(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164026
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】落下抑止具及び落下抑止構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20221020BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20221020BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20221020BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04B9/18 H
F16B1/00 A
F16B7/04 301M
F16B45/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069232
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕生
【テーマコード(参考)】
3J038
3J039
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BA11
3J038BA17
3J039AA06
3J039BB01
3J039CA02
(57)【要約】
【課題】施工性に優れた落下抑止具を提供する。
【解決手段】落下抑止具(1)は、構造体に当接配置される当接部(21)、当接部(21)から吊ボルト(P)に沿って下方に延びる支持部(26)、及び支持部(26)との間に吊ボルト(P)を挟み込む挟持部(30)を有する第一取付部材(2)と、第一取付部材(2)よりも下方側で吊ボルト(P)に固定される第二取付部材(7)と、第一取付部材(2)と第二取付部材(7)とに亘って設けられるワイヤー部材(10)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体から垂下された吊ボルトに吊下げ支持される吊設機器の落下を抑止する落下抑止具であって、
前記構造体に当接配置される当接部と、前記当接部から前記吊ボルトに沿って下方に延びる支持部と、前記支持部との間に前記吊ボルトを挟み込む挟持部と、を有する第一取付部材と、
前記第一取付部材よりも下方側で前記吊ボルトに固定される第二取付部材と、
前記第一取付部材と前記第二取付部材とに亘って設けられるワイヤー部材と、
を備える落下抑止具。
【請求項2】
第一取付部材が、前記吊ボルトに交差する第一ブレースボルトを前記支持部との間に挟み込む第一ブレース挟持部と、前記第一ブレースボルトとは別に前記吊ボルトに交差する第二ブレースボルトを前記挟持部との間に挟み込む第二ブレース挟持部と、をさらに有する請求項1に記載の落下抑止具。
【請求項3】
前記第二取付部材が、前記吊ボルトに対する前記吊設機器の取付部位と共締めされる機器取付部を有する請求項1又は2に記載の落下抑止具。
【請求項4】
前記第二取付部材が、前記吊ボルトに沿って配置される第二支持部と、前記第二支持部との間に前記吊ボルトを挟み込む第二挟持部と、を有する請求項1又は2に記載の落下抑止具。
【請求項5】
前記吊ボルトに、前記構造体に当接する状態でナットが取り付けられており、
前記当接部が、前記ナットの外形よりも大きい切欠を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の落下抑止具。
【請求項6】
前記第一取付部材が、前記支持部と前記挟持部とを連結する連結ボルトをさらに有し、
前記ワイヤー部材が、少なくとも一方の端部に環状に形成された環状部を有し、
前記連結ボルトが、前記環状部に挿通された状態で前記支持部と前記挟持部とを連結している請求項1から5のいずれか一項に記載の落下抑止具。
【請求項7】
構造体から垂下された4本の吊ボルトに四隅で吊下げ支持される吊設機器の落下を抑止するための落下抑止構造であって、
隣り合う2本の前記吊ボルトどうしの間のスパンに、2本のブレースボルトがX字状に互いに交差する姿勢でそれぞれ配置され、
それぞれの前記吊ボルトにおいて、上下方向の異なる位置で、当該吊ボルトとそれに交差する2本の前記ブレースボルトとがコーナー金具を用いてそれぞれ連結され、
前記構造体に当接配置された状態で前記吊ボルトを挟み込む第一取付部材と、
上側の前記コーナー金具よりも下方側で前記吊ボルトに固定される第二取付部材と、
前記第一取付部材と前記第二取付部材とに亘って設けられる第一ワイヤー部材と、
前記第二取付部材よりも下方側であって下側の前記コーナー金具よりも上方側で前記吊ボルトに固定される第三取付部材と、
前記第三取付部材よりも下方側で前記吊ボルトに固定される第四取付部材と、
前記第三取付部材と前記第四取付部材とに亘って設けられる第二ワイヤー部材と、
を備える落下抑止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落下抑止具及び落下抑止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空調機器の室内機や、照明機器、ケーブルラック等の吊設機器は、天井スラブ等の構造体から垂下された吊ボルトによって四隅で吊下げ支持される場合がある。このとき、各スパンにおいて隣り合う吊ボルトどうしの間に2本のブレースボルトをX字状に配置して吊ボルトに固定し、全体を補強することで、地震等に起因する吊設機器の揺れ動きを抑制するための措置が取られることが多い。
【0003】
ただ、そのような措置を講じたとしても、想定を超えるような大きな振動が発生した場合等には、吊ボルト自体が破断することによって吊設機器が落下してしまうような事態も生じ得る。このため、そのような万が一の場合に備えて、構造体から垂下された吊ボルトに吊下げ支持される吊設機器の落下を抑止する落下抑止具が併設される場合がある。このような落下抑止具の一例が、例えば特開2020-37965号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
特許文献1の落下抑止具は、吊ボルト(全ねじ2)の上方側の吊元付近に固定される第一取付部材(第1取付け部材5)と、吊ボルトの下方側に固定される第二取付部材(第2取付け部材6)と、第一取付部材と第二取付部材とに亘って設けられるワイヤー部材(金属製ワイヤ4)とを備えている。この特許文献1の第一取付部材は、丸型又はU字型の薄板状の金具で構成され、吊ボルトに螺合されたナット(ナット19)によって、構造体(天井1又は吊元アンカー33)又は他のナット(介在具34)との間に上下に締め付けられて固定されている。
【0005】
しかし、このような構造では、吊ボルトに第一取付部材を固定するに際して、吊ボルトの上方側の吊元付近で、吊ボルトに対してナットの締め付け操作を行う必要がある。このような操作は手作業で行う必要があり、施工性に劣るという課題があった。また、吊ボルトが第一取付部材よりも上方で破断してしまう可能性があり、そのような場合には、落下抑止具がもはやその役割を果たせないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、施工性に優れるともに、仮に吊ボルトが破断した場合でも吊設機器の落下を十分に抑止することができる落下抑止具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る落下抑止具は、
構造体から垂下された吊ボルトに吊下げ支持される吊設機器の落下を抑止する落下抑止具であって、
前記構造体に当接配置される当接部と、前記当接部から前記吊ボルトに沿って下方に延びる支持部と、前記支持部との間に前記吊ボルトを挟み込む挟持部と、を有する第一取付部材と、
前記第一取付部材よりも下方側で前記吊ボルトに固定される第二取付部材と、
前記第一取付部材と前記第二取付部材とに亘って設けられるワイヤー部材と、
を備える。
【0009】
この構成によれば、構造体に当接部を当接させ、支持部と挟持部との間に吊ボルトを挟み込むだけで、吊ボルトの上方側で当該吊ボルトに第一取付部材を容易に固定することができる。よって、施工性を向上させることができる。また、構造体に当接部を当接させつつ支持部と挟持部との間に吊ボルトを挟み込むことで、構造体と第一取付部材とを一体の剛体として働かせることができる。よって、大きな振動が作用した場合に仮に吊ボルトが破断するにしても、その破断位置をワイヤー部材が取り付けられている第一取付部材よりも下方とすることができ、吊設機器が落下してしまうのを十分に抑止することができる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0011】
一態様として、
第一取付部材が、前記吊ボルトに交差する第一ブレースボルトを前記支持部との間に挟み込む第一ブレース挟持部と、前記第一ブレースボルトとは別に前記吊ボルトに交差する第二ブレースボルトを前記挟持部との間に挟み込む第二ブレース挟持部と、をさらに有することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、隣り合う吊ボルトどうしの間に互いに交差する2本のブレースボルトを架け渡して固定し、吊設機器の振れ止めを図る場合に、当該振れ止め用の器具を兼用することができる。よって、全体として簡易な構造で、吊設機器の振れ止めと万が一の場合の落下抑止とを図ることができる。
【0013】
一態様として、
前記第二取付部材が、前記吊ボルトに対する前記吊設機器の取付部位と共締めされる機器取付部を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、吊ボルトに対する吊設機器の取付部位に機器取付部を共締めすることで、第一取付部材よりも下方側で吊ボルトに第二取付部材を容易に固定することができる。また、機器取付部を、吊設機器の取付部位に共締め可能な程度の構造とするだけで良いので、第二取付部材の構造の簡素化を図ることができる。
【0015】
一態様として、
前記第二取付部材が、前記吊ボルトに沿って配置される第二支持部と、前記第二支持部との間に前記吊ボルトを挟み込む第二挟持部と、を有することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第二支持部と第二挟持部との間に吊ボルトを挟み込むだけで、第一取付部材よりも下方側でも、吊ボルトに第二取付部材を容易に固定することができる。よって、施工性をさらに向上させることができる。
【0017】
一態様として、
前記吊ボルトに、前記構造体に当接する状態でナットが取り付けられており、
前記当接部が、前記ナットの外形よりも大きい切欠を有することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、構造体に当接する状態で吊ボルトに取り付けられたナットとの干渉を切欠によって避け、構造体に当接部を安定的に当接させることができる。よって、吊ボルトに対する第一取付部材の取付姿勢を安定化することができる。
【0019】
一態様として、
前記第一取付部材が、前記支持部と前記挟持部とを連結する連結ボルトをさらに有し、
前記ワイヤー部材が、少なくとも一方の端部に環状に形成された環状部を有し、
前記連結ボルトが、前記環状部に挿通された状態で前記支持部と前記挟持部とを連結していることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第一取付部材において連結ボルトを用いて支持部と挟持部とを連結する構成を利用して、ワイヤー部材に形成された環状部に連結ボルトを挿通させることで、ワイヤー部材を通すための孔部を第一取付部材に特別に設けることなく、第一取付部材とワイヤー部材とを連結することができる。
【0021】
また、本発明に係る落下抑止構造は、
構造体から垂下された4本の吊ボルトに四隅で吊下げ支持される吊設機器の落下を抑止するための落下抑止構造であって、
隣り合う2本の前記吊ボルトどうしの間のスパンに、2本のブレースボルトがX字状に互いに交差する姿勢でそれぞれ配置され、
それぞれの前記吊ボルトにおいて、上下方向の異なる位置で、当該吊ボルトとそれに交差する2本の前記ブレースボルトとがコーナー金具を用いてそれぞれ連結され、
前記構造体に当接配置された状態で前記吊ボルトを挟み込む第一取付部材と、
上側の前記コーナー金具よりも下方側で前記吊ボルトに固定される第二取付部材と、
前記第一取付部材と前記第二取付部材とに亘って設けられる第一ワイヤー部材と、
前記第二取付部材よりも下方側であって下側の前記コーナー金具よりも上方側で前記吊ボルトに固定される第三取付部材と、
前記第三取付部材よりも下方側で前記吊ボルトに固定される第四取付部材と、
前記第三取付部材と前記第四取付部材とに亘って設けられる第二ワイヤー部材と、
を備える。
【0022】
この構成によれば、第一取付部材、第二取付部材、及び第一ワイヤー部材を有する第1のユニットと、第三取付部材、第四取付部材、及び第二ワイヤー部材を有する第2のユニットとを、各吊ボルトに設けられる上下2つのコーナー金具に対して、それぞれ独立に取り付けることができる。例えば構造体の付近と吊設機器の付近とに亘って単一の落下抑止具を取り付ける場合には、構造体からの吊設機器の吊り高さに合わせてワイヤー部材の長さを調整する必要があるが、上記構造とすることで、ワイヤー部材の長さ調整が不要となる。よって、落下抑止具を用いて施工する場合の施工性を向上させることができる。
また、第一取付部材は構造体に当接した状態で吊ボルトを挟み込むため、構造体と第一取付部材とを一体の剛体として働かせることができる。よって、大きな振動が作用した場合に仮に吊ボルトが破断するにしても、その破断位置を第一ワイヤー部材が取り付けられている第一取付部材よりも下方とすることができ、吊設機器が落下してしまうのを十分に抑止することができる。
【0023】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
落下抑止具の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の落下抑止具1は、構造体Sから垂下された吊ボルトPに吊下げ支持される吊設機器Eの落下を抑止するための器具である。この落下抑止具1は、構造体S付近で吊ボルトPに固定される第一取付部材2と、吊設機器E付近で吊ボルトPに固定される第二取付部材7と、第一取付部材2と第二取付部材7とに亘って設けられるワイヤー部材10とを備えている。
【0026】
図1に、構造体Sに吊設機器Eを吊り下げ支持する吊下支持構造を示す。この図に示すように、本支持構造は、構造体Sから鉛直方向に沿って下方に延びる複数(例えば4本)の吊ボルトPのそれぞれに、吊設機器Eの側面に設けられた取付部位Eaを連結してなる。構造体Sは、例えばコンクリート製の天井スラブや梁等である。吊設機器Eは、例えば空調機器の室内機や、照明機器、ケーブルラック等である。以下、天井スラブ(構造体Sの一例)から垂設された4本の吊ボルトPに、空調機器の室内機(吊設機器Eの一例)が吊り支持された構造を例として説明する。
【0027】
4本の吊ボルトPのうち、左右方向及び前後方向で相互に対向する各対の吊ボルトPには、それぞれ、2本のブレースボルトQが互いに交差する姿勢で連結されている。吊ボルトPと、それに交差する2本のブレースボルトQとは、構造体Sの付近において、本実施形態の落下抑止具1によって互いに連結されている。吊ボルトPと2本のブレースボルトQとは、下方側の吊設機器Eの付近では、コーナー金具Cによって互いに連結されている。また、各スパンにおいて、2本のブレースボルトQがX字状に互いに交差する姿勢で連結されている。これら2本のブレースボルトQは、クロス金具Xによって互いに連結されている。これにより、地震等に起因する吊設機器Eの揺れ動きを抑制することができる構造となっている。
【0028】
なお、コーナー金具Cやクロス金具Xとしては、挟み込み方式やバネ板方式、ダブルナット方式等、各種方式の公知の金具を適宜使用することができる。
【0029】
このように、本実施形態の吊下支持構造は、吊設機器Eの揺れ動きを抑制できるものではあるが、想定外の大きな振動が生じた場合でも吊設機器Eの落下を抑止するため、落下抑止具1が落下抑止機能をさらに果たすように構成されている。言い換えれば、本実施形態の落下抑止具1は、コーナー部で吊ボルトPとそれに交差する2本のブレースボルトQとを連結するコーナー金具と、吊設機器Eの落下を抑止するための器具とを兼用するように構成されている。
【0030】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の落下抑止具1は、第一取付部材2と第二取付部材7とワイヤー部材10とを備えている。第一取付部材2は、ベース金具20と、挟持金具30と、第一ブレース挟持金具50と、第二ブレース挟持金具60とを有している。第一取付部材2は、構造体S付近で吊ボルトPに固定される。第二取付部材7は、機器取付金具70を有している。第二取付部材7は、第一取付部材2よりも下方側の、吊設機器E付近で吊ボルトPに固定される。ワイヤー部材10は、第一取付部材2と第二取付部材7とに亘って設けられている。
【0031】
第一取付部材2を構成するベース金具20は、当接部21と屈曲片部24と支持部26とを有している。当接部21は、構造体Sの下面に沿う平板状に形成されている。当接部21は、全面的に接する状態で、構造体Sに当接配置される。当接部21には挿通孔21aが形成されており、この挿通孔21aには、ワイヤー部材10を構成するワイヤー105が挿通される。当接部21は、構造体Sに当接する状態で吊ボルトPに取り付けられたナットN(
図2を参照)の外形よりも大きい切欠22を有する。切欠22は、長方形状の当接部21の短辺から、U字状に切り欠くように形成されている。また、当接部21は、1辺に沿って起立形成されたリブ23を有する。リブ23は、長方形状の当接部21の一方の長辺に沿って形成されている。当接部21は、リブ23とは反対側の長辺部分で、屈曲片部24を介して支持部26に接続されている。
【0032】
支持部26は、屈曲片部24を介して、当接部21から吊ボルトPに沿って下方に延びるように形成されている。支持部26は、挟持金具30を支持する部位であり、本実施形態では第一ブレース挟持金具50をも支持する部位となっている。挟持金具30と第一ブレース挟持金具50とは、支持部26の両面に分かれて支持されている。支持部26には、貫通孔26aが形成されており、この貫通孔26aに第一連結ボルト55の軸部が挿通される。また、支持部26は、吊ボルトPの外面に沿うように湾曲した湾曲片部27を有する。湾曲片部27は、上下方向に沿って配置されている。湾曲片部27の内面には、複数の係止突起27Aが突出形成されている。
【0033】
本実施形態では、支持部26の下端部から、湾曲片部27が湾曲する側と同じ側に向かって突出するように支持屈曲片28が突出形成されている。この支持屈曲片28は、支持部26に連結される挟持金具30を下方から支持する。
【0034】
挟持金具30は、支持部26との間に吊ボルトPを挟み込む。本実施形態では、挟持金具30は、支持部26との間に吊ボルトPを挟み込むとともに、第二ブレース挟持金具60を支持する部位となっている。本実施形態では、挟持金具30が「挟持部」に相当する。挟持金具30は、重合部31と中央湾曲部33と延設支持部34とを有している。重合部31は、ベース金具20の支持部26に重ね合わされる部位である。重合部31には、第一連結ボルト55が締結される被締結部32が形成されている。被締結部32は、例えばバーリングタップで構成されても良いし、ナットが固定されて構成されても良い。
【0035】
中央湾曲部33は、重合部31と延設支持部34との間に設けられ、吊ボルトPの外面に沿うように湾曲して形成されている。中央湾曲部33の内面には、複数の係止突起33Aが突出形成されている。中央湾曲部33は、ベース金具20と挟持金具30とが固定された状態で支持部26の湾曲片部27と対向するように配置され、当該対向部位で吊ボルトPを挟み込む。このとき、係止突起27A及び係止突起33Aは、吊ボルトPのネジ溝に係止する。
【0036】
延設支持部34は、重合部31及びそれに重ね合わされるベース金具20の支持部26に交差(本例では直交)するように、中央湾曲部33から延設されている。延設支持部34は、第二ブレース挟持金具60を支持する部位となっている。延設支持部34には、第二連結ボルト65が締結される被締結部35が形成されている。被締結部35は、例えばバーリングタップで構成されても良いし、ナットが固定されて構成されても良い。
【0037】
第一ブレース挟持金具50は、ベース金具20の支持部26との間に第一ブレースボルトQ1を挟み込む。本実施形態では、第一ブレース挟持金具50が「第一ブレース挟持部」に相当する。第一ブレース挟持金具50は、本体部51と湾曲部52とリブ53とを有している。本体部51は、ベース金具20の支持部26に重ね合わされて固定される部位となっている。本体部51には、貫通孔51aが形成されており、この貫通孔51aに第一連結ボルト55の軸部が挿通される。貫通孔51aの周囲には、ベース金具20の支持部26とは反対側に突出する環状突起51Bが形成されている。
【0038】
湾曲部52は、本体部51から連続して設けられており、第一ブレースボルトQ1の外面に沿うように湾曲している。湾曲部52の内面には、複数の係止突起52Aが突出形成されている。湾曲部52は、ベース金具20と第一ブレース挟持金具50とが固定された状態でベース金具20の支持部26と対向するように配置され、当該対向部位で第一ブレースボルトQ1を挟み込む。このとき、係止突起52Aは、第一ブレースボルトQ1のネジ溝に係止する。リブ53は、第一ブレース挟持金具50の幅方向両側に分かれて、それぞれ本体部51と湾曲部52とに亘って起立形成されている。
【0039】
ベース金具20と挟持金具30と第一ブレース挟持金具50とは、第一連結ボルト55によって連結及び固定される。第一連結ボルト55の軸部を、第一ブレース挟持金具50の本体部51の貫通孔51aとベース金具20の支持部26の貫通孔26aとに挿通させ、挟持金具30の重合部31に設けられた被締結部32に締結することで、ベース金具20と挟持金具30と第一ブレース挟持金具50とが連結及び固定される。本実施形態では、第一連結ボルト55が「連結ボルト」に相当する。
【0040】
第一連結ボルト55には、ワッシャー56とバネ57とが頭部側から記載の順に外装されている。このような構成とすることで、第一連結ボルト55の緩締状態で、圧縮状態のバネ57の弾性復元力で第一ブレース挟持金具50及びベース金具20を挟持金具30側に付勢することができる。これにより、吊ボルトPに対して第一取付部材2を仮固定するとともに、ベース金具20と第一ブレース挟持金具50との間に第一ブレースボルトQ1を仮固定することができる。なお、最終の固定状態において、バネ57は、圧縮状態で、第一ブレース挟持金具50の本体部51に形成された環状突起51Bの内部空間に配置される。
【0041】
第二ブレース挟持金具60は、挟持金具30の延設支持部34との間に、第一ブレースボルトQ1とは別の第二ブレースボルトQ2を挟み込む。本実施形態では、第二ブレース挟持金具60が「第二ブレース挟持部」に相当する。第二ブレース挟持金具60は、本体部61と湾曲部62とリブ63とを有している。本体部61は、挟持金具30の延設支持部34に重ね合わされて固定される部位となっている。本体部61には、貫通孔61aが形成されており、この貫通孔61aに第二連結ボルト65の軸部が挿通される。貫通孔61aの周囲には、挟持金具30の延設支持部34とは反対側に突出する環状突起61Bが形成されている。
【0042】
湾曲部62は、本体部61から連続して設けられており、第二ブレースボルトQ2の外面に沿うように湾曲している。湾曲部62の内面には、複数の係止突起62Aが突出形成されている。湾曲部62は、挟持金具30と第二ブレース挟持金具60とが固定された状態で挟持金具30の延設支持部34と対向するように配置され、当該対向部位で第二ブレースボルトQ2を挟み込む。このとき、係止突起62Aは、第二ブレースボルトQ2のネジ溝に係止する。リブ63は、第二ブレース挟持金具60の幅方向両側に分かれて、それぞれ本体部61と湾曲部62とに亘って起立形成されている。
【0043】
挟持金具30と第二ブレース挟持金具60とは、第二連結ボルト65によって連結及び固定される。第二連結ボルト65の軸部を、第二ブレース挟持金具60の本体部61の貫通孔61aに挿通させ、挟持金具30の延設支持部34に設けられた被締結部35に締結することで、挟持金具30と第二ブレース挟持金具60とが連結及び固定される。
【0044】
第二連結ボルト65には、ワッシャー66とバネ67とが頭部側から記載の順に外装されている。このような構成とすることで、第二連結ボルト65の緩締状態で、圧縮状態のバネ67の弾性復元力で第二ブレース挟持金具60を挟持金具30側に付勢することができる。これにより、挟持金具30と第二ブレース挟持金具60との間に第二ブレースボルトQ2を仮固定することができる。なお、最終の固定状態において、バネ67は、圧縮状態で、第二ブレース挟持金具60の本体部61に形成された環状突起61Bの内部空間に配置される。
【0045】
第二取付部材7は、機器取付金具70を有している。機器取付金具70は、吊設機器Eの側面に設けられた、吊ボルトPに対する取付部位Eaと共締めされる。本実施形態では、機器取付金具70が「機器取付部」に相当する。機器取付金具70は、平板状の本体板部71を有する。本体板部71には挿通孔71aが形成されており、この挿通孔71aには、ワイヤー部材10を構成するワイヤー105が挿通される。また、本体板部71は、吊ボルトPの外径よりも大きく、取付部位Eaを固定するナットMよりも小さいサイズの切欠72を有する。切欠72は、本体板部71の一辺から、U字状に切り欠くように形成されている。また、機器取付金具70は、本体板部71から上方に屈曲された第一屈曲片73と第二屈曲片74とを有している。
【0046】
ワイヤー部材10は、第一取付部材2と第二取付部材7とに亘って設けられている。本実施形態では、所定長さの1本のワイヤー105が、ベース金具20の当接部21の挿通孔21aと機器取付金具70の本体板部71の挿通孔71aとに挿通された後、両端部どうしが連結具(図示せず)によって連結されて全体がループ状とされている。
【0047】
本実施形態の落下抑止具1は、構造体Sに当接部21を当接させ、ベース金具20の支持部26と挟持金具30との間に吊ボルトPを挟み込むだけで、吊ボルトPに第一取付部材2を容易に固定することができる。よって、施工性を向上させることができる。この固定のための第一連結ボルト55は、吊ボルトPに対して直交する方向に締結されるので、例えば電動工具を用いて締結作業を行うことができる(第二ブレース挟持金具60の固定のための第二連結ボルト65の締結に関しても同様)。よって、この点からも、施工性を大きく向上させることができる。
【0048】
また、構造体Sに当接部21を当接させつつ支持部26と挟持金具30との間に吊ボルトPを挟み込むことで、構造体Sと第一取付部材2とを一体の剛体として働かせることができる。これにより、大きな振動が作用した場合に仮に吊ボルトPが破断するにしても、その破断位置をより下方とすることができる。例えば
図4に示すように、通常であれば、構造体Sに当接するナットNの下端部の位置(記号「A」で表示)で吊ボルトPが破断する可能性があるところ、吊ボルトPの破断位置をベース金具20の下端部(記号「B」で表示)よりも下方とすることができる。
【0049】
このため、仮に吊ボルトPが破断した場合でも、第一取付部材2は、構造体S側に残っている吊ボルトPに固定された状態を維持する。よって、吊ボルトPおける構造体Sの直下の位置と吊設機器Eの取付部位Eaとに亘って設けられる落下抑止具1の通常の機能により、吊設機器Eが落下してしまうのを抑止することができる。
【0050】
さらに、本実施形態の落下抑止具1は、第一ブレース挟持金具50と第二ブレース挟持金具60とをさらに有することで、コーナー部で吊ボルトPとそれに交差する2本のブレースボルトQとを連結するコーナー金具としての機能を併せ持っている。このため、全体として簡易な構造で、吊設機器Eの振れ止めと万が一の場合の落下抑止とを図ることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
落下抑止具の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の落下抑止具1は、第一取付部材2、第二取付部材7、及びワイヤー部材10のそれぞれの具体的構造が、第1実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の落下抑止具1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図5に示すように、本実施形態の落下抑止具1は、吊ボルトPとそれに交差する2本のブレースボルトQとを連結するコーナー金具Cとは独立して設けられている。この落下抑止具1は、吊ボルトPにおける構造体Sの直下の位置と吊設機器Eの取付部位Eaよりも下方の位置とに亘って設けられる。
【0053】
図6及び
図7に示すように、本実施形態の落下抑止具1において、第一取付部材2は、ベース金具20と挟持金具40とを有している。落下抑止具1は、コーナー金具Cとは独立して設けられており、第1実施形態とは異なり、第一ブレース挟持金具50及び第二ブレース挟持金具60を有していない。また、第二取付部材7は、吊設機器Eの取付部位Eaから独立して吊ボルトPに直接取り付けられており、第1実施形態における機器取付金具70に代えて、第二ベース金具80と第二挟持金具90とを有している。
【0054】
第一取付部材2を構成するベース金具20は、当接部21と屈曲片部24と支持部26とを有している。当接部21は、構造体Sの下面に沿う平板状に形成されている。当接部21は、全面的に接する状態で、構造体Sに当接配置される。本実施形態の当接部21には、第1実施形態のような挿通孔21a(
図2を参照)は形成されていない。当接部21は、構造体Sに当接する状態で吊ボルトPに取り付けられたナットNの外形よりも大きい切欠22を有する。また、当接部21は、1辺に沿って起立形成されたリブ23を有する。当接部21は、リブ23とは反対側の長辺部分で、屈曲片部24を介して支持部26に接続されている。
【0055】
支持部26は、屈曲片部24を介して、当接部21から吊ボルトPに沿って下方に延びるように形成されている。支持部26は、挟持金具40を支持する部位となっている。支持部26には、貫通孔26aが形成されており、この貫通孔26aに第三連結ボルト45の軸部が挿通される。また、支持部26は、貫通孔26aの周囲を取り巻くように溝状に形成されたワイヤー収容部25を有する。このワイヤー収容部25には、ワイヤー部材10の第一環状部101の一部が収容される。ワイヤー収容部25は、一種のリブとしても機能し、支持部26を強度アップさせる役割も果たす。
【0056】
また、支持部26の下端部から、挟持金具40側に向かって突出するように支持屈曲片28が突出形成されている。この支持屈曲片28は、支持部26に連結される挟持金具40を下方から支持する。さらに、支持部26における吊ボルトP側の上下に沿う一辺には、挟持金具40とは反対側に向かうように傾斜する案内片29が設けられている。この案内片29は、吊ボルトPに対して第一取付部材2を取り付ける際にベース金具20と挟持金具40とを拡開しやすくすることによってその取り付けを容易化する。
【0057】
挟持金具40は、第1実施形態における第一ブレース挟持金具50及び第二ブレース挟持金具60と同様の構造を備えている。挟持金具40は、本体部41と湾曲部42とリブ43とを有している。本体部41は、ベース金具20の支持部26に重ね合わされて固定される部位となっている。本体部41には、貫通孔41aが形成されており、この貫通孔41aに第三連結ボルト45の軸部が挿通される。貫通孔41aの周囲には、ベース金具20とは反対側に突出する環状突起41Bが形成されている。
【0058】
湾曲部42は、本体部41から連続して設けられており、吊ボルトPの外面に沿うように湾曲している。湾曲部42の内面には、複数の係止突起42Aが突出形成されている。湾曲部42は、ベース金具20と挟持金具40とが固定された状態でベース金具20の支持部26と対向するように配置され、当該対向部位で吊ボルトPを挟み込む。このとき、係止突起42Aは、吊ボルトPのネジ溝に係止する。リブ43は、挟持金具40の幅方向両側に分かれて、それぞれ本体部41と湾曲部42とに亘って起立形成されている。
【0059】
ベース金具20と挟持金具40とは、第三連結ボルト45によって連結及び固定される。第三連結ボルト45の軸部を、挟持金具40の本体部41の貫通孔41aとベース金具20の支持部26の貫通孔26aとに挿通させ、その裏側で別途設けられる締結ナット(図示せず)に締結することで、ベース金具20と挟持金具40とが連結及び固定される。このとき、第三連結ボルト45の軸部は、ベース金具20の支持部26のワイヤー収容部25に収容されるワイヤー部材10の第一環状部101に挿通された状態となる。本実施形態では、第三連結ボルト45が「連結ボルト」に相当し、第一環状部101が「環状部」に相当する。
【0060】
第三連結ボルト45には、ワッシャー46とバネ47とが頭部側から記載の順に外装されている。このような構成とすることで、第三連結ボルト45の緩締状態で、圧縮状態のバネ47の弾性復元力で挟持金具40をベース金具20側に付勢することができる。これにより、ベース金具20と挟持金具30との間に吊ボルトPを仮固定する(吊ボルトPに対して第一取付部材2を仮固定する)ことができる。なお、最終の固定状態において、バネ47は、圧縮状態で、挟持金具40の本体部41に形成された環状突起41Bの内部空間に配置される。
【0061】
第二取付部材7を構成する第二ベース金具80は、吊ボルトPに沿って配置される。本実施形態では、第二ベース金具80が「第二支持部」に相当する。第二ベース金具80は、支持本体部81と支持屈曲片82と案内片83とを有している。支持本体部81は、第二挟持金具90を支持する部位となっている。支持本体部81には、貫通孔81aが形成されており、この貫通孔81aに第四連結ボルト95の軸部が挿通される。また、支持本体部81は、貫通孔81aの周囲を取り巻くように溝状に形成されたワイヤー収容部85を有する。このワイヤー収容部85には、ワイヤー部材10の第二環状部102の一部が収容される。ワイヤー収容部85は、一種のリブとしても機能し、支持本体部81を強度アップさせる役割も果たす。
【0062】
支持屈曲片82は、支持本体部81の上端部及び下端部から、第二挟持金具90側に向かってそれぞれ突出するように屈曲形成されている。この支持屈曲片82は、支持本体部81に連結される第二挟持金具90を上下両側から支持する。案内片83は、支持部26における吊ボルトP側の上下に沿う一辺には、第二挟持金具90とは反対側に向かって傾斜するように設けられている。この案内片83は、吊ボルトPに対して第二取付部材7を取り付ける際に第二ベース金具80と第二挟持金具90とを拡開しやすくすることによってその取り付けを容易化する。
【0063】
第二挟持金具90は、第二ベース金具80との間に吊ボルトPを挟み込む。本実施形態では、第二挟持金具90が「第二挟持部」に相当する。第二挟持金具90は、第一取付部材2を構成する挟持金具40と同様の構造を備えている。第二挟持金具90は、本体部91と湾曲部92とリブ93とを有している。本体部91は、第二ベース金具80の支持本体部81に重ね合わされて固定される部位となっている。本体部91には、貫通孔91aが形成されており、この貫通孔91aに第四連結ボルト95の軸部が挿通される。貫通孔91aの周囲には、第二ベース金具80とは反対側に突出する環状突起91Bが形成されている。
【0064】
湾曲部92は、本体部91から連続して設けられており、吊ボルトPの外面に沿うように湾曲している。湾曲部92の内面には、複数の係止突起92Aが突出形成されている。湾曲部92は、第二ベース金具80と第二挟持金具90とが固定された状態で第二ベース金具80の支持本体部81と対向するように配置され、当該対向部位で吊ボルトPを挟み込む。このとき、係止突起92Aは、吊ボルトPのネジ溝に係止する。リブ93は、第二挟持金具90の幅方向両側に分かれて、それぞれ本体部91と湾曲部92とに亘って起立形成されている。
【0065】
第二ベース金具80と第二挟持金具90とは、第四連結ボルト95によって連結及び固定される。第四連結ボルト95の軸部を、第二挟持金具90の本体部91の貫通孔91aと第二ベース金具80の支持本体部81の貫通孔81aとに挿通させ、その裏側で別途設けられる締結ナット(図示せず)に締結することで、第二ベース金具80と第二挟持金具90とが連結及び固定される。このとき、第四連結ボルト95の軸部は、第二ベース金具80の支持本体部81のワイヤー収容部85に収容されるワイヤー部材10の第二環状部102に挿通された状態となる。
【0066】
第四連結ボルト95には、ワッシャー96とバネ97とが頭部側から記載の順に外装されている。このような構成とすることで、第四連結ボルト95の緩締状態で、圧縮状態のバネ97の弾性復元力で第二挟持金具90を第二ベース金具80側に付勢することができる。これにより、第二ベース金具80と第二挟持金具90との間に吊ボルトPを仮固定する(吊ボルトPに対して第二取付部材7を仮固定する)ことができる。なお、最終の固定状態において、バネ97は、圧縮状態で、第二挟持金具90の本体部91に形成された環状突起91Bの内部空間に配置される。
【0067】
本実施形態のワイヤー部材10は、第一環状部101と、第二環状部102と、これらを連結する連結部103とを有している。ワイヤー部材10は、1本のワイヤーと2つの小円筒状の結束具106とを用いて形成されている。ワイヤーに2つの結束具106を通した状態で当該ワイヤーの両端部をループさせて対応する結束具106に挿入し、それぞれの結束具106を圧着することにより、第一環状部101と第二環状部102とが連結部103で接続された構造となっている。
【0068】
第一環状部101は、第一取付部材2に取り付けられる。このとき、第一環状部101は、ベース金具20の支持部26に形成されたワイヤー収容部25に収容され、その内側を第三連結ボルト45の軸部が挿通する状態で、ベース金具20と挟持金具40との間に取り付けられる。
【0069】
第二環状部102は、第二取付部材7に取り付けられる。このとき、第二環状部102は、第二ベース金具80の支持本体部81に形成されたワイヤー収容部85に収容され、その内側を第四連結ボルト95の軸部が挿通する状態で、第二ベース金具80と第二挟持金具90との間に取り付けられる。
【0070】
本実施形態の落下抑止具1でも、構造体Sに当接部21を当接させ、ベース金具20の支持部26と挟持金具40との間に吊ボルトPを挟み込むだけで、吊ボルトPに第一取付部材2を容易に固定することができる。また、第一取付部材2よりも下方でも同様に、第二ベース金具80と第二挟持金具90との間に吊ボルトPを挟み込むだけで、吊ボルトPに第二取付部材7を容易に固定することができる。よって、施工性を向上させることができる。これらの固定のための第三連結ボルト45及び第四連結ボルト95は、吊ボルトPに対して直交する方向に締結されるので、例えば電動工具を用いて締結作業を行うことができる。よって、この点からも、施工性を大きく向上させることができる。
【0071】
また、構造体Sに当接部21を当接させつつ支持部26と挟持金具40との間に吊ボルトPを挟み込むことで、構造体Sと第一取付部材2とを一体の剛体として働かせることができる。これにより、大きな振動が作用した場合に仮に吊ボルトPが破断するにしても、その破断位置をより下方とすることができる。
【0072】
このため、仮に吊ボルトPが破断した場合でも、吊ボルトPにおける構造体Sの直下の位置と吊設機器Eの取付部位Eaよりも下方の位置とに亘って設けられる落下抑止具1の通常の機能により、吊設機器Eが落下してしまうのを抑止することができる。
【0073】
さらに、本実施形態の落下抑止具1では、第三連結ボルト45が第一環状部101に挿通された状態でベース金具20と挟持金具40とを連結し、第四連結ボルト95が第二環状部102に挿通された状態で第二ベース金具80と第二挟持金具90とを連結している。このような構成とすることで、ワイヤー部材10を構成するワイヤーを通すための孔部を第一取付部材2や第二取付部材7に特別に設けることなく、第一取付部材2及び第二取付部材7とワイヤー部材10とを連結することができる。
【0074】
〔第3実施形態〕
落下抑止具の第3実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の落下抑止具1は、その具体的構造とそれに伴う落下抑止構造とが、第1実施形態及び第2実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の落下抑止具1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0075】
図8に示すように、本実施形態の落下抑止具1は、吊ボルトPにおける構造体S付近に設置される第一ユニット1Aと、吊ボルトPにおける吊設機器E付近に設置される第二ユニット1Bとを備えている。第一ユニット1A及び第二ユニット1Bは、吊ボルトPとそれに交差する2本のブレースボルトQとを連結するコーナー金具Cとは独立して設けられている。
【0076】
第一ユニット1Aは、吊ボルトPにおける構造体Sの直下の位置と、上側のコーナー金具Cと下側のコーナー金具Cとの間の位置とに亘って設けられる。第一ユニット1Aは、第一取付部材2と、第二取付部材7と、これらを連結するワイヤー部材10とを備えている。本実施形態では、ワイヤー部材10が「第一ワイヤー部材」に相当する。第一ユニット1Aとしては、第2実施形態の落下抑止具1と同様の構造のものを用いることができる。
【0077】
第二ユニット1Bは、第一ユニット1Aよりも下方において、吊ボルトPにおける下側のコーナー金具Cよりも上方の位置と吊設機器Eの取付部位Eaとに亘って設けられる。第二ユニット1Bは、第三取付部材13と、第四取付部材14と、これらを連結するワイヤー部材15とを備えている。本実施形態では、ワイヤー部材15が「第二ワイヤー部材」に相当する。
図9に示すように、第三取付部材13としては、第2実施形態の落下抑止具1における第二取付部材7(第二ベース金具80、第二挟持金具90、及び第四連結ボルト95を備える;
図6を参照)と同様の構造のものを用いることができる。また、第四取付部材14としては、第1実施形態の落下抑止具1における第二取付部材7(機器取付金具70;
図2を参照)と同様の構造のものを用いることができる。
【0078】
第1実施形態や第2実施形態のように、構造体Sの付近と吊設機器Eの付近とに亘って単一の落下抑止具1を取り付ける場合には、構造体Sからの吊設機器Eの吊り高さに合わせてワイヤー部材10の長さを調整する必要がある。これに対して、本実施形態では、落下抑止具1を構成する第一ユニット1Aと第二ユニット1Bとを、吊ボルトPに設けられる上下2つのコーナー金具Cに対して、それぞれ独立に取り付けることができる。このため、ワイヤー部材10,15の長さ調整が不要となる。よって、本実施形態の落下抑止具1を用いることで、この点からも施工性を向上させることができる。
【0079】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態で説明した第二取付部材7の具体的構造は、適宜入れ替えても良い。例えば、第1実施形態の落下抑止具1において、第二取付部材7として第2実施形態におけるものと同様の構造のものを用いても良い。また、第2実施形態の落下抑止具1において、第二取付部材7として第1実施形態におけるものと同様の構造のものを用いても良い。同趣旨で、第3実施形態の落下抑止具1の第二ユニット1Bにおいて、第四取付部材14として第2実施形態における第二取付部材7と同様の構造のものを用いても良い。
【0080】
(2)上記の各実施形態で説明したワイヤー部材10による第一取付部材2及び第二取付部材7との連結構造は、適宜入れ替えても良い。例えば、第1実施形態の落下抑止具1において、ワイヤー部材10に第2実施形態と同様の第一環状部101を設け、当該第一環状部101に第一連結ボルト55の軸部を挿通させるようにして第一取付部材2に連結させても良い。また、第2実施形態の落下抑止具1において、ベース金具20や第二ベース金具80に挿通孔を形成し、それらにワイヤーを通して全体をループ状に連結しても良い。
【0081】
(3)上記の各実施形態では、落下抑止具1を、コーナー金具Cやクロス金具Xを用いた吊設機器Eの振止構造と併設する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、単に吊ボルトPで吊設機器Eが吊り下げ支持されただけの吊下支持構造に、落下抑止具1を適用しても良い。そのような場合には、単独での使用に適した、第2実施形態の落下抑止具1を好適に用いることができる。
【0082】
(4)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 落下抑止具
1A 第一ユニット
1B 第二ユニット
2 第一取付部材
7 第二取付部材
10 ワイヤー部材(第一ワイヤー部材)
13 第三取付部材
14 第四取付部材
15 ワイヤー部材(第二ワイヤー部材)
21 当接部
26 支持部
30 挟持金具(挟持部)
40 挟持金具(挟持部)
45 第三連結ボルト(連結ボルト)
50 第一ブレース挟持金具(第一ブレース挟持部)
55 第一連結ボルト(連結ボルト)
60 第二ブレース挟持金具(第二ブレース挟持部)
70 機器取付金具(機器取付部)
80 第二ベース金具(第二支持部)
90 第二挟持金具(第二挟持部)
95 第四連結ボルト
101 第一環状部(環状部)
S 構造体
N ナット
E 吊設機器
Ea 取付部位
P 吊ボルト
Q ブレースボルト
Q1 第一ブレースボルト
Q2 第二ブレースボルト