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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163989
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】手荷物検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/10 20180101AFI20221020BHJP
   G21K 5/00 20060101ALI20221020BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G01N23/10
G21K5/00 S
G21K5/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069161
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】石毛 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
(72)【発明者】
【氏名】小川 千隼
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 豊
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA13
2G001JA09
2G001PA11
2G001SA14
(57)【要約】
【課題】人体に検査線が照射される危険性の低い手荷物検査システムを提供する。
【解決手段】手荷物検査システム1は、搬送装置103及び搬送装置102により搬送される手荷物Tが、検査空間A0の入口付近に配置されている物体検知センサ109を通過した後、検査空間A0内に配置されている物体検知センサ110を通過後に所定時間が経過するまでの間を監視期間とし、撮影装置112により撮影した画像から、監視期間中に禁止領域A1で移動する物体を検知した場合、検査線照射装置106による検査線の照射を禁止し、監視期間中に警告領域A2又は禁止領域A1で移動する物体を検知した場合、警告メッセージの表示や発音を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査空間内の手荷物に検査線を照射中に、前記検査空間に対する手荷物の出入口に前記検査空間の外側から接する禁止領域で物体を検知すると検査線の照射を停止し、前記禁止領域に前記出入口から見た外側から接する警告領域で物体を検知すると検査線の照射を停止せずに警告を行う
手荷物検査システム。
【請求項2】
前記検査空間内に手荷物が入ったことを検知した後、検査線の照射が終了するまでの間、前記禁止領域で物体を検知すると検査線の照射を禁止し、前記警告領域で物体を検知すると検査線の照射を禁止せずに警告を行う
請求項1に記載の手荷物検査システム。
【請求項3】
前記検査空間に向かう手荷物の搬送中に、前記禁止領域又は前記警告領域で手荷物以外の物体を検知すると警告を行う
請求項1又は2に記載の手荷物検査システム。
【請求項4】
前記禁止領域及び前記警告領域を含む領域の物体の形状を表す画像を生成し、当該画像から手荷物以外の物体を検知する
請求項3に記載の手荷物検査システム。
【請求項5】
画像認識により人を検知する
請求項4に記載の手荷物検査システム。
【請求項6】
画像に写っている物体の移動経路に基づき当該物体が手荷物であるか否かを判別する
請求項4に記載の手荷物検査システム。
【請求項7】
前記画像は熱画像である
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の手荷物検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手荷物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空港等の所定エリアに入る通行人の手荷物に対しX線等の検査線を照射して、手荷物内における危険物の有無を検査する手荷物検査システムが普及している。
【0003】
手荷物検査システムにおいて用いられる検査線には、例えばX線のように、人体に害を与えるものがある。人体に害を与える検査線を用いる手荷物検査システムにおいては、検査線を透過しない壁体や幕体により、手荷物に対し検査線を照射する空間(以下、「検査空間」という)と外部の空間とが隔てられている。
【0004】
しかしながら、手荷物の持ち主である通行人や係員等が、例えば、検査空間に搬入中の手荷物や検査空間から搬出中の手荷物を取り上げようとして、検査空間内に手などの人体の一部を挿入してしまうことがある。その際、検査空間内において検査線の照射が行われていると、通行人や係員等の人体に検査線が照射され、害が及ぶ危険性がある。
【0005】
上記のような不都合を回避するための技術を提案している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、検査空間の入口及び出口の各々に2枚の可撓性放射線防護壁を設け、それら2枚の可撓性放射線防護壁の間に人体を検知する赤外線センサを設け、赤外線センサが人体を検知した場合、検査空間におけるX線照射を停止するとともに警報を発令する放射線検査装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-130817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の放射線検査装置による場合、検査空間を外部から隔てる2枚の可撓性放射線防護壁のうちの外側の可撓性放射線防護壁より内側に通行人等の人体の一部が挿入されてはじめて検査線の照射が停止される。そのため、人体の一部が素早く検査空間内に挿入されると、検査線の照射が停止される前に、人体の一部が内側の可撓性放射線防護壁をさらに超えて検査空間内に入ってしまう危険性がある。また、2枚の可撓性放射線防護壁の間に設けられたセンサが人体の検知に失敗すれば、検査線の照射が継続されている検査空間内に人体の一部が入ってしまう危険性がある。
【0008】
上記の事情に鑑み、本発明は、従来技術と比較し人体に検査線が照射される危険性の低い手荷物検査システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、検査空間内の手荷物に検査線を照射中に、前記検査空間に対する手荷物の出入口に前記検査空間の外側から接する禁止領域で物体を検知すると検査線の照射を停止し、前記禁止領域に前記出入口から見た外側から接する警告領域で物体を検知すると検査線の照射を停止せずに警告を行う手荷物検査システムを第1の態様として提案する。
【0010】
第1の態様に係る手荷物検査システムによれば、人体が検査空間の外側に接する禁止領域よりさらに外側に接する禁止領域に入ると警告が行われるため、人体が誤って検査空間に入り検査線の照射を受ける危険性が低減される。
【0011】
上記の第1の態様に係る手荷物検査システムにおいて、前記検査空間内に手荷物が入ったことを検知した後、検査線の照射が終了するまでの間、前記禁止領域で物体を検知すると検査線の照射を禁止し、前記警告領域で物体を検知すると検査線の照射を禁止せずに警告を行う、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様に係る手荷物検査システムによれば、検査空間内に手荷物が入りまだ検査線の照射が開始されていないときに禁止領域に人体が入ると検査線の照射が開始されず、検査空間内に手荷物が入りまだ検査線の照射が開始されていないときに警告領域に人体が入ると警告が行われる。従って、検査線の照射中にのみ警告等が行われる場合と比較し、人体が誤って検査空間に入り検査線の照射を受ける危険性がより低減される。
【0013】
上記の第1又は第2の態様に係る手荷物検査システムにおいて、前記検査空間に向かう手荷物の搬送中に、前記禁止領域又は前記警告領域で手荷物以外の物体を検知すると警告を行う、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様に係る手荷物検査システムによれば、検査空間に向かう手荷物の搬送が開始されまだ手荷物が検査空間に入っていないときに禁止領域又は警告領域に人体が入ると警告が行われる。従って、手荷物が検査空間に入った後にのみ警告が行われる場合と比較し、人体が誤って検査空間に入り検査線の照射を受ける危険性がより低減される。
【0015】
上記の第3の態様に係る手荷物検査システムにおいて、前記禁止領域及び前記警告領域を含む領域の物体の形状を表す画像を生成し、当該画像から手荷物以外の物体を検知する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様に係る手荷物検査システムによれば、光学カメラ等の撮影装置を用いることで、手荷物以外の物体が監視対象の物体として検知される。
【0017】
上記の第4の態様に係る手荷物検査システムにおいて、画像認識により人を検知する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様に係る手荷物検査システムによれば、人以外の物体が監視対象の物体として検知され、その結果、検査線の照射の停止や警告が無駄に行われる、という不都合が回避される。
【0019】
上記の第4の態様に係る手荷物検査システムにおいて、画像に写っている物体の移動経路に基づき当該物体が手荷物であるか否かを判別する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0020】
第6の態様に係る手荷物検査システムによれば、検査空間に出入りする手荷物が監視対象の物体として検知され、その結果、検査線の照射の停止や警告が無駄に行われる、という不都合が回避される。
【0021】
上記の第4乃至第6のいずれかの態様に係る手荷物検査システムにおいて、前記画像は熱画像である、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0022】
第7の態様に係る手荷物検査システムによれば、熱を発しない物体が監視対象の物体として検知され、その結果、検査線の照射の停止や警告が無駄に行われる、という不都合が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る手荷物検査システムの外観を模式的に示した図。
図2】一実施形態に係る手荷物検査システムの外観を模式的に示した図。
図3】一実施形態に係る手荷物検査システムが監視画像に基づき監視対象の物体を検知する方法を説明するための図。
図4】一実施形態に係る手荷物検査システムの監視期間を説明するための図。
図5】一変形例に係る手荷物検査システムの監視期間の一例を説明するための図。
図6】一変形例に係る手荷物検査システムが監視対象の物体を検知する方法を説明するための図。
図7】一変形例に係る手荷物検査システムの監視期間の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態]
以下に、本発明の一実施形態に係る手荷物検査システム1を説明する。図1は、手荷物検査システム1を、手荷物Tの搬送方向に向かって左側から見た外観を模式的に示した図である。また、図2は、手荷物検査システム1を上から下に向かって見た外観を模式的に示した図である。以下、手荷物Tの搬送方向における上流側(図1及び図2における右側)を単に上流側といい、手荷物Tの搬送方向における下流側(図1及び図2における左側)を単に下流側という。
【0025】
手荷物検査システム1は、検査対象の手荷物Tに対し検査線の照射を行うための検査空間A0を内部に形成する検査線遮蔽ボックス101と、検査線遮蔽ボックス101を水平方向に貫くように配置された搬送装置102と、搬送装置102の上流側に隣接するように配置された搬送装置103と、検査線遮蔽ボックス101の上流側の搬送装置102より上側に設けられた開口(入口)を塞ぐように垂れ下げられた可撓性の検査線遮断カーテン104と、検査線遮蔽ボックス101の下流側の搬送装置102より上側に設けられた開口(出口)を塞ぐように垂れ下げられた可撓性の検査線遮断カーテン105を備える。
【0026】
検査線遮蔽ボックス101は、検査線を遮断する物質(例えば、検査線がX線である場合、鉛等の金属)でできた箱状の部材である。検査線遮断カーテン104及び検査線遮断カーテン105は、検査線を遮断する物質の粉体を含むゴム等の可撓性の材料でできた帯状の部材である。
【0027】
手荷物検査システム1は、さらに、検査空間A0内に配置された検査線照射装置106と、検査線受波装置107を備える。検査線照射装置106と検査線受波装置107は、搬送装置102を挟んで互いに対向する位置に配置されており、検査線照射装置106が照射した検査線を検査線受波装置107が受波する。
【0028】
検査線照射装置106は、例えば、手荷物Tの搬送方向に対し左右方向にライン上に並べられた複数の検査線照射素子から検査線の照射を行い、検査線受波装置107は、例えば、手荷物Tの搬送方向に対し左右方向にライン上に並べられた複数の検査線受波素子により検査線の受波を行う。検査線照射装置106が照射する検査線は、例えばX線であるが、手荷物に照射して内部の物体の形状を画像化できる検査線であれば、その種類はX線に限られない。
【0029】
手荷物検査システム1は、さらに、搬送装置103の上流側の所定位置において物体を検知する物体検知センサ108と、検査線遮蔽ボックス101の入口付近において物体を検知する物体検知センサ109と、検査空間A0内の所定位置において物体を検知する物体検知センサ110と、搬送装置102の下流側の所定位置において物体を検知する物体検知センサ111を備える。
【0030】
物体検知センサ108は、搬送装置103上に置かれた手荷物Tを検知するためのセンサである。物体検知センサ109は、検査空間A0の入口上の手荷物Tを検知するためのセンサである。物体検知センサ110は、検査線が照射されるライン上の手荷物Tを検知するためのセンサである。物体検知センサ111は、搬送路の下流側端部に達した手荷物Tを検知するためのセンサである。
【0031】
図2に示すように、物体検知センサ108は、例えば、搬送方向の右側に配置された発光部108Tと、搬送方向の左側に配置された受光部108Rを備え、発光部108Tが照射した光が受光部108Rにより受光されなければ、発光部108Tと受光部108Rの間に光を遮る物体がある、と判定する。物体検知センサ109、物体検知センサ110、物体検知センサ111も物体検知センサ108と同様の構成を備える。
【0032】
手荷物検査システム1は、さらに、撮影装置112を備える。撮影装置112は、例えば、検査線遮蔽ボックス101の真上から下に向けて撮影を行う光学カメラであり、その画角内に禁止領域A11及びA12と、警告領域A21及びA22が含まれるように配置されている。すなわち、撮影装置112は、禁止領域A11及びA12と、警告領域A21及びA22とを含む領域の物体の形状を表す画像を生成する。
【0033】
禁止領域A11は、検査空間A0に対する手荷物Tの入口(出入口の一例)に検査空間A0の外側から接する所定形状の領域である。禁止領域A12は、検査空間A0に対する手荷物Tの出口(出入口の一例)に検査空間A0の外側から接する所定形状の領域である。以下、禁止領域A11と禁止領域A12を互いに区別しない場合、それらを禁止領域A1と総称する。
【0034】
警告領域A21は、禁止領域A11に入口から見た外側から接する所定形状の領域である。警告領域A22は、禁止領域A12に出口から見た外側から接する所定形状の領域である。以下、警告領域A21と警告領域A22を互いに区別しない場合、それらを警告領域A2と総称する。
【0035】
手荷物検査システム1は、さらに、手荷物検査システム1における各種制御を行う制御装置100を備える。制御装置100は、例えば、手荷物検査システム1用のプログラムに従い各種データ処理を行うコンピュータにより構成されてもよいし、専用装置として構成されてもよい。手荷物検査システム1は、以下の機能構成部を備える。
【0036】
(搬送制御部)
搬送制御部は、搬送装置102及び搬送装置103の運転を制御する。搬送制御部は、例えば、搬送装置102及び搬送装置103に対し以下の制御を行う。
物体検知センサ108の位置に手荷物Tが置かれ、物体検知センサ108がその手荷物Tを検知すると、搬送装置103に運転の開始を指示する。ただし、先行する手荷物Tが物体検知センサ110の位置をまだ通過していない場合は、物体検知センサ110により先行する手荷物Tの検知が完了するまで搬送装置103に対する運転の開始の指示を保留し、物体検知センサ110により先行する手荷物Tの検知が完了した後、搬送装置103に対する運転の開始を指示する。
搬送装置103の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ109の位置に達し、物体検知センサ109がその手荷物Tを検知すると、搬送装置102に運転の開始を指示する。
搬送装置103と搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ109の位置を通過し、物体検知センサ109による手荷物Tの検知が完了すると、搬送装置103に運転の停止を指示する。
搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置を通過し、物体検知センサ110による手荷物Tの検知が完了した後、所定時間が経過するか、もしくは、搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ111の位置に達し、物体検知センサ111がその手荷物Tを検知すると、搬送装置102に運転の停止を指示する。
後述する検査線の照射の禁止が行われる間、搬送装置102及び搬送装置103の運転を禁止する。なお、運転の禁止とは、運転が行われている場合はその運転を停止させ、運転が行われていない場合はその状態を維持させることを意味する。
【0037】
(検査処理部)
検査処理部は、検査線照射装置106及び検査線受波装置107の動作を制御すると共に、検査線受波装置107から出力される受波信号に基づき検査画像の生成を行う。検査処理部は、例えば、検査線照射装置106及び検査線受波装置107に対し以下の制御を行う。
搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置に達し、物体検知センサ110が手荷物Tを検知すると、検査線照射装置106に検査光の照射の開始を指示し、検査線受波装置107に検査光の受波の開始を指示する。
搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置を通過し、物体検知センサ110による手荷物Tの検知が完了すると、所定時間の経過後、検査線照射装置106に検査光の照射の停止を指示し、検査線受波装置107に検査光の受波の停止を指示する。
【0038】
上記の制御に従い、手荷物Tが検査線の照射されるラインを通過する間、検査線照射装置106は検査光を照射し、検査線受波装置107は検査線照射装置106から照射されて手荷物Tを透過した検査光を受波する。検査線受波装置107は、受波した検査光の強度を示す受波強度信号を制御装置100に出力する。制御装置100の検査処理部は、検査線受波装置107から順次受け取る受波強度信号が示す1次元の画像を2次元方向に並べることで、手荷物Tの内部の物体の形状を表す2次元の検査画像を生成する。検査処理部により生成される検査画像は、例えば、制御装置100に内蔵又は外部接続された表示装置により表示され、検査官により確認される。
【0039】
(物体検知部)
物体検知部は、撮影装置112が撮影した画像(以下、監視画像という)に基づき、検査線の照射を行ってはならない物体(以下、監視対象の物体という)を検知する。図3は、物体検知部が監視画像に基づき監視対象の物体を検知する方法を説明するための図である。図3(a)及び図3(b)は、撮影装置112が所定の時間間隔で順次撮影する画像のうち連続する2枚を例示したものである。物体検知部は、これらの連続する2枚の監視画像を比較し、所定数以上の連続する画素群に変化が生じている場合、その画素群が、監視対象の物体を表す画素群であると判定することにより、監視対象の物体を検知する。
【0040】
(警告部)
警告部は、物体検知センサ109により検査空間A0内に手荷物Tが入ったことが検知された後、検査線照射装置106による検査線の照射が終了するまでの間に、物体検知部により警告領域A2又は禁止領域A1で監視対象の物体が検知されると、警告を行う。
【0041】
警告部が行う警告とは、例えば、制御装置100に内蔵又は外部接続された表示装置による警告メッセージの表示、制御装置100に内蔵又は外部接続された発音装置による警告音又は警告メッセージの発音等である。
【0042】
図4は、警告部が警告を行う必要条件として設定されている期間(以下、監視期間という)を説明するための図である。図4(a)は監視期間の始期の状態を示し、図4(b)は監視期間の終期の状態を示している。
【0043】
図4(a)は、搬送装置103と搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ109の位置を通過し、物体検知センサ109による手荷物Tの検知が完了した時点の手荷物検査システム1及び手荷物Tの状態を示している。
【0044】
図4(b)は、搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置を通過し、物体検知センサ110による手荷物Tの検知が完了した後、所定時間が経過して、検査処理部の指示に従い検査線照射装置106が検査光の照射の停止した時点の手荷物検査システム1及び手荷物Tの状態を示している。
【0045】
警告部は、図4(a)の状態になった後、図4(b)の状態になるまでの期間中に、物体検知部により警告領域A2又は禁止領域A1で監視対象の物体が検知されると、警告を行う。
【0046】
監視期間が終了した場合、又は、物体検知部により警告領域A2と禁止領域A1のいずれにおいても監視対象の物体が検知されなくなった場合、警告部はそれまで行っていた警告を停止する。
【0047】
(禁止部)
禁止部は、上述した監視期間中に、物体検知部により禁止領域A1で監視対象の物体が検知されると、検査線の照射を禁止する。
【0048】
禁止部が行う検査線の照射の禁止とは、具体的には、検査処理部に対し、検査線照射装置106による検査線の照射が行われていればその停止を指示するように命じ、検査線照射装置106による検査線の照射が行われていなければ検査線の照射の開始を指示することを禁じることを意味する。
【0049】
監視期間が終了した場合、又は、物体検知部により禁止領域A1で監視対象の物体が検知されなくなった場合、禁止部はそれまで行っていた検査線の照射の禁止を解除する。
【0050】
検査処理部は、監視期間中に物体検知部により禁止領域A1で監視対象の物体が検知されると、禁止部の命令に従い、検査線照射装置106による検査線の照射が行われていれば、検査線照射装置106及び検査線受波装置107に対し動作の停止を指示し、検査線照射装置106による検査線の照射が行われていなければ、検査線照射装置106及び検査線受波装置107に対し新たに動作の開始を指示することはない。
【0051】
また、検査処理部は、監視期間が終了した場合、又は、物体検知部により禁止領域A1で監視対象の物体が検知されなくなった場合、禁止部からの禁止の解除を受けて、検査線の照射中に検査線照射装置106と検査線受波装置107に動作の停止を指示した場合は検査線照射装置106と検査線受波装置107に動作の再開を指示する。
【0052】
上述した手荷物検査システム1によれば、手荷物Tが検査空間A0に入った後、検査線の照射が終了するまでの監視期間において、警告領域A2又は禁止領域A1で監視対象の物体が検知された場合は警告が行われる。従って、仮に検査線の照射中又は検査線の照射の開始直前に通行人等の人体の一部が検査空間A0に近づいても、その人体が検査空間A0に到達するより十分に早いタイミングで、その通行人等は危険を知り、検査空間A0へ近づくことを止めることができる。その際、通行人等が禁止領域A1まで近づかず、禁止領域A1で監視対象の物体が検知されなければ、検査線の照射は禁止されず、検査画像の生成のための処理に遅延が生じることはない。
【0053】
また、上述した手荷物検査システム1によれば、手荷物Tが検査空間A0に入った後、検査線の照射が終了するまでの監視期間において、禁止領域A1で監視対象の物体が検知された場合は検査線の照射が禁止される。従って、仮に通行人等の人体の一部が検査空間A0に挿入されたとしても、人体が検査線の照射を受けることはない。
【0054】
[変形例]
上述した実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形例を示す。なお、以下に示す変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0055】
(変形例1)
上述した実施形態において、監視期間は、物体検知センサ109により検査空間A0内に手荷物Tが入ったことが検知された後、検査線照射装置106による検査線の照射が終了するまでの間であるものとしたが、監視期間は、検査線照射装置106による検査線の照射が行われている期間を含む限り、他の期間が採用されてもよい。
【0056】
図5は、この変形例における監視期間の一例を説明するための図である。図5(a)は監視期間の始期の状態を示し、図5(b)は監視期間の終期の状態を示している。
【0057】
図5(a)は、搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置に達し、物体検知センサ110が手荷物Tを検知した時点の手荷物検査システム1及び手荷物Tの状態を示している。
【0058】
図5(b)は、図4(b)と同様に、搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置を通過し、物体検知センサ110による手荷物Tの検知が完了した後、所定時間が経過して、検査処理部の指示に従い検査線照射装置106が検査光の照射の停止した時点の手荷物検査システム1及び手荷物Tの状態を示している。
【0059】
(変形例2)
上述した実施形態において、制御装置100の物体検知部は、異なるタイミングで撮影された2枚の監視画像の間で変化した画素群が所定数、連続して存在する場合、その画素群が、監視対象の物体を表す画素群であると判定することで、監視対象の物体を検知する。物体検知部が監視対象の物体を検知する方法はこれに限られない。
【0060】
図6は、この変形例の一例において、物体検知部が監視対象の物体を検知する方法を説明するための図である。この変形例において、物体検知部は、上述した実施形態における場合と同様に、撮影装置112により順次撮影される監視画像のうち連続する2枚において、変化した所定数以上の連続した画素群を特定する。ただし、この変形例において、物体検知部は、そのように特定した画素群を直ちに監視対象の物体を表す画素群とは判定せず、そのような画素群の特定を後続の監視画像に関しても順次行うことで、画素群の移動経路Sを特定する。
【0061】
そして、物体検知部は、図6(a)に例示のように、移動経路Sが、手荷物Tが通過する可能性のある領域である領域Bを手荷物Tの搬送方向に移動する経路である場合、その移動経路Sを移動している物体を手荷物Tであると判定する。一方、物体検知部は、図6(b)に例示のように、移動経路Sが領域B以外の領域内を移動する経路である場合や、移動経路Sが手荷物Tの搬送方向とは異なる方向に移動する経路である場合、その移動経路Sを移動している物体を監視対象の物体であると判定することで、監視対象の物体を検知する。
【0062】
上述した実施形態においては、移動する物体を全て、監視対象の物体として検知する。従って、上述した実施形態において、仮に監視期間を、手荷物Tが検査空間A0に入る前や検査空間A0から出た後の期間にまで拡張すると、手荷物Tが監視対象の物体と誤認され、不要な警告や検査線の照射の禁止が行われてしまう、という不都合が生じる。一方、この変形例においては、移動する物体のうち、手荷物T以外の物体が監視対象の物体として検知される。従って、この変形例においては、監視期間を、手荷物Tが検査空間A0に入る前や検査空間A0から出た後の期間にまで拡張しても、不要な警告や検査線の照射の禁止が行われることはない。
【0063】
図7は、この変形例における監視期間の一例を説明するための図である。図7(a)は監視期間の始期の状態を示し、図7(b)は監視期間の終期の状態を示している。
【0064】
図7(a)は、通行人等により手荷物Tが搬送装置103の上流側に置かれ、物体検知センサ108が手荷物Tを検知した時点の手荷物検査システム1及び手荷物Tの状態を示している。
【0065】
図7(b)は、図4(b)と同様に、搬送装置102の運転に伴い手荷物Tが物体検知センサ110の位置を通過し、物体検知センサ110による手荷物Tの検知が完了した後、所定時間が経過して、検査処理部の指示に従い検査線照射装置106が検査光の照射の停止した時点の手荷物検査システム1及び手荷物Tの状態を示している。
【0066】
上述した変形例においては、上述した実施形態における場合と同様に、物体検知部は、異なるタイミングで撮影された2枚の画像の比較により、監視対象の物体を検知する。物体検知部が、異なるタイミングで撮影された2枚の画像の比較によらずに、監視対象の物体を検知してもよい。
【0067】
例えば、物体検知部が、既知の画像認識手法(例えば、ディープラニングを用いた学習型の人工知能による画像認識手法等)により、個々の監視画像に写っている物体の種別を認識し、認識した物体が人(手等の人体の一部を含む)であれば、その物体を監視対象の物体として検知してもよい。
【0068】
(変形例3)
上述した実施形態において、撮影装置112は光学カメラであるものとしたが、光学カメラ以外の撮影装置が撮影装置112として採用されてもよい。
【0069】
例えば、熱画像を生成する赤外線カメラが撮影装置112として採用されてもよい。この場合、物体検知部は、撮影装置112が生成する熱画像により、禁止領域A1又は警告領域A2において環境温度よりも高い温度の物体を監視対象の物体として検知することにより、人が禁止領域A1又は警告領域A2に侵入した場合、その人を検知できる。その場合、物体検知部は、仮に通行人の所持物等の熱を発しない物体が禁止領域A1又は警告領域A2に侵入したとしても、その所持物を監視対象の物体としては検知しない。従って、検査線の照射を受けても害がない物体が禁止領域A1又は警告領域A2に侵入した場合、無駄に警告や検査線の照射の禁止が行われず、望ましい。
【0070】
また、距離画像を生成する距離画像センサが撮影装置112として採用されてもよい。
【0071】
(変形例4)
上述した実施形態において、物体検知部は、撮影装置112により撮影された画像により監視対象の物体を検知する。物体検知部が、画像によらずに監視対象の物体を検知してもよい。
【0072】
例えば、手荷物検査システム1が、3次元の検知領域内を検査光で走査し、検査光の反射光を受光することにより検知領域内の物体を検知する3次元物体検知装置を備え、物体検知部が、3次元物体検知装置による検知結果に基づき、禁止領域A1及び警告領域A2の各々における監視対象の物体の検知を行ってもよい。
【0073】
また、手荷物検査システム1が、熱を発する物体を検知する熱検知装置を備え、物体検知部が、熱検知装置による検知結果に基づき、禁止領域A1及び警告領域A2の各々における監視対象の物体の検知を行ってもよい。
【0074】
(変形例5)
上述した実施形態において、撮影装置112は1つであるものとしたが、手荷物検査システム1が2以上の撮影装置112を備えてもよい。また、撮影装置112の配置位置は上述した実施形態において説明した配置位置に限られない。例えば、手荷物検査システム1が、禁止領域A11及び警告領域A21を画角に含むように配置された第1の撮影装置と、禁止領域A12及び警告領域A22を画角に含むように配置された第2の撮影装置を備えてもよい。
【0075】
(変形例6)
上述した実施形態において、検査線照射装置106はライン上に1次元に並べられた複数の検査線照射素子を備えるものとしたが、検査線照射装置106が、例えば矩形平面上に2次元に並べられた複数の検査線照射素子を備えてもよい。また、検査線照射装置106が、1つの走査線照射素子と、その走査線照射素子を手荷物Tの搬送方向における左右方向に高速で往復搬送する搬送部とを備えてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…手荷物検査システム、100…制御装置、101…検査線遮蔽ボックス、102…搬送装置、103…搬送装置、104…検査線遮断カーテン、105…検査線遮断カーテン、106…検査線照射装置、107…検査線受波装置、108…物体検知センサ、109…物体検知センサ、110…物体検知センサ、111…物体検知センサ、112…撮影装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7