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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164152
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
   G09F 19/14 20060101AFI20221020BHJP
   B42D 25/337 20140101ALI20221020BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20221020BHJP
【FI】
G09F19/14
B42D25/337
G07D7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069462
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】植田 玲子
【テーマコード(参考)】
2C005
3E041
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB09
2C005HB10
2C005JB25
3E041AA03
3E041BB03
3E041DB01
(57)【要約】
【課題】高い偽造防止効果を実現可能な技術を提供する。
【解決手段】表示体1は、第1主面S1と第2主面S2とを有している光透過性基材11と、第1又は第2主面上で幅方向に配列した複数の第1着色性線状部121を含んだ第1着色層12と、第1主面上であって、第1着色性線状部間の隙間に対応した位置で、隙間の長さ方向に伸びた複数の光透過性線状部131を含み、光透過性線状部は光透過性基材の屈折率とは異なる屈折率を有し、光透過性線状部からなる配列は、第1着色性線状部からなる配列とは異なる形状を有している光透過層13と、第2主面上で光透過性線状部に対応して配列し、光透過性線状部の長さ方向に各々が伸びた複数の第2着色性線状部141を含み、第2着色性線状部の各々は、これに対応した位置に設けられた光透過性線状部と比較して幅が狭い第2着色層14とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面とその裏面である第2主面とを有している光透過性基材と、
前記第1主面又は前記第2主面上で幅方向に配列した複数の第1着色性線状部を含んだ第1着色層と、
前記第1主面上であって、前記第1着色性線状部間の隙間に対応した位置で、前記隙間の長さ方向に伸びた複数の光透過性線状部を含み、前記複数の光透過性線状部は前記光透過性基材の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記複数の光透過性線状部からなる配列は、前記複数の第1着色性線状部からなる配列とは異なる形状を有している光透過層と、
前記第2主面上で前記複数の光透過性線状部に対応して配列し、前記複数の光透過性線状部の長さ方向に各々が伸びた複数の第2着色性線状部を含み、前記複数の第2着色性線状部の各々は、これに対応した位置に設けられた前記光透過性線状部と比較して幅が狭い第2着色層と
を備えた表示体。
【請求項2】
前記複数の光透過性線状部の前記屈折率は前記光透過性基材の前記屈折率と比較してより高い請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
第1主面とその裏面である第2主面とを有している基材と、
前記第1主面又は前記第2主面上で幅方向に配列した複数の第1着色性線状部を含んだ第1着色層と、
前記第1主面上であって、前記第1着色性線状部間の隙間に対応した位置で、前記隙間の長さ方向に伸びた複数の第2着色性線状部を含み、前記複数の第2着色性線状部からなる配列は、前記複数の第1着色性線状部からなる配列とは異なる形状を有する第2着色層と、
前記複数の第2着色性線状部をそれぞれ被覆した複数の光透過性線状部を含んだ光透過層と
を備えた表示体。
【請求項4】
前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が両端で丸まっている請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が中央で凹んでいる請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
前記複数の第2着色性線状部の各々の前記第1主面への正射影の中心線は、これに対応した前記光透過性線状部の前記第1主面への正射影の中心線に対して、前記光透過性線状部の幅方向にずれている請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の光透過性線状部の高さは0.1μm以上である請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記複数の光透過性線状部の幅W2は10乃至100μmの範囲内にある請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記複数の第2着色性線状部の幅W3は5乃至70μmの範囲内にある請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
前記複数の第2着色性線状部の幅W3と前記複数の光透過性線状部の幅W2との比W3/W2は1/10乃至2/5の範囲内にある請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示体。
【請求項12】
前記複数の第2着色性線状部の幅W3は、前記複数の第1着色性線状部の幅W1と比較してより小さい請求項1乃至11の何れか1項に記載の表示体。
【請求項13】
前記複数の第1着色性線状部は10乃至500μmの範囲内のピッチで配列した請求項1乃至12の何れか1項に記載の表示体。
【請求項14】
前記第1着色層は前記第1主面に設けられた請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体。
【請求項15】
前記第1着色層は前記第2主面に設けられた請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、認証書類、有価証券、及び紙幣などの物品は、偽造が困難であることが求められる。これら物品は、例えば、観察方向を変化させることにより画像の色やパターンが変化する光学可変素子(Optically Variable Device;OVD)を設けることによって偽造が困難になる(特許文献1を参照)。OVDとしては、例えば、ホログラム、回折格子、及び多層膜がある。
【0003】
偽造防止技術としては、OVDを利用するものの他に、微細な線の集合により形成された線画を利用するものがある。線画とは、幅が50μm以下の線で画像を表現する手法である。
【0004】
インクジェット印刷のようにドットの配列によって画像を表現する複写機では、原本に記録された微細な直線を、複写物において正確に再現できない。それ故、線画を用いることにより、偽造が困難となる。例えば、紙幣の場合、その画像の一部に線画を挿入しておくことで、複写による偽造が困難となる。このように、線画は、紙幣を中心に偽造防止又は真贋判定に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008-547040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、偽造を困難とする技術の実現を目的として、ホログラムや微細パターン形成方法等の技術開発が行われている。しかしながら、単独の技術で、十分な偽造防止効果を得ることは難しくなってきている。
そこで、本発明は、高い偽造防止効果を実現可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、第1主面とその裏面である第2主面とを有している光透過性基材と、前記第1主面又は前記第2主面上で幅方向に配列した複数の第1着色性線状部を含んだ第1着色層と、前記第1主面上であって、前記第1着色性線状部間の隙間に対応した位置で、前記隙間の長さ方向に伸びた複数の光透過性線状部を含み、前記複数の光透過性線状部は前記光透過性基材の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記複数の光透過性線状部からなる配列は、前記複数の第1着色性線状部からなる配列とは異なる形状を有し、前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している光透過層と、前記第2主面上で前記複数の光透過性線状部に対応して配列し、前記複数の光透過性線状部の長さ方向に各々が伸びた複数の第2着色性線状部を含み、前記複数の第2着色性線状部の各々は、これに対応した位置に設けられた前記光透過性線状部と比較して幅が狭い第2着色層とを備えた表示体が提供される。
【0008】
本発明の他の側面によると、前記複数の光透過性線状部の前記屈折率は前記光透過性基材の前記屈折率と比較してより高い上記側面に係る表示体が提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、第1主面とその裏面である第2主面とを有している基材と、前記第1主面又は前記第2主面上で幅方向に配列した複数の第1着色性線状部を含んだ第1着色層と、前記第1主面上であって、前記第1着色性線状部間の隙間に対応した位置で、前記隙間の長さ方向に伸びた複数の第2着色性線状部を含み、前記複数の第2着色性線状部からなる配列は、前記複数の第1着色性線状部からなる配列とは異なる形状を有する第2着色層と、前記複数の第2着色性線状部をそれぞれ被覆した複数の光透過性線状部を含み、前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している光透過層とを備えた表示体が提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0011】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が両端で丸まっている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の光透過性線状部の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が中央で凹んでいる上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第2着色性線状部の各々の前記第1主面への正射影の中心線は、これに対応した前記光透過性線状部の前記第1主面への正射影の中心線に対して、前記光透過性線状部の幅方向にずれている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の光透過性線状部の高さは0.1μm以上である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の光透過性線状部の幅W2は10乃至100μmの範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第2着色性線状部の幅W3は5乃至70μmの範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第2着色性線状部の幅W3と前記複数の光透過性線状部の幅W2との比W3/W2は1/20乃至2/5の範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第2着色性線状部の幅W3は、前記複数の第1着色性線状部の幅W1と比較してより小さい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1着色性線状部は10乃至500μmの範囲内のピッチで配列した上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記第1着色層は前記第1主面に設けられた上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、前記第1着色層は前記第2主面に設けられた上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図。
図2図1に示す表示体の第1部分を示す断面図。
図3図1に示す表示体の第2部分を示す断面図。
図4図1に示す表示体の第3部分を示す断面図。
図5図1に示す表示体を正面方向から観察している様子を概略的に示す図。
図6図1に示す表示体を斜め方向から観察している様子を概略的に示す図。
図7図5の条件下で表示体が画像を表示している様子を概略的に示す図。
図8図6の条件下で表示体が画像を表示している様子を概略的に示す図。
図9】第1変形例に係る表示体の第1部分を示す断面図。
図10】第1変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図。
図11】第2変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図。
図12】光透過性線状部に採用可能な構造の一例を示す断面図。
図13】光透過性線状部に採用可能な構造の他の例を示す断面図。
図14】光透過性線状部に採用可能な構造の更に他の例を示す断面図。
図15】光透過性線状部に採用可能な構造の更に他の例を示す断面図。
図16】第3変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図。
図17】第4変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、或る層の厚さと他の層の厚さとの比等は、現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部品の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0025】
<表示体>
図1は、本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図である。
図1の表示体1は、薄層状の形状を有している。以下、表示体1の主面に平行な一方向をX方向、表示体1の主面に平行であり且つX方向に対して垂直な方向をY方向、X方向及びY方向に対して垂直な方向、即ち、表示体1の厚さ方向をZ方向とする。
【0026】
図1には、表示体1の前面を描いている。この表示体1は、後述するように、例えば、背面を白色光で照明し、前面を観察した場合に、表示体1の前面に対して観察方向が成す角度(以下、観察角度という)を変化させることにより表示画像の変化を生じる。
【0027】
表示体1は、第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3とを含んでいる。
第1部分P1は、ここでは、Z方向で観察した場合に、円の中央から文字「A」に対応したパターンを除いた形状を有している。第1部分P1は、他の形状を有していてもよい。
【0028】
第2部分P2は、Z方向で観察した場合に、第1部分P1と隣接している。ここでは、第2部分P2は、第1部分P1の中央に位置しており、文字「A」に対応したパターンを形成している。第2部分P2は、他の形状を有していてもよい。
【0029】
第3部分P3は、Z方向で観察した場合に、第1部分P1と隣接している。ここでは、第3部分P3は、第1部分P1を間に挟んで第2部分P2と隣り合っている。具体的には、第3部分P3は、第1部分P1を取り囲んでいる。第3部分P3は、第2部分P2と隣接していてもよい。第3部分P3は、省略することができる。
【0030】
表示体1の構造について、更に詳しく説明する。
図2は、図1に示す表示体の第1部分を示す断面図である。図3は、図1に示す表示体の第2部分を示す断面図である。図4は、図1に示す表示体の第3部分を示す断面図である。
【0031】
表示体1は、図2乃至図4に示す光透過性基材11と、図2及び図3に示す第1着色層12と、図3に示す光透過層13と、図3に示す第2着色層14とを含んでいる。
【0032】
光透過性基材11は、薄層状の形状を有している。光透過性基材11は、第1主面S1と、その裏面である第2主面S2とを有している。第1主面S1及び第2主面S2は、それぞれ、表示体1の前面側及び背面側にある。
【0033】
光透過性基材11は、例えば、シート又はフィルムである。光透過性基材11は、可撓性を有していてもよく、可撓性を有していなくてもよい。また、光透過性基材11は、中実及び中空の何れであってもよい。光透過性基材11の両主面は、典型的には平面であるが、曲面であってもよい。
【0034】
光透過性基材11は、可視光を透過させる。光透過性基材11は、典型的には透明である。光透過性基材11は、光散乱性を有していてもよい。
【0035】
光透過性基材11としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、及び無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス(屈折率1.51~1.53)からなる層;合成石英(屈折率1.46~1.47)からなる層;ポリエチレンテレフタレート(屈折率1.57~1.66)、トリアセチルセルロース(TAC、屈折率1.487)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、屈折率1.49)、ポリカーボネート(PC、屈折率1.586)、ポリ塩化ビニル(PVC、屈折率1.52~1.55)、ポリ塩化ビニリデン(屈折率1.6~1.63)、ビニルアルコール(PVA、屈折率1.49~1.53)、ポリスチレン(PS、屈折率1.59~1.6)、スチレンアクリロニトリル共重合体(AS、屈折率1.56~1.57)、ポリエチレン(屈折率1.54)、ポリプロピレン(PP、屈折率1.49)、ポリアセタール(屈折率1.48)、ポリメチルアクリレート(屈折率1.48~1.5)、メタクリル酸スチレン共重合体(MS、屈折率1.53~1.57)、酢酸セルロース(屈折率1.46~1.5)、ポリカーボネート(PC、屈折率1.586)、ポリエチレンテレフタレート(PET、屈折率1.655)、フッ素樹脂(屈折率1.33~1.43)、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸ナトリウム(屈折率1.43)、ポリエチレンオキシド(屈折率1.469)、ポリ乳酸(屈折率1.4)、ポリグリコール酸(屈折率1.464)、及びポリカプロラクトン(屈折率1.463)などのポリマーからなる層;又は、クリーンペーパー、コート紙、及びカレンダー紙等の当該分野で知られている加工紙に蝋(屈折率1.519)で加工を施した蝋引き紙を用いることが可能である。
【0036】
光透過性基材11は、20乃至250μmの範囲内の厚さを有していることが好ましく、20乃至100μmの範囲内の厚さを有していることがより好ましい。光透過性基材11を薄くすると、表示体1の強度が低くなるのに加え、上記の表示画像の変化を生じさせるために必要な観察角度の変化が大きくなる。光透過性基材11を厚くすると、上記の表示画像の変化に必要な観察角度の変化が小さくなる。
【0037】
第1着色層12は、複数の第1着色性線状部121を含んでいる。第1着色性線状部121は、図4に示すように、第3部分P3には設けられていない。第1着色性線状部121は、図2及び図3に示すように、第1主面S1のうち、第1部分P1及び第2部分P2に対応した領域上で、幅方向に配列している。ここでは、第1着色性線状部121の長さ方向及び幅方向は、それぞれ、Y方向及びX方向である。また、ここでは、第1着色性線状部121は、幅方向に一定のピッチPで配列している。そして、ここでは、第1着色性線状部121の配列は、Z方向で観察した場合に、円の中央から文字「A」に対応したパターンを除いた形状を有している。
【0038】
第1着色性線状部121は、背面を白色光で照明した場合に、着色した透過光を射出する。第1着色性線状部121は、遮光体であってもよい。
【0039】
第1着色性線状部121の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している。ここでは、第1着色性線状部121の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が両端で丸まっている。第1着色性線状部121の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、半円形、三角形、矩形及び台形などの他の形状を有していてもよい。
【0040】
第1着色性線状部121の高さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。ここで、第1着色性線状部121の高さは、第1主面S1を基準とした第1着色性線状部121の最大高さである。この高さを大きくすると、図6を参照しながら後述する条件下で、第1着色層12の色が表示へ及ぼす影響が大きくなる。
【0041】
第1着色性線状部121の高さは、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。この高さが大きい第1着色性線状部121は、高い形状精度で形成することが難しい。
【0042】
第1着色性線状部121の幅W1は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。幅W1を大きくすると、ドットの配列によって画像を表現する複写機で得られる複写物において、第1着色性線状部121と同様のパターンをほぼ正確に再現し易くなる。また、幅W1を大きくすると、隣り合った第1着色性線状部121を、肉眼で観察した場合に互いから区別することが容易になる。
【0043】
幅W1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましい。ピッチPが一定である場合、幅W1を小さくすると、表示体1が表示する画像のうち、第1着色層12に対応した部分の画像濃度が低くなる。また、幅W1が小さい第1着色性線状部121は、高い形状精度で形成することが難しい。
【0044】
ピッチPは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが更に好ましい。ピッチPを大きくすると、ドットの配列によって画像を表現する複写機で得られる複写物において、第1着色性線状部121と同様のパターンをほぼ正確に再現し易くなる。また、ピッチPを大きくすると、隣り合った第1着色性線状部121を、肉眼で観察した場合に互いから区別することが容易になる。
【0045】
ピッチPは、10μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることが更に好ましい。幅W1が一定である場合、ピッチPを小さくすると、後述する光透過性線状部131を十分に大きな幅で設けることが難しくなる可能性がある。
【0046】
第1着色性線状部121は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の中央部が上方へ突き出た形状を有している。第1着色性線状部121は、その長さ方向に垂直な断面が他の形状を有していてもよい。
【0047】
なお、網点の配列によって画像を表示する場合、色の濃淡は、網点の配列を変更することなしに、網点の大きさを変更することで変化させる。即ち、網点の配列によって画像を表示する場合、単位領域における網点の面積占有率(インキ面積)を変化させることで濃淡を表現している。
【0048】
これに対し、第1着色層12では、単位領域における第1着色性線状部121の面積占有率を一定としたままであっても、第1着色性線状部121の幅W1を変更することで、濃淡を調整することが可能である。例えば、第1着色性線状部121を100μmの幅W1及び100μmの間隔で配置した場合と、第1着色性線状部121を10μmの幅W1及び10μmの間隔で配置した場合とでは、面積占有率は何れも50%である。しかしながら、前者の場合、第1着色層12が表示する画像は、後者の場合と比較して、目視時における色が濃く見える(色差計測定値が大きくなる)。
【0049】
従って、例えば、或る領域と他の領域とで、ピッチPを等しくしつつ、幅W1を異ならしめることにより、第1着色層12が表示する画像の色の濃さを、それら領域間で異ならしめることができる。或いは、ピッチPを等しくしつつ、幅W1を連続的に変化させることにより、第1着色層12が表示する画像の色の濃さを連続的に変化させることができる。
【0050】
第1着色層12は、一例によれば、ポリマーと、このポリマー中に分散した顔料とを含む。
【0051】
上記のポリマーは、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミド(PI)等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化物である。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、環状オレフィン共重合体(COC)、アクリル樹脂、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、メタクリル酸スチレン共重合体(MS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はポリイミド(PI)を用いることが可能である。
【0053】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアルキド等の当該分野でよく知られている熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0054】
ポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチル(POM)、ポリアミド(PA)、及びポリフェニルサルフィド(PPS)等のエンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックを用いることも可能である。
【0055】
ポリマーは、電離放射線によって硬化する樹脂、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポシキ樹脂、又はポリエステル樹脂の硬化物であってもよい。
【0056】
顔料は、第1着色層12を呈色させるためのものである。顔料は、無機顔料、有機顔料、又はそれらの組み合わせである。無機顔料としては、例えば、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸塩、珪酸塩、硫酸塩、又はリン酸塩からなるものを使用できる。有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、ニトロ系顔料、又は捺染系顔料を使用できる。
【0057】
光透過層13は、複数の光透過性線状部131を含んでいる。光透過性線状部131は、図2及び図4に示すように、第1部分P1及び第3部分P3には設けられていない。光透過性線状部131は、図3に示すように、第1主面S1のうち第2部分P2に対応した領域上であって、第1着色性線状部121間の隙間に設けられており、これら隙間の長さ方向に伸びた形状を有している。ここでは、光透過性線状部131の長さ方向及び幅方向は、それぞれ、Y方向及びX方向である。また、ここでは、第1主面S1のうち第2部分P2に対応した領域上で、光透過性線状部131及び第1着色性線状部121は、X方向へ交互に配列している。なお、光透過性線状部131の配列のピッチは、上記のピッチPと等しい。
【0058】
上記の通り、第1着色性線状部121は、第1主面S1のうち、第1部分P1及び第2部分P2に対応した領域上で配列している。これに対し、光透過性線状部131は、第1主面S1のうち第2部分P2に対応した領域上で配列している。即ち、第1着色性線状部121からなる配列は、第1部分P1と第2部分P2との組み合わせに対応した形状を有している。ここでは、第1着色性線状部121からなる配列は、Z方向で観察した場合に、円の中央から文字「A」に対応したパターンを除いた形状を有している。
【0059】
これに対し、光透過性線状部131は、第2部分P2に対応した形状を有している。ここでは、光透過性線状部131の配列は、文字「A」に対応したパターンを形成している。このように、光透過性線状部131からなる配列は、第1着色性線状部121からなる配列とは異なる形状を有している。
【0060】
光透過性線状部131の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している。ここでは、光透過性線状部131の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が両端で丸まっている。また、ここでは、光透過性線状部131の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が中央で凹んでいる。
【0061】
光透過性線状部131の高さH1は、0.1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。ここで、光透過性線状部131の高さH1は、第1主面S1を基準とした光透過性線状部131の最大高さである。高さH1を大きくすると、上記の断面形状を実現することが容易になる。また、高さH1を大きくすると、光透過性線状部131が設けられた位置と、光透過性線状部131が設けられていない位置との間における、表示体1を斜めに透過する光の経路の相違が大きくなる。
【0062】
光透過性線状部131の高さH1は、6μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。高さH1が大きい光透過性線状部131は、高い形状精度で形成することが難しい。
【0063】
上記の通り、光透過性線状部131の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が中央で凹んでいる。光透過性線状部131の上面は、その中央における最小高さH2と高さH1との比H2/H1が0.1/6以上であり且つ1未満であることが好ましく、1/5乃至3/4の範囲内にあることがより好ましい。比H2/H1を小さくすると、光透過性線状部131の上面が両端による光拡散効果が高まる。比H2/H1を大きくすると、光透過性線状部131が、これへ斜めに入射した光の経路を変更する効果が高まる。
【0064】
光透過性線状部131の幅W2は、10乃至100μmの範囲内にあることが好ましく、10乃至60μmの範囲内にあることがより好ましい。幅W2を大きくすると、高さH1が大きな光透過性線状部131を形成することが容易になる。但し、幅W2を過剰に大きくすると、ピッチPを大きくする必要を生じ得る。
【0065】
高さH1と幅W2との比H1/W2は、1/1000以上であることが好ましく、2/50以上であることがより好ましい。比H1/W2は、6/5以下であることが好ましく、4/5以下であることがより好ましい。比H1/W2が小さいと、光透過性線状部131の上面に占める光拡散効果を生じる領域の割合が小さくなる傾向にある。比H1/W2が大きな光透過性線状部131は、製造が難しい。
【0066】
光透過性線状部131は、その長さ方向に垂直な断面において、光透過性基材11側の縁の一方と、光透過性線状部131の上面のうち高さH1を有し且つ先の縁から最も近い位置とを結ぶ直線が、第1主面S1に対して成す角度αは、10°以上であることが好ましく、20°以上であることがより好ましい。角度αは、80°以下であることが好ましく、70°以下であることがより好ましい。角度αが0°に近づくか又は90°に近づくほど、上記の光拡散効果は小さくなる。角度αについては、図12乃至図15を参照しながら後で再度説明する。
【0067】
なお、第2部分P2において、光透過性線状部131は、これと隣り合った第1着色性線状部121から離間している。第2部分P2において、光透過性線状部131は、これと隣り合った第1着色性線状部121と接していてもよい。
【0068】
光透過性線状部131は、光透過性基材11の屈折率とは異なる屈折率を有している。光透過性線状部131の屈折率は、光透過性基材11の屈折率よりも低くてもよく、光透過性基材11の屈折率よりも高くてもよい。ここでは、一例として、光透過性線状部131の屈折率は、光透過性基材11の屈折率よりも高いこととする。
【0069】
光透過性線状部131の屈折率と光透過性基材11の屈折率との差の絶対値は、0.2以上であることが好ましい。なお、ここで、「屈折率」は、波長が589.3nmの光に対する屈折率である。
【0070】
光透過性線状部131は、例えば、ポリマーからなる。或いは、光透過性線状部131は、ポリマー(以下、マトリクス又はバインダということもある)と、このポリマー中に分散し、このポリマーの屈折率とは異なる屈折率を有する粒子(以下、分散粒子という)とを含んだ混合物からなる。
【0071】
光透過性線状部131が含むポリマーとしては、例えば、第1着色層12について例示したものを使用することができる。
【0072】
分散粒子は、マトリクス又はバインダの屈折率とは異なる屈折率を有している。なお、ここで、「屈折率」は、上記のように定義したものである。分散粒子の屈折率は、マトリクス又はバインダの屈折率と比較して、より高くてもよく、より低くてもよい。
【0073】
分散粒子は、ポリマーからなるものであってもよく、粘土化合物などの無機物からなるものであってもよい。マトリクス又はバインダには、分散粒子として、ポリマーからなる粒子と、無機物からなる粒子との双方を分散させてもよい。
【0074】
分散粒子の材料としてのポリマーには、例えば、光透過性線状部131について上述したものを使用することができる。マトリクス又はバインダに、分散粒子の少なくとも一部としてポリマー粒子を分散させる場合、それらポリマー粒子は、ポリマーの種類が同一であってもよく、ポリマーの種類が異なる複数種の粒子を含んでいてもよい。
【0075】
分散粒子の材料としての無機物には、例えば、三酸化アンチモン(3.0)、酸化鉄(2.7)、酸化チタン(2.6)、硫化カドミウム(2.6)、酸化セリウム(2.3)、硫化亜鉛(2.3)、塩化鉛(2.3)、酸化カドミウム(2.2)、酸化タングステン(5.0)、酸化ケイ素(5.0)、Si(2.5)、酸化インジウム(2.0)、一酸化鉛(2.6)、酸化タンタル(2.4)、酸化亜鉛(2.1)、酸化ジルコニウム(5.0)、酸化マグネシウム(1.0)、二酸化ケイ素(1.45)、Si(10)、フッ化マグネシウム(4.0)、フッ化セリウム(1.0)、フッ化カルシウム(1.3~1.4)、フッ化アルミニウム(1.0)、酸化アルミウム(1.0)、酸化ガリウム(2.0)、カオリナイト(1.62)、タルク(1.59)、スメクタイト、炭酸バリウム(1.6)、炭酸マグネシウム(1.55)、塩化バリウム(1.64)、硫酸バリウム(2.155)、硝酸バリウム(1.572)、水酸化アルミニウム(1.772)、炭酸ストロンチウム(1.666)、塩化ストロンチウム(1.650)、酸化バリウム(1.98)、酸化ストロンチウム(1.87)、又は炭酸カルシウム(1.64)を使用することができる。なお、括弧内の数値は、その直前に記載した物質の屈折率である。分散粒子の少なくとも一部として無機粒子を分散させる場合、それら無機粒子は、無機物の種類が同一であってもよく、無機物の種類が異なる複数種の粒子を含んでいてもよい。
【0076】
第2着色層14は、複数の第2着色性線状部141を含んでいる。第2着色性線状部141は、図2及び図4に示すように、第1部分P1及び第3部分P3には設けられていない。第2着色性線状部141は、図3に示すように、第2主面S2上で光透過性線状部131に対応して配列している。第2着色性線状部141は、光透過性線状部の長さ方向に各々が伸びている。ここでは、第2着色性線状部141の長さ方向及び幅方向は、それぞれ、Y方向及びX方向である。
【0077】
第2着色性線状部141は、背面を白色光で照明した場合に、着色した透過光を射出する。第2着色性線状部141が射出する透過光の色は、第1着色性線状部121が射出する透過光の色と同じであってもよく、異なっていてもよい。第2着色性線状部141は、遮光体であってもよい。
【0078】
第2着色性線状部141の各々の第1主面S1への正射影の中心線は、これに対応した光透過性線状部131の第1主面S1への正射影の中心線に対して、光透過性線状部131の幅方向にずれている。ここでは、第2着色性線状部141の各々は、その第1主面S1への正射影が、光透過性線状部131の一方の縁に沿うように位置している。
【0079】
第2着色性線状部141の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面の少なくとも一部が湾曲している。ここでは、第2着色性線状部141の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、上面が両端で丸まっている。第2着色性線状部141の各々は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、半円形、三角形、矩形及び台形などの他の形状を有していてもよい。
【0080】
第2着色性線状部141の高さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。ここで、第2着色性線状部141の高さは、第1主面S1を基準とした第2着色性線状部141の最大高さである。この高さを大きくすると、図6を参照しながら後述する条件下で、第2着色層14の色が表示へ及ぼす影響が大きくなる。
【0081】
第2着色性線状部141の高さは、4μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。この高さが大きい第2着色性線状部141は、高い形状精度で形成することが難しい。
【0082】
第2着色性線状部141の各々は、これに対応した位置に設けられた光透過性線状部131と比較して幅が狭い。好ましくは、第2着色性線状部の幅W3は、第1着色性線状部の幅W1と比較してより小さい。
【0083】
第2着色性線状部141の幅W3は、5乃至70μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至20μmの範囲内にあることがより好ましい。また、第2着色性線状部の幅W3と光透過性線状部の幅W2との比W3/W2は、1/20乃至3/4の範囲内にあることが好ましく、1/10乃至1/4の範囲内にあることがより好ましい。幅W3又は比W3/W2を大きくすると、観察角度の変化に応じた表示画像の変化が生じ難くなる。幅W3又は比W3/W2を小さくすると、第2着色層14によって表示するパターンの視認性が低下する。
【0084】
第2着色性線状部141は、その長さ方向に垂直な断面を観察した場合に、第1着色性線状部121と同様の形状を有している。第2着色性線状部141は、その長さ方向に垂直な断面が他の形状を有していてもよい。
【0085】
第2着色層14の材料としては、例えば、第1着色層12について上述したのと同様のものを使用することができる。
【0086】
<表示体の製造方法>
表示体1は、例えば、以下の方法により製造することができる。
先ず、光透過性基材11の第1主面S1に、第1着色層12を形成する。第1着色層12は、例えば、凹版印刷又はグラビアオフセット印刷によって形成する。
【0087】
単色の第1着色層12を形成する場合、印刷版は1つのみ準備すればよい。複数色の第1着色層12を形成する場合、複数の印刷版を準備し、色毎に順次印刷を行う。
【0088】
第1着色性線状部121の各々は、1回の印刷で形成することができる。第1着色性線状部121の各々は、複数回の印刷で形成してもよい。即ち、複数の印刷版を準備し、第1着色性線状部121の各々が多層構造を有するように、順次印刷を行ってもよい。
【0089】
或る印刷版と他の印刷版とで、溝の深さや幅は、等しくてもよく、異なっていてもよい。また、1つの印刷版において、溝の幅及び深さは、全体に亘って一定であってもよく、或る領域と他の領域とで異なっていてもよい。
【0090】
何れの場合であっても、1回の印刷で転写する塗工材層の厚さは5μm以下とすることが好ましい。
【0091】
第1着色層12の形成に使用する塗工材としては、例えば、通常の印刷に使用するプロセスインキや各種の特色インキのように観察方向に応じた色変化を生じない塗工材を使用することができる。この塗工材としては、例えば、第1着色層12について上述した樹脂及び顔料と、溶剤とを含んだものを使用することができる。
【0092】
塗工材中の溶剤には、任意のものを用いることができる。塗工材中の溶剤としては、例えば、ドデカン又はテトラデカンを使用する。速乾性インキでは、常温で乾燥する沸点の低い溶剤、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、エタノール、又はアセトンなどを使用する。水性インキでは、水、特には精製水を使用する、オイル系インキでは、常温で蒸発しないオイル、例えば、脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、又は高級アルコールを使用する。
【0093】
なお、グラビアオフセット印刷によって第1着色層12を形成する場合、ブランケットの材料は、溶剤の種類に応じて、その溶剤に対し吸収性を有するものを選択することが好ましい。
【0094】
以上のようにして、光透過性基材11の第1主面S1に塗工材層を転写する。そして、この塗工材層を硬化させるか又は焼成する。これにより、第1着色層12を得る。
【0095】
次に、光透過性基材11の第2主面S2に、第2着色層14を形成する。第2着色層14は、例えば、第1着色層12について上述したのと同様の方法により形成することができる。第2着色層14を形成するための塗工材としては、例えば、第1着色層12について上述したのと同様のものを使用することができる。第2着色層14は、第1着色層12の形成前に形成してもよい。
【0096】
次いで、光透過性基材11の第1主面S1に、光透過層13を形成する。
光透過層13は、例えば、第1着色層12について上述したのと同様の方法により形成することができる。
【0097】
光透過層13は、同一領域に対して凹版印刷を1回のみ行うことによって形成してもよいが、同一領域に対して凹版印刷を複数回行うことによって形成することが好ましい。同一の版を用いた凹版印刷を線状部が積み重なるように複数回行うか、又は、同一のパターンを有する複数の版を用いた凹版印刷を線状部が積み重なるように複数回行うと、光透過性線状部131の高さH1が特に大きい光透過層13を形成することができる。
【0098】
光透過層13を形成するための塗工材としては、例えば、第1着色層12について上述した樹脂及び溶剤を含んだものを使用することができる。光透過層13を形成するための塗工材としては、光透過層13について上述した分散粒子を更に含んだものを使用してもよい。光透過層13は、第1着色層12及び第2着色層14の形成前に形成してもよく、第1着色層12の形成と第2着色層14の形成との間に形成してもよい。
【0099】
第1着色層12、光透過層13、及び第2着色層14を形成するための印刷では、アライメントマークを利用して印刷版と光透過性基材11との位置合わせを行うことが好ましい。また、複数の印刷版を使用して印刷する場合にも、アライメントマークを利用して印刷版と光透過性基材11との位置合わせを行うことが好ましい。
【0100】
アライメントマークの形状は、カメラによる画像認識時に上下左右の合わせ位置を明確に示すものであることが好ましい。アライメントマークは、印刷パターンの領域外であって、少なくとも印刷パターンを内包する四角形領域の対角の2点以上に配置することが望ましい。
【0101】
アライメント精度は、±5μm以内であることが望ましい。アライメント精度が、±5μmの範囲を逸脱した場合には、第1着色層12、光透過層13、及び第2着色層14の相対位置が設計から逸脱し、表示画像が設計通りに変化しない可能性がある。
【0102】
上記の方法では、印刷版として凹版を使用する。一般的な凹版には、網点に対応して複数のドット状凹部が設けられている。これに対し、上記の印刷版は、第1着色性線状部121に対応して複数の溝を有している。
【0103】
これら溝の幅や深さは、第1着色性線状部121、光透過性線状部131又は第2着色性線状部141の幅及び高さに応じて適宜設定する。なお、一般に、このような印刷版を用いた印刷によって得られる印刷層が含む線状部は、この印刷版に設けられた溝とは、長さ方向に対して垂直な断面の形状が異なる。例えば、長さ方向に対して垂直な断面が矩形状であり且つ溝の幅Wが小さい印刷版を使用した場合、光透過性線状部131について図13乃至図15を参照しながら説明した断面形状を有する線状部を含んだ印刷層が得られ易い。また、長さ方向に対して垂直な断面が矩形状であり且つ溝の幅Wが大きい印刷版を使用した場合、光透過性線状部131について図3及び図12を参照しながら説明した断面形状を有する線状部を含んだ印刷層が得られ易い。
【0104】
印刷版に設ける溝は、長さ方向に対して垂直な断面が矩形状でなくてもよい。この断面は、溝の深さを二等分する直線に対して対称であってもよく、非対称であってもよい。
【0105】
印刷版は、例えば、切削刃を用いて製造することができる。印刷版は、ダイシングソー、レーザー、又はマシニングセンタによる切削によって製造してもよい。印刷版は、多段エッチング法及び多段めっき法により製造してもよい。
【0106】
一例によれば、印刷版は金属部材である。印刷版としては、石英からなる版、又は、石英又は金属からなる原版から凹凸パターンを転写した、ポリマーからなる版を用いてもよい。
【0107】
<画像表示>
この表示体1は、上記の通り、例えば、背面を白色光で照明し、前面を観察した場合に、観察角度を変化させることにより表示画像の変化を生じる。これについて、以下に説明する。
【0108】
図5は、図1に示す表示体を正面方向から観察している様子を概略的に示す図である。図6は、図1に示す表示体を斜め方向から観察している様子を概略的に示す図である。図7は、図5の条件下で表示体が画像を表示している様子を概略的に示す図である。図8は、図6の条件下で表示体が画像を表示している様子を概略的に示す図である。
【0109】
図5では、表示体1の背面を白色光で照明し、観察者OBは、表示体1を正面方向から観察している。この場合、第2着色性線状部141を透過した光Lは、光透過性基材11を透過し、光透過性線状部131の端部に入射する。上記の通り、光透過性線状部131の上面は、その両端で丸まっている。そして、上記の通り、光透過性線状部131は屈折率が高い。
【0110】
このため、第2着色性線状部141及び光透過性基材11を透過し、光透過性線状部131と空気層との界面に入射した光Lの一部は、この界面によって全反射され、表示体1の前面から射出されない。そして、第2着色性線状部141及び光透過性基材11を透過し、光透過性線状部131と空気層との界面に入射した光Lの残りは、拡散光として表示体1から射出される。それ故、この条件下では、第1着色性線状部121が主に表示へ寄与し、第2着色性線状部141は表示に殆ど寄与しない。
【0111】
従って、この条件下では、第1部分P1と第2部分P2とはほぼ同じ色に見え、図7に示すように、表示体1は、第1部分P1と第2部分P2との組み合わせに相当するパターンを含んだ画像を表示する。
【0112】
図6では、表示体1の背面を白色光で照明し、観察者OBは、表示体1を斜め方向から観察している。この場合、第2着色性線状部141を透過した光Lは、光透過性基材11を透過し、光透過性線状部131の中央部に入射する。上記の通り、光透過性線状部131の上面は、その中央部ではほぼ平坦である。従って、第2着色性線状部141、光透過性基材11及び光透過性線状部131を透過した光Lは、殆ど拡散することなしに表示体1から射出される。それ故、この条件下では、第1着色性線状部121だけでなく、第2着色性線状部141も表示に寄与する。従って、この条件下では、第1部分P1と第2部分P2とは異なる色に見え、図8に示すように、表示体1は、第1部分P1に相当するパターンと、第2部分P2に相当するパターンとを含んだ画像を表示する。
【0113】
以上の通り、表示体1は、例えば、背面を白色光で照明し、前面を観察した場合に、観察角度を変化させることにより表示画像の変化を生じる。この表示画像の変化は、第1着色性線状部121と光透過性線状部131と第2着色性線状部141との組み合わせによってもたらされるものであり、それらの形成には高度な技術が必要である。また、表示体1の複写物では、表示体1と同様の構造は得られず、表示体1の光学効果も再現できない。従って、表示体1によると、高い偽造防止効果を実現可能である。
【0114】
なお、表示体1の背面を白色光で照明して前面を観察する代わりに、表示体1の前面を白色光で照明して前面を観察してもよい。この場合、例えば、表示体1の背面側に、反射層を設置する。こうすると、表示体1の前面を斜め方向から白色光で照明して、正反射光を観察可能な角度で観察した場合に、表示体1に、第1部分P1と第2部分P2との組み合わせに相当するパターンを含んだ画像を表示させることができる。また、表示体1の前面を正面方向から白色光で照明して、正反射光を観察可能な角度で観察した場合に、表示体1に、第1部分P1に相当するパターンと、第2部分P2に相当するパターンとを含んだ画像を表示させることができる。
【0115】
また、上記の反射層上に万線パターンを設けると、以下に説明する光学効果が得られる。例えば、反射層上に、ピッチPで幅方向へ配列した多数の線からなる万線パターンを設ける。そして、万線パターンの線が光透過性線状部131の長さ方向に対して平行になるように、表示体1の背面側に反射層を設置する。第1部分P1と第2部分P2とでは、光透過層13の有無に起因して、光の経路が異なる。それ故、例えば、万線パターンを設けた反射層を、線の幅方向へ移動させることにより、第1部分P1と第2部分P2とで異なる色の変化を生じ、従って、肉眼による観察で、それらを互いから区別可能となる。
【0116】
<変形例>
表示体1には、様々な変形が可能である。
図9は、第1変形例に係る表示体の第1部分を示す断面図である。図10は、第1変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
【0117】
第1変形例に係る表示体1は、第1部分P1及び第2部分P2にそれぞれ図9及び図10の構造を採用したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1と同様である。即ち、第1変形例に係る表示体1では、第1着色層12を、第1主面S1上に設ける代わりに、第2主面S2上に設けている。この構造を採用した表示体1も、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1とほぼ同様の光学効果を奏し得る。
【0118】
図11は、第2変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
第2変形例に係る表示体1は、第2部分P2に図11の構造を採用したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1と同様である。即ち、第1変形例に係る表示体1では、第2着色層14を、第2主面S2上に設ける代わりに、第1主面S1上に設けている。具体的には、第2着色性線状部141の各々を、光透過性基材11と光透過性線状部131との間に介在させている。この構造を採用した表示体1も、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1とほぼ同様の光学効果を奏し得る。
【0119】
なお、この構造では、光透過性基材11の代わりに、光透過性を有していない基材を使用してもよい。また、この構造では、光透過性基材11の第1主面S1上に又は光透過性を有していない基材の第1主面上に反射層を設け、この反射層上に、第1着色層12、光透過層13及び第2着色層14を配置してもよい。
【0120】
光透過性線状部131には、以下の構造を採用してもよい。
図12は、光透過性線状部に採用可能な構造の一例を示す断面図である。図13は、光透過性線状部に採用可能な構造の他の例を示す断面図である。図14は、光透過性線状部に採用可能な構造の更に他の例を示す断面図である。図15は、光透過性線状部に採用可能な構造の更に他の例を示す断面図である。
【0121】
図12に示す光透過性線状部131は、その長さ方向に垂直な断面が先細りするように側面が傾斜していること以外は、図3などを参照しながら説明した光透過性線状部131と同様である。図13及び図14に示す光透過性線状部131は、その長さ方向に垂直な断面が先細りするように側面が傾斜しており、上面が中央で凹んでいないこと以外は、図3などを参照しながら説明した光透過性線状部131と同様である。図15に示す光透過性線状部131は、その長さ方向に垂直な断面において、上面が中央で凹んでいないこと以外は、図3などを参照しながら説明した光透過性線状部131と同様である。光透過性線状部131は、その長さ方向に垂直な断面が、半円形、三角形、矩形、又は台形であってもよい。このように、光透過性線状部131には、様々な構造を採用することができる。
【0122】
何れの場合であっても、光透過性線状部131は、それらの長さ方向に垂直な断面の形状が互いに等しいことが好ましい。また、光透過性線状部131の各々は、その長さ方向に垂直な断面の形状が、長さ全体に亘って一定であることが好ましい。
【0123】
なお、図12乃至図15において、角度αは、光透過性線状部131の長さ方向に垂直な断面において、光透過性基材11側の縁の一方と、光透過性線状部131の上面のうち高さH1を有し且つ先の縁から最も近い位置とを結ぶ直線が、第1主面S1に対して成す角度である。
【0124】
光透過性線状部131は、その長さ方向に垂直な断面が矩形状であってもよい。例えば、図11を参照しながら説明した表示体1において、光透過性基材11上に反射層を設け、この反射層上に、第1着色層12、光透過層13及び第2着色層14を配置する。そして、光透過性線状部131を、その長さ方向に垂直な断面が矩形状であるものとする。更に、光透過性線状部131の屈折率を、反射層とは反対側で光透過性線状部131と隣接する層の屈折率、例えば、空気層の屈折率よりも小さくする。
【0125】
この構造を採用すると、表示体1の前面を斜め方向から白色光で照明して、正反射光を観察可能な角度で観察した場合に、表示体1に、第1部分P1と第2部分P2との組み合わせに相当するパターンを含んだ画像を表示させることができる。また、表示体1の前面を正面方向から白色光で照明して、正反射光を観察可能な角度で観察した場合に、表示体1に、第1部分P1に相当するパターンと、第2部分P2に相当するパターンとを含んだ画像を表示させることができる。
【0126】
表示体1には、以下の変形も更に可能である。
図16は、第3変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
【0127】
第3変形例に係る表示体1は、図16の構造を採用したこと以外は、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1と同様である。即ち、第3変形例に係る表示体1は、中間層15と保護層16及び17とを更に含んでいる。
【0128】
中間層15は、第1着色層及び光透過層13が設けられた第1主面S1に保護層16を貼り付けるための層である。中間層15は、可視光透過性を有している。一例によれば、中間層15は、無色透明である。
【0129】
中間層15は、光透過層13とは屈折率が異なっている。光透過層13の屈折率と中間層15の屈折率との差の絶対値は0.01以上であることが好ましい。ここで、「屈折率」は、上記のように定義したものである。ここでは、一例として、光透過層13の屈折率は、中間層15の屈折率と比較してより高いとする。
【0130】
中間層15は、接着剤又は粘着剤からなる。粘着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、又はシリコン系粘着剤が挙げられる。何れも高温で使用される可能性があるため、100℃における貯蔵弾性率G’は1.0×10Pa以上であることが望ましい。100℃における貯蔵弾性率G’が低いと、使用中に中間層15と光透過性基材11とが互いからずれてしまう可能性がある。
【0131】
屈折率を調整するために、粘着剤の中に、これとは屈折率が異なる有機粒子及び無機粒子などの透明粒子を混ぜてもよい。
【0132】
中間層15は、両面粘着フィルムのように多層構造を有していてもよい。即ち、中間層15として、予めシート状に加工したものを用いてもよい。
【0133】
或いは、中間層15は、粘着剤からなる単層構造を有していてもよい。この場合、第1着色層及び光透過層13が設けられた第1主面S1に粘着剤を供給することにより、中間層15を形成してもよい。粘着剤の供給は、例えば、押出し塗工、コンマコータ等の各種塗工装置を用いた方法、印刷方式、ディスペンサ若しくはスプレー装置を用いる方法、又は筆若しくは刷毛を用いた手作業による塗工により行う。粘着剤の供給に先立ち、第1着色層及び光透過層13が設けられた第1主面S1にはコロナ処理を施してもよい。
【0134】
保護層16は、中間層15を間に挟んで、第1着色層及び光透過層13が設けられた第1主面S1に貼り付けられている。保護層16は、可視光透過性を有しているフィルム又はシートである。一例によれば、保護層16は、無色透明である。保護層16の材料としては、例えば、光透過性基材11について上述したものを使用することができる。
【0135】
保護層17は、第2主面S2に貼り付けられている。保護層17は、可視光透過性を有している層である。一例によれば、保護層17は、無色透明である。保護層17は、例えば、光透過層13について上述した樹脂を第2主面S2へ塗布することにより形成することができる。
【0136】
この表示体1において、中間層15は省略することができる。この場合、保護層16は、例えば、光透過層13について上述した樹脂を、第1着色層及び光透過層13が設けられた第1主面S1へ塗布することにより形成することができる。この樹脂には、屈折率を調整するために、これとは屈折率が異なる有機粒子及び無機粒子などの透明粒子を混ぜてもよい。
【0137】
図17は、第4変形例に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
第4変形例に係る表示体1は、図17の構造を採用したこと以外は、図16を参照しながら説明した表示体1と同様である。即ち、第4変形例に係る表示体1は、OVD層18を更に含んでいる。
【0138】
OVD層18は、光透過性基材11の第1主面S1上に設けられている。第1着色層12及び光透過層13は、OVD層18上に設けられている。
【0139】
OVD層18は、他の位置に、例えば、第2主面S2上に設けてもよい。この場合、第2着色層14は、OVD層18と第2主面S2との間に設けてもよく、OVD層18上に設けてもよい。
【0140】
OVD層18は、例えば、ホログラム若しくは回折格子を含んだ層であるか、多層膜であるか、又は、それらの2以上の組み合わせである。ホログラム又は回折格子を含んだ層は、一例によれば、レリーフ型のホログラム又は回折格子が表面に設けられたレリーフ層を含む。この場合、ホログラム又は回折格子を含んだ層は、可視光透過性を有し、上記表面を被覆した反射層を更に含むことができる。
【0141】
OVD層18を設けることにより、表示体1は、OVD層18による光学効果を更に奏し得る。そのような表示体1は、更に高い偽造防止効果を実現可能である。
【0142】
表示体1には、以下の変形も更に可能である。
例えば、表示体1は、1以上の印刷層を更に含んでいてもよい。一例によれば、印刷層の1以上は、着色層である。この着色層は、ドットの配列からなるものであってもよい。他の例によれば、印刷層の1以上は、導体層である。導体層として、回路パターン又はアンテナを設けてもよい。
【0143】
表示体1は、集積回路(IC)チップを更に含んでいてもよい。この場合、表示体1は、上記の回路パターン又はアンテナを構成し、ICチップに接続された導体層を更に含んでいてもよい。
【0144】
上記の表示体1において、第1着色性線状部121、光透過性線状部131及び第2着色性線状部141は、直線状である。第1着色性線状部121、光透過性線状部131及び第2着色性線状部141の少なくとも一部は、直線状でなくてもよい。例えば、第1着色性線状部121、光透過性線状部131及び第2着色性線状部141の少なくとも一部は、蛇行した曲線などの曲線状であってもよい。また、第1着色性線状部121、光透過性線状部131及び第2着色性線状部141は、同心状に配列していてもよい。
【0145】
実施形態及び変形例において説明した事項は、互いに組み合わせることができる。
例えば、図11を参照しながら説明した表示体1では、第1着色層12を、第1主面S1上に設ける代わりに、図9及び図10を参照しながら説明したように第2主面S2上に設けてもよい。また、図9及び図10を参照しながら説明した表示体1や、図11を参照しながら説明した表示体1には、図16を参照しながら説明した、中間層15、保護層16及び保護層17や、図17を参照しながら説明したOVD層18を設けてもよい。
【0146】
上記の表示体1では、光透過性基材11は、薄層状の形状を有している。光透過性基材11は、薄層状の部分を含んでいれば、他の形状を有していてもよい。なお、この場合、第1着色層12、光透過層13及び第2着色層14は、この薄層状の部分に配置する。
【0147】
表示体1は、偽造防止以外の目的で使用することも可能である。例えば、表示体1は、広告用の印刷物、玩具、若しくは包装体、又は、その一部であってもよい。表示体1について上述した構造は、これら物品に意匠性を付与し得る。
【実施例0148】
以下に、実施例を記載する。
図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1を、以下の方法により製造した。なお、ここでは、両面に保護層を形成した。
【0149】
先ず、光透過性基材11として、厚さが188μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.61)を用意した。
【0150】
次に、光透過性基材11の第1主面S1及び第2主面S2上に、それぞれ、第1着色層12及び第2着色層14を形成した。第1着色層12及び第2着色層14は、グラビアオフセット印刷装置を用いて形成した。第1着色層12の形成には、シアン色の呈色材料を塗工材として使用した。第2着色層14の形成には、マゼンタ色の呈色材料を塗工材として使用した。第1着色性線状部121の幅W1及び第2着色性線状部141の幅W3は、何れも10μmとした。また、ピッチPは200μmとした。
【0151】
次いで、第1主面S1上に、光透過層13を形成した。光透過層13は、グラビアオフセット印刷装置を用いて形成した。光透過層13の形成には、電離放射線硬化タイプの透明材料に顔料としてジルコニア粒子(屈折率5.0)を添加した塗工材を使用した。光透過性線状部131の幅W2は60μmとし、高さH1は0.3μmとした。
【0152】
その後、第1着色層12及び光透過層13を設けた第1主面S1と、第2着色層14を設けた第2主面S2とにアクリル樹脂を塗布し、塗膜を硬化させた。これにより、保護層としてのハードコート層を形成した。
【0153】
以上のようにして、図1乃至図8を参照しながら説明した表示体1の両面に保護層を設けてなる構造体を得た。
【0154】
この構造体の背面を白色光で照明し、正面方向から観察した。即ち、この構造体を、図5を参照しながら説明した条件下で観察した。その結果、第1部分P1及び第2部分P2の各々で、第2着色層14のマゼンタ色に由来する色は視認されず、第1着色層12のシアン色に由来する色が視認された。即ち、この構造体は、図7に示すように、第1部分P1と第2部分P2との組み合わせに相当する領域が略均一な色であり、第3部分P3に相当する領域から区別可能な画像を表示した。
【0155】
次に、この構造体をY方向に平行な軸の周りで傾けたこと以外は、上記と同様の条件下で観察した。即ち、この構造体を、図6を参照しながら説明した条件下で観察した。その結果、第1部分P1では、第2着色層14のマゼンタ色に由来する色は視認されず、第1着色層12のシアン色に由来する色が視認された。一方、第2部分P2では、第1着色層12のシアン色に由来する色と、第2着色層14のマゼンタ色に由来する色との混色が視認された。即ち、この構造体は、図8に示すように、第1部分P1に相当する領域と、第2部分P2に相当する領域と、第3部分P3に相当する領域とが、色の相違によって互いから区別可能な画像を表示した。
【符号の説明】
【0156】
1…表示体、11…光透過性基材、12…第1着色層、13…光透過層、14…第2着色層、15…中間層、16…保護層、17…保護層、18…OVD層、121…第1着色性線状部、131…光透過性線状部、141…第2着色性線状部、OB…観察者、P1…第1部分、P2…第2部分、P3…第3部分、S1…第1主面、S2…第2主面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17