(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163942
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20221020BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221020BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221020BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221020BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B60C11/00 D
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 A
B60C11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069097
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】北村 直也
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC13
3D131BC33
3D131EB07U
4J002AC01W
4J002AC02W
4J002AC02X
4J002AC06W
4J002AC08Y
4J002DA036
4J002DJ017
4J002EX000
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能を向上できるタイヤを提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えたタイヤであって、
前記ゴム組成物は、下記式(1)~(3)を満たし、
(1)イソプレン系ゴムの含有量>スチレンブタジエンゴムの含有量
(2)イソプレン系ゴムの含有量>ブタジエンゴムの含有量
(3)シリカの含有量≧カーボンブラックの含有量
前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ及び前記トレッドのネガティブ率N(%)は、下記式(4)~(5)を満たすタイヤ。
(4)30℃におけるtanδ<0.10
(5)30℃におけるtanδ×N<4.0
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えたタイヤであって、
前記ゴム組成物は、下記式(1)~(3)を満たし、
(1)イソプレン系ゴムの含有量>スチレンブタジエンゴムの含有量
(2)イソプレン系ゴムの含有量>ブタジエンゴムの含有量
(3)シリカの含有量≧カーボンブラックの含有量
前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ及び前記トレッドのネガティブ率N(%)は、下記式(4)~(5)を満たすタイヤ。
(4)30℃におけるtanδ<0.10
(5)30℃におけるtanδ×N<4.0
【請求項2】
前記シリカは、平均一次粒子径が20nm以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する液体可塑剤の含有量が15質量部未満である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する固体可塑剤の含有量が5質量部以上である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
ビード補強ゴムを備える請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドの30℃における複素弾性率E1*と、前記ビード補強ゴムの70℃における複素弾性率E2*とが下記式を満たす請求項5記載のタイヤ。
E2*/E1*>0.5
【請求項7】
エーペックス及びビード補強ゴムを備え、
前記エーペックスの70℃における複素弾性率E3*と、前記ビード補強ゴムの70℃における複素弾性率E2*とが下記式を満たす請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
E3*>E2*
【請求項8】
前記トレッドのネガティブ率(N)が40%以下である請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のタイヤの低燃費化の要請に伴い、例えば、トレッド配合の低燃費化への改善が要求されている。低燃費化には、充填剤のカーボンブラックやシリカの量を少量にすることが効果的である。しかしながら、充填材量を少なくすると、トレッドゴムの強度が低下し、耐チッピング性能や耐摩耗性能が悪化し、また、トレッド部の剛性が低下するため、操縦安定性が悪化するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能を向上できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えたタイヤであって、
前記ゴム組成物は、下記式(1)~(3)を満たし、
(1)イソプレン系ゴムの含有量>スチレンブタジエンゴムの含有量
(2)イソプレン系ゴムの含有量>ブタジエンゴムの含有量
(3)シリカの含有量≧カーボンブラックの含有量
前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ及び前記トレッドのネガティブ率N(%)は、下記式(4)~(5)を満たすタイヤに関する。
(4)30℃におけるtanδ<0.10
(5)30℃におけるtanδ×N<4.0
【0005】
前記シリカは、平均一次粒子径が20nm以下であることが好ましい。
【0006】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する液体可塑剤の含有量が15質量部未満であることが好ましい。
【0007】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する固体可塑剤の含有量が5質量部以上であることが好ましい。
【0008】
前記タイヤは、ビード補強ゴムを備えることが好ましい。
【0009】
前記トレッドの30℃における複素弾性率E1*と、前記ビード補強ゴムの70℃における複素弾性率E2*とが下記式を満たすことが好ましい。
E2*/E1*>0.5
【0010】
前記タイヤは、エーペックス及びビード補強ゴムを備え、
前記エーペックスの70℃における複素弾性率E3*と、前記ビード補強ゴムの70℃における複素弾性率E2*とが下記式を満たすことが好ましい。
E3*>E2*
【0011】
前記トレッドのネガティブ率(N)が40%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物からなるトレッドを備え、前記ゴム組成物が前記式(1)~(3)を満たし、前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ及び前記トレッドのネガティブ率N(%)が前記式(4)~(5)を満たすタイヤであるので、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図である。
【
図2】
図1のサイドウォール部及びビード部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物からなるトレッドを備え、前記ゴム組成物が前記式(1)~(3)を満たし、前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ及び前記トレッドのネガティブ率N(%)が前記式(4)~(5)を満たす。前記タイヤは、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能に優れている。
【0015】
前述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
トレッドを構成するゴム組成物について、イソプレン系ゴム量を式(1)~(2)を満たすような多量に調整すると同時に、シリカ量をカーボンブラック量以上(式(3))に調整すると、多量のイソプレン系ゴム量、多量のシリカ量により、トレッドゴムの発熱性が低く抑えられ、また、トレッドゴムの強度が高められることで、良好な耐摩耗性、操縦安定性が付与されると考えられる。更に、該ゴム組成物の30℃におけるtanδが所定未満に調整されると同時に(式(4))、該tanδとトレッドのネガティブ率N(%)との積が所定未満に調整されることで(式(5))、トレッドゴムの発熱性が更に低く抑えられつつ、トレッドの溝面積比率が少ないことで良好な操縦安定性や耐摩耗性が得られると考えられる。以上のメカニズムにより、良好な耐摩耗性、操縦安定性を得つつ、低燃費性が改善されるため、これらの総合性能が向上すると推察される。
【0016】
このように、本発明は、式(1)「イソプレン系ゴムの含有量>スチレンブタジエンゴムの含有量」、式(2)「イソプレン系ゴムの含有量>ブタジエンゴムの含有量」、式(3)「シリカの含有量≧カーボンブラックの含有量」、式(4)「30℃におけるtanδ<0.10」、式(5)「30℃におけるtanδ×N<4.0」を満たすタイヤの構成にすることにより、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能を向上するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)~(5)のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメータを満たす構成とした発明である。
【0017】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明するが、該形態に制限されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1の正規状態のタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。
図1には、好ましい態様として、ドライアスファルト路面のみならず、瓦礫路や泥濘地といった不整地路面を走行可能な4WD車等に好適に装着される乗用車用のタイヤ1が示される。但し、例えば、重荷重用のタイヤ1にも採用され得る。
【0019】
本明細書において、「正規状態」とは、タイヤ1が正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0020】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。
【0021】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。
【0022】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3、3と、一対のサイドウォール部3、3のタイヤ半径方向の内側に連なる一対のビード部4、4とを含んでいる。ビード部4には、円環状のビードコア5が埋設されている。
【0023】
タイヤ1は、例えば、トレッド部2のトレッド接地面2aをなすトレッドゴム2Gと、サイドウォール部3の外面3aをなすサイドウォールゴム3Gと、ビード部4の外面4aをなすクリンチゴム4Gとを含んでいる。サイドウォールゴム3G及びクリンチゴム4Gには、それぞれ公知の態様が適宜採用される。
【0024】
トレッドゴム2Gは、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物で構成される。
【0025】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、例えば、イソプレン系ゴム、BR及びSBRを含むものであるが、これら以外に使用可能なゴム成分としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のイソプレン系ゴム、BR及びSBR以外のジエン系ゴム等が挙げられる。
【0026】
イソプレン系ゴム、BR及びSBR等のジエン系ゴムは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ、カーボンブラック等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムなどが挙げられる。具体的には、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記官能基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0029】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。BRは、市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。
変性BRとしては、上記官能基を有するBRなどが挙げられる。
【0032】
BRのシス含量は、氷上性能の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。なお、本明細書において、シス含量(シス-1,4-結合量)は、赤外吸収スペクトル分析や、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出される値である。
【0033】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、更に好ましくは15.0質量%以上、特に好ましくは20.0質量%以上である。また、該スチレン含有量の上限は、好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは50.0質量%以下、更に好ましくは40.0質量%以下、特に好ましくは30.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含有量は、1H-NMR測定により算出される。
【0035】
SBRのビニル含有量は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、更に好ましくは12.0質量%以上、特に好ましくは14.0質量%以上である。上記ビニル含有量は、好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは30.0質量%以下、更に好ましくは20.0質量%以下、特に好ましくは18.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、ビニル含有量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0036】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0037】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、上記官能基を有するSBRなどが挙げられる。
【0038】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、イソプレン系ゴムの含有量(ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量(質量%))、スチレンブタジエンゴムの含有量(ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量(質量%))は、下記式(1)を満たす。
(1)イソプレン系ゴムの含有量>スチレンブタジエンゴムの含有量
イソプレン系ゴムの含有量/スチレンブタジエンゴムの含有量は、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上、特に好ましくは4.0以上、最も好ましくは4.7以上である。上限は、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.5以下、特に好ましくは6.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0039】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、イソプレン系ゴムの含有量(ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量(質量%))、ブタジエンゴムの含有量(ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量(質量%))は、下記式(2)を満たす。
(2)イソプレン系ゴムの含有量>ブタジエンゴムの含有量
イソプレン系ゴムの含有量/ブタジエンゴムの含有量は、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは4.0以上、特に好ましくは4.7以上である。上限は、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.5以下、特に好ましくは6.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0041】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0042】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0043】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材を含み、シリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))、カーボンブラックの含有量(ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部))は、下記式(3)を満たす。
(3)シリカの含有量≧カーボンブラックの含有量
シリカの含有量/カーボンブラックの含有量は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上、特に好ましくは2.0以上である。上限は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0045】
シリカの平均一次粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは17nm以下、特に好ましくは14nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは7nm以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0046】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0047】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0048】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0049】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0050】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、また、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上が更に好ましい。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0053】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。該含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0054】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外の他の充填材を含んでもよい。他の充填材としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー等が挙げられる。
【0055】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、充填材の含有量(充填材の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
前記ゴム組成物において、充填材100質量%中のシリカ含有率は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上が好ましく、52質量%以上が更に好ましく、54質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0057】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、可塑剤を含有してもよい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、液体可塑剤(25℃で液体(液状)の可塑剤)、固体可塑剤(25℃で固体の可塑剤)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、可塑剤の含有量(液体可塑剤及び固体可塑剤の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは1質量部以下であり、0質量部でもよい。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0059】
液体可塑剤としては、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー等)、テレビン油等の天然物由来の精油、エステル系可塑剤、等が挙げられる。固形可塑剤としては、25℃で固形(固体)のタイヤ業界で通常用いられるような固体樹脂類、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。液状樹脂としては、例えば、25℃で液状のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C5C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、25℃で液状の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。
【0061】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、特に好ましくは1質量部未満であり、0質量部でもよい。なお、液体可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルの量も含まれる。オイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0062】
固体可塑剤としては、タイヤ配合物として、通常用いられる固体樹脂類(レジン)を使用できる。具体的には、テルペン系樹脂、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂(レジン)が挙げられる。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。
【0063】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、固体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。前記レジンの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0064】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0066】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0067】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0068】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0069】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0070】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤がより好ましい。
【0071】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0072】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0074】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物)等を例示できる。これら各成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
【0075】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0076】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0077】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物は、30℃におけるtanδが下記式(4)を満たす。
(4)30℃におけるtanδ<0.10
30℃におけるtanδは、好ましくは0.09以下、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.07以下、特に好ましくは0.06以下、最も好ましくは0.05以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0078】
なお、本明細書において、「30℃におけるtanδ」は、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した損失正接である。そして、ゴム組成物の30℃におけるtanδは、加硫後のゴム組成物の30℃におけるtanδを意味し、加硫後のゴム組成物に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。
【0079】
30℃におけるtanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、可塑剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、イソプレン系ゴムの含有量を増やしたり、充填材量を減らしたり、液体可塑剤量を減らしたりすることにより、tanδが小さくなる傾向がある。
【0080】
トレッドゴム2Gを構成するゴム組成物の30℃におけるtanδ、トレッドゴム2Gのネガティブ率N(%)は、下記式(5)を満たす。
(5)30℃におけるtanδ×N<4.0
30℃におけるtanδ×Nは、好ましくは3.6以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.4以下、特に好ましくは2.0以下、最も好ましくは1.8以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.2以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
トレッドゴム2Gのネガティブ率(N)は、効果がより良好に得られる観点から、下記式を満たすことが望ましい。
N≦50%
Nは、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下、特に好ましくは30%以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0082】
なお、ネガティブ率(トレッド部の接地面内におけるネガティブ率)は、接地面の全面積に対する、接地面内の全溝面積の割合であり、以下の方法で測定される。
本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、ネガティブ率は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
「正規リム」、「正規内圧」は前述のとおりで、「正規荷重」は後述のとおりである。
「接地形状」は、正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることで得られる。
タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。
5つの接地形状について、タイヤ軸方向の最大長さの平均値をL、軸方向に直交する方向の長さの平均値をWとする。
ネガティブ率(%)は、[1-{厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/(L×W)}]×100(%)で計算される。
ここで、長さや面積の平均値は、5つの値の単純平均である。
【0083】
タイヤ1は、本実施形態では、一対のビード部間4、4に架け渡されたカーカス6と、トレッド部2に配されたベルト層7とを含んでいる。
【0084】
カーカス6は、少なくとも1枚のカーカスプライ、本実施形態では、第1カーカスプライ6A及び第1カーカスプライ6Aに重ねられる第2カーカスプライ6Bを含んで構成されている。第1カーカスプライ6Aは、本実施形態では、第2カーカスプライ6Bのタイヤ半径方向内側に配されている。なお、第1カーカスプライ6Aは、第2カーカスプライ6Bのタイヤ半径方向外側に配されていても良い。
【0085】
各カーカスプライ6A及び6Bは、本実施形態では、それぞれ、本体部6aと一対の折返し部6b、6bとを含んでいる。本体部6aは、トレッド部2から一対のサイドウォール部3、3を経て一対のビード部4、4のビードコア5まで延びている。各折返し部6bは、本体部6aに連なりビードコア5の回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。各折返し部6bは、本実施形態では、サイドウォール部3で終端するタイヤ半径方向の外端6oを有している。また、各折返し部6bは、例えば、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に向かってタイヤ軸方向内側へ傾斜する内側部分6iと、内側部分6iに連なり、かつ、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ軸方向外側へ傾斜する外側部分6eとを含んで形成されている。なお、各折返し部6bは、このような態様に限定されるものではない。
【0086】
各カーカスプライ6A及び6Bは、例えば、それぞれ、カーカスコード(図示省略)をトッピングゴムで被覆して形成される。本実施形態のカーカスコードは、タイヤ赤道Cに
対して、例えば、75~90度の角度で傾けて配されている。カーカスコードには、スチール等の金属繊維コードや、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどの有機繊維コードを採用できる。
【0087】
ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では、タイヤ半径方向の内外に配された、内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bの2枚のベルトプライで構成されている。各ベルトプライ7A及び7Bは、例えば、タイヤ赤道Cに対して10~35°の範囲で傾けて配列したベルトコード(図示省略)を含んでいる。ベルトプライ7A及び7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ねられている。ベルトコードには、例えば、スチールコードが好適であるが、アラミドやレーヨン等の高弾性の有機繊維コードを採用することもできる。
【0088】
内側ベルトプライ7Aは、本実施形態では、外側ベルトプライ7Bよりも幅広に形成されている。内側ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の幅Waは、トレッド幅TWの80%~100%が望ましい。なお、内側ベルトプライ7Aは、例えば、外側ベルトプライ7Bよりも幅狭であっても良い。
【0089】
前記「トレッド幅TW」とは、トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離を意味する。前記「トレッド端Te」とは、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷しかつキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を意味する。
【0090】
本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。
【0091】
一対のビード部4、4には、ビードエーペックスゴム8が配されている。
図2は、
図1の拡大図である。
図2に示されるように、本実施形態のビードエーペックスゴム8は、エーペックス11と、ビード補強ゴム12とを含む2層構造の形態である。エーペックス11は、例えば、ビードコア5のタイヤ半径方向の外面5aからタイヤ半径方向外側に延びている。ビード補強ゴム12は、例えば、エーペックス11よりもタイヤ軸方向外側に配されている。
【0092】
タイヤ1は、ビード補強ゴムを備えたタイヤが望ましい。ビード補強ゴムとは、ビード部を補強する機能を持つ部材である。本実施形態では、エーペックス11とビード補強ゴム12とが、カーカス6を挟んで配されている形態を示しているが、ビード補強ゴム12は、エーペックス11と、該エーペックス11のタイヤ軸方向外側にビード補強ゴム12とが隣接して配された2層構造を形成している形態でもよい。この場合、例えば、エーペックス11と、そのタイヤ軸方向外側のビード補強ゴム12とが隣接して配され、カーカス6が該ビード補強ゴム12のタイヤ軸方向外側をタイヤ半径方向に延びる形態が挙げられる。また図示していないが、クリンチゴム4Gと、該クリンチゴム4Gのタイヤ軸方向外側にビード補強ゴム12とが隣接して配された2層構造を形成している形態でもよい。ビード補強ゴム12を有する場合、耐摩耗性が向上する。
【0093】
このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
前述のとおり、式(1)~(5)を満たすことで、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能が向上するものであるが、更にビード補強ゴム12などのビード補強ゴムを設けることで、折返し部6bのタイヤ軸方向の外側への過度の倒れ込みが抑制され、優れた耐久性能が付与される。そのため、耐摩耗性が改善されると共に、良好な操縦安定性も付与される。従って、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能が顕著に改善されると推察される。
【0094】
効果がより良好に得られる観点から、トレッドゴム2Gの30℃における複素弾性率E1*(MPa)と、ビード補強ゴム12の70℃における複素弾性率E2*(MPa)とが、下記式を満たすことが望ましい。
E2*/E1*>0.3
E2*/E1*は、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましく、2.0以上が特に好ましく、2.8以上が最も好ましい。上限は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
トレッドゴム2Gの30℃における複素弾性率E1*は、2.0MPa以上が好ましく、3.5MPa以上がより好ましく、4.0MPa以上が更に好ましい。上限は、15.0MPa以下が好ましく、10.0MPa以下がより好ましく、8.0MPa以下が更に好ましく、7.5MPa以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0096】
ビード補強ゴム12の70℃におけるE2*は、3.0MPa以上が好ましく、5.0MPa以上がより好ましく、8.0MPa以上が更に好ましく、10.0MPa以上が特に好ましい。上限は、30.0MPa以下が好ましく、25.0MPa以下がより好ましく、20.0MPa以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0097】
本実施形態では、エーペックス11は、両カーカスプライ6A、6Bの各本体部6aと各折返し部6bとの間に挟まれている。ビード補強ゴム12は、本実施形態では、各折返し部6bのタイヤ軸方向外側に配されている。このように、本実施形態の両カーカスプライ6A、6Bは、エーペックス11とビード補強ゴム12との間に延びている。
【0098】
ビード補強ゴム12のタイヤ半径方向の外端12eは、例えば、エーペックス11のタイヤ半径方向の外端11eよりもタイヤ半径方向の外側に位置していることが望ましい。
【0099】
より効果が得られる観点から、エーペックス11の70℃における複素弾性率E3*、ビード補強ゴム12の70℃における複素弾性率E2*は、下記式を満たすことが望ましい。
E3*>E2*
E3*/E2*は、好ましくは3.0以上、より好ましくは5.0以上、更に好ましくは6.0以上、特に好ましくは7.0以上、最も好ましくは10.0以上である。上限は、好ましくは25.0以下、より好ましくは15.0以下、更に好ましくは13.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0100】
エーペックス11の70℃における複素弾性率E3*は、20MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましく、60MPa以上が更に好ましく、65MPa以上が特に好ましい。上限は、200MPa以下が好ましく、150MPa以下がより好ましく、100MPa以下が更に好ましく、80MPa以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
なお、本明細書において、「70℃におけるE*」は、温度70℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した損失正接、「30℃におけるE*」は、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した損失正接である。そして、ゴム組成物の70℃におけるE*は加硫後のゴム組成物の70℃における複素弾性率、ゴム組成物の30℃におけるE*は加硫後のゴム組成物の30℃における複素弾性率を意味し、加硫後のゴム組成物に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。
【0102】
30℃におけるE*、70℃におけるE*は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、可塑剤、硫黄、加硫促進剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、充填材量を増やしたり、レジン量を増やしたりすることにより、E*が大きくなる傾向がある。
【0103】
ビード補強ゴム12は、例えば、タイヤ軸方向の厚さt1がタイヤ半径方向の外側へ向かって漸増するビード補強ゴム12の第1部分12Aと、該第1部分12Aに連なり、かつ、前記厚さt1がタイヤ半径方向の外側へ向かって漸減するビード補強ゴム12の第2部分12Bとを含んで形成されていることが望ましい。ビード補強ゴム12の第1部分12Aは、本実施形態では、折返し部6bの内側部分6iと接している。ビード補強ゴム12の第2部分12Bは、本実施形態では、折返し部6bの外側部分6eと接している。
【0104】
ビード補強ゴム12のタイヤ半径方向の内端12iは、例えば、ビードコア5の外面5aよりもタイヤ半径方向の外側に位置していることが望ましい。また、ビード補強ゴム12の内端12iは、本実施形態では、エーペックス11の外端11eよりもタイヤ半径方向の内側に位置していることが望ましい。
【0105】
エーペックス11は、本実施形態では、ビードコア5の外面5aからタイヤ半径方向外側へタイヤ軸方向の厚さt2が漸減する断面略三角形状で形成されている。エーペックス11の外端11eは、折返し部6bの内側部分6iのタイヤ半径方向の外端近傍に配されていることが望ましい。
【0106】
本実施形態では、第1カーカスプライ6Aの折返し部6bの外端と第2カーカスプライ6Bの折返し部6bの外端とは、例えば、タイヤ半径方向に離間している。
【0107】
第1カーカスプライ6Aの外端と第2カーカスプライ6Bの外端とは、本実施形態では、タイヤ最大幅位置Mを挟んでタイヤ半径方向の内外に離間している。第2カーカスプライ6Bの外端は、本実施形態では、タイヤ最大幅位置Mよりもタイヤ半径方向内側に位置している。
【0108】
図2に示されるように、本実施形態のビード部4には、リムズレ防止用のチェーファゴム20と、ビード部4の剛性を高めるための補強部材21とが配される。
【0109】
チェーファゴム20は、例えば、厚さ0.5~1.5mm程度の薄いシート状で形成されることが望ましい。チェーファゴム20は、例えば、耐摩耗性に優れる硬質のゴムから形成されることが望ましい。チェーファゴム20は、ゴムのみで形成することもできるが、ゴム中に例えばキャンバス布や有機繊維のコード配列体を埋設して補強し、耐摩耗性をより高めることもできる。
【0110】
チェーファゴム20は、本実施形態では、基部20Aと外片部20Bと内片部20Cとを含んで形成されている。基部20Aは、本実施形態では、リムのリムシート面(図示省略)と接触しタイヤ軸方向に延びている。外片部20Bは、本実施形態では、基部20Aのタイヤ軸方向外端に連なってタイヤ半径方向外側に延び、折返し部6bとビード補強ゴム12との間に挟まれて終端している。内片部20Cは、本実施形態では、基部20Aのタイヤ軸方向内端に連なりタイヤ内腔面に沿ってタイヤ半径方向外側に延びて終端している。
【0111】
外片部20Bは、本実施形態では、内側部分6iと、ビード補強ゴム12の第1部分12Aとに挟まれて、エーペックス11の外端11eよりもタイヤ半径方向内側で終端している。このような外片部20Bは、走行時の歪をタイヤ最大幅位置M近傍に集中させている。
【0112】
補強部材21は、本実施形態では、エーペックス11に連なってタイヤ半径方向の外側へ延びている。補強部材21は、例えば、各本体部6aと各折返し部6bとの間に挟まれている。補強部材21のタイヤ半径方向の外端21eは、ビード補強ゴム12の外端12eよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。
【0113】
補強部材21は、例えば、厚さt4が0.5~3.0mmの範囲で形成されていることが望ましい。
【0114】
タイヤ1では、トレッドゴム2Gは溝26として主溝42を備えている。
図1に示されているように、このトレッドゴム2Gには、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブが形成されている。それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。
【0115】
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤ、等として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用タイヤ、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適に使用できる。なお、乗用車用又はライトトラック用タイヤとは、四輪以上で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであって、その最大負荷能力(正規荷重)が1400kg以下のものを指す。
【0116】
タイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。例えば、各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0117】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0118】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0119】
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR:ZEON(株)製のNipol 1502(E-SBR)
BR:宇部興産(株)製のBR150B
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックI(N220、N2SA114m2/g、DBP114ml/100g)
シリカ:Rhodia社製のZeosil Premium 200MP(平均一次粒子径10nm)
シランカップリング剤:EVONIK-DEGUSSA製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
レジン1:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体))
レジン2:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4150(β-ピネン樹脂、β-ピネン含有量:98質量%以上)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属工業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
【0120】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成した後、170℃で12分間加硫し、
図1~2に示される試験用タイヤ(サイズ:205/85R16、ライトトラック用タイヤ)を製造した。
【0121】
得られた試験用タイヤに関し、下記により物性測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0122】
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのトレッドの内部からタイヤ周方向が長辺となるように長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの粘弾性測定サンプルを採取し、各サンプル(加硫後のゴム組成物)の30℃におけるtanδ及びE*を、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて測定した。サンプルの厚み方向をタイヤ半径方向とした。
また、同様の方法で、各試験用タイヤのビード補強ゴムからサンプルを採取し、70℃におけるE*を測定した。
なお、30℃におけるtanδ及びE*は、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定し、70℃におけるE*は、温度70℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した。
【0123】
<ネガティブ率>
得られた試験用タイヤについて、以下の方法でネガティブ率を測定した(測定されたネガティブ率を表1に記載)。
試験用タイヤのトレッドの接地形状を、正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることで得た。タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させ、5回の接地形状を得た。5つの接地形状について、タイヤ軸方向の最大長さの平均値をL、軸方向に直交する方向の長さの平均値をWとし、下記式により、ネガティブ率(%)を測定した。長さや面積の平均値は、5つの値の単純平均とした。
ネガティブ率(%)=[1-{厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/(L×W)}]×100
【0124】
<転がり抵抗>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを下記条件で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した。指数は大きい方が良好(低燃費性)である。
装着リム:16×5.5J
タイヤ内圧:600kPa
速度:80km/h
荷重:16.79kN
【0125】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを排気量が3000ccの3t積み2-D車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し下記式により指数化した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。
(耐摩耗性指数)=(各配合の1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0126】
<操縦安定性>
試験用タイヤを排気量が3000ccの3t積み2-D車の全輪に装着した。このテスト車両で走行したときの操縦安定性を10人のテストドライバーが1点から5点の5段階で評価した。評点が大きいほど、性能が優れていることを示す。10人の評点の合計点を算出し、基準比較例の合計点を100とし、指数化した(操縦安定性指数)。指数が大きいほど、操縦安定性が良好であることを示す。
【0127】
【0128】
表から、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含有する充填材とを含むゴム組成物からなるトレッドを備え、前記ゴム組成物が前記式(1)~(3)を満たし、前記ゴム組成物の30℃におけるtanδ及び前記トレッドのネガティブ率N(%)が前記式(4)~(5)を満たす実施例のタイヤは、低燃費性、耐摩耗性及び操縦安定性の総合性能(低燃費性、耐摩耗性、操縦安定性の3つの指数の総和で表す)が顕著に優れていた。