(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164091
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ワクチン接種用車両及びそのワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20221020BHJP
G06Q 50/22 20180101ALI20221020BHJP
A61G 10/02 20060101ALN20221020BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20221020BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20221020BHJP
A61P 31/00 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
B60P3/00 N
G06Q50/22
A61G10/02 M
A61K39/00 F
A61P37/04
A61P31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069367
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】318016331
【氏名又は名称】仲谷 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 正樹
【テーマコード(参考)】
4C085
4C341
5L099
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA01
4C085EE10
4C341KK07
4C341KL04
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】ワクチンを冷蔵保存しつつ品質低下を抑制して搬送することができ、病院等の医療施設や公共施設から離れた場所においてもワクチンの接種を良好に行わせることができるワクチン接種用車両及びそのワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法を提供する。
【解決手段】車両本体1内で医療従事者が被接種者にワクチンを接種可能なワクチン接種用車両であって、車両本体1内に設置され、ワクチンを冷蔵保存するワクチン冷蔵手段2と、ワクチン冷蔵手段2に対する車両本体1からの振動を吸収する振動吸収手段hと、車両本体1内の所定位置に設定されるとともに、医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能なワクチン接種領域R1と、ワクチン接種領域R1に対して被接種者が出入り可能な出入り口(1a、1b)とを具備したものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体内で医療従事者が被接種者にワクチンを接種可能なワクチン接種用車両であって、
前記車両本体内に設置され、ワクチンを冷蔵保存するワクチン冷蔵手段と、
前記ワクチン冷蔵手段に対する前記車両本体からの振動を吸収する振動吸収手段と、
前記車両本体内の所定位置に設定されるとともに、医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能なワクチン接種領域と、
前記車両本体に対して被接種者が出入り可能な出入り口と、
を具備したことを特徴とするワクチン接種用車両。
【請求項2】
前記出入口は、前記車両本体の後方に形成された後方入口及び当該車両本体の側方に形成された側方出口を有するとともに、前記後方入口から前記ワクチン接種領域を介して前記側方出口まで被接種者が通行可能とされたことを特徴とする請求項1記載のワクチン接種用車両。
【請求項3】
前記車両本体内は、前記ワクチン接種領域と隣接する所定位置に被接種者を待機させ得る待機領域が設定されるとともに、当該ワクチン接種領域と待機領域とは仕切り手段により仕切られて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワクチン接種用車両。
【請求項4】
前記車両本体に設置され、前記ワクチン冷蔵手段に電力供給可能な蓄電池を有することを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載のワクチン接種用車両。
【請求項5】
前記車両本体内に設置され、ワクチンを冷凍保存するワクチン冷凍手段を有するとともに、当該ワクチン冷凍手段は、前記蓄電池により電力供給可能とされたことを特徴とする請求項4記載のワクチン接種用車両。
【請求項6】
前記ワクチン冷蔵手段、ワクチン冷凍手段及び蓄電池は、前記車両本体の前後方向に並んで設置されたことを特徴とする請求項5記載のワクチン接種用車両。
【請求項7】
前記車両本体内の空気を当該車両本体の外部に排出し得る換気手段を有することを特徴とする請求項1~6の何れか1つに記載のワクチン接種用車両。
【請求項8】
前記ワクチン接種領域は、被接種者が着座状態又は横臥状態でワクチン接種可能な着座手段又は横臥手段と、医療従事者によるワクチン接種のための種々作業が行われる作業台とが設置されたことを特徴とする請求項1~7の何れか1つに記載のワクチン接種用車両。
【請求項9】
請求項1~8に記載のワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法であって、
前記ワクチン接種用車両の車両本体の周囲に被接種者が搭乗した個々の車両を複数台停車させ、各車両内で被接種者を待機させるとともに、被接種者を前記ワクチン接種用車両に順次呼び出して前記ワクチン接種領域にてワクチンを接種することを特徴とするワクチン接種の運用方法。
【請求項10】
前記ワクチン接種領域でワクチンを接種した後の被接種者を個々の車両にて所定時間待機させることを特徴とする請求項9記載のワクチン接種の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体内で医療従事者が被接種者にワクチンを接種可能なワクチン接種用車両及びそのワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウィルス等の感染症(例えば新型コロナウィルスによる感染症(COVID-19))の予防のためのワクチンを接種する場合、病院等の医療施設や公共施設において多数の被接種者を待機させ、順次、医療従事者によって接種することが一般的である。この場合、既に感染症に罹患している被接種者がいることを想定して、待機中の被接種者どうしの間隔を十分にとり、動線を確実に分離することが重要とされている。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、病院等の医療施設や公共施設においてワクチンを接種する場合、待機中の被接種者どうしの間隔を十分に維持し、且つ、動線を確実に分離することは困難であった。また、ワクチンは、一般に冷蔵保存が必要とされており、搬送中に振動が付与されると品質が著しく低下するものがあるため、医療従事者が遠方まで出向いて被接種者にワクチンを接種することは困難とされていた。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワクチンを冷蔵保存しつつ品質低下を抑制して搬送することができ、病院等の医療施設や公共施設から離れた場所においてもワクチンの接種を良好に行わせることができるワクチン接種用車両及びそのワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、車両本体内で医療従事者が被接種者にワクチンを接種可能なワクチン接種用車両であって、前記車両本体内に設置され、ワクチンを冷蔵保存するワクチン冷蔵手段と、前記ワクチン冷蔵手段に対する前記車両本体からの振動を吸収する振動吸収手段と、前記車両本体内の所定位置に設定されるとともに、医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能なワクチン接種領域と、前記車両本体に対して被接種者が出入り可能な出入り口とを具備したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のワクチン接種用車両において、前記出入口は、前記車両本体の後方に形成された後方入口及び当該車両本体の側方に形成された側方出口を有するとともに、前記後方入口から前記ワクチン接種領域を介して前記側方出口まで被接種者が通行可能とされたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のワクチン接種用車両において、前記車両本体内は、前記ワクチン接種領域と隣接する所定位置に被接種者を待機させ得る待機領域が設定されるとともに、当該ワクチン接種領域と待機領域とは仕切り手段により仕切られて成ることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載のワクチン接種用車両において、前記車両本体に設置され、前記ワクチン冷蔵手段に電力供給可能な蓄電池を有することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のワクチン接種用車両において、前記車両本体内に設置され、ワクチンを冷凍保存するワクチン冷凍手段を有するとともに、当該ワクチン冷凍手段は、前記蓄電池により電力供給可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のワクチン接種用車両において、前記ワクチン冷蔵手段、ワクチン冷凍手段及び蓄電池は、前記車両本体の前後方向に並んで設置されたことを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項1~6の何れか1つに記載のワクチン接種用車両において、前記車両本体内の空気を当該車両本体の外部に排出し得る換気手段を有することを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明は、請求項1~7の何れか1つに記載のワクチン接種用車両において、前記ワクチン接種領域は、被接種者が着座状態又は横臥状態でワクチン接種可能な着座手段又は横臥手段と、医療従事者によるワクチン接種のための種々作業が行われる作業台とが設置されたことを特徴とする。
【0013】
請求項9記載の発明は、請求項1~8に記載のワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法であって、前記ワクチン接種用車両の車両本体の周囲に被接種者が搭乗した個々の車両を複数台停車させ、各車両内で被接種者を待機させるとともに、被接種者を前記ワクチン接種用車両に順次呼び出して前記ワクチン接種領域にてワクチンを接種することを特徴とする。
【0014】
請求項10記載の発明は、請求項9記載のワクチン接種の運用方法において、前記ワクチン接種領域でワクチンを接種した後の被接種者を個々の車両にて所定時間待機させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、車両本体内に設置されたワクチン冷蔵手段と、ワクチン冷蔵手段に対する車両本体からの振動を吸収する振動吸収手段と、医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能なワクチン接種領域と、車両本体に対して被接種者が出入り可能な出入り口とを具備したので、ワクチンを冷蔵保存しつつ品質低下を抑制して搬送することができ、病院等の医療施設や公共施設から離れた場所においてもワクチンの接種を良好に行わせることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、出入口は、車両本体の後方に形成された後方入口及び当該車両本体の側方に形成された側方出口を有するとともに、後方入口からワクチン接種領域を介して側方出口まで被接種者が通行可能とされたので、被接種者の動線を確実に分離することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、車両本体内は、ワクチン接種領域と隣接する所定位置に被接種者を待機させ得る待機領域が設定されるとともに、当該ワクチン接種領域と待機領域とは仕切り手段により仕切られて成るので、ワクチンの接種を効率的、且つ、円滑に行わせることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、車両本体に設置され、ワクチン冷蔵手段に電力供給可能な蓄電池を有するので、ワクチン冷蔵手段の電力供給を安定して行わせることができ、ワクチンの冷蔵保存を確実に行わせることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、車両本体内に設置され、ワクチンを冷凍保存するワクチン冷凍手段を有するとともに、当該ワクチン冷凍手段は、蓄電池により電力供給可能とされたので、ワクチン冷凍手段で冷凍保存されたワクチンをワクチン冷蔵手段にて解凍及び冷蔵保存することができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、ワクチン冷蔵手段、ワクチン冷凍手段及び蓄電池は、車両本体の前後方向に並んで設置されたので、蓄電池とワクチン冷蔵手段及びワクチン冷凍手段との電気的接続を良好に行わせることができるとともに、車両本体内における被接種者の移動スペースを十分に確保することができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、車両本体内の空気を当該車両本体の外部に排出し得る換気手段を有するので、車両本体内の空気を常時衛生的に保持することができる。
【0022】
請求項8の発明によれば、ワクチン接種領域は、被接種者が着座状態又は横臥状態でワクチン接種可能な着座手段又は横臥手段と、医療従事者によるワクチン接種のための種々作業が行われる作業台とが設置されたので、ワクチン接種領域におけるワクチンの接種作業を良好に行わせることができる。
【0023】
請求項9の発明によれば、ワクチン接種用車両の車両本体の周囲に被接種者が搭乗した個々の車両を複数台停車させ、各車両内で被接種者を待機させるとともに、被接種者をワクチン接種用車両に順次呼び出してワクチン接種領域にてワクチンを接種するので、病院等の医療施設や公共施設から離れた屋外においてもワクチンの接種を良好に行わせることができる。
【0024】
請求項10の発明によれば、ワクチン接種領域でワクチンを接種した後の被接種者を個々の車両にて所定時間待機させるので、ワクチンを接種した後にアナフィラキシー等の副反応が生じたとしても、ワクチン接種用車両内の医療従事者により迅速かつ適切な処置を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るワクチン接種用車両を前方から見た外観を示す斜視図
【
図2】同ワクチン接種用車両を後方から見た外観を示す斜視図
【
図5】同ワクチン接種用車両の車両本体の内部構成を上方から見た模式図
【
図6】同ワクチン接種用車両の車両本体の内部構成を右側面から見た模式図
【
図7】同ワクチン接種用車両の車両本体の内部構成を左側面から見た模式図
【
図8】同ワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法を説明するための模式図
【
図9】本発明の他の実施形態に係るワクチン接種用車両の内部構成を上方から見た模式図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るワクチン接種用車両は、車両本体内で医療従事者が被接種者にワクチンを接種可能なもので、
図1~7に示すように、バス等の大型車両から成る車両本体1と、ワクチン冷蔵手段2と、蓄電池3と、換気手段4と、着座手段5及び横臥手段(6a~6c)と、振動吸収手段hとを有して構成されている。
【0027】
車両本体1は、
図5~7に示すように、エンジンやモータ等の駆動源、及び前輪F1及び後輪F2を具備して任意の場所まで走行可能な4輪車から成るもので、その内部において、ワクチン接種領域R1と、待機領域R2と、運転席及び助手席が取り付けられた運転領域R3とが形成されている。運転領域R3は、車両本体1の最前部に設定されるとともに、後方に向かってワクチン接種領域R1及び待機領域R2が順次設定されている。
【0028】
ワクチン接種領域R1は、車両本体内の所定位置に設定されるとともに、医師や看護師等の医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能な領域から成り、側方ドアD2にて開閉可能な側方出口1bが形成されている。かかるワクチン接種領域R1は、椅子等の着座手段5及びベッド等の横臥手段6aが設置されており、着座手段5に着座又は横臥手段6aに横臥した被接種者に対して医療従事者がワクチンを接種可能とされている。なお、ワクチン接種領域R1には、エアコンA(エアーコンディショナ)が設置されている。
【0029】
待機領域R2は、車両本体1内におけるワクチン接種領域R1と隣接する所定位置に設定された領域から成り、後方ドアD1にて開閉可能な後方入口1aが形成されている。かかる待機領域R1とワクチン接種領域R1とはカーテン等の仕切り手段9により仕切られるとともに、仕切り手段9を開放することにより待機領域R2で待機する被接種者が接種領域R1に移動してワクチンを接種可能とされている。
【0030】
また、待機領域R2は、ワクチン接種領域R1にてワクチン接種する被接種者を一時的に待機させる領域とされ、ベッド等の横臥手段(6b、6c)と、テーブル7と、換気手段4とが設置されている。テーブル7は、例えばアクリル板付き移動カウンターテーブルから成るもので、被接種者や医療従事者が所定の書類等に必要事項を記入し得るとともに、必要に応じて任意に移動可能とされている。
【0031】
換気手段4は、例えばヘパフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter:高性能エアフィルタ)が取り付けられ、ファンを駆動することにより、待機領域R2及びワクチン接種領域R1内の空気をヘパフィルタにて清浄化した後、その空気を車両本体1の上部に形成された排気口Kから外部に向かって排出可能とされている。なお、本実施形態においては、待機領域R2にのみ換気手段4が設置されているが、例えばワクチン接種領域R1に換気手段4を設置するようにしてもよい。
【0032】
一方、本実施形態に係る車両本体1には、当該車両本体1に対して被接種者が出入り可能な出入り口が形成されている。かかる出入口は、車両本体1の後方に形成された後方入口1aと、車両本体1の側方に形成された側方出口1bとをそれぞれ有するとともに、後方入口1aから待機領域R2及びワクチン接種領域R1を介して側方出口1bまで被接種者が通行可能とされている。なお、後方入口1aは、後方ドアD1により開閉可能とされており、その近傍には被接種者が昇降可能なスロープ8が設置されているとともに、側方出口1bは、被接種者が車両本体1から外部に出るためのステップが形成されている。
【0033】
ワクチン冷蔵手段2は、車両本体1内のワクチン接種領域R1に設置され、ワクチンを冷蔵保存する冷蔵庫から成る。かかるワクチン冷蔵手段2は、内部に収容したワクチンを約2~8℃程度にて冷蔵可能とされており、冷凍状態のワクチンの解凍及び冷蔵保存可能とされている。ワクチンは、ウィルス等による感染症の予防に用いる医薬品から成り、例えば注射器に注入された状態で被接種者の腕等に注射針を穿刺することにより、被接種者の体内に接種されるものである。
【0034】
蓄電池3は、車両本体1内のワクチン接種領域R1に設置され、ワクチン冷蔵手段2に電力供給可能なバッテリから成る。かかる蓄電池3は、外部の電源(家庭用コンセントや発電器等)から電力供給されて蓄電し得るものとされており、ワクチン冷蔵手段2と隣接した位置に設置されて安定した電力供給が可能とされている。なお、本実施形態においては、蓄電池3の上部に作業台10が設置されており、当該作業台10にてワクチンを注射器に対する注入する作業等を行い得るようになっている。
【0035】
ここで、本実施形態に係るワクチン接種用車両においては、ワクチン冷蔵手段2に対する車両本体1からの振動を吸収する振動吸収手段hが配設されている。かかる振動吸収手段hは、
図6に示すように、ワクチン冷蔵手段2を支持する脚部に取り付けられたエアダンパから成り、例えば車両本体1の走行時の振動や駆動源からの振動を吸収して、ワクチン冷蔵手段2内のワクチンに振動が伝達されるのを抑制し得るものとされている。
【0036】
すなわち、ワクチンは、冷蔵保存の状態で振動が付与されると、品質が著しく劣化する可能性があるため、振動吸収手段hにて車両本体1の走行時に生じる振動や駆動源の駆動に伴う振動を吸収することにより、品質を維持しつつ遠方まで搬送することができるのである。なお、本実施形態に係る振動吸収手段hは、エアダンパから成るものとされているが、振動を吸収可能な他の手段(オイルダンパ等の他、弾性体による振動吸収など)を用いるようにしてもよい。
【0037】
次に、本実施形態に係るワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法について、
図8に基づいて説明する。
ワクチン冷蔵手段2内に所望のワクチンを収容して冷蔵保存するとともに、病院等の医療施設や公共施設から離間した屋外の場所Gにワクチン接種用車両の車両本体1を停車させる。その後、車両本体1の周囲に被接種者が搭乗した個々の車両Wを複数台停車させ、各車両W内で被接種者を待機させるとともに、被接種者をワクチン接種用車両に順次呼び出してワクチン接種領域R1にてワクチンを接種する。
【0038】
なお、屋外の場所Gにて待機する被接種者に対して任意呼び出し可能な呼び出しブザー等を貸与し、当該呼び出しブザーを鳴らすことによりワクチン接種用車両に順次呼び出すようにするのが好ましい。そして、ワクチン接種領域R1でワクチンを接種した後の被接種者を個々の車両Wにて所定時間待機させ、アナフィラキシー等の副反応が生じないことを確認させた後、屋外の場所Gから退去させる。
【0039】
本実施形態によれば、車両本体1内に設置されたワクチン冷蔵手段2と、ワクチン冷蔵手段2に対する車両本体1からの振動を吸収する振動吸収手段hと、医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能なワクチン接種領域R1と、ワクチン接種領域R1に対して被接種者が出入り可能な出入り口(後方入口1a及び側方出口1b)とを具備したので、ワクチンを冷蔵保存しつつ品質低下を抑制して搬送することができ、病院等の医療施設や公共施設から離れた場所においてもワクチンの接種を良好に行わせることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る車両本体1の出入口は、車両本体1の後方に形成された後方入口1a及び当該車両本体1の側方に形成された側方出口1bを有するとともに、後方入口1aから待機領域R2及びワクチン接種領域R1を介して側方出口1bまで被接種者が通行可能とされたので、被接種者の動線を確実に分離することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る車両本体1内は、ワクチン接種領域R1と隣接する所定位置に被接種者を待機させ得る待機領域R2が設定されるとともに、当該ワクチン接種領域R1と待機領域R2とは仕切り手段9により仕切られて成るので、ワクチンの接種を効率的、且つ、円滑に行わせることができる。また、本実施形態によれば、車両本体1に設置され、ワクチン冷蔵手段2に電力供給可能な蓄電池3を有するので、ワクチン冷蔵手段2の電力供給を安定して行わせることができ、ワクチンの冷蔵保存を確実に行わせることができる。
【0042】
またさらに、本実施形態によれば、車両本体1内の空気を当該車両本体1の外部に排出し得る換気手段4を有するので、車両本体1内の空気を常時衛生的に保持することができる。また、ワクチン接種領域R1は、被接種者が着座状態又は横臥状態でワクチン接種可能な着座手段5又は横臥手段6aと、医療従事者によるワクチン接種のための種々作業が行われる作業台10とが設置されたので、ワクチン接種領域R1におけるワクチンの接種作業を良好に行わせることができる。
【0043】
加えて、本実施形態に係るワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法によれば、ワクチン接種用車両の車両本体1の周囲に被接種者が搭乗した個々の車両Wを複数台停車させ、各車両W内で被接種者を待機させるとともに、被接種者をワクチン接種用車両に順次呼び出してワクチン接種領域R1にてワクチンを接種するので、病院等の医療施設や公共施設から離れた屋外においてもワクチンの接種を良好に行わせることができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係るワクチン接種用車両を用いたワクチン接種の運用方法によれば、ワクチン接種領域R1でワクチンを接種した後の被接種者を個々の車両Wにて所定時間待機させるので、ワクチンを接種した後にアナフィラキシー等の副反応が生じたとしても、ワクチン接種用車両内の医療従事者により迅速かつ適切な処置を行わせることができる。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態に係るワクチン接種用車両について説明する。
本ワクチン接種用車両は、
図9に示すように、ワクチン冷蔵手段2と隣接した位置にワクチン冷凍手段11が設置されている。かかるワクチン冷凍手段11は、ワクチンを冷凍保存する冷凍庫から成り、蓄電池3により電力供給可能とされるとともに、これらワクチン冷蔵手段2、ワクチン冷凍手段11及び蓄電池3は、
図9に示すように、車両本体1の前後方向に並んで設置されている。
【0046】
このような他の実施形態に係るワクチン接種用車両によれば、車両本体1内に設置され、ワクチンを冷凍保存するワクチン冷凍手段11を有するとともに、当該ワクチン冷凍手段11は、蓄電池3により電力供給可能とされたので、ワクチン冷凍手段11で冷凍保存されたワクチンをワクチン冷蔵手段2にて解凍及び冷蔵保存することができる。また、ワクチン冷蔵手段11、ワクチン冷凍手段2及び蓄電池3は、車両本体1の前後方向に並んで設置されたので、蓄電池3とワクチン冷蔵手段2及びワクチン冷凍手段11との電気的接続を良好に行わせることができるとともに、車両本体1内における被接種者の移動スペースを十分に確保することができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばスロープ8に代えて階段状のステップや梯子を用いるようにしてもよく、側方出口1bにスロープ8を設置してもよい。また、横臥手段(6a~6c)は、任意の位置に任意の個数だけ設置するようにしてもよく、テーブル7や作業台10を設けないものとしてもよい。なお、車両本体1は、大型車両が好ましいが、接種領域R1のスペースを確保できる小型車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
車両本体内に設置され、ワクチンを冷蔵保存するワクチン冷蔵手段と、ワクチン冷蔵手段に対する車両本体からの振動を吸収する振動吸収手段と、車両本体内の所定位置に設定されるとともに、医療従事者がワクチンを被接種者に接種可能なワクチン接種領域と、ワクチン接種領域に対して被接種者が出入り可能な出入り口とを具備したワクチン接種用車両であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 車両本体
1a 後方入口
1b 側方出口
2 ワクチン冷蔵手段
3 蓄電池
4 換気手段
5 着座手段
6a~6c 横臥手段
7 テーブル
8 スロープ
9 仕切り手段
10 作業台
11 ワクチン冷凍手段
h 振動吸収手段
R1 ワクチン接種領域
R2 待機領域
R3 運転領域
D1 後方ドア
D2 側方ドア
F1 前輪
F2 後輪
K 排気口
A エアコン