(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164161
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】給紙装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20221020BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B65H3/06 330A
B65H3/06 A
B65H5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069479
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 智之
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
【Fターム(参考)】
3F049AA01
3F049CA02
3F049DA12
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343FC04
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA05
3F343KB05
(57)【要約】
【課題】紙詰まり等の用紙の搬送不良を長期間に亘って抑制できる給紙装置を提供する。
【解決手段】給紙装置1は、フィードローラ10と、リタードローラ20と、を有する。フィードローラ10の外周面11には、フィードローラ10の軸方向S1および周方向C1のうちの軸方向S1を主成分として延びる凸条13が周方向C1に沿って複数設けられている。リタードローラ20の外周面21には、リタードローラ20の軸方向S2および周方向C2のうちの周方向C2を主成分として延びる周方向凸条23が軸方向S2に沿って複数設けられているとともに、軸方向S2および周方向C2のうちの軸方向S2を主成分として延びる軸方向凸条24が周方向C2に沿って複数設けられている。リタードローラ20の外周面を平面に展開した展開図において、周方向凸条23が直線状に延びているとともに、軸方向凸条24が直線状に延びている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送するための駆動力が与えられるフィードローラと、
前記フィードローラから前記駆動力を与えられることで前記フィードローラと連動回転可能に構成され、この連動回転における回転方向とは反対方向に所定の回転抵抗を付与されたリタードローラと、を備える給紙装置であって、
前記フィードローラの外周面には、前記フィードローラの軸方向および周方向のうちの前記軸方向を主成分として延びる凸条が前記周方向に沿って複数設けられており、
前記リタードローラの外周面には、前記リタードローラの軸方向および周方向のうちの前記周方向を主成分として延びる凸条としての周方向凸条が前記軸方向に沿って複数設けられているとともに、前記リタードローラの軸方向および周方向のうちの前記軸方向を主成分として延びる凸条としての軸方向凸条が前記周方向に沿って複数設けられており、
前記リタードローラの外周面を平面に展開した展開図において、前記周方向凸条が直線状に延びているとともに、前記軸方向凸条が直線状に延びている、給紙装置。
【請求項2】
前記フィードローラの凸条は、前記フィードローラの前記軸方向に延びており、
前記リタードローラの前記周方向凸条が前記リタードローラの前記周方向に延びているとともに、前記リタードローラの前記軸方向凸条が前記リタードローラの前記軸方向に延びている、請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
複数の前記周方向凸条が、前記リタードローラの前記軸方向に等ピッチで配置されている、請求項1または請求項2に記載の給紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、複合機、ファクシミリなどの画像形成装置に好適な給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、複合機、ファクシミリなどの画像形成装置は、種々のローラを有している(例えば、特許文献1参照)。ローラを含む装置として、特許文献1に記載されているような、用紙を1枚ずつ給紙するための給紙装置が知られている。給紙装置は、例えば、ピックアップローラ、フィードローラ、および、リタードローラを有している。
【0003】
例えば、当業者によって呼称が異なるが、FRR(フィード・リバース・ローラ)方式と呼ばれる給紙装置では、ピックアップローラにより、トレイから分離部に用紙を送る。分離部は、フィードローラと、リタードローラと、トルクリミッタとを有している。リタードローラは、フィードローラに加圧接触している。この分離部は、用紙の重送を防止する。より具体的には、給紙指令が出ると、ピックアップローラおよびフィードローラが回転を始める。その時、フィードローラに加圧状態で接触しているリタードローラもフィードローラと一緒に回転する。ピックアップローラによりトレイから送り出された用紙は、フィードローラとリタードローラとの間に入り、フィードローラとリタードローラによって、加圧されつつ前進する。この時、リタードローラはトルクリミッタによって用紙を戻す方向に回転力を与えられている。このリタードローラは、通常は1枚の用紙を介してフィードローラからの回転力を受けて用紙を送り出す方向に回転している。一方で、ピックアップローラにより誤って2枚の用紙が送り出される場合がある。この場合において、2枚の用紙がフィードローラとリタードローラとの間に入ったとき、リタードローラは、用紙をトレイ側に押し戻す方向に所定のトルクが与えられているので、このトルクの回転によって回転することで、リタードローラと接している用紙をトレイ側に戻す。その結果、フィードローラに接した用紙のみが前進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような給紙装置において、給紙動作が繰り返し行われると、フィードローラの表面およびリタードローラの表面に紙粉等が、微細粉として付着する。このような微細粉がフィードローラおよびリタードローラの表面に存在すると、これらのローラの表面の摩擦係数が低下し、用紙の搬送を安定して行うことが難しくなる。その結果、紙詰まり等の用紙の搬送不良が生じることがある。
【0006】
特許文献1に記載の紙送りローラは、ローラの軸方向における一端から他端に向かって略アーチ状に延びる微細溝が円周方向に所定間隔で形成されている。この微細溝は、用紙表面に付着している紙粉を収容および排出するために設けられている。特許文献1に記載されているように、紙粉等の微細粉によるローラと用紙との間の摩擦力低下を抑制することを目的としてローラに溝を設ける構成は、知られている。このような給紙装置において、用紙の搬送不良や紙詰まりをより長期間に亘ってより確実に抑制できるようにすることが要請されている。なお、特許文献1では、単品のローラについてのみ着目しており、フィードローラとリタードローラという複数のローラを含む給紙装置でのローラ間の関係については何ら着目していない。
【0007】
このような背景を踏まえ、本発明の目的の一つは、紙詰まり等の用紙の搬送不良を長期間に亘って抑制できる給紙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、鋭意研究の結果、フィードローラとリタードローラそれぞれの単体のローラに着目するのではなく、フィードローラとリタードローラとを互いに関連付けて改良することが、用紙の搬送不良や紙詰まりを抑制するのに効果的であるとの知見を得て、本発明を想到するに至った。
【0009】
本発明は、下記の給紙装置を要旨とする。
【0010】
(1)用紙を搬送するための駆動力が与えられるフィードローラと、
前記フィードローラから前記駆動力を与えられることで前記フィードローラと連動回転可能に構成され、この連動回転における回転方向とは反対方向に所定の回転抵抗を付与されたリタードローラと、を備える給紙装置であって、
前記フィードローラの外周面には、前記フィードローラの軸方向および周方向のうちの前記軸方向を主成分として延びる凸条が前記周方向に沿って複数設けられており、
前記リタードローラの外周面には、前記リタードローラの軸方向および周方向のうちの前記周方向を主成分として延びる凸条としての周方向凸条が前記軸方向に沿って複数設けられているとともに、前記リタードローラの軸方向および周方向のうちの前記軸方向を主成分として延びる凸条としての軸方向凸条が前記周方向に沿って複数設けられており、
前記リタードローラの外周面を平面に展開した展開図において、前記周方向凸条が直線状に延びているとともに、前記軸方向凸条が直線状に延びている、給紙装置。
【0011】
(2)前記フィードローラの凸条は、前記フィードローラの前記軸方向に延びており、
前記リタードローラの前記周方向凸条が前記リタードローラの前記周方向に延びているとともに、前記リタードローラの前記軸方向凸条が前記リタードローラの前記軸方向に延びている、前記(1)に記載の給紙装置。
【0012】
(3)複数の前記周方向凸条が、前記リタードローラの前記軸方向に等ピッチで配置されている、前記(1)または前記(2)に記載の給紙装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、給紙装置において、紙詰まり等の用紙の搬送不良を長期間に亘って抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る給紙装置の模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、分離機構のフィードローラおよびリタードローラの模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、フィードローラの外周面の一部を平面に展開した展開図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図であり、フィードローラの外周面をフィードローラの軸方向と直交する断面で示す図である。
【
図5】
図5は、リタードローラの外周面を平面に展開した展開図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図であり、リタードローラの外周面をリタードローラの軸方向と直交する断面で示す図である。
【
図7】
図7は、
図5のVII-VII線に沿う断面図であり、リタードローラの外周面をリタードローラの軸方向と平行な断面で示す図である。
【
図8】
図8は、フィードローラの変形例における凸条を説明するための主要部の展開図である。
【
図9】
図9は、リタードローラの変形例における周方向凸条および軸方向凸条を説明するための主要部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同様の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る給紙装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る給紙装置1の模式的な側面図である。
図2は、分離機構4のフィードローラ10およびリタードローラ20の模式的な斜視図である。
図3は、フィードローラ10の外周面11の一部を平面に展開した展開図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図であり、フィードローラ10の外周面11をフィードローラ10の軸方向S1と直交する断面で示す図である。
図5は、リタードローラ20の外周面21を平面に展開した展開図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図であり、リタードローラ20の外周面21をリタードローラ20の軸方向S2と直交する断面で示す図である。
図7は、
図5のVII-VII線に沿う断面図であり、リタードローラ20の外周面21をリタードローラ20の軸方向S2と平行な断面で示す図である。
【0017】
図1を参照して、給紙装置1は、画像形成装置に備えられる。このような画像形成装置として、複写機、プリンター、複合機、ファクシミリ等を例示できる。
【0018】
給紙装置1は、用紙トレイ2の上方に配置されたピックアップローラ3と、ピックアップローラ3に隣接する分離機構4と、を有している。
【0019】
用紙トレイ2は、複数の用紙5を収容可能である。用紙5は、紙に限らず、画像形成装置によって画像形成可能なプラスチックシート等の他のシート材であってもよい。
【0020】
ピックアップローラ3は、例えば、芯金3aの外周に弾性体ローラが取り付けられた構成を有しており、図示しない電動モータによって回転駆動される。ピックアップローラ3が回転駆動され、用紙トレイ2上の用紙5がピックアップローラ3の回転によって用紙トレイ2から送り出されると、この用紙5は、分離機構4に送り出される。
【0021】
分離機構4は、ピックアップローラ3から送り込まれた用紙5を1枚ずつ画像形成部(図示せず)に向けて送り出すために設けられている。分離機構4は、ピックアップローラから複数枚の用紙5が搬送されてきた場合、用紙5を1枚だけ送り出すように構成されている。
【0022】
分離機構4は、フィードローラ10と、リタードローラ20と、を有している。
【0023】
フィードローラ10は、図示しない電動モータによって回転するように構成されており、用紙5を搬送するための駆動力がこの電動モータから与えられる。フィードローラ10は、ピックアップローラ3によって送られてきた用紙5に上記の駆動力を与えることで、用紙5を画像形成部に向けて
図1の右側に送り出す。フィードローラ10は、芯金6の外周に巻かれた弾性体ローラであり、弾性体ローラの外周面がフィードローラ10の外周面11である。
【0024】
図2~
図4を参照して、フィードローラ10の外周面11には、フィードローラ10の軸方向S1および周方向C1のうちの軸方向S1を主成分として延びる凸条13が周方向C1に沿って複数設けられている。この場合の「軸方向S1を主成分として延びる凸条13」とは、凸状13が延びている方向としての長手方向L1における、凸状13の一端と他端とを繋いだベクトルV1について、軸方向成分の大きさV1Sが周方向成分の大きさV1Cよりも大きいことをいう。換言すれば、凸状13は、軸方向S1に対する傾き角θ1(劣角)が45°未満であることをいう。好ましくは、傾き角θ1は、30°以下であり、より好ましくは15°以下であり、特に好ましくは、本実施形態のようにゼロ°(軸方向S1と平行)である。すなわち、本実施形態では、フィードローラ10の凸条13は、フィードローラ10の軸方向S1に平行に延びている。フィードローラ10の外周面11を平面に展開した展開図において、凸条13が直線状に延びている。本実施形態では、フィードローラ10は、周方向C1に凸状13が複数並ぶローレット形状のローラである。このように、凸状13が軸方向S1を主成分として延びていることで、駆動ローラとしてのフィードローラ10は、用紙5を掻き出すように用紙5に接触することができる。これにより、フィードローラ10から用紙5への駆動力の伝達効率をより高くできる。
【0025】
図1,2,5,7を参照して、リタードローラ20は、フィードローラ10から上記の駆動力を与えられることでフィードローラ10と連動回転可能に構成され、また、この連動回転における回転方向A2とは反対方向に所定の回転抵抗を付与されている。リタードローラ20は、芯金8の外周に巻かれた弾性体ローラであり、弾性体ローラの外周面がリタードローラ20の外周面21である。トルクリミッタ7は、リタードローラ20に上記の回転抵抗を付与している。リタードローラ20は、トルクリミッタ7を介して図示しない電動モータから回転方向A2とは反対方向に回転駆動されていてもよいし、電動モータからの駆動力を受けないように構成されていてもよい。リタードローラ20の外周面21は、フィードローラ10の外周面11に加圧接触している。
【0026】
上記の構成により、フィードローラ10が回転し始めると、リタードローラ20がフィードローラ10と連動して回転方向A2に回転する。ピックアップローラ3により用紙トレイ2から送り出された用紙5は、フィードローラ10とリタードローラ20との間に入り、フィードローラ10とリタードローラ20によって、加圧されつつ前進する。この時、リタードローラ20は、通常は1枚の用紙5を介してフィードローラ10からの回転力を受けて用紙5を送り出す方向に(回転方向A2に)回転する。一方で、ピックアップローラ3によって誤って2枚(複数枚)の用紙5が送り出される場合がある。この場合において、2枚の用紙5がフィードローラ10とリタードローラ20との間に入ったとき、リタードローラ20は、下側の用紙5と接触し、上下の用紙5間に滑りが生じるので、リタードローラ20は回転方向A2には回転せず、下側の用紙5は通過させない。その結果、複数の用紙5のうち、フィードローラ10に接した用紙5のみが前進する。
【0027】
リタードローラ20は、フィードローラ10と平行に配置されている。リタードローラ20の外周面21には、リタードローラ20の軸方向S2および周方向C2のうちの周方向C2を主成分として延びる凸条としての周方向凸条23が軸方向S2に沿って複数設けられている。この場合の「周方向C2を主成分として延びる周方向凸条23」とは、周方向凸条23が延びている方向としての長手方向L2における、周方向凸条23の任意の一部におけるベクトルV2について、周方向成分の大きさV2Cが軸方向成分の大きさV2Sよりも大きいことをいう。換言すれば、周方向凸条23は、周方向C2に対する傾き角θ2(劣角)が45°未満であることをいう。好ましくは、傾き角θ2は、30°以下であり、更に好ましくは15°以下であり、特に好ましくは、本実施形態のようにゼロ°(周方向C2と平行)である。すなわち、本実施形態では、リタードローラ20の周方向凸条23は、リタードローラ20の周方向C2と平行に延びている。本実施形態では、リタードローラ20の外周面21を平坦面に展開した展開図において、周方向凸条23が直線状に延びている。このように、周方向凸条23が周方向C2を主成分として延びていることで、従動ローラとしてのリタードローラ20は、用紙5をより安定した姿勢で支持できるとともに、用紙5に対してより引っかかり難くしてスムーズに搬送できる。
【0028】
本実施形態では、リタードローラ20の外周面には、周方向凸条23に加えて軸方向凸条24が設けられている。これにより、リタードローラ20は、表面に格子状の凸状が形成されたローラである。軸方向凸条24は、リタードローラ20の軸方向S2および周方向C2のうちの軸方向S2を主成分として延びる凸条であり、周方向C2に沿って複数設けられている。この場合の「軸方向S2を主成分として延びる軸方向凸条24」とは、軸方向凸条24が延びている方向としての長手方向L3における、軸方向凸条24の任意の一部におけるベクトルV3について、軸方向成分の大きさV3Sが周方向成分の大きさV3Cよりも大きいことをいう。換言すれば、軸方向凸条24は、軸方向S2に対する傾き角θ3(劣角)が45°未満であることをいう。好ましくは、傾き角θ3は、30°以下であり、より好ましくは15°以下であり、特に好ましくは、本実施形態のようにゼロ°(軸方向S2と平行)である。すなわち、本実施形態では、リタードローラ20の軸方向凸条24は、リタードローラ20の軸方向S2と平行に延びている。本実施形態では、リタードローラ20の外周面21を平面に展開した展開図において、軸方向凸条24が直線状に延びている。この構成により、好ましい実施形態において、複数の周方向凸条23および複数の軸方向凸条24が、全体として格子状に配列されている。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によると、フィードローラ10の凸条13が軸方向S1を主成分として延びているので、凸条13によって用紙5を確実に搬送する力を用紙5に与えることができる。これにより、フィードローラ10は、長期に亘って十分な駆動力を用紙5に与えることができる。また、リタードローラ20の周方向凸条23が周方向C2を主成分として延びているので、周方向凸条23によって用紙5が引っ掛からないように用紙5がリタードローラ20にスムーズに受けられてリタードローラ20上を移動できる。これにより、給紙装置1が長期間使用された場合でも、給紙装置1における紙詰まり等の搬送不良をより確実に抑制できる。さらに、フィードローラ10の2つの凸条13,13間の溝部15、およびリタードローラ20の2つの周方向凸条23,23間の溝部25に紙粉等の微細粉を逃がすことができる。これにより、フィードローラ10の凸条13とリタードローラ20の周方向凸条23との間のニップ部に紙粉が滞留するのを抑制できる。よって、給紙装置1が長期間使用された場合でも、フィードローラ10とリタードローラ20との間の摩擦係数の低下を抑制できる。その結果、フィードローラ10の回転に伴ってリタードローラ20が回転する度合いとしての連れ回り性を長期間に亘って高いままにできる。これにより、フィードローラ10とリタードローラ20の連れ回り性(連動回転性能)の低下に起因する紙詰まりを、より確実に抑制できる。
【0030】
仮に、フィードローラとして外周面に格子状の接触面が形成されたローラを用いた場合、このフィードローラは、ローレット形状のフィードローラ10と比べて、長期間使用されたときに、リタードローラ20との間に滑りを生じやすくなってしまう。また、リタードローラとしてフィードローラ10のようなローレット形状のローラを用いた場合、このリタードローラは、上述したフィードローラ10と比べて、用紙5とのひっかかりを生じやすく、紙詰まりを生じやすくなってしまう。このように、ローレット形状のフィードローラ10を配置し、フィードローラ10の反対側に、周方向C2を主成分とする周方向凸条23を含むリタードローラ20を配置するという、本願に特有の配置を行うことで、長期間に亘って紙詰まり等の用紙5の搬送不良をより確実に抑制できる。
【0031】
また、本実施形態によると、フィードローラ10の凸条13は、フィードローラ10の軸方向S1に延びており、リタードローラ20の周方向凸条23は、リタードローラ20の周方向C2に延びており、リタードローラ20の軸方向凸条24は、リタードローラ20の軸方向S2に延びている。この構成によると、フィードローラ10から用紙5への駆動力の高い伝達効率と、リタードローラ20上での用紙5のよりスムーズな搬送と、をバランスよく実現できる。
【0032】
また、本実施形態によると、リタードローラ20の複数の周方向凸条23および複数の軸方向凸条24は、全体として格子状に配列されている。この構成によると、用紙5の自重を受けるリタードローラ20上において、より均等な面圧で用紙5を載せることができるとともに、長期間の使用に伴い発生する微細粉を凸条23,24間の溝部25に確実に溜めることができる。よって、フィードローラ10およびリタードローラ20よる用紙5のスムーズな搬送を長期間に亘って維持できる。
【0033】
次に、フィードローラ10およびリタードローラ20のより好ましい形態について説明する。
【0034】
<フィードローラのより好ましい構成>
図2~
図4を参照して、フィードローラ10の材質としては、例えば、合成ゴムの一種であるポリウレタン、EPDM、その他の合成ゴムを例示できる。フィードローラ10の材質として、比較的小さな外力によって変形した後直ちに元の形状に戻る弾性を有する、合成ゴム以外の物質であってもよい。
【0035】
フィードローラ10の硬度は、特に限定されないが、例えばデュロメータA硬度で30~70であることが好ましい。A硬度が上記の下限未満であると、ゴムの摩耗量が大きくなり、必要な形状が保持できなくなる。一方、A硬度が上記の上限を超えると、ニップ量が小さくなり摩擦係数が低くなりすぎて必要な搬送力を確保できないおそれがある。フィードローラ10の硬度の下限は好ましくは40であり、フィードローラ10の硬度の上限は好ましくは60である。なお、デュロメータA硬度は、JIS K 6253:2006によりに準拠して測定される値である。
【0036】
フィードローラ10には、軸方向S1を主成分とする凸条13が設けられている一方で、周方向C1を主成分とする凸条は設けられていないことが好ましい。周方向C1を主成分とする凸条が設けられていると、分離機構4を長期間使用したときに、当該凸条と用紙との間で滑りが生じやすくなるためである。但し、フィードローラ10に、周方向C1を主成分とする凸条がさらに設けられていてもよい。すなわち、フィードローラ10に、軸方向S1に対して45°を超える角度を成して延び用紙5と接触可能な周方向凸条がさらに設けられていてもよい。このような周方向凸条が設けられる場合でも、当該周方向凸条は、僅かな長さに設けられている程度が好ましい。この場合の「僅か」とは、フィードローラ10における各凸条13の長手方向L1における長さの合計の10%以下や、5%以下であることを例示できる。
【0037】
フィードローラ10の外周面11は、筒状部12およびこの筒状部12から突出する凸条13を有している。筒状部12は、例えば、円筒形状である。筒状部12は、凸条13の高さを十分に高くすることで用紙5とは接触しないように構成されている。
【0038】
凸条13は、フィードローラ10の周方向C1に等ピッチで設けられていることが好ましい。周方向C1における凸条13の配置ピッチP1は、0.9~1.3mmであることが好ましい。配置ピッチP1が上記の下限未満であると、溝部15の体積が小さくなり、用紙表面に付着している紙粉を効果的に逃がすことが出来なくなる。一方、配置ピッチP1が上記の上限を超えると、フィードローラ10の回転中にフィードローラ10と用紙5とが接触する頻度が少なくなり、フィードローラ10と用紙5との間に滑りが生じやすい。凸条13の配置ピッチP1の下限は好ましくは0.95mmであり、配置ピッチP1の上限は好ましくは1.1mmである。なお、凸条13は、周方向C1に不等ピッチで配置されていてもよい。
【0039】
軸方向S1から見たときにおいて、各凸条13は、例えば台形形状に形成されていることが好ましい。凸条13がこのような形状であれば、凸条13の先端から用紙5へ駆動力を集中的に伝達でき、駆動力の伝達効率を高くできる。なお、軸方向S1から見たときの凸条13の形状は、三角形形状であってもよいし、四角形形状であってもよいし、インボリュート歯形状であってもよいし、サイクロイド歯形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0040】
各凸条13は、軸方向S1におけるフィードローラ10の外周面11の全域に亘って形成されていることが好ましい。しかしながら、1つの凸条13において、凸条部分は軸方向S1に断続的に形成されていてもよい。
【0041】
凸条13の高さh1は、フィードローラ10の半径方向における筒状部12からの凸条13の高さであり、0.3~0.7mmであることが好ましい。高さh1が上記の下限未満であると、凸条13,13間の溝部15の体積が小さくなり、用紙表面に付着している紙粉を効果的に逃がすことが出来なくなる。一方、高さh1が上記の上限を超えると、用紙5を繰り返し給紙装置1に通過させたときの凸条13の摩耗量が大きく、必要な形状が保持できなくなり、フィードローラ10から用紙5への駆動力の伝達効率が低下してしまう。凸条13の高さh1の下限は好ましくは0.4mmであり、高さh1の上限は好ましくは0.6mmである。
【0042】
周方向C1における凸条13の先端の幅w1は、0.2~0.5mmであることが好ましい。幅w1は、例えば、給紙装置4が新品のときに用紙5が接触する部分の幅である。幅w1が上記の下限未満であると、凸条13が細くなり過ぎ、用紙5と凸条13との接触面積が小さくなり、摩擦力(搬送力)が低下する)。一方、幅w1が上記の上限を超えると、隣り合う凸条13間の溝部15の周方向長さを十分に確保できず、微細粉を溝部15に逃がし難くなり、摩擦力(搬送力)が低下する。凸条13の先端の幅w1の下限は好ましくは0.3mmであり、幅w1の上限は好ましくは0.4mmである。
【0043】
軸方向S1からみたときにおける凸条13の傾斜角θxは、36°以下(ゼロを含む)であることが好ましい。傾斜角θxは、フィードローラ10の中心から凸条13の側面(周方向C1の端面)に延びる径方向直線とこの側面とがなす角度である。傾斜角θxが36°未満であれば、溝部15を十分な深さにすることができるので、微細粉を溝部15に貯めやすくできる。よって、微細粉に起因するローラ10,20の摩擦係数低下を抑制できる。傾斜角θxは、好ましくは20°以下(ゼロ°を含む)である。
【0044】
周方向C1における2つの凸条13間に溝部15が設けられている。溝部15は、微細粉が落ち込む空間として設けられている。これにより、凸条13の摩擦係数が低下して用紙5を搬送するための摩擦力が十分得られなくなることを抑制できる。
【0045】
<リタードローラのより好ましい構成>
図2および
図5~
図7を参照して、リタードローラ20の材質としては、フィードローラ10の材質と同様の材質を例示できる。
【0046】
リタードローラ20の硬度は、特に限定されないが、例えばデュロメータA硬度で30~70であることが好ましい。A硬度が上記の下限未満であると、ゴムの摩耗量が大きくなり、必要な形状が保持できなくなる。一方、A硬度が上記の上限を超えると、ニップ量が小さくなり摩擦係数が低くなりすぎて必要な搬送力を確保できないおそれがある。リタードローラ20の硬度の下限は好ましくは40であり、リタードローラ20の硬度の上限は好ましくは60である。
【0047】
リタードローラ20の外周面21は、筒状部22と、この筒状部22から突出する周方向凸条23および軸方向凸条24と、を有している。筒状部22は、例えば、円筒形状である。筒状部22は、凸条23,24の高さを十分に高くすることで用紙5とは接触しないように構成されている。
【0048】
周方向凸条23は、リタードローラ20の軸方向S2に不等ピッチで配置されていても良いが、周方向凸条23は、リタードローラ20の軸方向S2に等ピッチで設けられていることが好ましい。このような等ピッチ配置であることにより、軸方向S2におけるリタードローラ20上での用紙5の姿勢をより安定させることができる。軸方向S2における周方向凸条23の配置ピッチP2は、1.0~1.5mmであることが好ましい。配置ピッチP2のより好ましい範囲は1.1~1.4mmである。配置ピッチP2が上記の下限未満であると、微細粉を収容する溝部25の容積を十分に確保できず、長期間の使用時に微細粉を溝部25に逃がし難くなる。一方、配置ピッチP2が上記の上限を超えると、リタードローラ20と用紙5とが軸方向S2において接触するスパンが大きくなり、軸方向S2における用紙5の波打ちが大きくなり、フィードローラ10の凸条13と用紙5との接触圧が不安定となり、フィードローラ10から用紙5への駆動力の伝達効率が低下する。
【0049】
周方向C2と直交する断面(
図7)において、各周方向凸条23は、波状の曲面として形成されたアール状(リタードローラ20の径方向外方に向けて凸となる湾曲形状)に形成されていることが好ましい。周方向凸条23がこのような形状でれば、周方向凸条23の先端において用紙5を受ける面積を十分に確保し易く、用紙5をスムーズに送り出すことができる。なお、周方向C2と直交する断面において、各周方向凸条23の形状は、矩形形状や三角形形状であってもよいし、インボリュート歯形状であってもよいし、サイクロイド歯形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0050】
各周方向凸条23は、周方向C2におけるリタードローラ20の外周面21の全域に亘って形成されていることが好ましい。しかしながら、1つの周方向凸条23において、凸条部分は周方向C2に断続的に形成されていてもよい。
【0051】
周方向凸条23の高さh2は、リタードローラ20の半径方向における筒状部22からの周方向凸条23の高さであり、0.15~0.4mmであることが好ましい。高さh2が上記の下限未満であると、溝部25の体積が小さくなり、用紙表面に付着している紙粉を効果的に逃がすことが出来なくなる。一方、高さh2が上記の上限を超えると、溝部25の深さが深くなりすぎ、リタードローラ20を製造するときの型抜きがし難くなる。
【0052】
軸方向S2における周方向凸条23の根本の幅w2は、0.8~1.0mmであることが好ましい。幅w2は、例えば、給紙装置4が新品のときに用紙5が接触する部分の幅である。幅w2が上記の下限未満であると、凸条23の摩耗量が大きく、必要な形状が保持できなくなり、フィードローラ10の凸条13と用紙5との接触圧が低下し、駆動力の伝達効率が低下する。一方、幅w2が上記の上限を超えると、隣り合う周方向凸条23間の溝部25の軸方向長さを十分に確保できず、微細粉を溜める容量が小さくなってしまう。なお、周方向凸条23と溝部25との境界は、
図7に示す断面において上向きに凸となる形状部分から下向きに凸となる形状部分との境界に相当する。
【0053】
軸方向凸条24は、リタードローラ20の周方向C2に不等ピッチで配置されていても良いが、等ピッチで設けられていることが好ましい。周方向C2における軸方向凸条24の配置ピッチP3は、1.0~1.5mmであることが好ましい。配置ピッチP3のより好ましい範囲は1.1~1.4mmである。配置ピッチP3が上記の下限未満であると、微細粉を収容する溝部25の容積を十分に確保できず、長期間の使用時に微細粉を溝部25へ逃がし難くなる。一方、配置ピッチP3が上記の上限を超えると、リタードローラ20の回転中にリタードローラ20と用紙5とが接触する頻度が少なくなり、用紙5の搬送方向における用紙5の波打ちが大きくなり、用紙5をスムーズに送り出しにくくなる。
【0054】
軸方向S2から見たときにおいて、各軸方向凸条24は、波状の曲面として形成されたアール状(リタードローラ20の径方向外方に向けて凸となる湾曲形状)に形成されていることが好ましい。軸方向凸条24がこのような形状でれば、軸方向凸条24の先端において用紙5を受ける面積を十分に確保し易く、用紙5をスムーズに送り出すことができる。なお、軸方向S1から見たときの軸方向凸条24の形状は、矩形形状や三角形形状であってもよいし、インボリュート歯形状であってもよいし、サイクロイド歯形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0055】
各軸方向凸条24は、軸方向S2におけるリタードローラ20の外周面21の全域に亘って形成されていることが好ましい。しかしながら、1つの軸方向凸条24において、凸条部分は軸方向S2に断続的に形成されていてもよい。
【0056】
軸方向凸条24の高さh3は、周方向凸条23の高さh2と同じであることが好ましい。
【0057】
周方向C2における軸方向凸条24の根本の幅w3は、0.8~1.0mmであることが好ましい。幅w3は、例えば、給紙装置4が新品のときに用紙5が接触する部分の幅である。幅w3が上記の下限未満であると、軸方向凸条24と用紙5との接触面積が小さくなり、摩擦力(搬送力)が低下する。一方、幅w3が上記の上限を超えると、隣り合う軸方向凸条24間の溝部25の周方向長さを十分に確保できず、微細粉を溜める容量が小さくなってしまい微細粉を溝部15に逃がし難くなり、外周面21の摩擦力(搬送力)が低下する。なお、周方向凸条24と溝部25との境界は、
図6に示す断面において上向きに凸となる形状部分から下向きに凸となる形状部分との境界に相当する。
【0058】
格子状に配置された周方向凸条23および軸方向凸条24で囲まれた箇所が、溝部25を形成している。溝部25は、微細粉が落ち込む空間として設けられている。これにより、リタードローラ20の外周面21の摩擦係数が低下して用紙5とリタードローラ20との間の摩擦力が過度に小さくなることを抑制できる。溝部25は、軸方向S2に規則正しく配列されていることが好ましく、周方向C2に規則正しく配列されていることが正しく、軸方向S2および周方向C2の双方において規則正しく配列されていることが、より好ましい。この場合の「規則正しい」とは、溝部25が等ピッチに配列されていることを指していてもよいし、溝部25が複数種類のピッチで配列される形態を1つのセットとし、このセットが複数繰り返されることを指してもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態および変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0060】
(1)上述の実施形態では、フィードローラ10の凸条13は、軸方向S1と平行であることを図示した。また、上述の実施形態の一例として、凸条13の傾き角θ1が45°未満である形態を説明した。傾き角θ1が30°である場合は、凸条13は、例えば、
図8に示すような形状となる。
図8は、フィードローラ10の変形例における凸条13を説明するための主要部の展開図である。
【0061】
(2)また、上述の実施形態では、リタードローラ20の周方向凸条23が周方向C2に沿って延び軸方向凸条24が軸方向S2に沿って延びる形態を例に説明した。また、上述の実施形態の一例として、凸条23,24の傾き角θ2,θ3がそれぞれ45°未満である形態を説明した。傾き角θ2,θ3がそれぞれ30°である場合は、例えば、
図9に示すような形状となる。
図9は、リタードローラ20の変形例における周方向凸条23および軸方向凸条24を説明するための主要部の展開図である。なお、傾き角θ2,θ3は、互いに異なっていてもよい。
【実施例0062】
画像形成装置として、株式会社リコー製のSP8400を準備した。この画像形成装置の給紙装置は、駆動モータによって回転駆動されるフィードローラと、支軸にトルクリミッタを介して連結されたリタードローラとを有している。
【0063】
そして、フィードローラおよび/またはリタードローラとして用いられるローラとして、以下の3種類のローラを準備した。
1.研磨ローラ
2.格子ローラ
3.ローレットローラ
【0064】
<各ローラ共通の構成>
外径が直径20mm、内径が直径12.4mm、軸方向長さが24mmであった。また、硬度は、JISのデュロメータ硬度でA50であった。
【0065】
<1.研磨ローラ特有の構成>
研磨ローラは、研磨砥石を使用してローラ外周面に研磨加工を施して研磨目を形成したローラとした。その他の仕様は以下である。
材質:EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)
【0066】
<2.格子ローラ特有の構成>
格子ローラとして、リタードローラ20として用いられるローラを準備した。格子ローラの仕様は以下の通りである。
材質:EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)
周方向凸条23の配置ピッチP2:1.3mm
周方向凸条23の断面形状:ローラの径方向外方に向けて凸となるアール形状
周方向凸条23の高さh2:0.20mm
周方向凸条23の根元の幅w2:0.9mm
周方向凸条23の傾き角θ2:0°
【0067】
軸方向凸条24の配置ピッチP3:1.3mm
軸方向凸条24の形状:ローラの径方向外方に向けて凸となるアール形状
軸方向凸条24の高さh3:0.20mm
軸方向凸条24の根元の幅w3:0.9mm
軸方向凸条24の傾き角θ3:0°
【0068】
<3.ローレットローラ特有の構成>
ローレットローラとして、フィードローラ10として用いられるローラを準備した。ローレットローラの仕様は以下の通りである。
材質:EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)
凸条13の配置ピッチP1:1.0mm
凸条13の形状:台形形状
凸条13の高さh1:0.5mm
凸条13の先端の幅w1:0.3mm
凸条13の傾き角θ1:0°
【0069】
<試験方法>
給紙装置のフィードローラとリタードローラを、表1に示すローラの組み合わせとすることで、比較例1~4および実施例1を準備した。そして、画像形成装置を用いて、表1に示す所定数の用紙を給紙装置で給紙する毎に、画像形成装置からフィードローラとリタードローラとを取り外し、
図10に示す評価装置に装着した。なお、上記用紙は、株式会社リコー社製のマイペーパー(普通紙)である。
図10は、評価装置の模式図である。
【0070】
図10に示す評価装置は、電動モータと、電動モータの出力軸が取り付けられ且つフィードローラを装着されるフィードローラ支軸と、リタードローラが嵌められるリタードローラ支軸と、リタードローラ支軸に装着され且つリタードローラに所定の回転抵抗を付与するトルクリミッタと、を有している。評価装置に装着されたフィードローラは、リタードローラへ400gfの荷重で押し付けられている。また、トルクリミッタは、リタードローラがフィードローラと連れ回りするときに400gf・cmの抵抗トルクを発生する構成とした。
【0071】
そして、評価装置において電動モータを駆動することでフィードローラを回転させたときにおける、フィードローラとリタードローラをカメラで撮影することで、リタードローラが連れ回っている様子を撮影した。次いで、動画を観察することで、フィードローラの回転に対してリタードローラが連れ回っている割合としての連れ回り性(%)を算出した。なお、連れ回り性(%)は以下の式で定義される。
連れ回り性(%)=(フィードローラが1回転するのにかかる秒数/リタードローラが1回転するのにかかる秒数)×100
【0072】
表1には、給紙装置で給紙した枚数n(n=0,1万,2万,3万,5万,7万,10万,15万,20万)と、当該n枚数給紙時における連れ回り性(%)とが示されている。
【0073】
【0074】
本試験において、給紙枚数n=7万の時点で連れ回り性が80%以上である場合、○の判定とした。また、n=7万時点で連れ回り性が40%以上80%未満である場合、△の判定とした。また、n=7万時点で連れ回り性が40%未満である場合(評価打ち切りの場合含む)、×の判定とした。表1に結果を示す。
【0075】
なお、連れ回り性が60%前後であれば給紙装置で紙詰まりは発生し難いが、用紙搬送性能が低下傾向にあるため、△の判定基準を上記の通りとした。一方、連れ回り性が40%未満であると、給紙装置で紙詰まりが発生し易い形状にあるため、×の判定基準を上記の通りとした。
【0076】
比較例1は、フィードローラおよびリタードローラの互いの接触面の摩耗進行、および、微細粉滞留の進行が早く、3万枚を給紙した時点で連れ回り性が40%未満となり、紙詰まりが多発した。このため、3万枚の給紙で試験を打ち切られ、×の評価となった。比較例2は、フィードローラにおける微細粉滞留の進行が早く、7万枚を給紙した時点で連れ回り性が70%未満となったため、試験を打ち切られ、△の評価となった。比較例3は、フィードローラにおける摩擦力低下の進行が早く、7万枚を給紙した時点で連れ回り性が40%未満となり、紙詰まりが多発した。このため、7万枚の給紙で試験を打ち切られ、×の評価となった。比較例4は、リタードローラにおける微細粉滞留の進行が早く、10万枚を給紙した時点で連れ回り性が70%を大きく下回ったため、試験を打ち切られ、△の評価となった。
【0077】
なお、比較例としては記載していないが、リタードローラにローレットローラを用いた比較例の場合、ローレットローラの溝に用紙が引っ掛かって紙詰まりを生じる可能性が高いと予想されたため、試験は行わなかった。
【0078】
一方、実施例1では、ローレットローラであるフィードローラの凸条が長期に亘って十分な駆動力を用紙に与えることができ、さらに、格子状ローラであるリタードローラの周方向凸条によって用紙が引っ掛からないように用紙がリタードローラにスムーズに受けられてリタードローラ上を移動できた。これにより、20万枚を給紙した時点でも80%を超える連れ回り性が確保されており、紙詰まりが生じなかった。このように、実施例について、長期に亘って紙詰まり等の搬送不良を抑制できる効果が実証された。