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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164069
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】羽根車
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/24 20060101AFI20221020BHJP
   F04D 29/30 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F04D29/24 C
F04D29/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069300
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山内 紘平
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AA12
3H130AB22
3H130AB47
3H130AC30
3H130BA08C
3H130BA62C
3H130BA66C
3H130CB01
3H130EA07C
3H130EB01C
3H130EB04C
3H130EB05C
(57)【要約】
【課題】遠心ポンプに備えられた場合に、揚程の増加および効率を良好にできるオープン形の羽根車を実現する。
【解決手段】羽根車(3)は、円形の主板(32)と、主板(32)の表面に配置された複数の羽根(33)とを有し、複数の羽根(33)の主板(32)と反対側が開放されている。複数の羽根(33)の少なくとも一つは、主板(32)と反対側に少なくとも一つの凸部(40)を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の主板と、前記主板の表面に配置された複数の羽根とを有し、前記複数の羽根の前記主板と反対側が開放された羽根車であって、
前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記主板と反対側に少なくとも一つの凸部を有することを特徴とする羽根車。
【請求項2】
前記複数の羽根は、回転方向前側に位置する前側面と、回転方向後側に位置する後側面と、を有し、
前記凸部は、回転の中心を通る軸の方向より見た場合に、前記前側面又は前記後側面の少なくとも一方に向かって凸をなす曲面を有している請求項1に記載の羽根車。
【請求項3】
前記凸部は、前記主板から離れる方向に先細り状に形成されている請求項1又は2に記載の羽根車。
【請求項4】
前記凸部は、底面の中心と前記底面と反対側の頂点または頂面の中心とを結ぶ軸線が、回転方向前側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の羽根車。
【請求項5】
前記凸部は、底面の中心と前記底面と反対側の頂点または頂面の中心とを結ぶ軸線が、回転方向後側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の羽根車。
【請求項6】
前記凸部は、少なくとも前記羽根の周縁側に設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の羽根車。
【請求項7】
前記凸部は、前記羽根の延在する方向に沿って複数配置されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の羽根車。
【請求項8】
前記羽根の延在する方向に隣り合う前記凸部間の距離は、前記羽根の周縁側において前記羽根の回転の中心側よりも短い請求項7に記載の羽根車。
【請求項9】
前記凸部は、前記羽根の周縁側において前記羽根の回転の中心側よりも小さい請求項7又は8に記載の羽根車。
【請求項10】
前記凸部を有する前記羽根の少なくとも1つは、
当該羽根における最も回転の中心側に、当該羽根に設けられた何れの前記凸部よりも大きい保護部を有する請求項1から9の何れか1項に記載の羽根車。
【請求項11】
前記凸部は、少なくとも回転方向に隣り合う前記羽根に設けられ、
回転方向に互いに隣り合う複数の前記羽根に設けられた前記凸部は、回転の中心を中心とする同一円周上に位置しない請求項1から10の何れか1項に記載の羽根車。
【請求項12】
前記複数の羽根は、周縁側に位置する周縁面を有し、
前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記周縁面の少なくとも一部に、回転の中心を通る軸の方向に沿って延びる溝部を有する、請求項1から11の何れか1項に記載の羽根車。
【請求項13】
前記複数の羽根は、回転方向前側に位置する前側面と、回転方向後側に位置する後側面と、を有し、
前記溝部は、前記前側面側の第1溝壁と前記後側面側の第2溝壁とを有し、
前記第1溝壁と逆回転方向とのなす角度をα、
前記第2溝壁と逆回転方向とのなす角度をβ、とすると、
α>βであることを特徴とする請求項12に記載の羽根車。
【請求項14】
前記複数の羽根は、回転方向前側に位置する前側面を有し、
前記溝部は、前記前側面側の第1溝壁を有し、
前記第1溝壁と逆回転方向とのなす角度をαとすると、
α≦90度であることを特徴とする請求項12に記載の羽根車。
【請求項15】
前記複数の羽根は、回転方向後側に位置する後側面を有し、
前記溝部は、前記後側面側の第2溝壁を有し、
前記第2溝壁と逆回転方向とのなす角度をβとすると、
β≦90度であることを特徴とする請求項12に記載の羽根車。
【請求項16】
円形の主板と、前記主板の表面に配置された複数の羽根とを有し、前記複数の羽根の前記主板と反対側が開放された羽根車であって、
前記複数の羽根は、径方向外側に位置する周縁面を有し、
前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記周縁面の少なくとも一部に、回転の中心を通る軸の方向に沿って延びる溝部を有することを特徴とする羽根車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を移送する遠心ポンプ等に備えられる羽根車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物のもつ多彩な機能を模倣して利用する技術、いわゆるバイオミメティクス(biomimetics)に注目が集まっている。そして、そのような生体模倣技術を電気製品等に採用するモノづくりの一例としてネイチャーテクノロジー(登録商標)が知られている。
【0003】
流体を移送するためのポンプとして、遠心ポンプが知られている。遠心ポンプは、ケーシングと、該ケーシングの内部に配置された羽根車とを備える。羽根車には、主板とシュラウドとで羽根が挟まれているクローズド形や、シュラウドを有さず羽根が剥き出しになっているオープン形等がある。
【0004】
特許文献1には、クローズド形の羽根車において、シュラウドの内側の面に、流れる流体に乱流を発生させるための複数の凸部又は複数の凹部を設けて、流れの剥離を低減させ、ポンプ効率を向上させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-48703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、シュラウドを有する構成を前提としているため、シュラウドを有さないオープン形の羽根車には適用できない。
【0007】
また、オープン形の羽根車は、流体を導入する開口が形成されたケーシングの内部に、羽根側を開口に対向させた状態で配置される。ケーシングにおける羽根車の径方向の一方側に排出流路が設けられている。羽根車を回転させると、開口よりケーシングの内部に流体が導入され、流体は羽根車とケーシングとの間のギャップを通って排出流路へと導かれる。
【0008】
このとき、剥き出しになっている羽根と排出流路へ向かう流体の流れとが衝突し、羽根の縁部においてエッジ渦と称される大きな渦が形成される。エッジ渦は、流体摩擦を増加させて流れを悪くし、揚程を低下させる。また、エッジ渦は、エネルギーを損失させて効率を低下させる。そのため、オープン形の羽根車においては、エッジ渦への対策を行う必要がある。
【0009】
本発明の一態様は、遠心ポンプに備えられた場合に、揚程の増加および効率を良好にできるオープン形の羽根車を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る羽根車は、円形の主板と、前記主板の表面に配置された複数の羽根とを有し、前記複数の羽根の前記主板と反対側が開放された羽根車であって、前記複数の羽根は、前記主板と反対側に天面を有し、前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記天面に少なくとも一つの凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、遠心ポンプに備えられた場合に、揚程の増加および効率を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る羽根車を備えた遠心ポンプのポンプ部の斜視図である。
図2】前記ポンプ部の一部断面図である。
図3】実施形態1に係る羽根車の底面図である。
図4】実施形態1に係る羽根車の斜視図である。
図5】実施形態2に係る羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図6】実施形態3に係る羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図7】回転方向前側の凸部の周面の傾きと該周面に向かってくる流体との関係を示す図である。
図8】実施形態4に係る羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図9】実施形態4に係る変形例の羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図10】実施形態5に係る羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図11】実施形態6係る羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図12】実施形態7に係る羽根車の底面図と、その一部拡大図である。
図13】実施形態7に係る羽根車の斜視図である。
図14】溝部における角度α、角度β、および旋回成分の関係を説明するための図である。
図15】実施形態7に係る変形例の羽根車の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一側面に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。本実施形態では、流体としての液体を移送する遠心ポンプに搭載される羽根車を例示するが、この限りではなく、流体は気体であってもよい。
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
(1.遠心ポンプの概略構成)
図1は、本実施形態に係る羽根車3を備えた遠心ポンプのポンプ部1の斜視図である。図2は、ポンプ部1の一部断面図である。図1図2において矢印Y1は、流体の流れを示している。遠心ポンプは、図1に示す流体を送給するポンプ部1と、該ポンプ部1を駆動するモータ部(不図示)とを備える。遠心ポンプは、ポンプ部1の下面に設けられた導入開口23から流体を吸い込み、吸い込んだ流体をポンプ部1の側部上面に形成された吐出開口26aより吐出する。モータ部は、ポンプ部1における導入開口23が位置する下面とは反対側の上面に設置される。
【0016】
モータ部は、例えば、モータケースと、該モータケースの内部に収容されたステータおよびロータと、を備える。図1に示すように、ポンプ部1は、導入開口23および吐出開口26aが形成されたポンプケース2を備え、該ポンプケース2にモータ部のモータケースが固定される。モータ部は、ステータへの給電に基づいてロータが回転し、ロータと共に回転軸が回転する。回転軸は、ポンプ部1側に突出するように設けられており、ポンプ部1側に回転力を伝達する。
【0017】
(2.ポンプ部の構成)
図2に示すように、ポンプ部1は、前述したポンプケース2と、該ポンプケース2の内部に収容された羽根車3と、を備える。ポンプケース2は、羽根車3を回転可能に収容するポンプ室21を備える。図2において、羽根車3の回転の中心を通る軸を1点鎖線Xにて示す。羽根車3は、軸方向に対して扁平な略円盤形状をなしている。これに対応して、ポンプ室21についても、軸方向に対して扁平な略円形空間をなしている。
【0018】
ポンプケース2は、ポンプ室21と連通する軸挿入孔22を備える。軸挿入孔22に、モータ部から突出する回転軸の先端部が挿入される。回転軸の先端部はポンプ室21まで到達し、ポンプ室21に配置される羽根車3を支持すると共に、羽根車3と一体に回転するように連結される。
【0019】
また、ポンプケース2は、ポンプ室21の軸挿入孔22とは軸方向反対側に、流体をポンプ室21に導入するための導入開口23を備える。導入開口23は、ポンプ室21における軸挿入孔22とは軸方向反対側を区画する隔壁24に形成されている。羽根車3は、ポンプケース2の隔壁24と間隔を空けた状態でポンプ室21内に回転可能に配置される。羽根車3と隔壁24との間にはギャップGが形成されている。図2の例では、導入開口23は、軸挿入孔22と同軸上であって、羽根車3の同軸上に設けられている。
【0020】
さらに、ポンプケース2は、ポンプ室21の軸直交方向の一方側に、流体をポンプ室21から吐出するための吐出流路26を備える。吐出流路26の出口が前述した吐出開口26aであり、吐出開口26aを通って流体がポンプ部1から吐出される。なお、吐出流路26は、流体の送給を受ける装置と配管(不図示)等を介して接続される。
【0021】
(3.羽根車の概略構成)
図3は、本実施形態に係る羽根車3の底面図である。換言すると、図3は、図2に示した導入開口23から見た羽根車3の平面図である。図4は、本実施形態に係る羽根車3の斜視図である。図4は、底面側を上方に向けた状態である。
【0022】
羽根車は例えば樹脂材料にて作製される。図3図4に示すように、羽根車3は、円形の主板32と、主板32の厚み方向の一方の面である表面に、例えば8個の同形状の羽根33を有する。羽根車3は、複数の羽根33の主板32と反対側が開放されている、所謂オープン形の羽根車である。
【0023】
複数の羽根33は、周方向に等間隔に並設されている。隣接する羽根33間に、流体を通過させる溝流路34が形成されている。複数の羽根33は、矢印Y2にて示す反時計回りの方向に向けて凸状に湾曲している。複数の羽根33は、主板32と反対側に天面33aを有し、該天面33aに複数の凸部40が形成されている。なお、複数の凸部40が設けられた羽根33の天面33aの詳細については後述する。
【0024】
主板32の略中央部には、前述したモータ部の回転軸の先端部が内嵌されるD字状の連結孔35が設けられている。これにより、モータ部の回転駆動により回転軸が回転すると、羽根車3が一体に回転する。なお、本実施形態では、主板32に連結孔35を直接形成しているが、例えば、円筒状をなす連結部材を金属材料等で形成して、主板32の略中央部に相対回転不能に組み付けてもよい。
【0025】
(4.遠心ポンプの動作)
モータ部の回転駆動に基づいて羽根車3が回転すると、図1図2に示すように、流体が導入開口23からポンプ室21に導入される。図3図4に示すような形状の羽根車3は、反時計回りに回転する。羽根車3の回転による遠心力がポンプ室21に導入された流体に伝わり、流体は羽根車3の径方向内側(中心側)から径方向外側(周縁側)に向かって送られる。径方向外側に向かって送られた流体は、羽根車3の下方のギャップGを通って吐出流路26に入り、吐出開口26aから吐出される。
【0026】
以降、各溝流路34を径方向外側に送られる流体の流れを「遠心流」と称する。また、ギャップGを吐出流路26に向かって流れる流体の流れを「排出流」と称する。
【0027】
(5.羽根の天面の詳細構成)
図3図4を用いて、羽根33の天面33aの構成について説明する。図3図4に示すように、複数の羽根33は、それぞれの天面33aに、例えば5個の同形状の凸部40を有している。
【0028】
前述したように、羽根車3が回転すると、ポンプ室21に導入された流体は、羽根車3の遠心力に基づいて各溝流路34を径方向外側に送られ、吐出流路26を介して吐出開口26aから吐出される。ポンプ室21における流体の流れとしては、各溝流路34を流れる遠心流と、吐出流路26に向かって流れる排出流とがある。
【0029】
羽根車3はオープン形であるため、複数の羽根33は、ギャップGにおいて排出流と衝突しながら回転する。そのため、天面33aに凸部40が設けられていない構成では、ギャップGにおいて、前述した大きな渦であるエッジ渦が発生する。エッジ渦は流体の流れを乱して揚程を低下させ、また、エネルギーを損失させて効率を低下させる。
【0030】
羽根車3においては、このようなエッジ渦の生成を抑制するために、天面33aに複数の凸部40を設けている。天面33aに凸部40を設けることで、凸部の周囲に小さな渦が生成され、この小さな渦によって、エッジ渦の生成が抑制される。換言すると、凸部40によって小さな渦を生成することで、大きなエッジ渦を細分化できる。これにより、ギャップGに生成されるエッジ渦による揚程の低下およびエネルギー損失を抑制して、揚程および効率を向上させることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、複数の羽根33の全てが天面33aに複数の凸部40を有する構成を例示したが、複数の羽根33の少なくとも1つが主板32と反対側に(天面33aに)少なくとも1つの凸部40を有する構成であればよい。これにより、天面33aに凸部40が設けられていない構成に比べてエッジ渦の細分化が図れる。
【0032】
但し、好ましくは、複数の羽根33の全てが天面33aに複数の凸部40を有する構成である。凸部40を備える羽根33の数が増える程、また、一つの羽根33に備えられる凸部40の数が増える程、エッジ渦を効果的に細分化できる。
【0033】
また、天面33aに複数の凸部40を設ける構成において、好ましくは、図3図4に示すように、羽根33の延在する方向に沿って複数配置する構成である。このように配置することで、羽根33の回転の中心側から周縁側に亘ってエッジ渦の生成を抑制することができる。
【0034】
また、図示してはいないが、凸部40は、少なくとも羽根33の周縁側に設けられていることが好ましい。これは、回転時の羽根33の速度は、羽根車の回転中心から離れる程速くなり、回転中心から離れた羽根33の周縁側において、エッジ渦によるエネルギー損失が大きくなるためである。少なくとも羽根33の周縁側に凸部40を設けることで、エネルギー損失の大きい羽根33の周縁側においてエッジ渦の生成を抑制して、エネルギー損失を効果的に抑制することができる。
【0035】
(6.凸部の好ましい形状)
上述したように、天面33aに設けられた凸部40は、その形状に係わらず、天面33aに凸部40が設けられていない構成に比べてエッジ渦の生成を抑制することができる。例えば、図3図4に示すように、羽根33は、回転方向(矢印Y2)前側に位置する前側面33bと、回転方向後側に位置する後側面33cと、を有する。凸部40としては、前側面33bおよび後側面33cと連なった角柱状であってもエッジ渦を細分化できる。しかしながら、凸部40がエッジを有する角柱状の場合、凸部40と排出流との衝突で生じる渦が大きくなり、エッジを有さない形状に比して損失されるエネルギーが大きくなる。
【0036】
そこで、本実施形態では、図3図4に示すように、凸部40を円柱状としている。つまり、凸部40は、回転の中心を通る軸の方向より見た(図2に示した導入開口23から見た)場合に、前側面33bに向かって凸をなす曲面および後側面33cに向かって凸をなす曲面の両方を有している。このような形状とすることで、凸部40と衝突する排出流が、凸部40の曲面に沿って抜けやすくなり、凸部40と排出流との衝突で生じる渦は小さく(角柱状の場合よりも小さく)、損失されるエネルギーを小さくすることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、凸部40を円柱状としたが、凸部40は、前側面33b又は後側面33cの少なくとも一方に向かって凸をなす曲面を有する構成であればよい。これにより、凸部40が角柱状である構成に比べて、凸部40と排出流との衝突によるエネルギーの損失を小さくすることができる。
【0038】
つまり、ギャップGにおいて、排出流は、排出流の上流側にて羽根33の前側面33bと接触し、排出流の下流側にて羽根33の後側面33cと接触する。したがって、凸部40を、前側面33b又は後側面33cの何れか一方に向かって凸をなす曲面を有するように設けたとしても、排出流の上流側あるいは下流側にて排出流を抜けやすくすることができる。
【0039】
但し、好ましくは、前側面33bに向かって凸をなす曲面と、後側面33cに向かって凸をなす曲面の両方を有する構成である。これにより、ギャップGにおいて、排出流の上流側および下流側の両方で排出流を抜けやすくすることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、凸部40は、天面33aから離れる方向(主板32から離れる方向)に先細り状に形成されている。このような形状とすることで、凸部40の頂面と排出流との接触面積を減らせることができる。これにより、羽根33の天面33aと隔壁24との間に生じるせん断流れによる流体摩擦抵抗を低減できる。その結果、遠心ポンプの効率をより向上させることができる。なお、先細り状の凸部40としては、円錐や角錐であってもよい。
【0041】
(7.保護部)
さらに、羽根車3においては、図3図4に示すように、複数の羽根33は、それぞれの天面33aにおける最も回転の中心側に、それぞれに設けられた何れの凸部40よりも大きい保護部36を有している。保護部36は、回転の中心を中心とする円の周方向に沿った幅が何れの凸部40よりも大きいことが好ましい。また、保護部36は、高さが何れの凸部よりも高いことが好ましい。但し、最も高い凸部40と同等の高さであってもよい。保護部36の径方向外側の面は、回転の中心を中心とする円に沿った面となっている。
【0042】
このような保護部36を設けることで、保護部36よりも径方向外側にある凸部40が、回転の中心側(径方向内側)から周縁側(径方向外側)に向かって流れる遠心流によって摩耗されることが抑制される。これにより、凸部40を保護して羽根車3の寿命を延ばすことができる。
【0043】
なお、本実施形態では、凸部40が設けられた全ての羽根33に保護部36を設けた構成を例示したが、凸部40が設けられた羽根33の少なくとも1つに保護部36を設けた構成であればよい。これにより、凸部40が設けられた羽根33の何れにも保護部36が設けられていない構成に比べて、羽根車3の寿命を延ばすことができる。但し、好ましくは、凸部40が設けられた全ての羽根33に保護部36を設けた構成である。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
図5は、本実施形態に係る羽根車3Aの底面図と、その一部拡大図である。図5に示すように、本実施形態に係る羽根車3Aでは、複数の羽根33のそれぞれの天面33aに、複数の同形状の凸部40に代えて、複数の同形状の凸部40Aが配置されている。この点が羽根車3と異なる。
【0046】
凸部40Aは、先細り状であって、先端がカットされた円錐状を有している。そして、カットされた円錐の頂面が、平面視で前側面33b側に偏っている。つまり、凸部40Aは、天面33aと接続された底面の中心と該底面と反対側の頂点(凸部40Aが円錐の場合)または頂面の中心とを結ぶ軸線が、回転方向前側に向かって傾斜している。
【0047】
このような形状とすることで、図7の符号701の図に示すように、羽根車3の回転時、凸部40Aにおける回転方向前側の凸部40Aの周面は、流体に向かって急峻な角度で立ち上がった壁となる。したがって、羽根車3Aにおける流体を掻く力が強くなり、ポンプの揚程を増加させることができる。このような羽根車3Aは、揚程の大きいポンプに適している。図7は、回転方向前側の凸部の周面の傾きと該周面に向かってくる流体との関係を示す図である。
【0048】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
図6は、本実施形態に係る羽根車3Bの底面図と、その一部拡大図である。図6に示すように、本実施形態に係る羽根車3Bでは、複数の羽根33のそれぞれの天面33aに、複数の同形状の凸部40に代えて、複数の同形状の凸部40Bが配置されている。この点が羽根車3と異なる。
【0050】
凸部40Bは、先細り状であって、先端がカットされた円錐状を有している。そして、カットされた円錐の頂面が、平面視で後側面33c側に偏っている。つまり、凸部40Bは、天面33aと接続された底面の中心と該底面と反対側の頂点(凸部40Bが円錐の場合)または頂面の中心とを結ぶ軸線が、回転方向後側に向かって傾斜している。
【0051】
このような形状とすることで、図7の符号702の図に示すように、羽根車3の回転時、凸部40Bにおける回転方向前側の周面は、流れに対して傾斜がなだらかな壁となる。したがって、凸部40Bにて生じる渦は弱く、凸部40Bによるエネルギーの損失を小さくできる。このような羽根車3Bは、揚程の小さいポンプに適している。
【0052】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0053】
図8は、本実施形態に係る羽根車3Cの底面図と、その一部拡大図である。図8に示すように、本実施形態に係る羽根車3Cでは、複数の羽根33のそれぞれの天面33aに、複数の同形状の凸部40に代えて、複数の凸部40Cが配置されている。この点が羽根車3と異なる。
【0054】
凸部40Cは、先細り状であって、先端がカットされた円錐状を有している。そして、カットされた円錐の頂面が、平面視で羽根33の延在する方向、つまり羽根33の半径方向外側または半径方向内側に偏っており、羽根33の延在する方向に隣り合う凸部40C間の間隔(距離)に変化が付けられている。本実施形態では、延在する方向に隣り合う凸部40C間の間隔が、羽根33の周縁側において羽根33の回転の中心側よりも短くなっている。
【0055】
凸部40C間の間隔は、広いよりも狭い方がエッジ渦を壊しやすい。したがって、このような形状とすることで、エネルギー損失の大きい羽根33の周縁側においてエッジ渦の生成を効果的に抑制して、エネルギー損失を効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、先細り状の凸部40Cの向きを調整して、隣り合う凸部40C間の間隔(距離)に変化を付けたが、凸部を、円柱状や角柱状、もしくは軸を傾けていない円錐状や角錐状とし、凸部の配置位置を変えて間隔を変える構成であってよい。
【0057】
図9は、本実施形態に係る変形例の羽根車3Dの底面図と、その一部拡大図である。図9に示すように、変形例の羽根車3Dでは、複数の羽根33のそれぞれの天面33aに、複数の同形状の凸部40に代えて、複数の凸部40Dが配置されている。この点が羽根車3と異なる。
【0058】
複数の凸部40Dは、何れも先細り状であって、先端がカットされた円錐状を有し、頂面が平面視で羽根33の回転の中心側(半径方向内側)に偏っている。そして、複数の凸部40Dは、頂面の面積は全て同じであるが、天面33aと接続された底面の面積が、羽根33の回転の中心側から周縁側にかけて段々小さくなっている。さらに、羽根33の延在する方向に隣り合う凸部40D間の間隔(距離)が、羽根33の回転の中心側から周縁側にかけて段々狭くなっている。
【0059】
このような形状とすることで、エネルギー損失の大きい羽根33の周縁側において、凸部40Dを密に配置してエッジ渦の生成を効果的に抑制して、エネルギー損失を効果的に抑制することができる。
【0060】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
図10は、本実施形態に係る羽根車3Eの底面図と、その一部拡大図である。図10に示すように、本実施形態に係る羽根車3Eでは、複数の羽根33のそれぞれの天面33aに、複数の同形状の凸部40に代えて、複数の凸部40Eが配置されている。この点が羽根車3と異なる。
【0062】
複数の凸部40Eは、何れも先細り状の円柱状である。そして、複数の凸部40Eは、羽根33の周縁側において羽根33の回転の中心側よりも小さく形成されている。
【0063】
より詳細には、複数の凸部40Eは、羽根33の回転の中心側から周縁側にかけて段々小さくなっている。具体的には、複数の凸部40Eは、高さは同じで、底面の面積が、羽根33の回転の中心側から周縁側にかけて段々小さくなっている。さらに、複数の凸部40Eは、羽根33の延在する方向に隣り合う凸部40E間の間隔(距離)が、羽根33の回転の中心側から周縁側にかけて段々広くなるように内地されている。
【0064】
このような形状とすることで、羽根33において、周縁側と回転の中心側とでレイノルズ数を近づけることができる。これにより、羽根33の回転の中心側から周縁側に亘って、凸部40Eにて生成される渦によるエッジ渦の生成を抑制する効果(細分化の効果)を揃えることができる。
【0065】
レイノルズ数は、凸で生じる流れを特徴づける無次元数である。レイノルズ数は、凸の投影面積の平方根×凸周囲の流体速度÷流体の動粘性係数にて求まる。凸周囲の流体速度は、遠心ポンプにおいて必要な吐出量÷(羽根車の径×ギャップGの距離)にて近似される。したがって、「凸部が小さい」とは、換言すると、「子午面に回転投影した際の凸部の半径方向における平均幅が小さい」であり、厳密には凸部の高さを含む「子午面に回転投影した凸部の面積が小さい」である。
【0066】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
図11は、本実施形態に係る羽根車3Fの底面図と、その一部拡大図である。図11に示すように、本実施形態に係る羽根車3Fでは、複数の羽根33は、回転方向に互いに隣り合う複数の羽根33に備えられる複数の凸部40が、回転の中心を中心とする同一円周上に位置しないように設けられている。この点が羽根車3と異なる。本実施形態では、凸部40を5個備える羽根33と、凸部40を4個備える羽根33とを、周方向に交互に配置している。
【0068】
回転方向に隣り合う羽根33に設けられた複数の凸部40が、回転の中心を中心とする同一円周上に位置している場合、回転方向前側に位置する羽根33の凸部40間を通り抜けた流れは、回転方向後側に位置する次の羽根33の凸部40間も通り抜ける。そのため、凸部40が流体の掻き出しに寄与する効果は小さい。
【0069】
これに対し、上記のような形状とすることで、回転方向前側に位置する羽根33の凸部40間を通り抜けた流れは、回転方向後側に位置する次の羽根33の凸部40に衝突する。これにより、凸部40が流体の掻き出しに寄与する効果が大きくなり、ポンプの揚程を増加させることができる。
【0070】
また、回転方向前側に位置する羽根の凸部40にて生成された小さな渦が、回転方向後側に位置する次の羽根33の凸部40に衝突することで反転する。これにより、凸部40の周囲に生成される小さな渦によってエッジ渦の生成を抑制する効果が向上し、より効果的にエッジ渦の生成を抑制することができる。
【0071】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0072】
図12は、本実施形態に係る羽根車3Gの底面図と、その一部拡大図である。図12に示すように、本実施形態に係る羽根車3Gでは、複数の羽根33の周縁面33dに、回転の中心を通る軸の方向に沿って延びる溝部50が設けられている。この点が羽根車3と異なる。周縁面33dは、羽根33の周縁側に位置する面である。
【0073】
図12図13において、矢印Y3は、羽根車3より見た羽根車3の外周部を流れる流体の流れる方向を示している。Y3は、矢印Y2にて示す羽根車3Gの回転方向の逆であり、逆回転方向とも称する。
【0074】
このような構成とすることで、羽根車3が回転すると、溝部50に渦が生成され、溝部50に生成した渦にて、羽根33の周縁面33dと流体との間の流体摩擦を低減することができる。その結果、遠心ポンプの効率をより向上させることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、複数の羽根33の全てが周縁面33dに溝部50を有する構成を例示したが、複数の羽根33の少なくとも一つの周縁面33dに溝部50を有する構成であればよい。これにより、周縁面33dに溝部50が一切設けられていない構成に比べて、羽根33の周縁面33dと流体との間の流体摩擦を低減することができる。
【0076】
但し、好ましくは、複数の羽根33の全てが周縁面33dに溝部50を有する構成である。溝部50を備える羽根33の数が増える程、羽根33の周縁面33dと流体との間の流体摩擦を低減することができる。
【0077】
なお、溝部50は、回転の中心を通る軸の方向に沿って延びていればよく、必ずしも羽根33の天面33aに達していなくてもよい。また、図12図13では、溝部50として断面がV字状のV溝を例示しているが、U字状等であってもよい。
【0078】
(1.溝部の好ましい形状)
ここで、溝部50の好ましい形状について、図12および図14を用いて説明する。図12の拡大図に示すように、溝部50は、前側面側の第1溝壁50aと後側面側の第2溝壁50bとを有する。前側面側の第1溝壁50aは、矢印Y2にて示す羽根車3Gの回転方向前側に位置する溝壁である。後側面側の第2溝壁50bは、矢印Y2にて示す羽根車3Gの回転方向後側に位置する溝壁である。
【0079】
<好ましい条件1>
逆回転方向Y3にて示す外周部の流れが、第1溝壁50aとなす角度をα、第2溝壁50bとなす角度をβ、とすると、α>βであることが好ましい。換言すると、角度αは、第1溝壁50aと逆回転方向Y3とのなす角度であり、角度βは、第2溝壁50bと逆回転方向Y3とのなす角度である。
【0080】
図14は、溝部における角度α、角度β、および旋回成分の関係を説明するための図である。図14の符号1401の図に示すように、α>βの関係を満たす溝部51では、後側面側の第2溝壁51bで生じる旋回成分が前側面側の第1溝壁51aで生じる旋回成分よりも強くなる。そのため、このような溝部51においては渦が回り易くなる。
【0081】
これに対し、α≦βの関係を満たす溝部52では、後側面側の第2溝壁52bで生じる旋回成分が前側面側の第1溝壁52aで生じる旋回成分と同等以下となる。そのため、このような溝部52においては渦が回り難い。
【0082】
したがって、溝部50を、溝部51のように、α>βの関係を満たすように形成することで、溝部50に生成される渦による流体摩擦の低減効果を高めることができる。
【0083】
<好ましい条件2>
また、α≦90度であることが好ましい。図14の符号1402の図に示すように、α≦90度の関係を満たす溝部53では、溝部53で発生させた渦は、第1溝壁53aに沿って、矢印Y3にて示す羽根車の外周部の流体の流れ方向を向いて流出する。そのため、溝部53で発生した渦によるエネルギーの損失が小さい。
【0084】
これに対し、α>90度の関係を満たす溝部54では、溝部54で発生させた渦は、第1溝壁54aに沿って、矢印Y3にて示す羽根車の外周部の流体の流れ方向の逆を向いて流出する。そのため、溝部54で発生した渦によるエネルギーの損が大きい。
【0085】
したがって、溝部50を、溝部53のように、α≦90度の関係を満たすように形成することで、溝部50に生成される渦によるエネルギー損失を抑制することができる。
【0086】
<好ましい条件3>
また、β≦90度であることが好ましい。図14の符号1403の図に示すように、β≦90度の関係を満たす溝部55では、後側面側の第2溝壁55bで生じる旋回成分が大きくなり、強い渦を巻くことができる。
【0087】
これに対し、β>90度の関係を満たす溝部56では、後側面側の第2溝壁56bで生じる旋回成分が小さくなり、渦を巻き難い。
【0088】
したがって、溝部50を、溝部55のように、β≦90度の関係を満たすように形成することで、溝部50に生成される渦による流体摩擦の低減効果を高めることができる。
【0089】
図15は、本実施形態に係る変形例の羽根車3Hの底面図である。図15に示すように、変形例の羽根車3Hでは、複数の羽根33の天面33aに、複数の凸部40および保護部36が設けられていない。この点が羽根車3Gと異なる。
【0090】
このような構成では、エッジ渦を細分化することはできないが、溝部50に生成した渦にて、羽根33の周縁面33dと流体との間の流体摩擦を低減することができる。その結果、遠心ポンプの効率をより向上させることができる。
【0091】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る羽根車は、円形の主板と、前記主板の表面に配置された複数の羽根とを有し、前記複数の羽根の前記主板と反対側が開放された羽根車であって、前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記主板と反対側に少なくとも一つの凸部を有する。
【0092】
上記構成によれば、羽根に設けられた凸部の周囲に小さな渦が生成され、大きなエッジ渦の生成を抑制できる。これにより、遠心ポンプに備えられた場合に、ギャップに生成される大きな渦による揚程の低下およびエネルギー損失を抑制して、揚程および効率を向上させることができる。
【0093】
本発明の態様2に係る羽根車は、上記態様1において、前記複数の羽根は、回転方向前側に位置する前側面と、回転方向後側に位置する後側面と、を有し、前記凸部は、回転の中心を通る軸の方向より見た場合に、前記前側面又は前記後側面の少なくとも一方に向かって凸をなす曲面を有していてもよい。
【0094】
上記構成によれば、凸部と衝突した流体が曲面に沿って抜けやすく、凸部と流体との衝突にて損失されるエネルギーを小さくできる。
【0095】
本発明の態様3に係る羽根車は、上記態様1又は2において、前記凸部は、前記主板から離れる方向に先細り状に形成されていてもよい。
【0096】
上記構成によれば、凸部の頂面と流体との接触面積を減らして、羽根とケーシングとの間に生じるせん断流れによる流体摩擦抵抗を低減できる。その結果、ポンプの性能をより向上させることができる。
【0097】
本発明の態様4に係る羽根車は、上記態様3において、前記凸部は、底面の中心と前記底面と反対側の頂点または頂面の中心とを結ぶ軸線が、回転方向前側に向かって傾斜していてもよい。
【0098】
上記構成によれば、回転方向前側の凸部の周面が流体に向かって立ちはだかる。したがって、流体を掻く力が強くなり、ポンプの揚程の増加に寄与する。揚程の大きいポンプに適している。
【0099】
本発明の態様5に係る羽根車は、上記態様3において、前記凸部は、底面の中心と前記底面と反対側の頂点または頂面の中心とを結ぶ軸線が、回転方向後側に向かって傾斜していてもよい。
【0100】
上記構成によれば、回転方向前側の凸部の周面が流体を速やかに後方に流す。したがって、流体を掻く力は弱いが、凸部に生じる渦は弱く、凸部によるエネルギーの損失は小さい。揚程の小さいポンプに適している。
【0101】
本発明の態様6に係る羽根車は、上記態様1から5の何れかにおいて、前記凸部は、少なくとも前記羽根の周縁側に設けられていてもよい。
【0102】
上記構成によれば、エネルギー損失の大きい羽根の周縁側において大きな渦の生成が抑制される。これにより、エネルギー損失を効果的に抑制することができる。
【0103】
本発明の態様7に係る羽根車は、上記態様1から5の何れかにおいて、前記凸部は、前記羽根の延在する方向に沿って複数配置されていてもよい。
【0104】
上記構成によれば、羽根の回転の中心側から周縁側に亘って大きな渦の生成が抑制される。これにより、エッジ渦によるエネルギーの損失を抑制することができる。
【0105】
本発明の態様8に係る羽根車は、上記態様7において、前記羽根の延在する方向に隣り合う前記凸部間の距離は、前記羽根の周縁側において前記羽根の回転の中心側よりも短くてもよい。
【0106】
上記構成によれば、エネルギー損失の大きい羽根の周縁側に凸部が密に設けられ、大きな渦の生成が抑制される。これにより、エネルギー損失を効果的に抑制することができる。
【0107】
本発明の態様9に係る羽根車は、上記態様7又は8において、前記凸部は、前記羽根の周縁側において前記羽根の回転の中心側よりも小さくてもよい。
【0108】
上記構成によれば、羽根における周縁側と回転の中心側とで、レイノルズ数を近づけることができる。これにより、羽根の回転の中心側から周縁側に亘って大きな渦の生成を抑制する効果(細分化の効果)を揃えることができる。
【0109】
本発明の態様10に係る羽根車は、上記態様1から9の何れかにおいて、前記凸部を有する前記羽根の少なくとも1つは、当該羽根における最も回転の中心側に、当該羽根に設けられた何れの前記凸部よりも大きい保護部を有していてもよい。
【0110】
上記構成によれば、保護部にて、凸部が、径方向内側から径方向外側に向かって流れる遠心流による摩耗されることを抑制し、凸部を保護することができる。
【0111】
本発明の態様11に係る羽根車は、上記態様1から10の何れかにおいて、前記凸部は、少なくとも回転方向に互いに隣り合う複数の前記羽根に設けられ、回転方向に互いに隣り合う複数の前記羽根に設けられた前記凸部は、回転の中心を中心とする同一円周上に位置しない構成としてもよい。
【0112】
上記構成によれば、回転方向前側に位置する羽根の凸部を通り抜けた流れが、回転方向後側に位置する羽根に衝突する。これにより、凸部が水の掻き出しに寄与し、ポンプ効率を上げることができる。また、回転方向前側に位置する羽根の凸部にて生成された小さな渦が、回転方向後側に位置する羽根に衝突することで反転する。これにより、凸部の周囲に生成される小さな渦による大きな渦の生成を抑制する効果が上がる。
【0113】
本発明の態様12に係る羽根車は、上記態様1から11の何れかにおいて、前記複数の羽根は、周縁側に位置する周縁面を有し、前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記周縁面の少なくとも一部に、回転の中心を通る軸の方向に沿って延びる溝部を有していてもよい。
【0114】
上記構成によれば、羽根の周縁面に設けられた溝部に生成される渦にて、羽根の周縁面と流体との間の流体摩擦を低減できる。その結果、ポンプの性能をより向上させることができる。
【0115】
本発明の態様13に係る羽根車は、上記態様12において、前記溝部は、前側面側の第1溝壁と後側面側の第2溝壁とを有し、前記第1溝壁と逆回転方向とのなす角度をα、前記第2溝壁と逆回転方向とのなす角度をβ、とすると、α>βであってもよい。
【0116】
上記構成によれば、後側面側の第2溝壁で生じる旋回成分が前側面側の第1溝壁で生じる旋回成分よりも強くなり、溝部にて渦が回り易い。これにより、溝部に生成される渦による流体摩擦の低減効果を高めることができる。
【0117】
本発明の態様14に係る羽根車は、上記態様12において、前記溝部は、前側面側の第1溝壁を有し、前記第1溝壁と逆回転方向とのなす角度をαとすると、α≦90度であってもよい。
【0118】
上記構成によれば、溝部で発生させた渦の流出の角度が羽根車外周部の流体の流れ方向を向き、エネルギーの損失が小さい。これにより、溝部に生成される渦によるエネルギー損失を抑制することができる。
【0119】
本発明の態様15に係る羽根車は、上記態様12において、前記溝部は、後側面側の第2溝壁を有し、前記第2溝壁と逆回転方向とのなす角度をβとすると、β≦90度であってもよい。
【0120】
上記構成によれば、後側面側の第2溝壁で生じる旋回成分が大きくなり、強い渦を巻くことができる。これにより、溝部に生成される渦による流体摩擦の低減効果を高めることができる。
【0121】
本発明の態様16に係る羽根車は、円形の主板と、前記主板の表面に配置された複数の羽根とを有し、前記複数の羽根の前記主板と反対側が開放された羽根車であって、前記複数の羽根は、径方向外側に位置する周縁面を有し、前記複数の羽根の少なくとも一つは、前記周縁面の少なくとも一部に、回転の中心を通る軸の方向に沿って延びる溝部を有する。
【0122】
上記構成によれば、羽根の周縁面に設けられた溝部に生成される渦にて、羽根の周縁面と流体との間の流体摩擦を低減できる。その結果、ポンプの性能をより向上させることができる。
【0123】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0124】
なお、本開示は、マグロの小離鰭およびソウギョのウロコに着目した技術的思想を含んでいる。つまり、この発明は、バイオミメティクスに関係するものである。
【符号の説明】
【0125】
1 ポンプ部
2 ポンプケース
3、3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G、3H 羽根車
21 ポンプ室
22 軸挿入孔
23 導入開口
24 隔壁
26 吐出流路
26a 吐出開口
32 主板
33 羽根
33a 天面
33b 前側面
33c 後側面
33d 周縁面
34 溝流路
36 保護部
40、40A、40B、40C、40D、40E 凸部
50 溝部
50a 第1溝壁
50b 第2溝壁
X 回転の中心
Y2 回転方向
Y3 逆回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15