(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016413
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】埋込型永久磁石モータの回転子構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20220114BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H02K1/27 501M
H02K1/27 501A
H02K1/27 501K
H02K1/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114163
(22)【出願日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】202010658204.X
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】スアン ゾウ
(72)【発明者】
【氏名】リャンリャン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チュンシャン フェン
(72)【発明者】
【氏名】チュンシア ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ダンダン チ
(72)【発明者】
【氏名】シン ス
(72)【発明者】
【氏名】カイヘ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ビチン スン
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA25
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD25
5H601FF04
5H601FF17
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA26
5H622AA04
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB03
5H622CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発熱による永久磁石の減磁を抑制した回転子構造を提供する。
【解決手段】回転子構造は、回転軸と、回転軸に設けられた鉄心とを含み、鉄心の内部には、周方向に複数の磁性鋼溝が設けられており、磁性鋼溝内には磁性鋼が設置可能であり、磁性鋼溝における鉄心の周縁に近い境界線と鉄心の周縁との間の距離が等しくないため、形成されたフラックスバリアの幅が一様でなく変化することによって、モータの磁気漏れが低減され、及び/又は、磁性鋼溝における鉄心の周縁に近い長辺側の少なくとも一方の端部には、磁性鋼溝と連通する減磁防止溝が形成されており、減磁防止溝の境界線は鉄心の周縁方向に傾斜しており、及び/又は、磁性鋼溝と鉄心の周縁との間には、いくつかのプロセス溝9が設けられており、プロセス溝は、モータの突極比とリラクタンストルクを増加させるためのものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型永久磁石モータの回転子構造であって、回転軸と、前記回転軸に設けられた鉄心とを含み、前記鉄心の内部には、周方向に複数の磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼溝内には磁性鋼が設置可能であり、
前記磁性鋼溝における鉄心の周縁に近い境界線と前記鉄心の周縁との間の距離が等しくないため、形成されたフラックスバリアの幅が一様でなく変化することによって、モータの磁気漏れが低減され、及び/又は、
前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い長辺側の少なくとも一方の端部には、前記磁性鋼溝と連通する減磁防止溝が形成されており、前記減磁防止溝の境界線は前記鉄心の周縁方向に傾斜しており、及び/又は、
前記磁性鋼溝と前記鉄心の周縁との間には、いくつかのプロセス溝が設けられており、前記プロセス溝は、モータの突極比とリラクタンストルクを増加させ、モータの回転子の重量を減らすためのものである
ことを特徴とする埋込型永久磁石モータの回転子構造。
【請求項2】
前記複数の磁性鋼溝は、いくつかのグループに分けられ、各グループには、いくつかの前記磁性鋼溝が含まれ、且つ、各前記磁性鋼溝のいずれか一方又は両方の前記端部には、前記減磁防止溝が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項3】
前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い境界線は、傾斜した第1の直線セグメント又は第1の弧線セグメントである
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項4】
前記減磁防止溝の境界線は、磁性鋼の長辺に接続された第5の直線セグメント又は第6の直線セグメントを含み、前記第5の直線セグメント又は前記第6の直線セグメントが前記磁性鋼の長辺に非平行である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項5】
前記減磁防止溝の境界線は、前記第5の直線セグメントに接続された第3の直線セグメントをさらに含み、前記第3の直線セグメントも前記磁性鋼の長辺に非平行であり、又は、
前記減磁防止溝の境界線は、前記第5の直線セグメントに接続された第4の直線セグメント及び第3の直線セグメントをさらに含み、前記第5の直線セグメントと、前記第4の直線セグメントと、前記第3の直線セグメントとが順次に接続され、且つ、前記第3の直線セグメントも前記磁性鋼の長辺に非平行である
ことを特徴とする請求項4に記載の回転子構造。
【請求項6】
前記減磁防止溝の境界線は、いくつかの第2の弧線セグメント又は第3の弧線セグメントを含み、前記第2の弧線セグメント又は前記第3の弧線セグメントは、前記鉄心の周縁に向かって延在している
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項7】
前記減磁防止溝の境界線は、第2の弧線セグメント、第3の弧線セグメント、第3の直線セグメント、第4の直線セグメント、第5の直線セグメント、又は第6の直線セグメントのうち、いずれか1種又は複数を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項8】
前記プロセス溝は、モータの直軸に沿って対称的に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項9】
前記プロセス溝は、モータの直軸の前後で予め設定された角度範囲内に設けられ、且つ、前記磁性鋼溝の面積に対する前記プロセス溝の面積の比率は、5%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子構造。
【請求項10】
前記予め設定された角度範囲は、(0~120)/p度であり、ここで、pがモータ極対数であり、前記比率が5%~50%である
ことを特徴とする請求項9に記載の回転子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転子の技術分野に関し、特に、埋込型永久磁石モータの回転子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の国々が環境保護とエネルギー安全保障をより重要視するにつれて、従来の内燃自動車は徐々に他のエネルギー分野の動力システムに代わられ、電気化新エネルギー自動車はますます注目を集めている。近年、市場では、新エネルギー車の航続距離と安全性に対する要求がますます高まっている。その結果、モータの電力密度への要求はより高くなり、トポロジーを変更せずに、強度を満足させた上で、モータの磁気漏れを低減し、モータの突極比を上げることは、極めて重要となってくる。
【0003】
また、モータが高速で回転していると、磁性鋼の発熱が激しく、磁性鋼の角部周辺では減磁しやすくなり、どのようにして磁性鋼の角部周辺での減磁を減らし、電気自動車の安全性を高めるかは、当業者によって解決される緊急の課題である。
【発明の概要】
【0004】
上記課題について、本発明には、上記の問題を解消するか、又は少なくともその一部を解決するための埋込型永久磁石モータの回転子構造が開示されている。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を採用する。
【0006】
埋込型永久磁石モータの回転子構造であって、回転軸と、前記回転軸に設けられた鉄心とを含み、前記鉄心の内部には、周方向に複数の磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼溝内には磁性鋼が設置可能であり、
前記磁性鋼溝における鉄心の周縁に近い境界線と前記鉄心の周縁との間の距離が等しくないため、形成されたフラックスバリアの幅が一様でなく変化することによって、モータの磁気漏れが低減され、及び/又は、
前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い長辺側の少なくとも一方の端部には、前記磁性鋼溝と連通する減磁防止溝が形成されており、前記減磁防止溝の境界線は前記鉄心の周縁方向に傾斜しており、及び/又は、
前記磁性鋼溝と前記鉄心の周縁との間には、いくつかのプロセス溝が設けられており、前記プロセス溝は、モータの突極比とリラクタンストルクを増加させ、モータの回転子の重量を減らすためのものである、ことを特徴とする埋込型永久磁石モータの回転子構造である。
【0007】
また、前記複数の磁性鋼溝は、いくつかのグループに分けられ、各グループには、いくつかの前記磁性鋼溝が含まれ、且つ、各前記磁性鋼溝のいずれか一方又は両方の前記端部には、前記減磁防止溝が設けられていてもよい。
【0008】
また、前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い境界線は、傾斜した第1の直線セグメント又は第1の弧線セグメントであってもよい。
【0009】
また、前記減磁防止溝の境界線は、磁性鋼の長辺に接続された第5の直線セグメント又は第6の直線セグメントを含み、前記第5の直線セグメント又は前記第6の直線セグメントが前記磁性鋼の長辺に非平行であってもよい。
【0010】
また、前記減磁防止溝の境界線は、前記第5の直線セグメントに接続された第3の直線セグメントをさらに含み、前記第3の直線セグメントも前記磁性鋼の長辺に非平行であり、又は、
前記減磁防止溝の境界線は、前記第5の直線セグメントに接続された第4の直線セグメント及び第3の直線セグメントをさらに含み、前記第5の直線セグメントと、前記第4の直線セグメントと、前記第3の直線セグメントとが順次に接続され、且つ、前記第3の直線セグメントも前記磁性鋼の長辺に非平行であってもよい。
【0011】
また、前記減磁防止溝の境界線は、いくつかの第2の弧線セグメント又は第3の弧線セグメントを含み、前記第2の弧線セグメント又は前記第3の弧線セグメントは、前記鉄心の周縁に向かって延在していてもよい。
また、前記減磁防止溝の境界線は、第2の弧線セグメント、第3の弧線セグメント、第3の直線セグメント、第4の直線セグメント、第5の直線セグメント、又は第6の直線セグメントのうち、いずれか1種又は複数を含んでもよい。
また、前記プロセス溝は、モータの直軸に沿って対称的に配置されていてもよい。
また、前記プロセス溝は、モータの直軸の前後で予め設定された角度範囲内に設けられ、且つ、前記磁性鋼溝の面積に対する前記プロセス溝の面積の比率は、5%以上であってもよい。
【0012】
また、前記予め設定された角度範囲は、(0~120)/p度であり、ここで、pがモータ極対数であり、前記比率が5%~50%であってもよい。
【0013】
本発明は、以下の利点及び有益な効果を有する。
【0014】
本発明は、磁性鋼の鋭い角に減磁防止溝を追加することにより、回転子の重量を減らすとともに、モータの減磁を改善し、モータの減磁マージンを増加させ、モータの運転安全性を向上させることができる。
【0015】
本発明では、フラックスバリアの幅が一様でなく変化し、モータの強度を満足させた上で、モータの磁気漏れを低減し、モータのトルクを増加させ、同じトルクの下で、低品位の磁性鋼を使用することが可能であり、モータのコストが低減される。
本発明は、d軸及びd軸の近くにプロセス溝を開設することにより、回転子の重量を減らすとともに、モータの突極比を上げ、モータのリラクタンストルクを増加させることができるため、モータの電力密度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものだけであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。図面において、
【
図1】
図1は、本発明の一実施例における埋込型永久磁石モータの回転子(その一部)の概略構造図である。
【
図2】
図2は、本発明の
図1におけるV箇所の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、本発明の
図1におけるV箇所の別の部分拡大図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施例における埋込型永久磁石モータの回転子(その一部)の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施例及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、記載された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0018】
「含む/包含する」、「からなる」という用語、又は他の任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しているため、一連の要素を含む製品、機器、手順又は方法は、それらの要素だけではなく、必要に応じて明示的に列挙されていない他の要素も含み、又はこのような製品、機器、手順又は方法に固有の要素も含み得ることを理解されたい。これ以上の制限がない場合には、「含む/包含する」、「からなる」という用語によって限定される要素は、その要素を含む製品、機器、手順又は方法に同一の要素が他に存在することを排除しない。
【0019】
更に、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語は、図面に示す方位又は位置関係を示しており、単に本発明の説明を容易にし、説明を簡略化するためだけであり、言及される装置、部品、又は構造が特定の方位を有し、特定の方位で構成又は操作しなければならないことを示したり示唆したりするものではなく、本発明に対する制限として理解されてはならない。
【0020】
なお、「第1」及び「第2」という用語は、説明の目的だけに用いられるものであり、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものとして理解されてはならない。従って、「第1」及び「第2」によって限定された特徴は、明示的又は暗黙的にこの特徴を1つ又は複数含む可能性がある。本発明の説明において、特に具体的な限定がない限り、「複数」とは、2つ又はそれよりも多いことを意味する。
【0021】
本発明において、特に明確な規定及び限定がない限り、「取り付ける」、「繋ぐ」、「接続する」、「固定する」などの用語は、広い意味で理解されるべきである。例えば、固定接続又は取り外し可能な接続であってもよいし、一体に形成されることであってもよい。機械的接続であってもよいし、電気的接続であってもよい。直接接続してもよいし、中間媒体を介して間接的に接続してもよい。2つの要素の内部の連通又は2つの要素間の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、本発明における上記用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解され得る。
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の各実施例によって提供される技術案を更に詳しく説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施例における埋込型永久磁石モータの回転子の部分概略図であり、この実施例のモータの回転子の全体構造は、複数の
図1における構造からなり、全体として円柱形である。
【0024】
この実施例の前記回転子構造は、回転軸(
図1には図示せず)と、回転軸に設けられた鉄心(
図1には鉄心の部分構造が示されている)とを含み、前記鉄心の内部には、周方向に複数の磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼溝内には磁性鋼が設置可能である。
【0025】
前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い境界線1(この場合、減磁防止溝を設置しなくてもよい)と前記鉄心の周縁との間の距離が等しくないため、形成されたフラックスバリアの幅が一様でなく変化することによって、モータの磁気漏れが低減される。
【0026】
また、前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い長辺側の少なくとも一方の端部には、前記磁性鋼溝と連通する減磁防止溝が形成されており、両方の前記端部における減磁防止溝は、同じであっても異なっていてもよく、
図1に示すように、磁性鋼の上下における2つの減磁防止溝の形状は、同じであっても異なっていてもよく、その境界線が直線セグメント3、4、5、6を含んでいるが、むろん、直線セグメント3、4、5、6のうちの一部の線セグメントのみを含んでいてもよい。前記減磁防止溝の直線セグメント5、6は、前記鉄心の周縁方向に傾斜していることが好ましい。
【0027】
この場合、鉄心の周縁に近い境界線1を設置すると、この境界線1は前記減磁防止溝の上端に設置される。
【0028】
また、前記磁性鋼溝と前記鉄心の周縁との間には、いくつかのプロセス溝9、10が設けられており、前記プロセス溝9、10は、モータの突極比とリラクタンストルクを増加させ、回転子の重量を減らしてモータの電力密度を向上させるためのものである。ここで、上記のプロセス溝は、多角形、円形、楕円形又は不規則な形状であってもよく、その数が限定されない。
【0029】
以上を纏めると、この実施例に開示された回転子には、フラックスバリアの幅が一様でなく変化する構造を設置することによって、モータの磁気漏れを低減することができる。回転子には、減磁防止溝の構造を設置することによって、回転子の重量を減らすとともに、モータの減磁を改善し、モータの減磁マージンを増加させ、モータの操作安全性を向上させることができる。更に、回転子には、プロセス溝を設置することによって、モータの突極比とリラクタンストルクを増加させ、回転子の重量を減らしてモータの電力密度を向上させることができる。
【0030】
一実施例において、前記複数の磁性鋼溝は、いくつかのグループに分けられ、各グループには、いくつかの前記磁性鋼溝が含まれ、且つ、各前記磁性鋼溝の両方の前記端部には、減磁防止溝が設けられていてもよい。ここで、各グループの磁性鋼溝は、磁極を形成することが可能であり、各グループ内のいくつかの磁性鋼溝は、一字状、V、V+1、ダブルVなどの形状をなしてもよい。このいくつかの磁性鋼溝からなる形状については、ここでは具体的に限定しなくてもよく、いずれも本実施例の保護範囲に含まれている。
【0031】
好ましくは、
図1及び
図2によれば、前記複数の磁性鋼溝は、いくつかのペアに分かれており、各ペアの前記磁性鋼溝がV字形をなし、且つ、各前記磁性鋼溝の両方の前記端部には、何れも前記減磁防止溝が設けられていてもよく、更に、鉄心の周縁位置には、幅が一様でなく変化するフラックスバリア構造が設けられてもよい。
【0032】
一実施例において、引き続き
図1を参照して、前記磁性鋼溝における前記鉄心の周縁に近い境界線は、傾斜した第1の直線セグメント又は第1の弧線セグメント1である。
【0033】
1つの好ましい実施例において、前記減磁防止溝の境界線は、前記磁性鋼の長辺に接続された第5の直線セグメント5又は第6の直線セグメント6を含み、前記第5の直線セグメント5は上端の減磁防止溝にあり、第6の直線セグメント6は下端の減磁防止溝にあり、且つ、前記第5の直線セグメント5又は前記第6の直線セグメント6は、何れも前記磁性鋼の長辺7に非平行である。
【0034】
また、
図2及び
図3によれば、前記減磁防止溝の境界線は、前記第5の直線セグメント5に直接又は間接的に接続された第3の直線セグメント3をさらに含む。ここで、
図2においては、前記減磁防止溝の境界線は、前記第5の直線セグメント5及び第3の直線セグメント3の両方に接続された第4の直線セグメント4を含んでいるが、
図3においては、第4の直線セグメント4を含んでおらず、且つ、前記第3の直線セグメント3も前記磁性鋼の長辺7に非平行である。同様に、第1の直線セグメント1と第3の直線セグメント3との間には、第2の直線セグメント2がさらに設けられていてもよい。
図1に示すように、前記第1の直線セグメント又は弧線セグメント1は、第2の直線セグメント2に接続され、前記第2の直線セグメント2との間に丸い面取りが設けられていてもよい。
【0035】
上記の非平行又は斜めに設置された直線セグメントは、回転子の磁力線の分布を改善して、モータの回転子の減磁を改善するためのものである。
【0036】
また、前記磁性鋼溝の上端部及び下端部の位置には、位置規制線セグメントがさらに設けられていてもよく、前記位置規制線セグメントは、その磁性鋼溝内における磁性鋼の位置を規制して、その磁性鋼が動かないようにするためのものである。
【0037】
一実施例において、
図4によれば、前記減磁防止溝の境界線は、いくつかの第2の弧線セグメント11又は第3の弧線セグメント12から構成されており、この第2の弧線セグメント11又は第3の弧線セグメント12は、磁性鋼の長辺7に接続された位置から鉄心の周縁に傾斜しているが、この第2の弧線セグメントからなる減磁防止溝の形状、大きさ及び位置が限定されない。
【0038】
同様に、減磁防止溝に弧線セグメントの境界線が設けられるのも、回転子の磁力線の分布を改善して、減磁を改善するためである。
【0039】
一実施例において、減磁防止溝の境界線は、第2の弧線セグメント11、第3の弧線セグメント12、第3の直線セグメント3、第4の直線セグメント4、第5の直線セグメント5、又は第6の直線セグメント6のうち、いずれか1種又は複数をさらに含む。又は、前記減磁防止溝は、任意数の直線セグメント及び/又は弧線セグメントからなり、他の少なくとも一部の線セグメントは、前記鉄心の周縁に向かって傾斜又は延在し、即ち周縁の弧線8に近接しており、こうすれば、回転子の磁力線の分布が変えられる。
【0040】
一実施例において、いくつかの前記プロセス溝9は、モータの直軸dに沿って対称的に配置されていてもよい。ここで、モータのより良い突極比を得るために、対称配置は、単一のプロセス溝の対称的な分布だけではなく、複数のプロセス溝がd軸に対して対称的に配置されることも含む。
【0041】
説明しておきたいのは、永久磁石同期モータの制御では、直流モータのような制御特性が得られるために、回転子と同期して回転する座標系をモータの回転子に確立し、回転子の磁界方向をd直軸とし、回転子の磁界方向に垂直な方向をq直交軸とし、モータの数学モデルをこの座標系に変換することで、d軸とq軸のデカップリングを実現し、優れた制御特性を得ることができる。
【0042】
モータの突極効果とは、永久磁石同期モータの直軸であるd軸のインダクタンスと直交軸であるq軸のインダクタンスが一致しないことを意味し、d軸の透磁率がq軸の透磁率よりも小さく、d軸インダクタンスがq軸インダクタンスよりも小さければ、モータの出力トルクの中でリラクタンストルクが一部増加し、モータは、同じ電流の下で、より大きなトルクと電力を出力することができる。
【0043】
永久磁石モータとしては、負荷力率が高いと、突極効果は、外部特性に大きな影響を与え、適切な電機子リアクタンス値と突極係数を選択することにより、固有の電圧変化率を効果的に低減することができる。本発明は、正に、モータの突極比及びリラクタンストルクを増加させ、モータのより良い電力変換効率を得るために、プロセス溝9及びプロセス溝10を設置している。
【0044】
一実施例において、
図4によれば、プロセス溝10は、モータの直軸の前後で予め設定された角度範囲内に設けられており、
図4の角度αに示すように、角度αが10度であり、且つ前記プロセス溝の面積が前記磁性鋼溝の面積の所定の比率以上であり、つまり、突極比を上げるために、プロセス溝の面積は、所定の比率よりも小さくしてはいけない。例えば、プロセス溝の面積は、前記磁性鋼溝の面積の5%以上でなければならないように限定されてもよい。
【0045】
好ましくは、前記予め設定された角度範囲は、(0~120)/p度であり、pが、モータの回転子に形成されるN極とS極の極対数であり、前記比率が5%~50%であり、上記2つの範囲の設定により、モータの回転子がより良い突極比を得ることが保証されている。
【0046】
上記内容は、あくまでも本発明の実施形態であり、本発明の保護範囲を制限するものではない。本発明の精神及び原則内になされたいかなる補正、均等的置換、改善、拡張等、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 第1の直線セグメント又は第1の弧線セグメント、2 第2の直線セグメント、3 第3の直線セグメント、4 第4の直線セグメント、5 第5の直線セグメント、6 第6の直線セグメント、7 磁性鋼の長辺、8 周縁の弧線、9 プロセス溝、10 プロセス溝、11 第2の弧線セグメント、12 第3の弧線セグメント。