(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163909
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】整流部材及びこれを用いた室内整流システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20221020BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20221020BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F7/06 C
F24F9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069033
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金原 孝
(72)【発明者】
【氏名】北洞 和彦
(72)【発明者】
【氏名】緒方 嘉貴
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
【Fターム(参考)】
3L058BF03
3L058BF06
3L080BA02
(57)【要約】
【課題】簡単な構造であって、枠材の部分やそれらの接続部分においても、中央部と変わりのない一方向の定常流を流すことのできる整流部材及びこれを用いた室内整流システムを提供する。
【解決手段】作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を整流するための整流部材であって、複数本の枠材からなる枠本体と、この枠本体の一表面及び/又は他表面を被覆するように枠材に固着される多孔性シートとを備えている。この枠材は、その断面を直角三角形とし、直角を挟む2辺のうち一方を枠材の一表面に他方を枠材の外側面にし、斜辺を枠材の内側面にして構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を整流するための整流部材であって、
前記整流部材は、複数本の枠材からなる枠本体と、この枠本体の一表面及び/又は他表面を被覆するように前記枠材に固着される多孔性シートとを備えており、
前記枠材は、その断面を直角三角形とし、直角を挟む2辺のうち一方を前記枠材の一表面に他方を前記枠材の外側面にし、斜辺を前記枠材の内側面にして構成されていることを特徴とする整流部材。
【請求項2】
前記多孔性シートは、表裏を連通する無数の細孔を有するスクリーン紗であることを特徴とする請求項1に記載の整流部材。
【請求項3】
前記枠材の断面の直角三角形において、前記枠材の一表面を構成する辺の長さと、前記枠材の外側面を構成する辺の長さとの比が、2:1~3:7の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の整流部材。
【請求項4】
前記枠材の断面の直角三角形において、前記枠材の外側面を構成する辺と斜辺を構成する辺とで挟まれた挟角において、前記多孔性シートに当接する角部に丸みを持たせることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の整流部材。
【請求項5】
前記作業室の一方の壁面に複数の前記整流部材を組み合わせて使用する際には、一方の整流部材の前記枠材の外側面と他方の整流部材の前記枠材の外側面とを直接又は間接に当接させることにより、
両方の整流部材が、互いに前記枠材の外側面で対向して2つの枠材で構成される断面が逆二等辺三角形となることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の整流部材。
【請求項6】
作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を給気する給気手段と、
前記作業室の他方の壁面から前記一方向流の空気を排気する排気手段とを備え、
前記給気手段は、前記一方向流の空気を形成する整流部材を複数有し、各整流部材の外側面は、他の整流部材の外側面又は前記作業室の壁面と直接又は間接に当接し、
前記整流部材は、請求項1~5のいずれか1つに記載の整流部材であることを特徴とする室内整流システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を整流するための整流部材及びこれを用いた室内整流システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
清浄な雰囲気で行われる作業、例えば、医薬品の製造段階の作業、或いは、半導体や電子部品の製造段階の作業においては、外部環境から汚染物質が入り込まないように内部を無菌・無塵状態に保った清浄な作業環境で作業が行われる。このような作業環境としては、一般にはクリーンルームが使用される。このクリーンルーム内では、無塵衣を身に付けた作業者が作業を行う。しかし、無菌性保証水準、無塵性保証水準を高めるためには、クリーンルーム内に更に高度なクリーン領域を構成して作業が行われる。
【0003】
高度なクリーン領域を構成する1つの方法として、アイソレーター又はグローブボックス(以下、統一して「アイソレーター」という。)が利用される。このアイソレーターは、外部環境から密閉されたチャンバーを使用し、作業者がこのチャンバーの外部から作業用グローブなどを介して作業を行う。これらのアイソレーターのチャンバー内においては、上方から下方に流れる一方向流の清浄空気の層流(ラミナーフロー)を流して、チャンバー内のクリーン環境を維持している。
【0004】
また、高度なクリーン領域を構成する他の方法として、RABS(アクセス制限バリアシステム)が利用される。このRABSは、クリーンルーム内の一部に下方部が解放された壁面で囲まれた領域を設け、その内部に上方から下方に流れる一方向流の清浄空気の層流(ラミナーフロー)を流すと共に、作業者の厳格なアクセス制限を行うようにしたものである。このRABSにおいては、作業者は壁面に設けられた作業用グローブなどを介して作業を行う。
【0005】
また、医薬品を製造するための要件をまとめたGMP(Good Manufacturing Practice;医薬品の製造管理及び品質管理の基準)においては、アイソレーターやRABSにおける清浄空気の流れに対する風速分布の要求が厳しくなっている。
【0006】
アイソレーターのチャンバー内やRABSにおいて、上方から下方に清浄空気を流す方法としては、一般的にチャンバー内の天井部にパンチング板を設置し、これを通して清浄空気を上方から供給して下方に排気することが行われる。しかし、このパンチング板の目開きは、数mmの細孔径であって通過する空気流のレイノルズ数が104のオーダーとなる。この状態では、パンチング板の細孔を通過した段階から空気流は乱流となり、上方から下方に流れる一方向の定常流を形成できない。
【0007】
そこで、パンチング板に代えて、目開きが30~200μm程度のスクリーンメッシュを張った整流部材が使用されている。この方法によれば、スクリーンメッシュを通過する空気流のレイノルズ数が2~10程度となり、ほぼ層流に近い一方向の定常流を形成できる。しかし、このスクリーンメッシュ整流部材においても、その枠材の部分やそれらの接続部分の空気流は制御することができず乱流となる。
【0008】
そこで、スクリーンメッシュ整流部材の枠材の部分の流れを調整する方法が提案されている。下記特許文献1は、本発明の出願人によるアイソレーター装置の発明である。この発明においては、アイソレーター装置の構成要素の一つとして枠材の部分を改良したスクリーンメッシュ整流部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1に提案されているスクリーンメッシュ整流部材においては、整流部材の枠材の一部分に貫通口を設けると共に、全体では2枚のスクリーンメッシュを使用するが貫通口の部分は1枚にしてスクリーンメッシュの通過抵抗を小さくしている。このことにより、この部分の流速を大きくして全体の空気の流れを調整するものである。この方法においては、本来は空気が通過しない枠材の部分の空気の流れを確保するという効果が認められる。
【0011】
一方、無菌医薬品製造等に用いられる大型のアイソレーター装置では、大量のスクリーンメッシュ整流部材が用いられている。このようなリスクの高い無菌医薬品の製造工程においては、枠材の部分からの乱流の発生が大きな課題となっている。そこで、上記特許文献1で改良されたスクリーンメッシュ整流部材を更に進化させて、枠材の部分やそれらの接続部分においても、より正確に他のメッシュ部分と同様の一方向の定常流を得られる方法が望まれていた。
【0012】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、簡単な構造であって、枠材の部分やそれらの接続部分においても、中央部と変わりのない一方向の定常流を流すことのできる整流部材及びこれを用いた室内整流システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、整流部材の枠材の断面形状を工夫することにより、本発明の目的を達成できることを見出して本発明の完成に至った。
【0014】
即ち、本発明に係る整流部材は、請求項1の記載によれば、
作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を整流するための整流部材(30)であって、
前記整流部材は、複数本の枠材(33)からなる枠本体(31)と、この枠本体の一表面及び/又は他表面を被覆するように前記枠材に固着される多孔性シート(32a,32b)とを備えており、
前記枠材は、その断面を直角三角形とし、直角を挟む2辺のうち一方を前記枠材の一表面(33b)に他方を前記枠材の外側面(33a)にし、斜辺を前記枠材の内側面(33c)にして構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の整流部材であって、
前記多孔性シートは、表裏を連通する無数の細孔を有するスクリーン紗であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載の整流部材であって、
前記枠材の断面の直角三角形において、前記枠材の一表面を構成する辺の長さと、前記枠材の外側面を構成する辺の長さとの比が、2:1~3:7の範囲内にあることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1~3のいずれか1つに記載の整流部材であって、
前記枠材の断面の直角三角形において、前記枠材の外側面を構成する辺と斜辺を構成する辺とで挟まれた挟角において、前記多孔性シートに当接する角部に丸みを持たせることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1~4のいずれか1つに記載の整流部材であって、
前記作業室の一方の壁面に複数の前記整流部材を組み合わせて使用する際には、一方の整流部材の前記枠材の外側面と他方の整流部材の前記枠材の外側面とを直接又は間接に当接させることにより、
両方の整流部材が、互いに前記枠材の外側面で対向して2つの枠材で構成される断面が逆二等辺三角形となることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る室内整流システムは、請求項6の記載によれば、
作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を給気する給気手段(C2)と、
前記作業室の他方の壁面から前記一方向流の空気を排気する排気手段(C3)とを備え、
前記給気手段は、前記一方向流の空気を形成する整流部材を複数有し、各整流部材の外側面は、他の整流部材の外側面又は前記作業室の壁面と直接又は間接に当接し、
前記整流部材は、請求項1~5のいずれか1つに記載の整流部材であることを特徴とする。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0021】
上記構成によれば、本発明に係る整流部材は、作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を整流するためのものである。この整流部材は、複数本の枠材からなる枠本体と、この枠本体の一表面及び/又は他表面を被覆するように当該枠材に固着される多孔性シートとを備えている。この枠材は、その断面を直角三角形とし、直角を挟む2辺のうち一方を枠材の一表面に他方を枠材の外側面にし、斜辺を枠材の内側面にして構成されている。
【0022】
このことにより、簡単な構造であって、枠材の部分やそれらの接続部分においても、中央部と変わりのない一方向の定常流を流すことのできる整流部材を提供することができる。
【0023】
また、上記構成によれば、多孔性シートは、表裏を連通する無数の細孔を有するスクリーン紗である。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0024】
また、上記構成によれば、枠材の断面の直角三角形において、枠材の一表面を構成する辺の長さと、枠材の外側面を構成する辺の長さとの比が、2:1~3:7の範囲内にあってもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0025】
また、上記構成によれば、枠材の断面の直角三角形において、枠材の外側面を構成する辺と斜辺を構成する辺とで挟まれた挟角において、多孔性シートに当接する角部に丸みを持たせることが好ましい。このことにより、枠本体に多孔性シートを高張力で張ることができ、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0026】
また、上記構成によれば、作業室の一方の壁面に複数の整流部材を組み合わせて使用する際には、一方の整流部材の枠材の外側面と他方の整流部材の枠材の外側面とを直接又は間接に当接させることにより、両方の整流部材が、互いに枠材の外側面で対向して2つの枠材で構成される断面が逆二等辺三角形となる。このことにより、上記作用効果をより具体的かつ効果的に発揮することができる。
【0027】
また、上記構成によれば、本発明に係る室内整流システムは、給気手段と排気手段とを備えている。給気手段は、作業室の内部に一方の壁面から対向する他方の壁面に向かう一方向流の空気を給気する。排気手段は、作業室の他方の壁面から前記一方向流の空気を排気する。また、給気手段は、一方向流の空気を形成する整流部材を複数有し、各整流部材の外側面は、他の整流部材の外側面又は前記作業室の壁面と直接又は間接に当接している。なお、この整流部材は、請求項1~4のいずれか1つに記載の整流部材である。
【0028】
このことにより、簡単な構造であって、枠材の部分やそれらの接続部分においても、中央部と変わりのない一方向の定常流を流すことのできる整流部材を用いた室内整流システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る室内整流システムを備えたアイソレーター装置のチャンバーの内部を正面から見た概要断面図である。
【
図2】従来のパンチング板による空気流を示す概要図である。
【
図3】現状のスクリーンメッシュ整流板による空気流を示す概要図である。
【
図4】本発明に係るスクリーンメッシュ整流板による空気流を示す概要図である。
【
図5】
図3の現状のスクリーンメッシュ整流板を2つ接続したときの枠材の接続部分を示す断面図である。
【
図6】
図4の本発明に係るスクリーンメッシュ整流板を2つ接続したときの枠材の接続部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る整流部材(本実施形態においては、スクリーンメッシュ整流板と具体的に表現する)及びこれを用いた室内整流システムの一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明に係る室内整流システムを備えたアイソレーター装置のチャンバーの内部を正面から見た概要断面図である。なお、本実施形態においては、アイソレーター装置のチャンバーの内部を上方から下方に向かって一方向流の空気が流れている。
【0031】
図1において、アイソレーター装置Aは、床面上に載置される架台Bと、この架台Bの上に乗載されるアイソレーター本体Cとにより構成されている。架台Bは、周囲をステンレス製金属板からなる壁材で覆われ、その内部には、電装及び機械室(図示せず)が収納されている。アイソレーター本体Cは、チャンバーC1と、給気機構C2と、排気機構C3とを備えている。チャンバーC1は、ステンレス製金属板で構成された箱体からなり、制限された吸気口及び排気口を除き作業者が作業を行う外部環境とは気密的に遮蔽されている。
【0032】
給気機構C2は、外気をチャンバーC1内に供給するための給気用ブロワー10と、この給気用ブロワー10から供給された空気を濾過するための給気用フィルタユニット20と、チャンバー10内の天井部にあって給気用フィルタユニット20で濾過された清浄空気を整流してチャンバーC1内に供給するためのスクリーンメッシュ整流板30とを備えている。
【0033】
排気機構C3は、チャンバーC1内の空気を排気するための排気口と、排気する空気を濾過するための排気用フィルタユニットと、排気用フィルタユニットで濾過された空気を排気するための排気用ブロワーとを架台Bの内部に備えている(いずれも図示せず)。
【0034】
本発明に係る室内整流システムは、給気機構C2と排気機構C3とを備えている。この給気機構C2は、複数のスクリーンメッシュ整流板30を備えている(
図1においては2つ)。2つのスクリーンメッシュ整流板30の外側面は、一面が互いの外側面と直接または間接に当接している(
図1のXの部分)。また、2つのスクリーンメッシュ整流板30の他の外側面は、チャンバーC1の側壁面と当接している(
図1のYの部分等)。なお、チャンバーC1の側壁面においては、側壁部に設けられた装置フレーム(図示せず)に各スクリーンメッシュ整流板30の外側面を載置する。
【0035】
次に、本発明に係る整流部材(スクリーンメッシュ整流板)について説明する。まず、整流板の種類による整流の違い(空気の流れの違い)について説明する。
図2は、従来のパンチング板による空気流を示す概要図である。
図3は、現状のスクリーンメッシュ整流板による空気流を示す概要図である。
図4は、本発明に係るスクリーンメッシュ整流板による空気流を示す概要図である。
【0036】
図2は、従来のパンチング板による方法であって、チャンバー内の天井部にパンチング板40を設置し、給気用ブロワー(図示せず)から供給された空気を給気用フィルタユニット20で濾過する。濾過された清浄空気は、パンチング板40を介してチャンバー内に上方から下方に向かって供給されている。上述のように、整流に使用するパンチング板40の目開きは、数mmの細孔径であって細孔41を通過する空気流のレイノルズ数が10
4のオーダーとなる。
【0037】
この状態では、パンチング板40の細孔41を通過した段階から空気流は乱流となり、上方から下方に流れる一方向の定常流を形成できない(
図2で空気の流れのイメージを示す)。なお、
図2の下部に右向矢印で記載したパスライン50は、チャンバー内の作業によるワークの流れを示しており、乱れた空気流が清浄状態を維持すべきワークに悪影響(ワーク下方部分からの微粒子の巻き上げなど)を及ぼす可能性が排除できない。
【0038】
図3は、現状のスクリーンメッシュ整流板による方法であって、チャンバー内の天井部に2つのスクリーンメッシュ整流板50を設置し、給気用ブロワー(図示せず)から供給された空気を給気用フィルタユニット20で濾過する。濾過された清浄空気は、スクリーンメッシュ整流板50を介してチャンバー内に上方から下方に向かって供給されている。
【0039】
2つのスクリーンメッシュ整流板50は、それぞれ、アルミやステンレス等の金属からなる矩形状の枠本体51と、この枠本体51の上面及び下面を覆うように枠本体51に貼付されたスクリーン紗52a、52bとから構成されている。また、枠本体51を構成する枠材53の断面は、四角形である。
【0040】
スクリーン紗52a、52bは、一般に合成繊維長繊維からなる織物であって、この織物の経糸と緯糸の間隙によって表裏を連通する無数の細孔が形成されている。このことにより、スクリーンメッシュ整流板50を通過する空気は、これらの無数の細孔によってその流れを整えられ、チャンバー内を上方から下方に向かう安定した一方向の定常流の空気を形成する。
【0041】
このスクリーン紗52a、52bを形成する合成繊維長繊維は、線径が30~200μmであることが好ましく、目開きが30~200μmであることが好ましい。また、スクリーン紗52a、52bの素材は、どのようなものであってもよいが、本実施形態においては、ポリエチレン紗を使用した。
【0042】
このように、
図3の現状のスクリーンメッシュ整流板においては、スクリーンメッシュの目開きが30~200μm程度と細かくすることができる。このことにより、スクリーンメッシュを通過する空気流のレイノルズ数が2~10程度となり、ほぼ層流に近い一方向の定常流を形成できる。
【0043】
しかし、このスクリーンメッシュ整流板においても、その枠本体51や2つの枠本体51の接続部分(
図3のZの部分)の下方の空気流は制御することができず乱流となる。
【0044】
この状態において、スクリーンメッシュ整流板50のスクリーン紗52a、52bを通過した清浄空気の空気流は、スクリーンメッシュ整流板50の中央部(スクリーン紗52a、52bの部分)の下方では一方向の定常流を形成する。しかし、枠本体51や枠本体51の接続部分(
図3のZの部分)の下方では、上方から下方に流れる一方向の定常流を形成できない(
図3で空気の流れのイメージを示す)。なお、
図3の下部に右向矢印で記載したパスライン60においては、部分的(
図3のZの下方)に乱れた空気流が清浄状態を維持すべきワークに悪影響を及ぼす可能性が排除できない。
【0045】
上記問題に対処して、
図4は、本発明に係るスクリーンメッシュ整流板による方法であって、チャンバー内の天井部に枠本体の構造を改良した2つのスクリーンメッシュ整流板30を設置する。まず、給気用ブロワー(図示せず)から供給された空気を給気用フィルタユニット20で濾過する。濾過された清浄空気は、スクリーンメッシュ整流板30を介してチャンバー内に上方から下方に向かって供給されている。
【0046】
2つのスクリーンメッシュ整流板30は、それぞれ、上記
図3のスクリーンメッシュ整流板50と同様に、アルミやステンレス等の金属からなる矩形状の枠本体31と、この枠本体31の上面及び下面を覆うように枠本体31に貼付されたスクリーン紗32a、32bとから構成されている。なお、本発明に係るスクリーンメッシュ整流板においては、枠本体31を構成する枠材の断面形状が、上記
図3のスクリーンメッシュ整流板50と大きく異なっている。この点についての詳細は後述する。
【0047】
スクリーン紗32a、32bは、上記
図3のスクリーンメッシュ整流板50と同様であって、スクリーンメッシュ整流板30を通過する空気は、無数の細孔によってその流れを整えられ、チャンバー内を上方から下方に向かう安定した一方向の定常流の空気を形成する。本実施形態においては、枠本体31の上面及び下面を覆うように2枚のスクリーン紗を使用するが、上面又は下面を覆う1枚のスクリーン紗を使用するようにしてもよい。なお、1枚のスクリーン紗を使用する場合には、下面にスクリーン紗を使用することが好ましい。
【0048】
本発明においては、枠本体31を構成する枠材の断面形状を改造することにより、スクリーンメッシュ整流板30の中央部(スクリーン紗32a、32bの部分)の下方だけでなく、枠本体31や2つの枠本体31の接続部分(
図4のXの部分)の下方においても、安定した一方向の定常流の空気を形成する(
図4で空気の流れのイメージを示す)。よって、
図4の下部に右向矢印で記載したパスライン60においては、全域で安定した一方向の定常流が形成され、清浄状態を維持すべきワークに悪影響を及ぼすことがない。
【0049】
次に、現状のスクリーンメッシュ整流板、及び、本発明に係るスクリーンメッシュ整流板の構造の違いについて説明する。
図5は、現状のスクリーンメッシュ整流板を2つ接続したときの枠材の接続部分を示す断面図である。
図6は、本発明に係るスクリーンメッシュ整流板を2つ接続したときの枠材の接続部分を示す断面図である。
【0050】
図5の現状のスクリーンメッシュ整流板の枠材の接続部分においては、チャンバー内の天井部に設けられた装置フレーム54に化粧枠55a、55bを介して各スクリーンメッシュ整流板50の枠本体51を構成する枠材53を当接し、下方から押さえ板56とボルト57で固定する。
【0051】
例えば、装置フレーム54に横幅があり、これに固定した2つの四角形の枠材53の横幅がそれぞれ30mmあった場合には、この接続部分Zの横幅が90mm以上にもなる。従って、この接続部分Zからは清浄空気が供給されることがなく、その下方では左右のスクリーン紗52bから供給された清浄空気が乱流となって一方向の定常流を形成することができない。また、四角形の枠材53の場合には、枠材53の横幅を30mmより小さくすると、スクリーン紗を張る際の枠内向きの大きなテンションに耐えることができず、フレームの撓みを生ずるため幅を小さくすることができない。
【0052】
これに対して、
図6の本発明に係るスクリーンメッシュ整流板の枠材の接続部分においては、チャンバー内の天井部にスクリーンメッシュ整流板30を固定するための装置フレームは設けない。その代わり、薄い化粧枠35を介して各スクリーンメッシュ整流板30の枠本体31を構成する枠材33の外側面33aを互いに当接する。
【0053】
本実施形態において、枠本体31を構成する枠材33は、断面形状が直角三角形であって各頂点に丸みを持たせたものを使用した。特に、外側面33aと内側面33cとの頂点は、外側面33aに貼付されたスクリーン紗32bが当接する部分であり、スクリーン紗32bを保護するために丸みを持たせることが好ましい。
【0054】
また、枠材33の上面33bを構成する辺の長さと、枠材33の外側面33aを構成する辺の長さとの比を3:5とした。このことにより、薄い化粧枠35を介して枠材33どうしの当接部分が安定する。また、枠材33の断面形状に三角構造を採用したことにより、スクリーン紗を張る際の枠内向きの大きなテンションにも耐えることができ、高速で空気流を通過させることのできるハイテンションのスクリーンメッシュ整流板を構成することができる。
【0055】
なお、枠材33どうしの当接部分に挟持される化粧枠35の上下部には、それぞれ羽35a、35bが設けられている。上部の羽35bは、2つの枠材33の隙間を塞いで空気の吹き出しを遮断する。また、下部の羽35aは、2つの枠材33の隙間を塞いで空気の吹き出しを遮断すると共に、2つの枠材33の接着面の化粧材の役目をなす。
【0056】
また、枠材33の断面形状が直角三角形であり、2つの枠材33が当接した部分の断面が逆二等辺三角形となる。
図6において、上部にある給気用フィルタユニット(図示せず)で濾過された清浄空気は、図示左右のスクリーン紗32aを介して枠材33の内側面33cに沿って下流する。次に、清浄空気は、スクリーン紗32bを介して下部にあるチャンバー内に供給される。
【0057】
このとき、2つのスクリーンメッシュ整流板30の接続部分Xは、化粧枠35の下部の羽35bの横幅程度(最大5mm程度)であり、左右の空気流が乱れることなく並走して下方に流れる。従って、この接続部分Xの下方では、清浄空気が一方向の定常流を形成することができる。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構造であって、枠材の部分やそれらの接続部分においても、中央部と変わりのない一方向の定常流を流すことのできる整流部材及びこれを用いた室内整流システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
A…アイソレーター装置、B…架台、C…アイソレーター本体、C1…チャンバー、
C2…給気機構、C3…排気機構、X,Z…接続部分、Y…当接部分、
10…給気用ブロワー、20…給気用フィルタユニット、
30,50…スクリーンメッシュ整流板、31,51…枠本体、33,53…枠材、
32a,32b,52a,52b…スクリーン紗、33a…外側面、33b…上面、
33c…内側面、35,55a,55b…化粧枠、35a,35b…羽、
40…パンチング板、41…細孔、54…装置フレーム、56…押さえ板、
57…ボルト、60…パスライン。