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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164024
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】点検支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20221020BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20221020BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20221020BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20221020BHJP
【FI】
G05B23/02 301Y
G06Q10/00 300
G06Q10/04
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069229
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高見 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 聡志
(72)【発明者】
【氏名】奥 信一
(72)【発明者】
【氏名】角谷 有司
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智揮
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA22
3C223BA03
3C223CC02
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF17
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH04
3C223HH08
5L049AA04
5L049AA20
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】故障確率に対する信頼度を向上することができる点検支援システムを提供する。
【解決手段】点検支援システム1は、油圧ショベル10、サーバ20及び携帯端末30を備える。サーバ20は、油圧ショベル10の稼働情報に基づいて油圧ショベル10の部位ごとの故障モデルと故障確率とをそれぞれ算出する故障確率算出部202と、故障モデルに基づいて確率根拠を算出する確率根拠算出部203と、故障確率と確率根拠とに基づいて故障確率の根拠説明を生成する根拠説明生成部204とを備える、携帯端末30は、故障確率と根拠説明とを表示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の点検を支援する点検支援システムであって、
前記作業機械の稼働情報に基づいて前記作業機械の部位ごとの故障モデルと故障確率とをそれぞれ算出する故障確率算出部と、
前記故障確率算出部によって算出された故障モデルに基づいて確率根拠を算出する確率根拠算出部と、
前記故障確率算出部によって算出された故障確率と、前記確率根拠算出部によって算出された確率根拠とに基づいて、前記故障確率の根拠説明を生成する根拠説明生成部とを備え、
前記根拠説明生成部によって生成された根拠説明を表示装置に表示することを特徴とする点検支援システム。
【請求項2】
前記根拠説明生成部は、説明相手に対応する根拠説明テンプレートに基づいて、前記故障確率の根拠説明を生成する請求項1に記載の点検支援システム。
【請求項3】
前記作業機械と通信可能なサーバと、前記サーバと通信可能な携帯端末とを更に備え、
前記故障確率算出部、前記確率根拠算出部及び前記根拠説明生成部は、前記サーバに設けられ、
前記表示装置は前記携帯端末に設けられている請求項1又は2に記載の点検支援システム。
【請求項4】
前記作業機械と通信可能な携帯端末を更に備え、
前記故障確率算出部、前記確率根拠算出部、前記根拠説明生成部及び前記表示装置は、前記携帯端末に設けられている請求項1又は2に記載の点検支援システム。
【請求項5】
前記作業機械と通信可能な携帯端末を更に備え、
前記故障確率算出部、前記確率根拠算出部及び前記根拠説明生成部は、前記作業機械に設けられ、
前記表示装置は前記携帯端末に設けられている請求項1又は2に記載の点検支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械の点検を支援する点検支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野として、例えば下記特許文献に記載されるものがある。特許文献1には、サーバと、作業機械の保守員が携帯する携帯端末とを備える点検支援システムが記載されている。この点検支援システムでは、サーバは、作業機械の部位ごとに故障確率を算出し、携帯端末からの要求に応じて算出した故障確率を携帯端末に送信して表示させることにより、作業機械の保守点検計画を支援する。また、特許文献2には、故障確率に結び付く寄与度の高い順に説明変数が抽出される技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-121052号公報
【特許文献2】特開2018-147280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の点検を行う際に、保守員が携帯端末に表示された故障確率を作業機械のユーザ(例えば所有者、使用者など)に示しながら点検内容を推奨する場合がある。また、作業機械のユーザが自ら携帯端末に表示された故障確率を見て点検を行うべきかを検討する場合もある。しかし、上記特許文献1に記載の故障確率を示してもそれがどのような原因に基づくのかまでは分からない。また、故障確率がただの数字に過ぎず、ユーザによってその緊急性に対する理解にばらつきが生じる。このため、説得力や納得性に乏しく、故障確率に対する信頼度が欠ける問題があった。このような問題は、特許文献2に記載の技術にも同様に起きている。
【0005】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、故障確率に対する信頼度を向上できる点検支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る点検支援システムは、作業機械の点検を支援する点検支援システムであって、前記作業機械の稼働情報に基づいて前記作業機械の部位ごとの故障モデルと故障確率とをそれぞれ算出する故障確率算出部と、前記故障確率算出部によって算出された故障モデルに基づいて確率根拠を算出する確率根拠算出部と、前記故障確率算出部によって算出された故障確率と、前記確率根拠算出部によって算出された確率根拠とに基づいて、前記故障確率の根拠説明を生成する根拠説明生成部とを備え、前記根拠説明生成部によって生成された根拠説明を表示装置に表示することを特徴としている。
【0007】
本発明に係る点検支援システムでは、根拠説明生成部によって故障確率の根拠説明が生成されるので、故障確率とともにそれに関する根拠説明を表示装置に表示することができる。このため、根拠説明を示さない場合と比べてユーザへの説得力及び納得性を高めることができ、故障確率に対する信頼度を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、故障確率に対する信頼度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る点検支援システムを示す概略構成図である。
図2】実施形態に係る点検支援システムを示すブロック図である。
図3】故障確率データの一例を示す図である。
図4】点検項目データの一例を示す図である。
図5】主要部品データの一例を示す図である。
図6】サーバの制御処理を示すフローチャートである。
図7】携帯端末の点検項目画面に関する制御処理を示すフローチャートである。
図8】携帯端末の主要部品画面に関する制御処理を示すフローチャートである。
図9】携帯端末の故障確率画面に関する制御処理を示すフローチャートである。
図10】携帯端末の根拠説明画面に関する制御処理を示すフローチャートである。
図11】携帯端末の点検項目画面の一例を示す図である。
図12】携帯端末の主要部品画面の一例を示す図である。
図13】携帯端末の故障確率画面の一例を示す図である。
図14】携帯端末の根拠説明画面の一例を示す図である。
図15】点検支援システムの変形例を示す概略構成図である。
図16】点検支援システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る点検支援システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。また、以下では、点検対象である作業機械として油圧ショベルを例に挙げて説明するが、作業機械は、油圧ショベルに限定されず、ホイールローダーやその他の作業機械であっても良い。
【0011】
また、以下の説明において、「部位」及び「部品」といった文言が用いられる。「部位」は基本的に「部品」よりも範囲が大きい。例えば部位である「フロント」については、ブーム、アーム及びバケットなどの部品から構成されている。しかし、例えば「エンジン」の場合、部位としても良く、部品としても良い。従って、内容によっては、部位と部品が同じものを指す場合がある。
【0012】
図1は実施形態に係る点検支援システムを示す概略構成図であり、図2は実施形態に係る点検支援システムを示すブロック図である。本実施形態に係る点検支援システム1は、複数の油圧ショベル10と、ネットワーク40を介してこれらの油圧ショベル10とそれぞれ通信可能と構成されたサーバ20と、ネットワーク40を介してサーバ20及び油圧ショベル10とそれぞれ通信可能な携帯端末30と、を備えている。
【0013】
[油圧ショベルについて]
油圧ショベル10は、メーカーの工場から出荷され、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業などが行われる作業現場において所定のユーザ(例えば、油圧ショベルの所有者または使用者)に使用されている。油圧ショベル10には、稼働データ収集部101が設けられている。稼働データ収集部101は、例えば油圧ショベル10全体の制御を行う制御部の一部からなり、油圧ショベル10の稼働データを自分の識別番号とともにサーバ20や携帯端末30に送信する。なお、サーバ20や携帯端末30への送信は、定期的に(例えば1日1回の頻度で)行われている。
【0014】
[携帯端末について]
携帯端末30は、例えばスマートフォン、タブレット端末、携帯電話、PDA(Personal Data Assistant)などからなり、油圧ショベル10の保守員又はユーザに携帯されている。保守員又はユーザは、携帯端末30を介してサーバ20から定期的に送信された油圧ショベル10の点検情報などを入手することができる。また、保守員は、携帯端末30に表示された点検情報を油圧ショベル10のユーザに示しながら、点検推奨を行うことができる。
【0015】
更に、保守員又はユーザは、例えば携帯端末30を介して特定の油圧ショベル10に関する点検情報を求めることができる。具体的には、保守員又はユーザが特定の油圧ショベル10の点検情報を希望するときに、例えばその特定の油圧ショベル10の識別番号を携帯端末30に入力したり、携帯端末30に表示された該特定の油圧ショベル10の識別番号を選択したりすることで、携帯端末30を介してサーバ20に要求する。
【0016】
図2に示すように、携帯端末30は、点検項目画面301、主要部品画面302、故障確率画面303及び根拠説明画面(表示装置)304を有する。これらの画面は、保守員やユーザの選択によって切り換えられるようになっている。点検項目画面301、主要部品画面302、故障確率画面303及び根拠説明画面304の詳細について後述する。
【0017】
[サーバについて]
サーバ20は、点検支援システム1を構成するメインのコンピュータであり、油圧ショベル10のメーカーの本社、支社、工場或いは管理センタに設置され、複数の油圧ショベル10から送信された稼働データなどを定期的に収集し、これらの油圧ショベル10を集中管理している。サーバ20は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記憶した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって算出や判断などの処理を行う。
【0018】
本実施形態において、サーバ20は、管理対象である油圧ショベル10の稼働データなどに基づき、油圧ショベル10の各部位の故障確率を算出し、故障確率の根拠説明を生成する。これを実現するため、本実施形態のサーバ20は、稼働データ受信部201、故障確率算出部202、確率根拠算出部203、根拠説明生成部204、点検項目取得部205、主要部品取得部206、及びデータ記憶部210を備えている。
【0019】
稼働データ受信部201は、油圧ショベル10から送信された稼働データを受信し、受信した稼働データを油圧ショベル10の識別番号とともにデータ記憶部210に記憶し蓄積させる。図2中の稼働データ履歴211は、所定期間(例えば工場出荷してから現在までの期間)に蓄積された油圧ショベル10の稼働データであり、データ記憶部210に記憶されている。この稼働データは、稼働情報に関するデータであって、例えば油圧ショベル10の稼働開始時間、稼働終了時間、位置情報、各センサによって検出された情報などである。
【0020】
故障確率算出部202は、油圧ショベル10の稼働データ履歴に基づいて油圧ショベル10の部位ごとの故障確率を算出し、算出した結果を故障確率データ212として油圧ショベル10の識別番号とともにデータ記憶部210に記憶させる。故障確率データ212として、例えば図3に示すように機種、号機、主要部品及び種別ごとに分けられている。算出された故障確率は、パーセントで表されており、数字が大きいほど故障の確率が高くなる。
【0021】
また、この故障確率算出部202は、油圧ショベル10の稼働データ履歴に基づいて油圧ショベル10の部位ごとの故障モデルを算出し、算出した結果を故障モデルデータ213として油圧ショベル10の識別番号とともにデータ記憶部210に記憶させる。
【0022】
確率根拠算出部203は、故障確率算出部202によって算出された故障モデルと油圧ショベル10の稼働データ履歴とに基づいて部位ごとの確率根拠を算出し、算出した結果を確率根拠データ214として油圧ショベル10の識別番号とともにデータ記憶部210に記憶させる。
【0023】
根拠説明生成部204は、油圧ショベル10の稼働データ履歴と、故障確率算出部202によって算出された故障確率と、確率根拠算出部203によって算出された確率根拠とに基づいて、故障確率の根拠説明を生成する。具体的には、根拠説明生成部204は、データ記憶部210に予め記憶された根拠説明テンプレートを用いて、稼働データ履歴、故障確率及び確率根拠に基づいて故障確率の根拠説明を生成する。根拠説明生成部204は、生成した結果を根拠説明データ215としてデータ記憶部210に記憶させる。
【0024】
根拠説明テンプレートは、根拠説明内容を示す定型書式であり、各種履歴、故障確率、確率根拠に応じて変更可能とされている。また、この根拠説明テンプレートは、説明相手(保守員又はユーザ)に対応して変更できるようにされている。より具体的には、説明相手が保守員の場合、根拠説明に専門用語や技術用語などが用いられる。一方、説明相手がユーザの場合、根拠説明に専門用語や技術用語を避けて分かり易い文章が用いられる。
【0025】
そして、根拠説明生成部204は、このような根拠説明テンプレートに基づいて、保守員向けの根拠説明と、ユーザ向けの根拠説明とをそれぞれ生成することができる。すなわち、保守員とユーザとで、同一の故障確率に対して異なる定型文の根拠説明が生成される。このようにすれば、説明相手に応じて保守員向けの根拠説明又はユーザ向けの根拠説明をそれぞれ提供することが可能になり、故障確率に対する信頼度を高めることができる。
【0026】
点検項目取得部205は、携帯端末30からの要求に応じて、データ記憶部210に記憶された油圧ショベル10の点検項目データ216を取得し、携帯端末30に送信する。点検項目データ216の一例として、例えば図4に示すように、排気管、過給機、燃料フィルタ、ブームなどが挙げられており、これらの点検項目は機種ごとに分けられている。
【0027】
主要部品取得部206は、携帯端末30からの要求に応じて、データ記憶部210に記憶された油圧ショベル10の主要部品データ217を取得し、携帯端末30に送信する。主要部品データ217の一例として、例えば図5に示すように、機種及び点検項目ごとに分けられている。
【0028】
[サーバの制御処理について]
以下、図6を参照してサーバ20の制御処理を説明する。図6に示す制御処理は、例えば所定の周期で繰り返し実行されている。
【0029】
まず、ステップS101では、稼働データの収集が行われる。具体的には、稼働データ受信部201は、各油圧ショベル10の稼働データ収集部101により収集されて送信された稼働データを受信する。なお、送信された稼働データには油圧ショベル10の識別番号も含まれるので、稼働データ受信部201は、受信した稼働データを油圧ショベル10の識別番号とともにデータ記憶部210に記憶させる。そして、データ記憶部210は、受信した稼働データを稼働データ履歴211に格納する。
【0030】
ステップS101に続くステップS102では、故障モデルと故障確率の算出が行われる。このとき、故障確率算出部202は、油圧ショベル10の稼働データ履歴に基づいて故障モデルと故障確率とをそれぞれ算出する。稼働データ履歴に基づいて故障モデルと故障確率とを算出する手法としては、既に周知された技術が用いられるので、その詳細説明を省略する。また、本ステップS102において、稼働データ履歴に代えて、部品の作番履歴や発注履歴等の保守データを用いて故障モデルと故障確率との算出を行っても良い。
【0031】
ステップS102に続くステップS103では、確率根拠の算出が行われる。このとき、確率根拠算出部203は、油圧ショベル10の稼働データ履歴と、ステップS102で算出した故障モデルとに基づいて、確率根拠を算出する。稼働データ履歴及び故障モデルに基づいて確率根拠を算出する手法としては、既に周知された技術が用いられるので、その詳細説明を省略する。
【0032】
ステップS103に続くステップS104では、根拠説明の生成が行われる。このとき、根拠説明生成部204は、データ記憶部210に予め記憶された根拠説明テンプレートを用いて油圧ショベル10の稼働データ履歴と、ステップS102で算出した故障確率と、ステップS103で算出した確率根拠とに基づいて、故障確率の根拠説明を生成する。根拠説明生成部204は、生成した結果を油圧ショベル10の識別番号とともにデータ記憶部210に記憶させる。
【0033】
そして、ステップS104が終わると、一連の制御処理は終了する。
【0034】
次に、図7図14を参照して携帯端末30の各画面に関する制御処理を説明する。
【0035】
[点検項目画面について]
まず、図7を基に携帯端末30の点検項目画面301について説明する。図7は携帯端末の点検項目画面に関する制御処理を示すフローチャートである。図7に示す制御処理は、携帯端末30とサーバ20との協働によって実行されるものであり、より詳細には、ステップS201の一部及びステップS204~S209はサーバ20により実行される処理であり、その他のステップは携帯端末30により実行される処理である。
【0036】
図7に示す制御処理は、例えば保守員又はユーザが携帯端末30に表示された点検項目画面301を選択することによって開始される。まず、ステップS201では、点検項目リストの取得が行われる。このとき、例えば保守員又はユーザは、点検項目画面301を選択する(例えばタップする)ことで、サーバ20に油圧ショベル10の点検項目リストを要求する。サーバ20の点検項目取得部205は、その要求に応じて点検項目データ216から点検項目リストを取得し、携帯端末30に送信する。
【0037】
そして、携帯端末30は、サーバ20から送信された点検項目リストを受信し、受信した内容を点検項目画面301に表示させる。点検項目画面301に表示された内容として、例えば図11に示すように、「エンジン」、「上部旋回体」、「下部走行体」などのようにリストされた点検項目が挙げられる。
【0038】
続いて、ステップS202~S210に示す点検項目に関するループ処理が行われる。具体的には、例えば保守員やユーザが点検項目画面301に表示された複数の点検項目リストのうちの一つ(例えば図11に示す「下部走行体」)を選択した場合、携帯端末30は選択された点検項目をサーバ20に送信し、サーバ20に要求する(ステップS203参照)。
【0039】
ステップS203に続くステップS204では、サーバ20の主要部品取得部206は、その要求に応じて主要部品データ217から主要部品リストを取得する。例えば図11に示すように「下部走行体」が選択された場合、主要部品取得部206は、「下部走行体」に関連するスプロケット、センタージョイント、トラックフレーム、サイドフレーム、トラックリンクなどの主要部品リストを取得する。
【0040】
次に、取得されたこれらの主要部品について、ステップS205~ステップS207に示す故障確率取得のループ処理が行われる。すなわち、ステップS205で取得した主要部品の故障確率の取得が順次に行われる(ステップS206参照)。主要部品の故障確率は、故障確率算出部202によって算出されて故障確率データ212としてデータ記憶部210に記憶されたものである。
【0041】
ステップS207に続くステップS208では、故障確率算出部202は、ステップS205~S207で取得した主要部品の故障確率に基づいて、上記選択された点検項目の故障確率を算出する。ステップS208に続くステップS209では、サーバ20は、ステップS208で算出した点検項目の故障確率を携帯端末30に返信する(言い換えれば、送信する)。
【0042】
このようなステップS202~S210に示す点検項目に関するループ処理は、選択された点検項目ごとに行われる。例えば、「下部走行体」の後に「上部旋回体」、「エンジン」が順次に選択された場合、「上部旋回体」、「エンジン」の順番でステップS203~S209が繰り返し行われる。
【0043】
ステップS210に続くステップS211では、携帯端末30は、受信した点検項目リストを各点検項目の故障確率とともに点検項目画面301に表示させる。これによって、点検項目画面に関する一連の制御処理が終了する。
【0044】
[主要部品画面について]
次に、図8を基に携帯端末の主要部品画面について説明する。図8は携帯端末の主要部品画面に関する制御処理を示すフローチャートである。図8に示す制御処理は、携帯端末30とサーバ20との協働によって実行されるものであり、より詳細には、ステップS303~S307はサーバ20により実行される処理であり、その他のステップは携帯端末30により実行される処理である。
【0045】
図8に示す制御処理は、例えば保守員又はユーザが携帯端末30に表示された主要部品画面302を選択することによって開始される。まず、ステップS301では、点検項目の選択が行われる。このとき、保守員又はユーザは、図12に示すように「フロント」といった点検項目を選択すると、携帯端末30は選択された点検項目をサーバ20に送信し、サーバ20に要求する(ステップS302参照)。
【0046】
ステップS302に続くステップS303では、サーバ20の主要部品取得部206は、その要求に応じて主要部品データ217から点検項目に関連する主要部品リストを取得する。ここで、「フロント」と選択されたため、主要部品取得部206は、「フロント」に関連するバケット、リンク類などの主要部品リストを取得する。
【0047】
次に、取得されたこれらの主要部品について、ステップS304~ステップS306に示す主要部品の故障確率取得のループ処理が行われる。すなわち、ステップS303で取得した主要部品の故障確率の取得が順次に行われる(ステップS305参照)。主要部品の故障確率は、故障確率算出部202によって算出されて故障確率データ212としてデータ記憶部210に記憶されたものである。
【0048】
ステップS306に続くステップS307では、サーバ20は、故障確率と紐付けた主要部品リストを携帯端末30に返信する(言い換えれば、送信する)。
【0049】
ステップS307に続くステップS308では、携帯端末30は、受信した主要部品リストを各部品の故障確率とともに主要部品画面302に表示させる。このとき、例えば図12に示すように、対象リンクごとに故障確率がそれぞれ表示される。そして、ステップS308が終わると、主要部品画面に関する一連の制御処理が終了する。
【0050】
[故障確率画面について]
次に、図9を基に携帯端末の故障確率画面について説明する。図9は携帯端末の故障確率画面に関する制御処理を示すフローチャートである。図9に示す制御処理は、携帯端末30とサーバ20との協働によって実行されるものであり、より詳細には、ステップS402~S405、ステップS408~S412はサーバ20により実行される処理であり、その他のステップは携帯端末30により実行される処理である。
【0051】
まず、ステップS401では、対象油圧ショベルの情報の送信が行われる。このとき、例えば保守員又はユーザは、故障確率を調べたい油圧ショベル10の識別番号を携帯端末30に入力したり、或いは携帯端末30に表示された油圧ショベル10の識別番号を選択したりすることで、サーバ20に要求する。
【0052】
ステップS401に続くステップS402では、対象油圧ショベルがあるか否かを判断する。このとき、サーバ20は、送信された油圧ショベルの識別番号に基づいて、該識別番号に該当する油圧ショベルが管理している複数の油圧ショベルの中にあるかを判断する。対象油圧ショベルがないと判断された場合、制御処理は終了する。一方、対象油圧ショベルがあると判断された場合、制御処理はステップS403に進む。
【0053】
ステップS403では、サーバ20は、対象油圧ショベルの稼働データがあるか否かを判断する。例えば対象油圧ショベルが休車している(すなわち、暫く稼働していない)場合、稼働データが送信されないので、故障確率の算出は行われない。このため、稼働データがないと判断され、制御処理は終了する。一方、稼働データがあると判断された場合、制御処理はステップS404に進む。
【0054】
ステップS404では、サーバ20は、対象油圧ショベルの修理又は交換履歴があるか否かを判断する。例えば対象油圧ショベルの修理又は交換履歴がない場合、故障確率の算出は行われない。このため、対象油圧ショベルの修理又は交換履歴がないと判断され、制御処理は終了とする。一方、対象油圧ショベルの修理又は交換履歴があると判断された場合、制御処理はステップS405に進む。
【0055】
ステップS405では、サーバ20は、対象油圧ショベルの故障確率データがあるか否かを判断する。このとき、サーバ20は、対象油圧ショベルの識別番号に基づいて、データ記憶部210に記憶された故障確率データ212の中に対象油圧ショベルの故障確率データがあるかを調べる。そして、対象油圧ショベルの故障確率データがないと判断された場合、制御処理は終了する。一方、対象油圧ショベルの故障確率データがあると判断された場合、制御処理はステップS406に進む。
【0056】
ステップS406では、主要部品の選択が行われる。このとき、保守員又はユーザは、携帯端末30に表示された主要部品を選択すると、携帯端末30は選択された主要部品をサーバ20に送信し、サーバ20に要求する(ステップS407参照)。
【0057】
ステップS407に続くステップS408では、サーバ20は、その要求に応じて故障確率データ212から主要部品の故障確率リストを取得する。次に、取得されたこれらの主要部品について、ステップS409~ステップS411に示す故障確率の根拠説明の有無確認のループ処理が行われる。このとき、サーバ20は、油圧ショベル10の識別番号に基づいて、データ記憶部210に記憶された根拠説明データ215の中に該主要部品の故障確率の根拠説明があるかを確認する。なお、根拠説明生成部204による根拠説明の作成は、このステップにおいて行われても良い。
【0058】
ステップS411に続くステップS412では、サーバ20は、根拠説明の有無と紐付けた故障確率リストを携帯端末30に返信する(言い換えれば、送信する)。
【0059】
ステップS412に続くステップS413では、携帯端末30は、受信した故障確率リストを説明根拠の有無とともに故障確率画面303に表示させる。これによって、故障確率画面に関する一連の制御処理が終了する。
【0060】
[根拠説明画面について]
次に、図10を基に携帯端末の根拠説明画面について説明する。図10は携帯端末の根拠説明に関する制御処理を示すフローチャートである。まず、ステップS501では、部位点検画面が表示される。このとき、例えば保守員又はユーザは、携帯端末30に表示された点検項目画面301を選択することで、部位点検画面が表示される。
【0061】
ステップS501に続くステップS502では、部位点検推奨度の表示があるか否かが判断される。ここでは、故障確率が中程度から高い部位に関して点検推奨度の表示がされる。点検推奨度に関する表示は部位ごとに視覚的に表示される。たとえば点検推奨度が高い場合は赤色のアイコンが表示され(図では便宜上、ベルマークとしている)、点検推奨度が中程度の場合は黄色いアイコンの表示がされる。ステップS502で、少なくともひとつの部位の点検推奨度の表示があると判断された場合、どの部位の故障確率を知りたいか、部位の指定が行われる。点検推奨度の表示がないと判断された場合、処理はステップ501に戻る。
【0062】
ステップS502に続くステップS503では、部位指定があるか否かが判断される。保守員又はユーザは、故障確率を調べたい部位(例えば、部位である「フロント」)を選択して指定する。その際、対象となる部品の隣に表示されるベルマークのアイコンをタップして指定する。部位指定があると判断された場合、その部位に関連する部品を表示する部品点検画面が展開される。部位指定がないと判断された場合、処理はステップ501に戻る。
【0063】
ステップS503に続くステップS504では、部品点検画面が表示される。ステップS504に続くステップS505では、部品点検推奨度の表示があるか否かが判断される。ここでは、故障確率が中程度から高い部品に関して点検推奨度の表示が行われる。ステップS505で、少なくともひとつの部品の点検推奨度の表示があると判断された場合、どの部品の故障確率を知りたいか、部品の指定が行われる。点検推奨度の表示がないと判断された場合、処理はステップ501に戻る。
【0064】
ステップS505に続くステップS506では、部品指定があるか否かが判断される。保守員又はユーザは、故障確率を調べたい部品を選択して指定する。その際、対象となる部品の隣に表示されるベルマークのアイコンをタップして指定する。部品指定があると判断された場合、故障確率画面が表示される。部品指定がないと判断された場合、処理はステップ501に戻る。保守員又はユーザは、例えば図12に示すように「フロント」と関連する「バケット、リンク類」を選択して指定する。
【0065】
ステップS506に続くステップS507では、携帯端末30は、指定された部品の故障確率を故障確率画面303に表示させる。
【0066】
故障確率画面303には、図13に示すように種別ごと(すなわち「総合」、「経年」及び「突発」)の点検推奨度がそれぞれ表示される。ここで、「経年」は、経年劣化や摩耗などの時間に関わる故障の可能性を示している。「突発」は、最近の稼働状況から故障の兆候が現れている可能性を示している。一方、「総合」は、「経年」及び「突発」両方を加味した故障確率を示している。なお種別の表示は「総合」のみを表示する、もしくは、「突発」のみを表示するといった具合に任意に設定されてもよい。また、それぞれの表示のタイミングは任意に設定されうる。たとえば調査希望時は「突発」のみを表示し、その他の種別は前回の調査時から3か月経過後など、一定の期間後に表示させる態様であってもよい。
【0067】
また、図13に示すように、各点検推奨度の横には「解説」というタブが表示されている。保守員又はユーザは、種別ごとの点検推奨度の根拠を知りたいとき、「解説」のタブを選択すれば良い。
【0068】
ステップS507に続くステップS508では、携帯端末30は、解説が選択されたか否かを判断する。ここでの解説は、すなわち、故障確率の根拠説明である。保守員又はユーザは解説を希望する場合、図13に示す「解説」のタブを選択する。これによって、携帯端末30は、解説が選択されたと判断し、主要部品、種別及び相手の情報をサーバ20に送信する(ステップS509を参照)。
【0069】
ここでの相手は、根拠説明の相手である保守員又はユーザのことを指す。上述したように、根拠説明生成部204は、根拠説明テンプレートに基づいて、保守員向けの根拠説明とユーザ向けの根拠説明とをそれぞれ生成するので、相手情報を送信することで説明相手に応じた根拠説明を取得することができる。
【0070】
なお、ステップS508において解説が選択されていないと判断された場合(例えば、図13画面上の「閉じる」のタブが選択された場合)、制御処理は終了する。
【0071】
ステップS509に続くステップS510では、サーバ20は、データ記憶部210に記憶された根拠説明データ215から、主要部品、種別及び相手の情報に対応する故障確率の根拠説明を取得する。ステップS510に続くステップS511では、サーバ20は、取得した故障確率の根拠説明を携帯端末30に返信する(言い換えれば、送信する)。
【0072】
ステップS511に続くステップS512では、携帯端末30は、サーバ20から送信された故障確率の根拠説明を受信し、根拠説明画面304に表示させる。例えば図13において「経年」の点検推奨度に関する「解説」が選択された場合、根拠説明画面304には図14に示すような解説内容が表示される。保守員又はユーザは、表示された解説内容を見て点検推奨度の理由を把握することができる。
【0073】
ステップS512が終わると、故障確率画面に関する一連の制御処理が終了する。
【0074】
以上のように構成された点検支援システム1では、根拠説明生成部204が故障確率の根拠説明を生成するので、故障確率とともにそれに関する根拠説明を根拠説明画面304に表示することができる。このため、根拠説明を示さない場合と比べてユーザへの説得力及び納得性を高めることができ、故障確率に対する信頼度を向上することができる。これによって、部品交換又は修理などの対策を適切に講じることが可能になるので、油圧ショベル10の安定した稼働を実現することができる。
【0075】
本実施形態において、故障確率算出部202、確率根拠算出部203及び根拠説明生成部204は、サーバ20に設けられる例を挙げて説明したが、例えば図15に示すように、油圧ショベル10に設けられても良い。例えば、故障確率算出部202、確率根拠算出部203及び根拠説明生成部204は、故障確率データ212、故障モデルデータ213、確率根拠データ214及び根拠説明データ215を記憶するデータ記憶部218とともに油圧ショベル10の制御部に設けられて良い。このようにすると、サーバ20の処理を減らすことができるとともに、点検支援システム1のバリエーションを増やすことができる。
【0076】
また図16に示すように、故障確率算出部202、確率根拠算出部203及び根拠説明生成部204は、故障確率データ212、故障モデルデータ213、確率根拠データ214及び根拠説明データ215を記憶するデータ記憶部219とともに携帯端末30に設けられても良い。この場合、携帯端末30は、油圧ショベル10から稼働データを直接受信し、上述の各算出及び判断などを行う。このようにすると、サーバ20の処理を減らすことができるとともに、点検支援システム1のバリエーションを増やすことができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 点検支援システム
10 油圧ショベル
20 サーバ
30 携帯端末
40 ネットワーク
101 稼働データ収集部
201 稼働データ受信部
202 故障確率算出部
203 確率根拠算出部
204 根拠説明生成部
205 点検項目取得部
206 主要部品取得部
210,218,219 データ記憶部
211 稼働データ履歴
212 故障確率データ
213 故障モデルデータ
214 確率根拠データ
215 根拠説明データ
216 点検項目データ
217 主要部品データ
301 点検項目画面
302 主要部品画面
303 故障確率画面
304 根拠説明画面(表示装置)
図1
図2
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