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特開2022-164099miRNAを含む抗SARS-CoV-2薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164099
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】miRNAを含む抗SARS-CoV-2薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20221020BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20221020BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K31/7105
C12N15/113 Z ZNA
A61P31/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069376
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】505457994
【氏名又は名称】学校法人東京医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(71)【出願人】
【識別番号】310015086
【氏名又は名称】株式会社ボナック
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 善基
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 公一
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】miRNAを含む抗SARS-CoV-2薬の提供。
【解決手段】本発明は、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸を有効成分とする、抗SARS-CoV-2薬を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸を有効成分とする、抗SARS-CoV-2薬。
【請求項2】
前記miRNAが、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680及びhsa-miR-3682-5pからなる群より選択されるmiRNAである、請求項1に記載の抗SARS-CoV-2薬。
【請求項3】
前記miRNAが、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p及びhsa-miR-3934-3pからなる群より選択されるmiRNAである、請求項1に記載の抗SARS-CoV-2薬。
【請求項4】
前記マイクロRNAが、hsa-miR-8076又はhsa-miR-3085-3pである、請求項1に記載の抗SARS-CoV-2薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、miRNAを含有する、抗SARS-CoV-2薬に関する。
【背景技術】
【0002】
重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス-2(Severe Acute Respiratory Syndrome coronavirus 2;SARS-CoV-2)は、2019年12月に中華人民共和国湖北省武漢市で初めて発生した原因不明の肺炎患者から検出された新種のコロナウイルスである。SARS-CoV-2感染により発症する新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019;COVID-19)は、短期間に全世界へと感染拡大し、猛威を振るっている。
【0003】
現時点でCOVID-19に対する臨床的に著効を示す抗ウイルス薬は国内外に存在しない。ウイルスRNA合成阻害薬であるレムデシビル(ギリアド・サイエンシズ社)が米国に続いて日本でも「SARS-CoV-2による感染症」を効能・効果として特例承認されたものの、医療現場では基本的に対症療法を中心に据えた治療が行われている状況である。また、複数のワクチンの有効性が発表されているものの、免疫の持続性に疑問を投げかける研究成果も報告されており、一刻も早いCOVID-19治療薬の開発が望まれている状況である。
【0004】
核酸医薬は、DNAやRNAといった核酸(オリゴ核酸)からなる医薬品で、特定の塩基配列や特定のタンパク質を認識して遺伝子発現を抑制したり、タンパク質の機能を阻害したりすることにより、これまで治療が困難であった疾病の治療への利用が期待されている。また、低分子医薬品の容易な製造性と、抗体医薬の有効性と安全性とを併せ持つことから、次世代の創薬技術として期待されている。具体的なオリゴ核酸としては、アンチセンスや核酸アプタマー等のほか、近年はRNA干渉(RNA interference:RNAi)を利用した治療法の開発が注目されている。
【0005】
RNAiとは、small RNA分子が遺伝子の発現を抑制する現象である。標的とする遺伝子と塩基配列が同じsmall RNA分子を細胞内に導入すると、Dicerと呼ばれる細胞質内に存在する酵素の働きにより20から25塩基対程度の二本鎖RNAとなる。この二本鎖RNAが細胞内の複数のタンパク質とRNA-induced silencing complex(RISC)というタンパク質-RNA複合体を形成し、標的遺伝子から合成されたmRNAの相同配列に結合してmRNAを特異的に切断し、タンパク質への翻訳反応を抑制する(非特許文献1)。
【0006】
RNAiを人為的に誘発させる場合に用いられるsmall RNA分子には2つのタイプが存在する。一つは、合成された短いsmall interfering RNA(siRNA)と言われる分子で、標的となるmRNAの切断を介して、目的遺伝子の発現を効率的にノックダウンする。もう一つは、マイクロRNA(microRNA;miRNA)と言われる分子で、これは自然発生する19~22ヌクレオチド長の一本鎖RNAで、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)に結合し、翻訳を阻害することによって、遺伝子発現を調節する(非特許文献2)。
【0007】
siRNAとmiRNAとの違いの一つとして、siRNAは通常、標的RNA分子(mRNA等)と完全に相補的であるため、単一の標的遺伝子をピンポイントでノックダウンするのに用いられるのに対し、miRNAは標的のmRNAと一部相補的でない部分が存在し、これにより複数の標的RNA分子(mRNA等)を同時にノックダウンするのに用いられる点が挙げられる。このmiRNAの特徴を生かした技術として、miRNA-143(miR-143)を応用したRAS変異癌治療への応用が報告されている(非特許文献3)。RAS変異は最上位のドライバー癌遺伝子であり、ヒトの癌の約30%にRAS遺伝子の変異が観察されている。しかし、RAS変異癌ではRASのみを阻害しても効果が限定的であり、RASネットワークを多角的に破綻させることが求められる。化学修飾したmiR-143はRASのみならず、RASネットワークを構成する重要なAKT、ERK、SOS1遺伝子を標的にし、きわめて低濃度で、そのネットワークを破綻させてアポトーシスを誘導することで少量の全身投与で顕著な抗腫瘍効果を発揮することが報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nature. 1998;391(6669):806-811.
【非特許文献2】Nature. 2004;431(7006):350-355.
【非特許文献3】Cancers (Basel). 2020;12(11):3312.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
COVID-19に対する治療薬は、研究段階にあるものがいくつかあるものの、実用化されたものは少なく、より効果的な治療薬の開発が望まれている。本発明は、miRNAを有効成分とする、抗SARS-CoV-2薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく研究を進める中、本発明者らはマイクロRNA(miRNA)に着目した。その結果、極めて多くのmiRNAの中から、SARS-CoV-2に対して抑制効果を有するmiRNAを見出し、それらのmiRNAを含有する薬剤が、抗SARS-CoV-2薬として応用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次の通りである。
[1] hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸を有効成分とする、抗SARS-CoV-2薬。
[2] 前記miRNAが、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680及びhsa-miR-3682-5pからなる群より選択されるmiRNAである、[1]記載の抗SARS-CoV-2薬。
[3] 前記miRNAが、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p及びhsa-miR-3934-3pからなる群より選択されるmiRNAである、[1]記載の抗SARS-CoV-2薬。
[4] 前記マイクロRNAが、hsa-miR-8076又はhsa-miR-3085-3pである、[1]記載の抗SARS-CoV-2薬。
[5] 有効量の、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸を、対象に投与することを含む、該対象におけるSARS-CoV-2の抑制方法。
[6] SARS-CoV-2の抑制における使用のための、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸。
[7] 抗SARS-CoV-2薬の製造における、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SARS-CoV-2の感染に起因して発生する疾患又は症状の予防剤及び/又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウイルス複製抑制効果を調べるための実験手順を示した図である。
図2】miRNAをin vitroの系で投与した場合のウイルス複製抑制効果を示した図である。
図3】miRNAをin vitroの系で投与した場合のウイルス複製抑制効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、SARS-CoV-2の複製を抑制するmiRNAを有効成分とする抗SARS-CoV-2薬である。抗SARS-CoV-2薬は、SARS-CoV-2感染により発症する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して治療的又は予防的効果を発揮する。治療的効果には、COVID-19に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、COVID-19に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。
【0015】
COVID-19に特徴的な症状又は随伴症状としては、急性呼吸器症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、肺炎、上気道炎、気管支炎、敗血症性ショック及び多臓器不全等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗SARS-CoV-2薬の標的組織あるいは臓器としては、SARS-CoV-2の標的となり得る、神経細胞、血管の内皮細胞、呼吸器系や消化管内の上皮細胞より構成される組織や臓器が挙げられる。特に、SARS-CoV-2が呼吸器系の上皮細胞に感染することにより、前記のARDS、ALI肺炎、上気道炎、気管支炎など重篤な症状又は随伴症状を誘発し得ることから、肺組織は第一に挙げられる標的組織である。
【0016】
一般的なmiRNAは、連続したプロセスを経て生合成される。miRNAをコードする遺伝子の一次転写産物はPrimary miRNA転写物(pri-miRNA)と呼ばれ、一般的に、ステムループのヘアピン構造を有する。pri-miRNAは、マイクロプロセッサ複合体を構成するRNase III系酵素であるDroshaにより切断され、70塩基程度のヘアピン形態の中間前駆体であるprecursor miRNA(pre-miRNA)が産生される。
【0017】
その後、pre-miRNAは核より細胞質へと移送される。細胞質では、別のRNase III酵素であるDicerによりさらに切断され、2本鎖mature miRNAが産生される。一般的に、2本鎖のうち、前駆体の5’末端側から発現するものに“-5p”、3’末端側から発現するものに“-3p”を付加し、“hsa-miR-21-5p”、“hsa-miR-21-3p”のように表記される(2本鎖のうち、片方の鎖上にのみmRNAを標的化するmiRNAの存在が知られている場合、通常、末尾に“-5p”、“-3p”を付加しない)。なお、公知のmiRNAについては、原則としてmiRBase(http://www.mirbase.org/)に登録される。本発明において、miRNAとは、前記2本鎖mature miRNAに限定されず、pri-miRNA、pre-miRNAを含む広い概念のRNA分子を意味する。
【0018】
miRNAは、例えば当該miRNAと相補的な配列を有する標的RNA(例えば、mRNA等)に結合し、それを分解したり、その機能(例えば、RNAゲノムの複製、mRNAからタンパク質への翻訳)を抑制等することで機能を発揮する。
【0019】
本発明の抗SARS-CoV-2薬は、SARS-CoV-2の複製を抑制すること、及び/又はSARS-CoV-2の種々の蛋白質産生を抑制することによってその抗ウイルス効果を発揮する。本発明は既存の抗SARS-CoV-2薬とは異なる機序でその効果を発揮する。この点においてその臨床的意義は極めて大きい。また、この特徴に注目すれば、本発明の抗SARS-CoV-2薬を他の抗SARS-CoV-2薬と併用することは、好ましい使用形態の一つといえる。他の抗SARS-CoV-2薬として、レムデシビル、ファビピラビル等の核酸アナログ薬が挙げられる。
【0020】
本発明の抗SARS-CoV-2薬と、作用機序の異なる他の抗SARS-CoV-2薬を併用した場合には、相加的又は相乗的な効果によって治療効果の増大や予後の改善などを期待できる。ここで、「併用」とは、同一の患者に対して本発明の抗SARS-CoV-2薬と他の抗SARS-CoV-2薬が投与されることを意味する。両者の投与のタイミング/時期は特に限定されず、いずれを先に投与してもよい。また、片方の抗SARS-CoV-2薬による治療開始後のある時点において他方の抗SARS-CoV-2薬による治療を開始したり、片方の抗SARS-CoV-2薬による治療と他方の抗SARS-CoV-2薬による治療を同時に開始したり、片方の抗SARS-CoV-2薬による治療を一旦終了した段階で他方の抗SARS-CoV-2薬による治療を開始するなど、様々な併用態様を採用し得る。
【0021】
本発明の抗SARS-CoV-2薬は、17種類のmiRNA、すなわち、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pからなる群より選択されるmiRNAの配列を含む核酸(以下、「本発明の核酸」と呼称することがある)を有効成分とする。
【0022】
この特徴により、本発明の抗SARS-CoV-2薬は上記17種のmiRNAのいずれかと同様の抗SARS-CoV-2作用を示し、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果を発揮する。以下、後述の実施例で用いた上記17種のmiRNAの配列を示す。「アンチセンス鎖」がSARS-CoV-2 RNAゲノムのいずれかのORF配列の一部と相補的な配列を含み、「センス鎖」は、該アンチセンス鎖配列と相補的なヌクレオチド配列を含む。
hsa-miR-1287-5p
(アンチセンス鎖) ugcuggaucagugguucgaguc(配列番号1)
(センス鎖) cucuagccacagaugcagugau(配列番号2)
hsa-miR-8076
(アンチセンス鎖) uauauggacuuuucugauacaaug(配列番号3)
(センス鎖) uuguaucagaaaaguccauauauu(配列番号4)
hsa-miR-3085-3p
(アンチセンス鎖) ucuggcugcuauggcccccuc(配列番号5)
(センス鎖) aggugccauucugagggccaggagu(配列番号6)
hsa-miR-3672
(アンチセンス鎖) augagacucauguaaaacaucuu(配列番号7)
(センス鎖) gauguuuuacaugagucucauuu(配列番号8)
hsa-miR-5197-3p
(アンチセンス鎖) aagaagagacugagucaucgaau(配列番号9)
(センス鎖) caauggcacaaacucauucuuga(配列番号10)
hsa-miR-3934-3p
(アンチセンス鎖) ugcucagguugcacagcuggga(配列番号11)
(センス鎖) ucagguguggaaacugaggcag(配列番号12)
hsa-miR-8066
(アンチセンス鎖) caaugugaucuuuuggaugua(配列番号13)
(センス鎖) cauccaaaagaucacauuguu(配列番号14)
hsa-miR-1206
(アンチセンス鎖) uguucauguagauguuuaagc(配列番号15)
(センス鎖) uuaaacaucuacaugaacauu(配列番号16)
hsa-miR-3691-3p
(アンチセンス鎖) accaagucugcgucauccucuc(配列番号17)
(センス鎖) aguggaugauggagacucgguac(配列番号18)
hsa-miR-5680
(アンチセンス鎖) gagaaaugcuggacuaaucugc(配列番号19)
(センス鎖) agauuaguccagcauuucucuu(配列番号20)
hsa-miR-3682-5p
(アンチセンス鎖) cuacuucuaccuguguuaucau(配列番号21)
(センス鎖) ugaugauacagguggagguag(配列番号22)
hsa-miR-129-2-3p
(アンチセンス鎖) aagcccuuaccccaaaaagcau(配列番号23)
(センス鎖) cuuuuugcggucugggcuugc(配列番号24)
hsa-miR-3606-3p
(アンチセンス鎖) aaaauuucuuucacuacuuag(配列番号25)
(センス鎖) uuagugaaggcuauuuuaauu(配列番号26)
hsa-miR-3611
(アンチセンス鎖) uugugaagaaagaaauucuua(配列番号27)
(センス鎖) agaauuucuuucuucacaauu(配列番号28)
hsa-miR-7107-3p
(アンチセンス鎖) uggucuguucauucucucuuuuuggcc(配列番号29)
(センス鎖) ucggccuggggaggaggaaggg(配列番号30)
hsa-miR-514a-3p
(アンチセンス鎖) auugacacuucugugaguaga(配列番号31)
(センス鎖) uacucuggagagugacaaucaug(配列番号32)
hsa-miR-1468-5p
(アンチセンス鎖) cuccguuugccuguuucgcug(配列番号33)
(センス鎖) agcaaaauaagcaaauggaaaa(配列番号34)
【0023】
上記各miRNAのアンチセンス鎖配列は、抗SARS-CoV-2作用を示す限り、上記のヌクレオチド配列において、1ないし数(2、3、4、5)個のヌクレオチドが置換、欠失、挿入又は付加されていてもよい。miRNAは5’末端側2~8番目のヌクレオチド配列(シード領域)が標的mRNAとのハイブリッド形成・機能発現に主に寄与するので(Current Biology, 15, R458-R460 (2005))、上記ヌクレオチド配列中2~8番目のヌクレオチド配列は保存されることが望ましい。
【0024】
各miRNAのセンス鎖配列は、標的ヒト細胞の生理的条件下でアンチセンス鎖とハイブリッド形成することができ、内因性のRISCに取り込まれて巻き戻し又は分解を受け、アンチセンス鎖-RISC複合体がSARS-CoV-2の標的配列に作用し得る限り、アンチセンス配列に対して完全相補的であっても、1ないし数(2、3、4、5)個のミスマッチを含んでいてもよい。上記した各miRNAのセンス鎖配列は、センス鎖上にもmiRBaseに登録されているmiRNAが存在する場合は、天然の二本鎖mature miRNAのセンス鎖配列を、存在しない場合には、アンチセンス鎖と完全相補的なヌクレオチド配列を示しているが、それらに限定されない。
【0025】
本発明の抗SARS-CoV-2薬を構成する核酸分子は、生体に存在するmiRNAと同一の形態の一本鎖であっても、あるいは二本鎖であってもよい。前者の場合、本発明の抗SARS-CoV-2薬は、典型的には、上記17種類のmiRNAのいずれか、すなわち特定のmiRNAを有効成分として含む。但し、生体内で当該miRNAを生成するように設計された核酸(Pre-miRNA、Pri-miRNA等)を用いることにしてもよい。例えば、17種類のmiRNAのpre-miRNA配列は、miRBaseから取得することができる。
【0026】
当該核酸分子は、安定性、薬物送達性等を高めるため、各ヌクレオチドの糖残基(例えば、リボース)が修飾されたものであってもよい。糖残基において修飾される部位としては、例えば、糖残基の2’位、3’位及び/又は4’位のヒドロキシル基を他の原子に置き換えたものなどが挙げられる。修飾の種類としては、例えば、フルオロ化、O-アルキル化(例えば、 O-メチル化、O-エチル化)、O-アリル化、S-アルキル化(例えば、S-メチル化、S-エチル化) 、S-アリル化、アミノ化(例、-NH2)等が挙げられる。このような糖残基の改変は、公知の方法により行うことができる(例えば、Sproat et al.,(1991) Nucl. Acid. Res.19,733-738;Cotton et al.,(1991) Nucl Acid. Res.19, 2629-2635;Hobbs et al.,(1973) Biochemistry 12, 5138-5145参照)。
【0027】
また、糖残基については、2’位及び4’位で架橋構造を形成したBNA: Bridged nucleic acid(LNA:Linked nucleic acid)とすることもできる。このような糖残基の改変も、公知の方法により行うことができる(例えば、Tetrahedron Lett., 38, 8735-8738(1997);Tetrahedron, 59, 5123-5128 (2003)、Rahman S. M. A., Seki S., Obika S., Yoshikaw a H., Miyashita K., Imanishi T., J. Am. Chem. Soc.,130, 4886-4896 (2008)など参照)。
【0028】
当該核酸分子はまた、核酸塩基(例えば、プリン、ピリミジン)が改変(例えば、化学的置換)されたものであってもよい。このような改変としては、例えば、5位ピリミジン改変、6及び /又は8位プリン改変、環外アミンでの改変、4-チオウリジンでの置換、5-ブロモ又は5-ヨードウラシルでの置換が挙げられる。
【0029】
また、ヌクレアーゼ及び加水分解に対して耐性であるように、当該核酸分子に含まれるリン酸基が改変されていてもよい。例えば、リン酸基たるP(O)O基が、P(O)S(チオエート)、P(S)S(ジチオエート)、P(O)NR2(アミデート)、P(O)R、R(O)OR’、CO又はCH2(ホルムアセタール)又は3’-アミン(-NH-CH2-CH2-)で置換されていてもよい〔ここで各々のR又はR’は独立して、Hであるか、あるいは置換されているか、又は置換されていないアルキル(例えば、メチル、エチル)である〕。なかでも、リン酸基たるP(0)0基の少なくとも一つが、P(O)S(チオエート)又はP(S)S(ジチオエート)で置換されている、いわゆるホスホロチオエート化又はホスホロジチオエート化したものが好ましい。核酸分子に含まれるリン酸基の少なくとも一つがホスホロチオエート化又はホスホロジチオエート化されることによって、該核酸分子の活性が向上し得る。ホスホロチオエート化又はホスホロジチオ エート化されるリン酸基は特に制限されない。
【0030】
連結基としては、-O-、-N-又は-S-が例示され、これらの連結基を通じて隣接するヌクレオチドに結合し得る。改変はまた、キャッピングのような3’及び5’の改変を含んでもよい。
【0031】
当該核酸分子はさらに、ポリエチレングリコール、アミノ酸、ペプチド、inverted dT、核酸、ヌクレオシド、Myristoyl、Lithocolic-oleyl、Docosanyl、Lauroyl、Stearoyl、Palmitoyl、Oleoyl、Linoleoyl、その他脂質、ステロイド、コレステロール、色素、蛍光物質、放射性物質などを5’末端及び/又は3’末端に付加することにより、末端修飾が行われ得る。
【0032】
本発明の抗SARS-CoV-2薬に含有される核酸分子は、例えば、ホスホロアミダイト法やH-ホスホネート法等の公知の方法により化学的に合成することができる。当該化学合成は、市販の自動核酸合成機を用いて行うことができる。具体的には、当該核酸分子は、例えば、W0 2015/099187に記載の方法に従って製造することができる。得られた核酸分子は、例えば、HPLCにより精製した後、常法により凍結乾燥することができる。
【0033】
本発明の抗SARS-CoV-2薬はその剤型に応じて、経口投与、経肺投与又は非経口投与によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、静脈内投与と並行して標的細胞又は組織への注射(局所投与)を行う)。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばヒト肝細胞置換キメラマウスやチンパンジー、オランウータン、ゴリラ、ギボンである)を含む。好ましい一態様では、本発明の抗SARS-CoV-2薬はヒトに対して適用される。
【0034】
本発明の抗SARS-CoV-2薬は、有効量の本発明の核酸分子を単独で用いてもよいし、任意の担体、例えば医薬上許容される担体とともに、医薬組成物として製剤化することもできる(以下、「本発明の組成物」ともいう)。本発明の組成物に含有される核酸分子の粒子径は、例えば、肺組織を標的組織とする場合、吸入投与により当該核酸分子が肺組織に均一に分散し得る限り特に制限はないが、末梢気道ないし肺胞に効率よく到達させるためには、0.5~6μm、好ましくは0.8~5μm、より好ましくは0.8~3μmの平均粒子径(本明細書においては「50%メジアン径」を意味する。以下同じ)を有することが好ましい。
【0035】
本発明の組成物における核酸分子の含有量は、当該組成物の1回吸入量中に治療上有効な量の核酸分子が含まれていれば特に制限はない。本発明の組成物の1回吸入量の下限は特に制限されず、使用する吸入器、及び/又は充填するカプセル、ブリスター等に含まれる粉末組成物の量を工夫することで、適宜設定可能である。一方、1回吸入量の上限は、患者の吸気流速や吸気肺活量等の呼吸機能に依存するが、通常約10~20mg程度である。
【0036】
本発明の組成物に含有される核酸分子の治療上有効量としては、吸入投与による1回用量として、通常0.1~1000μg、好ましくは1~500μg、より好ましくは10~200μgが挙げられる。従って、例えば、本発明の組成物の1回吸入量が10mgである場合、核酸分子の含有量は、組成物全体に対して、通常0.001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、さらに好ましくは0.1~2重量%である。
【0037】
本発明の組成物に含有される賦形剤は、吸入投与により有効成分である核酸分子が標的組織に均一に分散し得るのを促進し得る限り特に制限はなく、通常、散剤、錠剤などの固形 製剤の増量、希釈、充填、補形等の目的で加えられるものが使用される。賦形剤は、生物 学的に不活性であり、かつある程度の代謝が期待されるものを用いてもよい。また、水溶性高分子を用いることもでき、医薬として許容されるものであれば特に限定されない。具体的には、乳糖、ブドウ糖、白糖、トレハロース、ショ糖などの糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール類、デンプン類、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、卜ラガント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの 高分子ポリマー類、ステアリン酸等の脂肪酸あるいはその塩、ワックス類、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、軽質無水ケイ酸などを用いることができる。 賦形剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。本発明において好ましい賦形剤は、乳糖又はマンニトールである。乳糖としては、一水和物、 無水物及びそれらの混合物のいずれであってもよい。
【0038】
賦形剤の粒子径は、有効成分である核酸分子が標的組織に均一に分散し得るのを促進し得る限り特に制限はないが、例えば標的組織が肺組織である場合、0.1~20μm、好ましくは1~15μmが挙げられる。
【0039】
本発明の組成物において、賦形剤は、有効成分である核酸分子に対して、1:5000~10:1、好ましくは1:1000~5:1、より好ましくは1:500~1:1の重量比で配合することができる
【0040】
本発明の組成物は、さらに担体を含んでもよい。担体は、核酸分子及び賦形剤と複合体を形成することにより粉末製剤投与までの薬物の凝集を防ぐとともに、吸入投与時には、薬物の肺内到達効率を高めるために使用される。ドライパウダー吸入器(DPI)用の処方設計において、担体を使用する際は、薬物がカプセル又は吸入器から確実に放出され、担体表面から高い確率で薬物が分離されることが望ましい。本発明において使用し得る担体として、例えば、乳糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖およびデキストラン類の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール類、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の一般的な賦形剤を挙げることができ、特に限定されるものではない。好ましい担体は、糖類または糖アルコール類であり、より好ましい担体は、乳糖又はマンニトールである。 例えば、吸入剤の場合、担体は空気力学的に許容される粒子径を有するものである。具体的には、担体の平均粒子径は10~200μmの範囲である。
【0041】
本発明の組成物は、標的組織を肺組織とする場合、肺組織内の標的細胞に有効成分である核酸分子が効率よく取り込まれるようにするために、公知の核酸導入試薬をさらに含有することができる。そのような核酸導入試薬としては、例えば、Lipofectamine 2000、Oligofectamine、Optifect、GeneJammer Tansfection Reagent、Nucleofector Solution等が挙げられるが、それらに限定されない。当該核酸導入試薬は、例えば、有効成分である核酸分子の溶液と混合した後、凍結乾燥することにより本発明の組成物中に配合することができる。
【0042】
本発明の組成物は、散剤や錠剤等の固形製剤に通常使用される他の医薬上許容される添加物をさらに含有していてもよい。
【0043】
本発明の組成物は、例えば、核酸分子及び賦形剤を混和・粉辟することにより製造することができる。例えば、核酸分子(所望により核酸導入試薬等の添加物を含んでいてもよい)の凍結乾燥物と賦形剤とを、空気力学的粉砕器に投入し、混和と粉砕同時に行われ得る。薬剤及び賦形剤の粉砕には一般的な乾燥粉砕を用いることができるが、空気力学的粉砕器を使用することが好ましい。具体的には、一般的な乾燥粉砕器として、実験室用に乳鉢やボールミル等の少量を効率的に粉砕する装置が繁用されている。ボールミルとしては転動ボールミル、遠心ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルが知られており、これらは摩砕・回転・振動・衝撃などの原理で粉砕化を行うことができる。工業用としては媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕ミル、高速回転衝撃ミル、ジュットミルなどが挙げられる。高速回転摩砕ミルとしては、ディスクミル、ローラーミルが挙げられ、高速回転衝撃ミルとしては、カッターミル(ナイフミル)、ハンマーミル(アトマイザー)、ピンミル、スクリーンミル等回転衝撃に加え、剪断力によっても粉砕を行うものが挙げられる。この粉砕工程によって、核酸分子は賦形剤と均一に混和され、その平均粒子が20μm以下の微細化粒子になるように粉砕される。この粒子径とすることで、吸入投与により末梢気道や肺胞等の目的の部位まで到達することができる。微細化粒子の平均粒子径は、好ましくは10μm以下である。
【0044】
前記のようにして得られた本発明の組成物は、吸入投与に用いるDPIの種類に応じて、カプセル、ブリスター、リザーバー等のDPIへの装填に適した剤形に適宜成形される。DPIとしては、例えば、スイングヘラー、ディスカス、デュスクへラー、タービュヘイラー、ツイストヘラー、ハンディヘラー、エリプタ等が挙げられる。
【0045】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限 定されるものではない。
【実施例0046】
〔実施例1〕 miRNA候補の選定
SARS-CoV-2のNC_045512株の各ORF、タンパクをコードしている配列と塩基配列上標的遺伝子として認識する可能性のあるヒトmiRNAをBlastにて実行し、配列相同性を検索し、またe-value(10-XのXの値)が大きい(e-valueが小さい)ものを選択することにより、35種類のmiRNA候補(hsa-miR-5197-3p,hsa-miR-8066,hsa-miR-3934-3p,hsa-miR-3085-3p,hsa-miR-8076,hsa-miR-1206,hsa-miR-3611,hsa-miR-129-2-3p,hsa-miR-3682-5p,hsa-miR-3606-3p,hsa-miR-514a-3p,hsa-miR-3691-3p,hsa-miR-1468-5p,hsa-miR-1287-5p,hsa-miR-3120-5p,hsa-miR-3914,hsa-miR-5680,hsa-miR-7107-3p,hsa-miR-3672,hsa-miR-584-3p,hsa-miR-10397-5p,hsa-miR-4999-3p,hsa-miR-548aa,hsa-miR-548t-3p,hsa-miR-378c,hsa-miR-3650,hsa-miR-4502,hsa-miR-383-5p,hsa-miR-5197-3p,hsa-miR-4686,hsa-miR-515-5p,hsa-miR-1248,hsa-miR-597-3p,hsa-miR-3191-3p,hsa-miR-6802-3p)を選定した。
【0047】
〔実施例2〕 miRNAの調製
各hsa-miRを構成する一本鎖核酸断片(センス鎖およびアンチセンス鎖)を公知の固相合成法に従いABI3900を用いて合成した。次いで、塩基対合するそれぞれの核酸断片が同一濃度となるようにアニーリングバッファー(10mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5), 20mM NaCl)にて混合し、90℃で加熱後25℃まで徐冷してアニーリングさせて、本実験で使用する二本鎖からなる各hsa-miRを調製した。
【0048】
〔実施例3〕 miRNAのSARS-CoV-2抑制効果
図1に示した手順により各miRNAのSARS-CoV-2抑制効果を調べた。すなわち、6 well plateに、Lipofectamine RNAiMAXマニュアルに従って、Lipofectamine RNAiMAXとmiRNA核酸を入れ混合した。miRNA核酸の終濃度は50nMとした。その上にVero-E6細胞(5x105細胞)を10%FBS+ペニシリン(100U/ml)+ストレプトマイシン(100μg/ml)を入れたDMEMに混合し播種した。1日間培養した後、MOI 0.001/well/200μlのSARS-CoV-2を入れた同じDMEM培地に置換し、2時間後ウイルスを含む培地を除去し、新たな培地を入れた。48時間後に細胞上清からウイルスRNAを抽出した。ウイルスRNAは60μl AVE溶液(Qiagen kitに添付)に溶出し、ウイルスRNAを半定量した。
【0049】
結果を図2に示した。それらの結果より、hsa-miR-1287-5p、hsa-miR-8076、hsa-miR-3085-3p、hsa-miR-3672、hsa-miR-5197-3p、hsa-miR-3934-3p、hsa-miR-8066 、hsa-miR-1206、hsa-miR-3691-3p、hsa-miR-5680、hsa-miR-3682-5p、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-3606-3p、hsa-miR-3611、hsa-miR-7107-3p、hsa-miR-514a-3p及びhsa-miR-1468-5pがSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示すことが明らかとなった。
【0050】
〔実施例4〕 濃度依存性の検討
次に、実施例3と同様の手順で、hsa-miR-8076又はhsa-miR-3085-3pのSARS-CoV-2抑制効果の濃度依存性を調べた。その結果、両miRNAは濃度依存的にSARS-CoV-2の複製を抑制する効果を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、COVID-19の予防又は治療に適した核酸医薬品の提供に有用である。
図1
図2
図3
【配列表】
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