IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOWA株式会社の特許一覧

特開2022-164095樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法
<>
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図1
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図2
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図3
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図4
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図5
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図6
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図7
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図8
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図9
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図10
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図11
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図12
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図13
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図14
  • 特開-樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164095
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20221020BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20221020BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20221020BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C33/68
B29C43/18
B29C43/58
H01L21/56 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069371
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 良太
(72)【発明者】
【氏名】石川 侑扶
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AD02
4F202AD03
4F202AH33
4F202AH37
4F202AJ03
4F202AM32
4F202CA09
4F202CB01
4F202CM72
4F202CS10
4F204AC01
4F204AD19
4F204AH37
4F204AM32
4F204AQ01
4F204AR15
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ38
5F061AA01
5F061CA05
5F061CB02
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品内での厚みのばらつきの発生を検出可能な樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂成形装置は、少なくとも一部が透光性を有するテーブルと、前記テーブルの下方から照明可能な照明部と、前記テーブル上に樹脂材料を供給する樹脂材料供給部と、前記テーブル上に供給された前記樹脂材料を上方から撮像可能な撮像部と、前記テーブル上に供給された樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が透光性を有するテーブルと、
前記テーブルの下方から照明可能な照明部と、
前記テーブル上に樹脂材料を供給する樹脂材料供給部と、
前記テーブル上に供給された前記樹脂材料を上方から撮像可能な撮像部と、
前記テーブル上に供給された樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形部と、
を備えている、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記テーブルには、透光性を有する導光板が設けられ、
前記照明部は、前記導光板の側端面から光を照射するように構成されている、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記テーブル上に離型フィルムを供給する離型フィルム供給部をさらに備え、
前記テーブル上に配置された前記離型フィルム上に、前記樹脂材料が供給されるように構成されている、請求項1または2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記撮像部の撮像によって生成された画像データを解析し、解析結果に基づいて前記樹脂材料供給部を制御するように構成された制御部をさらに備えている、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記画像データに階調処理及び二値化処理を施すことを通じて、前記画像データを解析するように構成されている、請求項4に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
少なくとも一部が透光性を有するテーブル上に、樹脂材料を供給するステップと、
前記テーブルの下方から照明を行った状態で、供給された樹脂材料を上方から撮像するステップと、
前記テーブル上に供給された樹脂材料を用いて樹脂成形を行うステップと、
を備えている、樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂材料を供給するステップに先立って、前記テーブル上に離型フィルムを配置するステップをさらに備え、
前記樹脂材料は、前記離型フィルム上に供給される、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記撮像により生成された画像データを解析し、解析結果に基づいて前記樹脂材料の供給を制御するステップをさらに備えている、請求項5または6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージの厚さを薄くすることが望まれており、樹脂供給においては、広面積でパッケージ厚さがばらつかずに揃うよう、樹脂供給量の面内均一性が求められている。そのため、例えば、特許文献1には、テーブル上に離型フィルムを配置した後、離型フィルム上に液状樹脂を供給し、これをカメラにより撮像する技術が記載されている(図3等参照)。また、特許文献2には、移動テーブル上に離型フィルムを配置した後、離型フィルム上に顆粒状の樹脂を供給し、これを観察する技術が記載されている(段落0048,0049、図1等参照)。いずれの特許文献の技術においても、離型フィルムに積層された樹脂材料を観察することで、樹脂材料の面内均一性を識別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6218891号公報
【特許文献2】特開2020-82534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記各公報には明示されていないが、従来技術では、樹脂材料の上方にカメラを配置するとともに、照明も上方に配置している。そのため、撮像方向に対して、照明の照射方向が傾斜することになる。その結果、樹脂材料に影ができて明暗が生じ、面内均一性を誤認識する要因となるおそれがある。
【0005】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、1つの樹脂成形品内での厚みのばらつきの発生を検出可能な樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂成形装置は、少なくとも一部が透光性を有するテーブルと、前記テーブルの下方から照明可能な照明部と、前記テーブル上に樹脂材料を供給する樹脂材料供給部と、前記テーブル上に供給された前記樹脂材料を上方から撮像可能な撮像部と、前記テーブル上に供給された樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形部と、を備えている。
【0007】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、少なくとも一部が透光性を有するテーブル上に、樹脂材料を供給するステップと、前記テーブルの下方から照明を行った状態で、供給された樹脂材料を上方から撮像するステップと、前記テーブル上に供給された樹脂材料を用いて樹脂成形を行うステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの樹脂成形品内での厚みのばらつきの発生を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】樹脂成形装置を模式的に示す平面図である。
図2】移動テーブルの平面図である。
図3】移動テーブルの断面図である。
図4】離型フィルム供給部の動作を説明する図である。
図5】樹脂材料収容部を説明する断面図である。
図6】樹脂材料供給部を模式的に示す断面図である。
図7】撮像部による撮像状態を説明するための図である。
図8】樹脂材料が供給された状態における凹部の一例を示す図である。
図9】樹脂成形装置における一部の動作手順を示すフローチャートである。
図10図9のステップS230において実行される解析処理の手順を示すフローチャートである。
図11】凹部を示す画像データに含まれる領域について説明するための図である。
図12】解析データの一例を示す図である。
図13】樹脂材料に対する光の照射を説明する断面図である。
図14】本発明を適用した樹脂成形装置で撮像された樹脂材料の写真である。
図15】従来の樹脂成形装置で撮像された樹脂材料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれていることがある。
【0011】
<1.樹脂成形装置の構成>
図1は、本実施形態に係る樹脂成形装置100の概略平面図である。樹脂成形装置100は、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子が接続された基板Wに樹脂封止を施し、樹脂成形品を製造するように構成されている。この樹脂成形装置100においては、基板Wのうち電子部品が搭載された部品搭載面が樹脂封止される。
【0012】
ここで用いられる基板Wの一例としては、シリコンウェーハ等の半導体基板、リードフレーム、プリント配線基板、金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミック製基板等を挙げることができる。基板Wは、FOWLP(Fan Out Wafer Level Packaging)、FOPLP(Fan Out Panel Level Packaging)に用いられるキャリアであってもよい。基板Wにおいては、配線が既に施されていてもよいし、配線が施されていなくてもよい。
【0013】
図1に示すように、樹脂成形装置100は、基板供給・収納モジュールA(以下、単に「モジュールA」とも称する。)と、2つの樹脂成形モジュールB(以下、単に「モジュールB」とも称する。)と、樹脂材料供給モジュールC(以下、単に「モジュールC」とも称する。)と、第1制御部14と、を有している。第1制御部としては、例えば、PLC(Programable Logic Controller)、PC(Personal Computer)等を用いることができる。第1制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じてモジュールA~Cの各々の制御を行なうように構成されている。以下、各モジュールA~Cについて詳細に説明する。なお、モジュールの各々は、他のモジュールに着脱可能かつ交換可能である。また、樹脂成形装置100において、モジュールA~Cの各々は増減可能である。
【0014】
<1-1.モジュールA>
モジュールAは、封止前基板Wの供給、及び封止済基板Wの収納を行うモジュールであり、基板供給部1と、基板収納部2と、基板載置部3と、基板搬送機構4と、を有している。基板供給部1は、封止前基板Wを基板載置部3上に供給するように構成されている。基板収納部2は、封止済基板W(樹脂成形品)を収納するように構成されている。基板載置部3は、基板供給部1に対応する位置と基板収納部2に対応する位置との間で矢印Y方向に移動するように構成されている。基板搬送機構4は、モジュールAとモジュールBとに亘って、矢印X方向及び矢印Y方向に移動するように構成されており、例えば、モジュールAにおいて基板載置部3上の封止前基板Wを保持し、モジュールBに搬送する。あるいは、モジュールBで製造された封止済基板Wを、モジュールAの基板載置部3上に載置する。
【0015】
<1-2.モジュールB>
各モジュールBは、樹脂材料の成形を行うモジュールであり、圧縮成形によって封止済基板W(樹脂成形品)を製造する圧縮成形部5を有している。この圧縮成形においては、例えば、黒色の顆粒状の樹脂材料Pが用いられる。圧縮成形部5は、上型52と、上型52に対向する下型51と、型締め機構53と、を有している。上型52は、下面に基板Wを保持するように構成されている。一方、下型51は、凹状のキャビティ51Cを形成するための底面部材と側面部材とを有している。すなわち、底面部材がキャビティ51Cの底面を構成し、側面部材がキャビティ51Cの側面を構成する。キャビティ51Cには、後述するように、モジュールCで準備された樹脂材料Pが配置される。そして、型締め機構53は、上型52と、樹脂材料Pが配置された下型51とを型締めするように構成されている。
【0016】
<1-3.モジュールC>
モジュールCは、樹脂材料を供給するためのモジュールである。図1に示すように、モジュールCは、移動テーブル6と、樹脂材料収容部7と、樹脂材料供給部8と、離型フィルム供給部9と、撮像部300と、樹脂材料搬送機構90と、を有している。さらに、このモジュールCには、HDD(Hard Disc Drive)200と、第2制御部150とが設けられている。この第2制御部150が、本発明の制御部に相当する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0017】
<1-3-1.移動テーブル>
図2は移動テーブルの平面図、図3図2の断面図である。図1に示すように、移動テーブル6は、モジュールCにおいて矢印X方向及び矢印Y方向に移動するように構成されている。図2及び図3に示すように、移動テーブル6の上面には凹部61が形成されており、この凹部61に導光板62が配置されている。また、導光板62の側端面には、照明部としてのLEDモジュール63が配置されており、このLEDモジュール63から照射された光が導光板62に入射し、導光板62内で拡散することで、導光板62の上面が発光するようになっている。導光板62は、アクリル樹脂などで形成された公知のものを適宜用いることができ、必要に応じて、反射フィルムや拡散フィルムを設けることができる。
【0018】
移動テーブル6の上面において、導光板62の周囲には、吸引口(図示省略)が形成されており、次に説明する離型フィルム73を吸引により保持するように構成されている。
【0019】
<1-3-2.離型フィルム供給部>
図4は離型フィルム供給部の動作を説明する側面図である。図4(a)に示すように、移動テーブル6の一端部側には、移動テーブル6の上面に離型フィルム73を配置するための離型フィルム供給部9が設けられている。離型フィルム供給部9は、離型フィルム73が巻き取られたロール91と、このロール91から離型フィルム73を繰り出し、移動テーブル6上に配置する操出部92と、離型フィルム73を切断する切断部93と、を有している。
【0020】
図4(b)に示すように、操出部92は、ロール91に巻き取られた離型フィルム73の端部を把持し、ロール91から離れることで離型フィルム73を繰り出すように構成されている。このとき、操出部92は、移動テーブル6の上方を、その一端部から他端部まで移動する。これにより、離型フィルム73が移動テーブル6上に配置される。移動テーブル6上の離型フィルム73は、上述した吸引口によって吸引され、移動テーブル6上に保持される。また、図4(c)に示すように、離型フィルム73において、ロール91側の端部は、切断部93によって切断される。これにより、枚葉状の離型フィルム73が移動テーブル6上に配置される。
【0021】
<1-3-3.樹脂材料収容部>
次に、樹脂材料収容部7について説明する。図5(a)に示すように、樹脂材料収容部7は、枠状部材72と、これを移動させる移動機構(図示省略)とを有している。枠状部材72は矩形状に形成され、移動機構によって、離型フィルム73が配置された移動テーブル6上に配置される。これにより、樹脂材料が供給される凹部71が形成される。すなわち、離型フィルム73がこの凹部71の底面を構成し、枠状部材72は凹部71の側面を構成する。なお、この凹部71は、モジュールBの下型51のキャビティ51Cの大きさに対応する空間を有している。
【0022】
<1-3-4.樹脂材料供給部>
続いて、樹脂材料供給部8について説明する。図6は樹脂材料供給部を模式的に示す断面図である。樹脂材料供給部8は、予め設定された重量の樹脂材料Pを枠状部材72の凹部71に供給するように構成されており、貯留部11と、搬送路12と、振動部13と、計量部16と、を有している。貯留部11は、顆粒状の樹脂材料Pを一時的に貯留し、この樹脂材料Pを搬送路12に供給する。搬送路12に供給された樹脂材料は、その端部の吐出口121から排出され、枠状部材72の凹部71に供給される。このとき、振動部13によって搬送路12が振動され、これによって樹脂材料Pを吐出口側に搬送するように構成されている。
【0023】
計量部16は、樹脂材料供給部8内の樹脂材料Pの重量を計測するように構成されている。第1制御部14は、計量部16による計量結果に基づいて、樹脂材料収容部7への樹脂材料Pの供給量が目標値となるように振動部13を制御する。
【0024】
樹脂材料供給部8の吐出口121から落下する樹脂材料Pは、移動テーブル6が樹脂材料供給部8の吐出口に対して相対移動することによって、凹部71において万遍なく敷き詰められる。
【0025】
<1-3-5.撮像部>
図7は撮像部による撮像状態を説明するための図である。図7に示すように、撮像部300は、枠状部材72の凹部71に供給された樹脂材料Pを上方から撮像し、画像データを生成するように構成されている。撮像部300は、例えば、移動テーブル6が撮像部300の下方に位置する状態で、凹部71内の樹脂材料Pを撮像する。撮像部300は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等のイメージセンサを含むカメラモジュールで構成される。この撮影の際、上述した導光板62により、離型フィルム73を介して樹脂材料Pの下方から光が照射される。
【0026】
上述したHDD200は、撮像部300によって生成された画像データを記憶するように構成されている。なお、HDD200は、ソリッドステートドライブ等の他の記憶媒体に置き換えられてもよい。
【0027】
第2制御部150は、CPU、RAM及びROM等を含み、情報処理に応じて撮像部300等の制御を行なうように構成されている。第1制御部14及び第2制御部150による各種制御に関しては、後程詳しく説明する。
【0028】
<1-3-6.樹脂材料搬送機構>
図1に示すように、樹脂材料搬送機構90は、モジュールC及びモジュールBにおいて、矢印X方向及び矢印Y方向に移動するように構成されている。図5(b)に示すように、樹脂材料搬送機構90は、樹脂材料Pを収容した枠状部材72及び離型フィルム73を、移動テーブル6から離間する。そして、これをモジュールBの下型51に搬送し、下型51のキャビティ51Cに樹脂材料Pを供給するように構成されている。
【0029】
<2.樹脂成形品の厚みのばらつき抑制>
続いて、上記のように構成されたモジュールCにおける樹脂成形品の厚みの抑制方法について説明する。
【0030】
近年、半導体パッケージ(樹脂成形品の一例)の薄型化が進み、例えば、厚さが0.38mm又は0.43mmの製品が市場で求められている。一方、成形プロセスの質次第では、一つの樹脂成形品内で厚みにばらつきが生じる場合がある。厚さが薄い樹脂成形品においては、少しの厚みのばらつきが樹脂成形品の品質に大きい影響を与える。一つの樹脂成形品内での厚みのばらつきとは、複数の樹脂成形品の厚みを比較した場合の厚みのばらつきではなく、一つの樹脂成形品の面内での厚みのばらつきであり、その樹脂成形品内の複数の部分での厚みのばらつきを意味する。
【0031】
例えば、枠状部材72の凹部71に樹脂材料Pが万遍なく供給されていない場合に、このような問題が顕著になる。すなわち、凹部71の一部の領域において樹脂材料Pが不足した状態で樹脂成形が行なわれると、完成した樹脂成形品の領域毎の厚みにばらつきが生じる。
【0032】
図8は、樹脂材料Pが供給された状態における凹部71の一例を示す図である。図8に示されるように、凹部71は、領域T30と、領域T40とを含んでいる。領域T30においては樹脂材料Pが十分に供給されているが、領域T40においては樹脂材料Pが不足している。樹脂材料Pが不足している領域においては、凹部71の底面が露出している。凹部71の底面の色は、樹脂材料Pよりも白色に近い色である。
【0033】
この樹脂成形装置100においては、樹脂成形を行なう前に、枠状部材72に供給された樹脂材料Pが撮像部300によって撮像される。第2制御部150は、撮像部300によって生成された画像データを解析し、解析結果に基づいて樹脂材料供給部8を制御する。樹脂成形装置100においては、凹部71における樹脂材料Pの供給状態の解析結果に基づいて樹脂材料供給部8が制御されるため、凹部71における樹脂材料Pの供給状態が改善される。その結果、樹脂成形装置100によれば、一つの樹脂成形品内での厚みがばらついた樹脂成形品が製造される事態を抑制することができる。以下、樹脂成形装置100の動作について詳細に説明する。
【0034】
<3.樹脂成形装置の動作例>
図9は、樹脂成形装置100における一部の動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、枠状部材72の凹部71が樹脂材料供給部8の吐出口121の下方に位置する状態で実行される。左側のフローチャートに示される処理は第1制御部14によって実行され、右側のフローチャートに示される処理は第2制御部150によって実行される。
【0035】
図9の左側を参照して、第1制御部14は、凹部71に向かって樹脂材料Pを吐出するように樹脂材料供給部8を制御する(ステップS100)。第1制御部14は、樹脂材料Pの吐出が完了したか否かを判定する(ステップS110)。樹脂材料Pの吐出が完了していないと判定されると(ステップS110においてNO)、第1制御部14は、樹脂材料Pの吐出中に必要な処理を継続して実行する。例えば、第1制御部14は、凹部71に万遍なく樹脂材料Pが供給されるように移動テーブル6を移動させる。
【0036】
一方、樹脂材料Pの吐出が完了したと判定されると(ステップS110においてYES)、第1制御部14は、撮像部300による撮像を指示する信号(撮像指示信号)を第2制御部150に送信する(S120)。
【0037】
図9の右側を参照して、第2制御部150は、第1制御部14から撮像指示信号を受信したか否かを判定する(ステップS200)。撮像指示信号を受信していないと判定されると(ステップS200においてNO)、第2制御部150は、撮像指示信号を受信するまで待機する。
【0038】
一方、撮像指示信号を受信したと判定されると(ステップS200においてYES)、第2制御部150は、凹部71内における樹脂材料Pを上方から撮像し、画像データを生成するように撮像部300を制御する(ステップS210)。第2制御部150は、撮像部300によって生成された画像データをHDD200に保存させるように撮像部300を制御する(ステップS220)。第2制御部150は、画像データの解析処理を実行する(ステップS230)。
【0039】
図10は、図9のステップS230において実行される解析処理の手順を示すフローチャートである。図10を参照して、第2制御部150は、HDD200に保存されている画像データを読み込む(ステップS300)。第2制御部150は、読み込まれた画像データに階調処理及び二値化処理を施す(ステップS310)。
【0040】
階調処理においては、画像データの各画素が256段階[0(暗)-255(明)]に分類される。例えば、白色の画素には「255」が割り当てられ、黒色の画素には「0」が割り当てられる。二値化処理においては、画像データの各画素が「白」又は「黒」に分類される。例えば、階調処理によって割り当てられた値が閾値X1(例えば、200)以上の画素は「白」に分類され、階調処理によって割り当てられた値が閾値X1未満の画素は「黒」に分類される。
【0041】
図11は、凹部71を示す画像データに含まれる領域について説明するための図である。図11に示されるように、画像データには、領域T1-T18が含まれている。
【0042】
再び図10を参照して、第2制御部150は、画像データに含まれる領域T1-T18の各々に対応する数値データを算出する(ステップS320)。本実施形態において、この数値データは、各領域における「白」に分類された画素の数である。すなわち、ステップS320においては、領域T1-T18の各々における「白」に分類された画素の数が算出される。「白」に分類された画素の数が多いということは、樹脂材料Pが万遍なく供給されておらず、凹部71の表面が露出している範囲が広いことを意味する。
【0043】
第2制御部150は、ステップS320において算出された各数値データと閾値X2(例えば、10)とを比較し、領域T1-T18の各々において問題が発生しているか否かを判定する(ステップS330)。第2制御部150は、例えば、数値データが閾値X2を超えた領域は「不良(NG)」であると判定し、数値データが閾値X2以下である領域は「良(OK)」であると判定する。すなわち、ステップS320においては、領域T1-T18の各々に対応する凹部71の各領域において樹脂材料Pの不足が発生しているか否か(「白」の画素の数が閾値X2よりも大きいか否か)が判定されている。第2制御部150は、ステップS330における比較結果に基づいて解析データを生成する(ステップS340)。
【0044】
図12は、解析データの一例を示す図である。図12に示されるように、解析データD1は、画像データの各領域におけるOK/NGに関する判定結果、及び、画像データの各領域における「白」に分類された画素の数を含んでいる。
【0045】
再び図9の右側を参照して、ステップS230において画像解析が終了すると、第2制御部150は、解析データD1を第1制御部14に送信する(ステップS240)。
【0046】
再び図9の左側を参照して、第1制御部14は、第2制御部150から解析データD1を受信したか否かを判定する(ステップS130)。解析データD1を受信していないと判定されると(ステップS130においてNO)、第1制御部14は、解析データD1を受信するまで待機する。
【0047】
一方、解析データD1を受信したと判定されると(ステップS130においてYES)、第1制御部14は、解析データD1に基づいて凹部71の樹脂材料Pの状態に問題がないか否かを判定する(ステップS140)。第1制御部14は、例えば、領域T1-T18のいずれかが「NG」と判定されている場合に凹部71の樹脂材料Pの状態に問題があると判定し(NG)、領域T1-T18のいずれもが「NG」と判定されていない場合に凹部71の樹脂材料Pの状態に問題がないと判定する(OK)。
【0048】
凹部71の樹脂材料Pの状態に問題がないと判定されると(ステップS140においてOK)、第1制御部14は、樹脂成形を行なう工程に移行するように各構成を制御する(ステップS150)。すなわち、第1制御部14は、樹脂材料供給部8を次回制御する場合においても、樹脂材料供給部8の動作状態を特に変更することなく、樹脂材料供給部8の動作状態を維持する。
【0049】
一方、凹部71の樹脂材料Pの状態に問題があると判定されると(ステップS140においてNG)、第1制御部14は、NGと判定された場合の処理を実行する(ステップS160)。すなわち、第1制御部14は、樹脂材料供給部8を次回制御する場合の制御内容を変更し変更内容を記憶すると共に、樹脂成形装置100を停止させる。第1制御部14は、例えば、樹脂材料供給部8を次回制御する場合に、樹脂材料Pの不足が発生していると判定された領域(T1-T18)において樹脂材料Pの不足が解消するように樹脂材料供給部8を制御する。より詳細には、第1制御部14は、樹脂材料Pの不足が発生していなかった領域に供給する樹脂材料Pの量を減少させ、樹脂材料Pの不足が発生していた領域に供給する樹脂材料Pの量を増加させる。これにより、凹部71において樹脂材料Pが万遍なく供給される。
【0050】
<4.特徴>
本実施形態に係る樹脂成形装置100によれば、次の効果を得ることができる。
【0051】
モジュールCでは、上記のように移動テーブル6の下方から樹脂材料Pに光を照射し、これを上方から撮像部300で撮像している。そのため、例えば、図13に示すように、樹脂材料Pが密に積層されておらず空隙が生じている箇所(所定の厚みを形成できない薄い箇所)では、導光板62からの光が透過し、これを撮像部300によって撮像することができる。図14は撮像された画像の一例であり、白い箇所が光が透過している部分である(樹脂材料Pの厚みは概ね1.0mm)。すなわち、この白い箇所は樹脂材料Pが密に積層されておらず、内部に空隙が形成されていると考えられる。
【0052】
これに対して、例えば、移動テーブル6の上方から斜めに光を照射し、撮像部300で撮像した場合には、図15のような画像が得られる。図14図15とは同じ樹脂材料Pを撮像している。図15では、樹脂材料の中央部分(破線箇所)が密に積層されているように見えるが、図14では、この箇所に白い部分が生じており、内部に隙間が形成されていることが分かる。例えば、顆粒状の樹脂材料Pの重なりが薄い部分であっても、上方から斜めに光を照射すると樹脂材料Pの影によって樹脂材料Pが密に積層されているように見える。したがって、上方からの照明により撮像を行うと、樹脂材料Pが密に積層されていなくても、これを誤認識し、密に積層されていると認識されるおそれがある。これに対して、本実施形態のように、移動テーブル6の下から光を照射すると、樹脂材料Pが密に積層されていない箇所を的確に検出することができ、誤認識を防止することができる。
【0053】
なお、このように光を樹脂材料Pの下側から照射すると、カメラでの検査にかかわらず、目視においても見やすいという利点がある。
【0054】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0055】
(1)移動テーブル6の構成は特には限定されず、樹脂材料Pの下方から光を照射できるのであれば、種々の態様が可能である。例えば、上記実施形態では、導光板62を用いて光を照射しているが、移動テーブル6上に透光性を有する材料を配置し、その下側に光源(照明部)を配置すれば、樹脂材料Pに下方から光を照射することができる。この場合の光源の種類は特には限定されず、LED以外に、例えば、有機EL、無機EL等を用いることができる。また、移動テーブル6上で透光性を有する材料の配置範囲は、枠状部材72の凹部71の大きさ、または撮像範囲に応じて適宜変更することができる。
【0056】
また、使用される樹脂材料の種類に応じて、光源からの光の波長を変えてもよい。すなわち、樹脂材料の種類によっては光を吸収することがあるため、樹脂材料において密ではない箇所を光が十分に通過できるように、樹脂材料の種類に合わせて光の波長を選択することもできる。
【0057】
(2)上記実施形態では、顆粒状の樹脂材料Pを用いているが、ペースト状等の液状の樹脂であっても、本発明を適用することができる。このような樹脂材料であっても、密に積層がされていない箇所は光が透過するため、これを識別することができる。
【0058】
(3)本発明の樹脂成形部は、上記実施形態で示したモジュールBが該当するが、モジュールBの構成は一例であり、種々の態様が可能である。すなわち、移動テーブル6上に供給された樹脂材料を用いて樹脂成形を行うものであれば、その構成は特には限定されない。
【0059】
(4)上記実施形態においては、樹脂材料Pの吐出が完了した後に、撮像部300による撮像が行なわれた。しかしながら、撮像部300による撮像タイミングはこれに限定されない。例えば、撮像部300が樹脂材料供給部8の吐出口付近に配置され、撮像部300は、樹脂材料供給部8による樹脂材料Pの供給中に凹部71の動画を常時撮像していてもよい。この場合に、第2制御部150は、撮像中の動画像データに基づいて凹部71の樹脂材料Pの状態に問題があるか否かの判定をリアルタイムで行ない、樹脂材料供給部8の制御内容をリアルタイムで変更してもよい。
【0060】
(5)上記実施形態において、画像解析は、階調処理及び二値化処理を通じて行なわれた。しかしながら、画像解析に用いられる技術はこれに限定されない。例えば、凹部71の3D画像に基づく凹凸計測の結果に基づいて、凹部71において樹脂材料Pが不足している領域が検出されてもよいし、パターンマッチング、統計的手法又はAI(Artificial Intelligence)等を用いることによって、凹部71において樹脂材料Pが不足している領域が検出されてもよい。
【0061】
(6)上記実施形態において、凹部71の樹脂材料Pの状態に問題があると判定されると(図9のステップS140においてNG)、第1制御部14は、次回から、樹脂材料Pの不足が発生していなかった領域に供給する樹脂材料Pの量を減少させ、樹脂材料Pの不足が発生していた領域に供給する樹脂材料Pの量を増加させることとした。しかしながら、次回からの第1制御部14による制御内容はこれに限定されない。例えば、第1制御部14は、解析データD1を参照して、「白」に分類された画素がより少ない領域に供給する樹脂材料Pの量をより多く減少させ、「白」に分類された画素がより多い領域に供給する樹脂材料Pの量をより多く増加させてもよい。
【0062】
(7)上記実施形態においては、樹脂成形装置100の制御が、第1制御部14と第2制御部150とによって行なわれている。しかしながら、第1制御部14と第2制御部150とによって行なわれた制御は、共通の制御部で構成してもよく、また例えば、1つのコンピュータによって実現されてもよいし、3つ以上のコンピュータによって実現されてもよい。
【0063】
(8)、上記実施形態において、樹脂成形装置100は、HDD200を含むこととしている。しかしながら、樹脂成形装置100は、必ずしもHDD200を含む必要はない。HDD200は、例えば、クラウドサーバ上に存在してもよい。この場合には、第2制御部150が不図示の通信部を介してクラウドサーバにアクセスする。
【符号の説明】
【0064】
6 移動テーブル:(テーブル)
63 :LEDモジュール(照明部)
73 :離型フィルム
9 :離型フィルム供給部
100 :樹脂成形装置
150 :第2制御部(制御部)
300 :撮像部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15