(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163931
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221020BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069082
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】中井 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑允
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】環境地図のデータ量を低く抑えることの可能な情報処理システム、情報処理装置および情報処理方法を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る情報処理システムは、地図生成部と、推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図生成部と、
推定された環境特性に応じて、前記地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部と
を備えた情報処理システム。
【請求項2】
前記環境特性は、形状特徴量、画像特徴量および音声特徴量のいずれかを含む
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
環境データを取得するセンサ部と、
前記センサ部で取得した前記環境データに基づいて前記環境特性を推定する推定部と
を更に備えた
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記地図生成部は、
第1データ形式の第1地図データを生成する第1地図生成部と、
前記第1データ形式とは異なる第2データ形式の第2地図データを生成する第2地図生成部と
を備え、
前記設定部は、前記環境特性に応じて、前記第1地図生成部および前記第2地図生成部の少なくとも一方に対して地図生成を指示する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記地図生成部で生成された前記地図データを用いて、行動計画に用いるパラメータを生成するパラメータ生成部を更に備えた
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記パラメータ生成部で生成された前記パラメータを用いて、前記行動計画を作成する行動計画部を更に備えた
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記パラメータ生成部は、前記地図生成部で生成された前記地図データと、前記行動計画部で作成した前記行動計画とを用いて、前記パラメータを生成する
請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部を備えた
情報処理装置。
【請求項9】
推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定することを含む
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外部環境を認識し、認識された環境に応じて自律的に移動するロボットなどの移動体に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体では、外部環境を認識するために各種センサが設けられており、各種センサから得られたセンサデータに基づいて、外部環境に対応する環境地図が構築される。自律的に移動体を移動させるためには、環境地図をリアルタイムに処理することが求められる。従って、環境地図のデータ量を低く抑えることの可能な情報処理システム、情報処理装置および情報処理方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る情報処理システムは、地図生成部と、推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部とを備えている。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る情報処理装置は、推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部を備えている。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る情報処理方法は、推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定することを含む。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る情報処理システム、情報処理装置および情報処理方法では、推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式が設定される。これにより、例えば、外部環境によって相性がある環境地図を用いた場合であっても、環境特性に応じた環境地図を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る情報処理システムの機能ブロック例を表す図である。
【
図2】地図データを択一的に切り替える例を表す図である。
【
図3】地図データを切り替える際に地図データを一時的に複数使用する例を表す図である。
【
図4】地図データ形式と機体種別との相性をまとめた図である。
【
図5】地図データ形式と運用場所との相性をまとめた図である。
【
図6】
図1の情報処理システムにおける地図データの形式の選択手順の一例を表す図である。
【
図7】
図1の情報処理システムの機能ブロックの一変形例を表す図である。
【
図8】
図1、
図5パラメータ生成部の概略構成の一変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(
図1~
図6)
2.変形例(
図7、
図8)
【0011】
<1.実施の形態>
[構成]
本開示の一実施の形態に係る情報処理システム1について説明する。
図1は、情報処理システム1の機能ブロック例を表したものである。情報処理システム1は、例えば、
図1に示したように、センサデバイス部10、パラメータ生成部20、記憶部30、行動計画部40、制御部50およびアクチュエータ60を備えている。
【0012】
センサデバイス部10は、例えば、外部環境を認識し、認識した外部環境に対応する環境データ11Aを取得するセンサ素子11を有している。センサ素子11は、取得した環境データ11Aをパラメータ生成部20に出力する。センサ素子11は、例えば、RGBカメラ、RGB-Dカメラ、深度センサ、赤外線センサ、イベントカメラ、集音センサである。
【0013】
RGBカメラは、例えば、単願の可視光画像センサであり、可視光を受光し電気信号に変換することにより得られるRGB画像データを出力する。RGB-Dカメラは、例えば、双眼の可視光画像センサであり、RGB-D画像データ(RGB画像データと、視差から得られる距離画像データと)を出力する。深度センサは、例えば、ToF(Time of Flight)センサ、または、Lider(Laser Imaging Detection and Ranging)であり、パルス状のレーザー照射に対する散乱光を測定することにより得られる距離画像データを出力する。赤外線センサは、例えば、赤外線を受光し電気信号に変換することにより得られた赤外線画像データを出力する。イベントカメラは、例えば、単願の可視光画像センサであり、フレーム間のRGB画像データの差分(差分画像データ)を出力する。集音センサは、例えば、外部環境から得られた音声データを出力する。センサデバイス部10は、例えば、外部環境から得られた各種データ(例えば、RGB画像データ、RGB-D画像データ、距離画像データ、赤外線画像データ、差分画像データまたは音声データ)を環境データ11Aとして出力する。
【0014】
パラメータ生成部20は、環境特性推定部21、地図選択部22、複数の地図生成部23,24および地
図IF提供部25を有している。
【0015】
環境特性推定部21は、センサデバイス部10から得られた環境データ11Aに基づいて環境特性21Aを推定する。環境特性21Aは、環境データ11Aに基づいて生成された環境特性の推定値であり、例えば、形状特徴量、画像特徴量および音声特徴量のいずれかを含む。形状特徴量とは、例えば、環境データ11Aにおける平面度、点群の分散または点群の平均高度を指している。画像特徴量とは、例えば、環境データ11Aにおけるエッジ数、特徴点数または色相・明度・彩度の平均もしくは分散を指している。音声特徴量とは、例えば、音量を指している。
【0016】
地図選択部22は、推定された環境特性21Aに応じて、複数の地図生成部23,24からなる地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する。地図選択部22は、例えば、推定された環境特性21Aに応じて、地図生成部23,24の少なくとも一方を、使用する地図生成部として選択する。地図選択部22は、例えば、選択した地図生成部に対して地図生成を指示する。地図選択部22は、例えば、複数の地図生成部23,24に対して、使用する地図生成部の識別子ID(identification)の配列、または、複数の地図生成部23,24の使用を示す配列を出力してもよい。地図選択部22は、例えば、使用する地図生成部に対してだけ、地図生成を指示するコマンドや、地図生成の終了を意味するコマンドを出力してもよい。
【0017】
地図生成部23は、環境データ11Aを用いて、第1データ形式の第1地図データ23Aを構築する。地図生成部23は、構築した第1地図データ23Aを、記憶部30から読み出した環境地
図31に重ね合わせることにより、現時刻の環境地
図31を生成する。地図生成部23は、生成した現時刻の環境地
図31を記憶部30に格納する。地図生成部23は、地図選択部22によって選択された場合には、生成した現時刻の環境地
図31の全体もしくは一部を地
図IF提供部25に出力する。
【0018】
地図生成部24は、環境データ11Aを用いて、第1データ形式とは異なる第2データ形式の第2地図データ24Aを構築する。地図生成部24は、構築した第2地図データ24Aを、記憶部30から読み出した環境地
図32に重ね合わせることにより、現時刻の環境地
図32を生成する。地図生成部24は、生成した現時刻の環境地
図32を記憶部30に格納する。地図生成部24は、地図選択部22によって選択された場合には、生成した現時刻の環境地
図32の全体もしくは一部を地
図IF提供部25に出力する。
【0019】
なお、地図生成部23は、地図選択部22によって選択された場合に、第1地図データ23Aを地
図IF提供部25に出力してもよい。さらに、地図生成部24は、地図選択部22によって選択された場合に、第2地図データ24Aを地
図IF提供部25に出力してもよい。これらの場合、記憶部30を省略してもよい。
【0020】
地図生成部23は、環境地
図31のうち、一定期間を経過した過去の地図データを削除してもよい。また、地図生成部24は、環境地
図32のうち、一定期間を経過した過去の地図データを削除してもよい。
【0021】
図2,
図3は、地図生成部23で使用される第1地図データ23Aのデータ形式を「地図データ形式A」とし、地図生成部24で使用される第2地図データ24Aのデータ形式を「地図データ形式B」としたときの地図データの切り替えを概念的に示したものである。
図2,
図3には、センサデバイス部10を搭載した移動体が「地図データ形式A」に適した領域から「地図データ形式B」に適した領域に移動する様子が矢印で示されている。
【0022】
地図選択部22は、例えば、地図生成部23を選択しているときに、推定された環境特性21Aに応じて、地図生成部23から地図生成部24に切り替えるとする。このとき、地図選択部22は、例えば、
図2に示したように、地図データのデータ形式を、「地図データ形式A」から「地図データ形式B」に直ちに切り替えてもよい。地図選択部22は、例えば、
図3に示したように、「地図データ形式A」から「地図データ形式B」に切り替える際に、「地図データ形式A」と「地図データ形式B」とを同時に使用する期間を経て、地図データのデータ形式を、「地図データ形式A」から「地図データ形式B」に切り替えてもよい。
【0023】
地
図IF提供部25は、地図生成部23,24の少なくとも一方から入力された環境地図(以下、「環境地
図25A」と称する。)を用いて、行動計画に用いるパラメータ25Bを生成する。地
図IF提供部25は、例えば、環境地
図25Aと、自己位置および自己速度についての情報とを用いて、衝突の有無もしくは確率についての情報地図を導出し、導出した情報地図をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。
【0024】
地
図IF提供部25は、例えば、環境地
図25Aと、空間のある領域(例えば、自己位置を含む所定の空間領域)についての情報とを用いて、障害物密度についての情報地図を導出し、導出した情報地図をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。地
図IF提供部25は、例えば、生成した障害物密度についての情報地図に基づいて、障害物密度勾配を生成し、生成した障害物密度勾配についての情報をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。地
図IF提供部25は、例えば、生成した障害物密度についての情報地図に基づいて、ある位置からその周囲にある障害物までの距離や、ある位置からの障害物の方向についての情報を生成し、生成した情報をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。
【0025】
記憶部30は、例えば、環境地
図31,32を含むデータベースである。記憶部30は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリ、または、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって構成されている。
【0026】
行動計画部40は、地
図IF提供部25から入力されたパラメータ25Bに基づいて行動計画を作成する。行動計画部40は、例えば、パラメータ25Bに基づいて、自己位置から目標位置までどのような経路を、どのような向きおよび姿勢で移動するかを判断し、その判断の結果を行動計画40Aとして制御部50に出力する。制御部50は、行動計画部40から入力された行動計画40Aに基づいて、アクチュエータ60を駆動する駆動信号50Aを生成し、アクチュエータ60に出力する。アクチュエータ60は、制御部50から入力された駆動信号50Aに基づいて、例えば、移動体のモータなどを駆動する。
【0027】
行動計画部40は、生成した行動計画40Aを地
図IF提供部25に出力してもよい。この場合、地
図IF提供部25は、例えば、環境地
図25Aと、取得した行動計画40Aとを用いて、現在位置から目標位置までの経路における障害物密度についての情報地図を導出し、導出した情報地図をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。以下では、「現在位置から目標位置までの経路」を経路RTと称する。地
図IF提供部25は、例えば、このようにして生成した障害物密度についての情報地図に基づいて、障害物密度勾配を生成し、生成した障害物密度勾配についての情報をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。地
図IF提供部25は、例えば、生成した障害物密度についての情報地図に基づいて、経路RTにある障害物までの距離や、経路RTからの障害物の方向についての情報を生成し、生成した情報をパラメータ25Bとして行動計画部40に出力してもよい。
【0028】
次に、
図4、
図5を参照しつつ、地図生成部23,24で用いられる地図データのデータ形式について説明する。
図4は、地図データ形式と機体種別との相性についてまとめた図である。
図5は、地図データ形式と運用場所との相性についてまとめた図である。地図生成部23,24で用いられる地図データのデータ形式としては、例えば、以下に列挙したデータ形式が挙げられる。
1.Grid Map
2.Voxel Map
3.Octo Map
4.Height Map
5.Hilbert Map
6.MultiPlanar Map
7.Polygon Map
【0029】
Grid Mapは、2次元画像として障害物の有無などを表現する地図データ形式である。移動体が2次元で移動する場合に好適である。Grid Mapでは、路面の凹凸が少ない場合にデータ量が小さくなる。従って、Grid Mapは、データ量が少ない小型車両に適しており、計算量が多くなる点で自動運転車にはあまり適しているとはいえない。なお、Grid Mapは、3次元には未対応であるので、3次元空間を扱うドローンや、多脚のロボット、マニプレータには適用不可である。また、Grid Mapは、床の凹凸が少ない家庭環境や工場・病院には適している。しかし、路面の凹凸が多く計算量が多くなる点で道路にはあまり適していない。また、Grid Mapは凹凸に未対応であることから、森・トンネルにもあまり適しておらず、3次元空間を扱う丘陵・凹凸、物体操作には適用不可である。
【0030】
Voxel Mapは、空間を3次元の直方体の集合として表現する地図データ形式である。水平方向の2軸の解像度が互いに等しく、垂直方向については、水平方向の2軸の解像度とは異なる解像度に設定可能であり、さらに、値域に制限を設けることも可能である。Voxel Mapでは、任意の形状を表現することができるが、データ量が大きい。従って、Voxel Mapは、計算量が多くなる点で小型車両や多脚のロボット、マニプレータにはあまり適しておらず、計算量が膨大となる点で自動運転車やドローンには適用不可である。また、Voxel Mapは、データ量が少ない家庭環境に適しており、計算量が多くなる点で工場・病院、丘陵・凹凸、森・トンネル、物体操作にはあまり適しておらず、計算量が膨大になる点で道路には適用不可である。
【0031】
Octo Mapは、Octreeと呼ばれる木構造を使用する地図データ形式である。建造物などの人工物との相性が良い。環境が直方体の集合形状となっている場合や、地図を作成する直交座標系が環境の平面方向と一致する場合には、データ量が小さくなる。従って、Octo Mapは、データ量が小さくなる小型車両やドローン、多脚のロボット、マニプレータには適しており、計算量が多くなる点で自動運転車にはあまり適していない。また、Octo Mapは、データ量が小さくなる家庭環境、工場・病院、丘陵・凹凸、森・トンネル、物体操作には適しているが、計算量が膨大になる点で道路には適用不可である。
【0032】
Height Mapでは、高度情報を2次元画像として表現する地図データ形式である。凹凸のある路面との相性が良い。凹凸のある路面を表現する場合には、Voxel MapやOcto Mapと比べて、データ量が小さくなる。しかし、路面が水平な平面となっている場合には、Voxel MapやOcto Mapと比べて、データ量が大きくなる。また、空中に飛び出しているものがある場合には、それを適切に表現できない。従って、Height Mapは、データ量が小さくなる小型車両や自動運転車、多脚のロボットには適しているが、ドローンについては環境によっては適さない場合があり、マニプレータについては物体を表現できない点で適用不可である。また、Height Mapは、道路や丘陵・凹凸には適しているが、物体の下が表現できない点で家庭環境、工場・病院、森・トンネルには適用不可であり、物体が表現できない点で物体操作にも適用不可である。
【0033】
Hilbert Mapは、3次元のガウス分布(楕円球)の集合として形状を表現する地図データ形式である。自然物との相性が良い。任意形状を近似して表現することができ、環境が様々な形状や角度で構成されている場合に、Voxel MapやOcto Mapと比べて、データ量が小さくなる。従って、Hilbert Mapは、データ量が小さくなる点で小型車両やドローン、多脚のロボットには適しているが、計算量が多くなる点で自動運転車にはあまり適しておらず、形状精度が劣る点でマニプレータには適用不可である。また、Hilbert Mapは、データ量が小さくなる点で家庭環境、丘陵・凹凸、森・トンネルには適している。しかし、形状精度が劣る点で工場・病院や物体操作にはあまり適しておらず、計算量が多くなる点で道路にもあまり適していない。
【0034】
MultiPlanar Mapは、複数の平面の集合として形状を表現する地図データ形式である。屋内、特に凹凸の少ない建物の中との相性が良い。環境が平面の集合形状で構成されている場合、データ量が小さくなる。従って、MultiPlanar Mapは、データ量が小さくなる点で小型車両には適している。しかし、形状精度が劣る点で自動運転車やドローンにはあまり適しておらず、形状精度が著しく劣る点でマニプレータには適用不可であり、凹凸で構成される環境が想定されやすい多脚のロボットについても適用不可である。また、MultiPlanar Mapは、データ量が小さくなる点で工場・病院には適しているが、形状精度が劣る点で家庭環境や道路にはあまり適しておらず、形状精度が著しく劣る点で丘陵・凹凸、森・トンネル、物体操作には適用不可である。
【0035】
Polygon Mapは、複数の凸多面体の集合(角柱や円柱の集合も含む)として形状を表現する地図データ形式である。自動運転車の道路環境などとの相性が良い。環境が路面の上に構造物が並ぶような場合に、データ量が小さくなる。従って、Polygon Mapは、データ量が小さくなる点で小型車両や自動運転車には適しているが、環境を複数の凸多面体に分割するのが困難なドローンやマニプレータにはあまり適しておらず、形状精度が著しく劣る点でマニプレータには適用不可である。また、Polygon Mapは、データ量が小さくなる点で工場・病院や道路には適している。しかし、環境を複数の凸多面体に分割するのが困難な家庭環境や森・トンネルにはあまり適しておらず、形状精度が劣る点で物体操作にもあまり適しておらず、環境を複数の凸多面体に分割するのが極めて困難な丘陵・凹凸には適用不可である。
【0036】
[動作]
次に、情報処理システム1における地図データの形式の選択について説明する。
【0037】
図6は、情報処理システム1における地図データの形式の選択手順の一例を表したものである。地図選択部22は、まず、環境特性21Aに含まれる平面を探索する(ステップS101)。地図選択部22は、環境特性21Aにおいて平面が検出された場合(ステップS102;Y)、環境特性21Aにおいて、検出した平面よりも上方の点群をクラスタリングする(ステップS103)。その結果、平面近似可能な物体が多数、存在する場合には(ステップS104;Y)、地図選択部22は、MultiPlanar Mapを選択する(ステップS105)。
【0038】
一方、平面近似可能な物体の数が少ない場合には(ステップS104;N)、地図選択部22は、凸形状の物体が多数、存在するか否か判定する。その結果、凸形状の物体が多数、存在する場合には(ステップS106;Y)、地図選択部22は、Polygon Mapを選択する(ステップS107)。凸形状の物体の数が少ない場合には(ステップS106;N)、地図選択部22は、Grid Mapを選択する(ステップS108)。
【0039】
地図選択部22は、環境特性21Aにおいて平面が検出されなかった場合(ステップS102;N)、環境特性21Aを用いて高さのヒストグラムを作成する(ステップS109)。このとき、ヒストグラムのピークが1つの場合には(ステップS110;Y)、地図選択部22は、Height Mapを選択する(ステップS111)。一方、ヒストグラムのピークが複数ある場合には(ステップS110;N)、地図選択部22は、Octo MapまたはHilbert Mapを選択する(ステップS112)。
【0040】
[効果]
次に、情報処理システム1の効果について説明する。
【0041】
本実施の形態では、環境特性推定部21で推定された環境特性21Aに応じて、地図生成部23が生成する地図データのデータ形式が設定される。これにより、例えば、外部環境によって相性がある環境地図を用いた場合であっても、環境特性に応じた環境地図を選択することができる。その結果、環境地図のデータ量を低く抑えることができるので、環境地図をリアルタイムに処理することができ、自律的に移動体を移動させることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、環境特性21Aとして、形状特徴量、画像特徴量および音声特徴量のいずれかが用いられる。これにより、環境に適した地図データのデータ形式を選択することができる。その結果、環境地図のデータ量を低く抑えることができるので、環境地図をリアルタイムに処理することができ、自律的に移動体を移動させることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、センサデバイス部10で取得した環境データ11Aに基づいて環境特性21Aが推定される。これにより、センサデバイス部10が搭載された移動体が、例えば「地図データ形式A」に適した領域から「地図データ形式B」に適した領域に移動した場合であっても、環境に適した地図データのデータ形式をリアルタイムに選択することができる。環境地図のデータ量をリアルタイムに低く抑えることができるので、環境地図をリアルタイムに処理することができ、自律的に移動体を移動させることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、環境特性21Aに応じて、地図生成部23および地図生成部24の少なくとも一方に対して地図生成が指示される。これにより、例えば、外部環境によって相性がある環境地図を用いた場合であっても、環境特性に応じた環境地図を選択することができる。その結果、環境地図のデータ量を低く抑えることができるので、環境地図をリアルタイムに処理することができ、自律的に移動体を移動させることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、地図生成部23で生成された地図データを用いて、行動計画に用いるパラメータ25Bが生成される。これにより、例えば、自己位置から目標位置までどのような経路を、どのような向きおよび姿勢で移動するかを的確に判断することが可能となる。従って、行動計画を的確に生成することが可能となる。
【0046】
また、本実施の形態では、生成されたパラメータ25Bを用いて行動計画が作成される。これにより、行動計画を的確に生成することが可能となる。また、本実施の形態において、地図生成部23で生成された地図データと、行動計画部40で作成した行動計画とを用いて、パラメータ25Bが生成される。これにより、現在位置だけでなく、現在位置から目標位置までの経路において、どの場所で障害物への衝突の危険性があるか判断することができ、障害物を避けた経路の再構築が可能となる。
【0047】
<2.変形例>
[変形例A]
上記実施の形態およびその変形例において、センサデバイス部10が、例えば、
図7に示したように、信号処理部12を有していてもよい。信号処理部12は、センサ素子11から出力された環境データ11Aを処理する。信号処理部12は、例えば、環境データ11Aに含まれるROIを検出し、環境データ11Aのうち、検出したROIに対応する箇所のデータを環境データ12Aとしてパラメータ生成部20に出力する。このように、センサデバイス部10において、データ量をあらかじめ削減することにより、環境地図をリアルタイムに処理することができ、自律的に移動体を移動させることができる。
【0048】
[変形例B]
上記実施の形態およびその変形例において、パラメータ生成部20に含まれる各種機能がハードウェアで実現されていてもよいし、ソフトウェアで実現されていてもよい。例えば、上記実施の形態およびその変形例において、パラメータ生成部20が、例えば、演算部26と、記憶部27とにより構成されていてもよい。この場合、記憶部27には、パラメータ生成部20に含まれる各種機能を実現するパラメータ生成プログラム27aが記憶されている。演算部26は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)を含んで構成される。パラメータ生成プログラム27aが演算部26にロードされることにより、演算部26は、パラメータ生成部20に含まれる各種機能を実行することができる。
【0049】
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等において、センサデバイス部10、パラメータ生成部20、記憶部30、行動計画部40、制御部50およびアクチュエータ60が全て、移動体に搭載されていてもよい。また、例えば、上記実施の形態等において、センサデバイス部10、制御部50およびアクチュエータ60が移動体に搭載され、それ以外の構成(例えば、パラメータ生成部20、記憶部30、行動計画部40)が移動体と通信可能に構成されたサーバ装置に設けられていてもよい。
【0050】
なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0051】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
地図生成部と、
推定された環境特性に応じて、前記地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部と
を備えた情報処理システム。
(2)
前記環境特性は、形状特徴量、画像特徴量および音声特徴量のいずれかを含む
(1)に記載の情報処理システム。
(3)
環境データを取得するセンサ部と、
前記センサ部で取得した前記環境データに基づいて前記環境特性を推定する推定部と
を更に備えた
(1)または(2)に記載の情報処理システム。
(4)
前記地図生成部は、
第1データ形式の第1地図データを生成する第1地図生成部と、
前記第1データ形式とは異なる第2データ形式の第2地図データを生成する第2地図生成部と
を備え、
前記設定部は、前記環境特性に応じて、前記第1地図生成部および前記第2地図生成部の少なくとも一方に対して地図生成を指示する
(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の情報処理システム。
(5)
前記地図生成部で生成された前記地図データを用いて、行動計画に用いるパラメータを生成するパラメータ生成部を更に備えた
(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の情報処理システム。
(6)
前記パラメータ生成部で生成された前記パラメータを用いて、前記行動計画を作成する行動計画部を更に備えた
(5)に記載の情報処理システム。
(7)
前記パラメータ生成部は、前記地図生成部で生成された前記地図データと、前記行動計画部で作成した前記行動計画とを用いて、前記パラメータを生成する
(6)に記載の情報処理システム。
(8)
推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定する設定部を備えた
情報処理装置。
(9)
推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式を設定することを含む
情報処理方法。
【0052】
本開示の一実施の形態に係る情報処理システム、情報処理装置および情報処理方法では、推定された環境特性に応じて、地図生成部が生成する地図データのデータ形式が設定される。これにより、例えば、外部環境によって相性がある環境地図を用いた場合であっても、環境特性に応じた環境地図を選択することができる。その結果、移動体が環境特性の異なる外部環境をまたいで移動する場合であっても環境地図のデータ量を低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1‥情報処理システム、10…センサデバイス部、11…センサ素子、12…信号処理部、20…パラメータ生成部、21…環境特性推定部、22…地図選択部、23,24…地図生成部、25…地
図IF提供部、25A…環境地図、25B…パラメータ、26…演算部、27…記憶部、27a…パラメータ生成プログラム、30…記憶部、31,32…環境地図、40…行動計画部、50…制御部、60…アクチュエータ。