(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164006
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】弁体の固定装置とこれを用いた弁
(51)【国際特許分類】
F16K 43/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
F16K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069199
(22)【出願日】2021-04-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年4月7日に、発明が記載された書面を電気通信回線を通じて取引先に配布した。
(71)【出願人】
【識別番号】000147291
【氏名又は名称】株式会社清水合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀是
(72)【発明者】
【氏名】小谷 久人
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 由男
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 幸一
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA02
3H066BA11
3H066BA17
3H066BA18
3H066BA38
3H066DA14
3H066EA36
(57)【要約】
【課題】弁体の回動を停止させて固定した状態を確実に維持でき、ステムの強度を十分に確保できるばかりでなく、減速機交換時などに、固定具などを必要とすることなく、作業性を著しく向上させた弁体の固定装置とこれを用いた弁を提供する。
【解決手段】弁箱1内に設けられた弁体2がステム3を介して回転自在に設けられ、このステム3が軸装された軸装部11にスペーサ4を介在させて減速機9を着脱自在に搭載し、スペーサ4内に位置しているステム3の外周にストッパリング5が固定され、このストッパリング5の外周面にストッパ部20が設けられ、このストッパ部20とスペーサ4内に設けられた固定部材6でステム3の回動を停止させて弁体2を所定位置に固定するようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内に設けられた弁体がステムを介して回転自在に設けられ、このステムが軸装された軸装部にスペーサを介在させて減速機を着脱自在に搭載し、前記スペーサ内に位置している前記ステムの外周にストッパリングが固定され、このストッパリングの外周面にストッパ部が設けられ、このストッパ部と前記スペーサ内に設けられた固定部材で前記ステムの回動を停止させて前記弁体を所定位置に固定するようにしたことを特徴とする弁体の固定装置。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記ストッパリングの外周面に形成した平面部又はストッパ溝であり、前記ストッパ部に前記固定部材を押し当て又は係止させて前記ステムを固定した請求項1に記載の弁体の固定装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記スペーサの側部に所定の間隔で少なくとも2箇所以上に配置された請求項1又は2に記載の弁体の固定装置。
【請求項4】
前記固定部材は、固定ボルトであり、この固定ボルトを前記スペーサの側面より螺子込んで前記固定ボルトの先端で前記ストッパ部に押し当て又は係止させた請求項1乃至3の何れか1項に記載の弁体の固定装置。
【請求項5】
前記スペーサの側面に形成された開口部に筒形状のカラーが装入され、このカラーの内周端部側には、前記固定ボルトの頭部を係止するための係止鍔部が形成され、前記カラーの軸方向に対する装入向きを変えてこのカラーに装入した前記固定ボルトの長さ方向の位置を変換させた請求項4に記載の弁体の固定装置。
【請求項6】
前記ストッパリングは、前記ステムに形成されたキー溝を通してキーにより前記ステムに位置決め状態で固定されると共に、前記減速機の出力側に設けられた出力軸が、前記ステムの前記キー溝に装着したキーにより前記ステムに位置決め状態で固定された請求項1乃至5の何れか1項に記載の弁体の固定装置。
【請求項7】
前記軸装部にOリングケースが設けられ、このOリングケースの内径部には、複数のOリングが装着され、さらに、前記Oリングケースの上端開口部側には、フッ素ゴム等の耐久性を有するOリングが装着された請求項1乃至6の何れか1項に記載の弁体の固定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載された弁体の固定装置を用いた弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体の固定装置に関し、特に、地中に敷設された配管に使用する場合に適した弁体の固定装置とこれを用いた弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に敷設された配管の流路を開閉又は中間開度に制御する場合に使用される弁として、バタフライ弁が一般に知られている。
バタフライ弁を地中に埋設して使用する場合、通常、弁箱の上部に接続用のスタンドが設けられ、このスタンドを介して弁箱の上部に操作機(減速機)が取り付けられる。操作機は、ハンドル等により地上から操作可能に設けられ、このハンドルにより操作機を操作し、操作機からステムを介して弁体が開閉可能に設けられている。この種のバタフライ弁は、設置後には長期間に渡って埋設された状態が続くことから、通常の管路に設置されたバタフライ弁に比較して劣化しやすくなり、特に、操作機が劣化した場合には、開閉操作が困難になるため、操作機には定期的な交換やメンテナンスが要求される。この場合、通常、地下に敷設された水道本管などでは、バタフライ弁は、不断水の状態で操作機が着脱可能になっておらず、断水した状態で操作機の交換作業がおこなわれる。
【0003】
これに対し、不断水の状態で操作機を脱着可能に設けたものとして、例えば、特許文献1のバタフライ弁が開示されている。このバタフライ弁では、弁箱と操作機(減速機)との間にスタンドが設けられ、このスタンドに設けられた複数の固定孔にはそれぞれプラグが着脱自在に取付けられている。さらに、固定孔と、上部側の弁棒に形成された貫通孔には、固定用棒が挿脱自在に設けられている。
操作機を取り外す場合には、スタンドからプラグを取り外して固定孔を連通状態にし、弁体を全開状態まで回転させて貫通孔を固定孔に対して一直線上に配置するように連通させる。続いて、これら固定孔と貫通孔とに固定用棒を挿通させることで、弁体が全開位置に固定され、この不断水の状態で操作機の取り外しが可能になっている。
【0004】
一方、特許文献2におけるバタフライ弁においては、弁棒を制動する開度固定治具と、制動部材の移動を規制する2本の棒状のガイドと、スタンドとは別部品であって減速機が離間した状態で弁棒を制動する開度分割固定治具とが設けられ、これらにより、減速機が弁箱に対して脱着可能に設けられる(
図1-
図6参照。)。
操作機を取り外すときには、開度固定治具を弁棒の先端に接続すると共にガイドをバルブ上部に固定し、減速機とスタンドとの接続を解除した状態で減速機をガイドに沿って上方に移動させる。続いて、接続台から離間した減速機と、接続台との間に開度分割固定治具を嵌入させ、弁棒を固定することで不断水(弁開)の状態に維持され、この状態で操作機を取り外して交換されるようになっている。
また、同文献2において、弁棒の先端側を固定する開度固定治具、及びガイドを用いることなく、2つの治具から構成される開度固定治具を用いて弁棒を側方側から固定して制動し、減速機を取り外すようにしたバタフライ弁も開示されている(
図7-
図9参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6456097号公報
【特許文献2】特開2019-210962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の特許文献1においては、弁体を閉状態に固定するために弁棒に貫通孔を形成しているため、弁棒の強度が低下する。しかも、弁棒を開状態に強く保持するためには固定用棒をより太く形成する必要があり、この場合には、貫通孔も大径になって弁棒がさらに薄肉化して強度の確保が一層難しくなる。これに加えて、弁棒に貫通孔を形成する加工も必要になり、このとき貫通孔を正確に穿孔する加工精度も要求される。
【0007】
さらに、固定用棒で弁棒を不断水の状態(弁開状態)に固定するためには、この固定用棒の長さが、少なくとも、スタンドの水平方向に形成された固定孔の長さと、貫通孔の長さとの和と同程度か、或はそれ以上の長尺状に設ける必要がある。このように固定用棒が長くなることで、弁棒の回転を抑制するときに固定用棒にかかる負荷も大きくなり、不断水の状態に弁棒を固定するときには、長尺状の固定用棒を固定孔及び貫通孔に挿脱したり、挿脱用の治具を使用するための作業スペースも余分に必要になる。その結果、バルブを設置するための内部スペースの広い弁筐も必要になる。貫通孔と固定孔とに固定用棒を挿通させるためには、これらを芯出し状態で連通させる必要があり、その位置合わせも困難になっている。
【0008】
後者の特許文献2の
図1-
図6のバタフライ弁の場合には、棒状のガイドや弁棒先端への接続用開度固定治具を取付けるためのスペースが余分に必要になり、これらガイドや開度固定治具により弁棒固定用の部品の点数が増加し、減速機交換時の作業工数も増えるという問題がある。
同文献2の
図7-
図9のバタフライ弁は、弁棒に側方から2つの開度固定治具を固定する嵌合部を縮径状に形成しているために弁棒の強度が低下する。さらに、嵌合部は、対向する平面同士が平行で、かつ開度固定治具に形成された凹部に嵌合する形状としているため、弁棒への嵌合部の加工が困難であって高い寸法精度も要求される。
【0009】
弁棒の固定時には、特許文献1においては、固定用部材、特許文献2の
図1-
図6では、2本の棒状のガイド、開度固定治具、開度分割固定治具、同文献2の
図7-
図9では、2つの治具からなる開度固定治具が、スタンドの構成部品とは別に必要になるため、これらの部品や治具を施工現場まで運ぶ必要があったり、また、これらの未使用時には管理の必要も生じる。
【0010】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、弁体の回動を停止させて固定した状態を確実に維持でき、ステムの強度を十分に確保できるばかりでなく、減速機交換時などに、固定具などを必要とすることなく、作業性を著しく向上させた弁体の固定装置とこれを用いた弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弁箱内に設けられた弁体がステムを介して回転自在に設けられ、このステムが軸装された軸装部にスペーサを介在させて減速機を着脱自在に搭載し、スペーサ内に位置しているステムの外周にストッパリングが固定され、このストッパリングの外周面にストッパ部が設けられ、このストッパ部とスペーサ内に設けられた固定部材でステムの回動を停止させて弁体を所定位置に固定するようにした弁体の固定装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、ストッパ部は、ストッパリングの外周面に形成した平面部又はストッパ溝であり、ストッパ部に固定部材を押し当て又は係止させてステムを固定した弁体の固定装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、固定部材は、スペーサの側部に所定の間隔で少なくとも2箇所以上に配置された弁体の固定装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、固定部材は、固定ボルトであり、この固定ボルトをスペーサの側面より螺子込んで固定ボルトの先端でストッパ部に押し当て又は係止させた弁体の固定装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、スペーサの側面に形成された開口部に筒形状のカラーが装入され、このカラーの内周端部側には、固定ボルトの頭部を係止するための係止鍔部が形成され、カラーの軸方向に対する装入向きを変えてこのカラーに装入した固定ボルトの長さ方向の位置を変換させた弁体の固定装置である。
【0016】
請求項6に係る発明は、ストッパリングは、ステムに形成されたキー溝を通してキーによりステムに位置決め状態で固定されると共に、減速機の出力側に設けられた出力軸が、ステムのキー溝に装着したキーによりステムに位置決め状態で固定された弁体の固定装置である。
【0017】
請求項7に係る発明は、軸装部にOリングケースが設けられ、このOリングケースの内径部には、複数のOリングが装着され、さらに、Oリングケースの上端開口部側には、フッ素ゴム等の耐久性を有するOリングが装着された弁体の固定装置である。
【0018】
請求項8に係る発明は、弁体の固定装置を用いた弁である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、スペーサ内に位置させたステムの外周にストッパリングを固定し、このストッパリングの外周面のストッパ部と固定部材とでステムの回動を停止させて弁体を所定位置に固定しているので、ステムに対して固定部材を固定するための特殊な加工を施すことがなく、ステムの中実状態と大径状態とを確保して強度を十分に確保しつつ弁体を所定の回動状態に固定し、この固定状態を維持できる。固定部材をスペーサ内に設けて収納した構成に設けていることで、減速機交換時などに、固定具などの外部の部品を必要とすることなく、作業性を著しく向上させながらステムの固定作業をおこなうことができる。スペーサからの固定部材の露出を防ぐことで全体の大型化も防止でき、狭い作業スペースであっても減速機の交換やメンテナンスを実施することが可能になり、内部部品の交換やメンテナンスも実施できる。ステムと別体に設けたストッパリングを固定部材で固定していることで、ステムが傷付くことを防止できる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、ストッパリングの外周面に平面部又はストッパ溝によってストッパ部を設けているため、このストッパ部をストッパリングに容易に形成することができ、固定部材を押し当て又は係止させたときには、ストッパリングに対してより外径側に力を加えていることで、ステムの回転方向に対して強い力を働かせて弁体の停止状態を強固に維持する。ステムに対してストッパリングを回転させた状態で取り付けるか、或は平面部又はストッパ溝の形成位置を変えることにより、任意の中間開度でステムを固定することもできる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、ストッパリングを所定の間隔で少なくとも2箇所以上から固定部材で固定していることにより、ステムから各固定部材に加わるトルクを半減させて各固定部材への負荷を少なくしつつ、この2つの固定部材によりステムを強固に固定できる。特に、固定部材を略90°の間隔で配置するようにすれば、これらを固定するときの合力をステムに伝達させてステムを固定する力を一層向上させることもできる。さらに、何れか一方の固定部材が緩んだ場合であっても、残りの一方でストッパリングの固定状態を維持可能になっている。
【0022】
請求項4に係る発明によると、汎用のボルトを固定部材として利用でき、この固定ボルトをスペーサの側面より汎用の工具を用いて螺子込み、その先端をストッパ部に押し当て又は係止させることができる。これにより、ボルト締結時にはその締付けトルクを利用して固定する力を高めることができ、ボルト先端の摩擦力により固定ボルトの緩みを防止して締結力を維持し、ステムの回転を阻止した状態を確実に保持する。さらに、ストッパリングの外径を大きくすることで、その外周面に押し当て又は係止させる固定ボルトの長さを短くして固定ボルトのステム固定時の変形を抑制し、また、ステム中心からストッパ部までの距離が、ストッパリングの外径を通して長くなることで、ステムの回転トルクを抑制するモーメントが大きくなり、流体等によって大きい回転トルクがステムに加わる場合にもステムの回転を確実に阻止する。固定ボルトは、ステムの固定時、非固定時にかかわらずスペーサに螺子込んで一体化できるため、この固定ボルトの紛失等を防ぐことができ、固定ボルトがスペーサから外部に露出することも防止することで全体の大型化も防止している。
【0023】
請求項5に係る発明によると、スペーサの開口部に装入されるカラーを通して固定ボルトを締付けることで、ステムを弁開状態に固定、又はステムを回動可能な状態にすることができる。通常時には、開口部に対して、係止鍔部が開口側に位置する向きにカラーを装入し、この上から固定ボルトを開口部に螺子込むことにより、固定ボルトを締込んでボルト頭部が係止鍔部に係止したときには、固定ボルトの締め込みが規制される。このとき、固定ボルトの先端面のストッパリングへの接触が防止されることでステムが非固定状態になり、減速機によってステムを自由に回動操作して弁の開閉状態又は中間開度に調節可能となる。一方、ステムを固定する場合には、開口部に対して、係止鍔部が奥側に位置する向きにカラーを装入し、この上から固定ボルトを開口部に螺子込むようにする。この場合、固定ボルトを締め込んだときに固定ボルトの先端がストッパリングを押圧し、その締付けトルクによりステムの回転を阻止して弁開状態に固定できる。このとき、ボルト頭部が係止鍔部に当接したときに固定ボルトの余計な締め込みが規制され、ステムに固定ボルトから過剰な力が加わることを回避する。ステムの非固定時と固定時とにおいては、スペーサへのボルト頭部の装入度合いが異なることから、ボルト頭部の位置を外部から視認することにより、ステムの非固定又は固定の何れかの状態を把握できる。
【0024】
請求項6に係る発明によると、減速機の出力軸を弁体の開閉方向に合わせつつ位置決め状態で簡便にステムに固定できる。これにより、減速機の出力軸とステムとを位置ずれさせることなく接続し、減速機により弁体を正確に回動制御することができる。ステムのキー溝を一箇所にすることで加工の工数が少なくなり、加工精度も向上する。
【0025】
請求項7に係る発明によると、Oリングケースによりシール部分をユニット化し、複数のOリングにより軸封シール性能を向上させていることで、ステムを弁開状態で長期間固定したり、又はステムの非固定時にこのステムを繰り返し回動操作した場合にも、外部への漏れを確実に阻止する。しかも、Oリングケースの上端開口部側に設けたフッ素ゴム等の耐久性を有するOリングにより、別のOリングを追加することなく長寿命化を図れる。
【0026】
請求項8に係る発明によると、ステムに固定部材の固定用の特殊な加工を施すことなくステムの強度を十分に確保し、弁体を所定の回動状態に固定してこの固定状態を維持できる。減速機交換時などに、固定具などの外部の部品を必要とすることなく、作業性を著しく向上させながらステムの固定作業を実施できる。全体の大型化も防止でき、狭い作業スペースであっても減速機の交換やメンテナンスが可能になり、内部部品の交換やメンテナンスも実施できる。ストッパリングを固定部材で固定する構成であるため、ステムの傷付きを防止できる。
これにより、例えば、弁をバタフライ弁とし、このバタフライ弁を配管に接続した場合には、上記の機能を発揮しつつ全開又は中間開度の不断水の状態で強固に弁体を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の弁体の固定装置をバタフライ弁に用いた第1実施形態を示す一部切欠き正面図である。
【
図2】(a)は、
図1のバタフライ弁の軸装部付近を示す一部切欠き部分拡大側面図である。(b)は、(a)のA-A断面図である。
【
図3】
図2のスペーサ付近を示す一部省略部分拡大断面図である。
【
図4】
図3のカラーの向きを変えた状態を示す一部省略部分拡大断面図である。
【
図7】(a)は、本発明の弁体の固定装置をバタフライ弁に用いた第2実施形態を示す一部切欠き部分拡大側面図である。(b)は、(a)のB-B断面図である。
【
図8】(a)は、本発明の弁体の固定装置をバタフライ弁に用いた第3実施形態を示す一部切欠き部分拡大側面図である。(b)は、(a)のC-C断面図である。
【
図9】本発明の弁体の固定装置をバタフライ弁に用いた第4実施形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明における弁体の固定装置とこれを用いた弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、弁体の固定装置をバタフライ弁に適用した例を述べる。
図1においては、本発明の弁体の固定装置をバタフライ弁に適用した第1実施形態であって弁の閉状態を示したものであり、
図2においては、
図1のバタフライ弁が弁開状態となったときの軸装部付近の拡大図を示している。
【0029】
図において、バタフライ弁は、弁箱1、弁体2、ステム3、スペーサ4、ストッパリング5、固定部材6、カラー7、Oリングケース8を備え、その上部には減速機9が搭載可能に設けられている。本実施形態において、例えば、弁箱1、弁体2は、それぞれ鋳鉄などの金属材料により形成され、ステム3、スペーサ4、ストッパリング5、固定部材6、カラー7は、それぞれSUSなどの金属材料により形成され、Oリングケース8は、銅鋳物などの金属材料により形成される。
バタフライ弁は、例えば地中に埋設され、弁箱1の両側に形成された流路1aには、図示しない配管が接続されている。
【0030】
弁箱1は、内部に長尺状のステム3、円板状の弁体2が取付けられる形状に設けられ、この弁箱1の流路内に弁体2が設けられ、この弁体2にステム3が取付ボルト10により一体に取付けられる。弁箱1の上部側には軸装部11が設けられ、この軸装部11の上端側にはフランジ部12が形成される。
【0031】
ステム3は、その上部側に縮径部3aが形成され、この縮径部3aにはキー溝13が形成される。本例におけるキー溝13は、ステム3を
図1に示した弁閉状態、又は弁開状態にしたときに、流路1aと直交する位置に形成されている。ステム3には、キー溝13を通してキー14によりストッパリング5が装着可能に設けられ、これらステム3とストッパリング5との取付け構造により、ステム3を回動したときに、このステム3と一体にストッパリング5が回動するようになっている。
【0032】
ステム3は、縮径部3aから段部3bを介して下部側に拡径部3cが形成される。ステム3は、拡径部3c側が軸装部11に軸装された状態で弁箱1内に取付けられ、縮径部3a側に搭載される減速機9により回動自在に設けられる。この場合、ステム3が略90°の回転角度で操作されたときに弁体2が開又は閉状態となる。
【0033】
弁箱1のフランジ部12には、取付ボルト15によりスペーサ4が固定され、このスペーサ4を介在させた状態で、軸装部11に減速機9が着脱自在に搭載可能に設けられている。
スペーサ4は、略円筒状に形成され、このスペーサ4の中央にはステム挿通穴16が形成される。ステム挿通穴16における上部側には、ストッパリング5収納用の拡径状の収納部17、下部側にはOリングケース8装着用の拡径穴部18がそれぞれ凹状に形成されている。
【0034】
スペーサ4内に位置しているステム3の外周において、収納部17に対応する位置にはストッパリング5が取付けられる。ストッパリング5の内周は、ステム3の縮径部3aが嵌挿可能な大きさの内径に設けられ、その一部にはキー14を取付け可能なキー溝19が形成される。ストッパリング5は、そのキー溝19と、ステムに形成されたキー溝13を通して、キー14によりステム3に位置決め状態で一体に固定される。
【0035】
ストッパリング5の外周面には、平面部からなるストッパ部20が設けられ、本実施形態では、4つの平面部(ストッパ部)20が、それぞれ隣接する平面部20と略90°の角度を成すように形成されて、
図2(b)に示すように、ストッパリング5の外周面が、断面略正方形に設けられる。4つの各平面部20には、後述する固定部材6の先端6aがそれぞれ押し当て可能に設けられ、固定部材6を押し当てたときにはストッパリング5の回転が規制された状態となり、キー14を通してステム3も固定された状態になる。本例において、ストッパリング5のキー溝19は、ストッパリング5を装着したステム3を弁閉状態とした状態で平面部20に対して固定部材6を押し当てできるように、ステム3に固定可能な位置に形成するものとする。
【0036】
スペーサ4の側部には、略90°の間隔で取付穴部21がステム挿通穴16まで貫通するように2箇所に形成され、本例では、各取付穴部21が、雌ねじ22と、穴状の開口部23とにより設けられる。開口部23は、固定部材6の取付け側に雌ねじ22よりも拡径した状態で所定深さによって形成され、この開口部23に続けて雌ねじ22がステム挿通穴16に貫通して形成される。
【0037】
固定部材6は、固定ボルトであり、本例においては、雌ねじ22に螺合する雄ねじ24を備えた六角穴付きボルトよりなる。固定ボルト6は、スペーサ4の側面の開口部23側から雌ねじ22に螺子込まれ、この螺子込みによりスペーサ4内に一体に設けられた状態で、スペーサ4の側部に所定の間隔で少なくとも2箇所以上に配置される。
【0038】
本実施形態では、固定ボルト6が、スペーサ4の2箇所に略90°の間隔により配置され、これら2つの固定ボルト6の螺子込み時には、各先端6aがストッパリング5の隣接するストッパ部20、20にそれぞれ押し当て可能に設けられ、それぞれの固定ボルト6を締付けてストッパ部20を押圧することにより、このストッパ部20と固定部材6とでステム3の回動を停止させ、弁体2を所定位置に固定するようになっている。
本例では、
図1の状態からステム3(弁体2)を略90°回転させて弁開(全開)とした状態でステム3が固定され、これにより、流路1aを不断水の状態に維持することが可能になっている。
【0039】
カラー7は、開口部23に装入可能な所定の外径及び長さにより筒形状に形成され、このカラー7の内周端部側には、環状の係止鍔部30が形成される。係止鍔部30は、その内径が固定ボルト6の雄ねじ24よりもやや拡径し、かつ固定ボルト6の頭部31よりも内径側に突出するように形成されており、雄ねじ24を挿通可能にして頭部31を係止するために設けられる。カラー7は、その軸方向に対する装入向きを変えた状態、すなわち、開口部23に対して係止鍔部30を手前側、又は奥側に位置させた状態で開口部23に装入可能に設けられ、このカラー7を通して取付穴部21に固定ボルト6を装入することで、この固定ボルト6の長さ方向の位置を変換して締め込みの長さを変えることが可能になっている。
【0040】
図3においては、開口部23に対して係止鍔部30を奥側に位置させた状態でカラー7を装入した状態を示している。この場合には、固定ボルト6を締め込める長さを大きくし、固定ボルト6を締付けたときには、その先端6aをストッパリング5の平面部20に押し当たる位置まで螺入させて、この先端6aで平面部20を押圧してステム3(弁体2)を固定することが可能になる。
【0041】
一方、
図4においては、開口部23に対して係止鍔部30を手前側に位置させた状態でカラー7を装入した状態を示している。この場合には、固定ボルト6を締付けたときに、その頭部31が係止鍔部30に係止した状態になり、その先端6aがストッパリング5の平面部20に押し当たる位置まで螺入することがない。このように、
図3の場合に比較して固定ボルト6を締め込める長さが小さくなることで、ステム3(弁体2)が固定されることがなく、図示しないハンドル等により減速機9を通してステム3(弁体2)を開閉又は中間開度に回動操作可能になる。
上述した固定ボルト6、カラー7は、バタフライ弁の未使用時であっても、このバタフライ弁を構成する部品として、
図3又は
図4の何れかの状態でスペーサ4内に組み込まれている。
【0042】
図5においては、Oリングケース8を示しており、このOリングケース8は、筒形状に形成され、上部に環状鍔部32、この環状鍔部32の下部に環状鍔部32よりも縮径した円筒部33を備えている。Oリングケース8の外径部と内径部とには、それぞれ複数の装着溝部34が形成され、各装着溝部34には、それぞれNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)などのゴム材料からなるOリング35が装着されている。さらに、Oリングケース8の中央と下部の2つのOリング35よりも上部側の上端開口部側の装着溝部34には、フッ素ゴム等の耐久性を有する材料により形成されたOリング36が装着されている。
【0043】
図1、
図2に示すように、Oリング35、36が装着されたOリングケース8は、その円筒部33が軸装部11内に嵌挿され、かつその環状鍔部32が拡径穴部18に収納された状態で、弁箱1とスペーサ4との間に装着され、このOリングケース8の内外周側がOリング35、36によりそれぞれシールされることにより弁箱1側からの漏れが防がれる。
【0044】
図6に示した減速機9は、ハンドルからの回転操作を減速してステム3に伝達するために設けられ、内部には図示しない減速機構が設けられる。減速機9の出力側である下部中央には、減速機構の出力軸40が設けられ、この出力軸40には、ステム3の上部の縮径部3aが挿嵌可能な大きさの内径の装入穴41が形成される。装入穴41には、2つのキー溝部42が、それぞれストッパリング5のキー溝19と断面略同一形状に略90°間隔で形成され、各キー溝部42に対して、ステム3に係合されたキー14、或はこのキー14とは別に設けた図示しないキーが係合可能に設けられている。減速機9の底面外周側には4つの連通孔43が等間隔に形成され、
図1に示すように、減速機9は、この連通孔43を通してスペーサ4の上部にボルトナット44で一体に搭載可能に設けられる。
【0045】
減速機9をスペーサ4に搭載するときには、この減速機9の出力軸40を弁開又は弁閉の位置まで回転させた状態で、2つのうちの何れか一方のキー溝部42にキー14、或はキー14とは別のキーを係合させるようにしながら、ステム3のキー溝13に装着したキー14或は別のキーで出力軸40とステム3とを接続し、この状態で連通孔43を通して
図1に示すようにスペーサ4の上部にボルトナット44で接続する。これにより、弁閉又は弁開状態としたバタフライ弁に対して、キー溝部42を通して、開閉操作の向きを合わせつつ出力軸40をステム3に位置決めした状態で固定しながら減速機9を取付け可能になっている。上記のように、減速機9の出力軸40は、ステム3に装着したキー14、或はこのキー14とは別に設けたキーを用いてステム3に接続可能であり、何れの場合にもステム3に対して強固に接続される。
【0046】
この場合、減速機9に2つのキー溝部42を設けていることで、バタフライ弁を開又は閉の何れかの状態にし、そのステム3のキー溝13に対してキー溝部42の位置を合わせるように減速機9を所定の向きに搭載することで、この減速機9の回転方向に対して弁体2の開閉方向を変えることができる。これにより、減速機9に対して、左回転により弁開動作するようにバタフライ弁を取付ける場合(左回り開きのバタフライ弁)、又は右回転により弁開動作するようにバタフライ弁を取付ける場合(右回り開きのバタフライ弁)の何れであっても、減速機9の向きを変えて接続することで対応できる。本実施形態では、操作機9(弁体2)の左回転操作で弁開するバタフライ弁に設定している。
【0047】
なお、上記実施形態では、本発明の弁体の固定装置をバタフライ弁に適用した例を説明したが、バタフライ弁に限らず、各種の弁に本発明の弁体の固定装置を適用することができる。
【0048】
固定部材6として固定ボルトを用いているが、ステム3に設けられたストッパリング5を通してステム3の回動を停止できるものであれば固定ボルト6に限ることはなく、任意の態様に設けた固定部材6を用いることができる。そのため、スペーサ4の取付穴部21には、必ずしも雄ねじ24が形成されている必要はない。
【0049】
また、ストッパリング5をステム3とは別体に設け、このストッパリング5をステム3に取付けるようにしているが、ステム3に直接ストッパリング5を形成してこれらステム3とストッパリング5とを一体に設けてもよい。
【0050】
ストッパリング5の外周面の固定ボルト6を押し当てるストッパ部20を平面部として形成しているが、このストッパ部20は、図示しない溝部や、曲面部、又は固定部材の先端との間に摩擦力を発揮してステムの回動を停止して維持する態様であれば、各種の形状に設けることもできる。
【0051】
固定ボルト(固定部材)6は、スペーサ4の側部に略90°以外の間隔で2箇所以上に設けるようにしてもよく、スペーサの側部に所定の間隔で少なくとも2箇所以上に設けるようにすれば任意の間隔(角度)で配置することもできる。このため、固定部材6を3箇所以上に等間隔で設けたり、3箇所以上の任意の間隔に配設することも可能である。この場合、固定部材6の位置に対応してストッパリング5のストッパ部20の位置を変えるように設定すればよい。
【0052】
固定部材6として固定ボルトを用いる場合、係止鍔部30を備えたカラー7の装入方向を変えることで固定ボルト6の長さ方向の位置を変換しているが、ステム3(弁体2)を固定した状態、又は回動可能な状態(非固定の状態)の何れかに変更可能に固定部材6の先端6aの位置を調節可能であれば、カラー7以外の部品を設けてもよい。例えば、ステム3を非固定の状態にするときに、固定ボルト6とスペーサ4との間に図示しないワッシャを装着し、ステム3を固定するときに、ワッシャを取り外すようにしてもよい。この場合、取り外したワッシャを弁箱1などの部品に取付け可能としておくことで、未使用時のワッシャの紛失も防止できる。
【0053】
次いで、本発明の弁体の固定装置の上記実施形態におけるステム3(弁体2)を固定するときの手順並びに作用を説明する。
図1においては、弁体の固定装置を適用したバタフライ弁のステム3(弁体2)の回動可能な状態を示している。この場合、
図4に示すように、係止鍔部30が、開口部23の手前側に位置する状態でカラー7がスペーサ4に取付けられている。雌ねじ22に固定ボルト6を螺子込んで締付けたときには、その頭部31が係止鍔部30に係止してそれ以上の奥方向への固定ボルト6の螺入が防がれることで締め込みが規制され、その先端6aが平面部(ストッパ部)20から離間した状態になっている。そのため、ステム3が非固定の状態になって回動可能になり、減速機9によりステム3を通して弁体2の回動操作が可能になっている。
【0054】
減速機9の劣化や故障等により、この減速機9の交換やメンテナンスをおこなう場合には、先ず、
図1の弁閉状態から減速機9によりステム3を略90°回転操作して弁開状態とし、この状態で図示しない汎用工具を用いて固定ボルト6をスペーサ4から緩めて取り外すようにする。このとき、雄ねじ24が係止鍔部30の内周側に引っ掛かることで、固定ボルト6と同時にカラー7も容易に抜き出せる。仮に、カラー7が開口部23内に残った場合には、適宜の工具を係止鍔部30の内側に引っ掛けて引き出すことで、簡単にカラー7を取り外しできる。
【0055】
続いて、
図2において、カラー7の軸方向に対する装入向きを変えて係止鍔部32が奥側になるように開口部23に装入し、雌ねじ22に対して固定ボルト6を螺子込むようにする。このときには、係止鍔部30が開口部23の奥側に位置していることで、頭部31が係止鍔部30に係止する前に、固定ボルト6の先端6aが平面部20に押し当てられる。
【0056】
この状態からさらに固定ボルト6を締め込むと、その締付けトルクを利用して先端6aが平面部20をステム3の軸方向に対して略垂直方向から面接触状態で押圧し、ステム3に対して強い摩擦力を働かせてその回転停止の状態を保持する方向に力が加わる。これにより、ステム3の開状態でその回動を停止させて固定し、弁体2を不断水の状態に拘束できる。この弁体2の固定により、減速機9の減速機構のバックラッシによる弁体2の振れも抑制している。
この状態において、減速機9を取り外して交換やメンテナンスを実施することができる。
【0057】
ストッパリング5の外径をステム3の外径よりも大きく設けていることで、ステム3の中心から平面部20までの距離が長くなり、ステム3の回転トルクを抑制するためのモーメントを大きくできることで、ステム3の回転を停止する力が高まる。このように、平面部20に固定ボルト先端6aを押し当ててストッパリング5(ステム3)を固定する構造であるので、固定ボルト6の締付け時にストッパリング5を細かく回転して位置合わせする必要もない。
【0058】
さらに、
図2において、固定ボルト6をスペーサ4の側部の2箇所に設けていることで、この2本の固定ボルト6によりステム3への締付け力を2倍にでき、このとき、2本の固定ボルト6を略90°の間隔で配置しているので、各固定ボルト6の締付け方向にかかる力に加え、各固定ボルト6の締付け方向の力の合力をステム3に働かせることもできる。このため、ステム3の回動を防ぐ力を著しく向上させることができる。
【0059】
上述したように、本発明の弁体の固定装置は、スペーサ4内に位置しているステム3の外周にストッパリング5を固定し、このストッパリング5の外周面に固定ボルト6の先端6aを押し当てる平面部20を形成した構成としているので、ステム3に特殊な加工を施したりステム3を大径に形成することなくその強度を確保できる。この場合、弁箱1と減速機9との間に設けられるスペーサ4を利用し、このスペーサ4内に設けたストッパリング5と固定ボルト6とを用いて固定していることで、固定具などの外部の部品を必要とすることなく、狭い作業スペースでも簡単に作業を実施することもできる。
【0060】
作業時には、ステム3を全開にした状態で固定ボルト6を締付けることで、ステム3を簡便に固定でき、その締付けトルクにより十分な締付け力を発揮して不断水の状態を確実に維持する。これにより、この不断水の状態で減速機9を取り外し、減速機9の交換やメンテナンスをおこなったり、または、減速機9の取付け向きを変えて搭載して弁開動作方向を変更することもできる。
【0061】
上記実施形態では、全開状態で停止させたステム3(弁体2)を固定する場合を説明したが、全閉状態のステム3(弁体2)にも前記と同様にして固定ボルト6を用いて固定できる。この場合には、ステム3を全閉状態でその回動を確実に阻止した状態に固定し、優れた止水性を発揮することが可能になる。
【0062】
上記の何れの場合にも、ステム3の固定状態を解除してこのステム3(弁体2)を回動操作可能な状態に戻す場合には、再度、スペーサ4から固定ボルト6及びカラー7を取り外し、その後、開口部23に対して係止鍔部30が手前側に位置する向きでカラー7を装入し、このカラー7の上から固定ボルト6をスペーサ4に螺子込むようにすればよい。このように、複雑な作業を必要とすることなく弁体2を回動可能な状態、又は固定状態に切換えることができる。
【0063】
これら弁体2の非固定状態、又は固定状態の何れの場合にも、固定ボルト6、カラー7が、スペーサ4内に一体に組み込まれているので、このスペーサ4から固定ボルト6及びカラー7が自然に外れることがなく紛失等を防止できる。
【0064】
固定ボルト6は、汎用の六角穴付きボルトであるから別途製作することなく量産品を使用でき、カラー7は、内周に係止鍔部30を有する筒形状であることから容易に製作できる。また、ステム3は、上部の縮径部3aをストッパリング5及び減速機9の出力軸40を取付けできる長さに形成し、これらストッパリング5及び出力軸40の装着位置にキー溝13を形成するだけでよいため加工が容易となる。
【0065】
ストッパリング5は、キー14が装着されたステム3の縮径部3aの上方から着脱できるため、取付けや取外しが簡単であり、キー14を通してステム3に対して正確に位置合わせしながら装着できる。このようにキー14を通してステム3にストッパリング5を装着していることで、これらの組付け時に、緩みを防いでステム3のがたつきを抑えることができる。
【0066】
ステム3とは別体のストッパリング5の外周面に平面部20を形成しているので、この平面部20を容易に形成でき、上記のようにキー14を用いてストッパリング5をステム3に固定することで、全開又は全閉時の平面部20の向きを正確に位置決めできる。このため、全開又は全閉時の平面部20に対して、固定ボルト先端6aを略垂直方向から正確に押し当ててステム3を強固に固定可能となる。
【0067】
図5に示したOリングケース8の内径部において、下方寄りに2つのゴム製Oリング35を設けていることで、これらのOリング35によってステム3とOリングケース8とのシール性を確保して漏れを防止する。さらに、これら2つのOリング35よりも上部の上端開口部側には、フッ素ゴムよりなる耐久性を備えたOリング36を装着していることで、仮に2つのOリング35が劣化して漏れが生じたとしても、上部のOリング36により外部への漏れを確実に阻止できる。一方、
図5に示したOリングケース8の外径部には、2つのゴム製Oリング35を設けているので、これら複数のOリング35によってOリングケース8と弁箱1とのシール性を確保して漏れを防止する。
【0068】
図7においては、本発明の弁体の固定装置を用いたバタフライ弁の第2実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前述した実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0069】
この実施形態では、スペーサ4の側部に、略180°の間隔で2箇所に取付穴部21がステム挿通穴16まで貫通してそれぞれ形成され、この取付穴部21が、前述した雌ねじ22と開口部23とにより設けられている。固定ボルト6は、開口部23、雌ねじ22を通してスペーサ4に対して略180°の間隔で2箇所に設けられ、各固定ボルト6をストッパリング5の外周面の対向する位置の平面部20に押し当てて、ステム3を全開又は全閉状態で固定可能になっている。
【0070】
このように、固定ボルト6の間隔を略180°に変えた場合にも、前述した略90°の間隔で配置した場合と同様に、簡便に平面部20に先端6aを押し当ててストッパリング5を弁開又は弁閉状態に規制でき、これによってステム3の回動を停止させて弁体2を所定位置に固定した状態を確実に維持できる。
【0071】
図8においては、本発明の弁体の固定装置を用いたバタフライ弁の第3実施形態を示している。
このバタフライ弁においては、円筒形状に形成したストッパリング5の外周面にストッパ部として所定幅及び深さのストッパ溝50がストッパリング5の軸方向に沿って略90°の間隔で4箇所に形成されている。一方、固定部材51は、スペーサ4の側部に略90°の間隔で2箇所に配置され、この固定部材51には、雄ねじ52が形成され、この雄ねじ52の先端にはストッパ溝50に係止可能な円柱状の係止部53が形成される。この係止部53は、雄ねじ52よりも縮径して所定長さに形成される。
【0072】
この構成により、ステム3を全開又は全閉に回転した状態で固定部材51を締込んだときには、係止部53がストッパ溝50に係止してステム3を固定するようになっている。このとき、略90°間隔に配置した固定部材51が、ステム3の軸芯に対して垂直方向の2箇所からその軸芯を重ね合わせた状態でステムを押圧し、これら2箇所の固定ボルトの軸芯とステムの軸芯とを位置合わせできることで、ステムを芯出ししてその偏心を防いだ状態で固定できる。
【0073】
図9においては、本発明の弁体の固定装置を用いたバタフライ弁の第4実施形態におけるスペーサ付近の要部断面図を示している。
この実施形態においては、ストッパリング5を装着したステム3を中間開度としたときに、ストッパリング5の平面部20に固定ボルト6の先端6aを押し当ててステム3を固定できるように、ストッパリング5の所定位置にキー溝19を形成したものである。具体的には、ステム3を全閉状態から角度θが略60°となる中間開度としたときに、平面部20に固定ボルト先端6aを押し当てできるように、ストッパリング5の所定位置にキー溝19を設けている。
【0074】
このように、ストッパリング5のキー溝19の位置を変えることで、略60°の中間開度でステム3を固定することができ、ステム3の固定時には、平面部20の角度(向き)を調整しつつステム3を中間開度に回転した後に、平面部20に先端6aを押し当てて固定ボルト6を締め込むようにすればよく、これにより簡単に弁体2を中間開度に位置決めした状態で固定できる。
さらに、ストッパリング5に対し、予め、各種の中間開度(弁開度)に設定可能な位置にキー溝19を形成しておくことで、ストッパリング5を交換して所望の中間開度に弁体2を固定することも可能になる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 弁箱
2 弁体
3 ステム
4 スペーサ
5 ストッパリング
6 固定ボルト(固定部材)
6a 先端
7 カラー
8 Oリングケース
9 減速機
11 軸装部
20 平面部(ストッパ部)
23 開口部
30 係止鍔部
31ボルト頭部
35、36 Oリング
50 ストッパ溝(ストッパ部)
51 固定部材
53 係止部