(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164009
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電子情報記憶媒体、処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/073 20060101AFI20221020BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20221020BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20221020BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20221020BHJP
【FI】
G06K19/073 054
G06K19/077 244
G06K19/07 190
G06F21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069204
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】梶原 直也
(57)【要約】
【課題】アプリケーションによる機能の不正利用されることを防止することが可能な電子情報記憶媒体、処理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】ICカード1は、特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択が不可に設定された状態において、ユーザの指紋データが登録されたタイミングで当該特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択を可能に設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器からコマンドを受信するための1または複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する電子情報記憶媒体であって、
生体データ取得センサによりユーザの身体から取得された生体データであって、ユーザ認証に用いられる生体データを当該生体データ取得センサから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された生体データを前記電子情報記憶媒体に登録する登録手段と、
特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が不可に設定された状態において前記登録手段により生体データが登録された場合に、前記特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択を可能に設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項2】
前記特定の前記インターフェースは、非接触通信用インターフェースであることを特徴とする請求項1に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項3】
前記電子情報記憶媒体は、前記非接触通信用インターフェースと接触通信用インターフェースとを含む複数のインターフェースを有することを特徴とする請求項2に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項4】
前記外部機器から前記特定の前記インターフェースを介して前記アプリケーションの選択コマンドを受信した場合に、当該特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が可能に設定されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記アプリケーションの選択が可能に設定されていると判定された場合に前記アプリケーションを選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項5】
前記アプリケーションは、決済処理用アプリケーションであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項6】
外部機器からコマンドを受信するための1または複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータにより実行される処理方法であって、
生体データ取得センサによりユーザの身体から取得された生体データであって、ユーザ認証に用いられる生体データを当該生体データ取得センサから取得するステップと、
前記取得された生体データを前記電子情報記憶媒体に登録するステップと、
特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が不可に設定された状態において前記生体データが登録された場合に、前記特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択を可能に設定するステップと、
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項7】
外部機器からコマンドを受信するための1または複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータを、
生体データ取得センサによりユーザの身体から取得された生体データであって、ユーザ認証に用いられる生体データを当該生体データ取得センサから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された生体データを前記電子情報記憶媒体に登録する登録手段と、
特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が不可に設定された状態において前記登録手段により生体データが登録された場合に、前記特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択を可能に設定する設定手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
人の生体データを取得可能なICカード等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋認証機能付きICカードが提案されている。例えば特許文献1には、RF(Radio Frequency)信号を受信するためのアンテナ、当該アンテナを利用した非接触通信により電力がもたらされるRFIDチップ及び指紋認証エンジン等を備えるRFIDデバイスが開示されている。指紋認証エンジンは、指紋読み取り機により読み取られた指紋と予め保存された指紋データと比較するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたRFIDデバイスが例えばクレジットカードとして利用される場合において、新規に発行されたクレジットカードが利用者へ郵送等の手段で配送される過程で第三者により非接触通信を介してデバイス内のアプリケーションによる機能(例えば、決済機能)が不正利用される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題等に鑑みてなされたものであり、アプリケーションによる機能が不正利用されることを防止することが可能な電子情報記憶媒体、処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、外部機器からコマンドを受信するための1または複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する電子情報記憶媒体であって、生体データ取得センサによりユーザの身体から取得された生体データであって、ユーザ認証に用いられる生体データを当該生体データ取得センサから取得する取得手段と、前記取得手段により取得された生体データを前記電子情報記憶媒体に登録する登録手段と、特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が不可に設定された状態において前記登録手段により生体データが登録された場合に、前記特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択を可能に設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子情報記憶媒体において、前記特定の前記インターフェースは、非接触通信用インターフェースであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子情報記憶媒体において、前記電子情報記憶媒体は、前記非接触通信用インターフェースと接触通信用インターフェースとを含む複数のインターフェースを有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体において、前記外部機器から前記特定の前記インターフェースを介して前記アプリケーションの選択コマンドを受信した場合に、当該特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が可能に設定されているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記アプリケーションの選択が可能に設定されていると判定された場合に前記アプリケーションを選択する選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体において、前記アプリケーションは、決済処理用アプリケーションであることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、外部機器からコマンドを受信するための1または複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータにより実行される処理方法であって、生体データ取得センサによりユーザの身体から取得された生体データであって、ユーザ認証に用いられる生体データを当該生体データ取得センサから取得するステップと、前記取得された生体データを前記電子情報記憶媒体に登録するステップと、特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が不可に設定された状態において前記生体データが登録された場合に、前記特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択を可能に設定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、外部機器からコマンドを受信するための1または複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータを、生体データ取得センサによりユーザの身体から取得された生体データであって、ユーザ認証に用いられる生体データを当該生体データ取得センサから取得する取得手段と、前記取得手段により取得された生体データを前記電子情報記憶媒体に登録する登録手段と、特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択が不可に設定された状態において前記登録手段により生体データが登録された場合に、前記特定の前記インターフェースを介した前記アプリケーションの選択を可能に設定する設定手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アプリケーションによる機能が不正利用されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ICカード1の概要構成の一例を示す図である。
【
図2】指紋登録時の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図3】決済処理用アプリケーション選択時の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図4】決済処理時の動作シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、外部機器からコマンドを受信するための複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するためのアプリケーションを搭載する指紋認証機能付きICカード(本発明の電子情報記憶媒体の一例)に対して本発明を適用した場合の実施の形態である。このようなICカードの例として、クレジットカードや電子マネーカードが挙げられる。
【0016】
[1.ICカード1の構成及び機能]
先ず、
図1を参照して、本実施形態に係るICカード1の構成及び機能について説明する。
図1は、ICカード1の概要構成の一例を示す図である。
図1に示すように、ICカード1は、アンテナ部11、I/O回路12、指紋センサ13、指紋コントローラ14、及びメインコントローラ15を備えて構成される。
【0017】
アンテナ部11は、外部機器が備えるリーダライタ(RW)から発信された電波(RF信号)を受信しその電気信号をI/O回路12を介してメインコントローラ15へ出力する。また、アンテナ部11は、メインコントローラ15からI/O回路12を介して出力された電気信号を電波として発信する。これにより、メインコントローラ15と外部機器との間で非接触通信が行われる。なお、ICカード1の各構成要素には、アンテナ部11による誘導電圧により電力が供給可能になっている。
【0018】
I/O回路12は、メインコントローラ15に電気的に接続されており、例えばISO/IEC7816で定義されるC1~C8の8個の端子を有する。例えば、C6端子は、アンテナ部11に電気的に接続されており、外部機器との非接触通信を行うための非接触通信用インターフェースの一部として用いることができる。C7端子は、外部機器に電気的に接続可能になっており、外部機器との接触通信を行う接触通信用インターフェースの一部として用いることができる。なお、ICカード1の各構成要素には、外部機器からC1端子を介して電力が供給可能になっている。
【0019】
指紋センサ13(生体データ取得センサの一例)は、ICカード1の表面に実装され、ICカード1を使用するユーザの指の腹から指紋を読み取り、その指紋データ(生体データの一例)を取得する。例えば、指紋センサ13は、数万個の電極、及びユーザの指の腹が接触する接触面等を有し、この接触面にユーザの指の腹が接触することで、上記電極にはユーザの指の腹における凹凸(つまり、指紋を構成する凹凸)による当該接触面までの近さに応じた量の電荷がたまる。指紋センサ13は、それぞれの電極にたまった電荷の量を検出して数値(つまり、電荷の量に応じた数値)に変換することで指紋データを取得する。なお、指紋センサ13は、上記以外の方法で指紋データを取得してもよい。
【0020】
指紋コントローラ14及びメインコントローラ15は、それぞれ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVM(Nonvolatile Memory)、及びCPU(Central Processing Unit)等を備えて構成される。指紋コントローラ14とメインコントローラ15とは電気的に接続されている。メインコントローラ15は、I/O回路12を介して外部機器との間でコマンド/レスポンスの送受信を行うことが可能になっている。なお、指紋コントローラ14とメインコントローラ15とは、1つのICチップで構成されてもよいし、別々のICチップで構成されてもよい。
【0021】
指紋コントローラ14は、指紋センサ13を駆動し、ユーザの指紋を読み取らせ、その指紋データを送信させる。これにより、指紋コントローラ14は、本発明の取得手段として、ユーザ認証に用いられる指紋データを指紋センサ13から取得する。指紋センサ13と指紋コントローラ14との間の通信は、例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)を介して行われる。なお、指紋コントローラ14は、メインコントローラ15内に組み込まれてもよい。
【0022】
メインコントローラ15は、本発明におけるコンピュータの一例である。メインコントローラ15のROMまたはNVMには、OS(Operating System)、アプリケーション、API(Application Programming Interface)が記憶される。ここで、アプリケーションには、管理用アプリケーション、及び決済処理用アプリケーションが含まれる。管理用アプリケーションは、本発明のプログラムを含んで構成される。なお、NVMは、フラッシュメモリであってもよいし、「Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory」であってもよい。
【0023】
また、NVMには決済用データが含まれる。決済用データは、ICカード1のユーザに固有の決済用ID(識別情報)であってもよい。この場合、決済用IDは、ユーザの決済用情報に紐付けられて、所定の決済処理サーバにより管理される。決済用情報には、決済方法に応じた決済に必要な情報が含まれる。決済方法としては、電子マネー決済やクレジットカード決済等が挙げられる。例えば、決済方法がクレジットカード決済である場合、決済用情報には、クレジットカード決済に必要なクレジットカード番号、名義人の氏名、及び有効期限等のデータが含まれる。また、決済方法が電子マネー決済である場合、決済用情報には、電子マネー決済に必要な電子マネー番号、及び電子バリュー等のデータが含まれる。なお、NVMには、決済用データとして、決済用情報が含まれてもよい。
【0024】
以上のように構成されたICカード1において、例えばカード発行時に以下の2つのパラメータ(a),(b)がTrueまたはFalseに設定される。
【0025】
パラメータ(a):指紋未登録時に接触用通信インターフェースを介した特定のアプリケーションの選択を不可にする。
パラメータ(b):指紋未登録時に非接触用通信インターフェースを介した特定のアプリケーションの選択を不可にする。
【0026】
ここで、特定のアプリケーションは、例えば、決済処理用アプリケーションであり、カード発行時に予め設定される。それぞれのパラメータに対応付けられたTrueまたはFalseは、メインコントローラ15のNVMに記憶されたフラグにより表されるとよい。パラメータ(a),(b)のうちの何れか一方のフラグがTrueに設定された場合、指紋未登録時に接触用通信用インターフェースまたは非接触通信用インターフェースで特定のアプリケーションを選択できない状態となる。かかる状態を、接触用通信または非接触通信用インターフェースの不活性(非活性)化状態という。一方、パラメータ(a),(b)のうちの両方のフラグがTrueに設定された場合、指紋未登録時に接触用通信及び非接触通信用インターフェースのいずれでも特定のアプリケーションを選択できない状態となる。かかる状態を、特定のアプリケーションの不活性化状態という。
【0027】
メインコントローラ15は、本発明のプログラムを実行することで、本発明における登録手段、設定手段、判定手段、及び選択手段として機能する。メインコントローラ15は、指紋コントローラ14から取得した指紋データをNVMの所定領域に書き込む。これにより、ICカード1に指紋データが登録(指紋登録)される。そして、特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択が不可に設定された状態において指紋登録された場合に、メインコントローラ15は、当該特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択を可能に設定する。これにより、パラメータ(a),(b)のうちの両方または何れか一方のフラグがFalseに設定される。
【0028】
ここで、特定のインターフェースとは、非接触用通信インターフェースと接触用通信インターフェースの両方または何れか一方である。このように、ICカード1に対して利用者の指紋が登録されたタイミングで、不活性化された特定のインターフェースまたは特定のアプリケーションが活性化される。また、メインコントローラ15は、外部機器から特定のインターフェースを介して特定のアプリケーションの選択コマンドを受信した場合に、当該特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択が可能に設定されているか否かを判定し、当該特定のアプリケーションの選択が可能に設定されていると判定した場合に当該特定のアプリケーションを選択する。
【0029】
なお、メインコントローラ15と外部機器との間で送受信されるコマンドは、例えばISO7816で定義されるコマンドAPDU(Application Protocol Data Unit)により構成される。コマンドAPDUは、少なくとも、CLA、INS、P1及びP2から構成される。CLAはコマンドクラス(命令クラス)を示し、INSはコマンドコード(命令コード)を示す。例えばINSによりコマンドの種別が特定される。また、P1及びP2はコマンドパラメータ(命令パラメータ)を示す。かかるコマンドに応じた処理の結果を示すレスポンスが外部機器へ返信される。かかるレスポンスは、例えばISO7816で定義されるレスポンスAPDUにより構成される。レスポンスAPDUは、例えば、SW(ステータスワード)から構成される。或いは、レスポンスAPDUは、例えば、Data、SWから構成される。
【0030】
[2.ICカード1の動作]
次に、ICカード1の動作について説明する。なお、以下の動作例においては、特定のアプリケーションを決済処理用アプリケーションとし、特定のインターフェースを非接触通信用インターフェースとし、接触通信用インターフェースが活性化された状態で、且つ非接触通信用インターフェースが不活性化された状態で出荷されたICカード1を例にとって説明する。つまり、ICカード1の出荷直後は接触通信による決済のみ実施可能になっている。なお、出荷されたICカード1は、郵送等の手段によってユーザへ配送される。
【0031】
(2.1.指紋登録時の動作)
先ず、
図2を参照して、指紋登録時の動作について説明する。
図2は、指紋登録時の動作シーケンスの一例を示す図である。
図2において、登録端末2は、リーダライタを有する外部機器の一例であり、例えばICカード1と共にユーザに配送された小型の指紋登録用装置であってもよいし、店舗等の所定の場所に設置された指紋登録用装置であってもよい。後者の場合、ICカード1のユーザは自己の指紋登録のために登録端末2が設置されている場所を訪れることになる。ICカード1のユーザは、ICカード1の指紋センサ13上に自身の指を接触させながらICカード1を登録端末2のリーダライタに近づけるか、または装着する。
【0032】
なお、指紋データをメインコントローラ15のNVMに書き込むためには一定の電力の供給が必要となるため、ICカード1と登録端末2とは電気的に接続されて接触通信が行われるとよい。ただし、ICカード1が登録端末2との電磁誘導の結合により(つまり、誘導電圧により)により指紋データをメインコントローラ15のNVMに書き込むための電力を確保することができるのであればICカード1と登録端末2との間で非接触通信が行われてもよい。
【0033】
図2において、登録端末2は、ICカード1を認識すると通信を開始し、メインコントローラ15において管理用アプリケーションが選択された後、指紋登録コマンドをICカード1へ送信する(ステップS1)。指紋登録コマンドは、I/O回路12を介してメインコントローラ15へ送信される。次いで、メインコントローラ15は、登録端末2からの指紋登録コマンドを受信すると、管理用アプリケーションにより、当該指紋登録コマンドに応じて指紋読取コマンドを指紋コントローラ14へ送信する(ステップS2)。
【0034】
次いで、指紋コントローラ14は、メインコントローラ15からの指紋読取コマンドを受信すると、当該指紋読取コマンドに応じて、指紋読取信号を指紋センサ13へ送信する(ステップS3)。次いで、指紋センサ13は、指紋コントローラ14からの指紋読取信号を受信すると、当該指紋読取信号に応じて、ICカード1を使用するユーザの指の腹から指紋を読み取り(ステップS4)、その指紋データを指紋コントローラ14へ送信する(ステップS5)。
【0035】
次いで、指紋コントローラ14は、指紋センサ13からの指紋データを受信すると、当該指紋データを含むレスポンスをメインコントローラ15へ送信する(ステップS6)。次いで、メインコントローラ15は、指紋コントローラ14からのレスポンスを受信すると、管理用アプリケーションにより、当該レスポンスに含まれる指紋データをNVMの所定領域に書き込むことで指紋登録する(ステップS7)。
【0036】
次いで、メインコントローラ15は、管理用アプリケーションにより、非接触通信用インターフェースを介した決済処理用アプリケーションの選択を可能に設定する(ステップS8)。つまり、パラメータ(b)のフラグがFalseに設定(つまり、NVM上の値を書き換え)される。ただし、パラメータ(b)のフラグはFalseに設定されない(つまり、NVM上の値を書き換えない)ようにすることも可能である。すなわち、パラメータ(b)は、指紋未登録時の挙動を制限するものとし、指紋が登録された後はパラメータ(b)がTrueでもFalseでもアプリケーションの選択に制約は課されないように構成される。次いで、メインコントローラ15は、正常終了(SW:9000)を示すレスポンスをI/O回路12を介して登録端末2へ送信する(ステップS9)。
【0037】
(2.2.決済処理用アプリケーション選択時の動作)
次に、
図3を参照して、決済処理用アプリケーション選択時の動作について説明する。
図3は、決済処理用アプリケーション選択時の動作シーケンスの一例を示す図である。
図3において、決済端末3は、リーダライタを有する外部機器の一例であり、例えば、店舗等の所定の場所に設置された決済用装置である。ICカード1のユーザは、例えば店舗等の所定の場所を訪れ、例えば商品またはサービスに対する料金の支払いを行う際にICカード1を決済端末3のリーダライタに近づけるか、または装着する。
【0038】
図3において、決済端末3は、ICカード1を認識すると通信を開始し、メインコントローラ15において管理用アプリケーションが選択された後、決済処理用アプリケーションを選択するための選択コマンド(アプリケーションIDを含む)をICカード1へ送信する(ステップS11)。選択コマンドは、I/O回路12を介してメインコントローラ15へ送信される。
【0039】
次いで、メインコントローラ15は、決済端末3からの選択コマンドを受信すると、管理用アプリケーションから指紋登録状況の確認用API(関数)を呼び出す(ステップS12)。かかる確認用APIにより指紋登録状況が確認され、確認結果が戻り値(関数の戻り値)として管理用アプリケーションへ返答される。この動作例では、特定のインターフェースを非接触通信用インターフェースとしているので、当該確認用APIによりパラメータ(b)のフラグが確認され、当該フラグが示すTrueまたはFalseが戻り値として返答される。ここで、
図2に示す動作シーケンスにより既にユーザの指紋が登録されている場合にはFalseが戻り値として返答されることになる。
【0040】
次いで、メインコントローラ15は、指紋登録状況の確認結果(TrueまたはFalse)に基づいて、指紋登録済であるか否かを判定する(ステップS13)。換言すると、非接触通信用インターフェースを介した決済処理用アプリケーションの選択が可能に設定されているか否かが判定される。メインコントローラ15は、指紋登録済でない(確認結果がTrueである)と判定した場合(ステップS13:NO)、ステップS14へ進む。一方、メインコントローラ15は、指紋登録済である(確認結果がFalseである)と判定した場合(ステップS13:YES)、ステップS17へ進む。
【0041】
ステップS14では、メインコントローラ15は、管理用アプリケーションから通信プロトコルの確認用API(例えば、APDU. getProtocol()という関数)を呼び出す。かかる確認用APIによりその時点での通信が接触通信または非接触通信であるかが確認され、確認結果が戻り値として管理用アプリケーションへ返答される。換言すると、選択コマンドが接触通信により受信されたのか非接触通信より受信されたのかが確認され、確認結果が戻り値として返答される。
【0042】
次いで、メインコントローラ15は、通信プロトコルの確認結果に基づいて、現在の通信が非接触通信であるか否かを判定する(ステップS15)。メインコントローラ15は、現在の通信が非接触通信であると判定した場合(ステップS15:YES)、異常終了を示すレスポンスをI/O回路12を介して決済端末3へ送信する(ステップS16)。決済端末3は、異常終了を示すレスポンスを受信した場合、決済処理へ進まない。一方、メインコントローラ15は、現在の通信が非接触通信でない(つまり、接触通信である)と判定した場合(ステップS15:NO)、ステップS17へ進む。
【0043】
ステップS17では、メインコントローラ15は、決済処理用アプリケーションを選択する。これにより、ユーザがICカード1の受け取り後に指紋データの登録せずに(例えば登録を忘れて)ICカード1の利用を開始した場合であっても、現在の通信が接触通信であればICカード1による決済が実施可能になる。次いで、メインコントローラ15は、正常終了を示すレスポンス(FCI(File Control Information)を含む)をI/O回路12を介して決済端末3へ送信する(ステップS18)。決済端末3は、正常終了を示すレスポンスを受信した場合、決済処理へ進む。
【0044】
(2.3.決済処理時の動作)
次に、
図4を参照して、決済処理時の動作について説明する。
図4は、決済処理時の動作シーケンスの一例を示す図である。なお、以下に説明する決済処理時の動作においては、
図2に示す指紋登録時の動作シーケンスにより指紋登録されていることを前提とする。
図4において、決済端末3は、決済処理を開始すると、決済コマンドをICカード1へ送信する(ステップS22)。決済コマンドは、I/O回路12を介してメインコントローラ15へ送信される。
【0045】
次いで、メインコントローラ15は、決済端末3からの決済コマンドを受信すると、決済処理用アプリケーションにより、指紋読取コマンドを指紋コントローラ14へ送信する(ステップS23)。次いで、指紋コントローラ14は、メインコントローラ15からの指紋読取コマンドを受信すると、当該指紋読取コマンドに応じて、指紋読取信号を指紋センサ13へ送信する(ステップS24)。次いで、指紋センサ13は、指紋コントローラ14からの指紋読取信号を受信すると、当該指紋読取信号に応じて、ICカード1を使用するユーザの指の腹から指紋を読み取り(ステップS25)、その指紋データを指紋コントローラ14へ送信する(ステップS26)。次いで、指紋コントローラ14は、指紋センサ13からの指紋データを受信すると、当該指紋データを含むレスポンスをメインコントローラ15へ送信する(ステップS27)。
【0046】
次いで、メインコントローラ15は、指紋コントローラ14からのレスポンスを受信すると、決済処理用アプリケーションにより、当該レスポンスから指紋データを取得するとともに、登録済の指紋データをNVMから取得する(ステップS28)。次いで、メインコントローラ15は、決済処理用アプリケーションにより、レスポンスから取得した指紋データと、NVMから取得した指紋データとを照合し、両者の一致度が閾値以上であるか(例えば、両指紋データが一致するか)否かを判定する(ステップS29)。つまり、決済処理用アプリケーションによりユーザ認証が行われる。メインコントローラ15は、両者の一致度が閾値以上でないと判定した場合(ステップS29:NO)、ユーザ認証失敗として、異常終了を示すレスポンスをI/O回路12を介して決済端末3へ送信する(ステップS30)。決済端末3は、異常終了を示すレスポンスを受信した場合、決済処理を停止する。一方、メインコントローラ15は、両者の一致度が閾値以上であると判定した場合(ステップS29:YES)、ユーザ認証成功として、ステップS31へ進む。
【0047】
ステップS31では、メインコントローラ15は、決済処理用アプリケーションにより、決済用データをNVMから取得する。次いで、メインコントローラ15は、決済処理用アプリケーションにより、正常終了を示すレスポンス(決済用データを含む)をI/O回路12を介して決済端末3へ送信する(ステップS32)。決済端末3は、正常終了を示すレスポンスを受信した場合、当該レスポンスから決済用データを取得し、必要に応じて決済処理サーバにアクセスし、当該決済用データを用いて商品またはサービスに対する料金の支払いをユーザに課すための決済を実行する。
【0048】
以上説明したように、上記実施形態によれば、特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択が不可に設定された状態において、ユーザの指紋データが登録されたタイミングで当該特定のインターフェースを介した特定のアプリケーションの選択を可能に設定するように構成したので、当該アプリケーションによる機能が不正利用されることを防止することができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、外部機器からコマンドを受信するための複数のインターフェースを有し、当該コマンドに応じた処理を実行するための特定のアプリケーションを搭載する指紋認証機能付きICカードに対して本発明を適用した例について説明したが、外部機器からコマンドを受信するためのインターフェース(例えば、非接触通信用インターフェース)を1つのみ有し、当該コマンドに応じた処理を実行するための特定のアプリケーションを搭載する指紋認証機能付きICカードに対しても本発明を適用可能である。例えば、非接触通信機能のみを有するICカード、または接触通信機能のみを有するICカードに対しても本発明を適用可能である。この場合、当該ICカードにユーザの指紋データが登録されるまでは、当該アプリケーションが選択不可となる。かかるアプリケーションが決済処理用アプリケーションである場合、決済処理を行うことができない。つまり、指紋データを登録するまでICカードによる決済は全く実施できず、指紋データの登録と同時にICカードによる決済が実施可能になる。また、上記特定のアプリケーションは決済処理用アプリケーション以外のアプリケーション(例えば、秘密情報を閲覧するためのアプリケーション)であってもよい。また、上記実施形態においては、ICカードが本発明の電子情報記憶媒体である場合の例について説明したが、メインコントローラ15(または、メインコントローラ15を構成するICチップ)が本発明の電子情報記憶媒体であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、生体データ取得センサの一例である指紋センサをICカード1に搭載される場合を例にとって説明したが、指紋センサはICカード1に搭載されない場合であっても本発明を適用可能である。この場合、指紋センサは、店舗等の所定の場所に設置され、ICカード1と通信を行うことが可能になっている。また、上記実施形態においては、ユーザ認証に用いられる生体データとして指紋データを例にとって説明したが、ユーザの顔、ユーザの掌の紋(掌紋)、ユーザの掌または指における血管(静脈)、またはユーザの眼の虹彩を生体データとして取得するように構成してもよく、かかる場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ICカード
2 登録端末
3 決済端末
11 アンテナ部
12 I/O回路
13 指紋センサ
14 指紋コントローラ
15 メインコントローラ