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特開2022-164137消火栓設備及びその施工方法並びに分岐管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164137
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】消火栓設備及びその施工方法並びに分岐管
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20221020BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20221020BHJP
   F16L 27/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C35/68
F16L27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069437
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000155838
【氏名又は名称】株式会社立売堀製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 孝司
(72)【発明者】
【氏名】平塚 隆
(72)【発明者】
【氏名】北川 悟志
(72)【発明者】
【氏名】平野 詳児
【テーマコード(参考)】
2E189
3H104
【Fターム(参考)】
2E189HA13
3H104JA04
3H104JD09
(57)【要約】
【課題】 本発明は、分岐管の基端部を給水管に接続した後、分岐管を損なうことなく、消火栓設備の施工作業の邪魔とならないように退避させることができる消火栓設備を提供する。
【解決手段】 本発明の消火栓設備は、壁板に消火栓弁が挿通可能な消火栓弁挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管と、消火栓格納箱内に配設された消火栓弁と上記給水管とを接続している分岐管とを備えた消火栓設備であって、分岐管は、その全体が剛性を有していると共に、基端部が上記給水管に接続され且つ先端部に上記消火栓弁が配設されており、上記分岐管は、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部が上記格納箱設置空間部から離間する方向に変位可能に構成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の内壁の格納箱設置空間部内に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に消火栓弁が挿通可能な消火栓弁挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、
上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管と、
上記消火栓格納箱内に配設された消火栓弁と上記給水管とを接続している分岐管とを備えた消火栓設備であって、
上記分岐管は、その全体が剛性を有していると共に、基端部が上記給水管に接続され且つ先端部に上記消火栓弁が配設されており、
上記分岐管は、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部が上記格納箱設置空間部から離間する方向に変位可能に構成されていることを特徴とする消火栓設備。
【請求項2】
分岐管は、複数個の屈曲部を有し、これらの屈曲部のうちの少なくとも2個の屈曲部に対応した回転継手を有し、上記回転継手の回動によって、この回転継手に対応する屈曲部の流出口の流出方向が変化し、上記少なくとも2個の回転継手の回動によって、消火栓弁を上下方向及び/又は左右方向に変位可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の消火栓設備。
【請求項3】
回転継手を回動させることによって、回動させた回転継手よりも先端側の分岐管の先端部分及び消火栓弁を上方又は後方に向かって変位させて退避可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消火栓設備。
【請求項4】
建築物の内壁の格納箱設置空間部に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に消火栓弁が挿通可能な消火栓弁挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管とを接続する分岐管であって、
上記分岐管は、その全体が剛性を有していると共に、基端部が上記給水管に接続され且つ先端部に上記消火栓弁が配設されており、
上記分岐管は、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部が上記格納箱設置空間部から離間する方向に変位可能に構成されていることを特徴とする分岐管。
【請求項5】
分岐管は、複数個の屈曲部を有し、これらの屈曲部のうちの少なくとも2個の屈曲部に対応した回転継手を有し、上記回転継手の回動によって、この回転継手に対応する屈曲部の流出口の流出方向が変化し、上記少なくとも2個の回転継手の回動によって、消火栓弁を上下方向及び/又は左右方向に変位可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の分岐管。
【請求項6】
消火栓格納箱を配設する格納箱設置空間部の外方に配管された給水管に分岐管を接続すると共に、上記分岐管の先端部に消火栓弁を一体的に配設する分岐管接続工程と、
上記分岐管の水圧試験を行なう水圧試験工程と、
上記分岐管の消火栓弁を上記格納箱設置空間部内に設置された消火栓格納箱の壁板に形成された消火栓弁挿通孔に挿通させて上記消火栓弁を上記消火栓格納箱内に配設する消火栓弁配設工程とを有し、
上記分岐管は、その全体が剛性を有していると共に、基端部が上記給水管に接続され且つ先端部に上記消火栓弁が配設されており、
上記分岐管は、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記水圧試験工程と上記消火栓弁配設工程との間において、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部を上記格納箱設置空間部から上方又は後方に退避させておくことを特徴とする消火栓設備の施工方法。
【請求項7】
分岐管は、複数個の屈曲部を有し、これらの屈曲部のうちの少なくとも2個の屈曲部に対応した回転継手を有し、上記回転継手の回動によって、この回転継手に対応する屈曲部の流出口の流出方向が変化し、上記少なくとも2個の回転継手の回動によって、消火栓弁を上下方向及び/又は左右方向に変位可能に構成されており、
上記消火栓弁配設工程において、上記分岐管を上記回転継手を回動させて、上記分岐管の先端部に配設した消火栓弁を上下方向及び/又は左右方向に変位させることによって、格納箱設置空間部内に設置した消火栓格納箱の消火栓弁挿通孔の位置ずれを吸収して上記消火栓弁を上記消火栓弁挿通孔を通じて消火栓格納箱内に配設させることを特徴とする消火栓設備の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフィスビル、マンション及びデパートなどの建築物の内壁に設置され、火災発生時に消火栓弁を開弁することによって給水管から消火用水を消火用ホースを通じて放水するように構成した消火栓設備及びその施工方法並びに分岐管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1や特許文献2に記載されているように、火災発生に備えて消火活動に使用される消火用ホースやノズル、消火栓弁などを格納してなる消火栓格納箱が知られている。このような消火栓格納箱は、建築物における通路壁等の内壁に設けている格納箱設置空間部内に設置され、内壁の後方側に垂直状に配管された給水管から分岐している分岐管の先端部を上記消火栓格納箱の背板に設けている分岐管挿通孔を通じて消火栓格納箱内に挿入してその先端部に上記消火栓弁の流入口を接続させる一方、消火栓弁の流出口に上記消火用ホースの基端部を接続することによって消火栓設備を構成している。
【0003】
又、消火栓格納箱の後方には給水管が配設されており、この給水管から分岐して水平方向に剛直な分岐管が配設されており、この分岐管の先端部を消火栓格納箱内に引き込み、分岐管の先端部に消火栓弁を取り付けている。
【0004】
特許文献3には、可撓管と、前記可撓管の一端に設けられた消火栓弁と、前記消火栓弁の近傍に固定されたフランジ状の取付板と、前記可撓管の他端に設けられた継手部と、前記消火栓弁が挿通可能で且つ前記取付板より小さい開口面積を有する消火栓弁挿通用孔が裏箱に形成された消火栓格納箱と、を備え、前記消火栓弁挿通用孔に前記消火栓弁が挿通されて前記取付板が前記裏箱に固定され、前記継手部が建物壁の内側に配管された給水管に設けられた分岐継手に接続されている消火設備が提案されており、この消火設備においては、可撓管が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3-78566号公報
【特許文献2】特開2005-270494号公報
【特許文献3】特開2019-10255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3の消火設備は、可撓管の漏水の有無を確認するための水圧試験を行なった後、消火栓格納箱を格納箱設置空間部内に配設するまでの間、可撓管は、内壁内の狭い空間部において、基端部を給水管に接続した状態で上方又は側方から垂れ下がった状態となっており、作業者又は作業者が使用する作業道具が、内部に水が充満して既に内部から応力が加わっている状態の可撓管に衝突し、可撓管が破損する虞れがあるという問題点を有する。そして、先端部に重量のある消火栓弁が配設されていることから、可撓管に応力が加わった屈曲状態が長時間に亘って維持され、可撓管の耐久性が低下するという虞れがある。
【0007】
そこで、可撓管を途中から屈曲させて邪魔にならないように退避させることも考えられるが、可撓管の先端に取り付けられた消火栓弁を閉止した後、縦配管及び可撓管内に水を充満させて所定の圧力を加えて水圧試験を行っており、可撓管内に水が充満しているため、可撓管の可撓性が低下しており、可撓管の屈曲自体が難しく、可撓管を邪魔にならないように退避させることが難しいという問題点を有する。
【0008】
又、可撓管内に水が充満し、可撓性が低下した状態で、可撓管を無理に屈曲させると、可撓管が損傷して漏水の原因となる虞れがあるという問題点も有する。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、分岐管の基端部を給水管に接続した後、消火栓格納箱を格納箱設置空間部内に設置するまでの間、分岐管を損なうことなく、消火栓設備の施工作業の邪魔とならないように退避させることができる消火栓設備及びこれに用いられる分岐管、並びに、消火栓設備の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の消火栓設備は、
建築物の内壁の格納箱設置空間部内に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に消火栓弁が挿通可能な消火栓弁挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、
上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管と、
上記消火栓格納箱内に配設された消火栓弁と上記給水管とを接続している分岐管とを備えた消火栓設備であって、
上記分岐管は、その全体が剛性を有していると共に、基端部が上記給水管に接続され且つ先端部に上記消火栓弁が配設されており、
上記分岐管は、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部が上記格納箱設置空間部から離間する方向に変位可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の分岐管は、
建築物の内壁の格納箱設置空間部に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に消火栓弁が挿通可能な消火栓弁挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管とを接続する分岐管であって、
上記分岐管は、その全体が剛性を有していると共に、基端部が上記給水管に接続され且つ先端部に上記消火栓弁が配設されており、
上記分岐管は、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部が上記格納箱設置空間部から離間する方向に変位可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屈曲部と、上記屈曲部に対応し且つ上記屈曲部の上流側に配設された回転継手とを有し、上記回転継手の回動によって、上記分岐管の先端部が上記消火栓格納箱から離間する方向に変位可能に構成されているので、水圧試験工程と消火栓弁配設工程との間において、分岐管における消火栓弁を含む上記回転継手よりも先端部分を格納箱設置空間部に対して上方又は後方に変位させて退避させた状態とし、分岐管が消火栓設備の施工作業の邪魔にならないようにして作業者の作業空間を確保し、施工作業を円滑に進めることができる。更に、作業者及び作業者が使用する作業具が、分岐管又はこの先端部に配設している消火栓弁に衝突することを概ね防止し、分岐管又は消火栓弁の破損などの不測の事態が生じることを概ね防止することができる。
【0013】
分岐管は、回転継手から回動させることによって屈曲させているので、分岐管に無用な変形応力が加えられることはない。従って、分岐管の耐圧性能を損なうことなく漏水リスクを低減させ、長期間に亘って安定した性能を維持することができる。
【0014】
上記発明において、分岐管は、複数個の屈曲部を有し、これらの屈曲部のうちの少なくとも2個の屈曲部に対応した回転継手を有し、上記回転継手の回動によって、この回転継手に対応する屈曲部の流出口の流出方向が変化し、上記少なくとも2個の回転継手の回動によって、消火栓弁を上下方向及び/又は左右方向に変位可能に構成されている場合、格納箱設置空間部内における消火栓格納箱の位置ずれを円滑に且つ確実に吸収することができ、分岐管の先端部に配設した消火栓弁を消火栓格納箱内に容易に配設することができる。
【0015】
そして、分岐管は、その回転継手において回動させることによって、格納箱設置空間部内における消火栓格納箱の位置ずれを吸収させているので、分岐管の水圧試験を行なった後の分岐管内に水圧が加えられた状態においても、回転継手から漏水などの原因を生じさせることなく円滑に回動させることができ、消火栓設備の施工作業を円滑に行なうことができ、分岐管からの漏水などの不測の事態が長期間に亘って略生じることのない消火栓設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】消火栓設備を示した正面図である。
図2】消火栓設備を示した側面図である。
図3】回転継手を示した断面図である。
図4】回転継手を示した断面図である。
図5】分岐管を示した斜視図である。
図6】分岐管の退避状態を示した模式図である。
図7】消火栓格納箱のずれを吸収する状態を示した模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、図1及び図2に示したように、消火栓設備は、建築物の内壁Wに設置された消火栓格納箱1と、この消火栓格納箱1内に収納された消火用ホース2と、消火用ホース2の先端に接続しているノズル3と、消火栓格納箱1内に配設されている消火栓弁4と、消火栓格納箱1の外方(例えば、後方、上方など)に配設されている給水管(図示せず)と、給水管及び消火栓弁4を接続している分岐管6とを含む。消火栓弁4の流出口に必要に応じて接続部を介して消火用ホース2の基端が接続されている。
【0018】
建築物の内壁Wには消火栓格納箱1を収納できる矩形状の格納箱設置空間部W1が形成されていて、この格納箱設置空間部W1に前方側から消火栓格納箱1を収納、設置するように構成している。更に、上記格納箱設置空間部W1を設けている内壁Wの空間部の上方又は後方に給水管が配管されている。
【0019】
給水管には、分岐管6の基端部が連結、連通している一方、分岐管6の先端部には消火栓弁4が配設一体化されており、給水管から供給された消火水は、分岐管6を通じて消火栓弁4に供給される。そして、消火栓弁4は、消火栓格納箱1の後側壁板11に形成された消火栓弁挿通孔11aを通じて消火栓格納箱1内に収納、配設される。
【0020】
分岐管6は、図2に示したように、複数個の屈曲部61、61・・・を有し、これらの屈曲部61、61・・・のうちの少なくとも2個の屈曲部61、61のそれぞれに対応する(屈曲部61、61のそれぞれと対になる)ように回転継手7、7が配設されている。回転継手7は、この回転継手7に対応する屈曲部61の上流側(屈曲部61を流通する消火用水の流通方向の上流側)に配設されている。そして、回転継手7の回動によって、この回転継手7に対応する屈曲部61、即ち、回転継手7から分岐管6の下流側に存在する最も近い屈曲部61の流出口611における消火用水の流通方向が変位可能に構成されている。分岐管6の先端部における消火用水の流通方向は、複数個の屈曲部61を組み合わせることによって水平方向を指向するように構成されている。なお、本発明において、「水平方向」とは、重力の方向に対して直角に交わった方向(「直角方向」という)と、この直角方向を中心にして上下方向に交差角度10°以内の方向とを含む。
【0021】
詳細には、分岐管6には、複数個の屈曲部61a~61d(図2では4個の屈曲部61a~61d)が上流側から下流側に向かって任意の間隔を存して設けられている。互いに隣接する屈曲部61、61間の間隔は、施工現場の状況に応じて適宜、調整される。そして、分岐管6の先端部は、複数個の屈曲部61a~61dを組み合わせることによって水平方向に指向するように構成され、分岐管6における水平方向に指向された先端部に消火栓弁4が一体的に配設されている。
【0022】
図 において、屈曲部61aと回転継手7a、屈曲部61bと回転継手7b、屈曲部61cと回転継手7c、及び、屈曲部61dと回転継手7dとがそれぞれ対になっている。
【0023】
回転継手7aが回動することによって、屈曲部61aの流出口611aが回転継手7aを中心とした円周上において変位可能に構成されている。
【0024】
回転継手7bが回動することによって、屈曲部61bの流出口611bが回転継手7bを中心とした円周上において変位可能に構成されている。
【0025】
回転継手7cが回動することによって、屈曲部61cの流出口611cが回転継手7cを中心とした円周上において変位可能に構成されている。
【0026】
回転継手7dが回動することによって、屈曲部61dの流出口611dが回転継手7dを中心とした円周上において変位可能に構成されている。
【0027】
回転継手7eは、対になる屈曲部を有しないが、回転継手7eを回動させることによって、分岐管6の先端部に一体的に配設された消火栓弁4を回転継手7eを中心として回動させることができ、消火栓格納箱1内において、消火栓弁4の流出口の流出方向を変位可能とし、消火用ホース2の基端への接続を容易に行なえるように構成されている。
【0028】
回転継手7a~7eは全方向に回動可能、即ち、360°の回動が可能となっている。回転継手7a~7dを任意に組み合わせて回動させることによって、分岐管6は、回転継手7a~7dにおいて屈曲自在に構成されている。
【0029】
回転継手7a~7dは、対になる屈曲部61の流出口611の流出方向を変化させることができればよく、公知の回転継手を用いることができる。例えば、回転継手7は、第1回転継手部71と、この第1回転継手部71に回動自在に支持された第2回転継手部72とを有している(図3及び図4参照)。
【0030】
第1回転継手部71は、筒状に形成され、その中央部には、両端間に亘って貫通し且つ消火用水が流通する流路71aを有している。第1回転継手部71は、第2回転継手部72の一端部を回動自在に支持するための支持室71bを有しており、支持室71bの周壁面には、消火用水の流通方向の中央部において円環状の段部71cが形成されている。第1回転継手部71は、筒状の第1回転継手部本体711と、この第1回転継手部本体の他端部に螺合一体化された固定部材712とを有し、第1回転継手部本体711の他端開口部に固定部材712を螺合一体化させることによって支持室71bを構成しており、この支持室71b内に第2回転継手部72の一端部を回動自在に支持させている。
【0031】
第2回転継手部72は、円筒状に形成され、その中央部に両端間に亘って貫通し且つ消火用水が流通する流路72aを有している。第2回転継手部72の外周面にはその全周に亘って円環状の突出部72bが形成されている。第2回転継手部72は、その一半部が、第1回転継手部71の支持室71b内に回動自在に収納されている一方、他半部が第1回転継手部71の支持室71bから突出した状態となっており、突出部72bが支持室71bの段部71cに当接し受止された状態で第1回転継手部71に対して相対的に回動自在に支持されており、第2回転継手部72を第1回転継手部71に対して相対的に回動させることによって回転継手7が回動自在に構成されている。第2回転継手部72の円環状の突出部72bの他側面と、第1回転継手部71の支持室71bの内壁面との対向面間には、転動体70a又は円環状のリング体70bが配設されており、第2回転継手部72が第1回転継手部71に対して相対的に円滑に回動可能に構成されている。
【0032】
第1回転継手部71の一端部の内周面又は外周面、及び、第2回転継手部72の他端部の内周面又は外周面には、分岐管6を構成する配管部材(例えば、エルボ型管継手、管部材など)を螺合一体化させるための螺子部(雄螺子部又は雌螺子部)71d、72cが形成されている。
【0033】
分岐管6は、所望間隔を存して配設された複数個の回転継手7、7・・・同士を配管部材を用いて接続することによって構成されており、エルボ型継手などの屈曲部を有する配管部材によって屈曲部6が構成される。
【0034】
具体的には、回転継手7aの第1回転継手部71の螺子部71dに管部材51(図2では直管)の他端部を螺合一体化させていると共に、回転継手7aの第2回転継手部72の螺子部72cに、屈曲部61aを構成するエルボ型管継手の一端部を螺合一体化させ、エルボ型管継手の他端部を回転継手7bの第1回転継手部71の螺子部71dに螺合一体化させている。屈曲部61aの上流側にある回転継手7aが、屈曲部61aに対応する回転継手となる。
【0035】
回転継手7bの第2回転継手部72の螺子部72cに、他端部に屈曲部61bが形成された管部材52の一端部を螺合一体化させていると共に、管部材52の他端部を回転継手7cの第1回転継手部71の螺子部71dに螺合一体化させている。屈曲部61bの上流側にある回転継手7bが、屈曲部61bに対応する回転継手となる。なお、管部材52は、直管の他端部にエルボ型管継手を接続一体化させて構成されてもよいし、又は、直管の他端部を屈曲させることによって屈曲部を形成することによって構成されていてもよい。
【0036】
回転継手7cの第1回転継手部71の螺子部71dに、管部材52の他端部を螺合一体化させていると共に、回転継手7cの第2回転継手部72の螺子部72cに、一端部に屈曲部61cが形成された管部材53の一端部を螺合一体化させている。屈曲部61cの上流側にある回転継手7cが、屈曲部61cに対応する回転継手となる。なお、管部材53は、管部材52と同様にして構成されればよい。
【0037】
回転継手7dの第1回転継手部71の螺子部71dに、管部材53の他端部を螺合一体化させていると共に、回転継手7dの第2回転継手部72の螺子部72cに、屈曲部61dを構成するエルボ型管継手の一端部を螺合一体化させている。屈曲部61dの上流側にある回転継手7dが、屈曲部61dに対応する回転継手となる。
【0038】
回転継手7eの第1回転継手部71の螺子部71dに、屈曲部61dを構成しているエルボ型管継手の他端部を螺合一体化させていると共に、回転継手7eの第2回転継手部72の螺子部72cに、直管の一端部を螺合一体化させてあり、直管54の他端部に消火栓弁4が一体的に配設されている。
【0039】
分岐管6を構成している回転継手7及び配管部材は、剛性を有しており、回転継手7において、第1回転継手部71及び第2回転継手部72がこれらの回動軸を中心にして互いに相対的に回動自在であること以外は、変形不能に構成されている。
【0040】
分岐管6は、上述の通り、屈曲部61とこの屈曲部61に対応する回転継手7とを有しているので、回転継手7を回動させることによって、分岐管6における水平方向に延びる先端部及びこの先端部に一体的に配設している消火栓弁4を上方又は側方に変位させて、消火栓格納箱を設置する格納箱設置空間部W1から離間させて退避させることができるように構成されている。
【0041】
上記分岐管6を構成している回転継手7の個数並びに配管部材の種類及び個数は、図2に示したものに限定されず、適宜、消火栓設備の施工場所に応じて適宜、変更されてもよい。
【0042】
例えば、図5及び図6に示したように、図2の回転継手7cの第1回転継手部71の螺子部71dに、給水管又は給水管に接続された管部材55の他端を接続させた構造であってもよい。図5及び図6に示した分岐管6では、回転継手7eを設けなかった場合を示したが、回転継手7eが設けられてもよい。なお、図2に示した分岐管6と同一構造部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に、分岐管6を用いて消火栓設備を施工する要領を説明する。建築構造物内に配管されている給水管(図示せず)に、分岐管6の基端部を連結、連通させた状態に接続する。しかる後、分岐管6の先端部に消火栓弁4を取り付けて一体的に配設する(分岐管接続工程)。なお、分岐管6の先端部に消火栓弁4を一体的に配設した後、分岐管6の基端部を給水管(図示せず)に連結、連通させた状態に接続させてもよい。
【0044】
しかる後、分岐管6の先端部に配設した消火栓弁4を閉止した状態とした上で、給水管を通じて分岐管6内に水を充満させて水圧試験を行ない、分岐管6における漏水の有無を確認する(水圧試験工程)。
【0045】
次に、建築物の内壁Wに形成された格納箱設置空間部W1内に消火栓格納箱1を配設するが、建築物の他の施工工程との関係で上記水圧試験工程の終了後に消火栓格納箱1が格納箱設置空間部W1内に設置されるまでに時間を要することがある。
【0046】
このような場合、分岐管6が格納箱設置空間部W1内に向かって配設されていると、他の施工工程の邪魔になったり、分岐管6に作業者又は作業者が用いる作業道具が衝突して分岐管6が破損する虞れがある。
【0047】
そこで、分岐管6における任意の回転継手7を回動させることによって、この回転させた回転継手7から先端側にある分岐管6部分を回転継手7を中心にして回動させることによって、この回動させた回転継手7から先端側にある分岐管6部分の全体又は一部を格納箱設置空間部W1に対して上方及び/又は後方に向かって退避させることができる。
【0048】
分岐管6に水が充満した状態であるが、分岐管6は剛性を有しており、その内部に充満させた水圧によって変形するようなことはなく、分岐管6内に水を充満させていても、回転継手7の回動操作を円滑に行なうことができ、分岐管6を所望部分から屈曲させて、格納箱設置空間部W1から容易に退避させることができる。
【0049】
例えば、図6に示したように、分岐管6の上側の回転継手7cを回動させることによって、回転継手7cから先端側にある分岐管6部分を上方に変位させて格納箱設置空間部W1に対して上方に退避させることができる。
【0050】
更に、分岐管6の下側の回転継手7dを回動させることによって、回転継手7dから先端側にある分岐管6部分を図6の紙面に対して直交する方向に変位させて分岐管6の先端部をより上方に変位させてもよい。
【0051】
又、分岐管6の上側の回転継手7cを回動させる代わりに、分岐管の下側の回転継手7dを回動させることによって、回転継手7dから先端側にある分岐管6部分を水平方向に変位させて格納箱設置空間部W1に対して後方に退避させてもよい。
【0052】
図2の分岐管において、一番上側の回転継手7aを回動させることによって、分岐管6の全体を上方に向かって変位させてもよいし、図5及び図6の分岐管6で行なったように、回転継手7c及び/又は回転継手7dを回動させることによって、分岐管6の一部を上方又は後方に退避させてもよい。
【0053】
上述のようにして、分岐管6をその任意の部分から回転継手7を回転させることによって容易に屈曲させることができ、建築物の内壁内の狭い空間部に作業空間部を容易に確保することができ、施工作業を円滑に行なうことができる。
【0054】
又、分岐管6は、その回転継手7における回動以外は、その自重及び先端部に一体的に配設した消火栓弁の重量によって変形することのない剛性を有しているので、重量のある消火栓弁4を先端部に取り付けた状態を安定的に維持し、格納箱設置空間部W1からの退避状態を確実に維持することができる。
【0055】
そして、格納箱設置空間部W1内に消火栓格納箱1が配設された後、上述のようにして任意の回転継手7から屈曲させている分岐管6を回転継手7から回動させて元の状態に復帰させ、消火栓弁4を一体的に配設させた分岐管6の先端部を消火栓格納箱1の消火栓弁挿通孔11aに挿通させて、消火栓弁4を消火栓格納箱1内に配設する(消火栓弁配設工程)(図2及び図6参照)。
【0056】
一方、図7に示したように、格納箱設置空間部W1内に配設した消火栓格納箱1の位置が、当初予定していた配設位置よりも水平方向及び/又は上下方向にずれ、その結果、消火栓格納箱1の壁板に形成された消火栓弁挿通孔11aの位置が、予定配設位置L0から変更配設位置L1にずれることがある。
【0057】
このような場合には、分岐管6に、屈曲部と、この屈曲部に対応し且つ上流側に配設された回転継手とからなる屈曲構造を少なくとも2個配設し、これらの屈曲構造を構成している回転継手をそれらの回転軸が水平方向となるように配設することによって、消火栓弁挿通孔11aの予定配設位置L0から変更配設位置L1への位置ずれを吸収することができる。
【0058】
図2に示した分岐管6を例に挙げて説明すると、分岐管6は、屈曲部61a、61cと、この屈曲部61a、61cに対応し且つ上流側に配設された回転継手7a、7cとからなる屈曲構造を少なくとも2個有しており、回転継手7a、7cの回転軸が水平方向となるように配設されている。
【0059】
そして、分岐管6の回転継手7aを回動させることによって、分岐管6の先端部に配設している消火栓弁4を水平方向(図7の左右方向)に移動させる。分岐管6の回転継手7aの回動のみであると、分岐管6の先端部に配設した消火栓弁4が回転継手7aを中心として回転して傾斜した状態となる。そこで、分岐管6の回転継手7cを回動させることによって消火栓弁4の姿勢を正しい状態となるように調整する。このように、分岐管6の回転継手7a、7cを回動させることによって、分岐管6を所望部分から屈曲させて、分岐管6の先端部に配設した消火栓弁4の位置を移動させることができ、消火栓弁挿通孔11aの予定配設位置L0から変更配設位置L1への位置ずれを吸収した上で、消火栓弁挿通孔11a内に分岐管6の先端部を挿通させて、消火栓格納箱1内に消火栓弁4を正しい姿勢にて配設することができる。
【0060】
そして、消火栓弁4の流出口に必要に応じて接続部を介して消火用ホース2の基端を水密的に連通状態にて接続させて消火栓設備を施工することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 消火栓格納箱
11a 消火栓弁挿通孔
2 消火用ホース
4 消火栓弁
51-55 管部材
6 分岐管
61(61a-61d)屈曲部
611(611a-611d)流出口
7(7a-7e) 回転継手
71 第1回転継手部
72 第2回転継手部
0 消火栓格納箱の予定配設位置
1 消火栓格納箱の変更配設位置
W 内壁
W1 格納箱設置空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7