き413Hを順次通過し、上方に向けて移動する(図6(B)の破線矢印参照)。
【0050】
なお、真ん中のリップ412に形成された切り欠き412Hは、下側のリップ411に形成された切り欠き411H及び上側のリップ413に形成された切り欠き413Hに対して位置ずれしている。よって、図6(B)の破線矢印に示すように、外気は、通気シール材1の内部をジグザグに蛇行しながら上方に向けて移動する。
【0051】
なお、図2から図6では、通気シール材1が木造住宅の通気層AZに対して設置されている場合を例示したが、これに限定されない。図7に示すように、通気シール材1は、鉄骨住宅の通気層に対して設置するようにしてもよい。
【0052】
鉄骨住宅では、躯体8が梁81と梁81に設けられた軸組83とによって構成される。そのため、鉄骨住宅では、通気シール材1の突起板421,423の突起先端が軸組83のうち室外側を向く面に当接するように設けられるようにすればよい。
【0053】
また、木造住宅及び鉄筋住宅に共通するが、図8に示すように、通気シール材1は、水切板3及びリップ取付板4を含む屈曲板2の左右両端に止水部材9を備えている。
【0054】
止水部材9は、横目地7から侵入した水が横方向に流れた場合に、屈曲板2の左右両端において水を堰き止め、通気層AZへの浸水を防止するための角材である。
【0055】
なお、図8では、紙面の都合上、一方の端部にのみ止水部材9が設けられているが、実際には反対側の端部にも同様の止水部材9が設けられている。また、図8では、鉄骨住宅の通気層に設けられた通気シール材1を例示しているが、木造住宅に関しても同様に止水部材9が設けられる。
【0056】
図9に示すように、止水部材9には、シーリング材9Sが施される。シーリング材9Sを止水部材9に施すことによって屈曲板2の左右両端からの通気層AZへの浸水がより確実に阻止される。シーリング材9Sが施された止水部材9によって堰き止められた水は、水切板3によって外壁51の外側に流れ出る。
【0057】
上述した実施形態によれば、外壁51の上縁と外壁52の下縁との間に形成された横目地7を塞ぐことなく当該横目地7からの浸水を防止する通気シール材1が通気層AZに設けられる。そのため、外壁通気工法において十分な通気量を確保しつつ横目地7からの浸水を防止することが可能である。
【0058】
より詳細には、本実施形態による通気シール材1においては、切り欠き411H,412H,413Hを含むリップ411,412,413がリップ取付板4のうち室外側を向く面41において上下方向に離間して設けられている。
【0059】
そのため、横目地7から取り込んだ空気を切り欠き411H,412H,413Hによって形成される通気経路を通じて上方に通すことが可能となる。その結果、通気層AZにおいて十分な通気量を確保することが可能である。
【0060】
また、上述した実施形態によれば、切り欠き411Hと切り欠き412Hとが上下方向に重ならない位置に設けられ、かつ、切り欠き412Hと切り欠き413Hとが上下方向に重ならない位置に設けられている。端的に言えば、切り欠き411H,412H,413Hが上下方向に関して交互に配置されている。
【0061】
そのため、横目地7を介して雨水などが通気シール材1に侵入したとしても、切り欠き411H,412H,413Hを介して通気層AZに浸水しない。少なくとも、通気シール材1に侵入した水が1番上のリップ413に形成された切り欠き413Hを通過することはない。また、通気シール材1に侵入した水は、切り欠き411H,412Hを介して下側に排水され、最終的には水切板3によって外壁51の外側に排水される。
【0062】
また、上述した実施形態によれば、通気孔421H,423Hがそれぞれ形成された突起板421,423がリップ取付板4のうち室内側を向く面42において上下方向に離間して設けられている。
【0063】
そのため、木造住宅や鉄骨住宅の基礎側の換気口から取り込まれ、1階側から2階側に向かって上がってきた空気を通気孔421H,423Hを介して上方に通すことができる。すなわち、通気層AZに通気シール材1が設置されたとしても、1階から2階に向かって流れる空気の通気経路を阻害せずに済む。
【0064】
また、上述した実施形態によれば、水切板3及びリップ取付板4を含む屈曲板2の左右両端に止水部材9がそれぞれ設けられている。そのため、横目地7から侵入した水が横方向に流れたとしても、屈曲板2の左右両端において水を堰き止め、通気層AZへの浸水を防止することが可能である。
【0065】
<2.変形例>
本発明による通気シール材及び通気シール構造は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0066】
例えば、上述した実施形態では、リップ取付板4のうち室外側を向く面41に対して3枚のリップ411,412,413が設けられる場合を例示したが、これに限定されない。防水効果が得られさえすれば、リップ取付板4のうち室外側を向く面41に対して2枚のリップ411,412のみが設けられるようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、図5に示すように、水切板3の室外側端部が外壁51,52の室外側を向く面512,522よりも室内側に配置される場合を例示したが、これに限定されない。水切板3の室外側端部が外壁51,52の室外側を向く面512,522から突出さえしなければ、水切板3の室外側端部が外壁51,52の室外側を向く面512,522に対して面一に配置されるようにしてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、図1(A)に示すように、一番下のリップ411に形成された切り欠き411Hと一番上のリップ413に形成された切り欠き413Hとが上下方向に関して重なっている場合を例示したが、これに限定されない。切り欠き411Hと切り欠き413Hとが上下方向に関して重ならない位置に形成されるようにしてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、図1(A)に示すように、リップ411、412、413にそれぞれ一つずつの切り欠きが形成される場合を例示したが、これに限定されず、それぞれのリップ411、412、413に複数の切り欠きが形成されるようにしてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、木造住宅や鉄骨住宅において1階の外壁51の上縁と2階の外壁52の下縁との間に形成される横目地7に対して通気シール材1が設置される場合を例示したが、これに限定されない。木造住宅や鉄骨住宅において基礎側の横目地、軒裏側の横目地、サッシの上側に形成される横目地などに通気シール材1を設置するようにしてもよい。ただし、サッシの上側に形成される横目地に通気シール材1を設置する場合、通気層AZに設けられる縦胴縁との干渉を防ぐため、上述した通気シール材1が横方向に短く構成されるものとする。
【0071】
また、上述した実施形態では、図8に示すように、止水部材9が直方体形状で構成される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図10に示すように、リップ取付板4のうち室外側を向く面41の形状に沿って下側が室外側に一部張り出すような形状で構成されるようにしてもよい。かかる変形例によれば、屈曲板2の左右両端において水をより確実に堰き止めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように本発明による通気シール材及び通気シール構造は、建物に形成された横目地の通気を確保しつつ当該横目地からの浸水を防止するのに適している。
【符号の説明】
【0073】
1 通気シール材
2 屈曲板
3 水切板
4 リップ取付板
6 躯体
7 横目地
8 躯体
9 止水部材
9S シーリング材
51,52 外壁
60 縦胴縁
61 面
81 梁
83 軸組
411,412,413 リップ
411H,412H,413H 切り欠き
421,423 突起板
421H,423H 通気孔
AZ 通気層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10