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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164081
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ボビン及びコイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20221020BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01F37/00 E
H01F41/12 F
H01F37/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069333
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044CA09
(57)【要約】
【課題】低背化が可能なボビン及びコイル装置を提供する。
【解決手段】コイル装置1のボビン10は、巻線が巻き付けらえる筒部4と、筒部4の軸方向の一方側に配置される第1シート部材5Aと、 筒部4の軸方向の他方側に配置される第2シート部材5Bと、を備え、筒部4は、筒部4の内周面4Bに形成された筒部側係止部44を有し、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bはそれぞれ、筒部側係止部44に係止されるシート側係止部51を有し、シート側係止部51が筒部側係止部44に係止されることにより、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bが筒部4に固定されて、筒部4に巻き付けられた巻線の軸方向の両側に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻き付けらえる筒部と、
前記筒部の軸方向の一方側に配置される第1シート部材と、
前記筒部の軸方向の他方側に配置される第2シート部材と、を備え、
前記筒部は、前記筒部の内周面に形成された筒部側係止部を有し、
前記第1及び第2シート部材はそれぞれ、前記筒部側係止部に係止されるシート側係止部を有し、
前記シート側係止部が前記筒部側係止部に係止されることにより、前記第1及び第2シート部材が前記筒部に固定されて、前記筒部に巻き付けられた巻線の前記軸方向の両側に配置されるボビン。
【請求項2】
前記筒部は、巻線が巻き付けられる外周面に形成された鍔状のセパレータ部を有する請求項1に記載のボビン。
【請求項3】
前記セパレータ部は、前記セパレータ部によって区画された前記筒部の軸方向両側を連通させる開口部を有し、
前記巻線は、前記開口部を通って前記セパレータ部によって区画された前記筒部の両側にそれぞれ巻き付けられる請求項2に記載のボビン。
【請求項4】
前記セパレータ部は、径方向外側に突出した回転防止用突起を有し、
前記回転防止用突起の先端が、ボビンの外側に配置されたコアに近接対向して配置される請求項2又は3に記載のボビン。
【請求項5】
前記第1シート部材及び前記第2シート部材はそれぞれリング状に形成されており、
前記シート側係止部は、前記第1シート部材及び第2シート部材の内縁部から軸方向に延びて前記筒部に挿入され、軸周りに係止位置まで回転されることにより前記筒部側係止部に係止される請求項1~4のいずれかに記載のボビン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のボビンと、
前記筒部に巻き付けられる巻線と、
前記筒部に挿通されるコアと、を備えるコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン及びコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平板状のボビン基板を有し、ボビン基板から突出する筒部に巻線を巻き付けてコイルを形成するボビンが開示されている。このボビンには、筒部の上端にボビンを保持するためのボビン鍔が一体に形成されており、ボビン鍔とボビン基板によって巻線の軸方向の両側面が覆われる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-016737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されたボビンは、トランスやチョーク等のコイル装置の部品を構成している。これらのコイル装置は、搭載スペースに合わせた低背化が要求されるため、ボビンにおいても、軸方向の寸法を最適化して低背化を図ることが望ましい。しかしながら、上記ボビンでは、巻線を保持するためのボビン鍔やボビン基板が筒部と一体に成形されているため、ボビン鍔やボビン基板の板厚が低背化の妨げとなるという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、低背化が可能なボビン及びコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るボビンは、巻線が巻き付けらえる筒部と、前記筒部の軸方向の一方側に配置される第1シート部材と、 前記筒部の軸方向の他方側に配置される第2シート部材と、を備え、前記筒部は、前記筒部の内周面に形成された筒部側係止部を有し、前記第1及び第2シート部材はそれぞれ、前記筒部側係止部に係止されるシート側係止部を有し、前記シート側係止部が前記筒部側係止部に係止されることにより、前記第1及び第2シート部材が前記筒部に固定されて、前記筒部に巻き付けられた巻線の前記軸方向の両側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るボビンによれば、巻線が巻き付けられる筒部を備え、筒部の軸方向の一方側と他方側に第1シート部材と第2シート部材がそれぞれ配置されている。第1シート部材と第2シート部材は、それぞれの有するシート側係止部が筒部の内周面に形成された筒部側係止部に係止されることにより筒部に固定される。この状態では、筒部に巻き付けられた巻線が、第1及び第2シート部材によって軸方向両側から保持される。このようにして、巻線を保持するボビンの鍔が、第1シート部材と第2シート部材からなるシート部材で構成されるため、ボビン、ひいてはコイル装置の低背化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿って切断した状態を示すコイル装置の断面図である。
図3】実施形態に係るボビンであって、巻線が巻き付けられた状態を示す斜視図である。
図4】実施形態に係るボビンであって、巻線が巻き付けられた状態を示す正面図である。
図5図3のV-V線に沿って切断した状態を示すボビン及び巻線の断面図である。
図6】実施形態に係るボビンの分解斜視図である。
図7】実施形態に係るボビンの平面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿って切断した状態を示す筒部の断面図である。
図9】実施形態に係る筒部側係止部に対するシート側係止部の位置を示す部分拡大図であって、(A)は、シート側係止部の非係止位置を示し、(B)は、シート側係止部の係止位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るコイル装置1と、コイル装置1に用いられるボビン10について図1図9を参照して説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右、前後の矢印で示す方向を、それぞれ上下方向、左右方向、前後方向と定義して説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0010】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のコイル装置1は、一例として、チョークコイルを構成している。コイル装置1は、フェライトコア等の磁性材料で形成されたコア2と、コア2が挿通されたボビン10と、ボビン10に巻き付けられた巻線3と、を備えている。
【0011】
コア2は、コア2の下部を構成する第1コア21と、コア2の上部を構成する第2コア22と、で構成されている。第1コア21と第2コア22は、それぞれが別々に成形され、ボビン10を上下方向から挟むようにして重ね合わせることにより互いに接合されている。第1コア21は、コア側部211と、中脚部212と、外脚部213とを有し、上下左右断面が略E型を成している。コア側部211は、上下方向に所定の厚みを有し、平面視で略半円状を成す板状に形成されている。中脚部212は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成され、コア側部211の上面から上方側(第2コア22側)に立設されている。外脚部213は、平面視で円弧を成す縦壁状に形成されており、コア側部211の円弧状の外周部分から上方側に立設されている。第1コア21をボビン10に取り付けた状態では、外脚部213の内側にボビン10が収容され、後述するボビン10の筒部4に中脚部212が挿通される。第2コア22は、上下方向に所定の厚みを有し、平面視で略半円状を成す板状に形成されており、上下左右断面が略I型を成している。第2コア22は、第1コア21の上方側に重ねられることにより、第1コア21の上方側の開口を覆っている。第1コア21と第2コア22は、上下に重ね合せられた後、絶縁材料で形成されたテープ8を巻き付けることにより互いに接合されている。これにより、第1コア21及び第2コア22によってチョークコイルの閉磁路が形成される。
【0012】
上述したコア2は、第1コア21及び第2コア22によって形成された内部空間を前方側に開放するコア開口部23を有している。このコア開口部23は、ボビン10に巻き付けられた巻線3の端部3A,3Bをコア2の外部に引き出すために設けられている。また、コア2は、第1コア21及び第2コア22の前端部において、上記コア開口部23と連続的に設けられた切り欠き部24,25を有している。二つの切り欠き部24,25は、第1コア21のコア側部211及び第2コア22をそれぞれ上下方向に貫通し、前方側に開口した溝形状を成しており、上下方向に対向する位置に配置されている。ボビン10をコア2に取り付けた状態では、巻線3の端部3A,3Bが引き出されるボビン10の外周部の一部が、切り欠き部24,25を介して外部に露出される。従って、コア2の構成部と巻線3の端部3A,3Bとの距離を切り欠き部24,25によって確保し、コア2と巻線3との干渉が回避される。また、切り欠き部24,25は、ボビン10の一部を露出させることで、巻線3で生じた熱をコア2の外部に放熱させるための放熱経路を確保している。
【0013】
図3図8に示すように、ボビン10は、筒部4と、第1シート部材5Aと、第2シート部材5Bと、を備えている。筒部4は、絶縁性を有する樹脂で形成されており、上下方向を軸方向とする円筒状に形成されている。ボビン10にコア2を取り付けた状態では、筒部4の内側に第1コア21の中脚部212が挿通可能となっている。筒部4の外周面4Aには、鍔状のセパレータ部41が一体に形成されている。セパレータ部41は、筒部4の外周面4Aの軸方向の中間部から径方向外側に突出しており、径方向に一定の幅を有し、軸方向に一定の板厚を有している。セパレータ部41は、筒部4の周方向に沿って延在し、筒部4を軸方向に沿った二つの区画S1,S2に区画している。筒部4において、セパレータ部41によって区画された下方側の区画S1と上方側の区画S2には、巻線3をそれぞれ巻き付けることができる。区画S1,S2の軸方向の高さ寸法は、巻線3を構成する線材の径と同一又は同等の寸法に設定されている。従って、セパレータ部41の表面に沿って筒部4の外周面4Aに巻線3を巻き付けると、平面視で渦巻き状に形成される巻線3を容易に形成することができる。また、セパレータ部41は、平面視で略C字状に形成されており、C字の開口部分に当たる部位が、下方側の区画S1と上方側の区画S2とを連通させる開口部42とされている。この開口部42は、セパレータ部41を板厚方向に貫通し、前方側に開口した溝部と言い換えることもできる。開口部42の径方向の深さは、セパレータ部41の径方向の幅と同一であり、セパレータ部41の外縁部から筒部4の外周面4Aに達する深さを有している。セパレータ部41に上記構成の開口部42を形成することにより、本実施形態の巻線3のように二層構造の巻線を筒部4に巻き付けることが可能となっている。
【0014】
具体的に説明すると、図4に示すように、巻線3は、複数の線材(細線)を撚り合わせて構成されたリッツ線であり、当該リッツ線をアルファ巻きすることにより形成されている。アルファ巻きにより形成された巻線3は、軸方向に間隔を空けて配置される二つの巻線部31,32を有している。なお、巻線3はリッツ線に限らず単線のワイヤを用いることもできる。しかし、EV車やプラグインハイブリッド車等の電気自動車の非接触充電システムのように、大電力且つ高周波数の電力が供給される高周波回路にコイル装置1を組み込む場合、巻線3をリッツ線で形成することで、表皮効果による巻線抵抗の増大を抑制することができる点で有利である。
【0015】
巻線3を筒部4にアルファ巻きするには、先ず、巻線3の延在方向の中間部3C(巻線3の中点となる部位)をセパレータ部41の開口部42に通す。そして、区画S1に挿入された中間部3Cよりも下方側の部位をセパレータ部41の下面側で筒部4の外周面4Aに渦巻状に巻き付ける。一方、区画S2に挿入された中間部3Cよりも上方側の部位をセパレータ部41の上面側で筒部4の外周面4Aに渦巻状に巻き付ける。これにより、セパレータ部41の軸方向両側に、渦巻き状に形成された第1巻線部31と第2巻線部32を有する二層構造の巻線3が形成されている。筒部4にコア2を取り付けた状態では、セパレータ部41の開口部42がコア開口部23に面して配置され、開口部42の前方側で交差する巻線3の端部3A,3Bがコア開口部23を通ってコア2の外部に引き出されている(図1参照)。巻線3は、筒部4に巻き付けられた後、絶縁材料で形成されたテープ8で外周部の表面が覆われている(図1及び図2参照)。なお、巻線3自体が融着層を有するなど、巻線3の形状が保持される場合はテープ8は省略できる。
【0016】
図7に示すように、ボビン10(筒部4)にコア2を取り付けた状態では、セパレータ部41の外縁部が第1コア21の外脚部213の内側面213Aと対向する。セパレータ部41は、セパレータ部41の外縁部から径方向外側へ突出した回転防止用突起43を有している。本実施形態では、二つの回転防止用突起43が、セパレータ部41の径方向に沿って対向する位置に配置されている。二つの回転防止用突起43は、それぞれが平面視で略台形状に形成されており、上下方向に所定の板厚を有している。回転防止用突起43は、ボビン10の外側に配置されたコア2(第1コア21の外脚部213の内側面213A)と対向する側面43Aが平面視で直線状に延びている。当該側面43Aは、コア開口部23の近傍で第1コア21の外脚部213の前端側の内側面213Aと略平行に配置され、当該内側面213Aに近接対向している。従って、ボビン10を正逆方向に回転させようとすると回転防止用突起43が内側面213Aに当たり、ボビン10の回転が規制される。なお、回転防止用突起43がコア2に近接対向している状態とは、回転防止用突起43の側面43Aがコア2に当接している状態と、回転防止用突起43の側面43Aとコア2とが近接した位置関係において離間している状態とを含むものとする。
【0017】
図8に示すように、筒部4の内周面4Bには、筒部側係止部44が形成されている。筒部側係止部44は、筒部4の内周面4Bの下端に設けられた第1係止部441と内周面4Bの上端に設けられた第2係止部442を有している。第1係止部441は、筒部4内周面4Bの下端から径方向内側に突出し、軸方向上方側に延びるフック状に形成されている。この第1係止部441には、第1シート部材5Aのシート側係止部51が係止可能となっている。第2係止部442は、筒部4の内周面4Bの上端から径方向内側に突出し、軸方向下方側に延びるフック状に形成されている。この第2係止部には、第2シート部材5Bのシート側係止部51が係止可能となっている。第1係止部441及び第2係止部442は、内周面4Bの周方向に沿ってそれぞれ四つずつ設けられている。また、第1係止部441及び第2係止部442は、周方向に沿って交互に設けられている。
【0018】
図6に示すように、ボビン10は、筒部4の軸方向の両側に配置された第1シート部材5A及び第2シート部材5Bを有している。第1シート部材5A及び第2シート部材5Bは、それぞれが別々に形成され、筒部4を上下方向(軸方向)から挟むようにして配置されている。第1シート部材5Aは、筒部4の軸方向下方側(一方側)に配置されている。第2シート部材5Bは、筒部4の軸方向上方側(他方側)に配置されている。第1シート部材5Aと第2シート部材5Bは、同一の形状及び同一の構成を有するシート部材50でそれぞれ構成されている。シート部材50は、一例として、絶縁性を有する硝子、紙、樹脂等の材料で形成された絶縁シートで構成されている。シート部材50は、絶縁性に加えて、折り曲げ加工が可能であることが好ましく、本実施形態では、一例として、アラミドポリマーを原料とするノ―メックス(登録商標)紙で構成されている。シート部材50は、平面視でリング状に形成されており、内縁部50Aと一体に形成されたシート側係止部51を有している。本実施形態では、内縁部50Aの周方向に沿って四つのシート側係止部51が形成されている。シート側係止部51は、略T字状に形成された突出片とされており、シート部材50の内縁部50Aから軸方向に延びる縦壁部511と、縦壁部511の先端部の両側から軸方向と直交する方向に突出する一対の突出部512とを有している。当該構成のシート部材50は、本実施形態のように紙等の折り曲げ加工が可能な材料で形成することにより、一枚のシート材を折り曲げ加工して形成することができる。具体的には、図6に拡大して示すように、シート部材50とシート側係止部51とを一枚のシート材として切り出して成形した後、シート側係止部51を図6の二点鎖線位置から実線位置まで略直角に折り曲げて形成することが可能となっている。
【0019】
図5に示すように、第1シート部材5Aのシート側係止部51は、シート部材50の内縁部50Aから軸方向上方側に延びて、筒部4に挿入されている。一方、第2シート部材のシート側係止部51は、シート部材50の内縁部50Aから軸方向下方側に延びて、筒部4に挿入されている。また、この状態では、第1シート部材5Aのシート側係止部51と第2シート部材5Bのシート側係止部51とが筒部4の周方向に沿って交互に配置されている。
【0020】
図9(A)及び図9(B)に示すように、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bは、シート側係止部51を筒部4に挿入した状態において、筒部4の軸周りに回転されることによりシート側係止部51の位置を非係止位置と係止位置の間で変位させる。図9(A)に示す非係止位置では、筒部4の下端に設けられた第1係止部441と筒部4の上端に設けられた第2係止部442との間にシート側係止部51が挿入された状態となる。また、図9(B)に示す係止位置では、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bが軸周りに回転されてシート側係止部51の一方の突出部512が対応する筒部側係止部44に係止されている。具体的には、筒部4の下端側から挿入された第1シート部材5Aのシート側係止部51は、一方の突出部512がフック状の第1係止部441と筒部4の内周面4Bとの間に挿入されて、第1係止部441に係止されている。また、筒部4の上端側から挿入された第2シート部材5Bのシート側係止部51は、一方の突出部512がフック状の第2係止部442と筒部4の内周面4Bとの間に挿入されて、第2係止部442に係止されている。これにより、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bが筒部4に固定された状態となる。シート突出部512の形状自体にフック形状を設けてフック状の第1係止部441及び第2係止部442とそれぞれ係止することも可能である。
【0021】
図5に示すように、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bが筒部4に固定された状態では、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bは、筒部4に巻き付けられた巻線3を上下方向(軸方向)の両側から挟むようにして保持している。また、シート部材50の外径は、セパレータ部41の外径よりも若干大きく設定されているため、セパレータ部41の外縁部は、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bに対して径方向外側に突出しない構成となっている。即ち、セパレータ部41の軸方向両側に配置される巻線3は、その表面が、絶縁性を有する第1シート部材5A及び第2シート部材5Bによって覆われている。これにより、例えば、コイル装置1の周囲に配置された電装品で放電が発生した場合などに、第1シート部材5Aと第2シート部材5Bによって巻線3を電気的に保護することができる。なお、巻線3の第1巻線部31と第2巻線部32との間を隔離するセパレータ部41は、巻線3の表面にピンホール欠陥などが生じた場合に、巻線3の層間のレアショートを防ぐ機能を有している。
【0022】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態のコイル装置1によれば、ボビン10は、巻線3が巻き付けられる筒部4を備え、筒部4の軸方向の一方側と他方側に第1シート部材5Aと第2シート部材5Bがそれぞれ配置されている。第1シート部材5Aと第2シート部材5Bは、それぞれの有するシート側係止部51が筒部4の内周面4Bに形成された筒部側係止部44に係止されることで筒部4に固定され、筒部4に巻き付けられた巻線3を軸方向両側から保持することができる。従って、巻線3を保持するボビン10の鍔が、第1シート部材5Aと第2シート部材5Bからなるシート材で構成されるため、ボビン10、ひいてはコイル装置1の低背化が可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、筒部4の外周面4Aに形成された鍔状のセパレータ部41によって外周面4Aに二つの区画S1,S2が形成されている。従って、それぞれの区画S1,S2に巻線3を巻き付けることにより、ボビン10で、多層構造の巻線や、複数の巻線を保持することができる。
【0024】
また、本実施形態に係るセパレータ部41には、セパレータ部41によって区画された筒部4の軸方向両側を連通させる開口部42が形成されている。従って、一本の巻線3の中間部3Cを開口部42に通してセパレータ部41によって区画された筒部4の両側に巻線を巻き付けることができる。その結果、筒部4の外周面4Aに巻線3をアルファ巻きすることができるため、ボビンの低背化を図りつつ、巻線3の巻き数の増加や調整を容易に行うことができる。
【0025】
また、本実施形態に係るセパレータ部41には、径方向外側に突出した回転防止用突起43が設けられている。この回転防止用突起43は、ボビン10にコア2を取り付けた状態では、ボビン10の外側に配置されたコア2と近接対向する。従って、ボビン10が軸周りに回転しようとすると、セパレータ部41の回転防止用突起43がコアに当たり、ボビン10の回転を規制することができる。
【0026】
また、本実施形態に係る第1シート部材5A及び第2シート部材5Bのシート側係止部51は、ボビン10の筒部4に挿入された状態で軸周りに係止位置まで回転されることにより、筒部側係止部44に係止される。従って、第1シート部材5A及び第2シート部材5Bを筒部4に固定させる際に、別部品や接着剤を要しないため、製造時のコストや工数の削減に寄与することができる。
【0027】
[補足説明]
上記実施形態では、ボビン10の筒部4に一つのセパレータ部41を設ける構成としたが、本発明はこれに限らない。ボビンの筒部に軸方向に並んだ複数のセパレータ部を設ける構成としてもよい。若しくは、ボビンの筒部にセパレータ部を設けない構成としてもよい。また、上記実施形態では、セパレータ部41によって区画された区画S1,S2の軸方向の高さ寸法がコイル径と同等とされたが、本発明はこれに限らず、各区画S1の軸方向の高さは、区画毎に適宜変更可能である。
【0028】
上記実施形態では、コイル装置でチョークコイルを構成したが、本発明はこれに限らない。例えば、筒部4において、セパレータ部41によって区画された複数の区画の内一つ又は複数の区画に一次側の巻線を巻き付けて、別の区画に二次側の巻線を巻き付けることでトランスを構成してもよい。
【0029】
上記実施形態では、筒部4に巻き付けられる巻線3をアルファ巻きとしたが、本発明はこれに限らない。巻線3の巻き方は適宜変更可能である。
【0030】
また、上記実施形態では、ボビン10の筒部4の軸方向両側に第1シート部材5Aと第2シート部材5Bを配置する構成としたが、本発明はこれに限らない。筒部4の軸方向の少なくとも一方に本実施形態の第1シート部材5A又は第2シート部材5Bと同様のシート材を配置する構成であっても、ボビン10の軸方向の低背化に寄与することが可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、シート側係止部51をT字状に形成された突出片としたが、L字状に形成された突出片としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 コイル装置
2 コア
3 巻線
4 筒部
4A 外周面
4B 内周面
5A 第1シート部材
5B 第2シート部材
41 セパレータ部
42 開口部
43 回転防止用突起
44 筒部側係止部
51 シート側係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9