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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163972
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】インナーフォーカス光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20221020BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069138
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】小山 武久
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087MA07
2H087PA07
2H087PA18
2H087PB08
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA43
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】
フォーカスレンズ群が軽量で、またフォーカスレンズ群を光軸に沿う方向へ微少振動(ウオブリング)させた際の像高変化率が小さく、F値が1.4と明るく、35mm判換算焦点距離で40mm相当の画角を有するインナーフォーカス光学系を提供する。
【解決手段】
物体側から像側へ順に、負の単レンズからなる第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3、正又は負の屈折力の第4レンズ群G4とからなり、無限遠物体側から近距離物体側へのフォーカシングをする際、前記第3レンズ群G3が物体側へ移動するインナーフォーカス光学系とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、負の単レンズからなる第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正又は負の屈折力の第4レンズ群G4とからなり、無限遠物体側から近距離物体側へのフォーカシングをする際に、前記第3レンズ群G3が物体側へ移動するインナーフォーカス光学系。
【請求項2】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のインナーフォーカス光学系。
(1)-0.7<f/f1<-0.14
(2)-1.1<f2/f1<-0.24
(3)0.15<f/f3<0.76
(4)-0.2<f/f4<0.1
ただし、
f:全系の無限遠合焦状態での焦点距離
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
【請求項3】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーフォーカス光学系。
(5)0.7<M4<1.0
ただし、
M4:物体距離無限遠合焦時の第4レンズ群G4の倍率負担
【請求項4】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインナーフォーカス光学系。
(6)0.25<(M4^2×(1-M3^2))<1.5
ただし、
M3:物体距離無限遠合焦時の第3レンズ群G3の倍率負担
M4:物体距離無限遠合焦時の第4レンズ群G4の倍率負担
【請求項5】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインナーフォーカス光学系。
(7)60<VdG1
ただし、
VdG1:第1レンズ群G1のアッベ数
【請求項6】
正の屈折力の前記第3レンズ群G3が単レンズからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインナーフォーカス光学系。
【請求項7】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインナーフォーカス光学系。
(8)2.5<D/Y<10.4
ただし、
D:開口絞りSから像面までの長さ
Y:最大像高
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置に用いる撮影レンズに好適な光学系に関し、オートフォーカスカメラに適したインナーフォーカス方式を採用し、またフォーカスレンズ群を光軸に沿う方向への微少振動(ウオブリング)させた際の像高変化率が小さく、F値が1.4と明るく、35mm判換算焦点距離で40mm相当の画角を有するインナーフォーカス光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、写真カメラやスチルビデオカメラに用いられる広角レンズはレトロフォーカスタイプが用いられてきた。これはミラーアップ機構を採用する一眼レフシステム用として、一定以上のバックフォーカスを確保するためであった。
【0003】
一方、ミラーレス一眼タイプのボディは動画撮影にも頻繁に使用されるため、そのオートフォーカス方式に、フォーカスレンズ群を光軸に沿う方向へ微少振動(ウオブリング)させ続けることで、常にフォーカス駆動方向を判断し続ける形式のインナーフォーカス方式が採用されることが多い。その際、ウオブリング時の像高変化率が大きいと、鑑賞者が画面に映る被写体の倍率変動を認識し、目障りに感じてしまうため、フォーカス変化に対し像高変化率が小さいフォーカス方式を必要としている。
【0004】
このような要求に対し特許文献1では、物体側より順に、正の屈折力の第1レンズ群G1、負の屈折力の第2レンズ群G2、正の屈折力の第3レンズ群G3からなり、開口絞りは第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に配置し、第2レンズ群G2を像面側へ移動することでフォーカシングを行う大口径レンズにおいて、所定の条件を満足させることで、簡易な構成ながら、動画撮影時のオートフォーカスに対応するため、フォーカスレンズ群の重量を削減しつつ、フォーカシングによる収差変動が少なく、インナーフォーカス方式を採用する開放F値1.4程度の明るさにも適応可能で高性能な大口径レンズを開示している。
【0005】
また、特許文献2では、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、正の屈折力を有する第2レンズ群G2、負の屈折力を有する第3レンズ群G3からなり、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に、第2レンズ群G2が物体側へ移動し、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3は像面Iに対して固定であり、前記第1レンズ群G1は、絞りSを含み、所定のレンズ群からなり、前記第3レンズ群G3は、所定のレンズ群からなり、所定の条件式を満足することで結像光学系と撮像素子との間隔が短く、小型化を実現しており、Fナンバーが小さく、光線射出角を抑えることができ、無限遠撮影から近距離撮影において諸収差を良好に補正した、画角が40~60°程度の結像光学系を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-3324号公報
【特許文献2】特開2015-75501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたレンズ系では、フォーカスレンズ群と絞りが隣接しているため、動画撮影時のオートフォーカスのフォーカスレンズ群を光軸に沿う方向へ微少振動(ウオブリング)させた際の像高変化率が大きいため、鑑賞者が画面に映る被写体の倍率変動を認識し、目障りに感じてしまう課題がある。
【0008】
また、前記特許文献2では、フォーカスレンズ群が接合レンズを含む3枚で構成されているため、微小振動させながらオートフォーカスを行うにはフォーカスレンズ群の軽量化が十分でない。
【0009】
そこで、本発明は、以下に示す手段により、フォーカスレンズ群が軽量で、またフォーカスレンズ群を光軸に沿う方向へ微少振動(ウオブリング)させた際の像高変化率が小さく、F値が1.4と明るく、35mm判換算焦点距離で40mm相当の画角を有するインナーフォーカス光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、第1の発明のインナーフォーカス光学系は、物体側から像側へ順に、負の単レンズからなる第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正又は負の屈折力の第4レンズ群G4とからなり、無限遠物体側から近距離物体側へのフォーカシングをする際に、前記第3レンズ群G3が物体側へ移動する。
【0011】
第2の発明のインナーフォーカス光学系は、以下の条件を満足することを特徴とする。
(1)-0.7<f/f1<-0.14
(2)-1.1<f2/f1<-0.24
(3)0.15<f/f3<0.76
(4)-0.2<f/f4<0.1
ただし、
f:全系の無限遠合焦状態での焦点距離
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
【0012】
第3の発明のインナーフォーカス光学系は、以下の条件を満足することを特徴とする。
(5)0.7<M4<1.0
ただし、
M4:物体距離無限遠合焦時の第4レンズ群G4の倍率負担
【0013】
第4の発明のインナーフォーカス光学系は、以下の条件を満足することを特徴とする。
(6)0.25<(M4^2×(1-M3^2))<1.5
ただし、
M3:物体距離無限遠合焦時の第3レンズ群G3の倍率負担
M4:物体距離無限遠合焦時の第4レンズ群G4の倍率負担
【0014】
第5の発明のインナーフォーカス光学系は、以下の条件を満足することを特徴とする。
(7)60<VdG1
ただし、
VdG1:第1レンズ群G1のアッベ数
【0015】
第6の発明のインナーフォーカス光学系は、正の屈折力の前記第3レンズ群G3が単レンズからなることを特徴とする。
【0016】
第7の発明のインナーフォーカス光学系は、以下の条件を満足することを特徴とする。
(8)2.5<D/Y<10.4
ただし、
D:開口絞りSから像面までの長さ
Y:最大像高
【発明の効果】
【0017】
本発明により、オートフォーカスカメラに適したインナーフォーカス方式を採用し、またフォーカスレンズ群を光軸に沿う方向へ微少振動(ウオブリング)させた際の像高変化率が小さく、F値が1.4と明るく、35mm判換算焦点距離で40mm相当の画角を有するインナーフォーカス光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1のインナーフォーカス光学系の撮影距離無限遠におけるレンズ構成図。
図2】本発明の実施例1の撮影距離無限遠における縦収差図。
図3】本発明の実施例1の撮影倍率0.025倍における縦収差図。
図4】本発明の実施例1の撮影距離無限遠における横収差図。
図5】本発明の実施例1の撮影倍率0.025倍における横収差図。
図6】本発明の実施例2のインナーフォーカス光学系の撮影距離無限遠におけるレンズ構成図。
図7】本発明の実施例2の撮影距離無限遠における縦収差図。
図8】本発明の実施例2の撮影倍率0.025倍における縦収差図。
図9】本発明の実施例2の撮影距離無限遠における横収差図。
図10】本発明の実施例2の撮影倍率0.025倍における横収差図。
図11】本発明の実施例3のインナーフォーカス光学系の撮影距離無限遠におけるレンズ構成図。
図12】本発明の実施例3の撮影距離無限遠における縦収差図。
図13】本発明の実施例3の撮影倍率0.025倍における縦収差図。
図14】本発明の実施例3の撮影距離無限遠における横収差図。
図15】本発明の実施例3の撮影倍率0.025倍における横収差図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態のインナーフォーカス光学系について説明する。なお、以下の実施例の説明は本発明の光学系の一例を説明したものであり、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において本実施例に限定されるものではない。
【0020】
本発明のインナーフォーカス光学系は、図1、6、11に示すレンズ構成図からわかるように、物体側から像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3と、正又は負の屈折力の第4レンズ群G4からなり、無限遠物体側から近距離物体側へのフォーカシングをする際、第3レンズ群G3が物体側へ移動する。
【0021】
上記構成が必要な理由は以下のとおりである。すなわち、光軸に対し大きい角度でレンズ第1面に入射する軸外主光線を負の屈折力の第1レンズ群G1で緩やかにして絞り面に射出し、正の屈折力の第2レンズ群G2でさらに緩やかにすることにより、フォーカスレンズ群である第3レンズ群G3に入射する軸外主光線の傾角を緩くすることが可能であり、像高変化率の縮小に寄与する。
【0022】
また、撮像素子への入射角が大きくなるとシェーディングが問題となってくるので、軸外光束の射出角が小さくなる光学系が求められている。前述のようにフォーカスレンズ群に入射する軸外主光線の光軸に対しての角度が小さいため、フォーカスレンズ群の正の屈折力を大きくしなくても、撮像素子へ届く軸外主光線の入射角を小さくすることが可能になる。さらに、フォーカスレンズ群の屈折力が小さければ、レンズ群が軽量になるため、フォーカスレンズ群を微小振動(ウオブリング)させやすくなる。
【0023】
また、絞りとフォーカスレンズ群の間に正の屈折力のレンズ群を配置することで、フォーカス群から見た絞りの像を遠方に射影することにより、上記像高変化率を小さくすることが可能となる。
【0024】
また、フォーカスレンズ群の像側に第4レンズ群G4を配置することでフォーカスレンズ群までの残存収差の補正を効果的に行うことが可能となる。
【0025】
これらより、フォーカスレンズ群を光軸に沿う方向への微少振動(ウオブリング)させた際の像高変化率が小さく、さらに35mm判換算焦点距離で40mm相当の画角を有するインナーフォーカス光学系の提供が可能となる。
【0026】
さらに、本実施形態のインナーフォーカス光学系は以下の条件式を満足することが好ましい。
(1)-0.7<f/f1<-0.14
(2)-1.1<f2/f1<-0.24
(3)0.15<f/f3<0.76
(4)-0.2<f/f4<0.1
ただし、
f:全系の無限遠合焦状態での焦点距離
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
f4:第4レンズ群G4の焦点距離
【0027】
条件式(1)において、第1レンズ群G1と全系の焦点距離の比を適切に規定することで、周辺画角での光線の入射角を緩和させ、これを後続の光学系に転送させることが可能となる。
【0028】
条件式(1)の下限を超え、第1レンズ群G1の負の屈折力が大きくなると、第1レンズ群G1内の凹面の曲率がさらに大きくなり正の球面収差の発生要因となる。また、第2レンズ群G2への軸上光線の入射角および光線高が大きくなるため高次収差の発生要因となり、収差補正が困難になる。またバックフォーカスが長くなるため光学系全長も長くなる。
【0029】
一方、条件式(1)の上限を超え、第1レンズ群G1の負の屈折力が小さくなると、開口絞りSを通過する下光線の傾角の緩和がなされないため、後続のレンズ群に入射する下光線の入射角が大きくなり、下光線のコマフレアの補正が困難になる。
【0030】
なお、条件式(1)について、望ましくはその下限値を-0.5に、また上限値を-0.2に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0031】
条件式(2)において、第2レンズ群G2と第1レンズ群G1の焦点距離の比を適切に規定することで、周辺画角の最大画角を保持し、かつ大口径化が可能となる。
【0032】
条件式(2)の下限を超え、第2レンズ群G2の正の屈折力が相対的に小さくなる、あるいは第1レンズ群G1の負の屈折力が大きくなると、フォーカスレンズ群である第3レンズ群G3の正の屈折力を強くしなければ全体の屈折力を確保できない。このためフォーカス時の球面収差と非点収差の変動を同時に補正することが困難になる。
【0033】
一方、条件式(2)の上限を超え、第2レンズ群G2の正の屈折力が相対的に大きくなる、あるいは第1レンズ群G1の負の屈折力が小さくなると、大口径化時の球面収差とコマ収差の補正が困難になる。
【0034】
なお、条件式(2)について、望ましくはその下限値を-0.85に、また上限値を-0.32に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0035】
条件式(3)において、フォーカスレンズ群である第3レンズ群G3と無限遠合焦時の全系の焦点距離の比を適切に規定することで、フォーカス時の収差変動を抑えることが可能となる。
【0036】
条件式(3)の下限を超え、第3レンズ群の正の屈折力が相対的に小さくなると、フォーカス時の第3レンズ群G3の移動量が大きくなり、光学系全長が大きくなる。また、ウオブリング時の振幅量を大きくしなければならず、アクチュエータへの負荷がかかるため好ましくない。
【0037】
一方、条件式(3)の上限を超え、第3レンズ群G3の正の屈折力が相対的に大きくなると、フォーカス時の第3レンズ群G3の移動量が小さくなり、スペース的には有利になるが、フォーカス時の球面収差と非点収差の変動を同時に補正することが困難になる。
【0038】
なお、条件式(3)について、望ましくはその下限値を0.2に、また上限値を0.57に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0039】
条件式(4)は、第4レンズ群G4と全系の焦点距離の比を適切に規定することにより、フォーカスレンズ群までの残存収差を補正し、全系としての性能を高めることが可能となる。また第4レンズ群G4自身の残存収差を少なくするためには、第4レンズ群G4自身の屈折力を弱くする必要がある。
【0040】
条件式(4)の下限を超え、第4レンズ群G4の負の屈折力が大きくなると、第4レンズ群G4の結像倍率は拡大系となるため、フォーカスレンズ群までの残像収差を倍化させるため、高性能化が困難になる。
【0041】
一方、条件式(4)の上限を超え、第4レンズ群G4の正の屈折力が大きくなると、第4レンズ群G4の結像倍率は縮小系となり、全系が大型化するので好ましくない。
【0042】
なお、条件式(4)について、望ましくはその下限値を-0.15に、また上限値を0.07に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0043】
なお、第4レンズ群自身の残存収差を少なくするために、第4レンズ群G4を構成するレンズは正のレンズ、負のレンズを各1枚ずつ必要とする。
【0044】
さらに本発明の結像光学系では、以下に示す条件式を満足することが望ましい。
(5)0.7<M4<1.0
ただし、
M4:物体距離無限遠合焦時の第4レンズ群G4の倍率負担
【0045】
条件式(5)は第4レンズ群G4の結像倍率を規定する。これによりフォーカスレンズ群までの残存収差を増倍させず、全系としての性能を高めることが可能となる。
【0046】
条件式(5)の下限を超え、第4レンズ群G4の結像倍率が小さくなると、フォーカス群までの残存収差は縮小されるが、全系が大型化し好ましくない。
【0047】
一方、条件式(5)の上限を超え、第4レンズ群G4の結像倍率が1を超えると、フォーカスレンズ群までの残存収差が拡大するため、その収差を補正することが困難になる。
【0048】
なお、条件式(5)について、望ましくはその下限値を0.8に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0049】
さらに本発明の結像光学系では、以下に示す条件式を満足することが望ましい。
(6)0.25<(M4^2×(1-M3^2))<1.5
ただし、
M3:物体距離無限遠合焦時の第3レンズ群G3の倍率負担
M4:物体距離無限遠合焦時の第4レンズ群G4の倍率負担
【0050】
条件式(6)は第3レンズ群G3がフォーカス時に移動した時の結像面の敏感度を規定する。この値を適切に規定することにより、オートフォーカスの際の合焦範囲内にフォーカスレンズ群を精度良く駆動制御することが可能となる。
【0051】
条件式(6)の下限を超えフォーカス時に移動した時の結像面の敏感度が小さくなると、フォーカスレンズ群の移動量が大きくなるため、ウオブリングによるフォーカスレンズ群の主光線高の変動が大きくなり、像高変動を抑制する効果は弱くなり、ウオブリング時の像高変動を抑えることが困難になる。
【0052】
一方、条件式(6)の上限を超え、フォーカス時に移動した時の結像面の敏感度が大きくなると、フォーカスレンズ群の移動量が少なくなるため、フォーカスレンズ群の微少な動きで結像面が大きく動き、オートフォーカスの際の合焦範囲内にフォーカスレンズ群である第3レンズ群G3を駆動制御することが困難になる。
【0053】
なお、条件式(6)について、望ましくはその下限値を0.35さらには0.42に、また上限値を1.1さらには0.95に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0054】
さらに本発明の結像光学系では、以下に示す条件式を満足することが望ましい。
(7)60<VdG1
ただし、
VdG1:第1レンズ群G1のアッベ数
【0055】
条件式(7)は高性能化のため、第1レンズ群G1のアッベ数を規定したものである。
【0056】
条件式(7)の下限値を超え、第1レンズ群G1のアッベ数が小さくなると倍率色収差が悪化しこれをレンズ全系で補正することが困難となる。
【0057】
なお、上述した条件式(7)について、下限値を65.0に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0058】
さらに、本発明のインナーフォーカス光学系では、正の屈折力の第3レンズ群G3が単レンズからなることが望ましい。これによりフォーカス群を軽量化することができ、フォーカス駆動用のアクチュエータの小型化ひいては製品サイズの小型化が可能となる。
【0059】
さらに、本発明の結像光学系では、以下に示す条件式を満足することが望ましい。
(8)2.5<D/Y<10.4
ただし、
D:開口絞りSから像面までの長さ
Y:最大像高
【0060】
条件式(8)は開口絞りSから像面までの長さと最大像高の比を適切に規定することでウオブリング時の像高変動を抑制することが可能となる。
【0061】
条件式(8)の下限値を超え、開口絞りSから像面までの長さと最大像高の比が小さくなると、軸外像面への入射角が大きくなり、ウオブリング時のフォーカスレンズ群主光線高の変動が大きくなるため、ウオブリング時の像高変動を抑制することが困難になる。
【0062】
一方、条件式(8)の上限を超え、開口絞りSから像面までの長さと最大像高の比が大きくなると、全系光学系大きくなり好ましくない。
【0063】
なお、条件式(8)について、望ましくはその下限値を3.3に、また上限値を7.8に限定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0064】
本発明のインナーフォーカス光学系では、以下の構成を伴うことがより効果的である。
【0065】
本発明のインナーフォーカス光学系では、第3レンズ群G3を単レンズで構成しているが、接合レンズあるいは回折光学面にてフォーカスレンズ群を色消しすることにより、フォーカス時のフォーカスレンズ群の移動による色収差の変動を抑制することも可能である。
【0066】
次に、本発明のインナーフォーカス光学系に係る各数値実施例について説明する。
【0067】
[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面又は開口絞りの番号、rは各面の曲率半径、dは各面の間隔、ndはd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数を示す。また、BFはバックフォーカスを表す。
【0068】
面番号を付した(絞り)には、平面または開口絞りに対する曲率半径∞(無限大)を記入している。また、空気の屈折率n=1.0000はその記載を省略する。
【0069】
[非球面データ]には[面データ]において*を付したレンズ面の非球面形状を与える各係数値を示している。非球面の形状は、光軸に直交する方向への変位をy、非球面と光軸の交点から光軸方向への変位(サグ量)をz、コーニック係数をK、4、6、8、10次の非球面係数をそれぞれA4、A6、A8、A10と置くとき、非球面の座標が以下の式で表わされるものとする。
【0070】
[各種データ]には、焦点距離等の値を示している。
【0071】
[可変間隔データ]には、各撮影距離状態又は各撮影倍率状態における可変間隔及びBF(バックフォーカス)の値を示している。
【0072】
[レンズ群データ]には、各レンズ群を構成する最も物体側の面番号及び群全体の合成焦点距離を示している。なお、以下の全ての諸元の値において、記載している焦点距離f、曲率半径r、レンズ面間隔d、その他の長さの単位は特記のない限りミリメートル(mm)を使用するが、光学系では比例拡大と比例縮小とにおいても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0073】
また、各実施例に対応する収差図において、d、g、Cはそれぞれd線、g線、C線を表しており、ΔS、ΔMはそれぞれサジタル像面、メリジオナル像面を表している。さらに図1、6、11に示すレンズ構成図において、Sは開口絞り、Iは像面、中心を通る一点鎖線は光軸である。
【0074】
尚、以下の説明ではレンズ構成を物体側から像側の順番で記載する。
【実施例0075】
図1は、本発明の実施例1のインナーフォーカス光学系のレンズ構成図である。
【0076】
図1のインナーフォーカス光学系のレンズ構成は、物体側から像側へ順に、負の単レンズからなる第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3、第4レンズ群G4から構成される。
【0077】
第1レンズ群G1は、像側の面が非球面で物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0078】
開口絞りSは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。
【0079】
第2レンズ群G2は、両凹レンズと像側の面が非球面の両凸レンズとの接合レンズと像側の面が非球面の両凸レンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0080】
第3レンズ群G3は、物体側の面が非球面で物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズで構成され、第3レンズ群G3を光軸に沿って物体側へ移動させることにより無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行っている。
【0081】
第4レンズ群G4は、像側の面が非球面の両凸レンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0082】
光学フィルターFLは、第4レンズ群G4と像面Iとの間に配置されている。
【0083】
続いて、以下に実施例1に係るインナーフォーカス光学系の諸元値を示す。
【0084】
数値実施例1
単位:mm
[面データ]
面番号 r d nd vd
物面 ∞ (d0)
1 32.0388 0.8000 1.43700 95.10
2* 14.6670 11.1597
3(絞り) ∞ 4.5000
4 -17.0058 1.0000 1.69895 30.05
5 16.2489 8.4632 1.95375 32.32
6* -33.9676 0.1200
7 214.7544 8.0304 1.55032 75.50
8* -18.7360 0.1500
9 36.8096 0.8000 1.77047 29.74
10 22.9590 (d10)
11* 21.5733 2.9573 1.55032 75.50
12 45.5492 (d12)
13 27.7656 5.3439 1.55032 75.50
14* -26.7603 0.4000
15 112.5648 0.8000 1.62004 36.30
16 12.2002 10.0000
17 ∞ 4.1400 1.51633 64.14
18 ∞ (BF)
像面 ∞

[非球面データ]
2面 6面 8面 11面
K 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000
A4 3.83637E-06 4.29774E-05 1.05048E-05 1.16709E-05
A6 2.91048E-08 2.69092E-08 4.45041E-08 0.00000E+00
A8 -2.87852E-10 4.62121E-10 -3.91584E-10 0.00000E+00
A10 1.68904E-13 -1.12868E-12 1.75222E-12 0.00000E+00

14面
K 0.00000
A4 5.55756E-05
A6 -1.10645E-07
A8 3.69358E-10
A10 -3.18282E-13

[各種データ]
INF
焦点距離 20.88
Fナンバー 1.44
全画角2ω 57.48
像高Y 11.15
レンズ全長 70.00

[可変間隔データ]
INF 撮影倍率0.025
d0 ∞ 825.6781
d10 4.8788 3.9918
d12 1.9000 2.7870
BF 4.5568 4.5618

[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -62.78
G2 4 34.69
G3 11 71.35
G4 13 -701.15
【実施例0085】
図6は、本発明の実施例2のインナーフォーカス光学系のレンズ構成図である。
【0086】
図6のインナーフォーカス光学系のレンズ構成は、物体側から像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3、第4レンズ群G4から構成される。
【0087】
第1レンズ群G1は、像側の面が非球面で物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0088】
開口絞りSは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。
【0089】
第2レンズ群G2は、両凹レンズと像側の面が非球面の両凸レンズとの接合レンズと像側の面が非球面で物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0090】
第3レンズ群G3は、物体側の面が非球面で物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズで構成され、第3レンズ群G3を光軸に沿って物体側へ移動させることにより無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行っている。
【0091】
第4レンズ群G4は、像側の面が非球面の両凸レンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0092】
光学フィルターFLは、第4レンズ群G4と像面Iとの間に配置されている。
【0093】
続いて、以下に実施例2に係るインナーフォーカス光学系の諸元値を示す。
【0094】
数値実施例2
単位:mm
[面データ]
面番号 r d nd vd
物面 ∞ (d0)
1 22.4258 1.4245 1.43700 95.10
2* 12.9157 5.1771
3(絞り) ∞ 4.5000
4 -12.9870 1.0000 1.68960 31.14
5 16.8324 8.1671 1.91082 35.25
6* -20.7231 0.1200
7 -80.0936 6.3211 1.55032 75.50
8* -18.7288 0.1500
9 53.6073 0.8000 1.77047 29.74
10 30.5674 (d10)
11* 23.2320 2.9192 1.55032 75.50
12 57.4623 (d12)
13 26.7089 5.7856 1.55032 75.50
14* -24.6480 0.4000
15 1315.4530 0.8000 1.64769 33.84
16 14.5756 10.0000
17 ∞ 4.1400 1.51633 64.14
18 ∞ (BF)
像面 ∞

[非球面データ]
2面 6面 8面 11面
K 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000
A4 1.65699E-05 5.48007E-05 -1.00626E-05 1.17188E-05
A6 3.56775E-07 -6.03051E-08 2.08309E-07 2.55430E-09
A8 -7.94017E-09 1.21635E-09 -1.40273E-09 2.19035E-11
A10 7.67081E-11 -3.37417E-12 5.42867E-12 0.00000E+00

14面
K 0.00000
A4 5.63707E-05
A6 -6.00693E-08
A8 1.72740E-10
A10 5.46529E-15

[各種データ]
INF
焦点距離 20.76
Fナンバー 1.45
全画角2ω 61.00
像高Y 11.15
レンズ全長 62.00

[可変間隔データ]
INF 撮影倍率0.025
d0 ∞ 825.6781
d10 4.2658 3.2863
d12 1.9000 2.8795
BF 4.1299 4.1349

[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -73.02
G2 4 36.30
G3 11 68.78
G4 13 439.93
【実施例0095】
図11は、本発明の実施例3のインナーフォーカス光学系のレンズ構成図である。
【0096】
図11のインナーフォーカス光学系のレンズ構成は、物体側から像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3、第4レンズ群G4から構成される。
【0097】
第1レンズ群G1は、像側の面が非球面で物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0098】
開口絞りSは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。
【0099】
第2レンズ群G2は、両凹レンズと像側の面が非球面の両凸レンズとの接合レンズと像側の面が非球面で物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0100】
第3レンズ群G3は、物体側の面が非球面で物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズで構成され、第3レンズ群G3を光軸に沿って物体側へ移動させることにより無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行っている。
【0101】
第4レンズ群G4は、像側の面が非球面の両凸レンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズで構成される。
【0102】
光学フィルターFLは、第4レンズ群G4と像面Iとの間に配置されている。
【0103】
続いて、以下に実施例3に係るインナーフォーカス光学系の諸元値を示す。
【0104】
数値実施例3
単位:mm
[面データ]
面番号 r d nd vd
物面 ∞ (d0)
1 23.7655 0.8000 1.43700 95.10
2* 13.5093 6.2353
3(絞り) ∞ 4.5000
4 -13.7458 1.0000 1.68960 31.14
5 16.3642 8.5116 1.91082 35.25
6* -20.5258 0.1200
7 -74.7209 6.1105 1.55032 75.50
8* -18.6497 0.1500
9 139.9599 0.8000 1.77047 29.74
10 43.7276 (d10)
11* 24.3786 3.3184 1.55032 75.50
12 119.4795 (d12)
13 34.4057 5.0848 1.55032 75.50
14* -24.7678 0.4000
15 140.4322 0.8000 1.64769 33.84
16 12.9754 10.0000
17 ∞ 4.1400 1.51633 64.14
18 ∞ (BF)
像面 ∞

[非球面データ]
2面 6面 8面 11面
K 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000
A4 1.55178E-05 6.19958E-05 -6.48757E-06 1.98642E-05
A6 2.27973E-07 -9.43577E-08 2.61596E-07 -8.15556E-09
A8 -5.58737E-09 9.60232E-10 -1.49931E-09 -4.18352E-11
A10 5.04990E-11 -1.94064E-12 5.65937E-12 0.00000E+00

14面
K 0.00000
A4 5.67495E-05
A6 -6.00693E-08
A8 1.72740E-10
A10 5.46529E-15

[各種データ]
INF
焦点距離 20.80
Fナンバー 1.45
全画角2ω 59.22
像高Y 11.15
レンズ全長 62.00

[可変間隔データ]
INF 撮影倍率0.025
d0 ∞ 825.6781
d10 3.8351 3.1405
d12 1.9000 2.5946
BF 4.2944 4.2994

[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -73.37
G2 4 35.14
G3 11 54.97
G4 13 -237.78
【0105】
また、これらの各実施例における条件式の対応値一覧を示す。
【0106】
[条件式対応値]
条件式 実施例1 実施例2 実施例3
(1) f/f1 -0.33 -0.28 -0.28
(2) f2/f1 -0.55 -0.50 -0.48
(3) f/f3 0.29 0.30 0.38
(4) f/f4 -0.03 0.05 -0.09
(5) M4 0.92 0.85 0.98
(6) (M4^2×(1-M3^2)) 0.58 0.52 0.74
(7) VdG1 95.10 95.10 95.10
(8) D/Y 5.21 4.97 4.93
【符号の説明】
【0107】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
S 開口絞り
FL 光学フィルター
I 像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15