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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164129
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】加熱機器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20221020BHJP
   F24C 7/04 20210101ALI20221020BHJP
   F24C 15/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F24C3/12 L
F24C3/12 C
F24C7/04 301A
F24C15/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069424
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上垣 大樹
【テーマコード(参考)】
3L087
【Fターム(参考)】
3L087AA03
3L087BC14
3L087BC16
3L087DA01
(57)【要約】
【課題】通信状態に左右されず、早急に地震等の発生に対応した運転制御を実行することができる加熱機器を提供する。
【解決手段】本発明の加熱調理器10は、被加熱物を加熱するコンロ5a~5cと、加熱運転指示を認識する火力制御部7Aを有し、当該加熱運転指示に基づいてコンロ5a~5cの加熱運転を制御する制御部7に加え、音声の加熱運転指示を入力する音声入力部16をさらに備えている。制御部7は、コンロ5a~5cの加熱運転中に、外部機器30からの災害警報が音声入力部16に入力されたとき、コンロ5a~5cの加熱運転を停止又は制限する加熱運転制限制御を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱部と、
前記加熱部の加熱運転に関する加熱運転指示を認識する加熱運転指示部を有し、前記加熱運転指示に基づいて前記加熱部の加熱運転を制御する制御部と、
を備えた加熱機器において、
音声の前記加熱運転指示を入力する音声入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記加熱部の加熱運転中に、前記加熱運転指示として外部機器から発信された災害に関する災害警報が前記音声入力部に入力されたとき、前記加熱部の加熱運転を停止又は制限する加熱運転制限制御を実行することを特徴とする加熱機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記加熱運転制限制御が実行された場合に、前記加熱運転指示部を介して所定の指示が入力されるまで前記加熱運転制限制御を継続させることを特徴とする請求項1に記載の加熱機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記加熱運転制限制御が実行された場合に、実行開始から第1所定時間が経過するまで前記加熱運転制限制御を継続させることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱機器。
【請求項4】
前記加熱機器の振動を検出する振動検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記加熱運転制限制御が実行された場合に、前記振動検出部により所定値以上の振動が検知されることなく実行開始から第2所定時間が経過するまで前記加熱運転制限制御を継続させることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の加熱機器。
【請求項5】
前記加熱運転制限制御の解除指示方法を報知する報知部をさらに備え、
前記報知部は、前記加熱運転制限制御の実行直後又は実行開始から第3所定時間が経過したとき、前記解除指示方法を報知することを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の加熱機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記加熱運転制限制御として前記加熱部の火力減少を実行し、継続している期間において、前記加熱部の消火を除いて前記加熱運転指示の入力を受け付けないことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の加熱機器。
【請求項7】
前記制御部は、前記加熱運転制限制御として前記加熱部の火力減少を実行する場合に、前記加熱運転制限制御を解除するときは前記加熱運転制限制御の実行前の火力状態に戻すことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の加熱機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震が発生したときに一部の機能を制限する感震停止機能付きの加熱機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサによって所定値以上の地震の揺れを検知した場合、又は通信により緊急地震速報を受信した場合に、ガス弁を閉じ、燃焼を停止して安全制御に移行することができる加熱機器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の加熱装置操作システムは、無線通信可能に接続設定されたガスファンヒータと、スマートフォンとで構成されている。スマートフォンとガスファンヒータとが通信接続されている状態において、スマートフォンが、通信事業者の基地局等の特定の通信センターから送信された緊急地震速報を受信すると、画面の緊急情報受信表示領域において「受信」の文字を表示させると共に、状態表示領域において「緊急停止」の文字を表示させる。
【0004】
また、特定の通信センターから地震による被害が及ぶおそれのある地域に緊急地震速報が配信されると、その緊急地震速報をスマートフォンが受信し、その受信に基づいて、スマートフォンが緊急停止信号を、Bluetooth(登録商標)による無線通接続されたガスファンヒータに送信する。さらに、その緊急停止信号をガスファンヒータが受信すると、その受信に基づいて、ガスファンヒータが緊急停止制御を実行し、ガスファンヒータの運転を緊急停止させる(特許文献1/段落0062,0064、図11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-163384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記加熱装置操作システムでは、加熱機器(ガスファンヒータ)と通信端末(スマートフォン)が通信状態にあり、通信端末と通信センターが通信状態にあることが前提であるため、通信状態が切断されていれば機能せず、使用者が常に通信状態について注意を払う必要があった。
【0007】
また、揺れが急激である場合には、通常動作の停止前に加熱機器が転倒してしまうことがあり、火災につながるおそれもあった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、通信状態に左右されず、早急に地震等の発生に対応した運転制御を実行することができる加熱機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、被加熱物を加熱する加熱部と、前記加熱部の加熱運転に関する加熱運転指示を認識する加熱運転指示部を有し、前記加熱運転指示に基づいて前記加熱部の加熱運転を制御する制御部と、を備えた加熱機器において、
音声の前記加熱運転指示を入力する音声入力部をさらに備え、前記制御部は、前記加熱部の加熱運転中に、前記加熱運転指示として外部機器から発信された災害に関する災害警報が前記音声入力部に入力されたとき、前記加熱部の加熱運転を停止又は制限する加熱運転制限制御を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明の加熱機器は、音声の加熱運転指示を入力する音声入力部を備えており、加熱機器の制御部(加熱運転指示部)は、テレビ、スマートフォン等の外部機器から発信された災害警報を加熱運転指示として認識することができる。
【0011】
制御部は、加熱部の加熱運転中に災害警報を認識した場合、加熱運転制限制御を実行する。本加熱機器は、実際の地震の揺れが発生する前に火力が制限される等の安全性の高い装置とすることができるが、加熱機器と外部機器とは通信状態である必要はない。このため、加熱機器の使用者は、通信接続の煩わしさから解放されるという利点がある。
【0012】
本発明の加熱機器において、
前記制御部は、前記加熱運転制限制御が実行された場合に、前記加熱運転指示部を介して所定の指示が入力されるまで前記加熱運転制限制御を継続させることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、本加熱機器は、使用者によって安全な状況が確認され、スイッチ操作や音声入力等の所定の指示がなされるまで、加熱運転制限制御が継続される。これにより、装置の安全性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の加熱機器において、
前記制御部は、前記加熱運転制限制御が実行された場合に、実行開始から第1所定時間が経過するまで前記加熱運転制限制御を継続させることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、地震の揺れがおさまるまで、すなわち加熱運転制限制御が実行されてから第1所定時間が経過するまで、加熱運転制限制御が継続される。これにより、本加熱機器は、装置の安全性を高めつつ、適切なタイミングで加熱運転制限制御を解除することができる。
【0016】
また、本発明の加熱機器において、
前記加熱機器の振動を検出する振動検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記加熱運転制限制御が実行された場合に、前記振動検出部により所定値以上の振動が検知されることなく実行開始から第2所定時間が経過するまで前記加熱運転制限制御を継続させることが好ましい。
【0017】
本発明の加熱機器は、振動検出部を備えているため、地震等の揺れを検出することができる。加熱機器は、災害警報が入力されると加熱運転制限制御に移行するが、実際は揺れがほとんど生じないこともある。従って、所定値以上の振動が検知されることなく、加熱運転制限制御の実行開始から第2所定時間が経過するまで、加熱運転制限制御が継続される。これによっても、本加熱機器は、装置の安全性を高めつつ、適切なタイミングで加熱運転制限制御を解除することができる。
【0018】
また、本発明の加熱機器において、
前記加熱運転制限制御の解除指示方法を報知する報知部をさらに備え、
前記報知部は、前記加熱運転制限制御の実行直後又は実行開始から第3所定時間が経過したとき、前記解除指示方法を報知することが好ましい。
【0019】
本発明の加熱機器は、液晶表示部等の報知部を備えており、報知部は、加熱運転制限制御の実行直後や実行開始から第3所定時間が経過したとき、加熱運転制限制御の解除指示方法を報知する。使用者は、加熱運転制限制御の解除について、取扱説明書等を参照することなく認識できるので、利便性の高い装置とすることができる。
【0020】
また、本発明の加熱機器において、
前記制御部は、前記加熱運転制限制御として前記加熱部の火力減少を実行し、継続している期間において、前記加熱部の消火を除いて前記加熱運転指示の入力を受け付けないことが好ましい。
【0021】
加熱運転制限制御として加熱部の火力減少が実行された場合、制御部は、安全が確認されるまで不用意に火力の増加等を行うことができないように、消火を除く加熱運転指示の入力を拒否する。これにより、本加熱機器は、装置の安全性を確保することができる。
【0022】
また、本発明の加熱機器において、
前記制御部は、前記加熱運転制限制御として前記加熱部の火力減少を実行する場合に、前記加熱運転制限制御を解除するときは前記加熱運転制限制御の実行前の火力状態に戻すことが好ましい。
【0023】
加熱運転制限制御として加熱部の火力減少が実行された場合、制御部は、安全が確認され、加熱運転制限制御を解除するとき、元の火力状態に戻すように制御する。これにより、本加熱機器は、加熱運転制限制御を解除後に使用者が調理の続きを行い易くなるため、装置としての利便性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理システムの概略図。
図2】加熱調理器と外部機器の内部構成を説明する図。
図3】加熱調理器の加熱運転制限制御のフローチャート(消火)。
図4】加熱調理器の加熱運転制限制御のフローチャート(消火、変更形態)。
図5】加熱調理器の加熱運転制限制御のフローチャート(火力最小)。
図6】加熱調理器の加熱運転制限制御のフローチャート(火力最小、変更形態)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図面を参照しながら、本発明の加熱機器について説明する。
【0026】
初めに、図1図2を参照して、加熱機器の実施形態に係る加熱調理システムを説明する。加熱調理システム1は、加熱調理器10と、スマートフォン等の外部機器30とから構成されている。また、外部機器30は、通信センター50から災害警報(主に、緊急地震速報)を受け、自動発信する機能を有している。
【0027】
本実施形態において、加熱調理器10は、ガスコンロである。図1に示すように、加熱調理器10は、被加熱物を加熱する燃焼式の加熱部として、天板部4の左前部、右前部及び後中央部にそれぞれ配置された左コンロ5a、右コンロ5b及び後コンロ5cを備えている。また、加熱調理器10は、その前面で開閉可能に該加熱調理器10の筐体内に配置されたグリル20を備えている。
【0028】
各コンロ5a,5b,5cは、互いに加熱能力(最大火力)が互いに相違するバーナを有するコンロである。例えば、各コンロ5a,5b,5cの加熱能力は、左コンロ5a、右コンロ5b、後コンロ5cの順番で(又は右コンロ5b、左コンロ5a、後コンロ5cの順番で)大、中、小となっている。なお、各コンロ5a,5b,5cの加熱能力は、左コンロ5aと右コンロ5bが同一で、後コンロ5cがそれよりも小、すなわち右コンロ5b、左コンロ5a、後コンロ5cの順番で大、大、小となっていてもよい。
【0029】
加熱調理器10の前面には、各コンロ5a,5b,5cのそれぞれの点火、消火及び火力調整を行うための操作ボタン11a,11b,11cと、グリル20の点火、消火及び火力調整を行うための操作ボタン21が設けられている。この場合、例えば、操作ボタン11a,11b,11cのそれぞれの押し操作により、それぞれに対応するコンロ5a、5b又は5cの点火又は消火が行われ、操作ボタン11a,11b,11cのそれぞれの回転操作により、それぞれに対応するコンロ5a、5b又は5cの火力調整が行われる。
【0030】
このことは、グリル20用の操作ボタン21についても同様である。なお、各コンロ5a,5b,5c及びグリル20のそれぞれの点火及び消火用の操作部と、火力調整用の操作部とは各別の操作部であってもよい。
【0031】
また、加熱調理器10の前面には、さらにプッシュオープン式のコンロ操作部12とグリル操作部22とが設けられている。この場合、コンロ操作部12を押し操作すると、コンロ操作部12が開いて、タッチパネル式のコンロ操作パネル13が操作可能に露出するようになっている。コンロ操作パネル13は、各コンロ5a,5b,5cの操作を切替え可能となっている。コンロ操作パネル13に隣接する位置には、液晶表示部14が設けられている。なお、コンロ操作パネル13はタッチパネル式でなくてもよく、各コンロ5a,5b,5cの操作のために設けられたタクトスイッチでもよい。当該タクトスイッチを押下することによって、各コンロ5a,5b,5cを操作することができる。
【0032】
また、グリル操作部22を押し操作するとグリル操作部22が開いて、タッチパネル式のグリル操作パネル23が操作可能に露出するようになっている。なお、グリル操作パネル23はタクトスイッチでもよく、当該タクトスイッチを押下することによって、グリル20を操作することができる。また、コンロ操作パネル13及びグリル操作パネル23のそれぞれは、加熱調理器10の外面部に露出した状態で備えられていてもよい。
【0033】
コンロ操作パネル13は、各コンロ5a,5b,5cの作動制御等に関する操作(例えば、湯沸かし運転若しくは炊飯運転のオンオフ操作、自動調理運転に関する設定操作、タイマ時間の設定操作、加熱温度の設定操作等)をユーザが行い得るように構成されていると共に、各コンロ5a,5b,5cの作動に関する種々の情報を表示し得るように構成されている。このことは、グリル操作パネル23についても同様である。
【0034】
加熱調理器10は、上記構成の他、図2に示すように、加熱調理器10の全体の作動制御を行う機能を有する制御部7と、外部機器30からの音声情報を入力可能なマイク等の音声入力部16と、加速度センサ等からなる感震器17とを備える。
【0035】
制御部7は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。この制御部7には、加熱調理器10に備えられた複数のセンサ(感震器17を含む)のセンシング信号と、操作ボタン11a,11b,11c,21及び操作パネル13,23のそれぞれの操作信号とが入力される。
【0036】
制御部7は、火力制御部7Aと、表示制御部7Bと、振動判定部7Cとから構成されている。火力制御部7A(本発明の「加熱運転指示部」)は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の両方又は一方により実現される機能として、各コンロ5a,5b,5c及びグリル20である加熱部5,20のそれぞれの作動制御(詳しくは、点火、消火、火力調整に係る作動制御)を行う機能を有する。
【0037】
各コンロ5a,5b,5c及びグリル20のそれぞれの作動制御は、より詳しくは、左コンロ5a、右コンロ5b、後コンロ5c及びグリル20のそれぞれに対応する図示しない燃料供給路に設けられた開閉弁及び火力調整弁、並びに、図示しない点火用のイグナイタの作動制御を通じてなされる。
【0038】
また、火力制御部7Aは、外部機器30から発信され、音声入力部16を介して入力された、災害に関する災害警報(主に、緊急地震速報)を認識したとき、各コンロ5a,5b,5c及びグリル20の加熱運転を停止又は制限する加熱運転制限制御を実行する。音声入力部16は、加熱調理器10の使用中に常に音声を拾うことが可能であるため、加熱調理器10は、外部機器30との通信状態には左右されず、地震等に対応した制御を実行することができる。そのため、使用者は、通信接続を気にすることなく、加熱調理器10によって調理を行うことができる。
【0039】
表示制御部7Bは、加熱運転制限制御の実行直後又は実行開始から所定時間(例えば、3分間)が経過したとき、加熱運転制限制御の解除指示の方法を液晶表示部14(本発明の「報知部」)に表示させる。具体的には、液晶表示部14に「コンロ操作パネルの任意のキーを長押しすると解除されます。」等のメッセージが表示され、使用者によって当該操作が行われるまで、加熱運転制限制御が継続される。
【0040】
詳細は後述するが、加熱運転制限制御が実行されると、使用中のコンロを消火するか、火力を減少させる。そのため、表示制御部7Bでその旨を表示し、使用者に認識させるようにしてもよい。なお、加熱調理器10が音声出力部を有する場合には、音声によって当該報知を行ってもよい。
【0041】
制御部7は、加熱運転制限制御が実行された場合に、加熱運転制限制御の実行開始から所定時間(例えば、7分間)が経過するまで加熱運転制限制御を継続させることもできる。例えば、加熱運転制限制御として、左コンロ5aの火力減少を実行していた場合、当該所定時間が経過したとき加熱運転制限制御の実行前の火力状態に戻すことが望ましい。
【0042】
振動判定部7Cは、感震器17(本発明の「振動検出部」)からの検出信号に基づいて地震の揺れを判定する。振動判定部7Cが調理を継続すると危険であると判定した場合には、火力制御部7Aに対して各コンロ5a,5b,5c及びグリル20の加熱運転を停止するように指示する。また、振動判定部7Cは、表示制御部7Bに対して、使用者が取るべき行動を表示するように指示してもよい。
【0043】
加熱調理器10は、災害警報が入力されると加熱運転制限制御を実行するが、実際は揺れがほとんど起こらないこともある。従って、感震器17と制御部7(振動判定部7C)により所定値以上の振動が検知されることなく、加熱運転制限制御の実行開始から所定時間(例えば、5分間)が経過するまで、加熱運転制限制御が継続される。
【0044】
当該所定時間が経過したとき、制御部7の火力制御部7Aは、加熱運転制限制御を解除する。具体的には、加熱運転制限制御を実行したコンロ(又はグリル)の火力を元に戻す。これにより、加熱調理器10は、装置の安全性を高めつつ、適切なタイミングで加熱運転制限制御を解除することができる。
【0045】
図2に示すように、外部機器30は、外部機器30の作動制御を行う制御部31と、無線通信を行うための通信部32と、スピーカ等の音声出力部33とから構成されている。外部機器30は、例えば、加熱調理器10のユーザが使用するスマートフォン、タブレット端末、モバイルパソコン等の携帯型の通信端末である。
【0046】
外部機器30の制御部31は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成され、操作部の操作信号が入力される。そして、制御部31は、予めインストールされたアプリケーションを実行することで、インターネット、公衆回線網等により構成される外部ネットワークNWと通信部32とを介して、通信センター50のサーバと通信を行うことが可能である(図1参照)。
【0047】
さらに、制御部31は、通信センター50から災害警報が送信されたとき、音声出力部33から音声情報として警告音や、「地震です」、「大きな揺れが発生します」等のメッセージを出力するように制御する。なお、外部機器30は、災害警報が出力されるテレビ、ラジオ、有線放送等であってもよい。
【0048】
次に、図3図6を参照して、加熱調理器10の加熱運転制限制御のフローチャートを説明する。
【0049】
まず、図3に、加熱運転制限制御として、バーナ(例えば、左コンロ5a用)の炎を消火する場合のフローチャートを示す。
【0050】
加熱調理器10において、バーナの点火中であるか否かが確認される(STEP01)。現在、バーナの点火中である場合にはSTEP02に進み、バーナの点火中でない場合には点火するまでループする。
【0051】
バーナの点火中である場合(STEP01で「YES」)、加熱調理器10(制御部7、音声入力部16)が緊急地震速報を検知したか否かを判定する(STEP02)。音声入力部16は、加熱調理器10の使用中に常に音声を拾うことが可能であるため、外部機器30との通信状態には左右されない。加熱調理器10が緊急地震速報を検知した場合にはSTEP03に進み、緊急地震速報を検知していない場合には検知するまでループする(一度、終了してもよい)。
【0052】
加熱調理器10が緊急地震速報を検知した場合(STEP02で「YES」)、加熱運転制限制御(消火)を開始する(STEP03)。通常、緊急地震速報は、実際の揺れが発生する前に外部機器30(スマートフォン、ラジオ等)から発信される。そのため、ここでの加熱運転制限制御は、加熱調理器10が緊急地震速報を認識した後、地震の揺れの発生前に危険に備えてバーナの炎を消火する処理である。
【0053】
次に、加熱調理器10は、解除指示方法を表示する(STEP04)。具体的には、液晶表示部14に、加熱運転制限制御の解除方法(操作パネル13の操作指示、音声入力部16からの音声入力指示(特殊フレーズを含む)等)が表示される。これにより、使用者は、取扱説明書を参照することなく、加熱運転制限制御を解除することができる。
【0054】
次に、加熱調理器10は、第1所定時間が経過したか否かを判定する(STEP05)。第1所定時間は、加熱運転制限制御を自動解除するための時間であり、例えば7分間である。第1所定時間が経過した場合にはSTEP08に進み、まだ第1所定時間が経過していない場合にはSTEP06に進む。
【0055】
まず、第1所定時間が経過していない場合(STEP05で「NO」)を説明する。この場合、加熱調理器10が解除指示の有無を判定する(STEP06)。解除指示は、STEP04で示された所定の操作、音声による入力を意味する。解除指示があった場合にはSTEP07に進み、解除指示がない場合にはSTEP05に戻る。
【0056】
解除指示があった場合(STEP06で「YES」)、加熱調理器10は、所定時間が経過したか否かを判定する(STEP07)。ここでの所定時間は、第1所定時間よりも短いことが望ましい。当該所定時間(例えば、5分間)が経過するまで、加熱調理器10の加熱運転制限制御が継続される。所定時間が経過した場合にはSTEP08に進み、まだ所定時間が経過していない場合には経過するまでループする。
【0057】
第1所定時間が経過した場合(STEP05で「YES」)、また、所定時間が経過した場合(STEP07で「YES」)、加熱調理器10は、加熱運転制限制御を解除する(STEP08)。すなわち、加熱運転制限制御は、第1所定時間、又は解除指示に加えて所定時間が経過したことを契機に解除される。
【0058】
最後に、加熱調理器10は、バーナを再点火する(STEP09)。これにより、バーナは加熱運転制限制御の実行前の状態に戻るため、使用者は調理の続きを行うことができる。
【0059】
本実施形態の加熱調理器10では、コンロ操作パネル13の操作で点火、消火を制御するため、自動で再点火するが、スイッチの押し下げ操作で点火するタイプの加熱調理器の場合は、使用者が手動で操作し、再点火することになる。
【0060】
以上で、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。なお、上記フローチャートでは、加熱運転制限制御の実行直後に解除指示方法を報知したが、実行開始から第3所定時間(例えば3分間、又は解除可能になるタイミング)が経過したとき報知するようにしてもよい。加熱調理器10が音声出力部を有している場合は、解除方法を音声出力してもよい。
【0061】
また、加熱運転制限制御として、加熱調理器10の電源をオフするようにしてもよい(STEP03’)。この場合、加熱運転制限制御が解除されると電源が自動でオンとなる(STEP09’)。なお、自動でバーナの再点火まで行う制御としてもよい。
【0062】
図4に、加熱運転制限制御として、バーナの炎を消火する場合のフローチャートの変更形態を示す。ここでは、感震器17が検知した振動に基づいて各種制御を実行する。なお、図3と同じ制御については、説明を一部省略する。
【0063】
STEP11のバーナが点火中であるかの判定、STEP12の緊急地震速報を検知したかの判定、STEP13の加熱運転制限制御の開始、STEP14の解除指示方法の表示については、図3のSTEP01~04と同じである。
【0064】
STEP14の後、加熱調理器10は、所定値以上の振動を検知したか否かを判定する(STEP15)。所定値以上の振動とは、バーナが点火していると危険な揺れ(例えば、震度3以上)を意味する。所定値以上の振動を検知した場合にはSTEP16に進み、所定値以上の振動を検知していない場合にはSTEP17に進む。
【0065】
所定値以上の振動を検知した場合(STEP15で「YES」)、加熱調理器10は、エラーを表示する(STEP16)。具体的には、加熱調理器10の液晶表示部14に、「大きな揺れが検知されたため、電源をオフします。」等のメッセージが表示され、このとき加熱調理器10の全機能が停止する。その後、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。
【0066】
一方、所定値以上の振動を検知していない場合(STEP15で「NO」)、加熱調理器10は、第2所定時間が経過したか否かを判定する(STEP17)。緊急地震速報を受けて加熱運転制限制御が実行されたものの、実際、大きな揺れが起こらない場合がある。第2所定時間は、このような状況で加熱運転制限制御を自動解除するための時間であり、例えば5分間である。第2所定時間が経過した場合にはSTEP18に進み、まだ第2所定時間が経過していない場合にはSTEP15に戻る。
【0067】
第2所定時間が経過した場合(STEP17で「YES」)、加熱調理器10は、加熱運転制限制御を解除する(STEP18)。すなわち、加熱運転制限制御は、所定値以上の振動を検知することなく、第2所定時間が経過したことを契機に解除される。
【0068】
最後に、加熱調理器10は、バーナを再点火する(STEP19)。これにより、バーナは、加熱運転制限制御の実行前の状態に戻る。その後、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。
【0069】
図3の加熱運転制限制御と図4の加熱運転制限制御(変更形態)とは、説明の簡略化するため分けているが、両者を併せた制御としてもよい。すなわち、図3の加熱運転制限制御に加えて、感震器17に関連する各種制御を実行してもよい。
【0070】
次に、図5に、加熱運転制限制御として、バーナ(例えば、左コンロ5a用)の火力を最小にする場合のフローチャートを示す。
【0071】
加熱調理器10において、バーナの点火中であるか否かが確認される(STEP21)。現在、バーナの点火中である場合にはSTEP22に進み、バーナの点火中でない場合には点火するまでループする。
【0072】
バーナの点火中である場合(STEP21で「YES」)、加熱調理器10(制御部7、音声入力部16)が緊急地震速報を検知したか否かを判定する(STEP22)。音声入力部16は、加熱調理器10の使用中に常に音声を拾うことが可能であるため、外部機器30との通信状態には左右されない。緊急地震速報を検知した場合にはSTEP23に進み、緊急地震速報を検知していない場合には検知するまでループする(一度、終了してもよい)。
【0073】
加熱調理器10が緊急地震速報を検知した場合(STEP22で「YES」)、加熱運転制限制御(火力最小)を開始する(STEP23)。ここでの加熱運転制限制御は、加熱調理器10が緊急地震速報を認識した後、地震の揺れの発生前に危険に備えてバーナの火力を最小に変更する処理である。
【0074】
次に、加熱調理器10は、解除指示方法を表示する(STEP24)。具体的には、加熱調理器10の液晶表示部14に、加熱運転制限制御の解除方法(操作パネル13の操作指示、音声入力部16からの音声入力指示等)が表示される。
【0075】
次に、加熱調理器10は、手動で消火操作をしたか否かを判定する(STEP25)。使用者の判断で消火した方がよい状況も考えられるため、消火操作のみ手動(音声入力も可)で行えるようにしている。なお、元の火力状態に戻す等の消火以外の操作(又は音声入力)については受け付けない。消火操作をした場合にはSTEP26に進み、消火操作をしていない場合にはSTEP27に進む。
【0076】
使用者が消火操作をした場合(STEP25で「YES」)、加熱調理器10は、通常停止する(STEP26)。その後、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。
【0077】
一方、使用者が消火操作をしていない場合(STEP25で「NO」)、加熱調理器10は、第1所定時間が経過したか否かを判定する(STEP27)。第1所定時間は、加熱運転制限制御を自動解除するための時間である。第1所定時間が経過した場合にはSTEP30に進み、まだ第1所定時間が経過していない場合にはSTEP28に進む。
【0078】
第1所定時間が経過していない場合(STEP27で「NO」)、加熱調理器10が解除指示の有無を判定する(STEP28)。解除指示があった場合にはSTEP29に進み、解除指示がない場合にはSTEP27に戻る。
【0079】
解除指示があった場合(STEP28で「YES」)、加熱調理器10は、所定時間が経過したか否かを判定する(STEP29)。所定時間が経過した場合にはSTEP30に進み、まだ所定時間が経過していない場合には経過するまでループする。
【0080】
第1所定時間が経過した場合(STEP27で「YES」)、また、所定時間が経過した場合(STEP29で「YES」)、加熱調理器10は、加熱運転制限制御を解除する(STEP30)。
【0081】
最後に、加熱調理器10は、バーナを元の火力状態に戻す(STEP31)。これにより、バーナの火力は加熱運転制限制御の実行前の状態に戻るため、使用者は調理の続きを行うことができるようになる。バーナの火力は、加熱運転制限制御の実行直前に限らず、所定時間前の火力に戻してもよい。以上で、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。
【0082】
加熱運転制限制御として、加熱調理器10の火力を現在よりも低下させるようにしてもよい(STEP23’)。この場合、加熱運転制限制御の期間において、消火操作とさらに火力を低下させる操作(又は音声入力)のみ受け付けられる。
【0083】
最後に、図6に、加熱運転制限制御として、バーナの炎を最小火力にする場合のフローチャートの変更形態を示す。ここでは、感震器17が検知した振動に基づいて各種制御を実行する。なお、図5と同じ制御については、説明を一部省略する。
【0084】
STEP41のバーナが点火中であるかの判定、STEP42の緊急地震速報を検知したかの判定、STEP43の加熱運転制限制御(火力最小)の開始、STEP44の解除指示方法の表示、STEP45の消火操作をしたかの判定、STEP46の通常停止については、図5のSTEP21~26と同じである。
【0085】
手動で消火操作をしていない場合(STEP45で「NO」)、加熱調理器10は、所定値以上の振動を検知したか否かを判定する(STEP47)。所定値以上の振動を検知した場合にはSTEP48に進み、所定値以上の振動を検知していない場合にはSTEP49に進む。
【0086】
所定値以上の振動を検知した場合(STEP47で「YES」)、加熱調理器10は、エラーを表示する(STEP48)。具体的には、加熱調理器10の液晶表示部14に、「大きな揺れが検知されたため、電源をオフします。」等のメッセージが表示され、加熱調理器10の全機能が停止する。その後、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。
【0087】
一方、所定値以上の振動を検知していない場合(STEP47で「NO」)、加熱調理器10は、第2所定時間が経過したか否かを判定する(STEP49)。第2所定時間が経過した場合にはSTEP50に進み、まだ第2所定時間が経過していない場合にはSTEP47に戻る。
【0088】
第2所定時間が経過した場合(STEP49で「YES」)、加熱調理器10は、加熱運転制限制御を解除する(STEP50)。すなわち、加熱運転制限制御は、所定値以上の振動を検知することなく、第2所定時間が経過したことを契機に解除される。
【0089】
最後に、加熱調理器10は、バーナを元の火力状態に戻す(STEP51)。これにより、バーナは加熱運転制限制御の実行前の状態に戻るため、使用者は調理の続きを行うことができるようになる。以上で、一連の加熱運転制限制御の処理を終了する。
【0090】
図5の加熱運転制限制御と図6の加熱運転制限制御(変更形態)についても、説明の簡略化のため分けているが、両者を併せた制御としてもよい。すなわち、図5の加熱運転制限制御に加えて、感震器17に関連する各種制御を実行してもよい。さらに、加熱運転制限制御として、上述の消火(図3図4参照)も実行可能であり、消火の場合と火力最小の場合とで各種制御が行われる装置、システムとしてもよい。
【0091】
以上、本発明は上記実施形態及び変更形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0092】
上記実施形態では、加熱機器として加熱調理器の例を示したが、暖房器具やガス燃焼を行う装置でもよい。また、加熱部としてコンロ5a~5cのバーナを例示したが、グリル20、IHヒータ等の加熱手段でもよく、操作パネル13,23は、一部、操作ボタンやダイヤルが含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 加熱調理システム
5,20 加熱部
5a 左コンロ
5b 右コンロ
5c 後コンロ
7 制御部(加熱調理器側)
7A 火力制御部
7B 表示制御部
7C 振動判定部
10 加熱調理器
11a~11c,21 操作ボタン
12 コンロ操作部
13 コンロ操作パネル
14 液晶表示部
16 音声入力部
17 感震器
20 グリル
22 グリル操作部
23 グリル操作パネル
30 外部機器
31 制御部(外部機器側)
32 通信部
33 音声出力部
50 通信センター
図1
図2
図3
図4
図5
図6