(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164039
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電動作業機器及び電動作業機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20221020BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20221020BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20221020BHJP
H02K 5/04 20060101ALI20221020BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20221020BHJP
B23D 45/16 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B25F5/02
H02K5/24 A
H02K5/04
H02K5/20
B23D45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069252
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳宜
(72)【発明者】
【氏名】木村 佳弘
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
5H605
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040DD01
3C040LL05
3C064AA06
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA07
3C064BA08
3C064BA33
3C064BB01
3C064BB47
3C064BB48
3C064BB72
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA08
3C064CA09
3C064CA10
3C064CA23
3C064CA29
3C064CA54
3C064CA55
3C064CA58
3C064CA60
3C064CA61
3C064CB05
3C064CB06
3C064CB11
3C064CB32
3C064CB43
3C064CB52
3C064CB63
3C064CB64
3C064CB73
3C064CB74
3C064CB75
3C064CB77
3C064CB85
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA28
3C064DA65
5H605AA01
5H605AA04
5H605AA05
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC06
5H605CC08
5H605DD07
5H605DD11
5H605FF06
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】ステータの共振に起因する騒音の発生を、より低コストで抑制する。
【解決手段】マルノコは、筒部6C及び底部6Mを有しているモータハウジング6と、第1接触面58Fを有するステータ20と、ステータ20の内方で回転するロータと、を有するブラシレスモータと、樹脂製のバッフルプレート25と、出力軸31と、を備えている。ステータ20は、第1接触面58Fと向かい合うリング状の第2接触面50Sを有する筒状のステータコア50と、ステータコア50に対して巻かれる複数のコイル56と、を有しており、底部6Mに第1接触面58Fが接触する状態で、モータハウジング6に保持されている。バッフルプレート25の凸部25Sは、ステータコア50の第2接触面50Sに対し、全周にわたって接触し、モータハウジング6に、3本以上のネジ68で固定される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部及び底部を有しているモータハウジングと、
第1接触面を有するステータと、前記ステータの内方で回転するロータと、を有するブラシレスモータと、
樹脂製の筒状部材と、
出力部と、
を備えており、
前記ステータは、前記第1接触面と向かい合うリング状の第2接触面を有する筒状のステータコアと、前記ステータコアに対して巻かれる複数のコイルと、を有しており、前記モータハウジングの前記底部に前記第1接触面が接触する状態で、前記モータハウジングに保持されており、
前記ロータは、前記モータハウジングに回転可能に支持されるロータ軸と、前記ロータ軸に固定されるロータコアと、前記ロータコアに支持される永久磁石と、を有しており、
前記筒状部材は、前記ステータコアの前記第2接触面に対し、全周にわたって接触し、前記モータハウジングに、3本以上のネジで固定される
ことを特徴とする電動作業機器。
【請求項2】
前記ネジは、電動作業機器の通常の姿勢における下部以外に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動作業機器。
【請求項3】
前記筒状部材は、複数の凸部を有しており、各前記凸部において、前記ステータコアの前記第2接触面に接触する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動作業機器。
【請求項4】
前記筒状部材は、各前記ネジを通すネジ孔部を有しており、各前記ネジ孔部の一部において、前記ステータコアの前記第2接触面に接触する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項5】
前記底部は、通気孔を有している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項6】
前記底部は、前記ロータ軸を支持する軸受を保持している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項7】
前記ステータは、各前記コイルに接続される端子ユニットを有しており、
前記端子ユニットが、前記第1接触面を有している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項8】
前記ステータコアの外径は、前記ステータコアの軸長以上である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項9】
前記ロータにより回転するファンが設けられており、
前記筒状部材は、前記ファンによる風を整流するバッフルプレートである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項10】
前記ステータコアは、リング状の鋼板を積層して形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項11】
前記ロータコアは、リング状の鋼板を積層して形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項10の何れかに記載の電動作業機器。
【請求項12】
ブラシレスモータにおけるステータが、第1の数におけるネジにより固定されている第1の電動作業機器と、種類において異なる第2の電動作業機器を製造する方法において、
前記ステータを、第1の数とは異なる第2の数におけるネジにより固定する
ことを特徴とする電動作業機器の製造方法。
【請求項13】
前記ステータは、筒状のステータコアを有している
ことを特徴とする請求項12に記載の電動作業機器の製造方法。
【請求項14】
前記ステータコアは、リング状の鋼板を積層して形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の電動作業機器の製造方法。
【請求項15】
前記ステータは、押さえ部材を介して固定されている
ことを特徴とする請求項12ないし請求項14の何れかに記載の電動作業機器の製造方法。
【請求項16】
前記ステータは、筒状であり、
前記ステータの径方向内方に、ロータが設けられており、
前記ロータにより回転するファンが設けられており、
前記押さえ部材は、前記ファンによる風を整流するバッフルプレートである
ことを特徴とする請求項15に記載の電動作業機器の製造方法。
【請求項17】
ステータと、前記ステータの内方に配置されたロータとを有するブラシレスモータと、
前記ステータを収容する筒部と、底部とを有するモータハウジングと、
3本以上のネジと、
を備えており、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに支持されるインシュレータと、前記インシュレータにより支持されるコイルと、を有しており、
前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコアに支持される永久磁石とを有しており、
前記ロータの最大回転数は、14600RPM以上であり、
各前記ネジは、前記ステータを、前記モータハウジングに固定する
ことを特徴とする電動作業機器。
【請求項18】
前記最大回転数は、作業時と非作業時とにおいて同一である
ことを特徴とする請求項17に記載の電動作業機器。
【請求項19】
前記最大回転数は、互いに相違する、作業時最大回転数と非作業時最大回転数とを有しており、
前記作業時最大回転数は、前記非作業時最大回転数より大きい
ことを特徴とする請求項17に記載の電動作業機器。
【請求項20】
ステータと、前記ステータの内方に配置されたロータとを有するブラシレスモータと、
前記ステータを収容する筒部と、底部とを有するモータハウジングと、
3本以上のネジと、
を備えており、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに支持されるインシュレータと、前記インシュレータにより支持されるコイルと、を有しており、
前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコアに支持される永久磁石とを有しており、
前記ロータの最大回転数は、互いに相違し又は一致する、作業時最大回転数Rと非作業時最大回転数(R-r)とを有しており、
前記作業時最大回転数Rと、前記非作業時最大回転数(R-r)とが、次の式(1)で示される関係を有しており、
(r/R)≦0.12 ・・・(1)
各前記ネジは、前記ステータを、前記モータハウジングに固定する
ことを特徴とする電動作業機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルノコ、グラインダ、ハンマドリル、大型のインパクトレンチ等の電動工具、芝刈機等の園芸工具、並びにエア工具用空気圧縮機、及び運搬車等の電動作業機器、並びに電動作業機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-185652号公報(特許文献1)に記載されるように、駆動源としてブラシレスモータを用いたハンマドリルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンマドリル等の電動作業機器において、ステータの共振に起因する騒音の発生を、より低コストで抑制可能な技術が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、電動作業機器を開示する。この電動作業機器は、筒部及び底部を有しているモータハウジングを有していても良い。電動作業機器は、第1接触面を有するステータと、前記ステータの内方で回転するロータと、を有するブラシレスモータを有していても良い。マルノコ,グラインダは、樹脂製の筒状部材を有していても良い。マルノコ,グラインダは、出力部を有していても良い。前記ステータは、前記第1接触面と向かい合うリング状の第2接触面を有する筒状のステータコアを有していても良い。前記ステータは、前記ステータコアに対して巻かれる複数のコイルを有していても良い。前記ステータは、前記モータハウジングの前記底部に前記第1接触面が接触する状態で、前記モータハウジングに保持されていても良い。前記ロータは、前記モータハウジングに回転可能に支持されるロータ軸を有していても良い。前記ロータは、前記ロータ軸に固定されるロータコアを有していても良い。前記ロータは、前記ロータコアに支持される永久磁石を有していても良い。前記筒状部材は、前記ステータコアの前記第2接触面に対し、全周にわたって接触しても良い。前記筒状部材は、前記モータハウジングに、3本以上のネジで固定されても良い。
【0006】
又、本明細書は、電動作業機器の製造方法を開示する。この電動作業機器の製造方法は、ブラシレスモータにおけるステータが、第1の数におけるネジにより固定されている第1の電動作業機器と、種類において異なる第2の電動作業機器を製造する方法であっても良い。電動作業機器の製造方法では、前記ステータを、第1の数とは異なる第2の数におけるネジにより固定しても良い。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電動作業機器、及び電動作業機器の製造方法によれば、ステータの共振に起因する騒音の発生を、より低コストで抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1形態に係るマルノコの左側面図である。
【
図2】
図1におけるロータ軸及び出力軸の各中心位置(出力軸に係るギヤの左右方向中央を通る仮想面を境界とする)における縦断面図である。
【
図3】
図1におけるステータとバッフルプレートとが付いたモータハウジングの右側面図である。
【
図5】
図3におけるネジ、バッフルプレート、第1インシュレータ及びステータコアの分解斜視図である。
【
図7】バッフルプレート取付用のネジが5本である場合における、ステータとバッフルプレートとが付いたモータハウジングの右側面図である。
【
図9】
図7におけるネジ、バッフルプレート、第1インシュレータ及びステータコアの分解斜視図である。
【
図11】本開示の第2形態に係るグラインダの左側面図である。
【
図14】
図12におけるブラシレスモータ、バッフルプレート及びファンの斜視図である。
【
図15】
図12におけるブラシレスモータ、モータハウジング、ネジ及びバッフルプレートの一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係るマルノコ,グラインダは、筒部及び底部を有しているモータハウジングを有していても良い。マルノコ,グラインダは、第1接触面を有するステータと、ステータの内方で回転するロータと、を有するブラシレスモータを有していても良い。マルノコ,グラインダは、樹脂製の筒状部材を有していても良い。マルノコ,グラインダは、出力部を有していても良い。ステータは、第1接触面と向かい合うリング状の第2接触面を有する筒状のステータコアを有していても良い。ステータは、ステータコアに対して巻かれる複数のコイルを有していても良い。ステータは、モータハウジングの底部に第1接触面が接触する状態で、モータハウジングに保持されていても良い。ロータは、モータハウジングに回転可能に支持されるロータ軸を有していても良い。ロータは、ロータ軸に固定されるロータコアを有していても良い。ロータは、ロータコアに支持される永久磁石を有していても良い。筒状部材は、ステータコアの第2接触面に対し、全周にわたって接触しても良い。筒状部材は、モータハウジングに、3本以上のネジで固定されても良い。この場合、ステータの共振に起因する騒音の発生が、より低コストで抑制される。
ネジは、マルノコ,グラインダの通常の姿勢における下部以外に配置されていても良い。この場合、マルノコ,グラインダの下部がコンパクトになる。
筒状部材は、複数の凸部を有していても良い。筒状部材は、各凸部において、ステータコアの第2接触面に接触しても良い。この場合、ステータにおけるステータコア以外の部品及び部分が凸部の間に配置されることで、ステータがよりコンパクトになる。
筒状部材は、各ネジを通すネジ孔部を有していても良い。筒状部材は、各ネジ孔部の一部において、ステータコアの第2接触面に接触していても良い。この場合、ネジ孔部が、ネジ止めとステータコア押さえの兼用となり、筒状部材ひいてはグラインダが、よりコンパクトになる。
底部は、通気孔を有していても良い。この場合、ブラシレスモータの冷却構造が、より効率良く設けられる。
底部は、ロータ軸を支持する軸受を保持していても良い。この場合、マルノコ,グラインダが、よりコンパクトになる。
ステータは、各コイルに接続される端子ユニットを有していても良い。端子ユニットが、第1接触面を有していても良い。この場合、コイルの接続機構が、より効率良く設けられる。
ステータコアの外径は、ステータコアの軸長以上であっても良い。この場合、騒音の発生が、より効果的に抑制される。
マルノコ,グラインダに、ロータにより回転するファンが設けられていても良い。筒状部材は、ファンによる風を整流するバッフルプレートであっても良い。この場合、ファン及びステータの押さえ部材が、より効率良く設けられる。
ステータコアは、リング状の鋼板を積層して形成されていても良い。この場合、ステータコアにおいて重ねられる鋼板の数が調節可能であり、ステータコアが、より効率良く設けられる。
ロータコアは、リング状の鋼板を積層して形成されていても良い。この場合、ロータコアにおいて重ねられる鋼板の数が調節可能であり、ロータコアが、より効率良く設けられる。
【0010】
本開示に係るマルノコ,グラインダの製造方法は、ブラシレスモータにおけるステータが、第1の数におけるネジにより固定されている第1のマルノコ,グラインダと、種類において異なる第2のマルノコ,グラインダを製造する方法であっても良い。マルノコ,グラインダの製造方法は、第1のマルノコ,グラインダと同じステータを、第1の数とは異なる第2の数におけるネジにより固定しても良い。この場合、ステータの共振に起因する騒音の発生が、より低コストで抑制される。
ステータは、筒状のステータコアを有していても良い。この場合、ステータが、より効率良く設けられる。
ステータコアは、リング状の鋼板を積層して形成されていても良い。この場合、ステータコアにおいて重ねられる鋼板の数が調節可能であり、ステータコアが、より効率良く設けられる。
ステータは、押さえ部材を介して固定されていても良い。この場合、ステータが、より均一に押さえられる。
ステータは、筒状であっても良い。ステータの径方向内方に、ロータが設けられていても良い。マルノコ,グラインダに、ロータにより回転するファンが設けられていても良い。押さえ部材は、ファンによる風を整流するバッフルプレートであっても良い。この場合、ロータ、ファン及びステータの押さえ部材が、より効率良く設けられる。
【0011】
本開示に係るマルノコ,グラインダは、ステータと、ステータの内方に配置されたロータとを有するブラシレスモータと、ステータを収容する筒部と、底部とを有するモータハウジングと、を備えていても良い。マルノコ,グラインダは、3本以上のネジを備えていても良い。ステータは、ステータコアと、ステータコアに支持されるインシュレータと、インシュレータにより支持されるコイルと、を有していても良い。ロータは、ロータコアと、ロータコアに支持される永久磁石とを有していても良い。ロータの最大回転数は、14600RPM以上であっても良い。各ネジは、ステータを、モータハウジングに固定しても良い。最大回転数は、作業時と非作業時とにおいて同一であっても良い。最大回転数は、互いに相違する、作業時最大回転数と非作業時最大回転数とを有しており、作業時最大回転数は、非作業時最大回転数より大きくても良い。この場合、ステータの共振に起因する騒音の発生が、より低コストで効果的に抑制される。
本開示に係るマルノコ,グラインダは、ステータと、ステータの内方に配置されたロータとを有するブラシレスモータと、ステータを収容する筒部と、底部とを有するモータハウジングと、を備えていても良い。マルノコ,グラインダは、3本以上のネジを備えていても良い。ステータは、ステータコアと、ステータコアに支持されるインシュレータと、インシュレータにより支持されるコイルと、を有していても良い。ロータは、ロータコアと、ロータコアに支持される永久磁石とを有していても良い。ロータの最大回転数は、互いに相違し又は一致する、作業時最大回転数Rと非作業時最大回転数(R-r)とを有していても良い。作業時最大回転数Rと、非作業時最大回転数(R-r)とが、「(r/R)≦0.12」で示される関係を有していても良い。各ネジは、ステータを、モータハウジングに固定しても良い。この場合、ステータの共振に起因する騒音の発生が、より低コストで効果的に抑制される。
【0012】
以下、本開示の実施の形態、及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。本開示は、当該形態及び当該変更例に限定されない。
当該形態及び変更例における前後上下左右は、説明の便宜上定められたものであり、作業の状況及び部材の移動の少なくとも何れか等により変化することがある。
【0013】
[第1形態]
図1は、本開示の第1形態に係る、電動作業機器に属する電動工具のうちの手持ち式切断機の一例であるマルノコ1の左側面図である。
図2は、マルノコ1に係るロータ軸22及び出力軸31の各中心位置(ギヤ35の左右方向中央を通る仮想面を境界とする)における縦断面図である。
マルノコ1は、平板状のベース2と、ベース2上方に配置されるハウジング3と、を備えている。「マルノコ」は、丸鋸、丸ノコ等とも称され、丸い鋸刃を回転させる工具である。尚、丸い砥石(ダイヤモンドホイール)を回転させる工具であるカッタは、マルノコ1と同様の構造を有している。
ハウジング3は、先端工具としての鋸刃4を間接的に支持している。ハウジング3は、鋸刃4を回転駆動するブラシレスモータ5を保持している。ハウジング3は、モータハウジング6と、本体ハウジング7と、ギヤハウジング8と、を含んでいる。
モータハウジング6は、樹脂製であり、筒部6Cと、箱部6Xと、を有する。筒部6Cは、有底円筒状であり、底部6Mを有する。底部6Mは、モータハウジング6の左端部である。モータハウジング6は、筒部6Cにおいて、ブラシレスモータ5を保持する。筒部6Cの底部6Mには、通気孔としての複数の吸気孔6Nが形成されている。箱部6Xは、右方に開放された有底開蓋箱状であり、筒部6Cの上方に配置される。尚、底部6Mは、筒部6Cと別体であっても良い。又、通気孔は、排気孔であっても良い。
本体ハウジング7は、樹脂製である。本体ハウジング7は、左右半割状であり、複数の左右方向のネジ7aにより一体化される。本体ハウジング7の上部は、ループの上半部の形状を呈するグリップ部9となっている。
モータハウジング6は、複数の左右方向のネジ6aにより、本体ハウジング7の左前部に連結される。モータハウジング6は、各ネジ6aに対応するネジ孔6Hを有している。
ギヤハウジング8の左部は、本体ハウジング7の右下部に連結される。ギヤハウジング8の右部は、ブレードケース部10となっている。ブレードケース部10は、鋸刃4の上部を覆う。
【0014】
グリップ部9には、トリガ12を下方へ突出させたスイッチ(図示略)が保持されている。トリガ12の上方には、左右方向に延びるロックオフレバー13が貫通している。ロックオフレバー13は、右方又は左方へ押されない常態では、トリガ12の引き込みをロックする。ロックオフレバー13が押された状態でトリガ12が上方へ操作されると、スイッチがオンとなる。トリガ12の上方への操作が解除されると、スイッチがオフとなり、ロックオフレバー13が常態に復帰する。
本体ハウジング7の左後部には、バッテリ装着部15が形成されている。バッテリ装着部15は、モータハウジング6の後方に配置されている。バッテリ装着部15には、電源としてのバッテリ16が、1個又は2個装着される。各バッテリ16は、バッテリボタン16Aを有する。各バッテリ16は、バッテリ装着部15の左側から右方へスライドすることにより装着される。又、装着されたバッテリ16は、バッテリボタン16Aを操作しつつ、左方へスライドすることにより取り外される。尚、バッテリ装着部15に装着可能なバッテリ16の最大個数は、1又は3以上であっても良い。各バッテリ16の少なくとも何れかは、スライド装着以外の態様で装着されても良い。又、バッテリ16及びバッテリ装着部15に代えて、交流電源(商用電源)に接続可能な電源コードが設けられても良い。
【0015】
ブラシレスモータ5は、ステータ20と、ロータ21と、を有している。
ステータ20は、モータハウジング6の筒部6Cに保持される。
ロータ21は、ステータ20の内周側に配置される。ブラシレスモータ5は、インナーロータ型である。
ロータ21は、ロータ軸22と、ロータコア59と、複数のセンサ用永久磁石(図示略)と、複数(4つ)の永久磁石60と、を有している。ロータ軸22は、左右方向に延びる。ロータ21は、ロータ軸22を中心に回転可能である。ロータ軸22は、ブラシレスモータ5の回転軸である。ロータ軸22の先端部には、ピニオン部22Aが形成されている。
【0016】
ロータ軸22には、ファン24が一体に固定されている。ファン24は、遠心ファンである。ファン24は、冷却用の空気の流れ(風)を起こす。ファン24は、左右方向において、ステータ20と、ピニオン部22Aとの間に配置されている。尚、ファン24は、軸流ファン等の他の形式のファンとされても良い。
【0017】
ファン24の左側には、筒状部材及び押さえ部材としてのバッフルプレート25が設けられている。バッフルプレート25は、樹脂製である。バッフルプレート25は、モータハウジング6に固定される。バッフルプレート25及びファン24は、左右方向において、モータハウジング6とギヤハウジング8との間に配置されている。
バッフルプレート25は、皿部25Aと、延設部25Bと、筒状部25Cと、を有している。
皿部25Aは、皿状であり、ファン24に隣接している。皿部25Aは、ファン24の風の方向を調節する。皿部25Aは、ファン24の風を整流する。皿部25Aの中央部には、孔25Jが開けられている。孔25J内において、ロータ軸22が通過する。ピニオン部22Aは、ギヤハウジング8内に入っている。
延設部25Bは、皿部25Aの上部から、皿部25Aと一連状に上方に延びている。延設部25Bの上端部には、隣接部に対して右方に突出する突出部25Pが形成されている。
筒状部25Cは、皿部25Aの左側に配置されている。筒状部25Cは、皿部25Aの左面から、円筒状に突出している。筒状部25Cは、複数の凸部25Sを有している。各凸部25Sは、バッフルプレート25の左端部に配置されている。各凸部25Sは、隣接する部分に対し左方に突出している。各凸部25Sは、モータハウジング6内のステータ20を、左方へ押さえる。ステータ20は、バッフルプレート25とモータハウジング6の底部6Mとで挟まれる。
ブラシレスモータ5(ステータ20)、モータハウジング6、及びバッフルプレート25は、後で詳述される。
【0018】
ロータ軸22の右前方には、出力部としての出力軸31が設けられている。出力軸31は、左右方向に延びている。出力軸31の右部は、軸受32によって支持される。軸受32は、ベアリングリテーナ33に保持される。ベアリングリテーナ33は、筒状部分を有する。軸受32は、ベアリングリテーナ33の筒状部分内に配置される。出力軸31の左端部は、ギヤハウジング8に保持された軸受(図示略)によって支持される。
出力軸31の左部には、ギヤ35が一体に固定されている。ギヤ35は、ロータ軸22のピニオン部22Aと噛み合っている。ピニオン部22Aは、ギヤ35より小径である。ピニオン部22Aの歯数は、ギヤ35の歯数より少ない。ピニオン部22Aは、ギヤ35の最上部に対して後下方に配置されている。
軸受32の左側には、リング36が設けられている。リング36は、ベアリングリテーナ33に保持される。リング36は、軸受32のスラスト荷重を受ける。
【0019】
出力軸31の右端部には、鋸刃4が固定されている。鋸刃4は、アウターフランジ42とインナーフランジ43とによって挟まれた状態で、出力軸31の軸心に左右方向のボルト44を右からねじ込むことで固定される。尚、出力軸31,アウターフランジ42,インナーフランジ43及びボルト44は、先端工具保持部を構成する。
ギヤハウジング8内には、安全カバー45が配置されている。安全カバー45は、常態において鋸刃4の下側を覆う。安全カバー45は、ギヤハウジング8に回転可能に装着される。安全カバー45は、常態の位置へ向けて回転付勢されている。
【0020】
このようなマルノコ1の動作例が説明される。
ユーザにより、次の準備がなされる。即ち、安全カバー45が常態位置からギヤハウジング8のブレードケース部10に収容する位置へ回転される。又、充電されたバッテリ16がバッテリ装着部15に装着される。
そして、ユーザによりトリガ12が上方へ引かれると、スイッチがオンとなり、ブラシレスモータ5が駆動して、ロータ21が回転する。
ロータ21の回転により、ロータ軸22が回転し、ピニオン部22A及びギヤ35を介して出力軸31が減速して回転する。よって、出力軸31に取り付けられた鋸刃4が回転する。従って、マルノコ1がワークを切断可能となる。
又、ロータ軸22の回転に伴うファン24の回転により、吸気孔6Nから吸い込まれた冷却用空気は、ブラシレスモータ5を通過してブラシレスモータ5を冷却した後、バッフルプレート25によって、本体ハウジング7側、及びギヤハウジング8側へ送られる。
【0021】
以下、ブラシレスモータ5(ステータ20)、モータハウジング6、及びバッフルプレート25が詳述される。
図3は、ステータ20とバッフルプレート25とが付いたモータハウジング6の右側面図である。
図4は、
図3の一部分解斜視図である。
図5は、ネジ68、バッフルプレート25、第1インシュレータ51及びステータコア50の分解斜視図である。
図6は、
図3のA-A線断面図である。
【0022】
ブラシレスモータ5のステータ20は、ステータコア50と、第1インシュレータ51と、複数(6個)の第2インシュレータ52と、第3インシュレータ53と、複数(6個)のコイル56と、センサ基板57と、端子ユニット58と、を有する。
【0023】
ステータコア50は、複数のリング状の鋼板を積層したものである。ステータコア50は、円筒状のステータコア本体50Aと、複数のティース50Bと、を有する。各ティース50Bは、ステータコア本体50Aの内面から径方向内方へ突出する。
ステータコア50の右面は、第2接触面50Sである。第2接触面50Sは、リング状である。
【0024】
第1インシュレータ51は、絶縁部材であり、ステータコア50に右側で接する。
各第2インシュレータ52は、絶縁部材であり、周方向で隣接するティース50Bの間に配置されている。
第3インシュレータ53は、絶縁部材であり、ステータコア50に左側で接する。
各コイル56は、第1インシュレータ51、第2インシュレータ52及び第3インシュレータ53を介して、対応するティース50Bに巻かれる。
各コイル56の個数は、スロット数と呼ばれる。
尚、第1インシュレータ51及び第3インシュレータ53の少なくとも一方と、第2インシュレータ52とは、一体に形成されていても良い。
【0025】
センサ基板57は、リング状であり、ステータコア本体50Aの左端部に固定されている。センサ基板57は、第3インシュレータ53の左側に隣接している。センサ基板57は、複数(2つ)の回転検出素子(図示略)を搭載している。各回転検出素子は、センサ用永久磁石の位置を検出して、回転検出信号を出力する。センサ用永久磁石は、ロータコア59に設けられる。
ロータコア59は、円筒状である。ロータコア59は、リング状の鋼板を積層して形成される。ロータコア59は、ロータ軸22の周りに配置される。ロータコア59は、ロータ軸22に対し、一体的に固定される。ロータコア59は、複数(4つ)の板状の永久磁石60を支持する(
図2参照)。それぞれの永久磁石60は、仮想的な直方体の4つの側面に位置する。当該仮想的な直方体は、左右方向に延びており、ロータ軸22と同心である。
端子ユニット58は、リング状である。端子ユニット58は、ステータコア本体50Aの左端部に固定されている。端子ユニット58は、センサ基板57の径方向外方に配置されている。端子ユニット58は、各コイル56を、所定の態様で電気的に接続する。端子ユニット58は、複数(6個)のヒュージング端子58Aを有する。各ヒュージング端子58Aは、対応するコイル56間の渡り線と接続される。端子ユニット58の左面は、第2接触面50Sに向かい合う第1接触面58Fである。第1接触面58Fは、モータハウジング6の底部6Mに接触する。
【0026】
モータハウジング6の箱部6Xには、コントローラ62が保持されている。コントローラ62の右部は、箱部6Xの右端より右方に出ている。コントローラ62の右部は、バッフルプレート25の突出部25Pにより保持されている。コントローラ62の上方には、電解コンデンサ63が配置されている。電解コンデンサ63は、本体ハウジング7に保持されている。電解コンデンサ63は、平滑コンデンサである。
コントローラ62は、制御回路基板64を有している。制御回路基板64は、マイコン、ダイオード、及びスイッチング素子等を搭載する。又、制御回路基板64は、電解コンデンサ63と、リード線(図示略)により電気的に接続されている。制御回路基板64は、整流回路及びインバータ回路を有している。更に、制御回路基板64は、センサ基板57と、リード線(図示略)により電気的に接続されている。
制御回路基板64のマイコンは、センサ基板57の回転検出素子から出力されるロータ21のセンサ用永久磁石の位置を示す回転検出信号を得ることで、ロータ21の回転状態を取得する。又、制御回路基板64のマイコンは、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のオンオフを制御して、ステータ20の各コイル56に対して順番に電流を流すことで、ロータ21を回転させる。各コイル56に対する電流は、コントローラ62で整流される。各コイル56において発生する磁場は、ロータ21の永久磁石60に作用する。
【0027】
ステータ20は、モータハウジング6の筒部6Cに入る。筒部6Cは、複数(3つ)のネジボス部6Bを有している。3つのネジボス部6Bは、筒部6Cの上部、下前部、下後部に配置される。よって、モータハウジング6の下部が、ネジボス部6B及び後述のネジ68により突き出さない。即ち、ネジボス部6B及び後述のネジ68は、マルノコ1の通常の姿勢における下部以外に配置されている。従って、鋸刃4により切断可能なワークの最大厚さが、より大きくなる。
即ち、
図2等で示されるマルノコ1と異なり、仮にネジボス部6Bが筒部6Cの下部に配置された場合、その下部のネジボス部6Bとベース2との干渉を回避するため、筒部6Cは、
図2のマルノコ1より上方に配置される。すると、筒部6C内に配置されるブラシレスモータ5のロータ軸22も、
図2のマルノコ1より上方に配置される。そして、ロータ軸22につながる出力軸31、及びこれに装着される鋸刃4も、
図2のマルノコ1より上方に配置される。ネジボス部6Bが筒部6Cの下部に配置された場合、かように鋸刃4が上方に配置されることに応じて、鋸刃4のベース2からの突出高さ(突出の上下方向の大きさ)が減少する。よって、この場合、マルノコ1に比べ、鋸刃4により切断可能なワークの最大厚さが、より小さくなる。この場合に対し、マルノコ1では、鋸刃4により切断可能なワークの最大厚さが、より大きくなる。
バッフルプレート25は、皿部25Aの周縁において、複数(3つ)のネジ孔部25Hを有している。バッフルプレート25右側から左方へ見たネジ孔部25Hの配置は、モータハウジング6のネジボス部6Bの配置と合致している。
第1インシュレータ51は、リング状の第1インシュレータ本体51Aと、複数(6つ)の第1ティース被覆部51Bと、を有する。第1インシュレータ本体51Aは、隣接する部分に対して径方向内方に凹む凹部51Cを、複数(6つ)有している。各凹部51Cは、周方向において、隣接する第1ティース被覆部51Bの間に配置されている。
【0028】
バッフルプレート25は、ステータ20と接触する状態で、筒部6Cにネジ止めされる。即ち、ネジボス部6Bと、対応するネジ孔部25Hとを通るネジ68が、複数(3本,第1の数)設けられる。
バッフルプレート25の各凸部25Sは、対応する第1インシュレータ51の凹部51Cの径方向外方に配置される。各凸部25Sは、ステータコア本体50Aの第2接触面50Sに接触する。凸部25Sの全体は、リング状の第2接触面50Sの全周にわたり接触する。各凸部25Sは、ステータコア50を左方へ押し付ける。ステータ20は、第1接触面58Fにおいて、モータハウジング6の底部6Mに支持される。尚、ステータ20がモータハウジング6に支持される面である第1接触面は、端子ユニット58に代えて、又は端子ユニット58と共に、ステータ20における1以上の他の部分に設けられても良い。例えば、第1接触面は、ステータコア50に設けられても良い。
3本のネジ68によるバッフルプレート25のステータコア50に対する押し付け力(荷重)は、ネジ68の本数に対し単調に増加する。
【0029】
ステータ20は、ロータ21の回転周波数又はその高調波成分(Hz,ヘルツ)と、ステータ20の共振周波数(Hz)とが一致した場合、共振する。そして、このステータ20の共振が、マルノコ1のユーザにとって耳に付く音を発生する。
ステータ20の共振による振動のモードとして、主に径方向に対して、円環モードが存在する。円環モードの振動としては、楕円の変形(円環2次)、三角の変形(円環3次)、四角の変形(円環4次)等が存在する。又、ステータ20の厚み(第1形態では左右方向の大きさ)が所定値より短い場合には、ステータ20は、軸方向にもたわむように変形して振動する。
振動に際しステータ20における軸方向に変形する部分が、軸方向における荷重を外部から受ければ、ステータ20が軸方向に拘束される。よって、ステータ20の剛性が増す。従って、ステータ20の共振周波数が、荷重のない場合に比べて増加する。又、ステータ20への荷重の大きさが増すと、ステータ20の剛性が更に増す。よって、ステータ20の共振周波数が更に増加する。従って、ステータ20への荷重の大きさの変更により、ステータ20の共振周波数が変更される。ステータ20の共振周波数は、ステータ20への荷重の大きさに対し、単調に増加する。
ここで、ロータ21の回転周波数又はその高調波成分、及びステータ20の共振周波数等が、更に詳述される。即ち、ステータ20は、ロータ21の1回転毎に、永久磁石60の個数(4つ)分の回数だけ、永久磁石60による磁場の変化を受ける。永久磁石60の個数は、極数と呼ばれる。よって、ステータ20は、回転周波数に極数を乗じた周波数において、即ちブラシレスモータ5であれば4次の高調波成分において、振動する。
又、一般に、ロータ21の回転数の表記として、回転周波数(Hz)に比べ、RPM(rotations per minute)が多用される。他方、一般的な聴覚を有する者にとって、1600Hz以上4000Hz以下の周波数領域、及びその隣接領域に係る音が、耳に付く。上記周波数領域の中でも、2000Hz以上3150Hz以下の周波数領域に係る音は、特に耳に付く。又、本形態のブラシレスモータ5(ロータ21)は、30000RPMで回転可能である。
従って、30000RPM(500Hz)で回転するロータ21に対して、ステータ20の共振周波数が2000Hzにある場合、回転周波数に極数(4)を乗じた2000Hzの振動が、共振により増幅され、音も増幅されるため、ユーザの耳に付くことになる。又、ブラシレスモータ5とは異なるものの、極数が2等であるブラシレスモータにおいて、80000RPM(約1333Hz)で回転可能であるものが出てきている。かようなブラシレスモータでは、ステータ20の共振がロータ21の回転周波数と一致して起こった場合、高調波成分でなく回転周波数自体であっても、上述の隣接領域に属する音が発生する。
【0030】
上述のマルノコ1(第1の電動作業機器)では所定程度以上の振動又は騒音が発生しない場合において、ブラシレスモータ5における主に使用する回転数等が相違する別種のマルノコ(第2の電動作業機器)を、ブラシレスモータ5を共用して設計又は試作したところ、所定程度以上の振動又は騒音が、ステータ20の共振により発生するときには、ステータ20の共振周波数を変更することで、第2の電動作業機器における振動又は騒音が低減される。例えば、マルノコ1において主に使用する回転数が20000RPMであるところ、主に使用する回転数が36000RPMである別種のマルノコを、ブラシレスモータ5を共用して設計又は試作した場合に、所定程度以上の振動又は騒音が、ステータ20の共振により発生したとき、ステータ20の共振周波数を変更することで、第2の電動作業機器における振動又は騒音が低減される。
ステータ20の共振周波数の変更は、上述の通り、ステータ20への軸方向荷重の変更によりなされる。そして、第1形態では、ステータ20への軸方向荷重の変更は、バッフルプレート25及びモータハウジング6に係るネジ68の本数の変更によりなされる。ネジ68の本数は、第1の電動作業機器に係る3本(第1の数)から、第2の電動作業機器に係る5本(第2の数)に変更される。
【0031】
図7は、ネジ68が5本である場合における、マルノコ(第2の電動作業機器)のステータ20とバッフルプレート125とが付いたモータハウジング106の右側面図である。
図8は、
図7の一部分解斜視図である。
図9は、ネジ68、バッフルプレート125、第1インシュレータ51及びステータコア50の分解斜視図である。
図10は、
図7のB-B線断面図である。
以下、ネジ68が3本である場合と同様である部材及び部分には、同じ符号が付され、適宜説明が省略される。
【0032】
モータハウジング106の筒部106Cは、3つのネジボス部6Bに加え、2つのネジボス部106Bを有している。前のネジボス部106Bは、筒部106Cの周方向において、上のネジボス部6Bと下前のネジボス部6Bとの間に配置される。後のネジボス部106Bは、筒部106Cの周方向において、上のネジボス部6Bと下後のネジボス部6Bとの間に配置される。よって、モータハウジング6の下部が、ネジボス部6B,106Bにより突き出さない。即ち、ネジボス部6B,106B及びネジ68は、マルノコ1の通常の姿勢における下部以外に配置されている。従って、鋸刃4により切断可能なワークの最大厚さが、より大きくなる。
バッフルプレート125は、3つのネジ孔部25Hに加え、2つのネジ孔部125Hを有している。右側から左方へ見た場合の2つのネジ孔部125Hの配置は、2つのネジボス部106Bに対応している。
【0033】
バッフルプレート125は、ステータ20と接触する状態で、筒部106Cにネジ止めされる。即ち、ネジボス部6B,106Bと、対応するネジ孔部25H,125Hとを通るネジ68が、計5本設けられる。
バッフルプレート125の各凸部25Sは、対応する第1インシュレータ51の凹部51Cの径方向外方に配置される。各凸部25Sは、第2接触面50Sに接触する。凸部25Sの全体は、リング状の第2接触面50Sの全周にわたり接触する。各凸部25Sは、ステータコア本体50Aを左方へ押し付ける。ステータ20は、第1接触面58Fにおいて、モータハウジング6の底部6Mに支持される。
5本のネジ68によるバッフルプレート125のステータコア50に対する荷重は、ネジ68が3本である場合に比べ、増加する。よって、ステータ20の共振周波数は、ネジ68が3本である場合に比べ、増加する。従って、ネジ68が3本である場合における振動及び騒音は、5本のネジ68で取り付けられるバッフルプレート125によるステータ20の押し付けにより、低減される。
【0034】
かような振動及び騒音の低減は、ブラシレスモータ5の種類(仕様)の変更ではなく、ステータ20を押し付けるバッフルプレート25,125に係るネジ68の本数により行える。よって、第2の電動作業機器(ネジ68が5本のマルノコ)を、第1の電動作業機器(ネジ68が3本のマルノコ1)におけるブラシレスモータ5のステータ20を用いて製造する場合における騒音の抑制は、ステータ20の固定のためのネジ68の本数を変更することによって、簡単に行える。更に、同種のブラシレスモータ5が、第1の電動作業機器及び第2の電動作業機器を含む様々なマルノコ1に、ネジ68の本数を適宜変更するだけで、振動の発生及び騒音の発生が抑制された状態で用いられ得る。従って、コストが低減される。
又、かような振動及び騒音の低減は、バッフルプレート25,125の材質(ヤング率)の変更ではなく、ステータ20を押し付けるバッフルプレート25,125に係るネジ68の本数の変更により行える。よって、振動の発生の抑制及び騒音の発生の抑制のためのコストが低減される。
【0035】
第1形態では、上述の通り、ネジ68の数の増加によってステータ20への荷重を増加し、ステータ20の剛性を増すことで、ステータ20の共振周波数が変えられる。よって、ステータ20の共振周波数の変化は、もともと剛性が十分に大きいステータ20より、剛性が比較的に小さいステータ20において、一層容易に行える。
例えば、次の式(1)の条件が満たされる場合、ステータ20の共振周波数の変更が、より効果的になされる。式(1)において、Φは、円筒状のステータコア50の外径である。又、Tは、ステータコア50の厚み(第1形態では左右方向の大きさ)、即ちステータコア50の軸長である。
Φ≧T ・・・(1)
更に、Φに対してTが小さいほど、ステータ20の共振周波数の変更が、より効果的になされる。
【0036】
尚、第1形態は、上記のもの及び変更例に限定されず、例えば更に次のような変更を適宜施すことができる。
ネジ68の数は、3本以上であれば良く、4本であっても良いし、6本以上であっても良い。又、ネジ68の数は、2本以下であっても良い。
ネジボス部6B,106Bが計5つ有るモータハウジング106において、入れるネジ68の数が3本、4本あるいは5本とされることで、ステータ20に対する荷重が増減されても良い。
バッフルプレート25,125において、筒状部25Cは、他の部分に対して分離されていても良い。ステータ20を押さえる部材である筒状部材は、バッフルプレート25以外であっても良い。
同種のブラシレスモータ5が、マルノコ1(第1の電動作業機器)と、マルノコ1以外の製品(第2の電動作業機器)とで使用される場合に、ネジ68の本数を調節することで、マルノコ1以外の製品における振動の発生の抑制及び騒音の発生の抑制が図られても良い。同種のブラシレスモータ5が、マルノコ1以外の製品(第1の電動作業機器)と、マルノコ1以外の製品(第2の電動作業機器)とで使用される場合に、ネジ68の本数を調節することで、マルノコ1以外の製品(第2の電動作業機器)における振動の発生の抑制及び騒音の発生の抑制が図られても良い。
【0037】
ブラシレスモータ5における永久磁石60の個数(ロータ21の極数)、あるいはコイル56の個数は、上述のものに対して増減されても良い。例えば、永久磁石60の個数は、6個とされても良い。又、ステータコア50の積層数は、適宜設定可能である。
マルノコ1におけるロータ軸22から出力軸31への減速機構は、遊星歯車減速機構を始めとする他の減速機構に代えられても良いし、これらを併用したものとされても良い。
マルノコ1は、バッテリ装着部15に代えて、電源コードを有することで、商用電源駆動とされても良い。ブラシレスモータ5において、マイコン及びスイッチング素子の少なくとも何れかがセンサ基板57に搭載されても良い。各種のケース及びハウジングの少なくとも何れかの材質が、樹脂、金属、及びこれらの複合体等に変更されても良い。金属は、アルミニウム合金であっても良いし、マグネシウム合金であっても良いし、その他の金属であっても良い。ハウジング3の区分が、上述のものから変えられても良い。その他、各種部材、部分の個数、設置の有無、材質、配置、構造、及び形式の少なくとも何れか等は、適宜変更されても良い。
更に、第1形態又はその変更例は、鋸刃4が左側に配置される等の他の形式のマルノコ、マルノコ以外の他の手持ち式切断機、又は手持ち式でない切断機、あるいは他の電動工具、又は他の電動作業機器等に、適用されても良い。例えば、第1形態又はその変更例は、高出力の製品に適用され、電動工具の内のアングルドリル、ハンマ、ハンマドリル、レシプロソーあるいはグラインダ、又は園芸工具の内のチェーンソー、ヘッジトリマ、ブロワ、芝刈機、草刈機若しくは生垣バリカン、又はクリーナ、あるいはエアを動力とするエア工具用の空気圧縮機に適用される。エア工具用の空気圧縮機のように、作業を行う作業機を作動させるための電動機器は、電動作業機器に含められる。
【0038】
[第2形態]
図11は、本開示の第2形態に係る、電動作業機器に属する電動工具の一例であるグラインダ201の左側面図である。
図12は、グラインダ201の中央縦断面図である。
図13は、
図12の前部拡大図である。
図14は、グラインダ201のブラシレスモータ228、バッフルプレート285及びファン284の斜視図である。
図15は、グラインダ201のブラシレスモータ228、モータハウジング212、ネジ218及びバッフルプレート285の一部分解斜視図である。
図16は、グラインダ201のバッフルプレート285の斜視図である。
グラインダ201は、本体部202と、出力機構部204と、を備えている。
本体部202は、前後方向に延びる。出力機構部204は、本体部202の前側に設けられる。
本体部202及び出力機構部204の外郭は、ハウジング206となっている。
【0039】
ハウジング206は、リヤハウジング210と、モータハウジング212と、第1ベアリングリテーナ213と、ギヤハウジング214と、第2ベアリングリテーナ216と、を有している。
【0040】
リヤハウジング210、モータハウジング212及び第1ベアリングリテーナ213は、本体部202の外郭となっている。
リヤハウジング210は、左右半割状である。リヤハウジング210における半割の左部と右部とは、複数の左右方向のネジ218により合わせられる。リヤハウジング210の外面には、左右半割状のカバー220が貼られる。リヤハウジング210及びカバー220の各前半部は、ユーザが握る部分、即ちグリップ部217である。
モータハウジング212は、リヤハウジング210に前側で連結される。モータハウジング212は、筒状であり、全体にわたる筒部を有している。モータハウジング212は、底部212Mを有する。底部212Mは、通気孔としての複数の前後方向の孔212Nを有する。
第1ベアリングリテーナ213は、リング状である。第1ベアリングリテーナ213は、上下左右に延びる。第1ベアリングリテーナ213は、複数の排気孔(図示略)を有している。各排気孔は、弧状である。
【0041】
ギヤハウジング214及び第2ベアリングリテーナ216は、出力機構部204の外郭となっている。
ギヤハウジング214は、モータハウジング212に、第1ベアリングリテーナ213を介して前側で連結される。ギヤハウジング214及び第1ベアリングリテーナ213は、モータハウジング212に対し、前後に延びる複数(4本)のネジ222によって共締めされている。ギヤハウジング214は、複数の排気孔215を有している。排気孔215は、ギヤハウジング214の後部の上下に配置されている。各排気孔215は、ギヤハウジング214の後端部内を介して、第1ベアリングリテーナ213の各排気孔につながっている。
図15に示されるように、モータハウジング212は、各ネジ222のためのネジボス212Gを有している。又、モータハウジング212は、内面において、他の部分より径方向内方に隆起する隆起部212Uを、複数(2つ)備えている。隆起部212Uは、上下に配置されている。各隆起部212Uの前部には、複数(2つずつで計4つ)のネジボス部212Bが形成されている。各ネジボス部212Bは、前後に延びる。2つのネジボス部212Bは、上の隆起部212Uにおける左右に配置されている。別の2つのネジボス部212Bは、下の隆起部212Uにおける左右に配置されている。
尚、グラインダ201は、マルノコ1と異なり、モータハウジング212の外周がユーザに把持される。よって、グラインダ201では、モータハウジング6の外径が可及的に小さくても良い。そして、グラインダ201では、マルノコ1と異なり、各ネジ222の配置は、任意である。又、グラインダ201では、ネジ222(ネジボス212G)が、左上、右上、左下、及び右下に配置されている。よって、モータハウジング212の上部、下部、左部、及び右部が、ネジ222(ネジボス212G)により突き出ず、コンパクトになる。
第2ベアリングリテーナ216は、ギヤハウジング214に保持されている。第2ベアリングリテーナ216は、ギヤハウジング214の下方に配置されている。第2ベアリングリテーナ216は、複数(4本)のネジ226により、ギヤハウジング214に固定されている。各ネジ226は、上下に延びている。各ネジ226は、第2ベアリングリテーナ216の下方から入れられる。
【0042】
モータハウジング212には、電動のブラシレスモータ228が保持されている。
ブラシレスモータ228は、ステータ230と、ロータ231と、を有している。ロータ231は、ステータ230の内周側に配置される。ブラシレスモータ228は、インナーロータ型である。
【0043】
ロータ231は、ロータ軸232と、ロータコア233と、複数(4個)の永久磁石234と、複数(4個)のセンサ用永久磁石(図示略)と、スリーブ235と、を有している。
ブラシレスモータ228(ロータ231)の極数は、マルノコ1のブラシレスモータ5と同じく、4である。
【0044】
ロータ軸232は、前後方向に延びる。ロータ231は、ロータ軸232を中心に回転可能である。ロータ軸232は、ブラシレスモータ228の回転軸である。ロータ軸232の前端部には、ピニオンギヤ238が保持されている。ピニオンギヤ238は、傘歯ギヤ状である。ロータ軸232は、モータハウジング212内からギヤハウジング214内までにわたる。
ロータ軸232は、前軸受242及び後軸受244により回転可能に支持されている。前軸受242は、第1ベアリングリテーナ213に保持されている。後軸受244は、モータハウジング212の底部212Mに保持されている。
【0045】
ロータコア233は、筒状である。ロータコア233は、ロータ軸232の周囲に配置される。ロータコア233は、回転子鉄心である。ロータコア233は、リング状の鋼板を積層することで形成されている。
各永久磁石234は、ロータコア233の内部において保持されている。
各センサ用永久磁石は、ロータコア233の内部において保持されている。
【0046】
スリーブ235は、リング状である。スリーブ235は、金属(真鍮)製である。スリーブ235は、ロータ軸232の周囲に配置される。
スリーブ235は、ロータコア233に隣接する。スリーブ235は、ロータコア233の前側の平面における、径方向外側の部分を覆っている。
ロータ231(及び後述のファン284)の形成後にスリーブ235の一部が削られることで、ロータ231の回転バランスが調整される。スリーブ235は、比較的に柔らかい真鍮製であるため、当該調整が行い易い。
スリーブ235は、ロータコア233に対して固定される。スリーブ235は、各永久磁石234の前端部を覆う。
尚、スリーブ235は、樹脂製であっても良い。
【0047】
ステータ230は、ステータコア250と、第1インシュレータ251と、複数(6個)の第2インシュレータ(図示略)と、第3インシュレータ253と、複数(6個)のコイル256と、センサ基板257と、端子ユニット258と、を有する。
ステータ230は、モータハウジング212に保持される。
ステータ230の外径及びスロット数は、第1形態のステータ20と同じである。
【0048】
即ち、ステータコア250は、ステータコア50と同様に成り、ステータコア本体250Aと、複数のティース250Bと、を有する。ステータコア250の前面は、第2接触面250Sである。第2接触面250Sは、リング状である。
第1インシュレータ251は、第1インシュレータ51と同様に成る。第1インシュレータ251は、リング状の第1インシュレータ本体251Aと、複数(6つ)の第1ティース被覆部251Bと、を有する。第1インシュレータ本体251Aは、隣接する部分に対して径方向内方に凹む凹部251Cを、複数(6つ)有している。各凹部251Cは、周方向において、隣接する第1ティース被覆部251Bの間に配置されている。
第2インシュレータ252(図示略)は、第2インシュレータ52と同様に成る。
第3インシュレータ253は、第3インシュレータ53と同様に成る。
コイル256は、コイル56と同様に成る。
尚、第1インシュレータ251及び第3インシュレータ253の少なくとも一方と、第2インシュレータ252とは、一体に形成されていても良い。
【0049】
センサ基板257は、センサ基板57と同様に成る。
端子ユニット258は、端子ユニット58と同様に成り、複数のヒュージング端子258Aを有する(
図14参照)。端子ユニット58の後面は、第2接触面250Sに向かい合う第1接触面258Fである。第1接触面258Fは、モータハウジング212の底部212Mに接触する。又、端子ユニット258は、接続部258Bを有する。接続部258Bには、複数の電源リード線(図示略)及び複数の信号リード線(図示略)が接続される。これらのリード線は、モータハウジング212の孔212Nを通る。尚、第1形態の端子ユニット58も、接続部258Bと同様に成る接続部を有している。
ステータ230は、モータハウジング212内に入れられている。
【0050】
リヤハウジング210の後部には、コントローラ262が保持されている。コントローラ262は、配置を除き、第1形態のコントローラ62と同様に成り、制御回路基板264を有している。コントローラ262は、上下前後に延びている。コントローラ262は、前下がりの姿勢をとっている。制御回路基板264には、上述した複数の電源リード線及び複数の信号リード線がつながれている。制御回路基板264は、接続部258Bと、電気的に接続されている。
【0051】
リヤハウジング210の後端部には、バッテリ装着部270が形成されている。バッテリ装着部270には、電源としてのバッテリ272が、1個装着される。
バッテリ272は、バッテリボタン272Aを有する。バッテリ272は、バッテリ装着部270の上側から下方へスライドすることにより装着される。装着時、バッテリ272は、前下がりの姿勢をとっている。又、装着されたバッテリ272は、バッテリボタン272Aを操作しつつ、上方へスライドすることにより取り外される。
バッテリ272は、バッテリ装着部270内の端子を介して、コントローラ262と電気的に接続されている。
尚、バッテリ装着部270に装着可能なバッテリ272の個数は、2以上であっても良い。バッテリ272は、スライド装着以外の態様で装着されても良い。又、バッテリ272及びバッテリ装着部270に代えて、交流電源(商用電源)に接続可能な電源コードが設けられても良い。
【0052】
リヤハウジング210には、スイッチ274が保持されている。スイッチ274は、コントローラ262と、スイッチリード線(図示略)により接続されている。
スイッチ274の下方には、スイッチレバー276が配置されている。スイッチレバー276は、リヤハウジング210に保持されている。スイッチレバー276の後端部は、リヤハウジング210の後下部に、回転可能に支持されている。スイッチレバー276の前端部の下方への回転移動は、リヤハウジング210の前下部によって規制されている。スイッチレバー276は、ユーザの上方へ押す操作(手指による引き上げ)により、後端部の周りで上方に回転移動する。上方に移動したスイッチレバー276は、スイッチ274のプランジャを押し上げて、スイッチ274をオンにする。
【0053】
スイッチレバー276は、ロック部278を有する。ロック部278は、棒状の部材である。ロック部278は、スイッチレバー276の非操作時(
図11及び
図12)に上下に延びて起立姿勢となる。ロック部278は、スイッチレバー276において、左右方向の周りで回転可能に取り付けられている。ロック部278には、ねじりバネ(図示略)が接続されている。
非操作時、ロック部278の上端部がリヤハウジング210のリブに隣接することで、スイッチレバー276の上方への移動を阻止し、ブラシレスモータ228のスイッチ274がオンとなることを防止している。
これに対し、ユーザによりロック部278の下部がねじりバネの付勢力に抗して回転操作されると、ロック部278は、前後方向に延びる姿勢となり、グリップ部217の上方への移動を食い止めることがなくなる。よって、作業者がそのままグリップ部217を握ることで、ブラシレスモータ228のスイッチ274をオンとすることが可能となる。
【0054】
ロータ軸232のピニオンギヤ238と各コイル256との間には、ファン284と、筒状部材としてのバッフルプレート285と、が設けられている。
ファン284は、軸流ファンである。ファン284は、ロータ軸232に固定されている。
バッフルプレート285は、皿部285Aと、筒状部285Cと、複数(4つ)のネジ孔部285Hを有している。
皿部285Aは、第1形態のバッフルプレート25と同様に、孔285Jを有している。
筒状部285Cは、皿部285Aの後面から、円筒状に突出している。筒状部285Cは、複数の凸部285Sを有している。各凸部285Sは、バッフルプレート285の後端部に配置されている。各凸部285Sは、隣接する部分に対し後方に突出している。
各ネジ孔部285Hは、皿部285Aの周縁から筒状部285Cにかけて配置されている。バッフルプレート285の前側から後方へ見たネジ孔部285Hの配置は、モータハウジング212のネジボス部212Bの配置と合致している。前後方向において、各ネジ孔部285Hの後端部の位置は、各凸部285Sの後端部の位置と一致している。
【0055】
バッフルプレート285は、ステータ230と接触する状態で、筒状のモータハウジング212にネジ止めされる。即ち、ネジボス部212Bと、対応するネジ孔部285Hとを通るネジ288が、複数(4本)設けられる。
バッフルプレート285の各凸部285Sは、第1インシュレータ251の径方向外方に配置される。又、各ネジ孔部285Hは、対応する第1インシュレータ251の凹部51Cの径方向外方に配置される。各凸部285S、及び各ネジ孔部285Hにおける径方向内側の部分は、ステータコア本体250Aの第2接触面250Sに接触する。凸部285S、及び各ネジ孔部285Hにおける径方向内側の部分の総体は、リング状の第2接触面50Sの全周にわたり接触する。各凸部285S、及び各ネジ孔部285Hにおける径方向内側の部分は、ステータコア250を後方へ押し付ける。各ネジ孔部285Hは、ネジ孔の機能と押し付けの機能とを兼ねる。
ステータ230は、バッフルプレート285とモータハウジング212の底部212Mとで挟まれる。ステータ230は、第1接触面258Fにおいて、モータハウジング212の底部212Mに支持される。
4本のネジ288によるバッフルプレート285のステータコア250に対する荷重は、ネジ288の本数に応じたものとなる。
【0056】
ピニオンギヤ238は、ベベルギヤ290に噛み合っている。ピニオンギヤ238の歯数は、ベベルギヤ290の歯数より少ない。ベベルギヤ290は、スピンドル292に固定されている。
出力部としてのスピンドル292は、ロータ軸240と略90°の角度を有する。スピンドル292は、上下に延びる。スピンドル292(出力機構部204の出力軸)は、ロータ軸240に対して略90°の角度を有しており、グラインダ201は、アングル工具(アングル電動工具)となっている。
スピンドル292の上部は、ギヤハウジング214内に配置される。スピンドル292の中央部は、第2ベアリングリテーナ216内に配置される。スピンドル292の下部は第2ベアリングリテーナ216から露出している。
スピンドル292の上端部は、スピンドル上軸受294内に入っている。スピンドル上軸受294は、ギヤハウジング214に保持されている。スピンドル292の中央部は、スピンドル中軸受296内に入っている。スピンドル中軸受296は、第2ベアリングリテーナ216に固定されている。
スピンドル292の下端部には、円盤状の砥石298が装着される。砥石298は、先端工具である。第2ベアリングリテーナ216の下部には、ホイールカバー299が取り付けられる。ホイールカバー299は、砥石298の周囲に配置される。
【0057】
かようなグラインダ201は、例えば次のように動作する。
即ち、ユーザは、充電されたバッテリ272をバッテリ装着部270に装着する。そして、ユーザは、ロック部278のロックを解除しながら、スイッチレバー276を上方に押す。すると、ブラシレスモータ228のスイッチ274がオンとなる。これにより、制御回路基板264によるステータ230への電力の制御が行われ、ロータ321が回転する。よって、ロータ軸322に取り付けられたピニオンギヤ238が回転する。すると、ベベルギヤ290を通じてスピンドル292が減速回転し、これに取り付けられた砥石298が回転する。ユーザは、回転する砥石298をワークに当てることで研磨を施すことができる。
ユーザがスイッチレバー276から手を離すと、スイッチレバー276は下方へ復帰し、ブラシレスモータ228のスイッチ274がオフとなる。よって、ロータ軸240の回転が停止する。従って、ベベルギヤ290、スピンドル292及び砥石298の回転が停止する。ロック部278は、ねじりバネにより、スイッチレバー276の押し込み操作をロックする姿勢に戻る。
【0058】
又、ロータ軸240の回転によりファン284が回転して、第1ベアリングリテーナ213の各排気孔及びギヤハウジング214の各排気孔215への空気の流れ(風)を起こす。この風は、バッフルプレート285の皿部285Aにより整流される。そして、この風により、ブラシレスモータ228及びコントローラ262等のグラインダ201の内部機構が冷却される。
グラインダ201におけるこの風に係る外部からの吸気部は、リヤハウジング210におけるスイッチレバー276の設置部等である。この風の少なくとも一部は、モータハウジング212の孔212Nを通る。よって、孔212Nは、通気孔の役割を担う。
【0059】
上述のグラインダ201(第1の電動作業機器)のブラシレスモータ228及びモータハウジング212を用いつつ、ブラシレスモータ228における主に使用する回転数等が異なる別種のグラインダ(第2の電動作業機器)を設計又は試作した際に、所定程度以上の振動又は騒音の発生が、ステータ20の共振により認められる場合、例えば次のようにして、別種のグラインダにおける振動又は騒音が抑制される。即ち、バッフルプレート285をモータハウジング212に固定するネジ288の本数が、3本に減らされる。又、ネジボス部212Bを5つ以上有するモータハウジングを用意して、バッフルプレート285を固定するネジ288の本数が、5本以上とされる。
かようなネジ288の本数の変更により、ステータ230への軸方向荷重が変更される。よって、ステータ230の剛性が変更される。従って、ステータ230の共振周波数が変更される。よって、別種のグラインダにおける振動又は騒音が低減される。
【0060】
かような振動及び騒音の低減は、ブラシレスモータ228の種類の変更ではなく、ネジ288の本数により行える。よって、同種のブラシレスモータ228が、様々なグラインダに、振動の発生及び騒音の発生が抑制された状態で用いられ得る。従って、コストが低減される。
又、かような振動及び騒音の低減は、バッフルプレート285の材質(ヤング率)の変更ではなく、ネジ288の本数の変更により行える。よって、振動の発生の抑制及び騒音の発生の抑制のためのコストが低減される。
【0061】
第2形態は、第1形態と同様の変更例を、適宜有する。
【0062】
[ブラシレスモータの回転数等]
第1,第2形態のブラシレスモータ5,228は、ブラシ付きモータに比べ、高速で回転する。ブラシレスモータ5,228の最高回転数は、上述の通り、30000RPMである。かように高速なブラシレスモータ5,228においては、共振が起きる可能性が高い。出願人の試行では、最高回転数が14600RPM以上のブラシレスモータにおいて、最高回転数が14600RPM未満のものに比べ、共振発生の影響がより大きい。よって、最高回転数が14600RPM以上のブラシレスモータにおいて、ネジによる共振周波数の変更の有用性は、より高い。
又、最高回転数が25000RPM以上のブラシレスモータにおいて、ネジによる共振周波数の変更の有用性は、一層高い。
更に、最高回転数が50000RPM以上のブラシレスモータにおいて、ネジによる共振周波数の変更の有用性は、より一層高い。
加えて、最高回転数が80000RPM以上のブラシレスモータにおいて、ネジによる共振周波数の変更の有用性は、更により一層高い。
【0063】
[ソフトノーロードの有無等]
第1形態のマルノコ1、及び第2形態のグラインダ201では、いわゆるソフトノーロードがなされない。ソフトノーロードは、モータを、非作業時(無負荷時)において、作業時(負荷時)における最大回転数(作業時最大回転数)より小さい回転数(非作業時最大回転数以下の回転数)において回転させることである。例えば、ハンマドリルでは、非作業時にも作業時と同様の回転数でモータが回転されると、消費電力及び振動が比較的多くなる。そこで、ハンマドリルにおいて、ソフトノーロードが行われ、消費電力及び振動の低減が図られる。
【0064】
ハンマドリル等のソフトノーロードが行われる電動作業機器では、作業時に発生する音である作業音が、比較的大きい。よって、ステータの共振による騒音は、作業時に発生したとしても、作業音により隠され、ユーザにとって比較的気にならない。又、ステータの共振が作業時の回転数で起きる場合であって、ソフトノーロードにより非作業時の回転数が作業時の回転数に比べて大きく低減されるとき、非作業時においてステータの共振による騒音は発生し難い。
例えば、作業時の(最大)回転数をR(RPM)とし、非作業時に低下する回転数幅をr(RPM)とし、非作業時の(最大)回転数をR-rとして、R=18000でステータの共振による騒音が発生するハンマドリルにおいて、r=5000ではステータの共振による騒音が発生する可能性は、比較的低い。R=18000でr=3000である場合についても、同様に非作業時にステータの共振による騒音が発生する可能性は低い。他方、R=18000でr=2000である場合では、非作業時の回転数R-rが作業時の回転数Rに近く、即ちRに対するR-rの変化が小さく、非作業時にステータの共振による騒音が発生する可能性は高い。非作業時の騒音は、作業音により隠されないため、ユーザにとって耳に付き易い。
【0065】
出願人の試行では、低下する回転数幅rを作業時の回転数Rで割った商が12%以下、即ち、(r/R)≦0.12(式(1))の関係を満たす場合、非作業時の騒音も十分に低減できることから、ネジによる共振周波数の変更が、より有用となる。そして、r/Rが小さいほど、ネジによる共振周波数の変更の有用性が、より高まる。例えば、(r/R)×100=12,10,8,6,5,4,2であるそれぞれの場合、順にネジによる共振周波数の変更の有用性が高まって行く。
無論、(r/R)=0である場合、即ちソフトノーロードが行われず、作業時と非作業時とで回転数が同一である場合、ネジによる共振周波数の変更は、十分に有用である。例えば、ソフトノーロードが行われない第1形態のマルノコ1、及び第2形態のグラインダ201では、ネジによる共振周波数の変更は、十分に有用である。又、ブロワのように、対象物に対して風を吹き付ける作業時と、対象物に対して風を吹き付けない(電源が入っている限り風は同じ強さで出続ける)非作業時とで回転数が同様であるその他の電動作業機器においても、ネジによる共振周波数の変更の有用性は、十分に高い。
【符号の説明】
【0066】
1・・マルノコ(電動作業機器)、6,212・・モータハウジング、6C,212C・・筒部、6M,212M・・底部、20,230・・ステータ、21,231・・ロータ、22,232・・ロータ軸、25,285・・バッフルプレート(筒状部材,押さえ部材)、25S,285S・・凸部、31・・出力軸(出力部)、50,250・・ステータコア、50S,250S・・第2接触面、56,256・・コイル、58F,258F・・第1接触面、59,233・・ロータコア、60,234・・永久磁石、68,288・・ネジ、201・・グラインダ(電動作業機器)、292・・スピンドル(出力部)。