(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163940
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】発電設備増設時の燃料系統増設方法
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
F02M37/00 Z
F02M37/00 321Z
F02M37/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069095
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 大貴
(72)【発明者】
【氏名】日置 一太郎
(72)【発明者】
【氏名】柏木 克巳
(57)【要約】
【課題】燃料タンクの増設を行う場合であっても、工事期間を極力短縮し、非常時により確実に設備を稼働する。
【解決手段】実施形態の発電設備増設時の燃料系統増設方法は、既設発電設備を有する発電システムにおいて、新たな発電設備の増設を行う工程と、増設の対象の発電設備に対して燃料を供給するための第1燃料供給配管を含む第1燃料供給設備を設置する工程と、燃料供給配管の少なくとも一部を利用して、既設発電設備に対して第1燃料供給設備から燃料を供給するための仮設燃料供給配管を設置する工程と、仮設燃料供給配管による前記既設発電設備に対する燃料供給が可能な状態において、既設発電設備に対して第1燃料供給設備から燃料を供給するための第2燃料供給配管を設置する工程と、第2燃料供給配管による既設発電設備に対する燃料供給が可能となった後に、仮設燃料供給配管を撤去する工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設発電設備を有する発電システムにおいて、発電設備増設時の燃料系統増設方法であって、
新たな発電設備の増設を行う工程と、
前記増設の対象の発電設備に対して燃料を供給するための第1燃料供給配管を含む第1燃料供給設備を設置する工程と、
前記第1燃料供給配管の少なくとも一部を利用して、前記既設発電設備に対して前記第1燃料供給設備から燃料を供給するための仮設燃料供給配管を設置する工程と、
前記仮設燃料供給配管による前記既設発電設備に対する燃料供給が可能な状態において、前記既設発電設備に対して前記第1燃料供給設備から燃料を供給するための第2燃料供給配管を設置する工程と、
前記第2燃料供給配管による前記既設発電設備に対する燃料供給が可能となった後に、前記仮設燃料供給配管を撤去する工程と、
を備えた発電設備増設時の燃料系統増設方法。
【請求項2】
前記第1燃料供給設備は、燃料タンク、燃料移送ポンプ及び燃料返油ポンプを含む、
請求項1に記載の発電設備増設時の燃料系統増設方法。
【請求項3】
前記新たな発電設備及び前記既設発電設備は、それぞれ燃料小出槽を有し、
前記燃料移送ポンプは、前記燃料小出槽間で前記燃料の移送が可能とされている、
請求項2に記載の発電設備増設時の燃料系統増設方法。
【請求項4】
前記既設発電設備が複数ある場合に、前記仮設燃料供給配管を設置する工程、前記第2燃料供給配管を設置する工程及び前記仮設燃料供給配管を撤去する工程を複数回繰り返す、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発電設備増設時の燃料系統増設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電設備増設時の燃料系統増設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等の建屋が複数ある非常用発電設備において、各建屋毎に非常用発電装置をそれぞれ設置している場合があるが、建屋を増設する場合には、当該増設対象の建屋に対して、非常用発電設備のさらなる増設が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に近年は、BCP(企業が災害等の緊急事態に陥った際に重要な業務を継続できる方策を用意すること)等の観点から、発電装置の増設のみならず、各発電装置の電量小出槽に燃料を供給する地下タンクの増設が望まれる。
ところで、既存の非常用発電設備は運用中であるため、工事期間中は、停電発生時に非常用発電装置が運転できないリスクがあるため、工事期間を極力短縮することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地下タンクの増設を行う場合であっても、工事期間を極力短縮し、非常時により確実に設備を稼働することができる発電設備増設時の燃料系統増設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の発電設備増設時の燃料系統増設方法は、既設発電設備を有する発電システムにおいて、発電設備増設時の燃料系統増設方法であって、新たな発電設備の増設を行う工程と、増設の対象の発電設備に対して燃料を供給するための第1燃料供給配管を含む第1燃料供給設備を設置する工程と、燃料供給配管の少なくとも一部を利用して、既設発電設備に対して第1燃料供給設備から燃料を供給するための仮設燃料供給配管を設置する工程と、仮設燃料供給配管による前記既設発電設備に対する燃料供給が可能な状態において、前記既設発電設備に対して前記第1燃料供給設備から燃料を供給するための第2燃料供給配管を設置する工程と、第2燃料供給配管による既設発電設備に対する燃料供給が可能となった後に、仮設燃料供給配管を撤去する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の発電設備増設時の燃料系統増設工事の工程説明図である。
【
図2】
図2は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その1)である。
【
図3】
図3は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その2)である。
【
図4】
図4は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その3)である。
【
図5】
図5は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その4)である。
【
図6】
図6は、燃料移送ポンプの制御フローの説明図(その1)である。
【
図7】
図7は、燃料移送ポンプの制御フローの説明図(その2)である。
【
図8】
図8は、燃料返油ポンプの制御フローの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の発電設備増設時の燃料系統増設工事の工程説明図である。
以下においては、既存のA棟の施設及びB棟の施設において、非常用発電装置が既に設置されており、新たにC棟の施設を増設する場合に、C等の施設として新たに非常用発電装置を増設する場合を例として説明するものとする。
【0009】
図2は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その1)である。
図3は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その2)である。
図4は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その3)である。
図5は、C棟設備増設時の非常用発電システムの概要説明図(その4)である。
【0010】
非常用発電システム10において、A棟の施設11Aには、非常用発電設備12Aが設けられている。
同様にB棟の施設11Bには、非常用発電設備12Bが設けられている。
またC棟の施設11Cを増設する際には、新たな非常用発電設備12Cを増設するものとする。
【0011】
非常用発電設備12A~12Cは、理解の容易のため、同一構成とする場合を例として説明するので、非常用発電設備12Aを例として説明する。
非常用発電設備12Aは、発電機21と、燃料小出槽22と、を備えている。
非常用発電設備12Aの発電機21は、図示しないエンジンを有し、停電などの非常時等には、燃料小出槽22から燃料が供給されて、自動あるいは手動により駆動されてA棟の各設備に電力を供給する。
【0012】
この場合において、非常用発電システム10は、後述する燃料移送用ポンプ、燃料返油用ポンプ、電磁弁及び電動弁を連携制御するためのポンプ制御盤15を備えている。
このポンプ制御盤15は、後述する燃料移送用ポンプ、燃料返油用ポンプ、電磁弁、電動弁、レベル計及び各種センサと電気的に接続されて、各種制御を行っている。
【0013】
ところで、燃料小出槽22の燃料量レベルは、本実施形態においては、5段階とされている。
具体的には、当該燃料小出槽22における燃料量がこれを超えないように制御すべき満量レベルであるHHレベル、高燃料量レベルであるHレベル、第1低燃料量レベルであるLレベル、燃料の補充が必要とされ、燃料の供給の制御を行うべきである第2低燃料量レベルであるLLレベル、当該燃料小出槽22における燃料量が空であるとされる第3低燃料レベルであるLLLレベルの5段階とされている。
【0014】
この場合において、高燃料量レベルであるHレベル及び第1低燃料量レベルであるLレベルは、燃料小出槽22に設けられている図示しないレベル計により検出され、ポンプ制御盤15に通知される。
また、満量レベルであるHHレベル、第2低燃料量レベルであるLLレベル及び第3低燃料レベルであるLLLレベルは、非常用発電設備12Aの始動に影響を与えかねないので、ポンプ制御盤15に接続されたセンサにより検出がなされている。
【0015】
次に具体的な燃料系統増設工事の手順について説明する。
まず、
図2に示すように、C棟の施設11Cを増設する際には、非常用発電設備12Cとして、発電機21と、燃料小出槽22と、を増設する(ステップS11)。
【0016】
これと並行して、第1地下タンク31及び第2地下タンク32を増設する(ステップS12)。
このように、地下タンクを第1地下タンク31及び第2地下タンク32二つに設けているのは、地震等の場合に少なくともいずれか一方が稼働可能であれば、確実に非常用発電設備を稼働させることができるからである。
【0017】
この場合において、第1地下タンク31及び第2地下タンク32には、それぞれ格納した燃料の液面位置を検出する図示しない液面計が設けられている。
そして、第1地下タンク31の液面計により、満油レベルFUL1及び減油レベルEMP1が検出される。
【0018】
同様に第2地下タンク32の液面計により、満油レベルFUL2及び減油レベルEMP2が検出される。
【0019】
図3は、増設したC棟設備と地下タンクとの間の燃料配管工事の説明図である。
そして、非常用発電設備12Cの増設並びに第1地下タンク31及び第2地下タンク32の増設が完了すると、第1地下タンク31及び第2地下タンク32のうち、少なくともいずれか一方から非常用発電設備12Cの燃料小出槽22に燃料を送油する送油配管系統41を設ける配管工事を行う(ステップS13)。
【0020】
この場合において、送油配管系統41を構成する各部の工事における順番については、資材の手配、施工者の手配等の観点から適宜変更が可能である。
【0021】
また、非常用発電設備12Cの燃料小出槽22の燃料レベルが満量レベルであるHHレベルを超えないように、燃料小出槽22から第1地下タンク31及び第2地下タンク32のうち、少なくともいずれか一方に燃料を返油する返油配管系統42を設ける配管工事を行う(ステップS13)。
【0022】
この場合においても、返油配管系統42を構成する各部の工事における順番については、資材の手配、施工者の手配等の観点から適宜変更が可能である。
【0023】
まず、送油配管系統41の構成について説明する。
送油配管系統41は、管の一端が第1地下タンク31の減油レベルEMP1に相当する液面レベルよりも低い位置に設定された第1送油管41Aと、一端が第1送油管41Aの他端に接続され、流量制御が可能な第1電動弁41Bと、一端が第1電動弁41Bの他端に接続された第2送油管41Cと、一端が第2送油管41Cの他端に接続された第1燃料移送ポンプ41Dと、第1燃料移送ポンプ41Dと並列に接続され、一端が第2送油管41Cの他端に接続された第2燃料移送ポンプ41Eと、を備えている。
【0024】
さらに送油配管系統41は、管の一端が第2地下タンク32の減油レベルEMP2に相当する液面レベルよりも低い位置に設定された第3送油管41Fと、一端が第3送油管41Fの他端に接続され、流量制御が可能な第2電動弁41Gと、一端が第2電動弁41Gの他端に接続され、他端が第1燃料移送ポンプ41Dの一端及び第2燃料移送ポンプ41Eの一端に接続された第4送油管41Hと、一端が第1燃料移送ポンプ41Dの他端及び第2燃料移送ポンプ41Eの他端に接続され、他端が非常用発電設備12Cの燃料小出槽22の天面から当該燃料小出槽22の満量レベルであるHHレベルより高い位置となるようにされた第5送油管41Iと、を備えている。
【0025】
次に返油配管系統42の構成について説明する。
返油配管系統42は、一端が非常用発電設備12Cの燃料小出槽22の満量レベルであるHHレベルより低い位置、かつ、高燃料量レベルであるHレベルよりも高い位置の側面(周面)に設けられた第1返油管42Aと、一端が第1返油管42Aの他端に接続された第1電磁弁42Bと、一端が第1電磁弁42Bの他端に接続された燃料返油ポンプ42Cと、一端が燃料返油ポンプ42Cの他端に接続された第2返油管42Dと、を備えている。
【0026】
さらに返油配管系統42は、第2返油管42Dの分岐している他端のうち一方の他端に一端が接続された第3電磁弁42Eと、一端が第3電磁弁42Eの他端に接続され、他端が第1地下タンク31の満油レベルFUL1に相当する液面レベルよりも低い位置に設定された第3返油管42Fと、第2返油管42Dの分岐している他端のうち他方の他端に一端が接続された第4電磁弁42Gと、一端が第4電磁弁42Gの他端に接続され、他端が第2地下タンク32の満油レベルFUL2に相当する液面レベルよりも低い位置に設定された第4返油管42Hと、を備えている。
【0027】
次に、後に非常用発電設備12Aの燃料小出槽22に対する送油管系統の第5送油管41Iとなる配管を先行して設けるとともに、非常用発電設備12Cの燃料小出槽22の燃料配管の一部を利用して、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22への送油管系統51Tを仮設する(ステップS14)。
【0028】
仮設の送油管系統51Tは、第4送油管41Hを分岐して設けられた第1仮設送油管52Aと、一端が第1仮設送油管52Aに接続された仮設電動弁52Bと、仮設電動弁52Bの他端に接続された第2仮設送油管52Cと、第2仮設送油管52Cの他端に接続された仮設電磁弁52Dと、を備え、仮設電磁弁52Dの他端は、第5送油管41Iに接続されている。このとき、第5送油管41Iの一端には、閉状態の電磁弁52Eが接続されている。
この場合において、仮設電動弁52Bは、移送切替用電動弁として機能している。
【0029】
そして、第5送油管41Iが設けられ、かつ、送油管系統51Tが仮設された状態であれば、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22に対する非常用発電設備12Cの燃料小出槽22からの送油が行える状態となるので、非常用発電設備12Aに対応する本来の送油配管の設置工事を実施することとなる(ステップS15)。
【0030】
すなわち、先行して行った第5送油管41Iの設置工事を除く、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22に対する送油配管系統41の設置工事を非常用発電設備12Cの燃料小出槽22に対する送油配管系統41の設置工事と同様に行う。
【0031】
さらに、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22に対する返油配管系統42の設置工事を非常用発電設備12Cの燃料小出槽22に対する返油配管系統42の設置工事と同様に行う(ステップS15)。
【0032】
そして、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22に対する送油配管系統41の設置工事及び返油配管系統42の設置工事の完了後、仮設した送油管系統51Tを撤去して(ステップS16)、非常用発電設備12Aの通常運用に移行する。
【0033】
さらに、後に非常用発電設備12Bの燃料小出槽22に対する送油管系統の第5送油管41Iとなる配管を先行して設けるとともに、非常用発電設備12Cの燃料小出槽22の燃料配管の一部を利用して、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22への送油管系統61Tを仮設する(ステップS17)。
【0034】
仮設の送油管系統61Tは、第4送油管41Hを分岐して設けられた第1仮設送油管62Aと、一端が第1仮設送油管62Aに接続された仮設電動弁62Bと、仮設電動弁62Bの他端に接続された第2仮設送油管62Cと、第2仮設送油管52Cの他端に接続された仮設電磁弁62Dと、を備え、仮設電磁弁62Dの他端は、第5送油管41Iに接続されている。このとき、第5送油管41Iの一端には、閉状態の電磁弁62Eが接続されている。
この場合において、仮設電動弁62Bは、移送切替用電動弁として機能している。
【0035】
そして、第5送油管41Iが設けられ、かつ、送油管系統61Tが仮設された状態であれば、非常用発電設備12Bの燃料小出槽22に対する非常用発電設備12Cの燃料小出槽22からの送油が行える状態となるので、非常用発電設備12Bに対応する本来の送油配管の設置工事を実施することとなる(ステップS18)。
【0036】
すなわち、先行して行った第5送油管41Iの設置工事を除く、非常用発電設備12Aの燃料小出槽22に対する送油配管系統41の設置工事を非常用発電設備12Cの燃料小出槽22に対する送油配管系統41の設置工事と同様に行う。
【0037】
さらに、非常用発電設備12Bの燃料小出槽22に対する返油配管系統42の設置工事を非常用発電設備12Cの燃料小出槽22に対する返油配管系統42の設置工事と同様に行う(ステップS18)。
【0038】
そして、非常用発電設備12Bの燃料小出槽22に対する送油配管系統41の設置工事及び返油配管系統42の設置工事の完了後、仮設した送油管系統61Tを撤去して(ステップS19)、非常用発電設備12Bの通常運用に移行する。
【0039】
以上の説明は、既設の燃料小出槽(上述の例の場合、非常用発電設備12A及び非常用発電設備11Bの燃料小出槽22)においてレベル計の交換を行わない場合のものであった。
【0040】
しかしながら、レベル計の交換を行う場合には、燃料小出槽22の燃料を抜く必要がある。このため、燃料が抜かれた状態の燃料小出槽22に対応する発電機21は、稼働することができないため、本実施形態のように、工期を短縮できる手法は、このような場合であっても有効である。
【0041】
さらに燃料が抜かれた状態の燃料小出槽22に対応する発電機21に直接接続する仮設配管を設け、当該仮設配管により直接燃料供給可能な状態とすることで、既設の非常用発電設備12A、11Bの発電機21を稼働することが可能となり、既設の非常用発電設備12A、11Bの稼働不能機間を短縮することができる。
【0042】
このような状況が想定される場合であって、増設した燃料小出槽22と燃料が抜かれた状態の燃料小出槽22に対応する発電機21との間の燃料移送距離が長いと想定される場合には、圧力損失を考慮して、第1燃料移送ポンプ41D及び第2燃料移送ポンプ41Eの容量を大きくするか、あるいは、第1燃料移送ポンプ41D及び第2燃料移送ポンプ41Eの同時駆動とすることにより対応が可能である。
【0043】
以下、通常運用時の概要動作を説明する。
図6は、燃料移送ポンプの制御フローの説明図(その1)である。
図7は、燃料移送ポンプの制御フローの説明図(その2)である。
非常用発電設備12A~12Cのそれぞれについて、燃料移送ポンプは、第1燃料移送ポンプ41D及び第2燃料移送ポンプ41Eの二つが設けられているが、これは、非常用発電設備12A~12Cの冗長性を確保するためであり、通常時には、自動選択により第1燃料移送ポンプ41Dあるいは第2燃料移送ポンプ41Eのいずれか一方が稼働(運転)することとなっている。
【0044】
この場合において、第1燃料移送ポンプ41Dは、第1燃料移送ポンプ41Dに対応する配線用遮断器(MCCB)がトリップ状態となるか、対応するサーマルリレー(THR)が動作状態となるか、移送切替用電動弁としての仮設電動弁52Bが故障しているか、のいずれかの状態で故障状態と判定される。
【0045】
同様に第2燃料移送ポンプ41Eは、第2燃料移送ポンプ41Eに対応する配線用遮断器(MCCB)がトリップ状態となるか、対応するサーマルリレー(THR)が動作状態となるか、移送切替用電動弁としての仮設電動弁52Bが故障しているか、のいずれかの状態で故障状態と判定される。
【0046】
また、第1燃料移送ポンプ41Dの動作モードは、手動による運転状態、手動による停止状態、あるいは、自動運転状態のいずれかである。
【0047】
そして、第1燃料移送ポンプ41Dは、前回運転したのが、第2燃料移送ポンプ41Eである場合、あるいは、現在、第2燃料移送ポンプ41Eが故障状態である場合には、対応する燃料小出槽22の油面低下により稼働状態(オン状態)となり、対応する燃料小出槽22の油面上昇(信号SD)及び第1地下燃料タンク25及び第2地下燃料タンク26の油面低下により停止状態(オフ状態)となるように第1燃料移送ポンプ運転指令が出力されるようになっている。
【0048】
一方、第2燃料移送ポンプ41Eの動作モードも、手動による運転状態、手動による停止状態、あるいは、自動運転状態のいずれかである。
【0049】
そして、第2燃料移送ポンプ41Eは、前回運転したのが、第1燃料移送ポンプ41Dである場合、あるいは、現在、第1燃料移送ポンプ41Dが故障状態である場合には、対応する燃料小出槽22の油面低下により稼働状態(オン状態)となり、対応する燃料小出槽22の油面上昇及び第1地下燃料タンク25及び第2地下燃料タンク26の油面低下(信号SB)により停止状態(オフ状態)となるように第2燃料移送ポンプ運転指令が出力されるようになっている。
【0050】
図8は、燃料返油ポンプの制御フローの説明図である。
非常用発電設備12A~12Cのそれぞれについて、燃料返油ポンプ42Cは、燃料返油ポンプ42Cに対応する配線用遮断器(MCCB)がトリップ状態となるか、対応するサーマルリレー(THR)が動作状態となるか、移送切替用電動弁としての仮設電動弁52Bが故障しているか、のいずれかの状態で故障状態と判定される。
【0051】
また、燃料返油ポンプ42Cの動作モードは、手動による運転状態、手動による停止状態、あるいは、自動運転状態のいずれかである。
【0052】
そして、燃料返油ポンプ42Cは、対応する燃料小出槽22の油面上昇により稼働状態(オン状態)となり、対応する燃料小出槽22の油面低下及び第1地下燃料タンク25及び第2地下燃料タンク26の油面上昇により停止状態(オフ状態)となるように第1燃料移送ポンプ運転指令が出力されるようになっている。
【0053】
一方、第2燃料移送ポンプ41Eの動作モードも、手動による運転状態、手動による停止状態、あるいは、自動運転状態のいずれかである。
【0054】
そして、第2燃料移送ポンプ41Eは、前回運転したのが、第1燃料移送ポンプ41Dである場合、あるいは、現在、第1燃料移送ポンプ41Dが故障状態である場合には、対応する燃料小出槽22の油面低下により稼働状態(オン状態)となり、対応する燃料小出槽22の油面上昇及び第1地下燃料タンク25及び第2地下燃料タンク26の油面低下(信号SB)により停止状態(オフ状態)となるように第2燃料移送ポンプ運転指令が出力されるようになっている。
【0055】
この場合において、第1地下燃料タンク25と第2地下燃料タンク26とを切り替える移送切替用電動弁としての非常用発電設備12A~12Cの第1電動弁41Bと、第2電動弁41Gとの切替は、第1燃料移送ポンプ41Dに対応する第1燃料移送ポンプ運転指令あるいは第2燃料移送ポンプ41Eに対応する第2燃料移送ポンプ運転指令及び第1電動弁41Bあるいは第2電動弁41Gの開指令に基づいて、リミットスイッチが動作して、対応する第1電動弁41Bあるいは第2電動弁41Gが開状態となる。
【0056】
また、第1地下燃料タンク25及び第2地下燃料タンク26の切替は、いずれかの地下燃料タンクの油面低下あるいは第1電動弁41B又は第2電動弁41Gの故障検出で行われる。
【0057】
以上の説明のように、本実施形態によれば、非常用発電設備の増設時に、工期を可能な限り短縮し、既設非常用発電設備における発電機の運転不能時間を短縮することができる。
【0058】
また、既設燃料小出槽を流用する場合に、既設非常用発電設備によってはレベル計の取り替えを行うために既設燃料小出槽の油を抜く必要があり、既設非常用発電設備が使用できなくなってしまう場合であっても、その期間をより短くすることが可能となる。
さらにこの場合に、直接的に仮設配管を介して既設非常用発電設備の発電機に燃料を供給することで、工事期間中の仮設配管設置期間中であっても、非常用発電設備を稼働させることが可能となる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 非常用発電システム
11A~11C 施設
12A~12C 非常用発電設備
15 ポンプ制御盤
21 発電機
22 燃料小出槽
31 第1地下タンク
32 第2地下タンク
41 送油配管系統
41A 第1送油管
41B 第1電動弁
41C 第2送油管
41D 第1燃料移送ポンプ
41E 第2燃料移送ポンプ
41F 第3送油管
41G 第2電動弁
41H 第4送油管
41I 第5送油管
42 返油配管系統
42A 第1返油管
42B 第1電磁弁
42C 燃料返油ポンプ
42D 第2返油管
42E 第3電磁弁
42F 第3返油管
42G 第4電磁弁
42H 第4返油管
51T 送油管系統
52A 第1仮設送油管
52B 仮設電動弁
52C 第2仮設送油管
52D 仮設電磁弁
52E 電磁弁
61T 送油管系統
62A 第1仮設送油管
62B 仮設電動弁
62C 第2仮設送油管
62D 仮設電磁弁
62E 電磁弁