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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164074
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20221020BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20221020BHJP
   C23C 18/32 20060101ALN20221020BHJP
   C23C 18/38 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
H05K3/38 B
C23C18/32
C23C18/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069307
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 武馬
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 大祐
【テーマコード(参考)】
4K022
5E316
5E343
【Fターム(参考)】
4K022AA05
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA08
4K022BA14
4K022CA02
4K022DA01
5E316AA02
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC05
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD12
5E316DD17
5E316DD25
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF10
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG27
5E316GG28
5E316HH40
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA16
5E343AA17
5E343BB24
5E343BB44
5E343CC48
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343EE52
5E343EE56
5E343GG01
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、第1導体層11と、第1導体層11の上に形成されている絶縁層22と、絶縁層22の上に形成されている第2導体層と、絶縁層22を貫通して第1導体層11と第2導体層とを接続する接続導体4と、第1導体層11の表面に形成されていて第1導体層11と絶縁層22との密着性を向上させる被覆膜5と、を備えている。第1導体層11は、接続導体4と接する導体パッド1aを含み、導体パッド1aにおける第2導体層側の表面1a0は、互いに異なる面粗度を有する第1領域1aaと第2領域1abとを有し、第1領域1aaは被覆膜5に覆われており、第2領域1abは接続導体4に覆われている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体層と、
前記第1導体層の上に形成されている絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成されている第2導体層と、
前記絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する接続導体と、
前記第1導体層の表面に形成されていて前記第1導体層と前記絶縁層との密着性を向上させる被覆膜と、
を備える配線基板であって、
前記第1導体層は、前記接続導体と接する導体パッドを含み、
前記導体パッドにおける前記第2導体層側の表面は、互いに異なる面粗度を有する第1領域と第2領域とを有し、
前記第1領域は前記被覆膜に覆われており、
前記第2領域は前記接続導体に覆われている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2領域は前記第1領域に囲まれている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2領域の幅は、前記導体パッドとの界面における前記接続導体の幅の70%以上、130%以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記被覆膜は前記第2領域の全部を露出させている。
【請求項5】
請求項4記載の配線基板であって、前記接続導体は、前記第2領域の全部を覆っている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2領域の面粗度は前記第1領域の面粗度よりも低い。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板であって、前記第1領域は、前記第2領域に隣接している第1部分と、前記第1部分を囲んでいて前記第1部分の面粗度よりも高い面粗度を有する第2部分と、を含んでいる。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記接続導体は、前記第2領域の全部及び前記第1領域の前記第1部分の全部を覆っている。
【請求項9】
請求項6記載の配線基板であって、
前記第1導体層は、さらに、前記被覆膜に覆われている配線パターンを含み、
前記配線パターンの表面は、前記第1領域の面粗度よりも低い第1面粗度を有している。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板であって、前記第2領域は、前記第1面粗度よりも低い面粗度を有する第3部分を含んでいる。
【請求項11】
請求項9記載の配線基板であって、前記第2領域は、前記第1面粗度と略同じ面粗度を有する第4部分を含んでいる。
【請求項12】
請求項9記載の配線基板であって、前記第2領域は、前記第1面粗度よりも低い面粗度を有する第3部分と、前記第3部分を囲んでいて前記第1面粗度と略同じ面粗度を有する第4部分と、を含んでいる。
【請求項13】
導体パッドを有する第1導体層を第1絶縁層上に形成することと、
前記第1導体層の露出面を粗化することと、
前記第1導体層を覆う被覆膜を設けることと、
前記第1導体層及び前記被覆膜の上に第2絶縁層を形成することと、
前記第2絶縁層の上に第2導体層を形成することと、
前記第2絶縁層を貫通して前記導体パッドと前記第2導体層とを接続する接続導体を形成することと、
を含んでいる配線基板の製造方法であって、
前記第1導体層の露出面を粗化することは、前記導体パッドにおける前記第1絶縁層側と反対側の表面に、互いに異なる面粗度を有する第1領域と第2領域とを設けることを含み、
前記被覆膜を設けることは前記被覆膜で前記第1領域を覆うことを含み、
前記接続導体を形成することは前記接続導体で前記第2領域を覆うことを含んでいる。
【請求項14】
請求項13記載の配線基板の製造方法であって、前記第2領域は前記第1領域よりも低い面粗度を有するように設けられる。
【請求項15】
請求項13記載の配線基板の製造方法であって、
前記接続導体を形成することは、前記第2領域を露出させる貫通孔を前記第2絶縁層に形成することをさらに含み、
前記貫通孔は、前記第2領域の幅が、前記貫通孔における前記導体パッド側の開口幅の70%以上、130%以下になるように形成される。
【請求項16】
請求項15記載の配線基板の製造方法であって、
前記貫通孔を形成することは、前記被覆膜のうちの前記第2領域を覆っている部分を除去することを含んでいる。
【請求項17】
請求項15記載の配線基板の製造方法であって、前記貫通孔を形成することは、前記第2領域の全部を前記貫通孔内に露出させることを含んでいる。
【請求項18】
請求項13記載の配線基板の製造方法であって、前記接続導体は、前記第2領域の全部を覆うように形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント配線板に関し、低粗化又は無粗化の金属配線層の表面に化成皮膜が形成され、この化成皮膜を介して金属配線層上に絶縁樹脂層が形成されることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-172759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法によるプリント配線板では、プリント配線板の製造時や使用時に加わり得るストレスによって金属配線層と樹脂絶縁層との間で界面剥離が生じることがある。その結果、プリント配線板の品質劣化を招くことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1導体層と、前記第1導体層の上に形成されている絶縁層と、前記絶縁層の上に形成されている第2導体層と、前記絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する接続導体と、前記第1導体層の表面に形成されていて前記第1導体層と前記絶縁層との密着性を向上させる被覆膜と、を備えている。そして、前記第1導体層は、前記接続導体と接する導体パッドを含み、前記導体パッドにおける前記第2導体層側の表面は、互いに異なる面粗度を有する第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域は前記被覆膜に覆われており、前記第2領域は前記接続導体に覆われている。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、導体パッドを有する第1導体層を第1絶縁層上に形成することと、前記第1導体層の露出面を粗化することと、前記第1導体層を覆う被覆膜を設けることと、前記第1導体層及び前記被覆膜の上に第2絶縁層を形成することと、前記第2絶縁層の上に第2導体層を形成することと、前記第2絶縁層を貫通して前記導体パッドと前記第2導体層とを接続する接続導体を形成することと、を含んでいる。そして、前記第1導体層の露出面を粗化することは、前記導体パッドにおける前記第1絶縁層側と反対側の表面に、互いに異なる面粗度を有する第1領域と第2領域とを設けることを含み、前記被覆膜を設けることは前記被覆膜で前記第1領域を覆うことを含み、前記接続導体を形成することは前記接続導体で前記第2領域を覆うことを含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、配線パターンに所望される特性及び配線パターンと絶縁層との密着性を確保し、しかも、導体層同士を接続する接続導体と接する導体パッドと絶縁層との界面剥離などによる配線基板の品質劣化を抑制し得ることがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態における第1導体層の導体パターンの一例を示す平面図。
図3図1のIII部の拡大図。
図4A図1のIVA部の拡大図。
図4B図4Aの導体パッドの平面図。
図5A】本発明の一実施形態における導体パッドの面粗度の他の例を示す断面図。
図5B】本発明の一実施形態における導体パッドの面粗度のさらに他の例を示す断面図。
図6】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図7A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
図7H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図であり、図2は、配線基板100の第1導体層11の一部の導体パターンの一例を示す平面図である。図1には図2のI-I線に重なる切断線での断面図が示されている。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、並びに、導体層及び絶縁層それぞれの数は、図1の配線基板100の積層構造、並びに配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、コア基板3と、コア基板3におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(第1面3a及び第2面3b)それぞれの上に交互に積層されている絶縁層及び導体層を含んでいる。コア基板3は、絶縁層32と、絶縁層32の両面それぞれの上に形成されている導体層31とを含んでいる。
【0011】
なお、実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層32に近い側は「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各絶縁層において、絶縁層32と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層32側を向く表面は「下面」とも称される。
【0012】
配線基板100は、コア基板3の第1面3aの上に、絶縁層21(第1絶縁層)、第1導体層11、絶縁層22(第2絶縁層)、及び第2導体層12を備えている。絶縁層21はコア基板3の第1面3aを覆っている。第1導体層11は絶縁層21の表面21a上に形成されており、絶縁層22は絶縁層21及び第1導体層11の上に形成されている。そして、第2導体層12は絶縁層22の上に形成されている。配線基板100は、さらに、コア基板3の第2面3bの上に交互に積層されている2つの絶縁層23及び2つの導体層13を備えている。配線基板100は、さらに、各絶縁層を貫通し、各絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続する接続導体33及び接続導体4を備えている。接続導体33はコア基板3の絶縁層32に含まれている、所謂スルーホール導体である。接続導体4は、順次ビルドアップされる絶縁層21~23それぞれに形成されている、所謂ビア導体である。例えば絶縁層22に形成されている接続導体4は、第1導体層11と第2導体層12とを接続している。
【0013】
絶縁層22及び第2導体層12の上には、ソルダーレジスト6が形成されている。コア基板3の第2面3b側の最表層にもソルダーレジスト6が形成されている。ソルダーレジスト6には、第2導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口6aが設けられている。ソルダーレジスト6は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などで形成される。
【0014】
絶縁層21~23、及び絶縁層32は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などが例示される。図1の例では、絶縁層32は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)32aを含んでいる。図1には示されていないが、絶縁層32以外の各絶縁層も、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO2)、アルミナ、又はムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。
【0015】
第1及び第2の導体層11、12、導体層13、及び導体層31、並びに、接続導体4及び接続導体33は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。図1の例において、導体層31は、金属箔31a、金属膜31b、及びめっき膜31cを含んでいる。接続導体33は、導体層31と一体的に形成されていて、金属膜31b及びめっき膜31cによって構成されている。一方、第1及び第2の導体層11、12、及び導体層13、並びに接続導体4は、それぞれ、金属膜10b及びめっき膜10cによって構成されている。各接続導体4は、それぞれの上側で接続する各導体層と一体的に形成されている。めっき膜31c、10cは、例えば電解めっき膜である。金属膜31b及び金属膜10bは、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜であり、それぞれ、めっき膜31c及びめっき膜10cが電解めっきで形成される際の給電層として機能する。各導体層は、それぞれ、所定の導体パターンを含んでいる。第1導体層11は、導体パッド1aを含んでいる。図1及び図2の例では、第1導体層11は、さらに、配線パターン1b及び導体パターン1cを含んでいる。
【0016】
導体パッド1aは、絶縁層22を貫通する接続導体4と接している。すなわち、導体パッド1aは、その上に接続導体4が形成される導体パッドであり、絶縁層22を貫通する接続導体4に対する、所謂受けパッドである。図1の例では、絶縁層21を貫通する接続導体4と絶縁層22を貫通する接続導体4とが積み重なるように形成されており、所謂スタックビア導体が形成されている。導体パッド1aは、絶縁層21を貫通する接続導体4(ビア導体)の所謂ビアパッドとして設けられている。
【0017】
配線パターン1bは、任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能する導体パターンである。配線パターン1bは、絶縁層21を向く表面以外の表面を絶縁層22に覆われている。配線パターン1bは、例えば電気信号の所定の送信元と送信先とを単独で又は他の導体パターンと連携して接続していてもよく、電力の所定の給電元と給電先とを接続していてもよい。配線パターン1bは、例えば数GHzを超えるような高周波信号の伝送路であってもよい。図2に示されるように、図1の例の2つの配線パターン1bは、第1導体層11内の2つの導体パッド1d同士を接続している。
【0018】
導体パターン1cは、導体パッド1a及び配線パターン1bが形成されていない領域に広がる平板状の形体を有する導体パターンである。導体パターン1cは、第1導体層11において導体パターン1c以外の配線や接続パッドなどの導体が形成されない領域を略埋め尽くすように設けられる所謂ベタパターンであってもよい。導体パターン1cは、例えば、グランド電位又は特定の電源の電位が印加されるグランドプレーン又は電源プレーンとして用いられる。
【0019】
図1では省略されているが、図2に示されるように、配線基板100は、さらに、第1導体層11における絶縁層21と反対側の表面、及び絶縁層21の表面21aに形成されている被覆膜5を備えている。すなわち、第1導体層11における第2導体層12側の表面及び絶縁層21の表面21aは、被覆膜5に覆われている。第1導体層11の各導体パターンのうち、配線パターン1bは全面的に被覆膜5に覆われている。図2の例では、導体パターン1cも略全面的に被覆膜5に覆われている。一方、導体パッド1aは、部分的に被覆膜5に覆われている。被覆膜5は、導体パッド1a上に開口5aを有しており、開口5aの周囲の部分で導体パッド1aを覆っている。
【0020】
図3には、図1のIII部の拡大図が示されている。図4Aには、図3の一部を含む図1のIVA部の拡大図が示され、図4Bには、図4Aに示される導体パッド1aの平面図が示されている。図3並びに図4A及び図4Bを参照して、導体パッド1aにおける第2導体層12側の表面である表面1a0の面粗度が、被覆膜5と共に詳述される。
【0021】
図3に示されるように、被覆膜5は、第1導体層11の表面及び絶縁層21の表面21aに形成されており、第1導体層11又は絶縁層21と、絶縁層22との間に介在している。被覆膜5は、第1導体層11と絶縁層22との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、絶縁層22を構成する樹脂などの有機材料、及び第1導体層11を構成する金属などの無機材料の両方と結合し得る材料によって形成される。被覆膜5は、例えば、有機材料と化学結合し得る反応基及び無機材料と化学結合し得る反応基の両方を含む材料によって形成される。そのため、被覆膜5に覆われている第1導体層11の各導体パターンと絶縁層22とが十分な強度で密着する。被覆膜5の材料としては、トリアゾール化合物などのアゾールシラン化合物を含むシランカップリング剤が例示される。なお、被覆膜5の材料は、第1導体層11の上に絶縁層22が直接形成される場合と比べて、第1導体層11と絶縁層22との密着強度を高め得るものであればよく、シランカップリング剤に限定されない。
【0022】
図3に示されるように、本実施形態では、配線パターン1bの表面のうちの絶縁層22と向かい合っている表面1b1(以下、単に「表面1b1」とも称される)は、被覆膜5に覆われている。図3の例では、導体パターン1cの表面のうちの絶縁層22と向かい合う表面1c1(以下、単に「表面1c1」とも称される)も被覆膜5に覆われている。従って、被覆膜5がない場合と比べて配線パターン1b及び導体パターン1cと絶縁層22との密着性が高められている。従って、配線パターン1bや導体パターン1cからの絶縁層22の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。
【0023】
被覆膜5は、導体パッド1aを部分的に覆っている。具体的には、導体パッド1aの表面のうちの絶縁層22と向かい合っている領域が被覆膜5に覆われている。導体パッド1aと絶縁層22との間には被覆膜5が介在しているので、導体パッド1a上においても、絶縁層22の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。
【0024】
一方、導体パッド1aの表面1a0の内方部(中央部)は、被覆膜5に覆われずに被覆膜5の開口5a内に露出している。表面1a0における開口5a内の部分は接続導体4に覆われている。すなわち、導体パッド1aの表面1a0のうちの被覆膜5に覆われていない部分において、接続導体4と導体パッド1aとが接続されている。そのため、被覆膜5を構成する例えばシランカップリング剤のような有機材料を介さずに、導体パッド1aを構成する銅などの金属と接続導体4を構成する銅などの金属とが直接接している。従って、導体パッド1aと接続導体4との界面において金属同士による機械的に強固で電気的抵抗の小さい接合が得られていると考えられる。
【0025】
先に参照された図1では省略されているが、図3に示されるように、導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cそれぞれの表面のうちの絶縁層22と向かい合っている表面は、凹凸を有し得る。配線パターン1bの表面1b1上の凹凸の高低差は、導体パッド1aの表面1a0の一部(例えば被覆膜5に被覆されている部分)の凹凸の高低差よりも小さく、表面1b1は比較的低い面粗度(第1面粗度)を有している。
【0026】
一般に、面粗度の高い表面を有する配線パターンでは、高周波信号の伝送において、表皮効果の影響による実質的なインピーダンスの増加によって伝送特性が低下することがある。また、例えば10μm/10μm(配線幅/配線間隔)程度以下のファインな配線パターンでは、その表面が高度に粗化されると、設計上の配線幅や厚さに対して粗化後に所望の寸法が得られないことがある。これに対して本実施形態では、配線パターン1bの表面1b1は、比較的低い面粗度、少なくとも導体パッド1aの表面1a0の一部よりも低い面粗度を有しているので、高い面粗度に起因する高周波伝送特性の低下などの問題が生じ難いと考えられる。
【0027】
一方、比較的低い面粗度の表面を有する導体層とその表面上に形成される絶縁層との間に得られる所謂アンカー効果の作用は比較的小さいので、導体層と絶縁層との剥離が生じ易いことがある。しかし本実施形態の配線パターン1bの表面1b1は被覆膜5に覆われているので、配線パターン1bと絶縁層22との間の剥離は生じ難いと考えられる。図3の例では、導体パターン1cの表面1c1は、配線パターン1bの表面1b1上の凹凸の高低差と同程度の高低差の凹凸を有しており、表面1b1の面粗度と略同じ面粗度を有している。導体パターン1cにおいても良好な高周波伝送特性が得られると考えられる。
【0028】
図3及び図4Aに示されるように、導体パッド1aの表面1a0における中央部よりも外側の領域の凹凸の高低差は、配線パターン1bの表面1b1が有する凹凸の高低差よりも大きい。すなわち、導体パッド1aの表面1a0は、配線パターン1bの表面1b1が有する第1面粗度よりも高い面粗度を有する領域(第1領域1aa)を有しており、第1面粗度は第1領域1aaの面粗度よりも低い。第1領域1aaは、第1面粗度よりも高い面粗度を有するように粗化されている。第1領域1aaは例えばマイクロエッチングなどによって粗化されている。
【0029】
図3及び図4Aの例において第1領域1aaは被覆膜5に部分的に覆われている。第1領域1aaは、図4Aに示されるように、開口5aにおいて被覆膜5から露出している第1部分1a1と、被覆膜5に覆われている第2部分1a2とを含んでいる。第1部分1a1は、絶縁層22にも覆われずに接続導体4に覆われている。一方、被覆膜5に覆われている第2部分1a2は、被覆膜5を介して絶縁層22にも覆われている。図4Aの例において第1部分1a1と第2部分1a2は互いに異なる面粗度を有している。第2部分1a2は、第1部分1a1の面粗度よりも高い面粗度(第2面粗度)を有している。第2部分1a2上の凹凸の凹部は被覆膜5で充填されている。
【0030】
導体パッド1aの表面1a0は、さらに、第1領域1aaよりも内方側に、配線パターン1bの表面1b1が有する凹凸の高低差以下の高低差の凹凸を有する領域を含んでいる。すなわち、表面1a0は、第1領域1aaに加えて、配線パターン1bの表面1b1が有する第1面粗度と略同じか、第1面粗度よりも低い面粗度を有する領域(第2領域1ab)を有している。このように本実施形態では、導体パッド1aの表面1a0は、互いに異なる面粗度を有する第1領域1aaと第2領域1abとを有している。第1領域1aaは比較的高い面粗度を有し、第2領域1abは比較的低い面粗度を有する。第2領域1abの面粗度は第1領域1aaの面粗度よりも低い。第2領域1ab、並びに、配線パターン1bの表面1b1(及び導体パターン1cの表面1c1)は、これら各表面のために積極的に設けられた工程で粗化されていなくてもよい。第2領域1ab並びに表面1b1(及び表面1c1)の凹凸は、めっき膜10cの粒界やめっき膜10cの形成時のめっきレジストの表面の凹凸によって生じていてもよい。
【0031】
図3及び図4Aの例では、導体パッド1aの第2領域1abは、配線パターン1bの表面1b1が有する第1面粗度よりも低い面粗度を有する部分(第3部分)を含んでいる。具体的には、第2領域1ab全体が第1面粗度よりも低い面粗度を有している。なお、図3及び図4Aでは、配線パターン1bの表面1b1の面粗度との違いを示すべく第2領域1abが平坦に描かれているが、第2領域1abは平坦面でなくてもよく、第1面粗度以下の任意の面粗度に応じた凹凸を有し得る。また本実施形態の配線基板100において第2領域1ab全体が、配線パターン1bの表面1b1の面粗度(第1面粗度)と略同じ面粗度を有していてもよく、第2領域1abが第1面粗度と略同じ面粗度を有する部分(第4部分)を含んでいてもよい。
【0032】
図3及び図4Aの例では、導体パッド1aの表面1a0のうちの第2部分1a2以外の部分は開口5a内に位置している。従って、被覆膜5は、導体パッド1aの表面1a0のうちの第2領域1abの全部、及び、第1領域1aaの第1部分1a1の全部を、開口5aに露出させている。接続導体4は、その開口5a全体に渡って形成されているので、導体パッド1aの第2領域1ab、及び第1領域1aaの第1部分1a1それぞれの全部を覆っている。第1部分1a1上の凹凸の凹部、及び、第2領域1ab上の図示されていない凹凸の凹部は、接続導体4を構成する金属膜10bで充填されている。
【0033】
図4A及び図4Bに示されるように、導体パッド1aの表面1a0において第2領域1abは第1領域1aaに囲まれている。第1領域1aaは、第2領域1abよりも表面1a0の縁部側に位置していて、平面視における全方位において第2領域1abを囲んでいる。第1領域1aaは、ゼロよりも大きい幅W1を有している。すなわち、導体パッド1aの表面1a0において、第2領域1abと導体パッド1aの外縁との間には、第1領域1aaが介在している。なお「平面視」は、配線基板100をその厚さ方向に沿う視線に沿って視ることを意味している。
【0034】
導体パッド1aの第1領域1aaの第1部分1a1は、第2部分1a2よりも内方に位置していて第2領域1abと隣接している。一方、第2部分1a2は、平面視において接続導体4を囲むと共に、第1部分1a1を囲んでいる。第2部分1a2は、平面視における全方位において第1部分1a1を囲んでいる。すなわち、導体パッド1aの表面1a0において、第1部分1a1と、導体パッド1aの外縁との間には、第1部分1a1の面粗度よりも高い面粗度(第2面粗度)を有している第2部分1a2が介在している。同様に、導体パッド1aの表面1a0において、接続導体4と導体パッド1aの外縁との間には、比較的高い面粗度を有する第1領域1aaが介在しており、特に、第1部分1a1の面粗度よりも高い第2面粗度を有している第2部分1a2が介在している。
【0035】
実施形態の配線基板100では、導体パッド1aの表面1a0の第1領域1aaが比較的高い面粗度を有するように粗化されている。第1領域1aaは、平面視で接続導体4を囲んでいる。そのため、「ハローイング」とも称される導体パッド1aと絶縁層22との間の剥離が抑制されると考えられる。具体的には、導体パッド1aと絶縁層22との界面への意図せぬ液体の浸入が、比較的高い面粗度を有する第1領域1aaの凹凸によって防がれる。その結果、そのような液体の浸入によって引き起こされ得る導体パッド1aと絶縁層22との剥離が抑制されることがある。
【0036】
詳述すると、配線基板100の製造工程では、接続導体4の形成のために絶縁層22に設けられた貫通孔4aの内壁が、各種の処理溶液やめっき液になどに晒されることがある。そしてそれらの液体が、貫通孔4aの内壁から導体パッド1aと絶縁層22との界面に浸入し、導体パッド1aと絶縁層22との剥離を引き起こすことがある。しかし本実施形態では、導体パッド1aの表面1a0は、貫通孔4aと導体パッド1aの外縁との間に、第1領域1aa(図3及び図4Aの例では第1領域1aaのうちの第2部分1a2)を有している。そのため、導体パッド1aと絶縁層22との剥離を引き起こし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い面粗度を有する導体パッド1aの第1領域1aaの凹凸によって防がれる。図3などの例では、そのような液体の浸入が、第1領域1aaのうちの第2面粗度を有する第2部分1a2の凹凸によって防がれる。
【0037】
さらに本実施形態では、第1導体層11を覆う被覆膜5の溶解による品質の劣化が生じ難いと考えられる。前述したように、配線基板100の製造工程では、絶縁層22に設けられた貫通孔4aの内壁は各種の液体に晒され得る。その液体が導体パッド1aと絶縁層22との界面に浸入すると、浸入した液体が被覆膜5を溶解させることがある。その場合、被覆膜5が貫通孔4a内に溶出して接続導体4と導体パッド1aとの接続不良を引き起こしたり、被覆膜5の溶解箇所において第1導体層11と絶縁層22との剥離が発生したりすることがある。しかし本実施形態では、そのような被覆膜5の溶解をもたらし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い面粗度を有する導体パッド1aの第1領域1aaの凹凸によって防がれる。従って被覆膜5が溶解し難い。すなわち、第1導体層11と絶縁層22とが剥離し難い。また、貫通孔4a内への被覆膜5の溶出による接続導体4と導体パッド1aとの接続不良も生じ難い。
【0038】
加えて本実施形態では、導体パッド1aの表面1a0が、第1領域1aaよりも内側に、比較的低い面粗度を有する第2領域1abを有しているので、絶縁層22と導体パッド1aとの剥離がさらに生じ難いと考えられる。詳述すると、導体パッド1aの表面1a0は、その面粗度に応じた放射率を有していて、高い面粗度を有するほど高い放射率を有し得る。換言すると、導体パッド1aの表面1a0は、高い面粗度を有しているほど、レーザー光などの電磁波から高度に吸熱し、その結果、導体パッド1aの温度が上昇する。
【0039】
一方、接続導体4を形成するための貫通孔4aは、後述されるように、例えばレーザー光を照射することによって形成され得る。レーザー光は、接続導体4の受けパッドである導体パッド1aの表面1a0の中央部に向けて照射される。従って、導体パッド1aの表面1a0の全面が第1領域1aaのような比較的高い面粗度を有していると、導体パッド1aの温度が上昇し易い。その結果、被覆膜5と絶縁層22との間の熱膨張率の違いによって被覆膜5と絶縁層22との間で界面剥離が生じることがある。
【0040】
しかし本実施形態では、導体パッド1aの表面1a0は、比較的高い第2面粗度を有する第1領域1aaの内側に、比較的低い面粗度を有する第2領域1abを備えている。そのため、貫通孔4aの形成のためにレーザー光のような電磁波が導体パッド1aに向けて照射されても、表面1a0の全面が第1領域1aaの面粗度と同じ面粗度を有している場合と比べて、導体パッド1aの温度が上昇し難い。従って、被覆膜5と絶縁層22との界面剥離、すなわち絶縁層22と導体パッド1aとの剥離が一層生じ難いと考えられる。
【0041】
配線基板100では、前述したように、配線パターン1bにおいて良好な伝送特性及び絶縁層22との十分な密着性が得られる。しかも、接続導体4と接する導体パッド1aと絶縁層22との剥離などによる品質劣化を抑制することができる。このように本実施形態によれば、配線パターンに所望される特性及び配線パターンと絶縁層との密着性を確保し、しかも、導体層同士を接続する接続導体に接する導体層と絶縁層との剥離などによる配線基板の品質劣化を抑制し得ることがある。
【0042】
導体パッド1aの温度上昇の抑制、及び、導体パッド1aと絶縁層22との界面への液体の浸入防止の両立のためには、導体パッド1aの表面1a0の第1領域1aaの面粗度と第2領域1abの面粗度との差は大きい方が好ましいと考えられる。表面1a0の第2領域1abは、配線パターン1bの表面1b1が有する第1面粗度以下の面粗度を有し得る。例えば、導体パッド1aの第1領域1aaが第2部分1a2において有する第2面粗度は、例えば配線パターン1bの表面1b1の第1面粗度よりも100%以上高い。その場合、導体パッド1aと絶縁層22との界面への液体の浸入を防ぎながら、絶縁層22と導体パッド1aとの間の剥離をもたらすような導体パッド1aの温度上昇を防ぎ得ることがある。加えて、配線パターン1bにおいて、数GHzオーダーの高周波信号に対する良好な伝送特性が得られることがある。
【0043】
第2面粗度は、第1面粗度の200%以上、1200%以下であってもよい。その場合、導体パッド1aの粗化工程が過剰な時間を必要とせず、また、粗化工程中の絶縁層21などへのダメージも少ないと考えられる。第1面粗度は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.05μm以上、0.15μm以下である。第2面粗度は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.3μm以上、0.6μm以下である。すなわち、導体パッド1aの第1領域1aaの第2部分1a2の算術平均粗さ(Ra)は、配線パターン1bの表面1b1又は導体パッド1aの第2領域1abの算術平均粗さ(Ra)の2倍以上である。
【0044】
第2領域1abの大きさは、貫通孔4aの形成時の導体パッド1aの温度上昇が抑制され得るように選択される。好ましくは、平面視における貫通孔4aの面積が大きいほど、第2領域1abの面積は大きい。第2領域1abの幅W2は、導体パッド1aとの界面における接続導体4の幅(すなわち貫通孔4aの幅)W3の例えば70%以上であり、好ましくは80%以上である。第2領域1abが、この程度の比率の幅W2を有していると、貫通孔4aの形成時の導体パッド1aの温度上昇による絶縁層22と導体パッド1aとの剥離が抑制され易い。
【0045】
なお、導体パッド1aの表面1a0の第2領域1ab、接続導体4、及び貫通孔4aそれぞれの「幅」は、第2領域1ab、接続導体4、及び貫通孔4aそれぞれの平面視における外周上の任意の2点間の最長距離である。第2領域1ab、接続導体4、及び貫通孔4aは、それぞれ、任意の平面形状を有し得る。例えば第2領域1abが円形の平面形状を有する場合、第2領域1abの幅は、第2領域1abの平面形状における直径である。
【0046】
図4Aの例では、接続導体4は、第1導体層11側において第2導体層12側よりも細くなるテーパー形状を有している。接続導体4が図4Aの例のようなテーパー形状を有する場合、第2領域1abの幅W2は、第2導体層12との界面における接続導体4の幅W4の例えば60%以上であってもよく、好ましくは接続導体4の幅W4の70%以上であってもよい。
【0047】
第2領域1abが、接続導体4の幅W3の70%以上の幅W2を有し、絶縁層22の厚さが例えば30μm~100μm程度である場合の円形の平面形状を有する接続導体4の幅(ボトム幅)W3としては、20μm以上、90μm以下が例示される。またその場合の接続導体4の幅(トップ幅)W4としては、30μm以上、100μm以下が例示される。
【0048】
後述されるように、第2領域1abの幅W2は、接続導体4の幅W3よりも大きくてもよい。すなわち、第2領域1abの面積は、導体パッド1aとの界面における接続導体4の面積(すなわち貫通孔4aの開口面積)よりも大きくてもよい。貫通孔4aの形成位置が多少ばらついても、平面視において全体が第2領域1ab内に収まるように接続導体4を形成することができる。その場合、第2領域1abの幅W2は、接続導体4の幅W3(すなわち導体パッド1aとの界面における貫通孔4aの幅)の、例えば130%以下であり、好ましくは120%以下である。導体パッド1aが配線基板100のサイズに影響を及ぼすほど過大になり難いと考えられる。
【0049】
図5A及び図5Bには、本実施形態の配線基板における導体パッド1aの他の例が示されている。図5Aは、導体パッド1aの他の例における図1のIVA部に相当する部分の拡大図である。図5Bは、導体パッド1aのさらに他の例における導体パッド1aの拡大図である。図5A及び図5Bにおいて図1に示される例と同様の構成要素には、図4Aにおいて付された符号と同じ符号が付されるか適宜省略され、その再度の説明は省略される。図5A及び図5Bは、それぞれ、表面1a0の面粗度に関する導体パッド1aの他の例を示している。
【0050】
図5Aの例において導体パッド1aの表面1a0は、図4Aの例と同様に、互いに異なる面粗度を有する第1領域1aaと第2領域1abとを有している。図5Aの例においても、第1領域1aaは配線パターン1bの表面1b1(図3参照)が有する第1面粗度よりも高い面粗度を有しており、第2領域1abは第1面粗度以下の面粗度を有している。第2領域1abは第1領域1aaに囲まれている。第1領域1aaは、例えば、図4Aの例における第1領域1aaの第2部分1a2と同じ第2面粗度を有し得る。
【0051】
被覆膜5は、第1領域1aa及び導体パッド1aの側面を覆っている。被覆膜5は、第1領域1aa上に開口5aを有しており、開口5aの周囲の部分で第1領域1aaの周縁部を覆っている。第2領域1ab、及び第1領域1aaのうちの第2領域1abの近傍の部分は、被覆膜5の開口5aに露出している。第1領域1aaのうちの被覆膜5の開口5aに露出している部分及び第2領域1abの周縁部は絶縁層22に直接覆われている。そして、第2領域1abの内方部(中央部)は接続導体4に接続されている。すなわち、接続導体4は、第2領域1abのうちの被覆膜5及び絶縁層22のいずれにも覆われていない第2領域1abの一部を覆っている。
【0052】
図5Aの例の第2領域1abは、配線パターン1bの表面1b1(図3参照)が有する第1面粗度よりも低い面粗度を有する第3部分1a3と、第1面粗度と略同じ面粗度を有する第4部分1a4と、を含んでいる。第4部分1a4は第3部分1a3を囲んでいる。第3部分1a3が被覆膜5に覆われずに開口5a内に露出していて接続導体4に覆われている。一方、第4部分1a4は、第1領域1aaに隣接していて、第1領域1aaの一部と共に、被覆膜5を介さずに絶縁層22に直接覆われている。なお、図5Aでは、第4部分1a4の面粗度との違いを示すべく第3部分1a3が平坦に描かれているが、第3部分1a3は平坦面でなくてもよく、第1面粗度以下の任意の面粗度に応じた凹凸を有し得る。
【0053】
図5Aの例のように、導体パッド1aの第2領域1abの幅W2は、導体パッド1aとの界面における接続導体4の幅W3よりも大きくてもよい。換言すれば、第2領域1abの面積は、導体パッド1aとの界面における接続導体4の面積よりも大きくてもよく、導体パッド1aと接続導体4との界面全体が第2領域1ab内に収まっていてもよい。例えば、第2領域1abの幅W2は、図5Aの例のように、第2導体層12との界面における接続導体4の幅W4と略同じであってもよく、接続導体4の幅W4よりも大きくてもよい。低い面粗度を有する第2領域1abが広いので、導体パッド1aの温度上昇が抑制され易いと考えられる。
【0054】
図5Aの例においても、導体パッド1aと絶縁層22との界面への意図せぬ液体の浸入は、比較的高い面粗度(例えば第2面粗度)を有する第1領域1aaの凹凸によって防がれる。また、表面1a0において被覆膜5よりも内側に第1領域1aaの一部が存在するので、液体の浸入による被覆膜5の溶解も第1領域1aaの凹凸によって防がれる。
【0055】
導体パッド1aの表面1a0の第2領域1abの幅は、図5Bの例のように、導体パッド1aとの界面における接続導体4の幅W3と略同じであってもよい。図5Bの例においても表面1a0は、比較的低い面粗度を有する第2領域1abと、第2領域1abを囲んでいて比較的高い面粗度を有する第1領域1aaとを有している。そして被覆膜5は、表面1a0のうちの第1領域1aaだけをその全部に渡って覆い、第2領域1abの全部を開口5aに露出させている。接続導体4は、開口5aに露出する第2領域1abにおいて導体パッド1aと接続していて第2領域1abの全部を覆っている。第2領域1ab全体が配線パターン1bの表面1b1(図3参照)の面粗度よりも低い面粗度を有している。図5Bの例においても、貫通孔4aの形成時の導体パッド1aの温度上昇が抑制され、導体パッド1aと絶縁層22との界面への意図せぬ液体の浸入は第1領域1aaの凹凸によって防がれる。すなわち、導体パッド1aと絶縁層22との界面剥離が生じ難い。
【0056】
図6には、本実施形態の配線基板の他の例が示されている。図6は、本実施形態の配線基板の他の例における図1のIII部に相当する部分の拡大図である。図6において図1に示される例と同様の構成要素には、図3おいて付された符号と同じ符号が付されるか適宜省略され、その再度の説明は省略される。
【0057】
図6の例では、導体パターン1cの表面1c1も、導体パッド1aの表面1a0の第2部分1a2と同様に、配線パターン1bの表面1b1が有する第1面粗度よりも高い面粗度(例えば第2部分1a2と同じ第2面粗度)を有するように粗化されている。表面1c1は、さらに被覆膜5によって覆われている。従って、導体パターン1cと絶縁層22との界面剥離が一層生じ難いと考えられる。このように導体パターン1cの表面1c1も、例えば第2面粗度を有するように粗化されていてもよい。なお導体パターン1cは被覆膜5に覆われていなくてもよい。
【0058】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、図1の配線基板100を例に用いて図7A図7Hを参照して説明される。
【0059】
図7Aに示されるように、コア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔31aを含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意され、コア基板3の導体層31及び接続導体33が形成される。例えばドリル加工又は炭酸ガスレーザー光の照射によって接続導体33の形成位置に貫通孔が形成され、その貫通孔内及び金属箔31a上に無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜31bが形成される。そして金属膜31bを給電層として用いる電解めっきによってめっき膜31cが形成される。その結果、3層構造の導体層31、及び2層構造の接続導体33が形成される。その後、サブトラクティブ法によって導体層31をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板3が得られる。
【0060】
そして、絶縁層21(第1絶縁層)及び絶縁層23が、コア基板3の第1面3a上及び第2面3b上にそれぞれ形成される。絶縁層21及び絶縁層23の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板3の上に積層され、加熱及び加圧される。絶縁層21及び絶縁層23は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の樹脂によって形成され得る。絶縁層21及び絶縁層23には、接続導体4を形成すべく貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
【0061】
本実施形態の配線基板の製造方法は、図7Aに示されるように、導体パッド1aを有する第1導体層11を絶縁層21上に形成することを含んでいる。図7Aの例では、さらに配線パターン1b及び導体パターン1cを含む第1導体層11が形成されている。コア基板3の第2面3b側には導体層13が形成される。絶縁層21及び絶縁層23それぞれには接続導体4が形成される。第1導体層11、導体層13、及び接続導体4は、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。すなわち、貫通孔4a内、並びに、絶縁層21及び絶縁層23の表面上に、例えば無電解めっきによって金属膜10bが形成される。金属膜10bの上に、導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cに対応する開口、又は、導体層13に含まれるべき導体パターンに対応する開口を有するめっきレジスト(図示せず)が設けられる。そして、金属膜10bを給電層として用いる電解めっきによって、めっきレジストの開口内にめっき膜10cが形成される。その結果、第1導体層11及び導体層13それぞれが形成される。貫通孔4a内には接続導体4が形成される。その後、めっきレジストが、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性剥離剤を用いて除去され、さらに、金属膜10bにおいてめっき膜10cに覆われずに露出している部分がエッチングなどによって除去される。
【0062】
本実施形態の配線基板の製造方法は、図7B及び図7Cに示されるように、第1導体層11の表面のうちの絶縁層21と接していない領域である露出面を部分的に粗化することを含んでいる。図7Cは、図7BのVIIC部における導体パッド1aの露出面の粗化処理後の拡大図である。本実施形態において第1導体層11の露出面を粗化することは、導体パッド1aの表面1a0(絶縁層21側と反対側の表面)に、互いに異なる面粗度を有する第1領域1aaと第2領域1abとを設けることを含んでいる。図7Cの例では、粗化されている第1領域1aaと粗化されていない第2領域1abとが設けられる。従って第2領域1abは、第1領域1aaよりも低い面粗度を有するように設けられている。換言すると、第1導体層11の露出面を部分的に粗化することは、粗化されていない非粗化領域(第2領域1ab)を導体パッド1aの表面1a0に残すことを含み得る。第1領域1aa及び第2領域1abを設けることによって、後工程における各種の処理溶液やめっき液による導体パッド1aと絶縁層22(図7E参照)との界面への浸入や、導体パッド1aの温度上昇が抑制される。その結果、導体パッド1aと絶縁層22との間の界面剥離が防がれることがある。
【0063】
また図7Cの例では、配線パターン1b以外の第1導体層11の露出面が粗化される。配線パターン1bの表面1b1が粗化されないので、高周波伝送特性に優れた配線パターン1bを得ることができる。そのため、図7B及び図7Cに示されるように、第1導体層11の露出面の粗化において、配線パターン1b、及び、導体パッド1aの表面1a0における第2領域1abとなるべき領域を覆うレジスト膜R1が設けられる。図1の配線基板100では導体パターン1cの表面も粗化されないので、図7B及び図7Cのレジスト膜R1は導体パターン1cも覆うように設けられている。
【0064】
レジスト膜R1は、例えば感光性樹脂を含むフィルムの積層によって形成される。レジスト膜R1には、露光及び現像などのフォトリソグラフィ技術を用いて、少なくとも導体パッド1aにおける第1領域1aaとなるべき領域を露出させる開口R1aが設けられる。レジスト膜R1は、例えば、前述した第1導体層11の形成に用いられるめっきレジスト(図示せず)と同様の材料で形成される。その後、例えば、黒化処理又はブラウン処理と呼ばれる表面酸化処理や、酸性の溶剤を用いたマイクロエッチング処理などの任意の方法によって、第1導体層11の露出面が粗化される。
【0065】
導体パッド1aの第2領域1abは、後工程で形成される接続導体4(図7H参照)と重なる位置に設けられる。図7Cの例では、第2領域1abは、表面1a0のうちの接続導体4と接続されるべき領域1a5の幅(導体パッド1aとの界面における接続導体4の幅)よりも小さい幅W2を有するように設けられている。すなわち、領域1a5よりも小さい面積を有していて領域1a5に含まれる第2領域1abが設けられている。なお、実施形態の配線基板の製造方法では、導体パッド1aとの界面における接続導体4の幅と同じか又は大きな幅W2を有する第2領域1abが設けられてもよい。
【0066】
導体パッド1aの第1領域1aaは、例えば、導体パッド1aの第2領域1abの面粗度、及び、配線パターン1bの表面1b1の面粗度(第1面粗度)よりも高い面粗度(第2面粗度)を有するように粗化され得る。導体パッド1aの第1領域1aaは、例えば、算術平均粗さ(Ra)で、0.3μm以上、0.6μm以下の面粗度を有するように粗化される。導体パッド1aの露出面の粗化後、レジスト膜R1は、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性剥離剤を用いて除去される。
【0067】
図7Dに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第1導体層11を覆う被覆膜5を設けることを含んでいる。図7Dは、図7Cと同様の部分における被覆膜5の形成後の状態を示している。被覆膜5を設けることは、導体パッド1aの第1領域1aaを被覆膜5で覆うことを含んでいる。図7Dの例では、導体パッド1a及び導体パターン1cを含む第1導体層11全体、並びに絶縁層21の表面21aを覆う被覆膜5が形成されている。被覆膜5は、第1導体層11と、後工程で形成される絶縁層22(図7E参照)との密着性を向上させる。導体パッド1aにおいても絶縁層22との密着性を高めることができる。被覆膜5は、例えば、シランカップリング剤などの、有機材料及び無機材料の両方と結合し得る材料を含む液体への第1導体層11及び絶縁層21の浸漬や、そのような液体の噴霧(スプレーイング)によって形成される。しかし、被覆膜5の形成方法は任意であり、被覆膜5を構成する材料への浸漬や、その材料の噴霧に限定されない。
【0068】
図7E及び図7Fに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第1導体層11及び被覆膜5の上に絶縁層22(第2絶縁層)を形成することを含んでいる。なお、図7Fには図7EにおけるVIIF部の拡大図が示されている。絶縁層22の形成によって、一旦、導体パッド1a全体が絶縁層22に覆われる。コア基板3の第2面3b側には、さらに絶縁層23が形成される。絶縁層22及び絶縁層23は、絶縁層21と同様に、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂の積層、並びに加熱及び加圧によって形成される。
【0069】
絶縁層22及び絶縁層23には、後工程で接続導体4(図7G参照)を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザーのようなレーザー光の照射などによって形成される。導体パッド1aの領域1a5(接続導体4と接続されるべき領域)の上の絶縁層22に貫通孔4aが形成される。貫通孔4aの形成によって、第2領域1ab(非粗化領域)が貫通孔4a内に露出する。このように後工程で接続導体4を形成することは、第2領域1abを露出させる貫通孔4aを絶縁層22に形成することを含み得る。
【0070】
図7Fの例のように、導体パッド1aが被覆膜5に覆われている場合、貫通孔4aを形成するための例えばレーザー光の照射によって、レーザー光に照射された部分の被覆膜5が気化や昇華などにより除去される。具体的には、被覆膜5のうちの導体パッド1aの領域1a5を覆っている部分が除去される。導体パッド1aの領域1a5は第2領域1ab(非粗化領域)と少なくとも部分的に重なっている。従って、貫通孔4aを形成することは、被覆膜5のうちの第2領域1abを覆っている部分を除去することを含み得る。
【0071】
本実施形態では、貫通孔4aの形成時にレーザー光が照射される導体パッド1aの表面1a0に第2領域1ab(非粗化領域)が設けられているので、導体パッド1aにおけるレーザー光からの吸熱量を少なくすることができる。前述したように、導体パッド1aと絶縁層22との間の界面剥離が抑制される。一方、レーザー光に照射される導体パッド1aの表面1a0が被覆膜5に覆われていると、レーザー光の照射によって生じる被覆膜5の溶解液が、導体パッド1aと絶縁層22との界面に浸透して界面剥離などをもたらすことがある。しかし本実施形態によれば、粗化工程によって導体パッド1aの表面1a0に比較的高い面粗度を有する第1領域1aaが設けられるので、そのような溶解液の浸透が防がれる。
【0072】
貫通孔4aは、第2領域1abの幅W2が、貫通孔4aにおける導体パッド1a側の開口幅(すなわち後工程で形成される接続導体4の幅)W3の、例えば70%以上、130%以下、好ましくは80%以上、120%以下になるように形成される。このように貫通孔4aが形成されると、導体パッド1aの温度上昇による絶縁層22と導体パッド1aとの界面剥離が抑制されると考えられる。また、配線基板のサイズに影響を及ぼすほど導体パッド1aが過大になり難いと考えられる。
【0073】
図7Fの例では、第2領域1abの幅W2よりも大きな開口幅を有する貫通孔4aが形成されている。そのため、第2領域1abの全部が貫通孔4a内に露出されている。また、導体パッド1aの表面1a0における貫通孔4aの内壁付近には、第1領域1aaの一部(第1部分1a1)が貫通孔4aの内壁に沿って露出している。一方、第1領域1aaにおいて第1部分1a1よりも外周側の部分(第2部分1a2)は、第1部分1a1を囲むと共に、貫通孔4aを囲んでいる。一方、第2部分1a2は被覆膜5及び絶縁層22に覆われている。
【0074】
貫通孔4aの形成後、好ましくは、貫通孔4aの形成によって生じた樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理が行われる。例えばアルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に貫通孔4aの内壁を晒すことによって貫通孔4a内のスミアが除去される。このデスミア処理のための処理液による、導体パッド1aと絶縁層22との界面への浸入が、導体パッド1aの粗化された第1領域1aa、特に第2部分1a2の凹凸によって防がれる。また、貫通孔4aの形成において絶縁層22と導体パッド1aとの間の界面剥離が生じているとデスミア処理でその界面剥離が拡大し得るが、本実施形態では、前述したように貫通孔4aの形成時の導体パッド1aの温度上昇が抑制される。従って、デスミア処理による界面剥離の発生や拡大は起こり難い。
【0075】
図7G及び図7Hに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層22の上に第2導体層12を形成することと、絶縁層22を貫通して導体パッド1aと第2導体層22とを接続する接続導体4を形成することとを含んでいる。なお、コア基板3の第2面3b側には、さらに、導体層13及び接続導体4が形成される。図7Hには、図7GのVIIH部の拡大図が示されている。
【0076】
第2導体層12及び接続導体4の形成において、好ましくは、ソフトエッチング処理が行われる。ソフトエッチング処理によって、第2導体層12及び接続導体4が形成される表面(絶縁層22の表面及び貫通孔4a内に露出する導体パッド1aの表面1a0)の酸化膜などが除去される。またこのソフトエッチング処理によって、導体パッド1aの表面1a0のうちの第2領域1abの面粗度及び貫通孔4a内に露出している第1領域1aaの第1部分1a1の面粗度を低下させることができる。例えば図1の配線基板100が製造される場合は、このソフトエッチング処理によって、第2領域1abが、配線パターン1bの表面1b1の面粗度(第1面粗度)よりも低い面粗度を有するように平坦化されてもよい。また、第1領域1aaの第1部分1a1が、第2部分1a2の面粗度(第2面粗度)よりも低い面粗度を有するように平坦化されてもよい。
【0077】
第2導体層12及び接続導体4の形成におけるソフトエッチング処理は、導体パッド1aの表面1a0のうちの貫通孔4a内に露出している部分の面粗度が略低下しない程度に行われてもよい。その場合、導体パッド1aの第2領域1abは、配線パターン1bの表面1b1と略同じ面粗度(第1面粗度)を有し得る。また、第1領域の第1部分1a1は、第2部分1a2と略同じ面粗度(第2面粗度)を有し得る。
【0078】
第2導体層12、及び、絶縁層22を貫通する接続導体4は、それぞれ、例えば、前述した第1導体層11、及び、絶縁層21を貫通する接続導体4の形成方法と同様の方法で形成される。例えば、第2導体層12、及び絶縁層22を貫通する接続導体4、並びにコア基板3の第2面3b側にさらに形成される導体層13及び接続導体4は、セミアディティブ法によって形成される。絶縁層22を貫通する接続導体4は、貫通孔4a内に形成される。その結果、導体パッド1aの第2領域1ab(非粗化領域)を少なくとも部分的に覆う接続導体4が形成される。図7Hの例では、第2領域1abの全体を覆うように接続導体4が形成される。このように本実施形態において接続導体4は、導体パッド1aの表面1a0のうちの第2領域1abの全部を覆うように形成されてもよい。
【0079】
セミアディティブ法による絶縁層22への接続導体4の形成では、図7Hに示されるように、貫通孔4a内に例えば無電解めっきによって金属膜10bが形成され、さらに電解めっきによってめっき膜10cが形成される。本実施形態の配線基板の製造方法では、金属膜10bの形成時の導体パッド1aと絶縁層22との界面へのめっき液の浸入が、導体パッド1aの表面1a0のうちの粗化された第1領域1aaの凹凸によって防がれる。めっき液の浸透による、導体パッド1aと絶縁層22との界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0080】
図1の配線基板100が製造される図7G及び図7Hの例では、図7Gに示されるように、ソルダーレジスト6が形成される。ソルダーレジスト6には第2導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口6aが設けられる。ソルダーレジスト6及び開口6aは、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって形成される。
【0081】
以上の工程を経る事によって、図1の例の配線基板100が完成する。ソルダーレジスト6の開口6a内に露出する第2導体層12又は導体層13の一部の表面上には、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0082】
なお、先に参照した図5Aの例の導体パッド1aが形成される場合は、図7Cに例示の工程において、導体パッド1aの表面1a0のうちの接続導体4と接続されるべき領域1a5の全体及び領域1a5の周囲の部分を覆うレジスト膜R1が形成される。すなわち、導体パッド1aの表面1a0の領域1a5よりも大きい遮蔽部を領域1a5に対応する位置に有するレジスト膜R1が形成される。
【0083】
そして、図7Dに例示の工程において、その領域1a5よりも大きい遮蔽部よりもさらに大きな遮蔽部で領域1a5がマスクされた状態で、被覆膜5が形成される。結果として、導体パッド1aの全体ではなくその一部が、開口5aを有する被覆膜5で覆われる。このように本実施形態の配線基板の製造方法において被覆膜5を形成することは、被覆膜5で部分的に導体パッド1aを覆うことを含み得る。なお、図7Dの例と同様に導体パッド1a全体を覆う被覆膜5が形成された後、絶縁層22の形成の前に、例えばレーザー光の照射やプラズマ処理によって導体パッド1a上の被覆膜5の一部が除去されてもよい。その結果、被覆膜5の開口5aが形成されてもよい。
【0084】
また、図5Bの例の導体パッド1aが形成される場合は、図7Cに例示の工程において、導体パッド1aの表面1a0の領域1a5と略同じ大きさの遮蔽部を領域1a5の真上に有するマスクR1が形成される。なお、図5A及び図5Bの例の導体パッド1aが形成される場合も、絶縁層22を貫通する接続導体4の形成において、導体パッド1aの露出面の面粗度が略低下しない程度にソフトエッチングが行われてもよい。その場合、第2領域1ab全体が、配線パターン1bの表面1b1と略同じ面粗度(第1面粗度)を有し得る。
【0085】
また、先に参照した図6の例の配線基板が製造される場合は、図7Cに例示の工程において、導体パターン1cを覆うレジスト膜R1が設けられずに第1導体層11の露出面が粗化される。そして図7Dに例示の工程と同様に、第1導体層11全体、及び絶縁層21の露出面に被覆膜5が形成される。
【0086】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。第1導体層11は配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る。配線基板に含まれる複数の導体層の全部又は一部の複数の導体層が、第1導体層11に含まれているような導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cを含んでいてもよい。導体パッド1aは、第1導体層11の下層の絶縁層(配線基板100における絶縁層21)を貫通する接続導体のビアパッドでなくてもよい。また、接続導体4は、図1などの例のようなテーパー形状を有していなくてもよい。
【0087】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば第1及び第2の導体層11、12はフルアディティブ法によって形成されてもよい。第1及び第2の絶縁層21、22は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。第2導体層12及び接続導体4の形成におけるソフトエッチング処理は行われなくてもよい。また、絶縁層22以外の絶縁層には接続導体が形成されなくてもよい。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100 配線基板
11 第1導体層
12 第2導体層
1a 導体パッド
1a0 表面
1a1~1a4 第1部分~第4部分
1aa 第1領域
1ab 第2領域
1b 配線パターン
1b1 表面
21 絶縁層(第1絶縁層)
22 絶縁層(第2絶縁層)
33 接続導体(スルーホール導体)
4 接続導体(ビア導体)
4a 貫通孔
5 被覆膜
5a 開口
W2 第2領域の幅
W3 導体パッドとの界面における接続導体の幅
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H