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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163996
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】把持装置及び長尺物の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/08 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
B66C13/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069180
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏明
(72)【発明者】
【氏名】笹原 大介
(72)【発明者】
【氏名】森田 一義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】江沢 迪和
(57)【要約】
【課題】長尺物を、迅速で円滑に搬送することができる把持装置及び長尺物の搬送方法を提供する。
【解決手段】搬送装置は、マスト部材を把持して、巻上装置により吊り上げるための把持装置20を備える。把持装置20は、マスト部材に係合させる掛止部35bを備えた爪部材35と、掛止部35bに対して移動可能に接続された本体部21と、掛止部35bに対して本体部21を相対移動させるアクチュエータ46とを備える。把持装置20は、アクチュエータ46によって掛止部35bを本体部21に対して相対移動させることにより、マスト部材が、長手方向が水平になる姿勢となるように、掛止部35bをマスト部材に引っ掛ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物を把持して、揚重装置により吊り上げるための把持装置であって、
前記長尺物に係合させる係合部と、
前記揚重装置に接続させる本体部と、
前記係合部に対して前記本体部を相対移動させる移動機構部とを備えることを特徴とする把持装置。
【請求項2】
長尺物を把持して、揚重装置により吊り上げるための把持装置を用いて、前記長尺物を移動させる長尺物の搬送方法であって、
前記把持装置は、
前記長尺物に係合させる係合部と、
前記揚重装置に接続させる本体部と、
前記本体部と前記係合部との相対位置を変更可能な移動機構部とを備え、
前記移動機構部によって前記係合部を前記本体部に対して相対移動させることにより、前記長尺物が目標姿勢になるように、前記係合部を前記長尺物に引っ掛けることを特徴とする長尺物の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンのマストを構成するマスト部材等の長尺物を吊り上げて搬送する把持装置及び長尺物の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場において使用する各種資機材をまとめて保管しておき、必要に応じて搬送することがある。例えば、タワークレーンを構成するマスト(支柱)は、不使用時には、複数個に分解されて、マスト部材としてまとめて保管される。そして、必要になった場合には、保管場所のマスト部材を、吊り上げて、トラック等で工事現場に搬送する。
【0003】
このようなマスト部材は、複雑な形状の長尺物であるため、マスト部材の上部等の一部にロープ等を巻き付け、このロープ等を吊り上げて搬送していた。ここで、マスト部材を吊り上げて搬送するために、吊荷旋回装置を用いることも行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の吊荷旋回装置は、フライホイールと回転用モータと傾動用モータとを備え、回転用モータによって回転されるフライホイールが傾動用モータにより傾動されることによって生じるジャイロ効果を利用して、吊材により吊られた吊荷を旋回させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-131940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、揚重時には、作業員による玉掛け作業や介錯作業を行なう。この場合、マスト部材のバランスを考慮して、高所で、マスト部材への玉掛け作業や介錯作業を行なう必要があった。このため、迅速で円滑に搬送することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する把持装置は、長尺物を把持して、揚重装置により吊り上げるための把持装置であって、前記長尺物に係合させる係合部と、前記揚重装置に接続させる本体部と、前記係合部に対して前記本体部を相対移動させる移動機構部とを備える。
【0007】
また、上記課題を解決する長尺物の搬送方法は、長尺物を把持して、揚重装置により吊り上げるための把持装置を用いて、前記長尺物を移動させる長尺物の搬送方法であって、前記把持装置は、前記長尺物に係合させる係合部と、前記揚重装置に接続させる本体部と、前記本体部と前記係合部との相対位置を変更可能な移動機構部とを備え、前記移動機構部によって前記係合部を前記本体部に対して相対移動させることにより、前記長尺物が目標姿勢になるように、前記係合部を前記長尺物に引っ掛ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長尺物を迅速で円滑に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における搬送装置の斜視図。
図2】実施形態における搬送装置が備える把持装置の正面図。
図3】実施形態における把持装置の斜視図。
図4】実施形態における把持装置の本体部を除いた平面図。
図5】実施形態における搬送装置の制御部の構成を説明するブロック図。
図6】実施形態における把持装置の掛止部をマスト部材の把持位置に配置した正面図。
図7】実施形態において把持装置の掛止部をマスト部材に挿入する前の右側面図。
図8】実施形態において把持装置の掛止部をマスト部材に挿入した後の右側面図。
図9】実施形態において把持装置の掛止部をマスト部材に掛止して、重心を移動させた正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図9を用いて、把持装置及び長尺物の搬送方法を具体化した一実施形態を説明する。ここで、本実施形態の把持装置は、タワークレーンのマスト(支柱)を構成するマスト部材を把持する。
【0011】
まず、図6を用いて、把持装置が把持するマスト部材60について説明する。
マスト部材60は、全体で略直方体形状を有し、4つの主材61と複数の補強板62とを有する。主材61は、マスト部材60の長手方向に延在し、直方体形状を有し、長手方向と直交する平面の四つ角に配置される。補強板62は、板状の部材であって、同一面において主材61や他の補強板62を連結して補強する。このため、主材61や補強板62との間には、適宜、隙間が形成される。本実施形態のマスト部材60は、4つの側面における主材61及び補強板62が同じ配置で構成されている。
【0012】
図1に示すように、把持装置20は、搬送装置10に吊り下げられる。
搬送装置10は、門型(橋形)クレーンであって、離間した1対の走行レールR1の上に載置される。この走行レールR1は、複数のマスト部材60が積み上げられる集積領域MB1の両側に設けられる。この集積領域MB1には、長尺物であるマスト部材60が、寝かした状態で前後左右に並べられて、複数段で積層されて置かれる。
【0013】
搬送装置10は、脚部11,13、ガーダ15及びクラブトロリ16を備えている。脚部11,13の下面には、走行レールR1上を回転して走行する複数の車輪12,14が設けられている。車輪12,14は、脚部11,13にそれぞれ設けられた走行装置によって駆動される。
【0014】
ガーダ15は、脚部11,13の上部に渡るように配置されている。ガーダ15の上には、クラブトロリ16が、横行装置の駆動によって、ガーダ15の延在方向に移動可能に設けられている。クラブトロリ16は、揚重装置としての巻上装置(図示せず)を内蔵している。巻上装置は、ロープW1を巻き取り又は送り出して、ロープW1を介して吊り下げた把持装置20を昇降させる。
【0015】
図2に示すように巻上装置のロープW1は、フックF1に固定された動滑車に巻回されている。フックF1は、把持装置20の本体部21の上端部に固定された吊部材18の突起部に引っ掛けられ、把持装置20を吊り上げる。
【0016】
図3に示すように、把持装置20は、本体部21と本体部21の下方に設けたフレーム部材とを備える。本体部21は、本実施形態では、スカイジャスタ(登録商標)等の吊荷の旋回角度を制御する角度調整装置としての旋回制御装置を内蔵している。
【0017】
図4に示すように、フレーム部材は、長手方向に延在する中心線C1において線対称の構成を有する。フレーム部材は、基礎部材23,24、2本の固定部材25及び補強部材26,27を有する。基礎部材23,24は、中心線C1と直交し、搬送対象のマスト部材60の幅より少し短い。基礎部材23,24は、断面が略正方形の筒部材である。2本の固定部材25は、中心線C1と平行に配置される。各固定部材25は、基礎部材23,24の端部同士を連結している。基礎部材23,24及び固定部材25の配置は、補強部材26,27により補強される。なお、補強部材26の上に、載置部材22を介して本体部21が載置固定される。
【0018】
各基礎部材23(24)の両端のそれぞれには、連結部材28(29)が嵌合している。各連結部材28,29は、基礎部材23,24の開口部からそれぞれ突出している。更に、2個の連結部材28(29)は、基礎部材23(24)の内部において、隙間をおいて並んでおり、少なくとも後述する掛止部35bの可動長さ分だけ、基礎部材23,24の内部で摺動可能である。
【0019】
連結部材28,29の先端の上面は、それぞれ、基礎部材31,32の両端部の下面に固定されている。基礎部材31,32は、中心線C1と平行に配置され、断面が略正方形の筒部材である。各基礎部材31,32には、取付部材33,34がそれぞれ貫通している。取付部材33,34は、基礎部材31,32に嵌合し、基礎部材31,32に対して摺動可能に配置されている。各取付部材33,34の両端部には、爪部材35が設けられている。
【0020】
図2に示すように、各爪部材35は、円筒形状の棒部材である支持部35aと、この支持部35aの下端部に設けられた掛止部35bとを有する。支持部35aは、その上端部が取付部材33,34の端部に固定されている。掛止部35bは、把持対象のマスト部材60間に挿入される係合部である。
【0021】
図4に示すように、各掛止部35bは、中心線C1側に、支持部35aから長さD1で延在する載置部を有する。長さD1は、マスト部材60の補強板62の厚みよりも大きい。また、各掛止部35bの上面部には、ロードセル(図示せず)が設けられている。各ロードセルは、掛止部35bの上にマスト部材60の一部が載置した場合に、掛止部35bに加わる荷重を計測する。
【0022】
更に、補強部材27には、アクチュエータ41,42が固定されている。各アクチュエータ41,42は、フレーム部材の中央であって、ロッド41a,42aが基礎部材23,24と平行となるように配置される。各アクチュエータ41,42のロッド41a,42aの先端は、それぞれ基礎部材31,32の中央部に固定される。そして、各アクチュエータ41,42は、電動モータによってロッド41a,42aを伸縮させる。このロッド41a,42aの伸縮により、基礎部材31,32と中心線C1との間隔を変更する。
【0023】
更に、各基礎部材31,32の上面には、移動機構部としてのアクチュエータ46,47が、基礎部材31,32に沿うように、取付板45を介して固定されている。各アクチュエータ46,47は、フレーム部材の中央部より基礎部材23側に少し寄って配置され、電動モータによってロッド46a,47aを伸縮させる。
【0024】
ロッド46a,47aの先端は、基礎部材24側の爪部材35の近傍において、取付部材33,34にそれぞれ固定されている。そして、各アクチュエータ46,47のロッド46a,47aが伸縮すると、取付部材33,34に固定された爪部材35が基礎部材31,32に対して、中心線C1の延在方向に相対移動する。
【0025】
(搬送装置の制御部)
次に、図5を用いて、上述した構成の搬送装置10の制御部50の構成について説明する。
【0026】
搬送装置10の制御部50は、搬送装置10の脚部11,13に設けた走行装置、ガーダ15に設けられた横行装置、クラブトロリ16に内蔵された巻上装置に接続されている。更に、制御部50は、把持装置20のアクチュエータ41,42,46,47、各掛止部35bに設けられたロードセル、本体部21の旋回制御装置に接続されている。制御部50は、ロードセルに加わったマスト部材60の荷重のデータ値を取得する。
【0027】
また、制御部50は、作業者からの指示を取得する遠隔操作部RC1に無線等により接続されている。
制御部50は、移動制御部51、昇降制御部52、掛止制御部53、重心制御部54及び旋回制御部55を備える。
【0028】
移動制御部51は、脚部11,13、ガーダ15を移動させることにより、把持装置20を移動させる。
昇降制御部52は、クラブトロリ16を駆動して、把持装置20の昇降を制御する。
掛止制御部53は、アクチュエータ41,42を駆動して、掛止部35bをマスト部材60に挿入させる。
【0029】
重心制御部54は、本体部21を掛止部35bに対して相対移動させる。この場合、把持装置20を吊り上げたときに、マスト部材60がほぼ水平の姿勢(目標姿勢)で吊り上がるように、掛止部35bをマスト部材60に引っ掛ける箇所(把持位置)に対して、把持装置20の重心C2を移動する。重心制御部54は、マスト部材60と把持装置20との相対位置を調整するために、把持装置20の重心C2の位置と、マスト部材60の重心C6の位置を記憶している。把持装置20の重心C2の位置及びマスト部材60の重心C6の位置は、それぞれ把持装置20の本体部21及びマスト部材60の基準点(端部や中心)からの相対的距離である。更に、重心制御部54は、各掛止部35bのロードセルから取得した荷重を用いて、ロードセルの荷重がほぼ同じになるように、把持装置20の位置を調整する。
旋回制御部55は、マスト部材の搬送先であるトラックT1の荷台に、マスト部材60を載せるために、マスト部材60の水平方向の向きを変更する。
【0030】
(マスト部材60の搬送方法)
次に、搬送装置10を用いてマスト部材60を搬送する方法について説明する。
図1に示した集積領域MB1においては、複数のマスト部材60が、主材61の延在方向を水平にした状態で、水平方向において隣接するマスト部材60と、把持装置20の爪部材35が挿入可能な間隔をおいて配置されている。
【0031】
ここでは、遠隔操作部RC1を介して、作業者は、搬送装置10の制御部50に操作指示を行なう。
まず、操作指示に応じて、移動制御部51は、脚部11,13を移動させることにより、搬送対象となるマスト部材60に対応する位置に把持装置20を移動させる。この場合、移動制御部51は、把持装置20の基礎部材31,32の間に搬送対象のマスト部材60が位置するように移動させる。
【0032】
次に、操作指示に応じて、移動制御部51は、クラブトロリ16をガーダ15に沿って移動させることにより、把持装置20を、搬送対象のマスト部材60の直上の位置まで移動させる。この場合、旋回制御部55は、本体部21の旋回制御装置を駆動して、中心線C1の向きがマスト部材60の長手方向に一致するように、把持装置20を旋回させる。
【0033】
そして、操作指示に応じて、昇降制御部52は、クラブトロリ16の巻上装置を駆動することにより、ロープW1を送り出して、把持装置20を徐々に降下させる。
ここで、図6に示すように、巻上装置は、把持装置20の掛止部35bが、マスト部材60の上端部に位置した主材61よりも下となる位置まで、把持装置20を降下させる。具体的には、作業者は、マスト部材60の主材61と補強板62との空隙で、把持装置20の掛止部35bを挿入可能な箇所まで、把持装置20を降下させる。
【0034】
この場合、図7に示すように、アクチュエータ41,42のロッド41a,42aは伸長されており、掛止部35bは、マスト部材60の外周面よりも外に位置する。
そして、操作指示に応じて、掛止制御部53は、アクチュエータ41,42を駆動して、ロッド41a,42aを収縮する。
【0035】
この場合、図8に示すように、連結部材28(29)同士が近接するので、爪部材35の掛止部35bの内側端部が、マスト部材60の側面部の補強板62より内側に位置する。
次に、図9に示すように、重心制御部54が、マスト部材60の重心C6位置の直上に重心C2が位置するように、アクチュエータ46,47を駆動して、ロッド46a,47aを伸長する。
【0036】
この状態で、操作指示に応じて、昇降制御部52は、クラブトロリ16を駆動して、把持装置20を上昇させる。この場合、爪部材35の掛止部35bにマスト部材60の補強板62が載置されると、重心制御部54は、掛止部35bのロードセルから荷重のデータを取得する。ここで、重心制御部54は、マスト部材60の長手方向に配置される掛止部35bにおいて、ロードセルの荷重が許容範囲以上の差が生じている場合には、巻上装置を停止する。そして、重心制御部54は、アクチュエータ46,47を駆動して、軽い荷重を計測したロードセルがある掛止部35b側に、本体部21を移動させて、マスト部材60を載置した掛止部35bの重量バランスを調整する。
【0037】
マスト部材60の長手方向における掛止部35bのロードセルの荷重差が許容範囲内になった場合には、昇降制御部52は、巻上装置を更に駆動して、把持装置20及びマスト部材60を上昇させる。
【0038】
そして、図1に示すように、操作指示に応じて、移動制御部51は、脚部11,13を、マスト部材60を積載するトラックT1に対応する位置まで走行レールR1に沿って移動させる。
【0039】
次に、操作指示に応じて、移動制御部51は、クラブトロリ16を移動させることにより、把持装置20をガーダ15に沿ってトラックT1の上方まで移動させる。そして、操作指示に応じて、旋回制御部55は、本体部21の旋回制御装置を駆動して、マスト部材60の長手方向がトラックT1の荷台の向きに一致するように、把持装置20を旋回させる。その後、操作指示に応じて、昇降制御部52は、巻上装置を駆動して、把持装置20を降下させることにより、マスト部材60をトラックT1の荷台に載置させる。
【0040】
トラックT1の荷台にマスト部材60が載置した場合には、操作指示に応じて、昇降制御部52は、巻上装置を停止した後、掛止制御部53は、把持装置20のアクチュエータ41,42を駆動して、ロッド41a,42aを伸長させる。これにより、連結部材28(29)同士が離れるので、爪部材35の掛止部35bが、マスト部材60の補強板62より外側に位置する。そして、操作指示に応じて、昇降制御部52は、巻上装置を駆動して、把持装置20を昇降させる。その後、把持装置20から離れたマスト部材60を荷台に載置したトラックT1が、マスト部材60を他の場所に運搬する。
【0041】
(作用)
本実施形態では、把持装置20の掛止部35bに対して、把持装置20の重心C2の位置を相対移動させる。これにより、マスト部材60において掛止可能な箇所が限られていても、マスト部材60の重心C6と把持装置20の重心C2との位置関係に応じて、マスト部材60が目標姿勢になる。
【0042】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、把持装置20は、爪部材35の掛止部35bをマスト部材60に差し込んだ後、マスト部材60の重心C6の位置に把持装置20の重心C2の位置が一致するように、把持装置20の本体部21を掛止部35bに対して相対移動させる。これにより、把持装置20を吊り上げた場合、マスト部材60の長手方向を水平にした姿勢で安定して吊り上げることができるので、マスト部材60を迅速に搬送することができる。
【0043】
(2)本実施形態では、制御部50は、吊り上げた際に掛止部35bのロードセルの荷重を取得し、これら荷重を用いて重心位置を調整する。これにより、マスト部材60をより安定して吊り上げることができる。
【0044】
(3)本実施形態の把持装置20は、アクチュエータ41,42のロッド41a,42aの先端が、基礎部材31,32の中央部に固定されている。これにより、基礎部材31,32を貫通する取付部材33,34の両端部に設けられた爪部材35を円滑に動かすことができる。
【0045】
(4)本実施形態の把持装置20は、隣接されたマスト部材60の隙間に挿入可能な大きさの爪部材35を備える。これにより、マスト部材60が密集して集積領域MB1に配置していても、把持装置20はマスト部材60を両側から把持することができる。
【0046】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の把持装置20においては、アクチュエータ41,42によって掛止部35bを中心線C1側に近接又は離間させ、アクチュエータ46,47によって、掛止部35bに対して本体部21を相対移動させた。掛止部35bをマスト部材60に差し込むための挿入機構部や、掛止部35bを本体部21に移動させて把持装置20のバランスを調整する移動機構部は、アクチュエータを用いた構成に限られない。例えば、ウォームギアを用いた機構等であってもよい。
【0047】
・上記実施形態においては、把持装置20の掛止部35bをマスト部材60に挿入した後、把持装置20の本体部21を、掛止部35bに対して相対移動させた。把持装置20の重心C2の移動と、掛止部35bによるマスト部材60の掛止とのタイミングは、逆であってもよい。例えば、マスト部材60の重心C6の位置の上方に、把持装置20の重心C2の位置を配置する。その後、アクチュエータ46,47を駆動して、掛止部35bを、本体部21に対して相対移動させて把持位置に配置した後、アクチュエータ41,42を駆動して、掛止部35bをマスト部材60に挿入してもよい。この場合にも、重心制御部54は、掛止部35bのロードセルから荷重のデータを取得する。そして、重心制御部54は、必要に応じて、アクチュエータ46,47を駆動して、本体部21を移動させることにより重量バランスを調整する。また、ロードセルの荷重データ以外を用いて、例えば、撮影画像における図形中心等を用いて、重量バランスを調整してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、作業者の操作指示に応じて、搬送装置10の制御部50は、把持装置20の位置、昇降等を制御した。これに代えて、制御部50が、マスト部材60の位置や形状を特定し、把持装置20の位置、昇降等を制御してもよい。例えば、把持装置20の下面にカメラを設ける。そして、制御部50は、指定された把持対象のマスト部材60の配置を、カメラによる撮影画像により特定する。次に、制御部50が、カメラによる撮影画像を用いて、マスト部材60の形状から、掛止部35bが係合可能な位置を特定する。そして、制御部50は、撮影画像により特定した係合可能な位置に応じて、把持装置20の水平方向の位置及び降下する高さを決定する。そして、決定した位置及び高さとなるように、制御部50は、把持装置20の位置や昇降を制御する。
【0049】
・上記実施形態では、把持装置20は、マスト部材60の長手方向が水平になる姿勢を目標姿勢とした。目標姿勢は、長尺物の長手方向が水平となる姿勢に限られず、吊り上げる対象物が安定した姿勢であればよい。例えば、長尺物の形状に応じて、傾斜した姿勢を用いてもよい。この場合には、この姿勢となるように、長尺物の重心位置に対して、把持装置の重心位置を移動させた後、吊り上げる。
【0050】
・上記実施形態では、爪部材35は、円筒形状の棒部材である支持部35a及び掛止部35bを備える。爪部材35の構成は、これに限られず、例えば、支持部35aが伸縮可能な形状であってもよい。この場合には、支持部35aの長さを調整することにより、同じ基礎部材31,32に取り付けた掛止部35bを、マスト部材60の異なる高さに引っ掛けることができる。
【0051】
・上記実施形態では、把持装置20は、長尺物としてマスト部材60を吊り上げた。把持装置20が吊り上げる対象物としての長尺物は、マスト部材60に限定されない。掛止部35bを係合できる位置に制限がある長尺物に適用できる。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記本体部は、前記長尺物の旋回角度を調整する角度調整装置を備え、
前記長尺物を吊り上げた後、前記角度調整装置を用いて前記長尺物を旋回させることを特徴とする請求項2に記載の長尺物の搬送方法。
(b)前記係合部が前記長尺物に係合可能な把持位置において前記係合部を前記長尺物に係合させた後、前記本体部を前記係合部に対して相対移動させて前記目標姿勢とすることを特徴とする請求項2又は前記(a)に記載の長尺物の搬送方法。
【0053】
(c)前記長尺物は、タワークレーンのマストを構成するマスト部材であることを特徴とする請求項2、前記(a)又は前記(b)に記載の長尺物の搬送方法。
(d)長尺物を把持して吊り上げるための把持装置と、前記把持装置を吊り上げる揚重装置とを備え、前記長尺物を吊り下げて移動させる搬送装置であって、前記把持装置は、長尺物に係合させる係合部と、前記揚重装置に接続させる本体部と、前記係合部に対して前記本体部を相対移動させる移動機構部とを備えることを特徴とする搬送装置。
【符号の説明】
【0054】
C1…中心線、C2,C6…重心、D1…長さ、F1…フック、MB1…集積領域、R1…走行レール、RC1…遠隔操作部、T1…トラック、W1…ロープ、10…搬送装置、11,13…脚部、12,14…車輪、15…ガーダ、16…クラブトロリ、18…吊部材、20…把持装置、21…本体部、22…載置部材、23,24,31,32…基礎部材、25…固定部材、26,27…補強部材、28,29…連結部材、…基礎部材、33,34…取付部材、35…爪部材、35a…支持部、35b…掛止部、41,42,46,47…アクチュエータ、41a,42a,46a,47a…ロッド、45…取付板、50…制御部、51…移動制御部、52…昇降制御部、53…掛止制御部、54…重心制御部、55…旋回制御部、60…マスト部材、61…主材、62…補強部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1