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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163978
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】体腔液採取器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61M1/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069145
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 理史
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美浪
(72)【発明者】
【氏名】山辺 康平
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA18
4C077AA20
4C077DD12
4C077DD21
4C077DD22
4C077DD25
4C077EE10
4C077KK27
4C077NN03
(57)【要約】
【課題】 点滴筒内の体腔液の液面を容易に回復でき、かつ、貯留量を容易に調整することのできる体腔液採取器具を提供する。
【解決手段】 体腔液採取器具30は、患者から延びるカテーテル21に上流端31aが接続される採取チューブ31と、採取チューブ31の下流端31bが接続される流入口62、流入口62から流入した体腔液を一時的に貯留する貯留空間50a、および、貯留空間50aに貯留する体腔液を送出する送出口68、を有する点滴筒32と、を備え、採取チューブ31または点滴筒32には、貯留空間50aへエアを導入するエア導入口63が設けられている
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腹腔または胸腔から体腔液を採取するための体腔液採取器具であって、
患者から延びるカテーテルに上流端が接続される採取チューブと、
前記採取チューブの下流端が接続される流入口、前記流入口から流入した体腔液を一時的に貯留する貯留空間、および、前記貯留空間に貯留する体腔液を送出する送出口、を有する点滴筒と、を備え、
前記採取チューブまたは前記点滴筒には、前記貯留空間へエアを導入するエア導入口が設けられている、
を備える体腔液採取器具。
【請求項2】
前記エア導入口には、エアを通すエア導入チューブが接続されており、前記エア導入チューブには、体腔液の通流を制限する開閉具または疎水フィルタが設けられている、
請求項1に記載の体腔液採取器具。
【請求項3】
前記エア導入チューブには、シリンジまたはポンプと接続するためのコネクタが設けられている、
請求項2に記載の体腔液採取器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔として腹腔または胸膜腔に溜まった体腔液を患者から採取するのに用いる体腔液採取器具に関する。
【背景技術】
【0002】
肝硬変および癌性腹膜炎などの患者では、血管から水分が漏れ出て腹腔に腹水が溜まる場合がある。腹水が多量に溜まると、周囲の臓器が圧迫されて、食欲不振や腎機能の低下などの原因になったり、呼吸が苦しくなったりするといった問題が生じる。一方、腹水には血液から漏れ出た血漿成分が含まれており、この血漿成分にはアルブミンおよびグロブリン等の有用な蛋白質も含まれている。
【0003】
そこで近年、患者から抜いた腹水を濾過濃縮して有用成分を再び患者へ戻す、CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)といわれる治療法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。より具体的に説明すると、このCARTでは、患者から抜いた腹水を貯留バッグに溜め、この貯留バッグを、濾過器および濃縮器を含むCART回路に接続する。貯留バッグ内の腹水は、濾過器および濃縮器を経る間に、細菌や癌細胞などが取り除かれ、アルブミン等の有用成分が濃縮される。こうして処理された腹水が、点滴などにより患者に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-134984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、CARTにおいてはじめに患者から腹水等の体腔液を採取する際、患者の体腔から体外に延びるカテーテルの体外側の端部に、チューブおよび点滴筒から成る体腔液採取器具を介して貯留バッグを接続する。そして、この貯留バッグを患者よりも鉛直下方に位置させることで、重力により患者の体腔液を貯留バッグに採取している。ここで、患者へ輸液する場合は、電解質バッグ内の液量を視認することにより処置の完了タイミングを計ることができる。しかし、体腔液の採取においては、体内の体腔液の残量を視認することができない。そこで、点滴筒内における体腔液の滴下ペースを見て、採取の完了タイミングを計る必要がある。
【0006】
しかしながら、体腔液の採取中に患者が姿勢を変えたり、貯留バッグの位置が変わったりすると、点滴筒内が体腔液によって満たされてしまう可能性がある。例えば、公知の輸血回路とは異なり、体腔液の採取では、ベッドに横たわった患者の更に下方に採取用の貯留バッグを置く。そして、体腔液の採取中に量を確認したり新たなバッグに取り替えたりするため、貯留バッグを持ち上げる必要がある。その際、回路中の点滴筒以外の部分の動きによって、液面が上昇して点滴筒内が体腔液で満たされ得る、という特有の課題がある。そうすると、体腔液の滴下状況を確認できなくなり、採取の完了タイミングも分からなくなってしまう。
【0007】
そこで本開示では、体腔液採取器具に特有の上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る体腔液採取器具は、患者の腹腔または胸腔から体腔液を採取するための体腔液採取器具であって、患者から延びるカテーテルに上流端が接続される採取チューブと、前記採取チューブの下流端が接続される流入口、前記流入口から流入した体腔液を一時的に貯留する貯留空間、および、前記貯留空間に貯留する体腔液を送出する送出口、を有する点滴筒と、を備え、前記採取チューブまたは前記点滴筒には、前記貯留空間へエアを導入するエア導入口が設けられている。
【0009】
これにより、点滴筒内の体腔液量が多くなった場合であっても、エア導入口を通じて貯留空間へエアを導入することで、点滴筒内の体腔液量を減らすことができるので、点滴液内の液面を容易に回復でき、かつ、液面の位置を容易に調整することができる。
【0010】
また、前記エア導入口には、エアを通すエア導入チューブが接続されており、前記エア導入チューブには、体腔液の通流を制限する開閉具または疎水フィルタが設けられていてもよい。
【0011】
これにより、点滴筒内へのエアの導入を可能としつつ、体腔液採取器具からの体腔液の漏れを防止することができる。
【0012】
また、前記エア導入チューブには、シリンジまたはポンプと接続するためのコネクタが設けられていてもよい。
【0013】
これにより、体腔液採取器具にシリンジまたはポンプを容易に接続でき、これらを用いて点滴筒内へエアを導入することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る体腔液採取器具によれば、体液の採取中に患者下方の貯留バッグの内容量を確認したり当該バッグを取り替えたりすることで、点滴筒内が体腔液で満たされて液面が喪失した場合であっても、この点滴筒内の液面を容易に回復でき、かつ、液面を容易に調整することのできる体腔液採取器具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施の形態1に係る体腔液採取器具により採取された体腔液を処理するCART回路の模式図である。
図2図2は、採取工程を模式的に示す図面である。
図3図3は、体腔液採取器具を示す図面である。
図4図4は、図3の体腔液採取器具の一部を拡大して示す断面図である。
図5図5は、実施の形態2に係る体腔液採取器具の構成を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
はじめに、本発明に係る体腔液採取器具を用いて採取した体腔液を処理する体腔液処理回路の一例として、CART回路について説明する。
【0017】
[CART回路]
図1は、本開示の実施の形態に係る体腔液採取器具により採取された体腔液である腹水を処理するCART回路の模式図である。図1に示すように、このCART回路10は、可撓性のチューブから成り腹水が通流するラインが、体腔液貯留バッグ1から濾過器2および濃縮器3を経て回収バッグ4にまで至っている。具体的に説明すると、スタンド等の先端に設けられた吊り金具Fに吊り下げられた体腔液貯留バッグ1から、腹水を通すラインL1が、第1ポンプP1を経て濾過器2の下部まで延びている。このラインL1の途中、体腔液貯留バッグ1と第1ポンプP1との間には、生理食塩水が入ったバッグ5から延びるラインが合流している。また、ラインL1の途中、第1ポンプP1と濾過器2との間には、ラインL1を流れる腹水の圧力を測定する圧力計6から延びるラインが合流している。
【0018】
濾過器2の側部からは、濾過器2にて異物が除去された腹水が通流するラインL2が、第2ポンプP2を経て濃縮器3の下部まで延びている。この濃縮器3の上部からは、濃縮器3にて除水されて濃縮された腹水が通流するラインL3が、回収バッグ4の入口ポートまで延びている。また、回収バッグ4の出口ポートからは、濃縮された腹水を更に濃縮するべくこれを循環させるラインL4が延びており、このラインL4は濾過器2と第2ポンプP2との間にてラインL2に合流している。
【0019】
一方、濾過器2の上部からは、濾過器2にて腹水から除去された異物を適宜排出するためのラインL5が延びている。さらに、濃縮器3の側部からは、濃縮器3にて腹水から除去された水分を適宜排出するためのラインL6が延びている。
【0020】
このCART回路10の場合、患者から採取されて体腔液貯留バッグ1に貯留された腹水は、濾過器2により不要成分が除去され、濃縮器3により適度な濃度に濃縮されることで、濾過濃縮腹水となって回収バッグ4に回収される。このようにして生成された濾過濃縮腹水は、点滴静脈注射により再び患者に戻される。
【0021】
[体腔液採取器具]
次に、上述したようなCART回路10で処理する体腔液を患者から採取するための体腔液採取器具について説明する。図2は、採取工程を模式的に示す図面である。図2に示すように、体腔液採取器具30は、採取チューブ31、点滴筒32、エア導入チューブ33、および送出チューブ34を有している。この体腔液採取器具30は、患者20と貯留バッグ1との間に介在され、患者20の腹腔内または胸腔内の体腔液を貯留バッグ1へ導く。
【0022】
より具体的には、患者の腹腔または胸腔には、カテーテル21の一方の端部21aが留置される。このカテーテル21の他方の端部21bに、採取チューブ31の上流端31aが、コネクタ40を介して接続される。採取チューブ31の下流端31bには点滴筒32が接続され、点滴筒32には送出チューブ34の上流端34aも接続されている。更に、送出チューブ34の下流端34bには、コネクタ41を介して、貯留バッグ1の流入管12が接続される。これにより、患者の体腔液は、カテーテル21および体腔液採取器具30を通じて貯留バッグ1へ導かれる。なお、カテーテル21は樹脂針であっても金属針であってもよい。
【0023】
なお、貯留バッグ1は、透明性で可撓性を有するバッグ本体11、並びに、このバッグ本体11の内外を連通する流入管12、注入管13、および流出管14を有する。流入管12は、体腔液の採取時にバッグ本体11に体腔液を導くポートであり、注入管13は、バッグ本体11内に採取された体腔液に薬液を注入するためのポートであり、流出管14は、CART処理時にバッグ本体11から体腔液を導出するポートである。
【0024】
次に、体腔液採取器具30についてより詳しく説明する。図3は、体腔液採取器具30を示す図面であり、図4は、図3の体腔液採取器具30の一部を拡大して示す断面図である。図3に示すように、採取チューブ31は長尺の管状を成し、透明性および可撓性を有する合成樹脂で構成されている。採取チューブ31の上流端31aにはコネクタ40が取り付けられ、カテーテル21の端部21bと接続可能になっている。採取チューブ31の途中には、体腔液の流量調整具としてローラークレンメ42が取り付けられている。なお、流量調整具としてローラークレンメ42以外の他のクランプを取り付けてもよい。
【0025】
点滴筒32は概略円筒状を成し、筒体50、筒体50の一端部を閉塞する上流キャップ51、および、筒体50の他端部を閉塞する下流キャップ52を有している。このうち筒体50は、透明性を有する比較的硬質の合成樹脂から成り、円筒状に構成されている。
【0026】
図4に示すように、上流キャップ51は概略円筒状を成しており、その軸心方向の一端側(体腔液の採取方向の上流側)の部分には、第1接続部60および第2接続部61が設けられている。このうち第1接続部60には採取チューブ31が接続される。そのために第1接続部60は、採取チューブ31の外径とほぼ同寸法の内径を有する円筒状を成している。そして、第1接続部60の開口は、採取チューブ31の下流端31bが接続される流入口62を成している。なお、流入口62のうち筒体50側の開口端は、流入口62の軸心方向に対して傾斜した開口面62aを成している。
【0027】
第2接続部61にはエア導入チューブ33が接続される。そのために第2接続部61は、エア導入チューブ33の外径とほぼ同寸法の内径を有する円筒状を成している。そして、第2接続部61の開口は、エア導入チューブ33の下流端33bが接続されるエア導入口63を成している。エア導入口63のうち筒体50側の開口端は、エア導入口63の軸心方向に対してほぼ直交する開口面63aを成している。
【0028】
上流キャップ51の軸心方向の他端側の部分は、筒体50の一端部に外嵌する外嵌部65を成している。すなわち、外嵌部65は、その内径が筒体50の一端部の外径とほぼ同寸法になっており、筒体50の一端部に外嵌することで両者は接続されている。
【0029】
筒体50の他端部を閉塞する下流キャップ52は、一端側の部分に対して他端側の部分が縮径した錘状の円筒状を成している。そして、下流キャップ52の一端側の部分は、筒体50の他端部に外嵌する外嵌部66を成している。すなわち、外嵌部66は、その内径が筒体50の他端部の外径とほぼ同寸法になっており、筒体50の他端部に外嵌することで両者は接続されている。
【0030】
下流キャップ52の他端側の部分には、第3接続部67が設けられている。この第3接続部67には送出チューブ34が接続される。そのために第3接続部67は、送出チューブ34の外径とほぼ同寸法の内径を有する円筒状を成している。そして、第3接続部67の開口は、送出チューブ34の上流端34aが接続される送出口68を成している。なお、下流キャップ52において、一端側の外嵌部66と他端側の第3接続部67との間の部分は、外径および内径のいずれもが段階的に縮径した縮径部69を成している。また、上記のようにして筒体50の一端部に上流キャップ51が外嵌し、他端部に下流キャップ52が外嵌したときの内部空間は、点滴筒32において体腔液が一時的に貯留する貯留空間50aを成す。
【0031】
一方、上流キャップ51の第2接続部61に下流端33bが接続されるエア導入チューブ33は、長尺の管状を成し、透明性および可撓性を有する合成樹脂で構成されている。このエア導入チューブ33の上流端33aにはコネクタ43が設けられており、コネクタ43を介してエアシリンジまたはエアポンプ等に接続可能となっている。また、エア導入チューブ33の途中には、空気の流量調整具として、開閉具であるチューブクランプ44が取り付けられている。なお、流量調整具としてチューブクランプ44以外の他のクランプを取り付けてもよい。
【0032】
[体腔液採取器具の使用方法]
上述したような体腔液採取器具の使用方法について説明する。はじめに、体腔液採取器具30の送出チューブ34を、コネクタ41を介して、空の貯留バッグ1の流入管12と接続する。次に、ローラークレンメ42及びチューブクランプ44を閉じた状態で、体腔液採取器具30の採取チューブ31を、コネクタ40を介して、患者の腹腔または胸腔から延びるカテーテル21の端部21bと接続する。そして、体腔液採取器具30および貯留バッグ1を患者よりも鉛直下方の位置に載置する。この状態で、ローラークレンメ42のローラを操作して、採取チューブ31の開度を調整することで、体腔液の採取を開始する。
【0033】
体腔液の採取中は、点滴筒32の貯留空間50aに採取チューブ31を経て滴下する体腔液に基づき、採取ペースを把握したり、採取処理の完了タイミングを計ったりする。一方、体腔液の採取中に、患者が姿勢を変更したり体腔液採取器具30または貯留バッグ1の位置がずれたりすることで、点滴筒32の貯留空間50aが体腔液で満たされてしまうことがあり得る。そうすると、採取ペースや完了タイミングの把握が難しくなる。
【0034】
そこで本実施の形態に係る体腔液採取器具30では、貯留空間50aが体腔液で満たされてしまった場合は、チューブクランプ44を開き、エア導入チューブ33を介して点滴筒32にエアを導入する。エアの導入は、例えば、エア導入チューブ33の上流端33aに接続したシリンジまたはエアポンプによって行うことができる。こうして点滴筒32に適量のエアを導入することにより、貯留空間50aにおける体腔液の液面を下げることができ、採取チューブ31からの体腔液の滴下状況を再び視認することができるようになる。その結果、採取ペースや完了タイミングを把握することができる。
【0035】
なお、上述した説明では、エア導入チューブ33の途中にチューブクランプ44などのクランプを設けた例を説明したが、クランプに替えて公知の疎水性フィルタをエア導入チューブ33の上流端33aなどに設けてもよい。あるいは、クランプと疎水性フィルタをエア導入チューブ33に併設してもよく、そのようにすることで、仮にクランプを閉じ忘れても(意図せず完全に閉め切れていなかったとしても)、エア導入チューブ33を通じて体腔液が漏れ出るのを防止できる。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、体腔液採取器具の他の構成を示す図面である。この体腔液採取器具30Aは、実施の形態1の体腔液採取器具30と比べると、エア導入チューブ33が点滴筒32に接続されているのではなく、採取チューブ31の途中に接続されている点で異なっている。一方、その他の構成は実質的に同じである。従って、以下ではこの相違点について具体的に説明するものとし、両実施の形態において共通する構成には同一の符号を付し、それに関する詳細な説明は省略する。
【0037】
図5に示すように、この体腔液採取器具30Aの点滴筒32Aは、上流キャップ51Aが第1接続部60のみを有し、実施の形態1のような第2接続部61を有していない。従って、上流キャップ51Aには採取チューブ31Aのみが接続されている。なお、点滴筒32Aにおいて、上流キャップ51Aに替えて、第2接続部61を閉塞状態とした上流キャップ51を用いることはもちろん制限されない。
【0038】
一方、採取チューブ31Aは、上流側チューブ311と下流側チューブ312とを有し、両チューブ311,312の間は三又分岐ジョイント313によって接続されている。すなわち、例えばT字状の三又分岐ジョイント313が有する3つのジョイント部313a~313cのうち、直線状に並ぶ2つのジョイント部313a,313bのそれぞれに、上流側チューブ311の下流端と、下流側チューブ312の上流端とが接続されている。なお、ローラークレンメ42は上流側チューブ311の途中に設けられている。
【0039】
そして、三又分岐ジョイント313が有する残り1つのジョイント部313cに、エア導入チューブ33の下流端33bが接続されている。このエア導入チューブ33の途中には、実施の形態1と同様にチューブクランプ44が設けられている。すなわち、本実施の形態に係る体腔液採取器具30Aでは、エア導入チューブ33から導入したエアを、採取チューブ31A(下流側チューブ312)を通じて点滴筒32Aの貯留空間50aへ送る。従って、採取チューブ31Aの途中に、エア導入口が設けられていることになる。なお、チューブクランプ44は他のクランプでもよく、また、クランプに替えて、あるいは、クランプと共に、疎水性フィルタを設けてもよい点は実施の形態1と同様である。
【0040】
この実施の形態2に係る体腔液採取器具30Aについても、その使用方法は実施の形態1について説明したのと同様である。従って、患者が姿勢を変更したり体腔液採取器具30または貯留バッグ1の位置がずれたりして、貯留空間50aが体腔液で満たされてしまった場合は、エア導入チューブ33を介して点滴筒32Aにエアを導入することにより、貯留空間50aにおける体腔液の液面を下げることができ、採取チューブ31Aからの体腔液の滴下状況を再び視認することができるようになる。その結果、採取ペースや完了タイミングを把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、腹腔または胸腔に溜まった体腔液を患者から採取するのに用いる体腔液採取器具に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
30,30A 体腔液採取器具
31,31A 採取チューブ
32,32A 点滴筒
33 エア導入チューブ
34 送出チューブ
43 コネクタ
44 チューブクランプ(開閉具)
62 流入口
63 エア導入口
68 送出口

図1
図2
図3
図4
図5