(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163951
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20221020BHJP
【FI】
H01L33/32
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069109
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】511207730
【氏名又は名称】聯嘉光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 復邦
(72)【発明者】
【氏名】▲らい▼ 俊銘
(72)【発明者】
【氏名】蔡 増光
(72)【発明者】
【氏名】黄 國欣
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA43
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA34
5F241CA40
5F241CA67
5F241CB11
5F241CB15
5F241CB27
5F241FF01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオードを提供する。
【解決手段】三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造は、電気励起青色発光構造10を有する青色光層16と光励起緑色発光構造20を有する緑色光層23と、接合層40と、光励起赤色発光構造30を有する赤色光層33とを含み、印加電圧で電気励起青色発光構造を励起させて青色光を生成させ、青色光が光励起緑色発光構造を励起させて緑色光を生成させ、青色光と緑色光が光励起赤色発光構造を励起させて赤色光を生成させることにより、三原色スペクトルでの表示を実現する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物のエピタキシャル成長による電気励起青色発光構造と窒化物のエピタキシャル成長による光励起緑色発光構造とを有し、前記光励起緑色発光構造は前記電気励起青色発光構造に設けられ、且つ前記電気励起青色発光構造は印加電圧の励起で青色光を生成し、前記青色光が前記光励起緑色発光構造を励起させて緑色光を生成させる青色-緑色光層と、
窒化物のエピタキシャル成長による光励起赤色発光構造を有し、前記青色光と前記緑色光が前記光励起赤色発光構造を励起させて赤色光を生成させる赤色光層と、
前記光励起赤色発光構造と前記光励起緑色発光構造との間に位置し、且つ前記光励起赤色発光構造と前記光励起緑色発光構造を接合及び固定させる接合層とを含むことを特徴とする三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造。
【請求項2】
前記接合層はサファイア接合層で、且つ前記光励起緑色発光構造及び前記光励起赤色発光構造はエピタキシャル成長により前記サファイア接合層の両側にそれぞれ形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード構造。
【請求項3】
前記接合層は接続接合層で、前記接続接合層は前記光励起赤色発光構造と前記光励起緑色発光構造を接続及び固定させ、且つ前記光励起緑色発光構造はサファイア基板に形成され、前記接続接合層は前記光励起赤色発光構造と前記サファイア基板を接着及び固定させることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード構造。
【請求項4】
前記電気励起青色発光構造は窒化アルミニウムインジウムガリウムで作製され、且つ前記電気励起青色発光構造は順に積層されたN型半導体層、青色活性層及びP型半導体層を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード構造。
【請求項5】
前記光励起緑色発光構造は窒化アルミニウムインジウムガリウムで作製され、前記光励起緑色発光構造は順に積層された第1閉じ込め層、緑色活性層及び第2閉じ込め層を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード構造。
【請求項6】
前記光励起赤色発光構造は窒化アルミニウムインジウムガリウムで作製され、前記光励起赤色発光構造は順に積層された第1閉じ込め層、赤色活性層及び第2閉じ込め層を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード構造。
【請求項7】
両面にエピタキシャル成長できるサファイア接合層を製造するステップと、
前記サファイア接合層の片側に、光励起緑色発光構造の第1閉じ込め層、緑色活性層及び第2閉じ込め層と、電気励起青色発光構造のN型半導体層、青色活性層及びP型半導体層とをこの順に形成させるステップと、
前記サファイア接合層の他側に、光励起赤色発光構造の第1閉じ込め層、赤色活性層及び第2閉じ込め層をこの順に形成させるステップとを含むことを特徴とする三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造の製造方法。
【請求項8】
印加電圧で前記電気励起青色発光構造を励起させて生成させた青色光を主光源とし、前記緑色活性層及び前記赤色活性層の厚さを調整して三原色の相対強度のコントロールを実現することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
サファイア基板の片側に、光励起緑色発光構造の第1閉じ込め層、緑色活性層及び第2閉じ込め層と、電気励起青色発光構造のN型半導体層、青色活性層及びP型半導体層とをこの順に形成させるステップと、
窒化物が成長できる基板に、光励起赤色発光構造の第2閉じ込め層、赤色活性層及び第1閉じ込め層をこの順に形成させるステップと、
接合層を利用して前記光励起赤色発光構造の前記第1閉じ込め層と前記サファイア基板を接続及び固定させるステップと、
前記基板を除去又は薄化するステップとを含むことを特徴とする三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造の製造方法。
【請求項10】
印加電圧で前記電気励起青色発光構造を励起させて生成させた青色光を主光源とし、前記緑色活性層及び前記赤色活性層の厚さを調整して三原色の相対強度のコントロールを実現することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記接合層の接続形態は透明の耐高温ポリマーによる接続、透明酸化物による高温高圧下の圧着接続及びスピンオンガラス(SOG)接続のうちのいずれかで、前記光励起赤色発光構造と前記サファイア基板を接続及び固定させることであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記基板の材質には単結晶サファイア、単結晶炭化ケイ素及び単結晶窒化ガリウムのうちのいずれかが使用されることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
研削薄化又はレーザー分離のいずれかの加工プロセスで前記基板を除去することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのバックライトに関し、特に、液晶ディスプレイのバックライトに用いられ三原色スペクトルを備える発光ダイオード構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT LCD)の発光原理は、三原色カラーフィルタ(Color-Filter)を通過させるバックライトに対し、TFT LCDが三原色のそれぞれの光透過率をコントロールして、様々な色を示す混光画素(Pixel)を得ることである。従来、カラーフィルタのバックライトとして一般的に用いられるのは白色発光LEDで、青色発光LEDチップで青色光を生成し、LEDの外面又は外部にコーティングされ蛍光フィルムとして存在する緑色蛍光体と赤色蛍光体に対し、青色光で2種の蛍光体を励起させ、混色させて白色光を生成する。
【0003】
特許文献1は次の構造を開示していた。電気励起発光で波長400nmの紫色光を生成し、光励起発光で青色光と緑色光を生成し、そして赤色発光物質、光励起赤色燐光性発光物質で赤色光を発光することで、演色性に優れた白色光を生成するものである。
【0004】
前記バックライトはいずれも蛍光体を用いるもので、蛍光体には一般に、スペクトルが広い(色純度が低い、階調が少ない、演色性が悪い)、信頼性が悪い(経年劣化)という問題がある。
【0005】
蛍光体におけるスペクトルの広さと信頼性の問題を緩和するために、赤色(R)LED、緑色(G)LED、青色(B)LEDの3つのLEDをバックライト光源とする案もあり、青色LED、緑色LEDは窒化物材料(AlGaInN)で、赤色LEDはリン化物とヒ化物からなる4元素材料(AlGaInP、AlGaAs)である。3つのLED(R、G、B)を使用するとスペクトル幅が狭くなり、ディスプレイに彩度が確保されるが、高コスト(3つのLEDチップが必要)、2段階の駆動電圧を必要とする(赤色光に対応する4元素材料の駆動電圧は2V以下と低く、青色光と緑色光に対応する窒化物材料の駆動電圧は3V以下と割りと高い)ことが欠点である。また、3つのLEDチップは空間的に並列して配置される必要があり、一つの小さな平面で混合させて発光できない。回路が複雑で、体積が大きく、高コストで、しかも3つのLEDチップは1つを用いるものより故障発生率が高い。
【0006】
特許文献2は化合物半導体である窒化物AlGaInNを主構造とする青色発光LEDを開示していた。電流が通過すると青色活性層(Active Region-1)を電気的に励起させて青色光を発光させ、二次構造は4元素化合物半導体構造(リン化物AlGaInP)で、黄色活性層(Active Region-2)であり、主構造を利用して励起光源(Primary Source)である高エネルギーの青色光を発生させ、二次構造である黄色活性層を励起させて黄色光(Secondary Source)を生成させ、黄色光と透過した青色光が混合して白色光を得る。
【0007】
図1は4元素エピタキシャル光励起赤色発光構造のエネルギーバンドを示す。当該構造は多重量子井戸で、両側の閉じ込め層(Confinement Layer)1と、複数のウェル(WELL)2と、複数のバリア(Barrier)3とを含み、4元素材料AlGaInPは格子がマッチするGaAs基板に成長するため、閉じ込め層1、バリア3の最大エネルギーギャップに対応する材料構成はAl
0.5In
0.5Pであり、エネルギーギャップ(Eg)は約2.5eVで、当該材料は492nm以下の波長を吸収し、青色光の460nmのエネルギーが2.7eVであるため、4元素化合物半導体構造(リン化物AlGaInP)のバリア3と閉じ込め層1が多くの青色光を吸収して発光せず、4元素エピタキシャル光励起赤色発光構造の発光効率が低く商業的に価値がないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国登録特許第US9214601B1号
【特許文献2】PCT国際出願第WO0076005A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであって、車内で高温又は低温下で振動が続く環境に使用するというニーズを満たすために、三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造及び製造方法を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、窒化物のエピタキシャル成長による電気励起青色発光構造と窒化物のエピタキシャル成長による光励起緑色発光構造とを有し、当該光励起緑色発光構造は当該電気励起青色発光構造に設けられ、当該電気励起青色発光構造は印加電圧の励起で青色光を生成し、当該青色光が当該光励起緑色発光構造を励起させて緑色光を生成させる青色-緑色光層と、窒化物のエピタキシャル成長による光励起赤色発光構造を有し、当該青色光と当該緑色光が当該光励起赤色発光構造を励起させて赤色光を生成させる赤色光層と、当該光励起赤色発光構造と当該光励起緑色発光構造との間に位置し、且つ当該光励起赤色発光構造と当該光励起緑色発光構造を接合及び固定させる接合層とを含む、三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造を開示する。
【0011】
本発明に係る製造方法の一実施例では、両面にエピタキシャル成長できるサファイア接合層を製造するステップと、当該サファイア接合層を当該接合層として使用し、当該サファイア接合層の片側に、当該光励起緑色発光構造の第1閉じ込め層、緑色活性層及び第2閉じ込め層と、当該電気励起青色発光構造のN型半導体層、青色活性層及びP型半導体層とをこの順に形成させるステップと、当該サファイア接合層の他側に、当該光励起赤色発光構造の第1閉じ込め層、赤色活性層及び第2閉じ込め層をこの順に形成させるステップとを含む。
【0012】
本発明に係る製造方法の別の実施例では、サファイア基板の片側に、当該光励起緑色発光構造の当該第1閉じ込め層、当該緑色活性層及び当該第2閉じ込め層と、当該電気励起青色発光構造の当該N型半導体層、当該青色活性層及び当該P型半導体層とをこの順に形成させるステップと、次に、窒化物が成長できる基板に、当該光励起赤色発光構造の当該第2閉じ込め層、当該赤色活性層及び当該第1閉じ込め層をこの順に形成させるステップと、当該接合層を利用して当該光励起赤色発光構造の当該第1閉じ込め層と当該サファイア基板を接続(結合又は接着)及び固定させるステップと、当該基板の光吸収を低減するために、当該基板を薄化又は除去するステップとを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る三原色スペクトル(緑色光、青色光又は赤色光)で発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造では、印加電圧で電気励起青色発光構造を励起させて青色光を生成させ、当該青色光が光励起緑色発光構造を励起させて緑色光を生成させ、そして当該青色光と当該緑色光が光励起赤色発光構造を励起させて赤色光を生成させ、吸収されず透過した青色光、緑色光が赤色光と混光して三原色スペクトルを生成するものであり、全固体半導体材料から構成され、蛍光体は用いられない。信頼性が高く、半値幅が比較的狭い三原色スペクトルを備え、青色光回路が1つだけであり、同じ平面から均一に発光するという特性があり、車内で高温又は低温下で振動が続く環境に使用するというニーズを満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は従来の4元素エピタキシャル光励起赤色発光構造のエネルギーバンドを示す。
【
図2】
図2は本発明の第1実施例の構造の断面概略図である。
【
図3】
図3は本発明の緑色活性層の異なる厚さにおける発光強度の概略図である。
【
図4】
図4は本発明の三原色の発光強度の概略図である。
【
図5】
図5は本発明の第2実施例の構造の断面概略図である。
【
図6】
図6は本発明の第2実施例の半製品構造の断面概略図その1である。
【
図7】
図7は本発明の第2実施例の半製品構造の断面概略図その2である。
【
図8】
図8は本発明の第2実施例の半製品構造の断面概略図その3である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴、目的及び効果の理解を促すために、以下では、好ましい実施例を挙げ図面を添えて説明する。
図2は本発明の第1実施例を示す。本発明は、窒化物のエピタキシャル成長による電気励起青色発光構造10と、窒化物のエピタキシャル成長による光励起緑色発光構造20と、窒化物のエピタキシャル成長による光励起赤色発光構造30と、サファイア接合層40(結合層)とを含む三原色スペクトルで発光できるフリップチップ型発光ダイオード構造を開示する。電気励起青色発光構造10及び光励起緑色発光構造20は青色-緑色光層の青緑エピタキシャル構造であり、当該青色-緑色光層は波長範囲が450~465nmである青色光及び波長範囲が520~545nmである緑色光を生成でき、光励起赤色発光構造30は赤色光層の赤色エピタキシャル構造であり、当該赤色光層は波長範囲が620~645nmである赤色光を生成できる。
【0016】
電気励起青色発光構造10は窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlGaInN)で作製され、且つ電気励起青色発光構造10は同じ平面に位置するN型電極11及びP型電極12を含んでもよく、P型電極12には金属層13、反射層14、P型半導体層15、青色活性層16及びN型半導体層17がこの順に設けられ、且つN型半導体層17はN型電極11に接続され、P型半導体層15、青色活性層16及びN型半導体層17は電気励起青色発光構造10の主な発光構造で、印加電圧の励起で当該青色光を生成でき、N型電極11、P型電極12、金属層13及び反射層14は当該印加電圧を供給するフリップチップ電極と当該青色光を取り出す光反射構造である。
【0017】
光励起緑色発光構造20は窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlGaInN)で作製され、光励起緑色発光構造20は電気励起青色発光構造10に設けられる。光励起緑色発光構造20は順に積層された緩衝層21、第1閉じ込め層22、緑色活性層23及び第2閉じ込め層24を含み、N型半導体層17は第2閉じ込め層24に形成され、第1閉じ込め層22、緑色活性層23及び第2閉じ込め層24は光励起緑色発光構造20の主な発光構造で、当該青色光の励起で当該緑色光を生成する。
【0018】
光励起赤色発光構造30は窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlGaInN)で作製され、光励起赤色発光構造30は順に積層された緩衝層31、第1閉じ込め層32、赤色活性層33及び第2閉じ込め層34を含み、第1閉じ込め層32、赤色活性層33及び第2閉じ込め層34は光励起赤色発光構造30の主な発光構造で、当該青色光と当該緑色光の励起で当該赤色光を生成する。本発明の光励起赤色発光構造30(赤色活性層33)は窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlGaInN)で作製され、光励起赤色発光構造30は、第1閉じ込め層32、赤色活性層33及び第2閉じ込め層34で構成された多重量子井戸で、赤色活性層33は、ウェル(WELL)及びバリア(Barrier)で構成された複数の対(Pair)の多重量子井戸を有し、赤色活性層33のウェル(WELL)のエネルギーギャップ(Eg)は約1.95eVで、第1閉じ込め層32、第2閉じ込め層34及び赤色活性層33のバリア(Barrier)のエネルギーギャップ(Eg)は約3.42eVで、青色光の460nmのエネルギーギャップは約2.7eVであるため、第1閉じ込め層32、第2閉じ込め層34及び赤色活性層33のバリア(Barrier)は青色光を吸収せず、赤色活性層33のウェル(WELL)だけが青色光を吸収して当該赤色光を励起させることで、発光しないことが生み出す損失が減らされ、発光効率が効率的に向上される。
【0019】
サファイア接合層40は光励起赤色発光構造30と光励起緑色発光構造20との間に位置し、サファイア接合層40は光励起赤色発光構造30と光励起緑色発光構造20を接合及び固定させる。本実施例では、サファイア接合層40は接合層として使用され、サファイア接合層40はサファイア基板(Sapphire Wafer)で、且つ光励起緑色発光構造20及び光励起赤色発光構造30はサファイア接合層40(接合層)の両側にそれぞれ形成される。実際には、サファイア接合層40(接合層)の両側に光励起緑色発光構造20の緩衝層21、光励起赤色発光構造30の緩衝層31がそれぞれ形成され、即ちサファイア接合層40は青緑エピタキシャル構造の緩衝層21と赤色エピタキシャル構造の緩衝層31を接合及び固定させる構造となっている。
【0020】
当該電気励起青色発光構造が当該印加電圧の励起で当該青色光を生成し、当該青色光が当該光励起緑色発光構造を励起させて当該緑色光を生成させ、そして当該青色光と緑色光が当該光励起赤色発光構造を励起させて当該赤色光を生成させ、吸収されず透過した当該青色光、当該緑色光が当該赤色光と混光して三原色スペクトルを生成する。
【0021】
本実施例の製造方法のステップは以下のとおりである。まず、両面にエピタキシャル成長できるサファイア接合層40を製造し、サファイア接合層40を当該接合層として使用する。サファイア接合層40(接合層)の片側に、光励起緑色発光構造20及び電気励起青色発光構造10をこの順に形成させる。より詳しく言えば、サファイア接合層40(接合層)の片側に、緩衝層21、第1閉じ込め層22、緑色活性層23及び第2閉じ込め層24をこの順に形成させ、続いてN型半導体層17、青色活性層16及びP型半導体層15を形成させる。後続のプロセスで電気励起青色発光構造10の反射層14、金属層13、P型電極12、N型電極11などの構造を完成させる。
【0022】
本実施例の製造方法ではさらに、サファイア接合層40(接合層)の他側に、光励起赤色発光構造30を形成させ、即ち緩衝層31、第1閉じ込め層32、赤色活性層33及び第2閉じ込め層34をこの順に形成させる。
【0023】
第1実施例で、第1閉じ込め層22はドープせず厚さが約1~3μmであるU-GaNであり、緑色活性層23は多重量子井戸構造(対数は20~50対の量子井戸で、ウェルの構成はIn0.26Ga0.74Nで、厚さは約20~40Åで、バリアはGaNで、厚さは約50~150Åである)。第2閉じ込め層24はドープせず厚さが約1~3μmであるU-GaNである。N型半導体層17は2~4μmのN型半導体で、材料はN-GaN(Siをドープした)であってもよい。青色活性層16は多重量子井戸構造である(対数は12~25対の多重量子井戸で、ウェルの構成はIn0.17Ga0.83Nで、厚さは約20~40Åで、バリアの構成はGaNで、厚さは約50~150Åである)。P型半導体層15は0.2~0.6μmのP型半導体で、材料はP-GaN(Mgをドープした)であってもよい。
【0024】
図2、
図3及び
図4に示すように、プロセスとしては、当該印加電圧で電気励起青色発光構造10を励起させて生成させた青色光を主光源とし、緑色活性層23の厚さを調整(一般にはMQW(量子井戸)の対数を調整)して、緑色光に変換される当該青色光の割合をコントロールすることで、青色光強度と緑色光強度の様々な組み合わせを得る。
図3は、量子井戸の対数(pairs)別の青色光強度60及び緑色光強度70の相対強度比較の概略図である。量子井戸の対数(pairs)がそれぞれ10pairs、25pairs、40pairsであるものを例として説明し、緑色活性層23の量子井戸の対数が10である時、青色光強度60は緑色光強度70より大きく、緑色活性層23の量子井戸の対数が40である時、青色光強度60は緑色光強度70より小さい。図から分かるように、緑色活性層23における量子井戸の対数をコントロールすれば、対数が厚さに比例するため緑色光に変換される当該青色光の割合をコントロールすることを実現できる。同様に、さらに赤色活性層33の厚さをコントロールし、つまり量子井戸の対数をコントロールすれば、赤色光に変換される当該青色光と当該緑色光の割合をコントロールできる。したがって、本発明は緑色活性層23及び赤色活性層33の厚さを調整して三原色(緑色光、青色光、赤色光)の相対強度をコントロールできる。コントロール後の三原色(緑色光、青色光、赤色光)の相対強度は、
図4に示すように、青色光強度60、緑色光強度70及び赤色光強度80がほぼ同じとなり、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT LCD)のバックライトとして使用するのに適する。
【0025】
図5は本発明の第2実施例を示す。本実施例では、電気励起青色発光構造10と、光励起緑色発光構造20と、光励起赤色発光構造30とを含む点で変わりはないが、サファイア材料と窒化物半導体閉じ込め層材料を接続させる物質は接続接合層41として使用され、接続接合層41は光励起赤色発光構造30及び光励起緑色発光構造20(電気励起青色発光構造10)を固定させる点で本実施例は第1実施例と違う。且つ光励起緑色発光構造20はサファイア基板42に形成され、接続接合層41は光励起赤色発光構造30とサファイア基板42を接続及び固定させる。
【0026】
本発明の第2実施例の製造方法のステップは以下のとおりである。まず、
図6に示すように、サファイア基板42の片側に、光励起緑色発光構造20の緩衝層21、第1閉じ込め層22、緑色活性層23及び第2閉じ込め層24と、電気励起青色発光構造10のN型半導体層17、青色活性層16及びP型半導体層15とをこの順に形成させる。
【0027】
次に
図7に示すように、窒化物が成長できる基板50に、光励起赤色発光構造30を形成させ、基板50の材質には単結晶(Single Crystal)サファイア(Sapphire)、単結晶(Single Crystal)炭化ケイ素(SiC)及び単結晶(Single Crystal)窒化ガリウム(GaN)のうちのいずれかが使用される。実際のプロセスとしては、まず基板50に緩衝層51を形成させ、次に緩衝層51に光励起赤色発光構造30の第2閉じ込め層34、赤色活性層33及び第1閉じ込め層32をこの順に形成させてもよい。
【0028】
続いて
図8に示すように、接続接合層41(結合層)を利用して光励起赤色発光構造30の第1閉じ込め層32とサファイア基板42を接続及び固定させ、言い換えれば
図6及び
図7の構造を接続接合層41(結合層)によって接続及び固定させる。接続接合層41(結合層)はサファイア基板42と光励起赤色発光構造30の第1閉じ込め層32を接続させるもので、後続のプロセスに備え、安定的な構造と耐高温性(摂氏300度以下)が求められる。接続接合層41(結合層)の接続形態として利用できるのは、(a)透明の耐高温ポリマー(polymer)(例えば、シリコーン(Silicone)、エポキシ樹脂(Epoxy)など)による接続、(b)スピンオンガラス(Spin-on glass、略称SOG、あるいは液体SiO
2)による接続、(c)透明酸化物(例えば、SiO
2、SiNなど)による高温高圧下の圧着接続である。このうちポリマー(polymer)接続は最も簡単で、酸化物による高温下の圧着は構造が最良で透明度が最も優れる。
【0029】
次に基板50を除去し、研削薄化又はレーザー分離のいずれかのプロセスで基板50を除去できる。後続のプロセスにおいて電気励起青色発光構造10の反射層14、金属層13、P型電極12、N型電極11などの構造を完成させれば、
図5に示す構造を得る。研削薄化を選択する場合には基板50の大半が除去され、レーザー分離を選択する場合には基板50の全体が除去される。
【0030】
上述したように、本発明は少なくとも以下の利点を有する。
1.本発明では電気励起で青色光を生成させ、光励起で緑色光及び赤色光を生成させることで、三原色スペクトルでの表示を実現できる。
【0031】
2.各層の材料は全固体半導体材料で構成されるため、蛍光体の場合の光減衰や信頼性の問題がなく、極高温又は低温下で振動が続く環境で使用するニーズが満たされ、自動車業界の発光部品としての要件に合っている。
【0032】
3.電気励起青色発光構造の青色活性層、光励起緑色発光構造及び光励起赤色発光構造の赤色活性層の厚さを調整して三原色スペクトルの強度調整を実現でき、TFT LCDバックライトの光源として使用できる。三原色スペクトルの半値幅が狭いため、適切なカラーフィルタ(Color-Filter)を用いれば効果的に発光効率を高めることができ、高輝度下の操作に適し、しかも発熱が少ないため日光下で車用ディスプレイの性能向上に役立つ。
【0033】
4.本発明と窒化ガリウム成長による赤色光LEDを比べると、窒化ガリウム成長による赤色光LEDは電気励起発光構造で、本発明は光励起赤色発光構造である。光励起赤色光窒化物半導体構造を成長させるには、光励起発光の特性だけを考慮してよく、比較的複雑なPN接合の成長又は導電性のための半導体ドープが不要であるため、エピタキシャル成長により赤色活性層として単結晶の品質が優れた窒化物を得るのに適し、光励起構造ではより高い発光効率を得る。
【0034】
5.プロセスはウェハーレベルで行われる。ウェハー半導体製造プロセスで三原色構造を得るのは、大量生産に適するだけでなく、任意のチップサイズでの製造が可能で、非常に小さいサイズの三原色チップでも得やすく、しかも非常に小さいチップサイズ(100μm未満)においては、蛍光体の粒径サイズが近い(粒径は約10μm)とはいえ蛍光体のコーティングで問題がなくて済む。
【符号の説明】
【0035】
10 電気励起青色発光構造
11 N型電極
12 P型電極
13 金属層
14 反射層
15 P型半導体層
16 青色活性層
17 N型半導体層
20 光励起緑色発光構造
21 緩衝層
22 第1閉じ込め層
23 緑色活性層
24 第2閉じ込め層
30 光励起赤色発光構造
31 緩衝層
32 第1閉じ込め層
33 赤色活性層
34 第2閉じ込め層
40 サファイア接合層
41 接続接合層
42 サファイア基板
50 基板
51 緩衝層
60 青色光強度
70 緑色光強度
80 赤色光強度