(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163919
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電動モータを有している自転車及びその駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
B62M 6/65 20100101AFI20221020BHJP
【FI】
B62M6/65
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069057
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤代 雅也
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 潤史
(72)【発明者】
【氏名】菅野 信之
(57)【要約】
【課題】リアアームからの後輪の取り外し作業を容易化できる駆動ユニットを提供する。
【解決手段】電線構造は、電動モータ30から延びている第1電線部33と、リアアーム50に沿って延びている第2電線部34と、第1電線部33と第2電線部34とを電気的に接続する端子台35とを含む。後輪ハブ41に、後輪ハブ41の回転を許容するように後輪ハブ41を支持する支持体46が設けられている。リアアーム50は、駆動軸27と伝達軸21との間の係合部を収容する後部ケース51を有している。後部ケース51は支持体46に対して螺子81によって取り付けられている。電線構造は、支持体46に形成された電線通路46mを通って後部ケース51から後輪ハブ41内に向けて延びている。端子台35は、後部ケース51の左端面と、後輪ハブ41の右端面との間に位置している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪に設けられる後輪ハブと、
ステータとロータとを含み前記後輪ハブに収容されている電動モータを含み、前記電動モータの動力を前記後輪ハブに伝達する第1動力系と、
前記後輪に対して、右方又は左方のうちの一方である第1の方向に配置されるリアアームと、
ペダルが取り付けられるクランク軸と、前記後輪ハブの回転中心線に沿って配置される伝達軸と、前記リアアームに沿って配置され、前記クランク軸と前記伝達軸とに係合し、前記クランク軸から前記伝達軸に動力を伝える動力伝達機構とを含み、前記伝達軸を通して前記後輪ハブに動力を伝える第2動力系と、
前記電動モータから延びている第1電線部と、前記リアアームに沿って延びている第2電線部と、前記第1電線部と前記第2電線部とを電気的に接続する電線接続部とを含む電線構造と
を有し、
前記後輪ハブに、前記後輪ハブの回転を許容するように前記後輪ハブを支持する支持体が設けられ、
前記リアアームは、前記動力伝達機構と前記伝達軸との間の係合部を収容する第1ケースを有し、
前記第1ケースは前記支持体に対して少なくとも1つの固定具によって取り付けられており、
前記電線構造は、前記支持体に形成された電線通路を通って前記第1ケースから前記後輪ハブ内に向けて延びており、
前記電線接続部は、前記第1の方向での前記第1ケースの端面と、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向における前記後輪ハブの端面との間に位置している
駆動ユニット。
【請求項2】
前記支持体は、前記ステータが取り付けられているステータ保持部材と、連結部材とを有し、
前記連結部材の少なくとも一部は、前記後輪ハブの前記回転中心線に沿った方向において前記後輪ハブの外側に位置し、
前記第1ケースは前記少なくとも1つの固定具によって前記連結部材の前記少なくとも一部に取り付けられている
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項3】
前記連結部材の前記少なくとも一部は前記ステータ保持部材よりも大きな径を有している
請求項2に記載される駆動ユニット。
【請求項4】
前記電線接続部は前記第1ケース内に配置されている
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項5】
前記第1電線部は前記電線通路を通過し且つ前記後輪ハブの外側に達する長さを有する
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項6】
前記第2電線部は、第1ケースの前記支持体寄りの端面を超える長さを有している
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項7】
前記電線接続部は前記第1電線部の端部が取り付けられている端子台であり、
前記電線接続部の少なくとも一部は、前記支持体の前記第1ケース寄りの側面より第2の方向に位置している
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項8】
前記第1ケースは、前記動力伝達機構と前記伝達軸との間の前記係合部を収容している第1収容室と、前記第1収容室から区画されている第2収容室とを有し、
前記電線構造は前記第2収容室を通過している
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項9】
前記第2収容室の少なくとも一部は、前記第1収容室に対して前記伝達軸の径方向における外側に位置している
請求項8に記載される駆動ユニット。
【請求項10】
前記第2収容室の前記少なくとも一部は前記伝達軸を取り囲むように形成されている
請求項9に記載される駆動ユニット。
【請求項11】
前記リアアームは、前記第1ケースの前方に位置し、前記動力伝達機構を収容している第2ケースを有し、
前記第2ケースは、その内部に、前記動力伝達機構を収容している第1アーム室と、前記第2電線部を収容している第2アーム室とを有している
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項12】
前記第1ケースは、第1ベアリングを介して前記伝達軸の第1の端部を支持し、
前記支持体は、第2ベアリングを介して前記伝達軸の第2の端部を支持し、
前記第1ケースと前記支持体のうちの一方は、前記第1ベアリングと前記第2ベアリングの間に位置し前記伝達軸を支持する第3ベアリングを有する
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの固定具は前記第1ケースの外側に配置されている
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項14】
前記少なくとも1つの固定具として、前記伝達軸を取り囲む周方向に前記第1ケースの外側で並んでいる複数の固定具を有する
請求項1に記載される駆動ユニット。
【請求項15】
請求項1に記載される駆動ユニットを有している自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを有している自転車と、自転車の駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はペダルが取り付けられているクランクと、電動モータとを有し、人力による駆動と電動モータによる駆動とを可能とする自転車を開示している。電動モータは後輪ハブの中に配置されている。電動モータのロータと後輪ハブは一体的に回転するよう互いに固定されている。また、この自転車は、後輪の回転中心上に配置されている第1の伝達軸と、リアアームに沿って配置されている第2の伝達軸とを有している。クランクの動力は駆動軸と伝達軸とを介して後輪ハブに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示される自転車のように、後輪に電動モータが配置されている自転車においては、例えば電動モータの点検のために、リアアームからの後輪の取り外しが簡単な作業でなし得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示で提案する駆動ユニットの一例は、後輪に設けられる後輪ハブと、ステータとロータとを含み前記後輪ハブに収容されている電動モータを含み、前記電動モータの動力を前記後輪ハブに伝達する第1動力系と、前記後輪に対して、右方又は左方のうちの一方である第1の方向に配置されるリアアームと、ペダルが取り付けられるクランク軸と、前記後輪ハブの回転中心線に沿って配置される伝達軸と、前記リアアームに沿って配置され、前記クランク軸と前記伝達軸とに係合し、前記クランク軸から前記伝達軸に動力を伝える動力伝達機構とを含み、前記伝達軸を通して前記後輪ハブに動力を伝える第2動力系と、前記電動モータから延びている第1電線部と、前記リアアームに沿って延びている第2電線部と、前記第1電線部と前記第2電線部とを電気的に接続する電線接続部とを含む電線構造とを有している。前記後輪ハブに、前記後輪ハブの回転を許容するように前記後輪ハブを支持する支持体が設けられている。前記リアアームは、前記動力伝達機構と前記伝達軸との間の係合部を収容する第1ケースを有している。前記第1ケースは前記支持体に対して少なくとも1つの固定具によって取り付けられている。前記電線構造は、前記支持体に形成された電線通路を通って前記第1ケースから前記後輪ハブ内に向けて延びている。前記電線接続部は、前記第1の方向での前記第1ケースの端面と、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向における前記後輪ハブの端面との間に位置している。この駆動ユニットによると、リアアームからの後輪の取り外し作業を容易化できる。
【0006】
(2)(1)の駆動ユニットにおいて、前記支持体は、前記ステータが取り付けられているステータ保持部材と、連結部材とを有してよい。前記連結部材の少なくとも一部は、前記後輪ハブの前記回転中心線に沿った方向において前記後輪ハブの外側に位置してよい。前記第1ケースは、前記少なくとも1つの固定具によって前記連結部材の前記少なくとも一部に取り付けられてよい。
【0007】
(3)(2)の駆動ユニットにおいて、前記連結部材の前記少なくとも一部は前記ステータ保持部材よりも大きな径を有してよい。これによると、連結部材と第1ケースとの取付位置の数を増すことが容易となる。
【0008】
(4)(1)の駆動ユニットにおいて、前記電線接続部は前記第1ケース内に配置されている。この構造によると、第1ケース内のスペースを有効に利用でき、後輪ハブ及び第1ケースの左右方向でのサイズの増大を抑えることができる。
【0009】
(5)(1)の駆動ユニットにおいて、前記第1電線部は前記電線通路を通過し且つ前記後輪ハブの外側に達する長さを有してよい。これによると、第1電線部と第2電線部の接続作業を容易化できる。
【0010】
(6)(1)の駆動ユニットにおいて、前記第2電線部は、第1ケースの前記支持体寄りの端面を超える長さを有してよい。これによると、第1電線部と第2電線部の接続作業を容易化できる。
【0011】
(7)(1)の駆動ユニットにおいて、前記電線接続部は前記第1電線部の端部が取り付けられている端子台であってよい。前記電線接続部の少なくとも一部は、前記支持体の前記第1ケース寄りの側面から突出してよい。これによると、第1電線部と第2電線部の接続作業を容易化できる。
【0012】
(8)(1)の駆動ユニットにおいて、前記第1ケースは、前記動力伝達機構と前記伝達軸との間の前記係合部を収容している第1収容室と、前記第1収容室から区画されている第2収容室とを有してよい。前記電線構造は前記第2収容室を通過してよい。この構造によると、電線構造を保護できる。例えば、動力伝達機構と伝達軸との間の係合部に利用される潤滑剤が電線構造に付着することを防ぐことができる。また、電線構造が動力伝達機構と伝達軸との間の係合部に接触することを防止できる。
【0013】
(9)(8)の駆動ユニットにおいて、前記第2収容室の少なくとも一部は、前記第1収容室に対して前記伝達軸の径方向における外側に位置してよい。これによれば、第1ケース内のスペースを、より有効に利用できる。
【0014】
(10)(9)の駆動ユニットにおいて、前記第2収容室の前記少なくとも一部は前記伝達軸を取り囲むように形成されてよい。これによると、第2収容室を通過する電線構造の曲げを緩やかにでき、第1電線部と第2電線部の接続作業を容易化できる。
【0015】
(11)(10)の駆動ユニットにおいて、前記リアアームは、前記第1ケースの前方に位置し、前記動力伝達機構を収容している第2ケースを有してよい。前記第2ケースは、その内部に、前記動力伝達機構を収容している第1アーム室と、前記第2電線部を収容している第2アーム室とを有してよい。
【0016】
(12)(1)の駆動ユニットにおいて、前記第1ケースは、第1ベアリングを介して前記伝達軸の第1の端部を支持し、前記支持体は、第2ベアリングを介して前記伝達軸の第2の端部を支持し、前記第1の端部と前記第2の端部のうち一方の端部は、前記第1ケースと前記後輪ハブの分離に伴って、前記一方の端部を支持している前記第1ケース又は前記支持体から離れることが可能であってよい。前記第1の端部と前記第2の端部のうち他方の端部を支持している前記第1ケース又は前記支持体は、前記第1ベアリングと前記第2ベアリングの間に位置する第3ベアリングを介して前記伝達軸を支持してよい。この構造によると、第1ケースと後輪ハブとを分離したときに、第1ケース(又は支持体)に対する伝達軸の姿勢を維持できる。
【0017】
(13)(1)の駆動ユニットにおいて、前記少なくとも1つの固定具は前記第1ケースの外側に配置されてよい。これによると、リアアームから後輪ハブを取り外す作業や、リアアームに後輪ハブを取り付ける作業を容易化できる。
【0018】
(14)(13)の駆動ユニットは、前記少なくとも1つの固定具として、前記伝達軸を取り囲む周方向に複数の固定具を有してよい。
【0019】
(15)本開示で提案する自転車の一例は(1)に記載されている駆動ユニットを有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示で提案する自転車の例を示す左側面図である。
【
図2A】
図1で示す自転車が有している駆動ユニットの左側面図である。
【
図8A】リアアームが取り外された後輪の左側面図である。
【
図8B】
図8Aで示す後輪ハブ、連結部材、及び端子台の斜視図である。
【
図9A】後輪ハブが取り外されたリアアームの後部の断面図である。その切断面は
図3Bと同じである。
【
図10】後輪ハブ及び支持体の変形例を示す断面図である。その切断面は
図3Bと同じである。
【
図11】伝達軸及びトルクセンサの配置の変形例を示す断面図である。その切断面は
図3Bと同じである。
【
図12】トルクセンサの配置の変形例を示す断面図である。その切断面は
図3Aと同じである。
【
図13A】駆動ユニットの変形例を示す左側面図であり、ブレーキ装置としてドラムブレーキ装置が採用されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本開示で提案する自転車と駆動ユニットの例を説明する。本明細書では、一例として、
図1等に示す自転車1及び駆動ユニット10を説明する。
図1において、Y1及びY2が示す方向をそれぞれ前方及び後方と称し、Z1及びZ2が示す方向をそれぞれ上方及び下方と称する。
図2Bに示すX1及びX2が示す方向をそれぞれ右方及び左方と称する。また、X1-X2の方向を、左右方向又は「回転中心線Ax1に沿った方向」と称する。
【0022】
なお、本明細書においては、後述するリアアーム50が後輪40の左方に配置される例について説明する。しかしながら、リアアーム50は後輪40の右方に配置されてもよい。リアアーム50は後輪40の右方に配置されている構造においては、以下において説明する構造は、左右方向での部分・部材の相対位置について反対であってよい。
【0023】
[車両全体]
図1に示すように、自転車1は、フロントフォーク3と、フロントフォーク3の下端で支持されている前輪2と、ステアリングシャフトを介してフロントフォーク3に接続されているハンドルバー4とを有している。自転車1はサドル6を有している。サドル6はサドルポスト7aの上端で支持されている。
【0024】
サドルポスト7aの下方にクランク60が配置されている。クランク60はクランク軸61(
図3A参照)と、クランク軸61の両端部に取り付けられているクランクアーム62(
図2A参照)と、クランクアーム62に取り付けられているペダル63(
図2A参照)とを有している。
【0025】
図1で示すように、車体フレーム7は、サドルポスト7aと、ステアリングシャフトを支持しているヘッドパイプ7bと、ヘッドパイプ7bから斜め下方に伸びているダウンフレーム7cとを有している。サドルポスト7aの下端とダウンフレーム7cの下端とにブラケット7dが固定されている。自転車1の駆動ユニット10は、後述するリアアーム50の最前部に位置しクランク60を保持している前部ケース56(
図2A参照)を有している。前部ケース56は、ブラケット7dに取り付けられている。自転車1は、後述する電動モータ30に供給する電力を蓄えるバッテリ13(
図1参照)を有している。バッテリ13は、例えばダウンフレーム7cに取り付けられる。車体フレーム7の構造や、前部ケース56の支持構造、バッテリ13の配置などは、ここで説明する例に限られない。
【0026】
[3つの駆動モード]
ハンドルバー4の右部には、アクセルグリップが設けられている。アクセルグリップには、その操作量(回転位置)を検知するアクセルセンサが設けられる。自転車1は、後輪40と、後輪40に設けられている電動モータ30(
図3A参照)とを有している。アクセルセンサの出力信号はモータ制御装置11(
図3A参照)に入力される。モータ制御装置11は、アクセルグリップの操作量に応じた指令値を生成する。また、モータ制御装置11は、指令値に応じた電力を電動モータ30に供給する。モータ制御装置11はインバーターを含み、バッテリ13から得られる直流を、例えば、指令値に応じた周波数の交流に変換して、電動モータ30に供給する。このとき、自転車1は、電動モータ30から得られる動力だけで駆動できる。
【0027】
クランク60の動力(回転力)は、後述する動力伝達機構を介して後輪40に伝えられる。クランク軸61には、ユーザがペダル63に加える力(踏力)を検知するトルクセンサ64(
図3A参照)が設けられている。トルクセンサ64は、その内周部に配置される伝達部材と、検出用コイルや磁気回路を含む検出部とを有している。伝達部材の一部(例えば、左部)は、クランク軸61の外周にセレーション嵌合し、伝達部材の別の一部(例えば、右部)はギア65にセレーション嵌合する。伝達部材はクランク軸61と一体的に回転可能であり、クランク軸61の回転は伝達部材を介してギア65に伝えられる。トルクセンサ64の検出用コイルは、例えば、伝達部材のねじれに応じた信号を出力する。トルクセンサ64は例えば、磁歪センサであってよい。トルクセンサ64の出力信号は、モータ制御装置11に入力される。モータ制御装置11は、踏力に応じた指令値を生成する。モータ制御装置11は指令値に応じた電力を電動モータ30に供給し、電動モータ30はその電力によって駆動する。電動モータ30のこの駆動により、ユーザによるペダル63の漕ぎが補助される。また、電動モータ30が駆動しない状態では、クランク軸61から動力伝達機構を介して伝えたれる動力だけで後輪40は駆動する。
【0028】
つまり、自転車1は、以下の3つのモードによる駆動を可能としている。
(i)電動モータ30の動力だけでの駆動(電動モード)
(ii)電動モータ30の動力とペダル63に加えられる踏力とによる駆動(アシストモード)
(iii)ペダル63に加えられる踏力だけでの駆動(人力モード)
自転車1は、ユーザがこのような3つのモードを切り替えるためのスイッチを有してもよい。
【0029】
なお、本開示で提案する構造は、このように3つのモードが選択可能な自転車だけでなく、例えば、(ii)アシストモードと、(iii)人力モードだけが選択可能な自転車に適用されてもよい。この場合、自転車は、アクセルグリップと、アクセルセンサとを有していなくてもよい。
【0030】
[駆動ユニット]
以下において、駆動ユニット10の構造について詳説する。駆動ユニット10は2つの動力系を有している。
図3Aで示すように、第1動力系は電動モータ30を含み、電動モータ30が有しているロータ32の回転を後輪40のハブ41に伝達する。第2動力系は、ペダル63が取り付けられているクランク軸61を含み、クランク軸61の回転(動力)を後輪40のハブ41に伝達する。(以下では、ハブ41を後輪ハブと称する。)
【0031】
[第1動力系]
図3Bに示すように、電動モータ30はステータ31とロータ32とを有している。ステータ31は、後輪40の回転中心線Ax1を中心として環状に配置される複数の鉄心と、鉄心に巻き付けられているコイルとを有している。ロータ32は、後輪40の回転中心線Ax1を中心として環状に配置される複数の磁石を有している。駆動ユニット10において、ロータ32はステータ31に対して径方向での外側に位置し、径方向においてステータ31と向き合っている。すなわち、電動モータ30は、ラジアルギャップ型の電動モータである。駆動ユニット10とは異なり、電動モータ30はアキシャルギャップ型の電動モータであってもよい。つまり、ロータ32とステータ31は軸方向(回転中心線Ax1の方向)で対向してもよい。電動モータ30は、回転方向に対して垂直な磁路を形成する横磁束型モータであってもよい。この種のモータにおいて、ステータは電機子コアとコイルとを含み、ロータは界磁コアと磁石とを含み、電機子コアと界磁コアの少なくとも一方に、回転方向に対して垂直な磁束が形成されてよい。
【0032】
図3Aに示すように、後輪40は、タイヤ44が取り付けられているリム43と、後輪ハブ41とを有している。また、後輪40は、ハブ41から径方向に伸びてリム43を支持するスポーク45を有している。ロータ32は、後輪ハブ41の内面に固定されており、ロータ32と後輪ハブ41は一体的に回転する。このように後輪ハブ41と電動モータ30との間に減速機構が介在しないので、減速機構による損失がなく、効率的に後輪40を駆動できる。
【0033】
[第2動力系]
図3Aで示すように、クランク軸61上には、クランク軸61と一体的に回転するギア65(自転車1の例において傘歯ギア)と、上述したトルクセンサ64とが配置されている。クランク軸61の動力(回転)を後輪ハブ41に伝える動力伝達経路(第2動力系)は伝達軸21を有している。伝達軸21はクランク軸61から後方に離れており、後輪40の回転中心線Ax1に位置している。後において詳説するように、リアアーム50は、その後部に後部ケース51を有している。伝達軸21は後部ケース51によって支持され、回転可能となっている。
【0034】
第2動力系はクランク軸61の動力(回転力)を伝達軸21に伝える動力伝達機構を有している。駆動ユニット10において、動力伝達機構はシャフトドライブ機構である。すなわち、動力伝達機構は、
図3Aに示すように、クランク軸61上に設けられているギア65(具体的には、傘歯ギア)と、伝達軸21に設けられているギア26(具体的には、傘歯ギア)と、車体の側面視において車体の前後方向に沿って配置されている駆動軸27とを有している。駆動軸27は、その前端に、クランク軸61上のギア65に係合しているギア27A(具体的には、傘歯ギア)を有している。また、駆動軸27は、その後端に、伝達軸21上のギア26に係合しているギア27B(具体的には、傘歯ギア)を有している。ここで説明する例とは異なり、駆動ユニット10は、チェーンドライブ機構や、ベルトドライブ機構などを、動力伝達機構として有してもよい。すなわち、駆動ユニット10は、駆動軸27に替えて、チェーンや、ベルトを有してもよい。
【0035】
クランク軸61と後輪ハブ41との間の動力伝達経路には、一方向クラッチが配置されている。駆動ユニット10においては、
図3Aで示すように、伝達軸21と後輪ハブ41との間に一方向クラッチ23が配置されている。一方向クラッチ23は、伝達軸21の回転力を後輪ハブ41に伝える一方で、後輪ハブ41の回転力は伝達軸21には伝えない。
【0036】
[リアアーム及び駆動軸の配置]
リアアーム50は、後輪ハブ41に対して右方と左方のうちの一方にだけ配置され、他方には配置されていない。
図3Aに示すように、駆動ユニット10において、リアアーム50は後輪ハブ41の左方に配置され、右方には配置されていない。このため、メンテナンスの作業者は後輪ハブ41のリアアーム50からの右方への取り外しを容易に行うことができる。
【0037】
クランク軸61の回転を伝達軸21に伝える動力伝達機構は、リアアーム50とともに、後輪40に対して左方に配置されている。
図3Aに示すように、駆動ユニット10においては、駆動軸27が後輪40に対して左方に配置されている。駆動軸27は伝達軸21の左部に連結している。伝達軸21はリアアーム50の後部から右方に伸び、径方向におけるステータ31の内側に配置されている。そして、伝達軸21は、左右方向における後輪40の中心C1を挟んで、駆動軸27及びリアアーム50とは反対側(すなわち右側)で、後輪ハブ41に連結されている。この構造によって、左方にだけ配置されるリアアーム50による後輪ハブ41の支持と、クランク軸61から後輪ハブ41への動力伝達の双方が実現可能となっている。
【0038】
図3Aに示すように、駆動ユニット10は、その前部に、クランク60を保持している前部ケース56を有している。リアアーム50は、前部ケース56から後方に伸びている筒状の軸ケース53と、リアアーム50の後部に位置している後部ケース51とを有している。駆動軸27は軸ケース53に収容され、回転可能となるように軸ケース53内に設けられたベアリングによって保持されている。上述したように、自転車1は、動力伝達機構として、チェーンドライブ機構や、ベルトドライブ機構を有してもよい。この場合、リアアーム50は、軸ケース53に替えて、チェーンを収容するケースや、ベルトを収容するケースを有してもよい。後部ケース51に、後輪ハブ41を支持している支持体46(
図3B参照)が取り付けられている。
【0039】
図3Aに示すように、前部ケース56には、クランク軸61上に配置されているギア65とトルクセンサ64とが収容されている。クランク軸61の両端部は前部ケース56から軸方向に突出している。クランク軸61の両端部にクランクアーム62が連結されている。前部ケース56は、車体フレーム7の最下部に設けられているブラケット7d(
図1参照)に取り付けられている。ブラケット7dは、例えば、下方に開いた箱状である。前部ケース56はブラケット7dの内側に配置され、ブラケット7dに取り付けられている。
【0040】
後部ケース51は、軸ケース53の後端に接続している(
図3A参照)。後部ケース51は前方に向かって開いている接続口を有している。軸ケース53の後端は後部ケース51のこの接続口に嵌められ、例えば螺子などの固定具によって、後部ケース51に接続されている。後部ケース51はギア27B、26を収容している。後部ケース51と軸ケース53との連結構造は、自転車1の例に限られず、適宜変更されてよい。
【0041】
図3Aで示すように、後部ケース51の位置は後輪40の左右方向での中心C1(車体の左右方向での中心)から左方に離れている。軸ケース53は、中心C1に向かって、後部ケース51から斜め前方に伸びている。軸ケース53の前端は後輪40及び電動モータ30の前方に位置している。
【0042】
[後輪ハブ]
図3Bに示すように、後輪ハブ41は右部材41Bと左壁41Aとを有している。右部材41Bは、電動モータ30の右側面を覆っている右壁41dと、右壁41dから左方に延びておりステータ31の外周を覆っている筒部41eとを有している。筒部41eの内面にロータ32が固定されている。リアアーム50は後輪40の左方にだけ配置されている。そのため、後輪ハブ41の右部材41Bには、伝達軸21や後述する支持体46が通る開口は形成されていない。右部材41Bは左方に開いている。左壁41Aは電動モータ30の左側面を覆っており、筒部41eの外周縁に固定されている。左壁41Aは、筒部41eに、周方向で並んでいる複数の固定具(螺子42やボルト)で固定される。
【0043】
後輪ハブ41の構造は、自転車1の例に限られない。例えば、後輪ハブ41は3つの部材で構成されてもよい。例えば、左壁41A、右壁41d、及び筒部41eが別個に形成され、ボルトや螺子などの固定具によって固定されてもよい。
【0044】
図3Bで示すように、伝達軸21は一方向クラッチ23を介して右部材41Bに連結している。右部材41Bの右壁41dの内面に保持筒部41cが形成されている。保持筒部41cは左方に突出している。保持筒部41cは、後述する支持体46の端部の内側に位置している。伝達軸21の最右部は保持筒部41cの内側に位置している。そして、保持筒部41cの内周面と伝達軸21の外周面との間に、一方向クラッチ23が配置されている。このように、一方向クラッチ23の位置は、クランク軸61から後輪ハブ41に至る動力伝達経路において、駆動軸27よりも下流である。そのため、例えば電動モータ30の動力だけで自転車1が走行するときに、駆動軸27の回転は生じない。その結果、電動モータ30の動力が駆動軸27の回転により無駄に消費されることを、防ぐことができる。
【0045】
[ブレーキの配置]
駆動ユニット10は、後輪40用のブレーキ装置71を有している。ブレーキ装置71は、例えばディスクブレーキ装置であり、
図2Aに示すように、後輪ハブ41と一体的に回転するブレーキディスク72と、キャリパー73とを有している。
図3Bに示すように、ブレーキディスク72は、例えば左壁41Aに取り付けられる。キャリパー73はリアアーム50によって支持される。具体的には、リアアーム50にはキャリパー保持部材74(
図2A参照)が取り付けられている。キャリパー保持部材74は、例えば、ブラケット53a(
図2A参照)を介して軸ケース53によって支持される。ブレーキ装置71の構造は、駆動ユニット10の例に限られない。例えば、ブレーキ装置71はドラムブレーキ装置であってもよい(
図13A及び
図13B参照)。
【0046】
[後輪ハブの支持体]
図3Bに示すように、駆動ユニット10は、後輪ハブ41の回転を許容するように後輪ハブ41を支持する支持体46を有している。支持体46の中心には、後輪40の回転中心線Ax1に沿って支持体46を貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に伝達軸21が配置されている。支持体46の外側にベアリング49A・49Bが嵌められており、支持体46はベアリング49A・49Bを通して後輪ハブ41を支持している。左側のベアリング49Aは後輪ハブ41の左壁41Aの内縁と支持体46との間に配置されている。右側のベアリング49Bは、後輪ハブ41の右壁41dと支持体46の端部の外周面との間に配置されている。
【0047】
図3Bで示すように、支持体46は、ステータ31の内側に配置されているステータ保持部材46Aを有している。ステータ31はステータ保持部材46Aの外周面に固定されている。例えば、ステータ31を構成する鉄心がステータ保持部材46Aの外周面に圧入又は接着される。
【0048】
図3Bで示すように、支持体46は、さらに連結部材46Bを有してよい。連結部材46Bは、後輪ハブ41の回転中心線Ax1に沿った方向において後輪ハブ41の外側に位置している壁部46aを有している。駆動ユニット10においては、壁部46aは後輪ハブ41の左壁41Aの左側に位置している。リアアーム50の後部ケース51は複数の固定具によって壁部46a(
図4参照)の外周部に取り付けられている。後部ケース51の外側には、後部ケース51の外周に沿って並んでいる複数の取付穴が形成されている。
図2A及び
図4で示すように、後部ケース51は、この取付穴にそれぞれ嵌められている複数の螺子81によって、支持体46の壁部46aの外周部に固定されている。螺子81を取り外すことで、リアアーム50から後輪40を取り外すことができる。これによって、例えば電動モータ30のメンテナンス作業を容易化できる。
【0049】
図4に示すように、螺子81は、後部ケース51に形成された取付穴と、支持体46の壁部46aの外周部に形成された螺子穴とに、それらの左側(リアアーム50が配置される側)から差し込まれている。
図2Aで示すように、車体の左側面視において螺子81は露出している。したがって、螺子81の取り外し作業が容易となる。
【0050】
壁部46aは円盤状であり(
図8B参照)、
図4で示すようにステータ保持部材46Aよりも大きな外径を有している。壁部46aの外径は後部ケース51の外径に対応している。これにより、壁部46aと後部ケース51の固定構造を簡単化できる。壁部46aの外周縁(螺子穴が形成される部分)は、後輪ハブ41を支持しているベアリング49Aよりも大きな外径を有している。
【0051】
連結部材46Bとステータ保持部材46Aは別個に形成された部品である。これらは螺子やボルトなどの固定具によって、互いに固定されている。駆動ユニット10においては、
図4で示すように、連結部材46Bとステータ保持部材46Aに、後輪40の回転中心線Ax1に沿って、連結部材46Bとステータ保持部材46Aとを貫通する孔が形成されている。この孔にボルト46fが嵌められている。連結部材46Bとステータ保持部材46Aはボルト46fとナット46g(
図3B参照)とによって互いに固定されている。ボルト46fは、例えば連結部材46Bの左側から、連結部材46Bとステータ保持部材46Aとに形成された貫通孔に嵌められてよい。ナット46gはステータ保持部材46Aの右側でボルト46fに固定されてよい。
【0052】
連結部材46Bとステータ保持部材46Aとを固定するボルト46fとナット46gとには、これらを回転中心線Ax1に沿った方向で貫通する孔が形成されている。この貫通孔の内側に伝達軸21が配置されている。伝達軸21は貫通孔の内側で回転可能となっている。この固定構造によれば、連結部材46Bとステータ保持部材46Aとの固定に要する部品数を低減でき、それらの組立作業を簡単化できる。
【0053】
支持体46(ボルト46f)の内周面と伝達軸21の外周面との間に、クリアランスが確保されている。伝達軸21と支持体46との間に摩擦がなく、伝達軸21はスムーズに回転できる。
【0054】
図4で示すように、伝達軸21は、支持体46よりも左方に位置している連結部21bを有している。この連結部21bは後部ケース51に収容され、外部に露出していない。この構造によって、外部の水や塵が、支持体46の内周面と伝達軸21の外周面との間のクリアランスを通して、後輪ハブ41の内部に浸入することを、防ぐことができる。
【0055】
なお、ステータ保持部材46Aと連結部材46Bとの固定構造は駆動ユニット10の例に限られない。例えば、ボルト46fは、ステータ保持部材46Aの右側から、ステータ保持部材46Aと連結部材46Bとに形成された貫通孔に差し込まれてよい。さらに他の例では、ステータ保持部材46Aと連結部材46Bのそれぞれに、伝達軸21を取り囲む周方向で並んでいる複数の取付穴が形成されてもよい。そして、この取付穴に差し込むボルトや螺子によって、ステータ保持部材46Aと連結部材46Bは互いに固定されてもよい。
【0056】
図3Bで示すように、ステータ保持部材46Aは、右方に開口している凹部46hが形成されてよい。ナット46gはこの凹部46hの内側に配置されてよい。より詳細には、ナット46gの全体がこの凹部46hの内側に配置されてよい。これによって、回転中心線Ax1に沿った方向での後輪ハブ41のサイズの増大を抑えることができる。
【0057】
駆動ユニット10においては、
図3Bで示すように、凹部46hの内側に伝達軸21と後輪ハブ41とを連結する機構が収容されている。具体的には、凹部46hの内側に、一方向クラッチ23と、伝達軸21の右端を支持しているベアリング47Bとが収容されている。これによって、回転中心線Ax1に沿った方向での後輪ハブ41のサイズの増大を抑えることができる。
【0058】
連結部材46Bは、後輪ハブ41の左壁41Aの内縁の内側に配置される中央部46j(
図4参照)を有している。この中央部46jの外側にカラー82が嵌められてよい。後輪ハブ41を支持している左側のベアリング49Aは、このカラー82と左壁41Aの内縁との間に配置されてよい。また、カラー82と左壁41Aの内縁との間には、シール部材49Cが配置されてよい。シール部材49Cは左壁41Aの内縁に圧入されて当該内縁に固定されている。シール部材49Cの内周部とカラー82の外周面とが互いに摺動する。カラー82はスムーズな摺動を可能とする。
【0059】
[電線構造]
上述したように、駆動ユニット10はモータ制御装置11を有している。モータ制御装置11はリアアーム50の前部に固定されている回路収容部56Cに収容されている(
図5参照)。モータ制御装置11と電動モータ30は複数の電線で電気的に接続されている。具体的には、モータ制御装置11と電動モータ30は、モータ制御装置11から電動モータ30に駆動電流を供給する複数の電源線(例えば、3本の電源線)と、電動モータ30の位相や回転速度に応じた信号を送信する複数の信号線とによって接続されている。本明細書では、これら複数の電源線、複数の信号線、及び後述するコネクタ33c・34c、端子台35を電線構造と称する。
【0060】
図4で示すように、電線構造は、電動モータ30から延びている第1電線部33を有している。第1電線部33は、上述した電源線33aと信号線33bとを含んでいる。また、電線構造は、
図5で示すように、リアアーム50に沿って配置されている第2電線部34を有している。第2電線部34も電源線34aと信号線34bとを有している(
図6B、
図7B参照)。
【0061】
また、電線構造は、第1電線部33と第2電線部34とを接続する電線接続部を有している。電線接続部は、具体的には、電源線33a・34aを接続する端子台35(
図4及び
図8B参照)を有している。また、電線構造は、電線接続部として、信号線33b・34bの端部に設けられているコネクタ33c・34c(
図8B及び
図9A参照)を有している。コネクタ33c・34cは互いに接続されている。
【0062】
図4で示すように、支持体46には電線通路46mが形成されている。電線通路46mは、後輪40の回転中心線Ax1に沿って延びており且つ支持体46を貫通する穴や溝である。電線通路46mは、シール部材49Cとベアリング49Aの内側に位置している。
【0063】
具体的には、連結部材46Bの中央部46jに電線通路46mが形成されてよい。ステータ保持部材46Aの外周面は部分的に後輪ハブ41の内部で露出している。露出している部分に、電線通路46mの一方端の開口46pが形成されてよい。電線通路46mは、後輪ハブ41の内部と後部ケース51の内部とを連通している。このことによって、外部の水や塵が電線通路46mを通って後輪ハブ41の内部に浸入することを、抑えることができる。
【0064】
電線部33・34を含む電線構造は、この電線通路46mを通って後部ケース51から後輪ハブ41内に向けて延びている。第1電線部33と第2電線部34とを接続する電線接続部、すなわち端子台35とコネクタ33c・34cは、後部ケース51の端面(左側面)と、後輪ハブ41の端面(右側面)との間に位置している。言い換えると、電線接続部は、後部ケース51の内部、電線通路46m、又は後輪ハブ41の内部に位置している。この構造によると、後輪40をリアアーム50から取り外すときに、第1電線部33と第2電線部34の接続解消も容易に行うことが可能となり、取り外し作業をさらに容易化できる。
【0065】
図4で示すように、端子台35の一部は、後部ケース51の内側に位置してよい。より具体的には、電源線33a・34aの端子33d・34d(
図4及び
図9A)を相互に接続する螺子35a(
図8B参照)が、後部ケース51の内側に位置してよい。螺子35aが設けられる部分(後述する第3部分35j)は後部ケース51の後輪ハブ41側の縁(右端面51b、
図9A参照)よりも左方に位置してよい。この配置によると、後部ケース51内のスペースを有効に利用できる。また、接続構造が電線通路46m及び後輪ハブ41内には位置しないので、電線通路46mの断面を小さくでき、また後輪ハブ41内のスペースを電動モータ30の配置に利用できる。
【0066】
電源線33aと端子33dは樹脂でモールドされて、端子台35を構成してよい。すなわち、端子台35と電源線33aは、例えばインサート成形によって形成されてよい。インサート成形においては、端子33dが取り付けられた電源線33が金型内に配置されている状態で、その金型内に端子台35の材料である溶融樹脂が供給される。これによって、電源線33a及び端子33dを有する端子台35が構成される。
【0067】
電源線33aは、端子33dとは反対側の端部にも端子を有している。この端子には、ステータ31のコイル線が接続される。この端子も、電源線33aとともに樹脂でモールドされてよい。
【0068】
端子台35は、例えばステータ31に取り付けられてよい。
図4で示すように、端子台35はステータ31の左側面に取り付けられてよい。端子台35はステータ31の左側面に沿って配置されている第1部分35hと、軸方向に延びている第2部分35iと、左端部に位置している第3部分35jとを有してよい。第2部分35iは電線通路46mを超えて左方に突出している。第2部分35iの左端部に位置している第3部分35jに、電源線33aの端子33dと、電源線34aの端子34dを端子33dに固定する螺子35aとが設けられている。
【0069】
電源線33aとは異なり、信号線33bは導体で形成されている芯線と、樹脂で形成されている外皮とを有する電線であってよい。信号線33bは、端子台35に沿って配置され、電線通路46mを通過し、左方に延びている。信号線33bは端子台35に取り付けられていてよい。
【0070】
信号線34bの端部に設けられているコネクタ34cと、信号線33bの端部に設けられているコネクタ33cは、後部ケース51の内側に位置してよい。より具体的には、コネクタ33c・34cは後部ケース51の後輪ハブ41側の縁(右端面51b、
図9A参照)よりも左方に位置してよい。
【0071】
信号線33b・34bの接続構造のこのような配置によると、後部ケース51内のスペースを有効に利用できる。また、この接続構造が電線通路46m及び後輪ハブ41内には位置しないので、電線通路46mの断面を小さくでき、また後輪ハブ41内のスペースを電動モータ30の配置に利用できる。
【0072】
図8Bに示すように、補強部材35Bが支持体46の連結部材46Bに取り付けられてよい。補強部材35Bは端子台35に嵌められて、これを保持してよい。補強部材35Bは、例えば、連結部材46Bの左側面に取り付けられ、端子台35の第2部分35i及び第3部分35jを保持してよい。これによると、端子台35において電線通路46mの内側に位置している部分(第2部分35i)を細くしつつ、補強部材35Bによって端子台35の強度を確保できる。補強部材35Bは、隣り合う2つの端子33dの間に位置している壁部35dを有してもよい。
【0073】
[電線の長さ]
図8Bで示すように、第1電線部33は、電線通路46mを通過し後輪ハブ41の外側(左側)に達する長さを有していてよい。例えば、後輪ハブ41をリアアーム50から取り外している状態で、第1電線部33の端部は後輪ハブ41の外側に位置してよい。この構造によると、第1電線部33と第2電線部34の接続作業を容易化できる。
【0074】
図8Bで示すように、端子台35の第3部分35j(電源線33aの端子33dが設けられ螺子35aが取り付けられる部分)は、連結部材46Bの後部ケース51側の側面(壁部46aの左面)よりも左方に突出してよい。より望ましくは、第3部分35jは、連結部材46Bの後部ケース51側の端面(左端面46n)よりも左方に突出してよい。また、後輪ハブ41をリアアーム50から取り外している状態で、信号線33bが外側(左側)に引っ張られたときに、コネクタ33cは後部ケース51側の側面(壁部46aの左面)より左方に位置してよい。より望ましくは、コネクタ33cは後部ケース51側の左端面46nより左方に位置してよい。これによって、第1電線部33(電源線33a及び信号線33b)と第2電線部34(電源線34a及び信号線34b)の接続作業を容易化できる。
【0075】
なお、駆動ユニット10の端子台35は、支持体46の連結部材46Bに固定されてもよい。この場合、第1電線部33の電源線33aは端子台35にモールドされた電線ではなく、樹脂の外皮を有する電線であってもよい。この場合、電源線33aは後輪ハブ41から引き出され、電源線33aの端部に取り付けられている端子33dが端子台35に螺子で接続される。電源線34aの端子34dも端子台35に螺子で接続される。そして、電源線33aと電源線34aは端子台35に設置された導体を通して電気的に接続される。この場合、電源線34aだけを端子台35から取り外すことで、後輪ハブ41をリアアーム50から取り外すことができる。端子台35の電源線34a(端子34d)を接続する位置は連結部材46Bの後部ケース51側の端面(左端面46n)よりも左方に突出してよい。
【0076】
さらに他の例として、駆動ユニット10は端子台35を有していなくてもよい。この場合、後輪ハブ41をリアアーム50から取り外している状態で、電源線33aが外側(左側)に引っ張られたときに、電源線33aの端部に設けられているコネクタが、連結部材46Bの後部ケース51側の側面(壁部46aの左面、
図8B参照)より左方に位置してよい。より望ましくは、電源線33aの端部に設けられているコネクタが、連結部材46Bの後部ケース51側の端面46nより左方に位置してよい。
【0077】
図9Aで示すように、第2電線部34も後部ケース51の支持体46側の端面(右端面)51bを超える長さを有してよい。例えば、後輪ハブ41をリアアーム50から取り外している状態で、作業者が第2電線部34を外側(右側)に引っ張ったときに、第2電線部34の端部は後部ケース51の外側に位置してよい。この構造によると、第1電線部33と第2電線部34の接続作業を容易化できる。
【0078】
駆動ユニット10においては、
図9Aで示すように、後輪ハブ41をリアアーム50から取り外している状態で、電源線34aが外側(右側)に引っ張られたときに、それらの端子34dが後部ケース51の右端面51bより右方に位置してよい。同様に、信号線34bが外側(右側)に引っ張られたときに、コネクタ34cは後部ケース51の右端面51bより右方に位置してよい。これによって、第1電線部33(電源線33a及び信号線33b)と第2電線部34(電源線34a及び信号線34b)の接続作業を容易化できる。
【0079】
電線接続部の少なくとも一部は、伝達軸21よりも後方に位置していてよい。例えば、
図8Aで示すように、端子台35が、伝達軸21の回転中心線Ax1を通る鉛直線Lvよりも後方に位置してよい。また、コネクタ33cも鉛直線Lvよりも後方に位置してよい。
図9Aで示すように、電源線34aの端子34dは伝達軸21の回転中心線Ax1を通る鉛直線Lvよりも後方に位置させることができてよい。また、コネクタ34cも鉛直線Lvよりも後方に位置させることができてよい。これによれば、リアアーム50の軸ケース53が、第1電線部33(電源線33a及び信号線33b)と第2電線部34(電源線34a及び信号線34b)の接続作業の障害となることを、回避できる。
【0080】
なお、端子台35、端子33d・34d、及びコネクタ33c・34cの配置は、ここで説明する例に限られない。例えば、端子台35の一部だけが鉛直線Lvよりも後方に位置してよい。また、複数の端子34dのうち一部だけが鉛直線Lvよりも後方に位置してよい。
【0081】
さらに他の例では、端子台35は、後部ケース51に固定されていてもよい。この場合、端子台35の一部(例えば、端子33d・34dが固定される第3部分35j)は、後部ケース51の後輪ハブ41側の端面(右端面51b、
図9A参照)よりも右方に位置してよい。さらに他の例では、上述したように、電源線33a・34aの接続に必ずしも端子台35は利用されなくてもよい。例えば、電源線33a・34aの端部のそれぞれコネクタが設けられ、2つのコネクタが互いに接続されてもよい。さらに他の例では、電線通路46mが大きい場合には、第1電線部33(電源線33a及び信号線33b)と第2電線部34(電源線34a及び信号線34b)との接続部は電線通路46mの内側に位置してもよい。さらに他の例では、第1電線部33(電源線33a及び信号線33b)と第2電線部34(電源線34a及び信号線34b)との接続部は後輪ハブ41内に位置してもよい。
【0082】
[後部ケースの収容室]
図9Aで示すように、後部ケース51は、駆動軸27と伝達軸21との係合部を収容している第1収容室S1を有している。駆動ユニット10においては、第1収容室S1には、駆動軸27の端部に固定されているギア27Bと、伝達軸21に固定され且つギア27Bと係合しているギア26とが収容されている。動力伝達機構としてチェーンやベルトが使用される場合、第1収容室S1には、スプロケットやプーリーが収容されてよい。
【0083】
図9A及び
図9Bで示すように、後部ケース51は、第1収容室S1から区画されている第2収容室S2を有してよい。電線部33・34(具体的には電源線33a・34a及び信号線33b・34b)を含む電線構造は第2収容室S2を通過してよい。この構造によれば、例えばギア27B・26に供給される潤滑剤が、電線構造に付着することを防ぐことができる。また、電線部33・34が回転部(ギア27B・26)に接触することを抑えることができる。
【0084】
図9Aで示すように、後部ケース51は、ケース本体51dと、ケース蓋51eとを有してよい。第1収容室S1は左方に開口しており、ケース蓋51eはこの開口を閉じるようにケース本体51dに取り付けられてよい。一方、第2収容室S2は右方に開口している。後輪ハブ41の支持体46が後部ケース51に固定されると、第2収容室S2の開口は支持体46によって閉じられる(
図4参照)。後部ケース51は第1収容室S1と第2収容室S2とを区画する仕切り壁51cを有してよい。
【0085】
図9Aで示すように、第2収容室S2の一部S2aは、第1収容室S1に対して、伝達軸21の径方向における外側に位置してよい。この構造によると、後部ケース51内の空間を有効に利用でき、回転中心線Ax1に沿った方向での後部ケース51の増大を抑えることができる。
図4で示すように、後輪ハブ41がリアアーム50に取り付けられている状態では、コネクタ33c・34c及び端子台35の第3部分35j(端子34dが端子33dに取り付けられる部分)は第1収容室S1に対して、伝達軸21の径方向における外側に位置してよい。
【0086】
図9Bで示すように、第2収容室S2は伝達軸21を取り囲むように形成されていてよい。そして、第2収容室S2を通過している電線構造(具体的には第2電線部34の電源線34a及び信号線34b)は、伝達軸21を取り囲むように湾曲していてよい。これによって、電線構造を緩やかに曲げることが許容され、第1電線部33と第2電線部34との接続作業を容易化できる。
【0087】
図9Bで示すように、伝達軸21の周方向における第2収容室S2の一端S2bは、他端S2cから伝達軸21の周方向において180度より大きく離れていてよい。(ここで他端S2cは、電源線34a及び信号線34bが軸ケース53に向けて通過する開口である。)こうすることで、電線構造の曲げをより緩やかにできるので、第1電線部33と第2電線部34との接続作業を容易化できる。
【0088】
[軸ケース]
上述したように、リアアーム50は、後部ケース51の前方に位置し駆動軸27を収容している軸ケース53(
図2A参照)を有している。
図5で示すように、第2電線部34は、後部ケース51に形成されている電線通路51h(第2収容室S2の端部S2c(
図9B参照)から延びている通路)を通過して前方に延びてよい。第2電線部34は軸ケース53に収容されてよい。
【0089】
図5で示すように、軸ケース53の前端には前部ケース56に連通する電線通路53bが形成されている。第2電線部34はこの電線通路53bを通過して前部ケース56内に入る。そして、第2電線部34は、前部ケース56の後部に形成されている回路収容部56Cに配置されているモータ制御装置11に接続している。このため、第2電線部34は外部に露出する部分を有していない。
【0090】
図6Aで示すように、電線通路51hは駆動軸27の上方に位置している。第2電線部34は駆動軸27の上方に配置されている。これによって軸ケース53の左右方向での幅を低減できている。一方、第2電線部34の後部は、第2収容室S2の内部で伝達軸21を取り囲むように湾曲している。そして、第2電線部34の後部(
図6Aにおいて電源線34aの後部)は伝達軸21よりも低い位置まで延びている。この構造によって、第2電線部34の急激な湾曲を抑えることができ、第2電線部34と第1電線部33との接続作業を容易化できる。
【0091】
図6Bで示すように、軸ケース53の内部に支持管55が収容されていてよい。そして、第2電線部34はこの支持管55の内部に通されてよい。この支持管55によって第2電線部34は駆動軸27から隔離され、第2電線部34が自転車1の振動に起因して撓み回転体である駆動軸27と接触することを、防ぐことができる。なお、支持管55はプラスチックなどの樹脂でもよいし、金属でもよい。
【0092】
図7A及び
図7Bは、
図6A及び
図6Bで示す軸ケース53の変型例を示す図であり、それらの切断面は
図6A及び
図6Bと同様である。
図7A及び
図7Bで示す例において、軸ケース53は、駆動軸27が配置される軸収容室53s1と、第2電線部34が配置される電線収容室53s2とを区画する仕切り壁53cを有している。この構造によると、第2電線部34と駆動軸27が接触することを防止できる。また、軸ケース53の強度を増すことができる。その結果、第2電線部34と駆動軸27を保護できる。仕切り壁53cは軸ケース53の後端から前端まで延びていてよい。
【0093】
[前部ケース]
図5に示すように、回路収容部56Cはクランク軸61と後輪40との間に位置してよい。回路収容部56Cの少なくとも一部は、車体の正面視において後輪40と重なってよい。回路収容部56Cの少なくとも一部は、車体の正面視においてクランク軸61と重なってよい。回路収容部56Cのこの配置によると、外部の物が回路収容部56Cに衝突することを防ぐことができる。
【0094】
図5で示すように、回路収容部56Cは右方に開口してよい。すなわち、回路収容部56Cはリアアーム50とは反対側に向かって開口してよい。収容部蓋56gは回路収容部56Cの開口を閉塞してよい。この構造によると、例えばモータ制御装置11の点検のために、収容部蓋56gを取り外すことが容易となる。収容部蓋56gの内面に、モータ制御装置11が取り付けられていてよい。
【0095】
図5で示すように、前部ケース56は、クランク軸61を収容している軸収容部56Aを有している。軸収容部56Aと回路収容部56Cは一体的に形成されている。これによって部品数を低減できている。回路収容部56Cの前側の壁には貫通孔56dが形成されている。回路収容部56Cは、この貫通孔56dを通して、軸収容部56Aの内部に通じている。トルクセンサ64に接続されている電線は、この貫通孔56dを通って回路収容部56Cの内部にあるモータ制御装置11に接続される。
【0096】
[ベアリングによる伝達軸の支持]
図9Aで示すように、ケース蓋51eは、ベアリング47Aを介して伝達軸21の左部を支持している。後輪ハブ41はベアリング47Bを介して、伝達軸21の右部を支持している(
図3B参照)。駆動ユニット10においては、支持体46によって後輪ハブ41の右部材41Bがベアリング49Bを介して支持されている。そして、右部材41Bがベアリング47Bを介して伝達軸21の右部を支持している。つまり、伝達軸21の右端は支持体46によって間接的に支持されている。伝達軸21の支持構造は、駆動ユニット10の例に限られない。例えば、右側のベアリング47Bは、支持体46の内側に位置してもよい。
【0097】
図8B及び
図9Aで示すように、後輪ハブ41をリアアーム50から分離すると、伝達軸21の右端部はベアリング47B及び一方向クラッチ23から離れ、伝達軸21は後部ケース51によって支持されたままとなる。
図9Aで示すように、伝達軸21の右端部の外周面にはスプライン21aが形成されている。一方向クラッチ23の内周面にもスプラインが形成されており、伝達軸21はこのスプラインによって一方向クラッチ23に係合し、また回転中心線Ax1に沿った方向での一方向クラッチ23及びベアリング47Bからの分離が許容されている。
【0098】
図9Aで示すように、後部ケース51は、伝達軸21の両端部をそれぞれ支持しているベアリング47A・47Bの間に配置されるベアリング47Cを介して伝達軸21を支持する。上述したように、後部ケース51は仕切り壁51cを有している。仕切り壁51cには、伝達軸21が通過する開口が形成されている。開口の内縁にベアリング47Cが嵌められている。仕切り壁51cはベアリング47Cを介して伝達軸21を支持する。この構造によると、後輪ハブ41をリアアーム50から分離したときに、後部ケース51に対する伝達軸21の姿勢が維持される。
図9Aで示すように、仕切り壁51cは、左部51fと、左部51fから右方に離れている右部51gとを有している。伝達軸21は右部51gに形成された開口を通過して、右方に延びている。ベアリング47Cはこの開口の内側に配置されている。ベアリング47Cは、例えばボールベアリングであるが、含油メタル或いは樹脂で形成された滑りベアリングであってもよい。
【0099】
[ベアリングの位置決め構造の変形例]
図3B等を参照しながら説明した後輪ハブ41において、後輪ハブ41を支持している右側のベアリング49Bは右部材41Bに圧入されて、保持されていた。右部材41Bは左壁41Aに固定されていた。そして、左壁41Aは、左壁41Aの内側に圧入されているベアリング49Aがステータ保持部材46Aと連結部材46Bとで挟まれることで、位置決めされていた。そのため、右側のベアリング49Bの右方への位置ずれは、左部材41A及び左側のベアリング49Aによって規制されていた。これとは異なり、ベアリング49Bへの右方への位置ずれを規制する、言い換えれば、ベアリング49Bの位置を定める専用の部材が後輪ハブ41に設けられてもよい。この構造によれば、回転中心線Ax1に沿った方向でのベアリング49Bの動きを抑制することができる。また、ベアリング49Bにかかる回転中心線Ax1に沿った方向の荷重(予圧)を適正な値とすることができる。
図10は、この例として、後輪ハブ141を示す断面図である。以下では、これまで説明した後輪ハブとの相違点について説明する。後輪ハブ141について説明のない事項は、これまで説明した後輪ハブ或いはこの後に説明する後輪ハブの構造が適用されてよい。
【0100】
図10において、駆動ユニット110の支持体146は、ステータ保持部材46Aと連結部材46Bとに加えて、位置決め部材146Dを有している。位置決め部材146Dはステータ保持部材46Aとは別個に形成された部材である。位置決め部材146Dはナット46gによってステータ保持部材46Aに取り付けられている。ステータ保持部材46Aは、その右部に、凹部を有している。この凹部の内側に、一方向クラッチ23やベアリング47Bなどに加えて、位置決め部材146Dが配置されている。位置決め部材146Dは、その右端にフランジ46iを有している。フランジ46iは後輪ハブ41を支持しているベアリング49Bを左方に付勢している。ベアリング49Bはステータ保持部材46Aの外周面に形成されている段差とフランジ46iとによって挟まれて、回転中心線Ax1に沿った方向において位置決めされている。
【0101】
図10において、駆動ユニット110の後輪ハブ141は、左壁41Aと、右部材141Bと、蓋部材141Cとを有している。蓋部材141Cは、右部材141Bとは別個に形成された部材である。右部材141Bは、伝達軸21と位置決め部材146Dとに対応する位置に、開口を有している。蓋部材141Cはこの開口の縁に螺子83などの固定具によって取り付けられている。蓋部材141Cは左方に突出する保持筒部41cを有している。この保持筒部41cの内側に一方向クラッチ23とベアリング47Bと伝達軸21の右端とが配置されている。
【0102】
右側のベアリング49Bの外輪は右部材141Bに圧入されている。左壁41A、右部材141B、及びステータ保持部材46Aなどを組み立てた後、蓋部材141Cが右部材141Bの開口に取り付けられていない状態で、位置決め部材146Dが右側からステータ保持部材46Aの凹部に組み付けられる。連結部材46Bとステータ保持部材46Aと位置決め部材146Dとがボルト46fとナット46gとで固定され、その後に、蓋部材141Cによって右部材141Bの開口が塞がれる。
【0103】
[伝達軸の変形例]
図3B等で示した駆動ユニット10において、伝達軸21は、その右端から左端まで繋がっていた。これとは異なり、伝達軸21は、回転中心線Ax1に沿った方向で連結されている2本の軸を含んでよい。そして、左の軸は後部ケース51で支持され、右の軸は支持体46によって支持されてよい。
図11は、この例として、駆動ユニット210を示す断面図である。以下では、駆動ユニット210と、これまで説明した駆動ユニットとの相違点について説明する。駆動ユニット210について説明のない事項は、これまで説明した駆動ユニット或いはこの後に説明する駆動ユニットの構造が適用されてよい。
【0104】
図11で示すように、駆動ユニット210において、伝達軸221は左軸221Aと右軸221Bとを有している。左軸221Aの左端は、
図3B等で示した駆動ユニット10と同様、後部ケース51のケース蓋51eによってベアリング47Aを介して支持されている。左軸221Aの右端は、後部ケース51内に形成されている仕切り壁51cの開口(右部51gに形成されている開口)の内縁に嵌められているベアリング47Cによって支持される。
【0105】
図11で示すように、右軸221Bの左端は、ベアリング47Dを介してボルト46fによって支持されてよい。この図に示す例において、ボルト46fは、その左端に、左方に開いている凹部を有している。ベアリング47Dはこの凹部の内側で保持されている。右軸221Bは、このベアリング47Dの内側に嵌められ、右軸221Bの左端は、ベアリング47Dを介してボルト46fによって支持されている。右軸221Bの右端は、例えば
図3B等で示した駆動ユニット10と同様、後輪ハブ41の右部材41Bとベアリング47Bとを介して支持体46によって支持されてよい。或いは、右軸221Bの右端は、例えば
図10等で示した駆動ユニット110と同様、蓋部材141Cとベアリング47Bとを介して支持体46によって支持されてよい。
【0106】
左軸221Aと右軸221Bは動力が伝達可能となるように相互に連結されている。
図11においては、左軸221Aと右軸221Bはスプラインによって相互に連結されている。左軸221Aと右軸221Bは回転中心線Ax1に沿った方向において分離可能である。
【0107】
この構造によると、リアアーム50から後輪ハブ41を取り外したときに、リアアーム50に左軸221Aが保持され、後輪ハブ41に右軸221Bが保持される。リアアーム50に後輪ハブ41を取り付けるときには、左軸221Aに右軸221Bを連結する。これによると、リアアーム50に後輪ハブ41を取り付ける作業を、より簡単化できる。
【0108】
[トルクセンサ位置の変形例]
図3Aを参照しながら説明したように、駆動ユニット10において、ペダル63に作用する踏力を検知するためのトルクセンサ64はクランク軸61に設けられていた。トルクセンサ64の位置はこれに限られない。
図11で示す駆動ユニット210においては、トルクセンサ64は右軸221Bに設けられている。より詳細には、右軸221Bが挿入されるボルト46fの貫通孔の内周面に取り付けられている。トルクセンサ64に接続されている電線64aは、電線部33・34を含む電線構造と同様に、後部ケース51の第2収容室S2及び軸ケース53を通ってモータ制御装置11に接続されている。この構造においては、ボルト46fに、この電線64aが通過する電線通路46kが形成されてよい。トルクセンサ64は、例えば、右軸221Bのねじれに応じた信号を出力するセンサ(例えば、磁歪センサ)である。
【0109】
さらに他の例として、トルクセンサ64は駆動軸27に設けられてもよい。
図12は、このような構造を有する駆動ユニット310を示す図である。この図の切断面は、
図3Aと同様である。
【0110】
駆動軸27は、その延伸方向での一部に、被検知軸を有している。
図12で示す例においては、駆動軸27は、その最前部に、被検知軸27aを有している。駆動軸27の軸本体27bと被検知軸27aはスプラインによって係合している。被検知軸27aを取り囲むようにトルクセンサ64が配置されている。前部ケース56の内側に筒状のセンサホルダ56eが配置されている。トルクセンサ64はこのセンサホルダ56eの内周面に取り付けられている。トルクセンサ64から延びている電線64aは、センサホルダ56eと前部ケース56とに形成された電線通路56fを通過して、回路収容部56Cに収容されているモータ制御装置11に接続されている。トルクセンサ64は、例えば、被検知軸27aのねじれに応じた信号を出力するセンサ(例えば、磁歪センサ)である。
【0111】
[ブレーキ装置の変形例]
図2Aを参照しながら説明したように、駆動ユニット10が有しているブレーキ装置71はディスクブレーキ装置であった。これとは異なり、ブレーキ装置はドラムブレーキ装置であってもよい。
図13A及び
図13Bは、ドラムブレーキ装置を有している駆動ユニット410を示す図である。
図13Aは左側面図であり、
図13Bは
図13AのXIIIb-XIIIb線での断面図である。以下では、駆動ユニット410とこれまで説明した駆動ユニットとの相違点について説明する。駆動ユニット410について説明のない事項は、これまで説明した駆動ユニットの構造が適用されてよい。
【0112】
ブレーキ装置471(
図13B参照)は、2つのブレーキシュー471cと、各ブレーキシュー471cの外周面に取り付けられているブレーキライニング471dとを有している(
図13B参照)。これらは、例えば、後部ケース51に取り付けられているピボット軸471e(
図13A参照)によって支持されている。一方、後輪ハブ41には、
図13Bで示すように、ブレーキリング471fが取り付けられている。ブレーキリング471fは、例えば、後輪ハブ41の左壁41Aの左側面から左方に突出している環状部41fの内側に固定されている。ブレーキシュー471cはブレーキリング471fの内側に配置されている。また、ブレーキ装置471は、カムシャフト471a及びカムシャフト471aを回転させるカムシャフトレバー471bを有している(
図13A参照)。カムシャフト471aは、例えば後部ケース51によって支持され、2つのブレーキシュー471cの端部の間に配置される。
【0113】
[まとめ]
(1)以上説明したように、駆動ユニット10において、電線構造は、電動モータ30から延びている第1電線部33(電源線33a、信号線33b)と、リアアーム50に沿って延びている第2電線部34(電源線34a、信号線34b)と、第1電線部33と第2電線部34とを電気的に接続する電線接続部(端子台35及びコネクタ33c・34c)とを含む。後輪ハブ41に、後輪ハブ41の回転を許容するように後輪ハブ41を支持する支持体46が設けられている。リアアーム50は、駆動軸27と伝達軸21との間の係合部を収容する後部ケース51を有している。後部ケース51は支持体46に対して少なくとも1つの螺子81によって取り付けられている。電線構造は、支持体46に形成された電線通路46mを通って後部ケース51から後輪ハブ41内に向けて延びている。電線接続部は、後部ケース51の左端面と、後輪ハブ41の右端面との間に位置している。この駆動ユニット10によると、リアアーム50からの後輪40の取り外し作業を容易化できる。また、
図10~
図13Bを参照しながら説明した駆動ユニットについても、同様のメリットが得られる。
【0114】
(2)支持体46は、ステータ31が取り付けられているステータ保持部材46Aと、連結部材46Bとを有している。連結部材46Bの壁部46aは、後輪ハブ41の回転中心線Ax1に沿った方向において後輪ハブ41の外側に位置している。後部ケース51は、螺子81によって連結部材46Bの壁部46aの外周部に取り付けられている。
【0115】
(3)連結部材46Bの壁部46aはステータ保持部材46Aよりも大きな径を有している。これによると、連結部材46Bと後部ケース51との取付位置の数を増すことが容易となる。
【0116】
(4)電線接続部(端子台35及びコネクタ33c・34c)は後部ケース51内に配置されている。この構造によると、後部ケース51内のスペースを有効に利用でき、後輪ハブ41及び後部ケース51の左右方向でのサイズの増大を抑えることができる。
【0117】
(5)第1電線部33は電線通路46mを通過し且つ後輪ハブ41の外側に達する長さを有している。これによると、第1電線部33と第2電線部34の接続作業を容易化できる。
【0118】
(6)第2電線部34は、後部ケース51の支持体46寄りの端面51bを超える長さを有している。これによると、第1電線部33と第2電線部34の接続作業を容易化できる。
【0119】
(7)電線接続部である端子台35の一部は、支持体46の後部ケース51寄りの側面(壁部46aの左面)から突出している。これによると、第1電線部33と第2電線部34の接続作業を容易化できる。
【0120】
(8)後部ケース51は、駆動軸27と伝達軸21との間の係合部を収容している第1収容室S1と、第1収容室S1から区画されている第2収容室S2とを有している。電線構造は第2収容室S2を通過している。この構造によると、電線構造を保護できる。例えば、駆動軸27と伝達軸21との間の係合部に利用される潤滑剤が電線構造に付着することを防ぐことができる。また、電線構造が回転部(例えば、ギア)に接触することを防ぐことができる。
【0121】
(9)第2収容室S2の一部S2aは、第1収容室S1に対して伝達軸21の径方向における外側に位置している。これによれば、後部ケース51内のスペースを、より有効に利用できる。
【0122】
(10)第2収容室S2は伝達軸21を取り囲むように形成されている。これによると、第2収容室S2を通過する電線構造の曲げを緩やかにでき、第1電線部33と第2電線部34の接続作業を容易化できる。
【0123】
(11)リアアーム50は、後部ケース51の前方に位置し駆動軸27を収容している軸ケース53を有している。軸ケース53は、その内部に、駆動軸27を収容している軸収容室53s1と、第2電線部34を収容している電線収容室53s2とを有している。
【0124】
(12)後部ケース51は、左側のベアリング47Aを介して伝達軸21の左端を支持している。支持体46は、右側のベアリング47Bを介して伝達軸21の右端を支持している。伝達軸21の右端は、後部ケース51と後輪ハブ41との分離に伴って、支持体46から離れることが可能である。後部ケース51は、ベアリング47A・47Bの間に位置するベアリング47Cを介して伝達軸21を支持している。この構造によると、後部ケース51と後輪ハブと41を分離したときに、後部ケース51に対する伝達軸21の姿勢を維持できる。ベアリング47Cは、例えばボールベアリングであるが、含油メタル或いは樹脂で形成された滑りベアリングであってもよい。
【0125】
なお、ここで説明した例とは反対に、伝達軸21の左端は、後部ケース51と後輪ハブ41との分離に伴って後部ケース51から離れることが可能であってもよい。この場合、支持体46は、ベアリング47A・47Bの間に位置するベアリングを介して伝達軸21を支持してよい。この構造によると、後部ケース51と後輪ハブと41を分離したときに、支持体46に対する伝達軸21の姿勢を維持できる。
【0126】
(13)後部ケース51と支持体46とを固定する螺子81は、後部ケース51の外側に配置されてよい。これによると、リアアーム50から後輪ハブ41を取り外す作業を、さらに容易化できる。
【0127】
(14)後部ケース51と支持体46とを固定する複数の螺子81が伝達軸21を取り囲む周方向に設けられてもよい。
【0128】
[さらに他の例]
なお、本開示で提案する駆動ユニット及び自転車は、これまで説明した例に限られず、種々の変更がなされてよい。
【0129】
例えば、電動モータ30の動力を後輪ハブ41に伝える第1動力系は減速機構を有してもよい。この場合、駆動ユニット10は、伝達軸として、後輪40の回転中心線Ax1に沿って配置される複数の軸を有してもよい。伝達軸である複数の軸の全部又は一部の位置は、回転中心線Ax1からずれていてもよい。また、クランク軸61の動力を後輪ハブ41に伝える第2動力系は変速機構を有してもよい。
【0130】
上述した例において、支持体46は、ステータ支持部材46A、連結部材46B、及びこれらステータ支持部材46Aと連結部材46Bとを相互に固定するボルト46fを有していた。これとは異なり、ステータ支持部材46Aと連結部材46Bは一体的に成型されていてもよい。この場合、支持体46はボルト46fを有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1:自転車、2:前輪、3:フロントフォーク、4:ハンドルバー、6:サドル、7:車体フレーム、7a:サドルポスト、7b:ヘッドパイプ、7c:ダウンフレーム、7d:ブラケット、10:駆動ユニット、11:モータ制御装置、13:バッテリ、21:伝達軸、21a:スプライン、21b:連結部、23:一方向クラッチ、26:傘歯ギア、27:駆動軸、27A・27B:傘歯ギア、27a:被検知軸、27b:軸本体、30:電動モータ、31:ステータ、32:ロータ、33:第1電線部、33a:電源線、33b:信号線、33c:コネクタ、33d:端子、34:第2電線部、34a:電源線、34b:信号線、34c:コネクタ、34d:端子、35:端子台、35a:螺子、40:後輪、41:後輪ハブ、41A:左壁、41B:右部材、41c:保持筒部、41d:右壁、41e:筒部、41f:環状部、42:螺子、43:リム、44:タイヤ、45:スポーク、46:支持体、46A:ステータ保持部材、46B:連結部材、46D:位置決め部材、46a:壁部、46f:ボルト、46g:ナット、46h:凹部、46i:フランジ、46j:中央部、46k:電線通路、46m:電線通路、46p:開口、46n:左端面、47A・47B・47C・49A・49B:ベアリング、49C:シール部材、50:リアアーム、51:後部ケース、51b:右端面、51c:仕切り壁、51d:ケース本体、51e:ケース蓋、51f:左部、51g:右部、51h:電線通路、53:軸ケース、53a:ブラケット、53b:電線通路、53c:仕切り壁、53s1:軸収容室、53s2:電線収容室、56:前部ケース、56A:軸収容部、56C:回路収容部、56d:貫通孔、56e:センサホルダ、56f:電線通路、56g:収容部蓋、60:クランク、61:クランク軸、62:クランクアーム、63:ペダル、64:トルクセンサ、64a:電線、65:傘歯ギア、71:ブレーキ装置、72:ブレーキディスク、73:キャリパー、81:螺子、82:カラー、83:螺子、110:駆動ユニット、141:後輪ハブ、141B:右部材、141C:位置決め部材、146:支持体、146D:位置決め部材、147a:カムシャフト、210:駆動ユニット、221:伝達軸、221A:左軸、221B:右軸、310:駆動ユニット、410:駆動ユニット、471:ブレーキ装置、471a:カムシャフト、471b:カムシャフトレバー、471c:ブレーキシュー、471d:ブレーキライニング、471e:ピボット軸、471f:ブレーキリング、Ax1:回転中心線、S1:第1収容室、S2:第2収容室。