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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164197
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】水蒸気プラズマ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/06 20060101AFI20221020BHJP
   A61L 2/14 20060101ALI20221020BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H05B6/06 391
A61L2/14
H05H1/24
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069535
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】519105762
【氏名又は名称】抗酸化食品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521161381
【氏名又は名称】鈴木 毅
(71)【出願人】
【識別番号】521165024
【氏名又は名称】北田 靖則
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅
【テーマコード(参考)】
2G084
3K059
4C058
【Fターム(参考)】
2G084AA25
2G084BB03
2G084CC13
2G084CC34
2G084DD03
2G084DD13
2G084FF32
3K059AA02
3K059AA08
3K059AB28
3K059AC69
3K059CD14
3K059CD37
4C058AA21
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD04
4C058DD07
4C058EE26
4C058KK06
(57)【要約】
【課題】 安定して目的の殺菌効果を実現する水蒸気プラズマ生成装置を提供すること。
【解決手段】 水蒸気通路を有する導電性の被加熱体7と、被加熱体7に巻き回され、被加熱体を高周波誘導加熱するコイル9と、被加熱体7の水蒸気通路に水蒸気を供給するボイラー6と、コイル9に対して高周波電力を出力するインバータ10と、ボイラー6から被加熱体7の水蒸気通路に供給される水蒸気流量を検出する流量検出手段14と、水蒸気流量を制御する水蒸気流量制御部13aと、インバータ10からの高周波出力を制御する高周波出力制御部10aとを備え、上記水蒸気流量制御バルブ13,水蒸気流量制御部13a及び上記高周波出力制御手段10aのいずれか一方もしくは双方が、流量検出手段14の検出流量に応じて動作し、上記水蒸気流量及び上記高周波出力のいずれか一方もしくは双方を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気通路を有する導電性の被加熱体と、
上記被加熱体に巻き回され、上記被加熱体を高周波誘導加熱するコイルと、
上記被加熱体の水蒸気通路に水蒸気を供給するボイラーと、
上記コイルに対して高周波電力を出力するインバータとを備え、
上記水蒸気通路の排出側に接続された処理室内の処理対象に向かって水蒸気プラズマを照射する水蒸気プラズマ生成装置であって、
上記ボイラーから上記被加熱体の水蒸気通路に供給される水蒸気流量を検出する流量検出手段と、
上記水蒸気流量を制御する水蒸気流量制御手段と、
上記インバータからの高周波出力を制御する高周波出力制御手段とを備え、
上記水蒸気流量制御手段及び上記高周波出力制御手段のいずれか一方もしくは双方が、上記水蒸気流量検出手段の検出流量に応じて動作し、上記水蒸気流量及び上記高周波出力のいずれか一方もしくは双方を制御する水蒸気プラズマ生成装置。
【請求項2】
上記水蒸気流量制御手段及び上記高周波出力制御手段は、上記流量検出手段の検出流量と予め設定した設定値との差分を基に上記水蒸気流量及び上記高周波出力を制御するとともに、上記高周波出力の制御の開始時から予め設定した時間経過後、当該制御を終了する請求項1に記載の水蒸気プラズマ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品などの殺菌に用いる水蒸気プラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品や食品原料などを、その栄養価を損なわずに殺菌するために、水蒸気プラズマが用いられることがある。殺菌能力の高い水蒸気プラズマは、短時間の照射で目的の殺菌効果が得られるため、処理対象が高温に曝される時間を短くできるからである。
また、水蒸気プラズマを生成する装置として、例えば特許文献1に示すものが知られている。
この水蒸気プラズマ生成装置は、ボイラーから供給される水蒸気を、導電性の被加熱体に形成された水蒸気通路を通過させる過程で加熱し、水蒸気プラズマとして処理対象が供給される処理室内へ放出する装置である。
【0003】
上記被加熱体には、コイルが巻き回され、このコイルにインバータによって高周波電力を供給し、電磁誘導によって被加熱体を加熱するようにしている。
また、被加熱体に形成された水蒸気通路は、ボイラーから処理室に向かって流路断面積が小さくなるように形成され、通過する水蒸気を高圧に保ち、熱と圧力とによって高温、例えば数百度以上の水蒸気プラズマが生成されるようにしている。
処理室には高温の水蒸気プラズマが供給されるため、処理室内の処理対象を瞬時に殺菌することができる。処理対象に、高温の水蒸気プラズマが照射される時間が短かければ、食品が熱で変質しにくく、味や栄養価が損なわれることがない。
【0004】
上記したように、処理対象を変質させずに殺菌するためには、短時間で殺菌効果のある水蒸気プラズマが、処理室に安定して供給されることが必要である。そこで、処理室の水蒸気プラズマの供給口付近に、温度センサを設け、その検出温度によって目的の水蒸気プラズマが供給されているか否かを確認し、処理対象の加熱温度を制御するようにしていた。具体的には、温度を検出し、その検出温度が処理対象に応じて設定された設定温度より低くなった場合にはインバータの高周波出力を上げ、設定温度より高くなった場合にはインバータの高周波出力を下げるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4838364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の水蒸気プラズマ生成装置では、処理室に供給される水蒸気プラズマの温度を検出して、その検出値に応じてインバータの高周波出力を増減し、水蒸気プラズマの温度を制御するようにしていたが、水蒸気プラズマ温度が安定しにくく、均一な殺菌効果が得られないことがあった。
本願発明の目的は、安定して目的の殺菌効果を実現できる水蒸気プラズマ生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、水蒸気通路を有する導電性の被加熱体と、上記被加熱体に巻き回され、上記被加熱体を高周波誘導加熱するコイルと、上記被加熱体の水蒸気通路に水蒸気を供給するボイラーと、上記コイルに対して高周波電力を出力するインバータとを備え、上記水蒸気通路の排出側に接続された処理室内の処理対象に向かって水蒸気プラズマを照射する水蒸気プラズマ生成装置であって、上記ボイラーから上記被加熱体の水蒸気通路に供給される水蒸気流量を検出する流量検出手段と、上記水蒸気流量を制御する水蒸気流量制御手段と、上記インバータからの高周波出力を制御する高周波出力制御手段とを備え、上記水蒸気流量制御手段及び上記高周波出力制御手段のいずれか一方もしくは双方が、上記水蒸気流量検出手段の検出流量に応じて動作し、上記水蒸気流量及び上記高周波出力のいずれか一方もしくは双方を制御する。
【0008】
第2の発明は、上記水蒸気制御手段及び上記高周波制御手段は、上記流量検出手段の検出流量と予め設定した設定値との差分を基に上記水蒸気流量及び上記高周波出力を制御するとともに、上記高周波出力の制御の開始時から予め設定した時間経過後、当該制御を終了する。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、特に水蒸気プラズマの温度変動の要因となるボイラーから放出される水蒸気流量の変動に応じて水蒸気流量または高周波出力を制御することで、被加熱体を通過する水蒸気の温度を制御できる。水蒸気流量が変動することで水蒸気の温度が変化するが、被加熱体より上流側で検出した水蒸気流量に応じて水蒸気流量や高周波出力を制御するので、被加熱体を通過して生成される水蒸気プラズマの温度を安定させやすい。
したがって、処理室に供給される水蒸気プラズマの温度や流量が安定し、水蒸気プラズマによる目的の殺菌効果を安定的に実現することができる。
特に、水蒸気流量と高周波出力とを同時に制御することで、より安定して水蒸気プラズマを生成させることができる。
【0010】
第2の発明によれば、より効果的に水蒸気流量と高周波出力とを同時に制御でき、より安定して水蒸気プラズマを生成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態の水蒸気プラズマ生成装置の概略図である。
図2図2は、第1実施形態の制御例を示したフローチャートである。
図3図3は、第2実施形態の水蒸気プラズマ生成装置の概略図である。
図4図4は、第2実施形態の制御例を示したフローチャートである。
図5図5は、第3実施形態の制御例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下に、この発明の第1実施形態を説明する。図1は、この第1実施形態の水蒸気プラズマ生成装置の概略図であり、図2は第1実施形態の水蒸気プラズマ生成装置の制御例を示したフローチャートである。
第1実施形態の水蒸気プラズマ生成装置1は、図1に示すように、処理室2にホッパー3を介して投入される米糠などの粉末状の食品(処理対象)に照射して殺菌するための水蒸気プラズマを生成する装置である。処理室2の下方には殺菌処理済みの処理対象を回収する回収容器4が設けられている。
【0013】
また、上記水蒸気プラズマ生成装置1は、特許文献1に記載された従来のプラズマ生成装置と同様に、供給された水蒸気を水蒸気プラズマとして放出する加熱部5と、この加熱部5に供給される水蒸気を生成するボイラー6とを備えている。
上記加熱部5は、図示していない水蒸気通路が形成された導電性を有する被加熱体7の周囲に断熱材8を介してコイル9が巻きつけられ、このコイル9は、当該コイル9に高周波電力を供給するインバータ10が接続されている。このインバータ10には、その高周波出力を制御するための高周波出力制御部10aが備わっている。
【0014】
上記被加熱体7は水蒸気通路を構成する複数の貫通孔を備えた複数の円盤部材で構成されている。各円盤部材は、水蒸気の流れを基準に上流から下流に向かい並んで配置されている。そして、各円盤部材は、形成された貫通孔の数が異なり、水蒸気の流れを基準に上流から下流に向かって円盤部材に形成された貫通孔の数が少なくなるように組合わされている。これにより、水蒸気通路を通過する水蒸気が高圧になるようにしている(特許文献1参照)。
なお、上記コイル9は中空の導線で形成され、内部に、チラー装置11から冷却水を供給することによって、コイル9の温度上昇を抑え、結果として電磁誘導による被加熱体の温度の安定化を図るようにしている。
【0015】
ボイラー6と加熱部5とは配管12で接続されているが、この配管12には、配管12を通過して加熱部5内に供給される水蒸気の流量を制御するための水蒸気流量制御バルブ13と、配管12内の水蒸気流量を検出する流量検出手段である流量計14とが設けられている。流量計14は、水蒸気流量制御バルブ13の下流側に配置されている。流量計14は、その検出値に応じた検出信号を、上記インバータ10の高周波出力制御部10aに対して出力する。
【0016】
また、水蒸気流量制御バルブ13は、その開度を制御する水蒸気流量制御部13aを備えている。
さらに、処理対象が供給される処理室2には、その内部温度を検出する温度計15が設けられている。
【0017】
[作用・効果等]
上記のように構成された水蒸気プラズマ生成装置を用いて、処理室2内の処理対象に水蒸気プラズマを照射する際には、ボイラー6で生成された水蒸気の配管12における水蒸気流量に応じて、インバータ10の高周波出力を制御して、被加熱体の温度を制御し、水蒸気プラズマの温度を制御する。この第1実施形態では、高周波出力制御部10aが、上記流量計14の検出流量に応じて動作し、インバータ10の高周波出力を制御する高周波出力制御手段である。上記高周波出力制御部10aによる高周波出力の制御を、図2に示すフローチャートにしたがって説明する。
【0018】
まず、処理対象が決定したら、その種類と処理室2への供給速度等に応じて、ボイラー6から加熱部5へ供給する水蒸気流量が設定流量(予め設定した設定値)Aになるように水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御するとともに、高周波出力制御部10aによってインバータ10の高周波出力を設定出力W1に制御する(ステップS1)。これら設定流量Aと設定出力W1とは、処理対象の種類及び処理量等に応じて、殺菌に必要な水蒸気プラズマ量と必要な温度とを基に予め決定された値である。
【0019】
ステップS2では、流量計14が水蒸気流量を検出し、その検出流量F1に対応する検出信号をインバータ10の高周波出力制御部10aへ送信する。
ステップS3で、検出流量F1と上記設定流量Aとを対比し、検出流量F1が設定流量Aより多い場合にはステップS4に進み、高周波出力制御部10aは、高周波出力Wを上昇させてからステップS8へ進む。例えば、ステップS4では、高周波出力制御部10aは、検出流量F1と設定流量Aの差分(F1-A)に応じて高周波出力Wを増加させる。ステップS3で検出流量F1が設定流量Aより多い場合には(F1>A)、加熱部5に供給されて加熱される水蒸気流量が設定流量Aより多くなるため、生成される水蒸気プラズマの温度が目的より低くなることが想定される。したがって、ステップS4では高周波出力制御部10aが高周波出力Wを増加させて温度低下を抑えるようにする。
【0020】
一方、ステップS3で、検出流量F1が設定流量A以下だった場合には(F1≦A)、ステップS5に進み、さらに検出流量F1が設定流量Aより少なければ(F1<A)、ステップS6へ進み、高周波出力制御部10aが高周波出力Wを減少させてからステップS8に進む。例えば、ステップS6では、高周波出力制御部10aは、検出流量F1と設定流量Aの差分(A-F1)に応じて高周波出力Wを減少させる。ステップS4で検出流量F1が設定流量Aより少ない場合には、加熱部5に供給されて加熱される水蒸気流量が設定流量Aより少なくなるため、生成される水蒸気プラズマの温度が目的より高くなることが想定される。したがって、ステップS6では高周波出力制御部10aが高周波出力Wを減少させて高温になり過ぎることを防止する。
【0021】
また、ステップS5で検出流量F1が設定流量Aと同じ(F1=A)だった場合、ステップS7へ進み、高周波出力制御部10aは高周波出力Wを設定出力W1にしてからステップS8へ進む。ステップS5で検出流量F1が設定流量Aと同じということは、検出流量F1が設定流量Aということなので、ステップS7では高周波出力制御部10aが高周波出力Wを設定出力W1に制御して、生成される水蒸気プラズマを目的の温度に保つようにする。
【0022】
ステップS8で、処理の終了指令が入力されれば処理を終了し、終了指令の入力がなければステップS2に戻り、終了指令が入力されるまで、ステップS2からステップS8までを繰り返す。上記終了指令とは、インバータ10の高周波出力制御部10aまたはインバータ10の動作を停止させるオフ信号で、作業員が手動でスイッチを操作してもよいし、処理対象の回収完了などを検出して、高周波出力制御部10aに終了指令が自動的に入力されるようにしてもよい。
【0023】
なお、ステップS3~ステップS7は、検出流量F1が設定流量Aに対して多いか、少ないか、あるいは等しいかを区別し、それに応じて高周波出力Wを制御するステップであればよく、その順序などは図2に示す通りでなくてもよい。
また、上記ステップS4やステップS6では、高周波出力の増減幅ΔWを予め設定しておき、高周波出力制御部10aがその増減幅ΔW分だけ、高周波出力Wを増減させるようにしてもよい。
上記のようにこの第1実施形態は、加熱部5または被加熱体7の上流側で検出される水蒸気流量の変化に応じて、インバータ10の高周波出力を制御し、生成される水蒸気プラズマの温度を目的の温度に保つようにしている。
【0024】
加熱部5で加熱され生成される水蒸気プラズマの温度は、加熱部5に供給される水蒸気の流量とインバータ10の高周波出力の両方に応じて変化するが、一般にボイラーの構造等の理由からボイラー6から放出される水蒸気流量は変動しやすく、水蒸気プラズマ温度に対するその影響が大きい。そこで、この第1実施形態では、温度の大きな変動要因となる水蒸気流量に着目し、加熱部5の上流側で検出した水蒸気流量の変化に応じて高周波出力を制御することで、加熱部5で生成される水蒸気プラズマの温度を安定させるようにしている。
【0025】
その結果、処理室2内の処理対象に対し、常時安定した温度の水蒸気プラズマを照射でき、均一な殺菌処理を確実に実現できるようになる。
また、上記温度計15によって処理室2内の温度を検知すれば、処理室2へ水蒸気プラズマが正常に供給されているか否かを監視することができる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。図3は、この第2実施形態の水蒸気プラズマ生成装置の概略図であり、図4は第2実施形態の水蒸気プラズマ生成装置の制御例を示したフローチャートである。
図3に示す第2実施形態の水蒸気プラズマ生成装置20は、図1に示す第1実施形態と同様に、供給された水蒸気を高温の水蒸気プラズマとして処理室2に供給する加熱部5と、ボイラー6と、インバータ10と、チラー装置11とを備えている。図3において、図1と同じ符号を付した構成要素は、第1実施形態と同様に機能する。
【0027】
ただし、この第2実施形態では、水蒸気流量制御バルブ13の水蒸気流量制御部13aが、外部から入力される信号に応じて水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御する機能を有する。水蒸気流量制御部13aには流量計14の検出信号を入力する信号線が接続され、水蒸気流量制御部13aは、流量計14の検出信号に応じて水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御している。一方、この第2実施形態では、流量計14の検出信号がインバータ10の高周波出力制御部10aには入力されない。すなわち、インバータ10の高周波出力制御部10aが流量計14の検出信号を基に高周波出力Wを制御するようなことはしていない。その他の構成は、第1,第2実施形態とも同じである。
【0028】
[作用・効果等]
第2実施形態では、流量計14で検出される水蒸気流量に基づいて、水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御する。水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御することで、水蒸気流量が制御され、処理室2に供給する水蒸気プラズマを安定させるようにしている。
この第2実施形態では、上記水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御する水蒸気流量制御部13aが、流量計14の検出流量に応じて動作し、水蒸気流量を制御する水蒸気流量制御手段である。
【0029】
第2実施形態における、水蒸気流量の制御を、図4に示すフローチャートにしたがって説明する。
この第2実施形態でも、ステップS11では、処理対象の種類と処理室2への供給速度等に応じて、ボイラー6から加熱部5へ供給する水蒸気流量と、インバータ10の高周波出力とを、それぞれ設定流量A、設定出力W1に制御する。これら設定流量Aと設定出力W1とは、処理対象の種類及び処理量等に応じて、殺菌に必要な水蒸気プラズマ量と必要な温度とを基に予め決定された値である。
【0030】
ステップS12では、流量計14が水蒸気流量を検出し、その検出流量F1に対応した検出信号を水蒸気流量制御バルブ13の水蒸気流量制御部13aへ送信する。
ステップS13で、水蒸気流量制御部13aは、検出流量F1と上記設定流量Aとを対比し、検出流量F1が設定流量Aより多い場合にはステップS14に進み、水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量制御バルブ13の開度を小さくして流量を減少させてからステップS17へ進む。例えば、ステップS14では、水蒸気流量制御部13aは、検出流量F1と設定流量Aの差分(F1-A)に応じて水蒸気流量制御バルブ13の開度を小さくする。ステップS13で検出流量F1が設定流量Aより多い場合には、生成される水蒸気プラズマの温度が目的より低くなることが想定される。したがって、ステップS14では水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量Fを減少させて水蒸気プラズマの温度低下を抑えるようにする。
【0031】
一方、ステップS13で、検出流量F1が設定流量A以下だった場合にはステップS15へ進み、さらに検出流量F1が設定流量Aより小さければステップS16へ進んで水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量制御バルブ13の開度を大きくなるように制御して水蒸気流量Fを増加させてからステップS17に進む。例えば、ステップS16では、水蒸気流量制御部13aは、検出流量F1と設定流量Aの差分(A-F1)に応じて水蒸気流量制御バルブ13の開度を大きくする。ステップS15で検出流量F1が設定流量Aより小さい場合には、加熱部5に供給される水蒸気流量が設定流量Aより少ないため、生成される水蒸気プラズマの温度が目的より高くなることが想定される。したがって、ステップS16では水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量Fを増加させ、水蒸気プラズマが高温になり過ぎることを防止している。
【0032】
また、ステップS15で検出流量F1と設定流量Aとが等しい場合には、水蒸気流量制御部13aは特別な制御をせず、ステップS12へ戻る。つまり、設定流量Aを維持し、水蒸気プラズマを目的の温度に保つようにしている。
【0033】
ステップS17では、処理の終了指令が入力されれば処理を終了し、終了指令がなければステップS12に戻り、終了指令が入力されるまで、ステップS12からステップS17までを繰り返す。上記終了指令とは、上記第1実施形態の場合と同じである。
【0034】
また、ステップS13~ステップS16は、検出流量F1が設定流量Aに対して大きいか、小さいか、あるいは等しいかを区別し、それに応じて水蒸気流量Fを制御するステップであればよく、その順序などは図4に限定されない。
また、上記ステップS14やステップS16では、水蒸気流量の増減幅ΔFを予め設定しておき、その増減幅ΔF分の水蒸気流量Fが増減されるように、水蒸気流量制御部13aが、水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御するようにしてもよいし、設定流量Aに一気に近づけるように水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御して水蒸気流量Fを増減するようにしてもよい。
【0035】
上記のようにこの第2実施形態は、水蒸気流量の変化に応じて、水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御して水蒸気流量Fを制御し、生成される水蒸気プラズマの温度を目的温度に保つようにしている。
加熱部5で生成される水蒸気プラズマの温度は、加熱部5に供給される水蒸気の流量とインバータ10の高周波出力の両方に応じて変化するが、この第2実施形態では、インバータ10の高周波出力は、第1実施形態のように流量計14の検出信号を基に制御するようなことはしていない。
【0036】
第2実施形態は、ボイラー6から放出される水蒸気流量は変動しやすく、インバータ10が、設定された出力値を安定して出力できる装置である場合に、特に有効に機能し、一定の温度と一定の量の水蒸気プラズマを生成できる。その結果、処理室2内の処理対象に対し、常時安定した温度と量の水蒸気プラズマを照射でき、均一な殺菌処理が確実にできる。
また、上記温度計15によって処理室2内の温度を検知すれば、処理室2へ水蒸気プラズマが正常に供給されているか否かを監視することができる。
【0037】
[第3実施形態]
図5を用いて、第3実施形態を説明する。図5は、第3実施形態の制御例を示したフローチャートである。
第3実施形態の水蒸気プラズマ装置は、図示していないが、図1に示した第1実施形態の水蒸気プラズマ生成装置1の水蒸気流量制御バルブ13の水蒸気流量制御部13aに、図3の第2実施形態と同様に、流量計14の検出信号が入力されるようにしている。つまり、第3実施形態は、水蒸気の検出流量に応じて動作する水蒸気流量制御手段と、水蒸気の検出流量に応じて動作してインバータの高周波出力を制御する高周波出力制御手段とを備えている。
その他は、第1実施形態と同様の構成である。したがって、上記第1実施形態と同様の構成要素には、図1と同じ符号を用い、以下の説明にも図1を参照する。
【0038】
[作用・効果等]
この第3実施形態は、ボイラー6から放出される水蒸気の配管12における検出流量に応じて、水蒸気流量制御バルブ13の開度及び、インバータ10の高周波出力を制御するものである。これらの制御を図5のフローチャートにしたがって説明する。
【0039】
まず、ステップS21で、上記他の実施形態と同様に、水蒸気流量Fと高周波出力Wとが、処理対象の種類と量に応じた設定流量Aと設定出力W1とに設定される。
ステップS22で流量計14が配管12の水蒸気流量を検出し、その検出信号が水蒸気流量制御バルブ13の水蒸気流量制御部13aとインバータ10の高周波出力制御部10aに入力される。
ステップS23で、上記水蒸気流量制御部13a及び高周波出力制御部10aに入力された検出流量F1が設定流量Aより多ければステップS24に進み、検出流量F1が設定流量A以下ならステップS27に進む。
【0040】
ステップS24では水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御して水蒸気流量Fを減少させ、ステップS25で高周波出力制御部10aが高周波出力Wを増加させる。
上記ステップS23からステップS24に進むのは、検出流量F1が設定流量Aより多い場合なので、加熱部5から放出される水蒸気プラズマの温度が低くなると想定されるが、ステップS24で水蒸気流量Fを減少させるとともにステップS25で高周波出力Wを増加させることで、水蒸気プラズマの温度を速やかに上昇させることができる。
【0041】
その後、ステップS26で高周波出力Wを、ステップS25で増加させる前(元)の出力値に戻してステップS32に進む。ここで、高周波出力制御部10aは、高周波出力Wの増加を開始させた時点から予め設定した時間経過後、高周波出力Wを前(元)の出力値に戻す。これにより、ステップS24,S25によって水蒸気プラズマの温度が急上昇しても上がり過ぎることを防止できる。
【0042】
一方、検出流量F1が設定流量Aより少ない場合には、ステップS27からステップS28に進み、水蒸気流量制御部13aが水蒸気流量制御バルブ13の開度を制御して水蒸気流量Fを増加させる。さらに、ステップS29で高周波出力制御部10aがインバータの高周波出力Wを減少させる。これによって、水蒸気流量Fが設定流量Aよりも少なくて高くなり過ぎた水蒸気プラズマ温度を、速やかに下げることができる。
【0043】
その後、ステップS30で高周波出力制御部10aが高周波出力Wを、ステップS29で低下させる前(元)の出力値に戻してステップS32へ進む。ここで、高周波出力制御部10aは、高周波出力Wを低下開始させた時点から予め設定した時間経過後、前(元)の出力値に戻す。これにより、ステップS28,S29によって水蒸気プラズマの温度が急降下しても下がり過ぎることを防止できる。
【0044】
また、検出流量F1と設定流量Aとが等しい場合には、ステップS27からステップS31に進み、高周波出力制御部10aが高周波出力Wを設定出力W1にしてステップS32へ進む。
そして、ステップS32で、終了指令が入力されるまで、ステップS22へ戻り、ステップS22~ステップS31までの処理を繰り返す。
【0045】
なお、ステップS24やステップS28で増減する水蒸気流量の増減幅ΔFを、予め設定しておいてもよいし、検出流量F1が設定流量Aになるまで増減させてもよい。
ステップS25やステップS29で、増減させる高周波出力Wの増減幅ΔWも予め設定しておけばよい。
【0046】
この第3実施形態では、ボイラー6から放出される水蒸気流量の変動によって水蒸気プラズマ温度が上下した場合、水蒸気流量Fと高周波出力Wの両方を制御することで、水蒸気プラズマ温度を速やかに目的の温度に戻すことができる。その結果、処理室2内の処理対象に対し、常時安定した温度の水蒸気プラズマを照射でき、均一な殺菌処理ができる。
また、上記温度計15によって処理室2内の温度を検知すれば、処理室2へ水蒸気プラズマが正常に供給されているか否かを監視することもできる。
【0047】
なお、上記第1~第3実施形態では、水蒸気流量を制御する水蒸気流量制御手段として、水蒸気流量制御バルブ13及び水蒸気流量制御部13aを例にしているが、水蒸気流量制御手段はバルブの開度制御に限らない。例えば、ボイラー6のパワーを制御し、生成される水蒸気流量を制御することもできる。
【0048】
また、処理室2に供給される水蒸気プラズマの温度は、水蒸気流量F及び高周波出力Wだけでなく、装置の設置環境の影響も受ける。例えば、環境温度に応じて、水蒸気流量や高周波出力を制御するようにしてもよい。
【0049】
さらに、処理室2へ供給される水蒸気プラズマの量や温度を安定させたとしても、処理室2に供給される被処理対象の量や特性に偏りがあれば、均一な処理が難しい場合もある。例えば、処理室2への処理対象の投入速度が一定でなかったり、処理対象の含水量などが部分的に異なっていたりした場合には、均一な処理ができない可能性がある。
このように処理対象が不均一な場合には、処理中の処理室2内の温度も変動するので、上記温度計15によって検出された処理室2内の温度変化を、上記水蒸気流量制御部13aや高周波出力制御部10aにフィードバックして、水蒸気流量や高周波出力を制御するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
短時間での殺菌処理に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1,20 水蒸気プラズマ生成装置
2 処理室
5 加熱部
6 ボイラー
7 被加熱体
9 コイル
10 インバータ
10a (高周波出力制御手段)高周波出力制御部
13 水蒸気流量制御バルブ
13a (水蒸気流量制御手段)水蒸気流量制御部
14 (流量検出手段)流量計
図1
図2
図3
図4
図5