(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163941
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20221020BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221020BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221020BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20221020BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20221020BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20221020BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B60C11/00 F
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/548
C08L15/00
C08L101/02
B60C1/00 A
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069096
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松井 智哉
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
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3D131BC19
4J002AA03Z
4J002AA06Z
4J002AC01W
4J002AC02X
4J002AC03X
4J002AC06W
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4J002EX088
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4J002FD02Z
4J002FD140
4J002FD148
4J002FD150
4J002FD158
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた高速走行時のウェットグリップ性能を有するタイヤを提供する。
【解決手段】トレッドを備えるタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、並びにスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの合計含有量が90質量%以上であるゴム成分と、シリカとを含み、かつ0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下であるゴム組成物からなる層を備え、前記トレッドの最大厚みが10.0mm以下、タイヤ外径が700mm以下であるタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えるタイヤであって、
前記トレッドは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、並びにスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの合計含有量が90質量%以上であるゴム成分と、シリカとを含み、かつ0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下であるゴム組成物からなる層を備え、
前記トレッドの最大厚みが10.0mm以下、タイヤ外径が700mm以下であるタイヤ。
【請求項2】
前記トレッドは、シリカと反応可能な官能基を有する変性ジエン系ゴム及び/又は官能化樹脂を含む請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドは、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が80質量部以下である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドは、メルカプト系シランカップリング剤を含む請求項1~3のいずれか記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴム、前記ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムの含有量が、下記式を満たす請求項1~4のいずれか記載のタイヤ。
〔イソプレン系ゴムの含有量/(ブタジエンゴムの含有量+スチレンブタジエンゴムの含有量)〕≦0.50
【請求項6】
前記トレッドは、前記イソプレン系ゴム、前記ブタジエンゴム、及び前記スチレンブタジエンゴムを含む請求項1~5のいずれか記載のタイヤ。
【請求項7】
前記官能化樹脂は、酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する官能化樹脂を含む請求項2~6のいずれか記載のタイヤ。
【請求項8】
前記アセトン抽出分量及び前記トレッドの最大厚みが下記式を満たす請求項1~7のいずれか記載のタイヤ。
アセトン抽出分量×トレッドの最大厚み<80
【請求項9】
前記アセトン抽出分量及び前記タイヤ外径が下記式を満たす請求項1~8のいずれか記載のタイヤ。
アセトン抽出分量×タイヤ外径<6500
【請求項10】
前記0℃におけるtanδ及び前記トレッドの最大厚みが下記式を満たす請求項1~9のいずれか記載のタイヤ。
(0℃におけるtanδ/トレッドの最大厚み)×1000>60.0
【請求項11】
前記0℃におけるtanδ及び前記タイヤ外径が下記式を満たす請求項1~10のいずれか記載のタイヤ。
(0℃におけるtanδ/タイヤ外径)×1000>0.70
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのウェットグリップ性能を改善する技術として、トレッドゴム組成物にシリカを配合する方法、低軟化点樹脂や液状ポリマー等の配合量を増量する方法、耐寒性可塑剤を配合する方法等が検討されている。しかしながら、近年では、特に高速走行時のウェットグリップ性能の改善も求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、優れた高速走行時のウェットグリップ性能を有するタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、トレッドを備えるタイヤであって、
前記トレッドは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、並びにスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの合計含有量が90質量%以上であるゴム成分と、シリカとを含み、かつ0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下であるゴム組成物からなる層を備え、
前記トレッドの最大厚みが10.0mm以下、タイヤ外径が700mm以下であるタイヤに関する。
【0005】
前記トレッドは、シリカと反応可能な官能基を有する変性ジエン系ゴム及び/又は官能化樹脂を含むことが好ましい。
【0006】
前記トレッドは、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が80質量部以下であることが好ましい。
【0007】
前記トレッドは、メルカプト系シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0008】
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴム、前記ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムの含有量が、下記式を満たすことが好ましい。
〔イソプレン系ゴムの含有量/(ブタジエンゴムの含有量+スチレンブタジエンゴムの含有量)〕≦0.50
【0009】
前記トレッドは、前記イソプレン系ゴム、前記ブタジエンゴム、及び前記スチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0010】
前記官能化樹脂は、酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する官能化樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
前記タイヤは、前記アセトン抽出分量及び前記トレッドの最大厚みが下記式を満たすことが好ましい。
アセトン抽出分量×トレッドの最大厚み<80
【0012】
前記タイヤは、前記アセトン抽出分量及び前記タイヤ外径が下記式を満たすことが好ましい。
アセトン抽出分量×タイヤ外径<6500
【0013】
前記タイヤは、前記0℃におけるtanδ及び前記トレッドの最大厚みが下記式を満たすことが好ましい。
(0℃におけるtanδ/トレッドの最大厚み)×1000>60.0
【0014】
前記タイヤは、前記0℃におけるtanδ及び前記タイヤ外径が下記式を満たすことが好ましい。
(0℃におけるtanδ/タイヤ外径)×1000>0.70
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トレッドを備えるタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、並びにスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの合計含有量が90質量%以上であるゴム成分と、シリカとを含み、かつ0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下であるゴム組成物からなる層を備え、前記トレッドの最大厚みが10.0mm以下、タイヤ外径が700mm以下であるタイヤであるので、優れた高速走行時のウェットグリップ性能を有する空気入りタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【
図2】
図1のタイヤ2のトレッド4の近辺が示された拡大断面図である。
【
図3】フェノール官能化によるエンドキャップシラン含有樹脂の合成経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、トレッドを備えるタイヤであって、前記トレッドが、所定のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、低スチレン量及び低ビニル量のスチレンブタジエンゴム(SBR)の合計含有量を有するゴム成分と、シリカとを含み、かつ所定の0℃におけるtanδ、アセトン抽出分量、密度を有するゴム組成物からなる層を備え、更に所定のトレッドの最大厚み、タイヤ外径を持つタイヤである。前記タイヤは、高速走行時のウェットグリップ性能が優れている。
【0018】
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
発熱性低減の目的でシリカを用いる技術が提案されているが、シリカは親水性である為、可塑剤などのアセトン抽出成分と反発し、走行中に可塑剤がトレッド表面から抜け出し、ゴム表面が硬化してしまう。その為、ウェットグリップ性能の低下が懸念され、特に、高速走行時は遠心力も大きくなるので、より顕著に可塑剤の染み出しが生じ、ウェットグリップ性能が低下すると考えられる。そこで、ガラス転移温度(Tg)が低いイソプレン系ゴム、BR、低スチレン量及び低ビニル量のSBRをゴム成分の主成分とすることで、ゴムマトリクスのガラス転移温度を低くし、高周波数(高速)における入力でも柔らかくグリップしやすい状態とさせることができる。また、これらの3成分を用いた場合、各ポリマー相の界面で非相溶・部分相溶となり、界面が多く生じるので、特に、アセトン抽出成分が動きにくくなると考えられる。また、0℃におけるtanδを所定以上とすることで、良好なウェットグリップ性能が得られると同時に、アセトン抽出成分量を所定以下と少なくすることで、可塑剤が染み出しにくくなる為、特に、高速走行時でのウェットグリップ性能の低下を防止できると考えられる。更に、トレッドの最大厚み、密度、タイヤ外径を小さくすることで、走行時の遠心力が大きくなるのを防ぐと同時に、接地形状が不安定化しにくくなり、高速走行時のウェットグリップ性能の低下を抑制できると考えられる。以上により、前記タイヤにより、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が付与されると推察される。
【0019】
このように、所定のイソプレン系ゴム、BR、低スチレン量及び低ビニル量のSBRの合計含有量を有するゴム成分と、シリカとを含むゴム組成物からなる層を備えたトレッドを備えたタイヤにおいて、「0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下」、「トレッドの最大厚みが10.0mm以下」、「タイヤ外径が700mm以下」を満たす構成にすることにより、優れた高速走行時のウェットグリップ性能を付与するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、「0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下」、「トレッドの最大厚みが10.0mm以下」、「タイヤ外径が700mm以下」のパラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、優れた高速走行時のウェットグリップ性能を付与することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
【0020】
以下、適宜図面を参照しつつ、好ましい実施形態の一例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本例に制限されるものではない。
【0021】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0022】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のウィング8、一対のクリンチ10、一対のビード12、カーカス14、ベルト16、バンド18、インナーライナー20及び一対のチェーファー22を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0023】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を形成する。トレッド4には、溝26が刻まれている。この溝26により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層28とキャップ層30とを有している。キャップ層30は、ベース層28の半径方向外側に位置している。キャップ層30は、ベース層28に積層されている。
【0024】
なお、
図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、単層構造トレッド4、3層以上の構造を有するトレッド4でもよい。
【0025】
トレッド4を構成するゴム層(加硫後のゴム組成物の層)の少なくとも1つは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、並びにスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの合計含有量が90質量%以上であるゴム成分と、シリカとを含み、かつ0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下である。単層構造トレッドの場合は単層構造トレッド、2層構造トレッドの場合は2層構造トレッドのキャップ層、3層以上の構造を有するトレッドの場合はキャップ層(最表面層)の0℃におけるtanδが0.50以上、アセトン抽出分量が10.0質量%以下、密度が1.30g/cm3以下であることが望ましい。
【0026】
前記ゴム層の少なくとも1つは、0℃におけるtanδ(加硫後)が0.60以上が好ましく、0.70以上が更に好ましく、0.80以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、1.50以下が好ましく、1.30以下がより好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、0℃におけるtanδは、温度0℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した損失正接である。
【0027】
0℃におけるtanδは、例えば、充填剤量、SBR量、カーボンブラック量の調整、液状樹脂や液状ポリマーの配合、シリカや水酸化アルミニウムの配合、小粒径の充填剤の配合、充填剤の小粒径化などにより調整可能である。具体的には、充填剤量、SBR量、カーボンブラック量を増加したり、液状樹脂、液状ポリマー、シリカや水酸化アルミニウムを配合したり、小粒径の充填剤を配合したりすると、0℃におけるtanδが増加する傾向がある。
【0028】
前記ゴム層の少なくとも1つは、アセトン抽出分量(AE、加硫後)が9.8質量%以下が好ましく、9.6質量%以下がより好ましく、9.5質量%以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、5.0質量%以上が好ましく、6.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、アセトン抽出量(AE)は、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により測定される。
【0029】
アセトン抽出分量は、例えば、ゴム組成物中のオイル等の液体可塑剤量、老化防止剤量、加工錠剤量、他成分の比率により調整可能である。具体的には、液体可塑剤量、老化防止剤、加工助剤を減量したり、他成分(カーボンブラック、シリカなどの充填剤など)を増量すると、アセトン抽出分量が減少する傾向がある。
【0030】
前記ゴム層の少なくとも1つは、密度が1.26g/cm3以下が好ましく、1.24g/cm3以下がより好ましく、1.22g/cm3以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、1.00g/cm3以上が好ましく、1.05g/cm3以上がより好ましく、1.10g/cm3以上が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、密度は、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出される。
【0031】
密度は、例えば、ゴム組成物中の材料(ゴム成分、フィラーなど)により調整可能である。具体的には、比重の小さい材料を用いたり、可塑剤量を増やすことで、密度が減少する傾向がある。
【0032】
トレッド4を構成するゴム層の少なくとも1つは、ゴム成分及びシリカを含むトレッド用ゴム組成物で構成される。単層構造トレッドの場合は単層構造トレッド、2層構造トレッドの場合は2層構造トレッドのキャップ層、3層以上の構造を有するトレッドの場合はキャップ層(最表面層)が、該トレッド用ゴム組成物で構成されることが好適である。
【0033】
トレッド用ゴム組成物のゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記ジエン系ゴムは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、シリカと反応可能な官能基を有する変性ジエン系ゴムが好ましい。
【0035】
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
シリカと反応可能な官能基を有する変性ジエン系ゴムによりポリマーとシリカのネットワークの数が増え、可塑剤がネットワーク内に入る確率が上がると考えられる。よって、可塑剤が染み出しにくくなる為、高速走行時においてウェットグリップ性能が低下することが防止され、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が付与されると推察される。
【0036】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0037】
トレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムと、BRと、スチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のSBRとの合計含有量が90質量%以上である。該合計含有量は、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0038】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量(質量%)、ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量(質量%)と、ゴム成分100質量%中のスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの含有量(質量%)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔イソプレン系ゴムの含有量/(ブタジエンゴムの含有量+スチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの含有量)〕≦0.80
【0039】
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
イソプレン系ゴムはビニル基を含まないため、シランカップリング剤と反応し難く、シリカとネットワークを作り難いので、可塑剤をゴム材料内に閉じ込めることが難しいと考えられる。そこで、前記式を満たすことで、イソプレン系ゴムの含有率が低くなり、可塑剤が染み出しにくくなる為、高速走行時においてウェットグリップ性能が低下することが防止され、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が付与されると推察される。
【0040】
〔イソプレン系ゴムの含有量/(ブタジエンゴムの含有量+スチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のスチレンブタジエンゴムの含有量)〕は、0.70以下が好ましく、0.64以下がより好ましく、0.50以下が更に好ましく、0.30以下が特に好ましい。下限は、0.10以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.20以上が更に好ましい。
【0041】
トレッド用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、BR及びスチレン含有量30質量%以下及びビニル含有量30質量%以下のSBRの合計含有量が所定以上のものであるが、効果がより良好に得られる観点から、これらの3種のゴム成分を含むものが好適である。
【0042】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
トレッド用ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
【0045】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0046】
トレッド用ゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0047】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0048】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
SBRのスチレン含有量は、30質量%以下、好ましくは28質量%以下、より好ましくは26質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは12質量%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含有量は、1H-NMR測定により算出される。
【0050】
SBRのビニル含有量は、30質量%以下、好ましくは28質量%以下、より好ましくは26質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは12質量%以上である。
なお、ビニル含有量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0051】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0052】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0053】
トレッド用ゴム組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
トレッド用ゴム組成物に使用されるシリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0055】
トレッド用ゴム組成物では、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
特にシリカ量を80質量部以下のような比較的少量にした場合、効果がより良好に得られるが、このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
シリカが多すぎると発熱性が向上してしまい、親水性も増すため、アセトン抽出成分が抜けやすくなるが、80質量部以下とすることで、可塑剤が染み出しにくくなると考えられる。よって、可塑剤が染み出しにくくなる為、高速走行時においてウェットグリップ性能が低下することが防止され、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が付与されると推察される。
【0057】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上である。また、シリカのN2SAは、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは220m2/g以下、更に好ましくは200m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0058】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0059】
トレッド用ゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、スルフィド系、メルカプト系が好ましく、メルカプト系がより好ましい。
【0060】
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
メルカプト系シランカップリング剤を用いてシリカとの反応性を高めることで、シリカの分散を高め、より低発熱化が進むと考えられる。また、シリカの疎水化が進むため、アセトン抽出成分の可塑剤が反発して抜け出すのを防止できる。よって、可塑剤が染み出しにくくなる為、高速走行時においてウェットグリップ性能が低下することが防止され、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が付与されると推察される。
【0061】
メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有する化合物の他、保護基によってメルカプト基が保護された構造の化合物(例えば、下記式(S1)で表される化合物)も使用可能である。
【0062】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
【化1】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007及び-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される一価の基(R
1006、R
1007及びR
1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化2】
【化3】
(式中、vは0以上の整数、wは1以上の整数である。R
11は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R
12は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R
11とR
12とで環構造を形成してもよい。)
【0063】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0064】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0065】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0066】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0067】
式(I)、(II)におけるR11について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
【0068】
式(I)、(II)におけるR12について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
【0069】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(v)と結合単位Bの繰り返し数(w)の合計の繰り返し数(v+w)は、3~300の範囲が好ましい。
【0070】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0071】
トレッド用ゴム組成物では、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0072】
トレッド用ゴム組成物に使用可能なシリカ以外のフィラーとしては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどのゴム分野で公知のものが挙げられる。なかでも、カーボンブラックが好ましい。
【0073】
トレッド用ゴム組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられるが、特に限定されない。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0074】
トレッド用ゴム組成物では、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0075】
トレッド用ゴム組成物では、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは70m2/g以上、更に好ましくは85m2/g以上である。カーボンブラックのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは150m2/g以下、より好ましくは130m2/g以下、更に好ましくは120m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0076】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、可塑剤として、官能化樹脂を含むことが望ましい。前記官能化樹脂としては、例えば、酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する官能化樹脂が好適である。
【0077】
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
官能化樹脂を配合すると、該官能化樹脂とシリカとが結合し、それにより、親水性のシリカからアセトン抽出成分の可塑剤が反発して抜け出すという現象が防止されると考えられる。よって、可塑剤が染み出しにくくなる為、高速走行時においてウェットグリップ性能が低下することが防止され、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が付与されると推察される。
【0078】
前記酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む官能基としては、前述の官能基のうち、酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものや、該元素を含む他の公知の官能基などが挙げられる。なかでも、-Si(R)3(Rは、同一又は異なって、水素、有機元素含有基、無機元素含有基、有機元素及び無機元素含有基など)で示される基が好ましい。
【0079】
前記官能化樹脂は、公知の方法により製造可能であり、例えば、スラリー法、メタセシス法などにより調製できる。具体的には、例えば、該官能化樹脂のポリマー骨格となるポリマーに、酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む官能基の導入が可能な官能化合物を公知の方法で反応させることで製造できる。
【0080】
前記ポリマー骨格となるポリマーは、骨格となりうるものを特に限定されず、使用可能であり、例えば、液状樹脂(25℃で液状のポリマー)、固体樹脂(25℃で固体状態のポリマー)等が挙げられる。なかでも、固体樹脂が好ましい。これらのポリマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記液状樹脂としては、特に制限されないが、例えば、液状の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、液状の芳香族ビニル重合体が好ましい。
【0082】
液状芳香族ビニル重合体としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂などがあり、具体的には、スチレンの単独重合体、α-メチルスチレンの単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体などの液状樹脂が挙げられる。
【0083】
液状クマロンインデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂があり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれていてもよいモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0084】
液状インデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む液状樹脂が挙げられる。
【0085】
液状テルペン樹脂としては、αピネン、βピネン、カンフェン、ジペテンなどのテルペン化合物を重合して得られる樹脂や、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料として得られる樹脂であるテルペンフェノールに代表される液状テルペン系樹脂が挙げられる。
【0086】
液状ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、または、これらの水素添加物に代表される液状ロジン系樹脂が挙げられる。
【0087】
上記固体樹脂(25℃で固体状の樹脂)としては特に限定されないが、例えば、固体状のスチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、固体状のスチレン系樹脂が好ましい。
【0088】
固体状のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いた固体状ポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0089】
固体状のクマロンインデン樹脂としては、前述の液状状態のクマロンインデン樹脂と同様の構成単位を有する固体樹脂が挙げられる。
【0090】
固体状のテルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。固体状のポリテルペンとしては、テルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂等の固体樹脂も挙げられる。固体状のテルペンフェノールとしては、テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられ、具体的には、テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた固体樹脂が挙げられる。固体状の芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられる。
【0091】
固体状のp-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p-t-ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる固体樹脂が挙げられる。
【0092】
固体状のアクリル系樹脂としては特に限定されず、無溶剤型アクリル系固体樹脂などが挙げられる。固体状のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。また、固体状のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。固体状のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂でも、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂でも良い。また、固体状のアクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
【0093】
ポリマー骨格を構成する固体樹脂の軟化点は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましく、96℃以下が特に好ましい。下限は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましく、85℃以上が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、固体樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0094】
前記官能化合物は、酸素、珪素及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む官能基の導入が可能な任意の化合物を使用可能であるが、なかでも、珪素を含む官能基の導入が可能な化合物が好ましい。
【0095】
前記官能化合物の好適例として、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0096】
【化4】
(式中、pは、1~1000の整数を表す。R
11及びR
12は、それぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。R
13は、それぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。)
【0097】
pは、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましく、また、800以下が好ましく、700以下がより好ましく、600以下が更に好ましい。
【0098】
R11、R12、R13の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基は、炭素数が1~20が好ましい。該炭素数は、2以上がより好ましく、また、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。該置換基を有していてもよい1価の炭化水素基としては、置換若しくは非置換のアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、フルオロアルカン基などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、1-メチルエテニル基などが挙げられる。
【0099】
前記官能化合物の好適例として、下記式で示される化合物も挙げられる。
【化5】
(式中、qは、2~40の整数を表す。R
21は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。)
【0100】
qは、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、また、38以下が好ましく、36以下がより好ましく、35以下が更に好ましい。
【0101】
R21の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基は、炭素数が1~20が好ましい。該炭素数は、2以上がより好ましく、また、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。R21の具体例としては、前記R11、R12、R13の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基と同様のもの等が挙げられる。
【0102】
前記官能化合物の好適例として、下記式で示される化合物も挙げられる。
【0103】
【化6】
(式中、Xは、同一若しくは異なって、窒素、酸素又は硫黄原子を表す。
Yは、同一若しくは異なって、ホウ素、窒素、酸素、珪素又は硫黄原子を表す。
R
31は、それぞれ同一若しくは異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。
R
32は、それぞれ同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
R
33は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、スルホネート(sulfonate)基、又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。
R
31、R
31及びR
33は、互いに単環又は多核環を形成していてもよい。
R
34は、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。
a、b及びcは、同一又は異なって、整数を表し、a+b+c=3である。
X及びYは、それぞれ同一若しくは異なって、Yがホウ素原子である場合はr=2、X又はYが窒素原子である場合はr=2、X又はYが酸素原子又は硫黄原子である場合はr=1、Yが珪素原子である場合はr=3である。)
【0104】
Xは、同一若しくは異なって、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子であるが、なかでも、酸素原子が好ましい。
【0105】
Yは、同一若しくは異なって、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、又は硫黄原子であるが、なかでも、酸素原子が好ましい。
【0106】
R31、R33、R34の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基は、炭素数が1~20が好ましい。該炭素数は、2以上がより好ましく、また、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。R31、R33、R34の具体例としては、前記R11、R12、R13の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基と同様のもの等が挙げられる。
【0107】
R32の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基は、炭素数が1~20が好ましい。該炭素数は、2以上がより好ましく、また、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。該置換基を有していてもよい2価の炭化水素基としては、置換若しくは非置換のアルキレン基、アリレーン基などが挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などが挙げられる。アリレーン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。
【0108】
a、b及びcは、同一又は異なって、0~3の整数を表し、a+b+c=3である。
【0109】
前記官能化合物の好適例として、下記式で示される化合物も挙げられる。
【0110】
【化7】
(式中、Xは、同一若しくは異なって、窒素、酸素、又は硫黄原子を表す。
Yは、同一若しくは異なって、ホウ素、窒素、酸素、珪素、又は硫黄原子を表す。
R
31は、それぞれ同一若しくは異なって、水素原子、又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。
R
32は、それぞれ同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
R
33は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、スルホネート(sulfonate)基、又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。
R
31、R
31及びR
33は、互いに単環又は多核環を形成していてもよい。
R
35は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
a、b及びcは、同一又は異なって、整数を表し、a+b+c=3である。
d、e及びfは、同一又は異なって、整数を表し、d+e+f=3である。
X及びYは、それぞれ同一若しくは異なって、Yがホウ素原子である場合はr=2、X又はYが窒素原子である場合はr=2、X又はYが酸素原子又は硫黄原子である場合はr=1、Yが珪素原子である場合はr=3である。)
【0111】
Xは、同一若しくは異なって、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子であるが、なかでも、酸素原子が好ましい。
【0112】
Yは、同一若しくは異なって、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、又は硫黄原子であるが、なかでも、酸素原子が好ましい。
【0113】
R31、R33の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基は、炭素数が1~20が好ましい。該炭素数は、2以上がより好ましく、また、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。R31、R33の具体例としては、前記R11、R12、R13の置換基を有していてもよい1価の炭化水素基と同様のもの等が挙げられる。
【0114】
R32、R35の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基は、炭素数が1~20が好ましい。該炭素数は、2以上がより好ましく、また、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。R32、R35の具体例としては、前記R32の置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様のもの等が挙げられる。
【0115】
a、b及びcは、同一又は異なって、0~3の整数を表し、a+b+c=3である。
d、e及びfは、同一又は異なって、0~3の整数を表し、d+e+f=3である。
【0116】
前記官能化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルメチルジメトキシシラン、ヘキセニルジメチルメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、ヘキセニルメチルジエトキシシラン、ヘキセニルジメチルエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクテニルメチルジメトキシシラン、オクテニルジメチルメトキシシラン、オクテニルトリエトキシシラン、オクテニルメチルジエトキシシラン、オクテニルジメチルエトキシシラン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、ノルボルネニルエチルメチルジメトキシシラン、ノルボルネニルエチルジメチルメトキシシラン、ノルボルネニルエチルトリエトキシシラン、ノルボルネニルエチルメチルジエトキシシラン、ノルボルネニルエチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルジメチルエトキシシラン等が挙げられ、入手が容易であることから、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、アリルトリエトキシシランが好ましい。
【0117】
前記官能化樹脂として、下記式(I)の一般構造で示されるシラン官能化樹脂も好適に使用できる。なお、式中、「樹脂」は樹脂の骨格を表す。
樹脂-[Zk-Xn-R1-(CH2)m-Si(R2)p]q (I)
(式中、Zは、ヘテロ原子を含んでもよい芳香族基又は脂肪族基である。
Xは、イオウ、酸素、窒素、カルボニル基、又はこれらの組合せから選択されるヘテロ原子を含むリンカーである。
R1は、1種類以上の脂肪族及び/又は芳香族C1~C18、及び/又はヘテロ原子を含む連結基である。
R2は、独立してC1~C18のアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、又はH若しくはOHから選択され、少なくとも1つのR2は、C1~C18のアルコキシ基、アリールオキシ基、又はH若しくはOHである。
qは、少なくとも1の整数である。
kは、0又は1の整数である。
nは、1~10の整数である。
mは、0~10の整数である。
pは、1、2又は3である。)
【0118】
Zとしては、芳香族基(6員の芳香族基など)、飽和又は不飽和の脂環式基などが挙げられる。Xとしては、酸素、カルボニル基、イオウなどが挙げられる。
【0119】
R1としては、-O-CO-NH-R3-(CH2)2-、-O-CO-R3-(CH2)2-、-O-CH2-R3-(CH2)2-、-CO-R3-(CH2)2-、-CO-NH-R3-(CH2)2-、又はこれらの混合物などが挙げられる。R3としては、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族C1~C8炭素鎖などが挙げられ、好ましくは脂肪族又は芳香族C1~C8炭素鎖である。
【0120】
nは、好ましくは1~9、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3、特に好ましくは1~2の整数である。mは、好ましくは1~10、より好ましくは4~10、更に好ましくは8~10、特に好ましくは9~10の整数である。
【0121】
前記式(I)で示される樹脂上にグラフトされるシラン含有基は、ポリマー樹脂単位の末端に配置すること(エンドキャップ)、ポリマー骨格に沿って(ポリマー樹脂内の懸垂位置において)ランダムに分布させること、これらを組み合わせること、などが可能である。
【0122】
前記式(I)で示される樹脂上にグラフトされるシラン含有基の量は、好ましくは0.001~100モル%、より好ましくは0.1~50モル%、更に好ましくは0.1~30モル%、特に好ましくは0.1~25モル%である。
【0123】
前記式(I)で示される樹脂は、1以上の末端官能基-[Zk-Xn-R1-(CH2)m-Si(R2)p]qを含むことが好ましい。前記式(I)で示される樹脂は、ランダム、セグメント化、又はブロック構造で樹脂の骨格に懸垂して結合している1つ又は複数(q)の基Zk-Xn-R1-(CH2)m-Si(R2)pで官能化されることが好ましい。また、他の態様としては、側鎖がエンドキャップされた態様、側鎖がエンドキャップと懸垂の混合の態様などが挙げられる。
【0124】
前記式(I)で示されるシラン官能化樹脂の他の好適例として、以下のものが挙げられる。
樹脂-[Zk-O-CH2CO-NH-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3]q;
樹脂-[Zk-O-CO-CH(CH2COOH)-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3]q;
樹脂-[Zk-CO-NH-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3]q;
樹脂-[Zk-CO-(CH2)2-CO-NH-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3]q;
樹脂-[Zk-O-CO-NH-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3]q;
樹脂-[Zk-O-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3]q;
(式中、Z、k、qは、前記と同様である。)
なお、シラン付加の数である「q」は、任意の数であってよいが、通常は1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2であってよい。
【0125】
前記式(I)で示されるシラン官能化樹脂の他の好適例として、以下のものも挙げられる
樹脂-[Zk-Xn-R1-(CH2)m-Si(R2)p]q;
樹脂-Zk-SO2NH-(CH2)2-CH2-Si(OCH2CH3)3;
樹脂-Zk-SONH-(CH2)2-CH2-Si(OCH2CH3)3;
樹脂-Zk-S-(CH2)2-CH2-Si(OCH2CH3)3;
樹脂-Zk-SO-(CH2)2-CH2-Si(OCH2CH3)3;
樹脂-Zk-SO2-(CH2)2-CH2-Si(OCH2CH3)3;
樹脂-[Zk(COO(CH2)2OCOC(COCH3)N(CH2)3Si(OCH3)3)]q-樹脂;
樹脂-Zk-SO2NH-(CH2)2-CH2-Si(OCH2CH3)3;
樹脂-Zk-Ph-O-Si(OCH2CH3)3;
(式中、Z、k、X、n、R1、m、R2、p、qは、前記と同様である。)
なお、シラン付加の数である「q」は、任意の数であってよいが、通常は1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2であってよい。
【0126】
前記式(I)で示されるシラン官能化樹脂は、公知の方法で製造可能であり、例えば、特表2020-513060号公報に記載の製法で製造できる。
【0127】
トレッド用ゴム組成物において、前記官能化樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは18質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。上限は、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0128】
トレッド用ゴム組成物は、前記官能化樹脂以外に、更に他の可塑剤を配合してもよい。他の可塑剤としては、特に限定されないが、オイル、前述の液状樹脂などの25℃で液状の可塑性を有する液体可塑剤、前述の固体樹脂等の25℃で固体状の可塑性を有する固体可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
トレッド用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(前記官能化樹脂、オイルや前記官能化樹脂以外の液状樹脂等の液体可塑剤、前記官能化樹脂以外の固体樹脂等の固体可塑剤の合計量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは7.5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは18質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。上限は、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0130】
上記液体可塑剤において、上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
【0131】
上記液体可塑剤において、上記液状樹脂としては、前述のもの等が挙げられる。上記固体可塑剤において、上記固体樹脂としては、前述のもの等が挙げられる。
【0132】
液体可塑剤、固体可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0133】
トレッド用ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~5.0質量部、より好ましくは0.7~3.0質量部である。
【0134】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0135】
トレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0~5.0質量部、より好ましくは1.5~4.5質量部である。
【0136】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0137】
トレッド用ゴム組成物には、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、有機架橋剤を配合してもよい。
【0138】
図1のタイヤ2において、トレッド4は、最大厚みが10.0mm以下である。
図2は、
図1のタイヤ2のトレッド4の近辺が示された拡大断面図である。
図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0139】
図2において、符号Pは、トレッド面24上の点である。点Pは、最も軸方向内側に位置する溝26よりも外側に位置する。両矢印Tは、点Pにおけるトレッド4の厚みである。厚みTは、点Pにおけるキャップ層30及びベース層28の厚みの合計である。この厚みTは、点Pにおけるトレッド面24の法線に沿って計測される。なお、
図1、2では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、単層構造トレッド4の場合、トレッドの厚みTはその点Pにおける単層構造トレッドの厚み、3層以上の構造を有するトレッドの場合、トレッドの厚みTはその点Pにおける3層以上の層の厚みの合計であり、その場合の点Pにおける厚みTもその点Pにおけるトレッド面24の法線に沿って計測される。
【0140】
そして、
図1において、トレッド4の最大厚みは、トレッド面24上の各点における各トレッドの厚み(
図1では、キャップ層30及びベース層28の厚みの合計)のうち、最大寸法であり、これが10.0mm以下である。トレッド4の最大厚みは、好ましくは9.0mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは7.5mm以下である。下限は、5.5mm以上が好ましく、6.0mm以上がより好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0141】
図1のタイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、前述のアセトン抽出分量(質量%)と、トレッド4の最大厚み(mm)とが、下記式を満たすことが望ましい。
アセトン抽出分量×トレッドの最大厚み<83
アセトン抽出分量×トレッドの最大厚みは、好ましくは80未満、より好ましくは78以下、更に好ましくは77以下、特に好ましくは76以下である。下限は、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは63以上、特に好ましくは65以上である。トレッドの厚みが大きいほど、トレッド部に働く遠心力が大きくなると考えられるため、アセトン抽出分量との積を一定以下に保つことで、トレッド部からのアセトン抽出分の脱離を防ぎやすくなり、高速走行時のウェットグリップ性能がより向上する傾向がある。
【0142】
図1のタイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、前述の0℃におけるtanδと、トレッド4の最大厚み(mm)とが、下記式を満たすことが望ましい。
(0℃におけるtanδ/トレッドの最大厚み)×1000>60.0
(0℃におけるtanδ/トレッドの最大厚み)×1000は、好ましくは70.0以上、より好ましくは75.0以上、更に好ましくは80.0以上、特に好ましくは87.5以上である。上限は、好ましくは130.0以下、より好ましくは120.0以下、更に好ましくは110.0以下、特に好ましくは100.0以下である。トレッドの厚みが薄いほど、トレッド部の変形が抑制され、高速走行時のウェットグリップ性能の向上効果が乏しくなると考えられるものの、厚みが薄くなるにしたがって、低温の発熱性を高くなるため、良好な高速走行時のウェットグリップ性能を得やすくなる傾向がある。
【0143】
図1のタイヤ2において、トレッド4は、タイヤ外径Dが700mm以下である。
タイヤ外径Dとは、タイヤを適用リムに装着するとともに、規定の空気圧を充填し、無負荷状態としたタイヤの外径をいう。タイヤ外径Dは、好ましくは676mm以下、より好ましくは652mm以下、更に好ましくは635mm以下、特に好ましくは627mm以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは580mm以上、より好ましくは590mm以上、更に好ましくは600mm以上、特に好ましくは610mm以上である。タイヤが大きいほど、トレッド部に働く遠心力が大きくなると考えられるため、アセトン抽出分量との積を一定以下に保つことで、トレッド部からのアセトン抽出分の脱離を防ぎやすくなり、高速走行時のウェットグリップ性能がより向上する傾向がある。
【0144】
図1のタイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、前述のアセトン抽出分量(質量%)と、タイヤ外径D(mm)とが、下記式を満たすことが望ましい。
アセトン抽出分量×タイヤ外径<6500
アセトン抽出分量×タイヤ外径は、好ましくは6300以下、より好ましくは6100以下、更に好ましくは6000以下、特に好ましくは5900以下である。下限は、好ましくは4000以上、より好ましくは4500以上、更に好ましくは4800以上、特に好ましくは5000以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0145】
図1のタイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、前述の0℃におけるtanδと、タイヤ外径D(mm)とが、下記式を満たすことが望ましい。
(0℃におけるtanδ/タイヤ外径)×1000>0.70
(0℃におけるtanδ/タイヤ外径)×1000は、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.96以上、更に好ましくは1.12以上、特に好ましくは1.28以上である。上限は、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.80以下、更に好ましくは1.60以下、特に好ましくは1.40以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0146】
図1のタイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10と接合されている。
【0147】
それぞれのウィング8は、トレッド4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
【0148】
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。
【0149】
それぞれのビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーなどを含む。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
【0150】
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0151】
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
【0152】
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなるもの等が挙げられる。このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
【0153】
ベルト16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト16は、カーカス14と積層されている。ベルト16は、内側層38及び外側層40からなる。
【0154】
図示されていないが、内側層38及び外側層40のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなるもの等が挙げられる。それぞれのコードは、例えば、赤道面に対して傾斜している。内側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層40のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
【0155】
バンド18は、ベルト16の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド18はベルト16の幅と同等の幅を有している。このバンド18が、このベルト16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0156】
図示されていないが、バンド18は、コードとトッピングゴムとからなるもの等が挙げられる。コードは、例えば、螺旋状に巻かれている。
【0157】
ベルト16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト16のみから、補強層が構成されてもよい。
【0158】
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。
【0159】
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなるもの等が挙げられる。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
【0160】
このタイヤ2では、トレッド4は溝26として主溝42を備えている。
図1に示されているように、このトレッド4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
【0161】
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。
【0162】
このタイヤ2の製造では、複数のゴム部材がアッセンブリーされて、ローカバー(未加硫タイヤ2)が得られる。このローカバーが、モールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。そのキャビティ面に凸凹模様を有するモールドが用いられることにより、タイヤ2に凹凸模様が形成される。
【0163】
タイヤ2としては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。例えば、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。
【実施例0164】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0165】
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR1:下記製造例1(スチレン含有量25質量%、ビニル含有量25質量%)
SBR2:Versalis社製のEuroprene SOL R C2525(スチレン含有量25質量%、ビニル含有量25質量%)
SBR3:JSR(株)製のHPR850(スチレン含有量26質量%、ビニル結合量59質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量97質量%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(N2SA114m2/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA175m2/g)
シランカップリング剤1:Momentive社製のNXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT-Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
固体樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体、軟化点85℃)
官能化樹脂:下記製造例2
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤FR:住友化学(株)製のアンチゲンFR(アミンとケトンの反応品を精製したものでアミンの残留がないもの、キノリン系老化防止剤)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン(DPG))
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0166】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR1を得た。
【0167】
(製造例2 フェノール官能化によるエンドキャップシラン含有樹脂の合成)
以下のとおり、
図3に示す工程により、フェノール官能化によるエンドキャップシラン含有樹脂を合成した。
【0168】
工程A:フェノール基官能化によるエンドキャップCOOH官能化樹脂の合成:
メカニカルスターラー及び還流凝縮器を取り付けた三つ口の2L丸底フラスコ中に、100.6gの10.8モル%フェノール官能化樹脂(97.2mmのフェノール単位を含む902ミリモル)、及び1.50Lのアセトンを充填した。樹脂が撹拌によって完全に溶解した時点で、10.55gのヨウ化カリウム、6.48gの水酸化ナトリウム、及び101.1gのクロロ酢酸ナトリウムを加えた。反応溶液を57℃に18時間加熱した。溶媒を除去し、生成物を3Lのジクロロメタン(DCM)中に溶解し、1.2LのHClの1M水溶液で洗浄した。全ての固形分が完全に溶解するまで、この2相溶液を撹拌した。水層を廃棄した。溶液をHClの1M水溶液、NaOHの1M水溶液、次にHClの1M水溶液で洗浄した。この手順を繰り返し、必要に応じてHClの1M水溶液で更に4回洗浄した。有機相を無水MgSO4上で乾燥した。濾紙上で重力濾過することによってMgSO4を除去した。溶媒を除去し、生成物を減圧下室温において一晩乾燥した。生成物を秤量したところ、103.8g(理論収量の98%)であった。
【0169】
工程B:COOH基官能化によるエンドキャップシラン官能化樹脂の合成:
温度計及びスターラーバーを取り付けた三つ口の3L丸底フラスコ中に、106.0gの10.8モル%カルボン酸含有樹脂(97.0ミリモルのカルボキシル単位を含む900ミリモル)、及び2.70LのDCMを充填した。溶液をN2ブランケット下に配置し、磁気撹拌した。樹脂が完全に溶解した時点で、フラスコを氷/NaCl/水浴によって冷却した。温度が2.5±2.5℃に達した時点で、10.75gのクロロギ酸エチル(99.1ミリモル)、次に9.97gのTEA(98.5ミリモル)を加えた。活性化時間(混合無水物の形成)は、5±3℃において32分であった。次に、21.58gの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(97.5ミリモル)を充填した。冷却浴を取り外し、反応系を室温に加温した。反応を室温において25時間継続した。不溶物(トリエチルアミンヒドロクロリド)を、Whatman(登録商標)#1濾紙上で重力濾過することによって除去した。次に、300mLのヘキサンを加えた。混合物を30分撹拌し、冷蔵庫内に48時間貯蔵した。この二相系を室温に加温した。ヘキサンの上層を単離し、溶媒を除去した。生成物を減圧下室温において2~3日間乾燥した。乾燥エタノールを用いてヘキサンの除去を促進した。ワックス状の生成物を秤量したところ、約80g(理論収量の63~64%)であった。別の仕上げ工程は、反応が完了した後に全ての溶媒を減圧下で除去し、生成物をジエチルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)中に溶解することであった。次に、溶液を濾紙上で濾過してトリエチルアミンヒドロクロリド副生成物を除去し、溶媒をゆっくりと蒸発させた。生成物を室温において減圧下で乾燥し、フェノール官能化によるエンドキャップシラン含有樹脂を得た。
【0170】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で12分間プレス加硫し、表1に示す仕様の試験用タイヤを製造した。なお、表1のタイヤ外径の試験用タイヤの仕様の詳細は、それぞれ以下のとおりである。
(1)245/45R16、外形:627mm
(2)245/45R17、外形:652mm
(3)245/55R16、外形:676mm
【0171】
得られた各サイズの試験用タイヤを用いて、各表の仕様に従い、下記物性測定、評価を行い、結果を各表に示した。なお、表1の基準比較例は、比較例1とした。
【0172】
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの粘弾性測定サンプルを各ゴム層で採取し、各ゴム層の損失正接tanδを、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度0℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
【0173】
<アセトン抽出量(AE量)>
上記試験用タイヤのトレッドから切り出したゴム試験片について、JIS K 6229に準拠したアセトン抽出量の測定方法に準拠し、該試験片中に含まれるアセトンにより抽出される物質の量を測定した。
アセトン抽出量(質量%)=(抽出前のサンプルの質量-抽出後のサンプルの質量)/抽出前のサンプルの質量×100
【0174】
<密度>
上記試験用タイヤのトレッドから切り出したゴム試験片の密度について、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これに基づいて、密度を算出した。
【0175】
<高速走行時のウェットグリップ性能>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、湿潤アスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行(高速走行:平均時速100km/h)を行い、次いで、100km/hからの制動距離を求め、基準比較例を100とした時の指数で表示した(高速走行時のウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほど、高速走行時のウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0176】
【0177】
所定のイソプレン系ゴム、BR、低スチレン量及び低ビニル量のSBRの合計含有量を有するゴム成分と、シリカとを含み、かつ所定の0℃におけるtanδ、アセトン抽出分量、密度を有するトレッドを備え、更に所定のトレッドの最大厚み、タイヤ外径を持つ実施例のタイヤは、高速走行時のウェットグリップ性能に優れていた。