(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164180
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】建築用パネルの吊り上げ方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069507
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】521164898
【氏名又は名称】株式会社興栄企画
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】森山 竜志
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA04
2E174BA01
2E174CA03
2E174CA38
(57)【要約】
【課題】 建築用パネルの意匠性を良好に維持しつつ、吊り上げ作業を容易且つ確実に行うことができる建築用パネルの吊り上げ方法を提供する。
【解決手段】 建築用パネル100の上面に吊り具1を固定した後、吊り具1に紐状部材30を取り付けて吊り上げる建築用パネルの吊り上げ方法であって、建築用パネル100は、直交集成板からなり、直交集成板100を貫通しない長さで直交集成板100の上面側から三層以上にビスをねじ込むことにより、吊り具1を直交集成板100に固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用パネルの上面に吊り具を固定した後、前記吊り具に紐状部材を取り付けて吊り上げる建築用パネルの吊り上げ方法であって、
前記建築用パネルは、直交集成板からなり、
前記直交集成板を貫通しない長さで前記直交集成板の上面側から三層以上にビスをねじ込むことにより、前記吊り具を前記直交集成板に固定する建築用パネルの吊り上げ方法。
【請求項2】
前記吊り具は、円盤状の基板と、前記基板に支持されて前記紐状部材が取り付けられる取付部材とを備えており、
前記基板は、上面側に十字状のリブが設けられ、前記リブによって区画された各区画部に、前記ビスが挿入される貫通孔が形成されている請求項1に記載の建築用パネルの吊り上げ方法。
【請求項3】
前記建築用パネルの上面に設定した矩形領域の四隅に前記吊り具をそれぞれ配置し、前記リブの一部が前記矩形領域の対角線に沿うように前記吊り具を固定する請求項2に記載の建築用パネルの吊り上げ方法。
【請求項4】
前記建築用パネルは、下面側が現し天井面となる床パネルである請求項1から3のいずれかに記載の建築用パネルの吊り上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用パネルの吊り上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床パネル等の建築用パネルを吊り上げる方法として、特許文献1には、スリングの上で複数の床パネルを離接させ、複数の前記床パネルに横架材を架設する際に、前記横架材の両端に設けられたリングに前記スリングを係合させて、前記スリングにより複数の前記床パネルを抱え上げるように吊り上げる方法が開示されている。この吊り上げ方法によれば、複数の床パネルを吊り上げて横並び状態のまま梁の上に降ろすことができるので、床パネルを降ろした後に並べる作業が不要になるとされている。
【0003】
ところが、このような横架材を用いた床パネルの吊り上げ方法は、横架材が床パネルに固定されていないために、吊り上げ中に床パネルが落下するおそれがあった。また、吊り上げた床パネルを、梁上の既設の床パネルに隣接するように降ろす際には、床パネルの側方に突出する横架材のリングが既設の床パネルに干渉するため、床パネルを隙間なく配置することが困難であった。
【0004】
従来の建築用パネルの吊り上げ方法としては、パネルに形成された貫通孔を利用して固定される吊り具を用いる方法も知られており(例えば、特許文献2)、この場合には、上記のように横架材の突出部が床パネルと干渉する問題は生じないが、天井現し等により床パネルが室内側に露出する場合には、床パネルの貫通孔が室内の意匠性を損なうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-241508号公報
【特許文献1】特開平5-116881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、建築用パネルの意匠性を良好に維持しつつ、吊り上げ作業を容易且つ確実に行うことができる建築用パネルの吊り上げ方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、建築用パネルの上面に吊り具を固定した後、前記吊り具に紐状部材を取り付けて吊り上げる建築用パネルの吊り上げ方法であって、前記建築用パネルは、直交集成板からなり、前記直交集成板を貫通しない長さで前記直交集成板の上面側から三層以上にビスをねじ込むことにより、前記吊り具を前記直交集成板に固定する建築用パネルの吊り上げ方法により達成される。
【0008】
この建築用パネルの吊り上げ方法において、前記吊り具は、円盤状の基板と、前記基板に支持されて前記紐状部材が取り付けられる取付部材とを備えることが好ましく、前記基板は、上面側に十字状のリブが設けられ、前記リブによって区画された各区画部に、前記ビスが挿入される貫通孔が形成されることが好ましい。この場合、前記建築用パネルの上面に設定した矩形領域の四隅に前記吊り具をそれぞれ配置し、前記リブの一部が前記矩形領域の対角線に沿うように前記吊り具を固定することが好ましい。
【0009】
前記建築用パネルは、下面側が現し天井面となる床パネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建築用パネルの意匠性を良好に維持しつつ、吊り上げ作業を容易且つ確実に行うことができる建築用パネルの吊り上げ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建築用パネルの吊り上げ方法に使用する吊り具の平面図である。
【
図3】
図1に示す吊り具が固定される建築用パネルの一例を示す平面図である。
【
図4】吊り具が固定された建築用パネルの要部断面図である。
【
図5】
図3に示す建築用パネルを吊り上げた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建築用パネルの吊り上げ方法に使用する吊り具の平面図である。また、
図2は、
図1に示す吊り具の正面図である。
図1および
図2に示す吊り具1はステンレス等の金属製であり、円盤状の基板2と、基板2に支持された取付部材3とを備えている。
【0013】
基板2の上面側には、一対の直線部11,12が直交する十字状のリブ10が溶接等により固定されている。直線部11,12が交差するリブ10の中央には、中心部にネジ孔を有する筒状の支持部7が設けられている。基板2がリブ10によって区画された4つの区画部には、ビス(図示せず)が挿入される貫通孔2aがそれぞれ形成されている。貫通孔2aは、ビスの頭部を基板2の上面と面一に保持できるように、皿孔加工により形成されている。
【0014】
取付部材3は、ブロック状の本体4と、本体4の上面から上方に向けて逆U字状に突出する係合部5とを備えている。本体4の中央には、ボルト6が挿通される挿通孔が形成されており、挿通されたボルト6の先端部を支持部7のネジ孔に螺合することにより、取付部材3がボルト6の軸周りに回転可能に支持されている。
【0015】
本実施形態の建築用パネルの吊り上げ方法は、まず、上記の構成を備える吊り具1を建築用パネルの上面に固定する。使用される建築用パネルは、複数のラミナ(ひき板)を繊維方向が上下で直交するように3層以上積層して構成された直交集成板(CLT)であり、建築用パネルの形状や大きさ等に合わせて適宜の数の吊り具1を使用する。
【0016】
例えば、
図3に示す矩形平板状の直交集成板からなる建築用パネル100を吊り上げる場合、玉掛け作業の荷重計算により建築用パネル100の上面に設定した仮想領域である矩形領域Aの四隅に、4つの吊り具1をそれぞれ配置する。このとき、リブ10を構成する一対の直線部11,12の一部(
図3では、直線部11)が、矩形領域Aの対角線D1,D2に沿うように、各吊り具1の向きを合わせる。
【0017】
この後、吊り具1の4つの貫通孔にそれぞれビスを挿入し、インパクトドライバ等で建築用パネル100にねじ込むことにより、各吊り具1を建築用パネル100に固定する。使用されるビスは特に限定されないが、木材用のものが好ましく、例えば、シネジック株式会社製の「パネリード(登録商標)S」のM8シリーズ(直径8mm)を好適に使用することができる。
【0018】
ビスの長さは、建築用パネル100を貫通しない長さで、且つ、建築用パネル100を構成する複数のラミナの三層以上にねじ込まれるように、設定される。例えば、
図4に断面図で示すように、建築用パネル100が、厚み30mmの5つのラミナ層101~105により構成された直交集成板の場合、ビス20の長さを110mmとすることにより、建築用パネル100の上面側から四層のラミナ層101~104にビス20がねじ込まれる。ビス20の長さを例えば80mmとして、ビス20を3つのラミナ層101~103にねじ込んでもよく、あるいは、ビス20の先端を最下層のラミナ層105の途中まで到達させて、ビス20を5つのラミナ層101~105にねじ込んでもよい。
【0019】
各ラミナ層101~105の繊維方向は、隣接する上下の層間で互いに直交するため、ビス20のネジ山等が三層以上のラミナ層と係合することで木質繊維と種々の方向に絡み合い、ビス20が建築用パネル100に強固に固定される。また、ラミナ層のいずれかに形成された節穴をビス20が通過した場合でも、残りの複数のラミナ層との係合によってビス20の取付強度の低下が抑制される。したがって、建築用パネル100に対する吊り具1の固定を容易且つ確実に行うことができる。
【0020】
こうして、4つの吊り具1を建築用パネル100の上面にそれぞれ固定した後、
図5に示すように、スリングやワイヤー等の紐状部材30の先端金具を各吊り具1に取り付けて、従来と同様にクレーン等により吊り上げる。
図5に示す紐状部材30の吊り角度αは、必ずしも限定されないが、例えば、約60度に設定することが好ましい。
【0021】
本発明の建築用パネルの吊り上げ方法は、床パネルを2階以上の上階に吊り上げる用途に好適に使用することができ、吊り上げた床パネルを梁上に降ろす際に、既設の床パネルに対して隙間が生じないように隣接させることができるので、施工作業の迅速化を図ることができる。また、床パネルから吊り具を取り外した後のビス孔は、床パネルの下面側には露出しないため、例えば、この床パネルの下面側を階下の現し天井面とした場合でも、意匠性を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 吊り具
2 基板
2a 貫通孔
3 取付部材
10 リブ
20 ビス
30 紐状部材
100 建築用パネル