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特開2022-164037ネットワークに設定する設定帯域の決定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164037
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ネットワークに設定する設定帯域の決定装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/42 20220101AFI20221020BHJP
   H04L 41/40 20220101ALI20221020BHJP
   H04L 47/52 20220101ALI20221020BHJP
【FI】
H04L12/717
H04L12/70 D
H04L12/873
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069250
(22)【出願日】2021-04-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「超並列型光ネットワーク基盤技術の研究開発 副題:大規模データを省電力・オープン・伸縮自在に収容する超並列処理光技術」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 昇
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA01
5K030LA03
5K030LB07
5K030LC01
5K030LE03
(57)【要約】
【課題】所定処理を複数のコンピュータで分散して行う際の処理時間を短縮するための技術を提供する。
【解決手段】決定装置は、未完了の第1送信タスクを判定する第1判定手段と、第1送信タスクそれぞれについて、残りデータ量RVと、残り期間RTと、に基づき必要帯域RBWを判定する第2判定手段と、第1送信タスクそれぞれに割り当てる設定帯域SBWを決定する決定処理を行う決定手段と、を備え、決定手段は、第1送信タスクから優先度の降順で処理対象の第2送信タスクを選択し、第2送信タスクの送信元コンピュータから送信先コンピュータに至る、第2送信タスクの必要帯域RBW以上の帯域ABWのパスをネットワークに設定可能であるか否かを判定し、設定可能である場合、帯域ABWを第2送信タスクの設定帯域SBWに決定し、設定可能ではない場合、ネットワークに設定可能な最大帯域を第2送信タスクの設定帯域SBWに決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定処理を複数のジョブに分割し、ネットワークに接続する複数のコンピュータそれぞれに前記複数のジョブの各ジョブを割り当てるシステムにおいて、前記複数のコンピュータの内の割り当てられたジョブを実行した送信元コンピュータが、当該ジョブの結果として生じた結果データを、当該結果データを使用する送信先コンピュータに送信するために前記ネットワークに設定する、前記送信元コンピュータから前記送信先コンピュータに至るパスの設定帯域を決定する決定装置であって、
未完了の第1送信タスクの第1タスク情報を判定する第1判定手段であって、前記第1タスク情報それぞれは、結果データの残りデータ量RVと、当該結果データの送信を完了させるまでの残り期間RTと、当該結果データの送信元コンピュータ及び送信先コンピュータと、を示す、前記第1判定手段と、
前記第1送信タスクそれぞれについて、前記残りデータ量RVと、前記残り期間RTと、に基づき必要帯域RBWを判定する第2判定手段と、
期間Tの割当期間において前記第1送信タスクそれぞれに割り当てる設定帯域SBWを決定し、前記第1送信タスクそれぞれの前記残りデータ量RV及び前記残り期間RTを更新する決定処理を行う決定手段と、
を備え、
前記決定手段は、第1割当期間に対する前記決定処理において、前記第1送信タスクから優先度の降順で処理対象の第2送信タスクを選択し、前記第2送信タスクの前記送信元コンピュータから前記送信先コンピュータに至る、前記第2送信タスクの前記必要帯域RBW以上の帯域ABWのパスを前記ネットワークに設定可能であるか否かを判定し、設定可能である場合、前記帯域ABWを前記第2送信タスクの前記設定帯域SBWに決定し、設定可能ではない場合、前記ネットワークに設定可能な最大帯域を前記第2送信タスクの前記設定帯域SBWに決定する、決定装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記第1送信タスクそれぞれについて、前記送信元コンピュータと、前記送信先コンピュータと、前記決定した前記設定帯域SBWと、を前記ネットワークの制御装置に通知する、請求項1に記載の決定装置。
【請求項3】
前記ネットワークに設定可能な最大帯域は0を含む、請求項1又は2に記載の決定装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記残りデータ量RVから前記設定帯域SBWと期間Tの積を減ずることで前記残りデータ量RVを更新し、前記残り期間RTから前記期間Tを減ずることで前記残り期間RTを更新する、請求項1から3のいずれか1項に記載の決定装置。
【請求項5】
前記帯域ABWは、前記必要帯域RBW以上であり、かつ、前記ネットワークにおいて利用可能な1つ以上の帯域の内の最小の帯域である、請求項1から4のいずれか1項に記載の決定装置。
【請求項6】
前記第1送信タスクの優先度は、前記必要帯域RBWが大きい程高い、請求項1から5のいずれか1項に記載の決定装置。
【請求項7】
前記第1送信タスクの優先度は、前記残り期間RTが小さい程高い、請求項1から5のいずれか1項に記載の決定装置。
【請求項8】
前記第2判定手段は、前記残りデータ量RVを前記残り期間RTで除することで前記必要帯域RBWを判定する、請求項1から7のいずれか1項に記載の決定装置。
【請求項9】
前記第1判定手段は、前記複数のジョブのスケジュールを管理する管理装置から収集期間において受信した、新たに生じた第3送信タスクを示す発生情報と、前記結果データの送信が完了した第4送信タスクを示す完了情報と、に基づき前記第1送信タスクを判定し、
前記第2判定手段は、前記第1判定手段が前記第1送信タスクを判定すると、前記第1送信タスクそれぞれについて、前記必要帯域RBWを判定し、
前記決定手段は、前記第2判定手段が前記第1送信タスクそれぞれについて前記必要帯域RBWを判定すると、前記収集期間より時間的に後に開始する前記第1割当期間において前記第1送信タスクそれぞれに割り当てる前記設定帯域SBWを決定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の決定装置。
【請求項10】
前記第1判定手段は、前記第1割当期間より時間的に1つ前の第2割当期間に対する前記決定処理において前記決定手段が前記設定帯域SBWを決定した第5送信タスクから前記完了情報で示された前記第4送信タスクを除いた第6送信タスクと、前記発生情報で示された前記第3送信タスクと、を前記第1送信タスクと判定する、請求項9に記載の決定装置。
【請求項11】
前記第1判定手段は、前記第6送信タスクに前記残り期間RTが0以下のものがあると、当該第6送信タスクの前記残り期間RTを0より大きい値に更新する、請求項10に記載の決定装置。
【請求項12】
前記第1判定手段は、前記第6送信タスクに前記残り期間RTが0以下のものがあると、当該第6送信タスクの前記残り期間RTを前記期間Tに更新する、請求項10に記載の決定装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の決定装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定処理を複数のコンピュータで分散して行う際の処理時間を短縮するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の教師データを繰り返し使用して行う機械学習の処理時間を短縮するため、機械学習の処理を複数のジョブに分割し、複数のジョブを複数のコンピュータで分散処理することが提案されている。分散処理においては、あるコンピュータでのジョブの結果を他のコンピュータが必要とするため、複数のコンピュータは、ネットワークを介して相互に通信可能に構成される。ここで、ネットワークは、例えば、ルータ、スイッチ等で構成される電気ネットワークであり得る。また、ネットワークは、光クロスコネクト等で構成される光ネットワークである得る。さらに、ネットワークは、電気ネットワークと、光ネットワークと、を併用したものであり得る。各コンピュータは、ジョブの結果とし得られたデータ(以下、結果データと表記する。)を、ネットワークを介して送受信する。
【0003】
コンピュータ間における結果データの送受信を効率良く行うため、非特許文献1は、オーケストレータの使用を開示している。非特許文献1によると、オーケストレータは、スケジュール期間毎に結果データの送信に必要な帯域を判定し、判定した帯域に基づき結果データ送信のための設定帯域を決定する。そして、オーケストレータは、次のスケジュール期間の前に、当該次のスケジュール期間のために決定した各結果データ送信のための設定帯域をネットワーク制御装置に通知する。ネットワーク制御装置は、オーケストレータからの通知に従い、次のスケジュール期間においては、オーケストレータが決定した設定帯域がコンピュータ間に設定される様にネットワークを制御している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cen Wang,et,al.,"Analysis of the Optical Data Center Network Slicing Strategy in Support of Machine Learning Applications with Multiple Patterns",iPOP2020,T3-1,2020年9月11日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
あるコンピュータが、他のコンピュータから送信される結果データを必要とするジョブを実行する場合、当該コンピュータは、当該他のコンピュータから当該結果データを取得するまでは当該ジョブを開始できない。この様な結果データの取得が遅くなると、当該コンピュータにおいては、当該結果データの取得を待つだけの状態、つまり、待ち時間が発生する。
【0006】
非特許文献1は、結果データのデータ量のみに基づき設定帯域を決定するものである。したがって、各コンピュータで複数回の待ち時間が生じ、機械学習の処理時間が増大し得る。
【0007】
本発明は、所定処理を複数のコンピュータで分散して行う際の処理時間を短縮するための技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、所定処理を複数のジョブに分割し、ネットワークに接続する複数のコンピュータそれぞれに前記複数のジョブの各ジョブを割り当てるシステムにおいて、前記複数のコンピュータの内の割り当てられたジョブを実行した送信元コンピュータが、当該ジョブの結果として生じた結果データを、当該結果データを使用する送信先コンピュータに送信するために前記ネットワークに設定する、前記送信元コンピュータから前記送信先コンピュータに至るパスの設定帯域を決定する決定装置は、未完了の第1送信タスクの第1タスク情報を判定する第1判定手段であって、前記第1送信タスク情報それぞれは、結果データの残りデータ量RVと、当該結果データの送信を完了させるまでの残り期間RTと、当該結果データの送信元コンピュータ及び送信先コンピュータと、を示す、前記第1判定手段と、前記第1送信タスクそれぞれについて、前記残りデータ量RVと、前記残り期間RTと、に基づき必要帯域RBWを判定する第2判定手段と、期間Tの割当期間において前記第1送信タスクそれぞれに割り当てる設定帯域SBWを決定し、前記第1送信タスクそれぞれの前記残りデータ量RV及び前記残り期間RTを更新する決定処理を行う決定手段と、を備え、前記決定手段は、第1割当期間に対する前記決定処理において、前記第1送信タスクから優先度の降順で処理対象の第2送信タスクを選択し、前記第2送信タスクの前記送信元コンピュータから前記送信先コンピュータに至る、前記第2送信タスクの前記必要帯域RBW以上の帯域ABWのパスを前記ネットワークに設定可能であるか否かを判定し、設定可能である場合、前記帯域ABWを前記第2送信タスクの前記設定帯域SBWに決定し、設定可能ではない場合、前記ネットワークに設定可能な最大帯域を前記第2送信タスクの前記設定帯域SBWに決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、所定処理を複数のコンピュータで分散して行う際の処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるシステムの構成図。
図2】一実施形態による決定装置で行う処理のフローチャート。
図3】一実施形態による決定装置で行う処理のタイムチャート。
図4】一実施形態による未完了送信タスク判定処理のフローチャート。
図5】一実施形態による必要帯域判定処理のフローチャート。
図6】一実施形態による決定処理のフローチャート。
図7】一実施形態による決定装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、所定処理を行うためのシステムの構成図である。所定処理は、例えば、機械学習処理である。しかしながら、所定処理の内容は、機械学習処理とは異なる処理であっても良い。処理システムは、スケジューリング装置1を有する。スケジューリング装置1は、所定処理を複数のジョブに分割し、これらジョブのスケジュール(ジョブスケジュール)を管理し、各ジョブをジョブスケジュールに従い複数のコンピュータ5の何れかに割り当てる管理装置である。なお、複数のコンピュータ5は、ネットワーク4に接続されている。
【0013】
また、スケジューリング装置1は、ジョブスケジュールに基づき、あるコンピュータ5(送信元コンピュータ5)が実行したジョブの結果データを必要とするコンピュータ5(送信先コンピュータ5)を判定する。なお、送信先コンピュータ5は1つとは限らず、複数の場合があり得る。スケジューリング装置1は、1つの送信元コンピュータ5で得られた結果データを1つの送信先コンピュータ5に送信する処理を1つの送信タスクとして管理する。つまり、あるコンピュータ5が、他の4つのコンピュータ5に結果データを送信する必要がある場合、4つの送信タスクが生成される。また、スケジューリング装置1は、各送信タスクの期限をジョブスケジュールに基づき判定する。さらに、スケジューリング装置1は、複数のコンピュータ5からの情報に基づき、結果データの送信が完了した送信タスクを判定する。
【0014】
スケジューリング装置1は、送信すべき結果データが発生し、これにより新たな送信タスクが生じた場合、送信タスクの発生情報を決定装置2に通知する。発生情報は、新たに生じた送信タスクにおいて送信する結果データの送信元コンピュータ5(以下、単に送信元と表記)の識別子と、送信先コンピュータ5(以下、単に送信先と表記)の識別子と、データ量と、当該送信タスクの期限と、を示す情報である。また、スケジューリング装置1は、完了した送信タスクが生じた場合、完了情報を決定装置2に通知する。完了情報は、完了した送信タスクを示す情報である。
【0015】
決定装置2は、スケジューリング装置1から通知される発生情報及び完了情報から現在進行中の送信タスク(未完了送信タスク)を判定する。決定装置2は、未完了送信タスクそれぞれについて、その期限と、送信が完了していない残りのデータ量とに基づき設定帯域SBWを決定し、未完了送信タスクそれぞれについて、送信元、送信先及び決定した設定帯域SBWをネットワーク制御装置3に通知する。ネットワーク制御装置3は、ネットワーク4を制御することにより、未完了送信タスクそれぞれについて、送信元から送信先に至る設定帯域SBWのパスをネットワーク4に設定する。
【0016】
ネットワーク4は、例えば、回線交換型のネットワークであり得る。また、ネットワーク4は、例えば、パケット交換型のネットワークであり得る。さらに、ネットワーク4は、電気信号により情報を搬送する電気ネットワークであり得る。さらに、ネットワーク4は、光信号により情報を搬送する光ネットワークであり得る。例えば、ネットワーク4が回線交換型の電気ネットワークである場合、ネットワーク4は、電気信号のクロスコネクトで構成され得る。例えば、ネットワーク4がパケット交換型の電気ネットワークである場合、ネットワーク4は、ルータやスイッチ等で構成され得る。例えば、ネットワーク4が回線交換型の光ネットワークである場合、ネットワーク4は、光クロスコネクト等で構成され得る。例えば、ネットワーク4がパケット交換型の光ネットワークである場合、ネットワーク4は、光パケット交換機等で構成され得る。
【0017】
なお、ネットワーク4が回線交換型である場合、コンピュータ間に設定される送信元から送信先に至るパスは、所謂、物理的なパスであり、送信元から送信先に設定帯域SBWでデータを伝送するための通信リソースが常に当該送信元及び当該送信先専用に割り当てられる。一方、ネットワーク4がパケット交換型である場合、コンピュータ間に設定される送信元から送信先に至るパスは、所謂、仮想的なパスであり、送信元から送信先のために常に確保される通信リソースはないが、パケットのフロー制御により設定帯域SBWが確保される。
【0018】
なお、ネットワーク4において設定可能(利用可能)な帯域の粒度は、ネットワーク4の種別により異なる。一般的に、ネットワーク4が回線交換型である場合、利用可能な帯域の粒度は、パケット交換型より粗くなる。一例として、ネットワーク4が回線交換型である場合、利用可能な帯域は64kbpsの整数倍、1.5Mの整数倍、或いは、150Mの整数倍などであり得る。以下の説明において、ネットワーク4において利用できる帯域を利用可能帯域と表示する。設定帯域SBWは、1つ以上の利用可能帯域から選択される。なお、ネットワーク4が回線交換型の光ネットワークであり、送信元から送信先に至る波長パスをネットワーク4に設定する場合、当該波長パスで送信する結果データの伝送速度は、ネットワーク4により決定されるものではなく、コンピュータ5が使用する光変調方式により決定されるものとなる。本発明においては、この様な波長パスの利用可能速度を、決定装置2においては無限大として扱う。
【0019】
図2は、決定装置2が実行する、未完了送信タスクへの設定帯域SBWを決定する処理のフローチャートである。なお、図2の処理は、図3の処理期間毎に実行される。具体的には、決定装置2は、図3の収集期間nにおいてスケジューリング装置1から受信する発生情報及び完了情報に基づき処理期間nにおいて図2の処理を実行して、各未完了送信タスクに対する設定帯域SBWを決定する。そして、決定装置2は、処理期間nにおいて決定した各設定帯域SBWが割当期間nにおいて設定される様にネットワーク制御装置3に各設定帯域SBWを通知する。なお、割当期間nの開始タイミングが処理期間nの完了タイミングより時間的に後になるのは、ネットワーク制御装置3によるネットワーク4の構成変更に要する時間を考慮したものである。以下では、処理期間nにおける処理について図2を用いて説明する。
【0020】
まず、決定装置2は、S10において、収集期間nにおいてスケジューリング装置1から通知された発生情報及び完了情報に基づき未完了送信タスク及びそのタスク情報を判定する未完了送信タスク判定処理を行う。未完了送信タスクのタスク情報は、当該未完了送信タスクの送信元、送信先、残り期間RT、及び、残りデータ量RV、を示す情報を含む。なお、決定装置2は、処理期間n-1における処理の結果として、処理期間n-1の終了時点における未完了送信タスクそれぞれのタスク情報を保持している。
【0021】
図4は、未完了送信タスク判定処理のフローチャートである。まず、決定装置2は、S20において、処理期間n-1の終了時点における未完了送信タスクに対して、収集期間nにおいて受信した発生情報で示された送信タスクを、未完了送信タスクとして追加すると共に、追加した未完了送信タスクのタスク情報を生成する。なお、追加する未完了送信タスクの残り期間RTとして、割当期間nの開始タイミングから発生情報で示される当該送信タスクの期限までの期間を決定装置2は設定する。また、追加する未完了送信タスクの残りデータ量RVとして、発生情報で示される当該送信タスクの結果データのデータ量を決定装置2は設定する。さらに、未完了送信タスクの送信元及び送信先として、発生情報で示される送信元及び送信先として示されているコンピュータ5それぞれの識別子を決定装置2は設定する。
【0022】
S21において、決定装置2は、収集期間nにおいて受信した完了情報に基づき、完了した送信タスクを未完了送信タスクから削除する。その後、S22において、決定装置2は、未完了送信タスクの内、RT≦0の未完了送信タスクが存在すると、当該未完了送信タスクのRTを割当期間長に等しい期間Tに変更する。RT≦0で、かつ、S21で完了が通知されていない送信タスクは、スケジューリング装置1から通知された期限までに完了しなかった送信タスクである。S22の処理は、スケジューリング装置1から通知された期限までに完了しなかった送信タスクの残り期間RTを、割当期間nの終了タイミングまで延長する処理に対応する。
【0023】
図2に戻り、未完了送信タスク判定処理により、未完了送信タスクそれぞれのタスク情報を生成すると、決定装置2は、S11で、未完了送信タスクそれぞれに必要な帯域を判定する必要帯域判定処理を行う。図5は、必要帯域判定処理のフローチャートである。S30で、決定装置2は、未完了送信タスクそれぞれについて必要帯域RBWをRV/RTとして求める。つまり、未完了送信タスクの必要帯域RBWは、当該未完了送信タスクの残りデータ量RVを残り期間RTで送信するために必要な帯域である。続いて、決定装置2は、S31で、未完了送信タスクの必要帯域RBWに基づき当該未完了送信タスクの優先度を決定する。具体的には、本実施形態において、決定装置2は、必要帯域RBWが大きい程、優先度を高くする。なお、必要帯域RBWが同じ複数の未完了送信タスクがある場合、これら必要帯域RBWが同じ複数の未完了送信タスクの優先度については任意の方法で決定することができる。一例として、必要帯域RBWが同じ複数の未完了送信タスクがある場合、残り期間RTが小さい程、優先度を高くする構成とすることができる。この優先度は、図2のS12で実行する決定処理を行う順序を定義するものである。
【0024】
図2に戻り、決定装置2は、S12で決定処理を行う。図6は、決定処理のフローチャートである。S40で、決定装置2は、図6の処理を行っていない未完了送信タスクの内、優先度が最も高い未完了送信タスクを処理対象として選択する。そして、決定装置2は、ネットワーク4において利用可能(設定可能)な1つ以上の利用可能帯域の内、処理対象の未完了送信タスクの必要帯域RBW以上である利用可能帯域ABWを判定する。なお、処理対象の未完了送信タスクの必要帯域RBW以上である利用可能帯域ABWが複数ある場合、判定する利用可能帯域ABWはその内の最小のものである。決定装置2は、S41において、処理対象の未完了送信タスクの送信元から送信先に至る判定した利用可能帯域ABWのパスをネットワーク4に設定可能であるか否かを判定する。つまり、決定装置2は、処理対象の未完了送信タスクの送信元から送信先に至る判定した利用可能帯域ABWのパスを設定するための通信リソースがネットワーク4に残っているか否かを判定する。決定装置2は、ネットワーク4の構成情報を保持しており、当該構成情報に基づき利用可能帯域ABWのパスの設定可否を判定する。なお、その際、決定装置2は、処理済みの未完了送信タスクに既に割り当てた設定帯域SBWを考慮する。なお、上述した様に、ネットワーク4が波長パスを設定する場合、決定装置2は、利用可能帯域ABWを無限大として扱うため、割当可能な波長パスがある場合、S41での判定は常にYesとなり、割当可能な波長パスがない場合、S41での判定は常にNoとなる。
【0025】
設定可能であると、決定装置2は、S42で、判定した利用可能帯域ABWを当該処理対象の未完了送信タスクの設定帯域SBWに決定する。その後、決定装置2は、S43で、処理対象の未完了送信タスクの残り期間RTをRT-Tに更新し、残りデータ量RVをRV-SBW×Tに更新する。一方、S41で、設定可能ではないと判定すると、決定装置2は、S45において、設定可能な最大帯域SBW<RBWを、処理対象の未完了送信タスクの設定帯域SBWに決定し、S43で、処理対象の未完了送信タスクの残り期間RT及び残りデータ量RVを更新する。なお、この最大帯域SBWも利用可能帯域の1つである。ここで、S45の処理は、設定可能な最大帯域SBWが0である場合を含む。この場合、当該処理対象の未完了の送信タスクのためのパスは、割当期間nにおいて設定されない。つまり、未完了の送信タスクには、割当期間nにおいてパスが設定されず、よって、結果データの送信が行われないものも生じ得る。S43での処理後、決定装置2は、S44で、未処理の未完了送信タスクがあるかを判定し、未処理の未完了送信タスクがなくなるまで、S40からの処理を繰り返す。
【0026】
以上、本実施形態では、各処理期間での処理において、送信タスクの残り期間RTを管理し、残り期間RTに基づき期限までに送信タスクを完了させるために必要な必要帯域RBWを判定する。そして、必要帯域RBWが高い程、優先的に帯域割当を行う。この構成により、送信タスクの遅延による待ち時間の発生を抑えて所定処理の処理時間が長くなることを抑えることができる。また、残り期間RTが0になっても未完了である送信タスク(期限超え送信タスク)については、処理期間RTをTに延長して帯域を割り当てる。通常生じ得る残り期間RTの初期値(送信タスク発生時のRTの値)と比較して期間Tが短い場合、期限超え送信タスクの必要帯域RBWが高くなる。つまり、期限超え送信タスクの優先度が高くなり、期限超え送信タスクには優先して帯域を割り当てることができる。なお、本実施形態では、図4のS22で、期限超え送信タスクの残り期間RTを割当期間に等しいTに設定していたが、割当期間より短く、かつ、0より大きい所定期間を残り期間RTに設定する構成とすることもできる。
【0027】
さらに、本実施形態では、必要帯域RBWが大きい程、優先度を高くしていたが、残り期間RTが短い程、優先度を高くする構成とすることもできる。この場合、残り期間RTが同じ複数の未完了送信タスクがある場合、これら残り期間RTが同じ複数の未完了送信タスクの優先度については任意の方法で決定することができる。一例として、残り期間RTが同じ複数の未完了送信タスクがある場合、残りデータ量RVが大きい程、優先度を高くする構成とすることができる。
【0028】
なお、例えば、ネットワーク4が光ネットワークと、電気ネットワークとを併用したものである場合、まず、光ネットワークに設定するパスの設定帯域を決定し、光ネットワークでは必要帯域RBW以上のパスを設定できない場合に電気ネットワークに対して設定するパスの設定帯域を決定する構成とすることもできる。
【0029】
図7は、決定装置2のブロック図である。未完了送信タスク判定部20は、未完了送信タスク判定処理を実行する。具体的には、処理期間n-1での処理により決定部22から出力される未完了送信タスクのタスク情報と、収集期間nにおいてスケジューリング装置1から受信する発生情報及び完了情報と、に基づき、未完了送信タスク判定部20は処理期間nにおける未完了送信タスクを判定し、処理期間nにおける未完了送信タスクのタスク情報を必要帯域判定部21に出力する。未完了送信タスク判定部20が必要帯域判定部21に出力するタスク情報は、送信元と、送信先と、残りデータ量RVと、残り期間RTと、を示す情報を含む。なお、上述した様に、判定した未完了送信タスクにRT≦0のものが存在すると、未完了送信タスク判定部20は、当該未完了送信タスクのRTを0より大きい所定値に更新する。
【0030】
必要帯域判定部21は、必要帯域判定処理を実行して必要帯域RBW及び優先度を求めて、処理期間nにおける未完了送信タスクのタスク情報を決定部22に出力する。必要帯域判定部21が決定部22に出力するタスク情報は、送信元と、送信先と、残りデータ量RVと、残り期間RTと、必要帯域RBWと、優先度と、を示す情報を含む。
【0031】
決定部22は、決定処理を実行して設定帯域SBWを求め、処理期間nにおける未完了送信タスクそれぞれについて、送信元と、送信先と、設定帯域SBWと、を示す情報を含む設定情報をネットワーク制御装置3に送信する。なお、設定帯域SBWが0、つまり、パスの設定が行われない送信タスクについての設定情報をネットワーク制御装置3に送信する必要はない。また、決定部22は、処理期間nにおける未完了送信タスクそれぞれについて、残りデータ量RVと、残り期間RTとを更新し、更新後のタスク情報を未完了送信タスク判定部20に出力する。
【0032】
また、本発明による決定装置2は、1つ以上のプロセッサを有する装置・コンピュータの当該1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置・コンピュータを上記決定装置2として動作・機能させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0033】
上記構成により、所定処理を複数のコンピュータで分散して行う際の処理時間を短縮することができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
20:未完了送信タスク判定部、21:必要帯域判定部、22:決定部
図1
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図7