(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016420
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】少なくとも1つの送信コイル、絶対位置受信コイル対、高分解能位置受信コイル対、および導電性移動ターゲットを備えた誘導位置センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G01D5/245 E
G01D5/245 110R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114325
(22)【出願日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】20185164
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21178772
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・ピヒラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ブチンガー
(72)【発明者】
【氏名】ルッジェーロ レオンカヴァッロ
(72)【発明者】
【氏名】ベンス ゴンバー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ハートル
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077AA27
2F077CC07
2F077NN02
2F077NN05
2F077NN23
2F077PP21
(57)【要約】
【課題】絶対的で高分解能の位置データを提供するととも、プリント回路基板上に最小のスペースを必要とする誘導位置センサを提供する。
【解決手段】本発明は、誘導位置センサに関し、その誘導位置センサは、少なくとも1つの送信コイル、絶対位置受信コイル対、高分解能位置受信コイル対、および導電性移動ターゲットを備え、絶対位置受信コイル対と高分解能受信コイル対は一緒に誘導位置センサの測定領域を定義し、移動ターゲットはこの測定領域内で移動可能であり、絶対位置コイル対は、第1の正弦受信コイルおよび第1の余弦受信コイルを有し、両者は、誘導位置センサの測定領域にわたって1周期を有し、高分解能位置受信コイル対は、第2の正弦受信コイルおよび第2の余弦受信コイルを有し、両者は、誘導位置センサの測定領域にわたって少なくとも2周期を有し、絶対位置受信コイル対と高分解能位置受信コイル対は、誘導位置センサのプリント回路基板の同じ領域に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの送信コイル、絶対位置受信コイル対、高分解能位置受信コイル対、および導電性移動ターゲットを備える誘導位置センサであって、
前記絶対位置受信コイル対と前記高分解能受信コイル対は一緒に、前記誘導位置センサの測定領域を定義し、前記導電性移動ターゲットは前記測定領域内を移動可能であり、
前記絶対位置コイル対は、第1の正弦受信コイルおよび第1の余弦受信コイルを有し、前記誘導位置センサの前記測定領域にわたって1周期を有し、
前記高分解能位置受信コイル対は、第2の正弦受信コイルおよび第2の余弦受信コイルを有し、前記誘導位置センサの前記測定領域にわたって少なくとも2周期を有し、
前記絶対位置受信コイル対と高分解能位置受信コイル対は、前記誘導位置センサのプリント回路基板の同じ領域内に配置されている、
誘導位置センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導位置センサにおいて、前記誘導位置センサは、径方向位置センサであり、前記測定領域は360°の円である、誘導位置センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導位置センサにおいて、前記誘導位置センサは線形位置センサであり、前記測定領域は直線である、誘導位置センサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の誘導位置センサにおいて、少なくとも1つの送信コイルに信号を提供するため、および/または、前記絶対位置受信コイル対と前記高分解能受信コイル対の信号を処理するための信号処理ユニットをさらに備える、誘導位置センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の誘導位置センサにおいて、前記信号処理ユニットは、前記プリント回路基板上に配置され、または、前記プリント回路基板に外部接続される、誘導位置センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の誘導位置センサにおいて、前記導電性移動ターゲットは、互いに間隔を置いて配置された複数のセグメントを備える、誘導位置センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の誘導位置センサにおいて、前記導電性移動ターゲットの前記複数のセグメントが同じ形状および/または間隔を有する、誘導位置センサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の誘導位置センサにおいて、前記導電性移動ターゲットは、少なくとも1つの第1のターゲット要素および少なくとも1つの第2のターゲット要素を備え、前記少なくとも1つの第1のターゲット要素は、前記少なくとも1つの第2のターゲット要素の形状と異なる、誘導位置センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の誘導位置センサにおいて、前記複数のセグメントは、前記誘導位置センサの前記測定領域を完全に覆い、または、前記少なくとも1つの第2のターゲット要素によって覆われていない前記誘導位置センサの前記測定領域を覆う、誘導位置センサ。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか一項に記載の誘導位置センサにおいて、前記少なくとも1つの第2のターゲット要素が、前記測定領域の一部を覆う、誘導位置センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の誘導位置センサにおいて、前記少なくとも1つの第2のターゲット要素が、半円形状、完全なリング形状の円弧セグメント、長方形状、または、矢印形状を有する、誘導位置センサ。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の誘導位置センサにおいて、前記少なくとも1つの第1のターゲット要素および前記少なくとも1つの第2のターゲット要素が互いに隣接して配置され、または、少なくとも部分的に互いに重なり合う、誘導位置センサ。
【請求項13】
請求項12に記載の誘導位置センサにおいて、前記少なくとも1つの第1のターゲット要素および前記少なくとも1つの第2のターゲット要素は、完全に重なり合っているが、異なるサイズを有する、誘導位置センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの送信コイル、絶対位置受信コイル対、高分解能位置受信コイル対、および導電性移動ターゲットを備えた誘導位置センサに関する。本発明はさらに、そのような誘導位置センサの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導位置センサは、環境の影響に対するロバスト性(環境安定性)のために非常に人気がある。特にスルーシャフトアプリケーションの場合、コイル設計の設計柔軟性のために誘導位置センサは魅力的であり、たとえば軸上および軸外の位置検出アプリケーションに簡単に適応可能である。
【0003】
これらの利益は、多くの産業用または自動車用アプリケーションにおいて大きな利点である。しかし、多くの場合、産業用またはロボット工学のアプリケーションでは、1つの絶対誘導位置センサだけでは不可能なより高い出力分解能が必要である。その上、一部の自動車用アプリケーションでは、ステアリングセンサやホイールハブトラクションモータ用センサのような絶対高分解能位置センサが必要とされる。
【0004】
誘導位置センサのセットアップは、通常、ハウジング内のセンサプリント回路基板(PCB)と、そのセンサの近くを移動する導電性移動ターゲットとからなる。
【0005】
センサPCBには、通常、特定用途向け集積回路(ASIC)である信号調整・処理ユニットと、ASICに接続されたセンサコイルシステムとが含まれる。
【0006】
センサコイルシステムは、1つまたは複数の送信コイルと、1つまたは複数の受信コイルとからなる。
【0007】
通常、1つの送信コイルと、2つの受信コイルが存在する。2つの受信コイルは、回転位置センサのターゲットが360°の機械的な回転をするたびに、一方が正弦信号を生成し、もう一方が余弦信号を生成するように配置されている。この構成は、ターゲットの絶対位置を提供する(絶対位置センサの実施形態)。360°を超える受信コイルパターンの数と適切なターゲット構成とを増やすことにより、正弦信号および余弦信号の繰り返しにおける物理的繰り返し数に等しい信号繰り返しの数を生成することによって回転ごとに測定の機械的精度と分解能とを向上させる(マルチ周期の高分解能位置センサの実施形態)。しかしながら、このような方法を使用すると、ターゲットの絶対位置が失われる。
【0008】
一般に、最先端のセンサは、2つの別個の絶対センサおよび増分センサと別個のターゲットとを使用するか、または、2つの別個のコイルシステムを隣り合わせに使用するかによって実装され得るが、このような実装はスペースを必要とする。
【0009】
別個のセンサの欠点は、たとえば、より厚いセンサ、2つのPCB、2つのターゲット、および評価ユニット(MCU)に接続するための追加の配線が、コストの増大につながることである。一方、隣り合った別個のコイルの欠点は、たとえば、縮小する機会が限定されているPCBのサイズ(コスト)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、絶対的で高分解能の位置データを提供するととも、プリント回路基板上に最小のスペースを必要とする誘導位置センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、その目的は、少なくとも1つの送信コイル、絶対位置受信コイル対、高分解能位置受信コイル対、および導電性移動ターゲットを備える誘導位置センサによって解決され、
当該誘導位置センサにおいては、絶対位置受信コイル対と高分解能受信コイル対が一緒に誘導位置センサの測定領域を定義し、移動ターゲットはこの測定領域内を移動することができ、
絶対位置受信コイル対は、第1の正弦受信コイルおよび第1の余弦受信コイルを有し、両者とも誘導位置センサの測定領域にわたって1周期を有し、
高分解能位置受信コイル対は、第2の正弦受信コイルおよび第2の余弦受信コイルを有し、両者とも誘導位置センサの測定領域にわたって少なくとも2周期を有し、
その特徴は、絶対位置受信コイル対と高分解能位置受信コイル対は、誘導位置センサのプリント回路基板の同じ領域内に配置されていることである。
【0012】
本発明は、低分解能の絶対位置センサを増分の高分解能位置センサに組み合わせる新しい方法を説明する。一般に、増分の高分解能位置センサの隣に絶対位置センサを組み合わせて使用するだけで簡単に可能であるが、このアプローチは通常では利用できない多くのスペースが必要である。
【0013】
本発明は、絶対位置センサをマルチ周期の高分解能位置センサと重ね合わせて、絶対位置を失うことなく機械的な精度および分解能を向上させる、革新的な実施形態に関するものである。その結果、高精度かつ高分解能の絶対位置センサを設計できる。
【0014】
本発明による新しい実装は、同じPCB領域に絶対コイルと高分解能コイルの両方を組み込んでいる。
【0015】
その効果は、たとえば、より小さなスペース内での実装が可能になることである。これは、1つのPCB、1つのターゲット、評価ユニットを同じPCB上に配置できるためである。その他の効果としては、軸上のスルーシャフトおよびサイドシャフトへの適用が可能である点、冗長な実装が可能である点、環境の影響に対する高いロバスト性を有する点、
漂遊磁気に対する耐性を有する点である。また、高分解能コイルのない絶対位置センサと比較して、より高い出力分解能を有することである。
【0016】
本発明の変形例によれば、誘導位置センサは径方向位置センサであり、測定領域は360°の円である。
【0017】
本発明の別の変形例によれば、誘導位置センサは線形位置センサであり、測定領域は直線である。
【0018】
好ましい変形例では、誘導位置センサは、少なくとも1つの送信コイルに信号を提供するためおよび/または絶対位置受信コイル対と高分解能受信コイル対との信号を処理するための信号処理ユニットを備える。信号処理ユニットは、誘導位置センサと同じプリント基板上に配置され、または、誘導位置センサのプリント基板に外部接続されている。
【0019】
センサ構成は、さまざまなターゲット構成で使用され得る。実装の性能は、ターゲット構成に大きく依存している。
【0020】
本発明の有利な変形例では、導電性移動ターゲットは、互いに間隔を置いて配置された複数のセグメントからなる。好ましくは、導電性移動ターゲットの複数のセグメントは、同じ形状および/または同じ間隔を有する。
【0021】
本発明の好ましい変形例によれば、導電性移動ターゲットは、少なくとも1つの第1のターゲット要素および少なくとも1つの第2のターゲット要素からなり、少なくとも1つの第1のターゲット要素の形状は、少なくとも1つの第2のターゲット要素の形状と異なっている。少なくとも1つの第1のターゲット要素および少なくとも1つの第2のターゲット要素は、好ましくは、プリント回路基板のような共通の基板上に配置される。たとえば、第1のターゲット要素および/または第2のターゲット要素は、複数のセグメントからなる。
【0022】
本発明による径方向の誘導位置センサの特に好ましい変形例では、少なくとも1つの第1のターゲット要素で覆われる径方向領域、特に少なくとも1つの第1のターゲット要素の各セグメントの径方向領域は、径方向に一定である。すなわち、各セグメントの幅は、中心から径方向外側へ絶えず増加する。
【0023】
本発明の変形例によれば、少なくとも1つの第1のターゲット要素、特に少なくとも1つの第1のターゲット要素の複数のセグメントは、誘導位置センサの全ての測定領域または少なくとも1つの第2のターゲット要素によって覆われない誘導位置センサの測定領域を覆っている。
【0024】
本発明の変形例によれば、少なくとも1つの第2のターゲット要素は、誘導位置センサの測定領域の一部を覆っている。好ましくは、少なくとも1つの第2のターゲット要素は、半円形状、完全なリング形状の円弧セグメント、長方形状、または矢印形状を有する。
【0025】
本発明による径方向の誘導位置センサの特に好ましい変形例では、少なくとも1つの第2のターゲット要素によって覆われた径方向領域は、径方向に変化する、すなわち、たとえば少なくとも1つの第2のターゲット要素の幅は、径方向(長方形状)に一定でありまたは径方向に覆われた領域と異なる速度の変化である(矢印形状)。
【0026】
本発明の変形例によれば、少なくとも1つの第1のターゲット要素および少なくとも1つの第2のターゲット要素は、互いに隣接して配置されまたは少なくとも部分的に互いに重なり合っている。
【0027】
本発明のさらなる変形例では、少なくとも1つの第1のターゲット要素および少なくとも1つの第2のターゲット要素は、完全に重なり合っているが、異なるサイズを有する。特に、一方のターゲット要素のサイズが他方のターゲット要素のサイズよりも大きいため、より大きいサイズのターゲット要素がより小さいサイズのターゲット要素を完全に覆う。
【0028】
以下において、本発明は、添付の図に示される実施形態に関してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による誘導位置センサの第1の実施形態の概略図である。
【
図2】本発明による誘導位置センサの第2の実施形態の概略図である。
【
図3】導電性移動ターゲットの第1の実施形態である。
【
図4】導電性移動ターゲットの第2の実施形態である。
【
図5】導電性移動ターゲットの第3の実施形態である。
【
図6】導電性移動ターゲットの第4の実施形態である。
【
図7】導電性移動ターゲットの第5の実施形態である。
【
図8】導電性移動ターゲットの第6の実施形態である。
【
図9A】導電性移動ターゲットの異なる実施形態の性能比較である。
【
図9B】導電性移動ターゲットの異なる実施形態の性能比較である。
【
図10】信号処理後の本発明による誘導位置センサの出力である。
【
図11】本発明による誘導位置センサの第3の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明による誘導位置センサ1の第1の実施形態の概略図を示している。誘導位置センサ1は、送信コイル2、絶対位置受信コイル対3、4、高分解能位置受信コイル対5、6、および導電性移動ターゲット7を備える。絶対位置受信コイル対3、4および高分解能位置受信コイル対5、6は一緒に、誘導位置センサ1の測定領域を定義し、導電性移動ターゲット7はこの測定領域内を移動できる。
図1に示される第1の実施形態は、径方向の誘導位置センサ1を言及し、測定領域は360°の円である。
【0031】
絶対位置受信コイル対3、4は、第1の正弦受信コイル3および第1の余弦受信コイル4を有し、誘導位置センサ1の測定領域にわたって1周期を有する。
【0032】
高分解能位置受信コイル対5、6は、第2の正弦受信コイル5および第2の余弦受信コイル6を有し、誘導位置センサ1の測定領域にわたって少なくとも2周期を有する。
図1に示される実施形態によれば、第2の正弦受信コイル5および第2の余弦受信コイル6はそれぞれ、測定領域にわたって8周期を有する。
【0033】
本発明によれば、絶対位置受信コイル対3、4および高分解能位置受信コイル対5、6は、誘導位置センサ1のプリント回路基板8の同じ領域に配置されている。
【0034】
図1に示す誘導位置センサ1は、少なくとも1つの送信コイル2に信号を提供するとともに、絶対位置受信コイル対3、4および高分解能位置受信コイル対5、6の信号を処理するための信号処理ユニット9をさらに備える。
図1に示される実施形態によれば、信号処理ユニット9は、誘導位置センサ1のプリント回路基板8に外部接続されている。本発明の別の実施形態では、信号処理ユニット9は、誘導位置センサ1と同じプリント回路基板8上に配置されている。信号処理ユニット9と、送信コイル2、絶対位置受信コイル対3、4、および高分解能位置受信コイル対5、6との間の接続は、それぞれのコイルと完全に同じように番号付けられている。
【0035】
図1に示される誘導位置センサ1の使用中、信号処理ユニット9は、送信コイル2に励起電流を提供し、励起電流による電磁場を生成する。導電性移動ターゲット7は、送信コイル2により生成された電磁場の内側に位置し、したがって、導電性移動ターゲット7に誘導される渦電流による電磁場を変更する。絶対位置受信コイル対3、4および高分解能受信コイル対5、6は、導電性移動ターゲット7による電磁場の変更と導電性移動ターゲット7の位置の変更とを感知することができる。絶対位置受信コイル対3、4および高分解能位置受信コイル対5、6の信号は、信号処理ユニット9によって処理されて、測定領域内の導電性移動ターゲット7の絶対位置および高分解能位置を決定する。
【0036】
図2は、本発明による誘導位置センサ1の第2の実施形態の概略図を示している。
図2に示す第2の実施形態は、誘導位置センサ1が2つの送信コイル2を備え、第2の正弦受信コイル5および第2の余弦受信コイル6がそれぞれ測定領域にわたって32周期を有するという点で、
図1に示す第1の実施形態と異なる。それ以外については、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様である。
【0037】
32周期の高分解能位置受信コイル対5、6、1周期×360°絶対位置受信コイル対3、4、2つの別個の送信コイル2、および、12ビット信号の取得により2つの誘導位置センサIC(図示せず)を備えた信号処理ユニット9を有する誘導位置センサ1の実装においては、理論上の分解能は32周期×12ビットであり、これは131072カウントまたは17ビットである。
【0038】
システム構成や許容誤差に依存してセンサの直線性が低下することが知られている。
【0039】
32周期の高分解能位置受信コイル対5、6、1周期×360°絶対位置受信コイル対3、4、および共有する1つの信号処理ユニット9を備えた誘導位置センサ1の実装は
図2に示されている。
【0040】
一般に、ターゲットは、高分解能位置受信コイル対5、6と絶対位置受信コイル対3、4との両方の信号を生成するように設計されなければならない。許容誤差に対する精度およびロバスト性は、ターゲットの構成に依存するだろう。以下はいくつかの実装例である。
【0041】
図3は、導電性移動ターゲット7の第1の実施形態を示している。導電性移動ターゲット7は、互いに間隔を置いて配置された複数のセグメント12を備える。導電性移動ターゲット7の複数のセグメント12は、同じ形状および間隔を有する。増分のn周期の導電性移動ターゲット7の1つまたは複数の部分が除去されて、1周期の絶対位置受信コイル対3、4上に十分な信号を生成する。
【0042】
図4は、導電性移動ターゲット7の第2の実施形態を示す。
図4は、基板の上側および下側を示し、一方の側は第1のターゲット要素10を備え、他方の側は第2のターゲット要素11を備え、第1のターゲット要素10の形状は、少なくとも1つの第2のターゲット要素11の形状と異なる。特に、第1のターゲット要素10は、互いに間隔を置いて配置された複数のセグメント12を備える。導電性移動ターゲット7の複数のセグメント12は、同じ形状および間隔を有し、導電性移動ターゲット7を構築する円形基板の全周を覆っている。これにより、第1のターゲット要素10の複数のセグメント12は、誘導位置センサ1の全測定領域を覆う。第2のターゲット要素11は、半円形状を有し、導電性移動ターゲット7の円形基板の半円を覆っている。導電性移動ターゲット7の第1のターゲット要素10および第2のターゲット要素11は、
図4が同じ導電性移動ターゲット7の同じ基板の2つの側面を示すので、互いに重なっている。このように、
図4は、n周期の高分解能位置受信コイル対5、6用の高分解能セグメント12と、積層された1周期の絶対位置受信コイル対3、4用の第2のターゲット要素11とを示す。
【0043】
図5は、導電性移動ターゲット7の第3の実施形態を示す。
図5に示す導電性移動ターゲット7の第3の実施形態は、第2のターゲット要素11が完全なリングの円弧セグメントの形状を有する点で、
図4に示す導電性移動ターゲット7の第2の実施形態と異なる。さらに、導電性移動ターゲット7の第1のターゲット要素10および第2のターゲット要素11は、互いに隣同士に配置され、特に第2のターゲット要素11は、第1のターゲット要素10の内側に配置され、第1のターゲット要素10と第2のターゲット要素11は重ならない。
【0044】
図6は、導電性移動ターゲット7の第4の実施形態を示す。
図6に示す導電性移動ターゲット7の第4の実施形態は、第2のターゲット要素11が長方形状を有し、第1のターゲット要素と重なる点で、
図5に示す導電性移動ターゲット7の第3の実施形態と異なる。特に、セグメント12の間の隙間が第1のターゲット要素10に属すると考えられる場合、セグメント12からなる第1のターゲット要素10は、第2のターゲット要素11と完全に重なる。
【0045】
図7は、導電性移動ターゲット7の第5の実施形態を示す。
図7に示す導電性移動ターゲット7の第5の実施形態は、第2のターゲット要素11が矢印形状を有する点で、
図6に示す導電性移動ターゲット7の第4の実施形態と異なる。
【0046】
図8は、導電性移動ターゲット7の第6の実施形態を示し、第2のターゲット要素11は、
図7に示される第5の実施形態と比較して、より大きな矢印形状を有する。
【0047】
図9Aおよび
図9Bは、
図4から
図8に示された各導電性移動ターゲットを使用した場合の機械的誤差を比較した結果を示している。
図9Aは、1周期×360°絶対位置センサにおける比較であり、
図9Bは、32周期の高分解能位置センサにおける比較である。
【0048】
比較の設定は次の通りである:
・Speed:1000rpm
・Nominal AG:1mm … 1.75mm
・X/ Y Displacement:+/- 0.3mm
・Tilt:+/- 0 … 0.5mm
【0049】
絶対高分解能角度信号を計算するための信号処理にはさまざまな方法がある。1つの可能性ある方法を以下に示す。
【0050】
ステップ1:除数を計算する。
Divisor = Resolution / #HighResolutionPeriods
【0051】
ステップ2:実際の周期を確認する。
ActualPeriod = Quotient(AbsoluteAngle / Divisor)
【0052】
ステップ3:高分解能の絶対角度を計算する。
AbsHighres = HighresAngle + ActualPeriod * Resolution
【0053】
ステップ4:妥当性を確認し、必要に応じて周期を修正する。
(AbsHighres - #HighResolutionPeriods * AngleLowRes)
が閾値よりも大である場合、出力は AbsHighres - Resolutionである。
(AbsHighres - #HighResolutionPeriods * AngleLowRes)
が閾値以下である場合、出力は AbsHighres + Resolutionである。
上記以外の場合、出力はAbsHighresである。
【0054】
図10は、処理後の高分解能出力、特に32周期の高分解能位置センサと処理済み高分解能絶対位置センサの信号プロットを示している。
【0055】
1つのPCBに2セット以上の高分解能絶対位置センサを実装することにより、より高い診断率のための冗長ソリューションを生成することが可能になる。
【0056】
自動車用アプリケーションでは、たとえば、トーションバーの各側に2セットの高分解能絶対位置センサを実装することにより、2つのセンサ間の差としてトルクを計算することが可能になる。
【0057】
図11は、本発明による誘導位置センサ1の第3の実施形態の概略図を示す。
図11に示される誘導位置センサ1は、直線状の測定領域を備えた線形位置センサであり、それに沿って導電性移動ターゲット7が移動する。それ以外については、
図11に示される誘導位置センサ1の第3の実施形態は、
図1に示される誘導位置センサ1の第1の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0058】
1 誘導位置センサ
2 送信コイル
3 絶対位置受信コイル(正弦)
4 絶対位置受信コイル(余弦)
5 高分解能位置受信コイル(正弦)
6 高分解能位置受信コイル(余弦)
7 導電性移動ターゲット
8 プリント基板
9 信号処理ユニット
10 第1のターゲット要素
11 第2のターゲット要素
12 セグメント