(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164013
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】健診システム、健診結果処理プログラム、および、健診結果処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20221020BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069210
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 知里
(72)【発明者】
【氏名】白旗 崇
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦詞
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特殊な計測をせずに既存の健康診断の情報を用いて、被検者の将来のリスクを予測し、被検者自身が自分の将来像を想定しやすい方法で提示する健診システムを提供する。
【解決手段】予測した身体活動レベルと、アクションプランとを対応させたレポートを作成し、被検者に提示する健診システム101であって、検査情報取得部3と、将来予測部4と、アクションプラン作成部5と、アクションプランデータベース6と、レポート作成部7、とを備える。検査情報取得部3は、被検者の所定の項目の健康診断検査結果を読み出す。将来予測部4は、身体活動レベルを予測する。アクションプラン作成部5は、将来予測部4で得られた将来予測結果に基づいて、被検者が取るべきアクションプランを作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康診断結果が格納された記憶装置から、被検者の所定の項目の検査結果を読み出す検査情報取得部と、
前記被検者の将来の身体活動レベルを予測する将来予測部と、
前記被検者が取るべきアクションプランを作成するアクションプラン作成部と、
前記被検者に提示するレポートを作成するレポート作成部とを有し、
前記将来予測部は、学習済みの学習モデルを含み、前記学習モデルに前記所定の項目の検査結果を入力し、前記学習モデルによって予測された前記被検者の将来の身体活動レベルを受け取り、
前記アクションプラン作成部は、予め複数のアクションプランが複数の前記身体活動レベルごとに格納されたアクションプランデータベースを含み、前記将来予測部が予測した前記被検者の将来の身体活動レベルに対応するアクションプランを選択し、
前記レポート作成部は、前記将来予測部が予測した前記身体活動レベルと、前記アクションプラン作成部が選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを作成することを特徴とする健診システム。
【請求項2】
請求項1に記載の健診システムであって、
前記検査情報取得部は、前記被検者の前記所定の項目の検査結果として、血液検査結果および/または尿検査結果を読み出し、
前記将来予測部は、前記身体活動レベルとして、「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」を4段階のレベルのいずれに該当するかを予測することを特徴とする健診システム。
【請求項3】
請求項2に記載の健診システムであって、前記将来予測部は、前記被検者の将来に必要な医療費および/または介護費の累計コストを予測することを特徴とする健診システム。
【請求項4】
請求項2に記載の健診システムであって、前記アクションプランデータベースには、前記累計コストと複数の前記身体活動レベルの組み合わせごとに、アクションプランが予め格納され、
前記アクションプラン作成部は、前記将来予測部が予測した前記被検者の将来の前記累計コストと前記身体活動レベルの組み合わせに対応するアクションプランを選択することを特徴とする健診システム。
【請求項5】
請求項2に記載の健診システムであって、
前記検査情報取得部が前記記憶装置から読み出す前記被検者の所定の項目の検査結果には、前記被検者の所定の領域の2次元または3次元の画像が含まれ、
前記検査情報取得部は、前記画像から前記被検者を構成する内臓および/または組織のうちの所定の構成の特徴量を演算により求めるか、または、外部の演算装置に前記特徴量を演算させて、演算結果を受け取り、
前記将来予測部は、前記身体活動レベルとして、前記「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」の4段階のレベルのいずれかに該当するか、に加えて、将来の脊椎湾曲の形状、および/または、ロコモティブシンドローム発症リスクの予め定めた複数のレベルのいずれに該当するかを予測することを特徴とする健診システム。
【請求項6】
請求項5に記載の健診システムであって、前記アクションプランデータベースには、前記ロコモティブシンドローム発症リスクの複数のレベルに対応するアクションプランと、前記累計コストと複数の前記身体活動レベルの組み合わせに対応するアクションプランが予め格納され、
前記アクションプラン作成部は、前記将来予測部が予測した前記被検者の将来の前記ロコモティブシンドローム発症リスクのレベルに対応するアクションプランと、前記累計コストと前記身体活動レベルの組み合わせに対応するアクションプランをそれぞれ選択することを特徴とする健診システム。
【請求項7】
請求項5に記載の健診システムであって、前記検査情報取得部は、前記画像から椎体領域、所定の位置の被検者の筋肉、および、所定の位置の被検者の脂肪領域のうちの少なくとも一つを2次元または3次元に抽出することを特徴とする健診システム。
【請求項8】
請求項7に記載の健診システムであって、前画像は、X線CT画像であり、前記検査情報取得部は、前記X線CT画像から椎体領域、所定の位置の被検者の筋肉、および、所定の位置の被検者の脂肪領域のうちの少なくとも一つのCT値を抽出することを特徴とする健診システム。
【請求項9】
請求項1に記載の健診システムであって、前記将来予測部は、前記被検者について予測した前記身体活動レベルを接続されている記憶部に格納し、今回の健康診断結果に基づいて前記身体活動レベルを予測した後、同じ前記被検者について前回の健康診断結果に基づいて算出した前記身体活動レベルを前記接続されている記憶部から読み出し、今回と前回の前記身体活動レベルの差を算出し、前記レポート作成部に出力することを特徴とする健診システム。
【請求項10】
コンピュータに、
健康診断結果が格納された記憶装置から、被検者の所定の項目の検査結果を読み出す第1ステップと、
前記被検者の将来の身体活動レベルを予測する第2ステップと、
前記被検者が取るべきアクションプランを作成する第3ステップと、
前記被検者に提示するレポートを作成する第4ステップとを実行させる健診結果処理プログラムであって、
前記第2ステップでは、学習済みの学習モデルに前記所定の項目の検査結果を入力し、前記学習モデルによって予測された前記被検者の将来の身体活動レベルを受け取り、
前記第3ステップでは、予め複数のアクションプランが複数の前記身体活動レベルごとに格納されたアクションプランデータベースから、前記予測した前記被検者の将来の身体活動レベルに対応するアクションプランを選択し、
前記第4ステップでは、前記第2ステップで予測した前記身体活動レベルと、前記第3ステップで選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを作成することを特徴とする健診結果処理プログラム。
【請求項11】
健康診断結果が格納された記憶装置から、被検者の所定の項目の検査結果を読み出す第1ステップと、
前記被検者の将来の身体活動レベルを予測する第2ステップと、
前記被検者が取るべきアクションプランを作成する第3ステップと、
前記被検者に提示するレポートを作成する第4ステップとを含む健診結果処理方法であって、
前記第2ステップでは、学習済みの学習モデルに前記所定の項目の検査結果を入力し、前記学習モデルによって予測された前記被検者の将来の身体活動レベルを受け取り、
前記第3ステップでは、予め複数のアクションプランが複数の前記身体活動レベルごとに格納されたアクションプランデータベースから、前記予測した前記被検者の将来の身体活動レベルに対応するアクションプランを選択し、
前記第4ステップでは、前記第2ステップで予測した前記身体活動レベルと、前記第3ステップで選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを作成することを特徴とする健診結果処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の健診結果に基づいたリスク予測結果及びその対策方法を提示するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化の急速な進行に伴い、運動器の障害により自立歩行できない高齢者が増加しているという社会課題がある。例えば、加齢に伴う筋力の低下や、関節や脊椎の病気、および、骨粗しょう症などにより、運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまうことがある。また、運動器の機能が衰えるリスクの高い状態を表すロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)や、加齢によって筋肉量が少なくなり、全身の筋力が低下する状態を表すサルコペニアも知られている。近年、ロコモやサルコペニアを予防するために、様々な計測機器から取得した生体情報や各個人の生活習慣情報等を、複合的に活用したリスク推定が行われている。
【0003】
特許文献1には、被検者の姿勢(「頭」、「首」、「腰」、「足」の座標)と、外的要因(「歩行速度」、「歩幅」、「歩隔」、「歩行角度」)の特徴を取得し、転倒リスクや認知症になるリスクを数値で被検者へ提示するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、被検者の姿勢(「頭」、「首」、「腰」、「足」の座標)と、外的要因(「歩行速度」、「歩幅」、「歩隔」、「歩行角度」)を定期検診で収集すると記載されているが、具体的な収集方法については記載されていない。そのため、対象者の歩行時の映像を撮影する等して、「頭」、「首」、「腰」、「足」の座標を抽出したり、「歩行速度」、「歩幅」、「歩隔」、「歩行角度」を算出したりする特別な計測を、定期検診で行う必要があるものと推測される。このような計測は、通常の健康診断では行わない計測であるため、通常の健康診断で行おうとした場合には、特別な計測項目を新たに設ける必要がある。
【0006】
また、ロコモやサルコペニアを予防するためには、被検者が日常の行動や生活習慣に注意する必要があるため、被検者に対して、転倒リスクや認知症になるリスク等と、そのリスクを回避するために日常生活においてとるべきアクション(運動や体操や栄養上の注意等)をわかりやすく伝え、かつ、アクションを実行するやる気を出させることが重要である。しかしながら、特許文献1のようにリスクの予測結果を数値で表すシステムの場合、被検者にとって直感的な把握が困難であるとともに、次にとるべきアクションの情報も受け取ることができない。そのため、予測結果を日常生活に生かして、将来の転倒リスクや認証になるリスクを低減させる効果を高める技術が望まれる。
【0007】
本発明の目的は、特殊な計測をせずに既存の健康診断の情報を用いて、被検者の将来のリスクを予測し、被検者自身が自分の将来像を想定しやすい方法で提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、健康診断結果が格納された記憶装置から、被検者の所定の項目の検査結果を読み出す検査情報取得部と、被検者の将来の身体活動レベルを予測する将来予測部と、被検者が取るべきアクションプランを作成するアクションプラン作成部と、被検者に提示するレポートを作成するレポート作成部とを有する健診システムを提供する。将来予測部は、学習済みの学習モデルを含み、学習モデルに所定の項目の検査結果を入力し、学習モデルによって予測された被検者の将来の身体活動レベルを受け取る。アクションプラン作成部は、予め複数のアクションプランが複数の身体活動レベルごとに格納されたアクションプランデータベースを含み、将来予測部が予測した被検者の将来の身体活動レベルに対応するアクションプランを選択する。レポート作成部は、将来予測部が予測した身体活動レベルと、アクションプラン作成部が選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを作成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特殊な計測をせず既存の健康診断の検査情報を用いて被検者の将来予測を行い、将来像を身体活動レベルという想定しやすいレベルで被検者に提示でき、尚且つ被検者に具体的なアクションプランを提案することができるため、被検者が自身のリスクを直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の健診システムの機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態の健診システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態1の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1の健診システムのレポートに用いる身体活動レベルを示すアイコンの説明図である。
【
図9】実施形態1の健診システムのアクションプランデータベース6内のテーブルの例である。
【
図10】実施形態1の健診システムのレポートの例を示す説明図である。
【
図11】実施形態2の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】実施形態2の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】実施形態2の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施形態2の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】実施形態2の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】実施形態2の健診システムの脊椎湾曲予測モデルの予測結果の例を示す説明図である。
【
図17】実施形態2の健診システムのレポートに用いるロコモ発症リスクのレベル示すアイコン説明図である。
【
図18】実施形態2の健診システムのアクションプランデータベース6内のテーブルの例である。
【
図19】実施形態2の健診システムのレポートの例を示す説明図である。
【
図20】実施形態3の健診システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図21】実施形態3の健診システムのレポートの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の健診システム101の機能構成を示している。
図2は、健診システム101のハードウエア構成を示している。
【0013】
図1、
図2に示すように、本実施形態の健診システム101は、将来予測及び提示システム1とリスク予測モデル学習システム2とを備えて構成される。将来予測及び提示システム1とリスク予測モデル学習システム2は、
図2に示すように施設内ネットワーク103に接続され、施設内ネットワーク103を介して、健康診断結果が格納されている医療情報ストレージ105や、その管理を行う医療情報システム104に接続されている。また、施設内ネットワーク103には、健診項目の検査を行う装置、例えば血液・尿検査装置125や、X線CT装置126やMRI装置や超音波撮像装置等の撮像装置が接続されている。また、健診システム101は、外部ネットワーク120を介して、過去の大勢の被検者の健康診断結果等が蓄積された大規模健診結果データベース121と、スマートフォン等の被検者端末122に接続されている。
【0014】
まず、
図1を用いて、将来予測及び提示システム1とリスク予測モデル学習システム2の機能について説明する。
【0015】
将来予測及び提示システム1は、検査情報取得部3と、将来予測部4と、アクションプラン作成部5と、アクションプランデータベース6と、レポート作成部7とを備える。リスク予測モデル学習システム2は、学習用データ収集部8と、学習用データベース9と、モデル学習部10とを備える。
【0016】
将来予測及び提示システム1において、検査情報取得部3は、健康診断結果が格納された医療情報ストレージ105から、被検者の所定の項目の検査結果を読み出し、その検査結果を将来予測部4に入力する。
【0017】
将来予測部4は、リスク予測モデル学習システム2が生成した学習済みの学習モデルを用いて、被検者の将来リスク予測として、少なくとも将来の身体活動レベルを予測する。具体的には、将来予測部4は、学習モデルに検査情報取得部3が取得した所定の項目の検査結果を入力し、学習モデルによって予測された被検者の将来の身体活動レベル等を受け取る。
【0018】
アクションプラン作成部5では、将来予測部4で得られた将来予測結果に基づいて、被検者が取るべきアクションプランを作成する。アクションプランデータベース6には、予め複数のアクションプランが身体活動レベルごとに格納されている。アクションプラン作成部5は、将来予測部4が予測した被検者の将来の身体活動レベルに対応するアクションプランをアクションプランデータベース6から選択する。
【0019】
すなわち、レポート作成部7では、被検者に提示するレポートを作成する。レポート作成部7は、将来予測部が予測した身体活動レベル等の予測結果と、アクションプラン作成部5が選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを、予め定めた形式で生成し、出力する。
【0020】
リスク予測モデル学習システム2において、学習用データ収集部8は、大規模健診結果データベース121から大勢の被検者の所定の項目の検査結果と、それらの被検者の身体活動レベル等を示す情報(学習用データ)を収集し、それらの情報を学習用データベース9に格納する。モデル学習部10は、学習用データベース9に格納された情報を用いて、学習モデルの学習を行って、将来予測部4が用いる学習済み学習モデルを生成する。
【0021】
図2を用いて、将来予測及び提示システム1とリスク予測モデル学習システム2のハードウエア構成について説明する。
【0022】
将来予測及び提示システム1とリスク予測モデル学習システム2は、CPU106と、主メモリ107と、記憶装置108と、学習用データベース9と、通信装置115と、共通バス116と、表示メモリ109と、表示装置110と、コントローラ111と、マウス112と、キーボード113と、印刷装置114とを備える。
【0023】
記憶装置108には、学習用データ収集プログラム123と、モデル学習プログラムと、将来予測プログラム117と、アクションプラン作成プログラム118と、レポート作成プログラム119と、オペレーティングシステム(OS)と、周辺機器のデバイスドライブ用プログラム等が予め格納されている。
【0024】
CPU106は、共通バス116によって、他の構成要素と接続されている。CPU106は、記憶装置108から学習用データ収集プログラム123、モデル学習プログラム、将来予測プログラム117、アクションプラン作成プログラム118、および、レポート作成プログラム119を読み出し、主メモリ107に展開等することにより、これらを実行し、ソフトウェアにより、学習用データ収集部8、モデル学習部10、将来予測部4、アクションプラン作成部5、および、レポート作成部7の機能を実現する。
【0025】
また、CPU106は、主メモリ107、記憶装置108、表示メモリ109、コントローラ111、キーボード113、印刷装置114、及び通信装置115の各構成要素の動作を制御する。主メモリ107は、制御プログラムの格納領域、またはプログラム実行時の作業領域として用いられる。表示装置110は、表示メモリ109から受け取ったデータに基づいて、表示装置110に画像を表示する。マウス112とキーボード113は、操作者のための入力装置である。コントローラ111は、マウス112のマウスポインタの位置を含む信号をCPU106に出力する等して、マウス112による操作者の入力操作を可能にする。印刷装置114は、レポートを出力する。通信装置115は、施設内ネットワーク103や外部ネットワーク120に接続されている。
【0026】
医療情報システム104は、電子カルテや画像管理システム等の既存のシステムであり、電子カルテのデータや、X線CT装置等の撮像装置で撮像された画像データや、血液・尿検査装置の検査結果データ等の健診結果データを受け取って医療情報ストレージ105に格納する。
【0027】
[[実施形態1]]
次に、本発明の実施形態1について
図3~
図7のフローチャートと、
図8~
図10を用いて説明する。
図8は、身体活動レベルをレポートで直観的に提示するためのアイコンであり、
図9は、アクションプランデータベース6内に格納されたテーブルの一例を示す。
図10は、レポートの一例を示す。
【0028】
まず、
図3を用いて、将来予測及び提示システム1の処理について説明する。
【0029】
<<ステップS1>>
ステップS1では、検査情報取得部3は、被検者の身長・体重・BMI・血液検査結果・尿検査結果等の検査情報を医療情報ストレージ105から取得する。血液検査結果と尿検査結果は、骨代謝マーカーである血清BAP、血清P1NP、血清NTX、血清CTX、血清TRACP-5b、血清ucOC、尿DPD、尿NTX、および、尿CTXを用いる(「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版」を参照)。尚、検査情報取得部3が検査情報として取得する項目については、上記に限定されるものではなく、必要に応じて上記項目の一部のみを用いてもよいし、他の項目を追加してもよい。
【0030】
<<ステップS2>>
ステップS2では、将来予測部4は、ステップS1で取得された検査情報を用いて将来予測を行う。実施形態1では、被検者の将来の身体活動レベルと累計コストを予測する。身体活動レベルとしては、
図8、
図9に示すように、「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」を4段階のレベルのいずれかに該当するかを予測する。累計コストとしては、被検者の将来に必要な医療費および/または介護費の累計コストを予測する。これらについては、
図4等を用いて後で詳しく説明する。
【0031】
<<ステップS3>>
ステップS3では、アクションプラン作成部5が、ステップS2で将来予測部4が予測した身体活動レベルと累計コストの予測結果から、被検者の具体的なアクションプランを作成する。アクションプランは、
図1のアクションプランデータベース6内に予め格納されているアクションプランから最適なものを取得する。
【0032】
アクションプランデータベース6には、例えば、
図9に一例を示したように、累計コストと複数の身体活動レベルの組み合わせごとに、アクションプランが予めテーブル等の形式により格納されている。アクションプラン作成部5は、将来予測部4が予測した被検者の将来の累計コストと身体活動レベルの組み合わせに対応するアクションプランを
図9のテーブルから選択することにより、アクションプランを選択する。アクションプランとしては、将来の身体活動レベルを向上させ、累計コストを低減するために、被検者に適した運動や栄養摂取をお勧めするプランであり、例えば、ウオーキング30分/日や、ラジオ体操1回/日や、筋トレ3回/週等が設定されている。
【0033】
<<ステップS4>>
ステップS4では、レポート作成部7は、ステップS2とステップS3において、将来予測部4が予測した身体活動レベルおよび累計コストと、アクションプラン作成部5が選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを作成する。
【0034】
図10に、レポートの一例を示す。
図10の例では、身体活動レベルが、
図8に示したアイコンと文字によって「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」のいずれであるか直観的にわかりやすく表示されている。また、身体活動レベルと累計コストに対応する、アクションプランが、「おすすめのアクションプラン」として表示されている。さらに、健康診断の血液と尿検査の結果も表示されている。
【0035】
このレポートは、印刷装置114で印刷することにより紙媒体で出力してもよいし、被検者が所有する端末(スマートフォン、タブレット、PC等)122に電子データとして送付等することにより出力してもよい。
【0036】
<<将来予測>>
図4を用いて、
図3のステップS2の将来予測の詳細な処理について説明する。
【0037】
<ステップS21>
ステップS21では、将来予測部4は、リスク予測モデル学習システム2が生成した身体活動レベル予測用学習モデルを用いて、身体活動レベル予測を行う。
【0038】
<ステップS22>
ステップS22では、将来予測部4は、リスク予測モデル学習システム2が生成した累計コスト予測用学習モデルを用いて、累計コストの予測を行う。
【0039】
<<学習モデルの生成>>
ここで、
図5を用いて、リスク予測モデル学習システム2による、身体活動レベル予測用学習モデルと、累計コスト予測用学習モデルの生成処理について説明する。身体活動レベル予測用学習モデルと、累計コスト予測用学習モデルは、公知のニューラルネットワーク等の学習モデルを機械学習アルゴリズムのうち、教師あり学習の手法を用いて事前に学習させることにより生成される。
【0040】
<ステップS201>
まず、ステップS201では、学習用データ収集部8は、
図3のステップS1において検査情報取得部3が取得する検査項目と同じ項目と、その被検者の将来(例えば、10年後)の身体状態を示す予め定めたデータと、その被検者の将来(例えば健康診断から10年後までの期間)に実際にかかっている医療コストと介護コストを算出するための予め定めたデータを大規模健診結果データベース121から、多人数について収集し、学習用データベース9に格納する。
【0041】
<ステップS202>
ステップS202では、学習用データ収集部8は、収集した情報を学習に利用できる形式に加工する。具体的には、検査情報の数値の単位等を統一し、数値の正規化等を行う。
【0042】
また、被検者の将来(例えば、10年後)の身体状態を示す予め定めたデータから、身体活動レベルを判定し、寝たきり・車いす・杖が必要・歩行可能の4つのレベルに振り分ける処理を予め定めた演算に基づいて行う。
【0043】
さらに、被検者の将来(例えば、健康診断から10年後まで期間)に実際にかかっている医療費と介護費を算出するための予め定めたデータから、医療費と介護費の金額を予め定めた数式等に基づいて算出する。
【0044】
<ステップS203>
ステップS203では、モデル学習部10は、身体活動予測モデルを生成する。身体活動予測モデルの学習には、既存の教師あり機械学習のうち、分類を行うアルゴリズムを利用する。具体的には、モデル学習部10は、学習モデルの入力データとして、ステップS201で収集した検査項目のデータを用い、正解データとして、ステップS202で求めた身体活動レベル(寝たきり・車いす・杖が必要・歩行可能のいずれか)を用いて学習させ、検査項目データを入力すると、正解の身体活動レベル(寝たきり・車いす・杖が必要・歩行可能のいずれか)が出力されるようにモデルを構築する。
【0045】
<ステップS204>
ステップS204では、モデル学習部10は、累計コスト予測モデルを生成する。累計コスト予測モデルの学習には、既存の教師あり学習のうち、回帰を行うアルゴリズムを利用する。具体的には、モデル学習部10は、学習モデルの入力データとして、ステップS201で収集した検査項目のデータを用い、正解データとして、ステップS202で求めた医療費と介護費の金額を用いて学習させ、検査項目データを入力すると、正解の医療費と介護費の金額が出力されるようにモデルを構築する。
【0046】
<<<身体活動レベルの予測>>>
つぎに、
図6を用いて、
図4のステップS21の将来予測部4による身体活動レベル予測の詳細について説明する。
【0047】
(ステップS211)
ステップS211では、将来予測部4は、
図5のステップS203で学習済みの身体活動レベル予測モデルを読み込む。
【0048】
(ステップS212)
ステップS212では、将来予測部4は、身体活動レベル予測モデルに、
図3のステップS1で検査情報取得部3が取得した被検者の検査項目のデータを入力する。
【0049】
(ステップS212)
ステップS213では、将来予測部4は、身体活動レベル予測モデルが出力した身体活動レベル(寝たきり・車いす・杖が必要・歩行可能のいずれか)を受け取って、予測結果として出力する。
【0050】
<<<累計コストの予測>>>
図7を用いて、
図4のステップS22の将来予測部4による累計コスト予測の詳細について説明する。
【0051】
(ステップS221)
ステップS221では、将来予測部4は、
図5のステップS204で学習済みの累計コスト予測モデルを読み込む。
【0052】
(ステップS222)
ステップS222では、そのモデルに被検者の検査情報を入力する。
【0053】
(ステップS223)
ステップS223では、将来予測部4は、累計コスト予測モデルが出力した累計コスト(医療費、介護費)の金額を出力する。
【0054】
上述してきたように、実施形態1の健診システムでは、身体活動レベルや累計コストといった被検者の将来像が被検者の想定しやすい方法で提示され、尚且つ、身体活動レベルを向上させ、累計コストを低減させるための具体的なアクションプランも提案することができる。よって、被検者自身がリスクの直感的な把握でき、アクションプランを実行しようという被検者のモチベーション向上につながる。
【0055】
[[実施形態2]]
次に、実施形態2について
図11~
図15のフローチャートと、
図16~
図19を用いて説明する。
図16は、将来予測部4が予測した椎体領域と脊椎の湾曲線の画像を示す。
図17は、ロコモーションシンドローム発症リスクのレベルをレポートで直観的に提示するためのアイコンである。
図18は、アクションプランデータベース6内に格納されたロコモーションシンドローム発症リスク(以下ロコモ発症リスクと呼ぶ)とアクションプランの対応を示すテーブルの一例である。
図19は、レポートの一例を示す。
【0056】
実施形態2の健診システム101では、検査情報取得部3が医療情報ストレージ105から読み出す被検者の所定の項目の検査結果に、被検者の所定の領域の2次元または3次元の画像が含まれている。検査情報取得部3は、取得した画像から被検者を構成する内臓および/または組織のうちの所定の構成の特徴量を演算により求める。将来予測部4は、身体活動レベルとして、「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」の4段階のレベルのいずれかに該当するか予測するのに加えて、将来の脊椎湾曲の形状、および、ロコモ発症リスクの予め定めた複数のレベルのいずれに該当するか、を予測する。以下具体的に説明する。
【0057】
まず、
図11を用いて、将来予測及び提示システム1の処理について説明する。
【0058】
<<ステップS11>>
図11のステップS11では、検査情報取得部3は、被検者の胸部CT検診で撮影された胸部及び腹部を含む予め定めた範囲(例えば、鎖骨から股関節まで)のX線CT画像を医療情報ストレージ105から取得する。なお、ここでは、X線CT画像を取得する例について説明するが、被検者の2次元または3次元画像であればよく、MRI画像や超音波画像であってもよい。
【0059】
<<ステップS12>>
ステップS12では、検査情報取得部3は、ステップS11で取得された画像を用いて、椎体領域、所定の位置の被検者の筋肉、および、所定の位置の被検者の脂肪領域のうちの少なくとも一つを2次元または3次元に抽出する。ここでは、検査情報取得部3は、椎体領域を抽出するとともに、臍位置での筋肉及び脂肪領域(3次元データ)の自動抽出を行う。抽出には、機械学習等を利用した公知の演算手法を用いる。
【0060】
<<ステップS13>>
ステップS13では、検査情報取得部3は、ステップS12の自動抽出結果の修正が必要かどうか判定を行う。修正が必要な具体例として、被検者の椎体が骨粗しょう症等で正常時とは異なる形状や骨質であり椎体領域として自動抽出されない場合や、被検者の筋肉量が少なく、筋肉の未抽出あるいは誤抽出が発生する場合等が挙げられる。
【0061】
<<ステップS14>>
ステップS13で修正が必要と判定された場合、検査情報取得部3は、ステップS14において、操作者に抽出領域の手動修正を行うように促す表示を行い、操作者による手動補正を受け付ける。
【0062】
<<ステップS15>>
ステップS15では、検査情報取得部3は、ステップS12で抽出された椎体領域の3次元データを用いて、一つ一つの椎体の骨密度(Bone Mineral Density、以下BMD)を算出する。BMD値の測定には、既存の定量的CT法(Quantitative computer tomography)を用いる。BMD値から、骨粗鬆症診断基準である若年成人平均値(Young Adult Mean、以下YAM)を算出する、YAMは、若年齢の平均BMD値(基準値)を100%として、被検者BMD値と比べて%を算出したものである。
【0063】
また、検査情報取得部3は、ステップS12で抽出された椎体領域の3次元データから、現状の脊椎の湾曲線を算出し、椎体領域と湾曲線を描画した画像を作成する。
【0064】
<<ステップS16>>
ステップS16では、検査情報取得部3は、X線CT画像から椎体領域、所定の位置の被検者の筋肉、および、所定の位置の被検者の脂肪領域のうちの少なくとも一つのCT値を抽出する。すなわち、検査情報取得部3は、ステップS12で抽出した筋肉及び脂肪領域を用いて、内臓脂肪と皮下脂肪の面積、脊柱起立筋と大腰筋の面積及び平均CT値を算出する。CT値とは、水が0、空気が-1000に設定された条件下でCT撮影された物質のエックス線吸収値を原点の水に対する相対値として表現した値である。
【0065】
<<ステップS17>>
ステップS17では、検査情報取得部3は、医療情報ストレージ105から被検者の身長・体重・BMI・血液検査結果・尿検査結果等の予め定めた検査情報を取得する。血液検査結果と尿検査結果として、骨代謝マーカーである血清BAP、血清P1NP、血清NTX、血清CTX、血清TRACP-5b、血清ucOC、尿DPD、尿NTX、尿CTXを用いる(「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版」参照)。尚、検査情報取得部3が検査情報として取得する項目については、上記に限定されるものではなく、必要に応じて上記項目の一部のみを用いてもよいし、他の項目を追加してもよい。
【0066】
<<ステップS18>>
ステップS18では、将来予測部4は、ステップS15及びステップS16で算出された情報と、ステップS17で取得された検査情報とを用いて、将来予測を行う。ここでは、将来予測部4は、身体活動レベルとして、「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」の4段階のレベルのいずれかに該当するか予測するのに加えて、将来の脊椎湾曲の形状、および、ロコモ発症リスクの予め定めた複数のレベルのいずれに該当するか、を予測する。これらについては、
図12等を用いて後で詳しく説明する。
【0067】
<<ステップS19>>
ステップS19では、アクションプラン作成部5が、ステップS18で予測した結果から、被検者の具体的なアクションプランを作成する。アクションプランデータベース6には、
図18に示すようにロコモ発症リスクの複数のレベルに対応するアクションプランと、実施形態1の
図9のように累計コストと複数の身体活動レベルの組み合わせに対応するアクションプランが予め格納されている。
【0068】
アクションプラン作成部5は、将来予測部4が予測した被検者の将来のロコモ発症リスクのレベルに対応するアクションプランと、累計コストと身体活動レベルの組み合わせに対応するアクションプランをそれぞれ
図18と
図9からそれぞれ選択する。
【0069】
<<ステップS20>>
ステップS20では、ステップS18とステップS19において、将来予測部4が予測したロコモ発症リスク、将来の脊椎湾曲の形状、身体活動レベルおよび累計コストと、アクションプラン作成部5が選択したアクションプランとを対応させて表示するレポートを作成する。
【0070】
図19に、レポートの一例を示す。
図10の例では、ロコモ発症リスクが
図17に示したアイコンと文字により、直観的にわかりやすく表示されている。将来の脊椎の湾曲形状を画像によりわかりやすく表示されている。また、実施形態1と同様に身体活動レベルが、
図8に示したアイコンと文字によって「寝たきり」、「車いす」、「杖が必要」、「歩行可能」のいずれであるか直観的にわかりやすく表示されている。また、身体活動レベルと累計コストに対応する、アクションプランが、「おすすめのアクションプラン」として表示されている。さらに、予測に用いた、現状の脊椎の湾曲形状を示す画像や、骨密度、脂肪や筋肉の面積や、骨粗しょう症の診断基準のYAMの値等も表示されている。
【0071】
<<将来予測>
ここで、
図12を用いて、
図11のステップS18の将来予測の詳細について説明する。
【0072】
<ステップS181~184>
将来予測部4は、ステップS181において脊椎湾曲予測を、ステップS182においてロコモ発症リスク予測を、ステップS183において身体活動レベル予測を、ステップS184において累計コスト予測を、それぞれリスク予測モデル学習システム2が生成した学習モデルを用いて行う。
【0073】
<<学習モデルの生成>>
ここで、リスク予測モデル学習システム2による、学習モデルの生成処理について説明する。
【0074】
上記ステップS183で用いる身体活動レベル予測用学習モデルと、ステップS184で用いる累計コスト予測用学習モデルの生成処理は、実施形態1の
図5の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
図13を用いて、ステップS181で用いる脊椎湾曲予測用学習モデル、および、ステップS182で用いるロコモ発症リスク予測用学習モデルの学習方法について説明する。
【0076】
<<ステップS1801>>
まず、ステップS1801では、学習用データ収集部8は、
図11のステップS12において検査情報取得部3が取得する椎体・筋肉・脂肪領域の画像、ステップS15で取得した椎体情報、ステップS16で取得した筋肉・脂肪情報、ステップS17で取得した検査情報と同じ項目を大規模健診結果データベース121から、多人数について収集し、学習用データベースに格納する。
【0077】
また、学習用データ収集部8は、その被検者の将来(例えば、10年後)の健康診断データから、脊椎湾曲状態を抽出可能な情報と、ロコモティブシンドロームを発症しているかどうかが把握可能な予め定めた情報を大規模健診結果データベース121から収集し、学習用データベース9に格納する。
【0078】
<<ステップS1802>>
ステップS1802で、学習用データ収集部8は、収集した情報を学習に利用できる形式に加工する。具体的には、検査情報の数値の単位等を統一し、数値の正規化等を行う。また、ステップS1801に取得した情報が、X線CT画像である場合には、椎体・筋肉・脂肪領域の抽出や、椎体情報算出等を検査情報取得部3がステップS16やステップS17で行った処理と同様の処理により抽出する。
【0079】
また、被検者の将来(例えば、10年後)の脊椎湾曲状態を示す予め定めたデータから、脊椎湾曲形状を生成する。さらに、将来の被検者がロコモティブシンドロームを発症しているかどうかや発症リスクを判定し、ロコモ発症リスクの4つのレベル非常に高い、高い、低い、非常に低いに振り分ける処理を予め定めた演算に基づいて行う。
【0080】
<<ステップS1803>>
ステップS1803では、モデル学習部10は、脊椎湾曲予測モデルを生成する。脊椎湾曲予測モデルの学習には、既存の教師あり学習のうち、画像生成を行う機械学習アルゴリズムを利用する。具体的には、モデル学習部10は、学習モデルの入力データとして、ステップS1802で収集した椎体領域の画像、椎体情報、筋肉・脂肪情報、検査情報を入力データとし、正解データとして、将来(例えば10年後)の椎体領域と脊椎の湾曲線を用いて学習させる。これにより、被検者の椎体領域の画像、椎体情報、筋肉・脂肪情報、検査情報を入力すると、被検者の10年後の椎体領域と脊椎の湾曲線が出力される椎体湾曲予測モデルが構築される。
図16に、出力される椎体領域と脊椎の湾曲線の例を示す。
【0081】
<<ステップS1804>>
ステップS1804では、モデル学習部10は、ロコモ発症リスク予測モデルを生成する。ロコモ発症リスク予測モデルの学習には、既存の教師あり学習のうち、分類を行う機械学習アルゴリズムを利用する。具体的には、モデル学習部10は、学習モデルの入力データとして、ステップS1802で収集した椎体情報、筋肉・脂肪情報、検査情報を入力データとし、正解データとして、ステップS1802で算出した将来(例えば10年後)のロコモ発症リスクの4段階のレベル(
図17参照)用いて学習させる。これにより、被検者の椎体領域の画像、椎体情報、筋肉・脂肪情報、検査情報を入力すると、被検者の10年後のロコモ発症リスクのレベルが出力されるロコモ発症リスク予測モデルが構築される。
【0082】
<<<脊椎湾曲の予測>>>
つぎに、
図14を用いて、
図12のステップS181の将来予測部4による脊椎湾曲予測の詳細について説明する。
【0083】
(ステップS1811)
ステップS1811では、将来予測部4は、
図13のステップS1803で学習済みの脊椎湾曲予測モデルを読み込む。
【0084】
(ステップS1812)
ステップS1812では、将来予測部4は、その脊椎湾曲予測モデルに、
図11のステップS15~S17において検査情報取得部3が取得した被検者の椎体画像、椎体情報、筋肉・脂肪情報、検査情報を入力する。
【0085】
(ステップS1813)
ステップS1813では、将来予測部4は、脊椎湾曲モデルが予測した被検者の将来の椎体領域と脊椎の湾曲線の予測結果を受け取って出力する。
【0086】
<<<ロコモ発症リスクの予測>>>
つぎに、
図15を用いて、
図12のステップS182の将来予測部4によるロコモ発症リスク予測の詳細について説明する。
【0087】
(ステップS1821)
ステップS1821では、将来予測部4は、
図13のステップS1804で学習済みのロコモ発症リスク予測モデルを読み込む。
【0088】
(ステップS1822)
ステップS1822では、将来予測部4は、そのロコモ発症リスク予測モデルに、
図11のステップS15~S17において検査情報取得部3が取得した被検者の椎体情報、筋肉・脂肪情報、検査情報を入力する。
【0089】
(ステップS1823)
ステップS1823では、将来予測部4は、ロコモ発症リスク予測モデルが出力するロコモ発症リスクレベル(
図17)の予測結果を受け取って出力する。
【0090】
なお、
図12のステップS183およびS184の身体活動レベルの予測と、累計コストの予測は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0091】
上述してきた実施形態2により、胸部CT検診で撮影された既存の画像等を用いることにより、特殊な計測を実施せず、健診時に将来のリスクを推定することができる。また、運動器の重要な要素である筋肉と骨に関するリスクを同時に推定することができる。
【0092】
以上では胸部CT検診で撮影された胸部及び腹部画像を用いる例を説明したが、全身CT検診で撮影された部位毎の画像を用いることもできる。この場合、例えば、上半身と下半身といった部位に応じた筋肉や骨の情報を取得することができ、将来(例えば10年後)の将来予測を部位毎に提示することができる。これに基づいて、部位による違いに応じたアクションプランを作成可能になる。これにより被検者に提示するアクションプランの精度が向上し、被検者のロコモ予防の効果をより高めることができる。
【0093】
なお、本実施形態では、検査情報取得部3は、被検者の画像から内臓や構造物の特徴量を算出する構成であったが、外部の演算装置に特徴量を演算させて、演算結果を受け取る構成としてもよい。
【0094】
[[実施形態3]]
次に、実施形態3の健診システムについて
図20のフローチャートと
図21のレポートの図を用いて説明する。
【0095】
実施形態3では、将来予測部4は、被検者について予測した身体活動レベル等を接続されている記憶部(例えば、医療情報ストレージ105等)に格納しておく構成である。これにより、今回の健康診断結果に基づいて身体活動レベル等を予測した後、同じ被検者について前回の健康診断結果に基づいて算出した予測結果を接続されている記憶部から読み出し、今回と前回の身体活動レベルおよび累計コストの差を算出し、レポート作成部に出力する。
【0096】
<<ステップS31>>
図20のステップS31では、将来予測部4は、被検者の前回の身体活動レベル及び累計コストの予測結果を記憶部(例えば、医療情報ストレージ105等)から読み込む。
【0097】
<<ステップS32>>
ステップS32では、将来予測部4は、実施形態1の
図3のステップS1と同様に、被検者の現在の身長・体重・BMI・血液検査結果・尿検査結果等の検査情報を取得する。
【0098】
<<ステップS33>>
ステップS33では、将来予測部4は、ステップS32で取得された検査情報を用いて、実施形態1の
図3のステップS2と同様に、身体活動レベル及び累計コストの将来予測を行う。
【0099】
<<ステップS34>>
ステップS34では、将来予測部4は、ステップS33の将来予測で得られた累計コストと、ステップS31で取得した過去の累計コストから得られた累計コストの差額を算出する。
【0100】
<<ステップS35>>
ステップS35では、アクションプラン作成部5は、ステップS32で予測した身体活動レベルおよび累計コストの予測結果から、実施形態1の
図3のステップS3と同様に、被検者の具体的なアクションプランを作成する。
【0101】
<<ステップS36>>
ステップS36では、レポート作成部は、今回のリスク予測結果を、前回のリスク予測結果とを対比して、その変化を明確に提示する
図21のようなレポートを作成する。
図21では、身体活動レベルが、前回と今回で対比して提示され、累計コストは対比して提示されるとともに、その差額も表示されている。
【0102】
本実施形態3により、一定期間後等に、再度リスク予測を行い、前回からの経時変化を提示することで、被検者の積極的な予防活動及びそれによるリスク低減が期待できる。
以上、本発明の実施形態1~3について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0103】
1 提示システム、2 リスク予測モデル学習システム、3 検査情報取得部、4 将来予測部、5 アクションプラン作成部、6 アクションプランデータベース、7 レポート作成部、8 学習用データ収集部、9 学習用データベース、10 モデル学習部、101 健診システム、103 施設内ネットワーク、104 医療情報システム、105 医療情報ストレージ、107 主メモリ、108 記憶装置、109 表示メモリ、110 表示装置、111 コントローラ、112 マウス、113 キーボード、114 印刷装置、115 通信装置、116 共通バス、117 将来予測プログラム、118 アクションプラン作成プログラム、119 レポート作成プログラム、120 外部ネットワーク、121 大規模健診結果データベース、122 被検者端末、123 学習用データ収集プログラム、125 尿検査装置、126 X線CT装置