(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163930
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20221020BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61F13/15 143
A61F13/514 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069080
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】清水 美沙
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB25
3B200DA27
3B200DD01
3B200DD02
3B200DD10
(57)【要約】
【課題】使用中の消臭機能と、使用済みの吸収性物品の処理時及び廃棄後のごみ箱内の悪臭を緩和することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品本体11と、吸収性物品本体11のバックシート12に設けられ、香料を含浸した香料シート22を内包する香料袋20と、を有する、吸収性物品10であって、香料袋20の袋本体21は、2枚重なった略矩形のフィルム21a、21bの四方をヒートシールすることにより製袋され、非肌当接面側の袋本体フィルム21aの非肌当接面には、蓋材26が粘着層28を介して袋本体21と剥離可能に接着され、蓋材26の吸収性物品10の幅方向一方端部には、摘み部27が設けられ、非肌当接面側の袋本体フィルム21aには、中心点が吸収性物品10の幅方向に均等な間隔で並んだ複数の閉ループ状の開口誘導線25が設けられている、吸収性物品10である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品本体と、該吸収性物品本体のバックシートに設けられ、香料を含浸した香料シートを内包する香料袋と、を有する、吸収性物品であって、
前記香料袋の袋本体は、2枚重なった略矩形のフィルムの四方をヒートシールすることにより製袋され、
前記フィルムのうち、非肌当接面側のフィルムの非肌当接面には、蓋材が粘着層を介して前記袋本体と剥離可能に接着され、
前記蓋材の吸収性物品の幅方向一方端部には、摘み部が設けられ、
前記フィルムのうち、非肌当接面側のフィルムには、中心点が吸収性物品の幅方向に均等な間隔で並んだ複数の閉ループ状の開口誘導線が設けられていることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記開口誘導線のそれぞれの閉ループによって形成される図形の各々の一部が互いに相似形であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記開口誘導線のそれぞれの閉ループによって形成される図形は各々が相似形であり、かつ、前記図形のそれぞれの面積は、前記摘み部がある側に向かって順番に小さくなることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開口誘導線のそれぞれの閉ループによって形成される図形は各々が相似形であり、かつ、前記図形のそれぞれの面積は、前記摘み部がある側に向かって順番に大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記蓋材の前記粘着層が設けられている面と反対側の表面には、各開口予定部の存在位置を示す表示部が設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料袋を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。これらの吸収性物品には、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッドなど、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
使用済みの吸収性物品の後処理時の悪臭を緩和するために、例えば、吸収性物品に消臭剤スプレーを吹き付ける方法がある。しかしながら、仕事量の多い介護現場ではスプレーを使用すること自体が手間であり、また、使用済みの吸収性物品を触った手でスプレーを使用した後に、スプレー自体を消毒する必要が生じる場合がある。
【0004】
一方、吸収性物品自体に香料を賦香する方法が知られている。例えば、特許文献1では、水溶性フィルムに香料を入れたものが開示されている。また、特許文献2では、湿潤により崩壊するマイクロカプセル内に香料を入れたものを吸収体に入れる方法が開示されている。さらに、特許文献3では、後処理テープの粘着層に香料を混ぜる方法が開示されている。また、特許文献4では、個包装体にとりつけられた易開封性の香料袋が、着用者が使用開始時に個包装を開封すると同時に香料袋を開封する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-100021号公報
【特許文献2】特開昭59-106501号公報
【特許文献3】特開2016-067912号公報
【特許文献4】特開2014-223129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
香料が担持される吸収性物品は、製造時に吸収性物品に香料を担持させてから実際に使用するまで香料が揮散しない、又は香料の効果が消滅しない構造であることが求められる。
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、水分の多い尿に対しては有効ではあるものの、水分の少ない大便に対し効果を発揮しないという問題がある。また、特許文献3の技術においては、一般的に香料は粘着剤に浸透していき粘着力を低下させやすいため、製品を長期間保管した場合に後処理テープとしての機能を低下させる可能性がある。
その他、感圧カプセルを使った方法なども考えられるが、吸収性物品はクッション性を高くするために、製品自体が軟らかくなっているため、カプセルの破壊が起こり難く、悪臭を十分に緩和するための量の香料を吸収性物品に担持させるには、相当量のカプセルが必要になるという問題がある。また、特許文献4は吸収性物品の取り出しが香料の揮発のきっかけとなる点で画期的ではあるものの、吸収性物品の交換時にのみ香りがたち、更に香料の揮散は、袋内に閉じ込められた香料が一つの開口部のみを通じて大気中にでてくる仕組みであり、香りがたちにくい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、使用中の消臭機能と、使用済みの吸収性物品の処理時及び廃棄後のごみ箱内の悪臭を緩和することができる吸収性物品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、香料シートがフィルムの袋に内包され、複数の開口部を設けた香料袋を、吸収性物品に開封可能なように取り付け、さらに、香料袋の蓋材に粘着層を設けて後処理テープとして用い、使用後の吸収性物品を丸めて廃棄できるようにすることにより、使用中の消臭機能と、使用済みの吸収性物品の処理時及び廃棄後のごみ箱内の悪臭を緩和することができることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、吸収性物品本体と、該吸収性物品本体のバックシートに設けられ、香料を含浸した香料シートを内包する香料袋と、を有する、吸収性物品であって、上記香料袋の袋本体は、2枚重なった略矩形のフィルムの四方をヒートシールすることにより製袋され、上記フィルムのうち、非肌当接面側のフィルムの非肌当接面には、蓋材が粘着層を介して上記袋本体と剥離可能に接着され、上記蓋材の吸収性物品の幅方向一方端部には、摘み部が設けられ、上記フィルムのうち、非肌当接面側のフィルムには、中心点が吸収性物品の幅方向に均等な間隔で並んだ複数の閉ループ状の開口誘導線が設けられていることを特徴とする、吸収性物品である。
【0009】
上記開口誘導線のそれぞれの閉ループによって形成される図形の各々の一部が互いに相似形であってもよい。
【0010】
上記開口誘導線のそれぞれの閉ループによって形成される図形は各々が相似形であり、かつ、上記図形のそれぞれの面積は、上記摘み部がある側に向かって順番に小さくなっていってもよい。
【0011】
上記開口誘導線のそれぞれの閉ループによって形成される図形は各々が相似形であり、かつ、上記図形のそれぞれの面積は、上記摘み部がある側に向かって順番に大きくなっていってもよい。
【0012】
上記蓋材の上記粘着層が設けられている面と反対側の表面には、各開口予定部の存在位置を示す表示部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用中の消臭機能と、使用済みの吸収性物品の処理時及び廃棄後のごみ箱内の悪臭を緩和することができる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の吸収性物品の一実施形態を示す平面図である。
【
図4】
図2から蓋材を剥離して再度貼り付けた状態を示す図である。
【
図6】吸収性物品を丸めて、蓋材の粘着層で止めた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。
【0016】
また、本明細書の説明において、吸収性物品10の着用時とは、吸収性物品10の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品10の長手方向とは、吸収性物品10が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品10の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品10としては、ベビー用又は成人用を問わず、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0017】
<吸収性物品>
本発明の吸収性物品10の一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態の吸収性物品10は、吸収性物品本体11と、吸収性物品本体11のバックシート12に設けられ、香料を含浸した香料シート22を内包する香料袋20と、を有するものである。具体的には、香料袋20は、バックシート12の非肌当接面側に設けられている。
【0018】
本実施形態では、
図1に示すように、香料袋20は、吸収性物品本体11の、着用時に腹側になる位置(紙面右側の端部が吸収性物品本体11の腹側端部を示す。)に取り付けられている。香料袋20が、背側に取り付けられた場合、僅かな段差による不快感が生じる場合があり、特に高齢者にとっては、僅かな段差は、床ずれの原因になる。しかし、本実施形態のように、香料袋20が、吸収性物品10の腹側に取り付けられていることにより、そのような不快感が生じることがない。さらに、香料袋20が、腹側に取り付けられていることにより、たとえば着用中に香りの強さを調整したいときに、介護者、着用者共に香料袋20の操作をしやすい。
以下、香料袋20の構成について説明する。
【0019】
<香料袋>
図2は、香料袋20を示す平面図であり、
図3は
図2におけるX-X’線断面図である。
図2及び
図3に示すように、香料を含浸した香料シート22を内包する香料袋20の袋本体21は、2枚重なった略矩形のフィルム(袋本体フィルム21a及び21b)の四方をヒートシールし、ヒートシール部23を形成することにより製袋される。
袋本体21は、上記のように2枚の略矩形の袋本体フィルム21a及び21bからなる。袋本体21の大きさは、吸収性物品10の長手方向(X軸方向)における寸法が、40mm以上70mm以下であることが好ましく、幅方向(Y軸方向)における寸法は、100mm以上150mm以下であることが好ましい。また、ヒートシール部23の幅は、2枚の袋本体フィルム21a及び21bの材質にもよるが、意図しない力によって香料袋20が開封されることを防止する観点から、3mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0020】
(フィルム)
袋本体フィルム21a及び21bは、香料袋20を開封するまで香りを保持しておくために、高い保香性をもったバリア層と、袋本体21を形成するために袋本体フィルム21aと袋本体フィルム21bを溶着するためのシーラント層を含む、少なくとも2層以上の素材が積層されたものが好ましい。各層の積層の仕方はドライラミネート、押出しラミネートどちらでもよく、組み合わせる素材により最適な手段を選択できる。
【0021】
バリア層としては、一般的に保香性が高い樹脂として知られるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などのフィルムが使えるほか、フィルム表面をコーティングや蒸着することでさらに保香性を高めたフィルムを使用することができる。このようなフィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン(KOP)、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KONy)、ポリ塩化ビニリデンコートポリエチレンテレフタレート(KPET)やポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレン(AOP)、アルミやアルミナまたはシリカなどを蒸着したポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ナイロン(ONy)及び延伸ポリプロピレン(OPP)などが使用できる。
【0022】
また、酸素バリア性が高いものに保香性も高いものが多いことから、バリア層の選択の目安として酸素バリア性が高いフィルムを挙げることができる。しかし、フィルムの香料や酸素などの気体の透過しやすさは、その気体のフィルム樹脂への溶解性、樹脂内での拡散性(結晶部分の量)により決まるため、保香性が酸素バリア性と必ずしも相関するとは限らない。そのため、酸素バリア性だけを基準にせず、香料ごとに実際に透過性を確認しながらバリア層に使用するフィルムを選択することが好ましい。
【0023】
また、シーラント層としては、通常シーラント層として使用される樹脂が使用されるが、より保香性を考慮する場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)や無延伸ポリプロピレン(CPP)が望ましいが、シールし易さを重視する場合には直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー(IO)などが好ましい。
【0024】
また、フィルムの他にアルミ箔も積層すると、より保香性を高めることができる。
本発明で用いることができる好ましいフィルムの構成として、EVOH/ONy/LLDPE、アルミ蒸着PET/ONyLDPE/LLDPE、シリカ蒸着PET/LDPE/LLDPE、アルミナ蒸着ONy/LLDPE、KONy/LLDPE、PET/アルミ箔/CPPなどが挙げられる。各層の膜厚は、バリア層が10μm以上15μm以下、シーラント層が40μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0025】
(開口予定部、開口誘導線及び開口部)
袋本体21における袋本体フィルム21a及び21bのうち、非肌当接面側の袋本体フィルム21aには、中心点が吸収性物品10の幅方向に均等な間隔で並んだ、複数の閉ループ状の開口誘導線25が設けられている。このとき、開口誘導線25は開口予定部24の外周に沿って袋本体フィルム21aにミシン目又はフィルム厚み方向に半分程度の切込み(ハーフカット)を入れたものであることが好ましいが、後述する使用方法において、蓋材26を剥がしたときに開口予定部24のフィルムを、粘着層28と共に抜き取ることができるのであれば、その他どのような手段でもかまわない。
また、開口予定部24は2個以上設けられていれば数は特に限定されないが、
図2及び
図3に示す開口予定部24a~24dのように4個設けられていることが好ましい。
【0026】
さらに、開口予定部24を覆う蓋材26の肌当接面側には粘着層28が設けられ、蓋材26が粘着層28を介して、袋本体21(袋本体フィルム21a)と剥離可能に接着されている。後述する使用方法において、蓋材26を袋本体21から引き剥がすときに、開口予定部24のフィルムは粘着層28に貼り付いたまま蓋材26と共に取り去られる(
図5に示す開口部フィルム35となる)ことで、取り去られた部分がそのまま開口部34(開口部34a~34d)となる。
【0027】
このとき、上記のように開口予定部24(開口誘導線25が形成する閉ループ)の中心点(
図2に示すC1~C4)が等間隔であるため、抜き取られた蓋材26の粘着層28に貼り付いた開口部フィルム35が、開放したくない開口部34を塞ぐことが可能となる(
図4及び
図5では開口部34a及び34bが開放されており、開口部34c及び34dが蓋材26によって塞がれている)。すなわち、蓋材26の位置を蓋材26の摘み部27側の方向にずらすことで、開口数をコントロールすることが可能となる。
本実施形態の吸収性物品10において、後述する使用方法では、
図4に示すように蓋材26をいったん剥がし、再度貼り付けることで開放されている開口部34の数を調整できる。そのため、例えば着用中に排泄があった場合に、臭気をある程度緩和したいときには、香料袋20を
図4に示す状態にして、吸収性物品10を着用する。このように吸収性物品10を使用することにより、使用中の消臭機能を保つことができる。
また、開口部34を複数に分割することのもう一つの効果として、香料の揮散を大きくするため開口部34のそれぞれの面積を広くしても、香料を含浸した香料シート22が袋本体21から抜け落ちることがないことも挙げられる。
【0028】
また、開口誘導線25のそれぞれの閉ループによって形成される図形(開口予定部24)は各々の一部又は全部が相似形であることが好ましく、また、図形のそれぞれの面積は、摘み部27がある側に向かって順番に小さくなっていることが好ましい。塞がれた開口部34を粘着層28のみで塞いだ場合、香料が粘着層28に移動し、粘着能力を低下させるおそれがある。そのため、蓋材26をずらしたときに塞がれた開口部34は、開放された開口部34(開口予定部24)から抜き取られた開口部フィルム35でカバーすることが望ましいが、開口部34の各々が同じ面積のとき、ぴったり合わさるように蓋材26を再度貼るのは困難である。そのため、開口部34が相似形で、蓋材26をずらす方向(摘み部27がある側)に向かって順番に面積が小さくなっていれば、蓋材26の位置合わせが容易になる。
また、図示しないが、使用者が蓋材26をずらす方向を摘み部27がある側と反対側の側の方向に向かわせる場合を想定して、開口部34の各々が互いに相似形で、かつ、摘み部27がある側に向かって順番に面積が大きくしてもよく、これによっても蓋材26の位置合わせが容易になる。
【0029】
(香料シート)
香料シート22は、シート状基材に香料を含浸させたものが好ましい。
シート状基材は、香料を含浸しやすいろ紙が好ましいが、パルプを不織布に水流交絡させたスパンボンド不織布も、吸収性と柔軟性があることから好ましい。
【0030】
(香料)
香料シート22に含浸させる香料としては、天然香料及び合成香料のいずれを用いてもよい。中でも、排泄物の臭気に対するマスキング効果、特にハーモナイズド効果があるものを使用するのが好ましい。
香料の具体例としては、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然抽出香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、エステル、ケトン、サリチル酸と関連化合物、バニリンなどの各種の合成香料、あるいはこれらの2種以上の混合物香料として市販品を広く使用することができる。
【0031】
香料は、香料シート22に、10mg以上50mg以下含浸されていることが好ましい。
【0032】
(蓋材)
図3に示すように、袋本体21を構成するフィルムのうち、非肌当接面側の袋本体フィルム21aの非肌当接面には、蓋材26が粘着層28を介して、袋本体21と剥離可能に接着されている。また、蓋材26の吸収性物品10の幅方向一方端部には、摘み部27が設けられている。
蓋材26は、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルモノマーのクラフト重合体などを含む粘着層28が片面に設けられたフィルムであり、摘み部27の部分は粘着層28を設けないか、又はパウダーをかけることで粘着性を低下させている。なお、フィルムとしては延伸ポリプロピレン(OPP)等を使用することができる。
【0033】
また、
図4に示すような、一旦剥がした蓋材26を袋本体21に再度貼り付けることができるように、袋本体21の長さは蓋材26の幅方向の長さより2倍以上長いことが好ましい。また、蓋材26の摘み部27が設けられた端部とは反対側の端部と、蓋材26の摘み部27とは反対側の端部から幅方向に最初にある開口予定部24aとの距離(L1)は、蓋材26を使用後に後処理テープとして使用するため、5mm以上あることが好ましい。
【0034】
また、蓋材26の摘み部27とは反対側の端部から幅方向に最初にある開口予定部24aと、その次にある開口予定部24bとの間の距離(L2)はL1の2倍以上であることが望ましい。距離が2倍以上あることで、開放された開口部34のうち、例えば開口部34aの一つだけ開くように蓋材26をずらしたときも、蓋材26の端部が開口部34aにかかって、一部を塞いでしまうようなことがない。
【0035】
また、蓋材26の粘着層28が設けられている面と反対側の表面には、各開口予定部24の存在位置を示す表示部を設けることが好ましい(図示しない)。これにより、使用者が蓋材26をずらして別の場所に貼り付ける場合でも、開口部フィルム35の位置を粘着層28の面側から都度確認する必要はなく、粘着層28が設けられている面と反対側の表面から目視により認識することができ、蓋材26の位置合わせが容易になる。表示部は印刷等の公知の方法であれば特に限定されない。例えば、開口部フィルム35と同形の表示部が印刷によって形成されてもよい。
【0036】
<吸収性物品本体>
図1に示すように、吸収性物品本体11は、非肌当接面側から、バックシート12、吸収体(図示しない)、トップシート(図示しない)を有する。
【0037】
(バックシート)
バックシート12は、公知のものを用いることができ、吸収体が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されることが好ましく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成されることが好ましい。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー若しくはスパンボンド/メルトブロー/スパンボンドなどの積層複合不織布、及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0038】
(吸収体)
吸収体としては、公知のものを用いることができる。例えば、フラッフパルプ及び高吸収性ポリマーを含むものが挙げられる。
【0039】
フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0040】
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0041】
吸収体における、フラッフパルプ及び高吸収性ポリマーの形態は、フラッフパルプ中に高吸収性ポリマー粒子を混合して形成したものでもよく、フラッフパルプ間に高吸収性ポリマー粒子を固着した高吸収性ポリマーシートでもよい。また、高吸収性ポリマー粒子の漏洩防止や吸収体の形状の安定化の目的から、吸収体をキャリアシートに包んでもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0042】
(トップシート)
トップシートとしては、公知のものを用いることができる。トップシートは、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた不織布から形成されることが好ましい。トップシート上に流出した体液は、吸収体へと拡散し、吸収体ですばやく吸収される。トップシートは、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドの2層の積層複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成されることが好ましい。また、トップシートには、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工が施されてもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシートには、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0043】
<使用方法>
本発明の吸収性物品10は、以下のように使用される。
吸収性物品10の使用開始時に、まず蓋材26を剥がすことで、開口予定部24から袋本体フィルム21aの一部が、開口誘導線25に沿って粘着層28と共に(
図5に示す、開口部フィルム35として)剥ぎ取られ、開口部34が形成される。そして、
図4及び
図5に示すように、蓋材26を元の位置からずらして貼り付けることで、複数の開口部34のうち、開放された開口部34(
図4及び
図5では開口部34a及び34b)と、塞がれた開口部34(
図4及び
図5では開口部34c及び34d)の両方を形成し、かつ、それらの数を調整することができる。このように、開放された開口部34の数をコントロールすることで、着用者又は介護者が感じる香りの強さを好みの量に調整できる。
【0044】
また、吸収性物品10の使用後、使用済みの吸収性物品10を新しい吸収性物品に交換するときには、蓋材26を完全に剥がすことで、香料が広く揮散し、使用後の吸収性物品10を扱う介護作業での臭気が緩和される。
さらに、
図6に示すように、剥がした蓋材26及び粘着層28は吸収性物品10を丸めた後の後処理テープとして、廃棄するときに再利用することができる。また、このように蓋材26を完全に剥がし、開口部34を全て開いた状態で吸収性物品10を廃棄することで、ごみ箱内でも香料が揮散し続け、ごみ箱内の悪臭も抑制することができる。
【0045】
また、本発明の吸収性物品10は
図7に示す、別の実施形態をとり得る。
図7に示す香料袋20では、袋本体21の内部をヒートシール部23により分割し、それぞれの部屋に香料シート22を分割し、香料シート22a~香料シート22dとして設置している。このように香料シート22を分割することで、より細かく揮発する香りをコントロールすることが可能となる。
なお、香料は通常複数の成分がブレンドされており、各成分でトップノート、ミドルノートおよびベースノートと役割があり、トップノートは揮散しやすく爽やかでフレッシュな印象の香りである。例えば、1番目の開口部34aだけ開放し、使用し続けている途中で香りが弱まったところで、2番目の開口部34bを開放することで新たにトップノートが揮散し、フレッシュさを継続することが可能となる。
図3に示すような1枚の香料シート22では、開口部34の数で香料の強さをコントロールはできるものの、袋本体21の内部で繋がっているため、香料シート22に含まれるトップノートの成分は全体的に弱まり、かつ、開口部34の数を使用中に増やしても香りの強さは回復するが、フレッシュ感までは回復しない。
【0046】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
10 吸収性物品
11 吸収性物品本体
12 バックシート
20 香料袋
21 袋本体
21a、21b 袋本体フィルム
22、22a、22b、22c、22d 香料シート
23 ヒートシール部
24、24a、24b、24c、24d 開口予定部
25 開口誘導線
26 蓋材
27 摘み部
28 粘着層
34、34a、34b、34c、34d 開口部
35 開口部フィルム