(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164202
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】耐震評価装置、耐震評価方法、耐震評価システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G01V1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069540
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇伸
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105GG06
2G105MM01
(57)【要約】
【課題】継手部における管路の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行う。
【解決手段】耐震評価装置10は制御部11を備え、制御部11は、管路の形状を示す管路情報を取得する管路情報取得部111と、継手部31における管路30の差込長を示す差込長情報を取得する差込長情報取得部112と、差込長情報に基づき差込長が所定値以上であるかを判断する差込長判断部113と、差込長判断部113の判断結果に応じて継手部31の特性を示す継手部情報を取得する継手部情報取得部114と、管路30の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得する地盤情報取得部115と、入力地震波を示す地震波情報を取得する地震波情報取得部116と、管路情報と、差込長情報と、継手部情報と、地盤情報とに応じて管路30の解析モデルを出力する解析モデル出力部117と、解析モデルと地震波情報とに基づき管路30の耐震性を評価する耐震評価部118とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備える耐震評価装置であって、前記制御部は、
少なくとも1つの継手部で接続された管路の形状を示す管路情報を取得する管路情報取得部と、
前記少なくとも1つの継手部における前記管路の差込長を示す差込長情報を取得する差込長情報取得部と、
前記差込長情報に基づいて、前記差込長が所定の値以上であるかどうかを判断する差込長判断部と、
前記差込長判断部の判断結果に応じて前記継手部の特性を示す継手部情報を取得する継手部情報取得部と、
前記管路の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得する地盤情報取得部と、
入力地震波を示す地震波情報を取得する地震波情報取得部と、
前記管路情報と、前記差込長情報と、前記継手部情報と、前記地盤情報とに応じて前記管路の解析モデルの出力を行う解析モデル出力部と、
前記解析モデルと前記地震波情報とに基づいて、前記管路の耐震性を評価する耐震評価部と
を備える、耐震評価装置。
【請求項2】
前記管路の前記差込長は、前記継手部における前記管路の最大差込長と、前記継手部の内部における前記継手部と前記管路との段差との差分である、請求項1に記載の耐震評価装置。
【請求項3】
前記解析モデル出力部は、耐震計算法に使用される解析モデルを出力し、
前記耐震評価部は、前記耐震計算法により前記管路の耐震性を評価する、請求項1又は2に記載の耐震評価装置。
【請求項4】
前記耐震計算法は、応答変位法である、請求項3に記載の耐震評価装置。
【請求項5】
前記解析モデル出力部は、予め作成された複数の解析モデルのそれぞれについて、複数の入力地震波を作用させた場合の前記管路の耐震評価結果を示すパターン情報を取得し、
前記耐震評価部は、前記管路情報と、前記差込長情報と、前記地盤情報と、前記地震波情報とに基づいて、前記パターン情報が示す前記耐震評価結果を選択することで前記耐震性を評価する、請求項1又は2に記載の耐震評価装置。
【請求項6】
耐震評価装置が実行する耐震評価方法であって、
少なくとも1つの継手部で接続された管路の形状を示す管路情報を取得するステップと、
前記少なくとも1つの継手部における前記管路の差込長を示す差込長情報を取得するステップと、
前記差込長情報に基づいて、前記差込長が所定の値以上であるかどうかを判断するステップと、
前記判断するステップの判断結果に応じて前記継手部の特性を示す継手部情報を取得するステップと、
前記管路の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得するステップと、
入力地震波を示す地震波情報を取得するステップと、
前記管路情報と、前記差込長情報と、前記継手部情報と、前記地盤情報とに応じて前記管路の解析モデルの出力を行うステップと、
前記解析モデルと前記地震波情報とに基づいて、前記管路の耐震性を評価するステップと
を含む、耐震評価方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の耐震評価装置と、
前記少なくとも1つの継手部における前記管路の差込長を計測する計測装置と、
を備える、耐震評価システム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の耐震評価装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震評価装置、耐震評価方法、耐震評価システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下に埋設された管路について、腐食による耐力低下又は管路形状による地震応答の変化に基づいて、耐震性を評価する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、差込形状を有する管路の継手部については、地震又は緩やかな地盤の動き等を受けて、差込状態が変化することが想定される。新設時であれば継手部を含む管路の耐震性能を評価することができるが、建設後変化した状態の管路の耐震性能を、現状に即して正確に評価することが困難であった。そのため、継手部における管路の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行う技術が望まれていた。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、継手部における管路の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことが可能な耐震評価装置、耐震評価方法、耐震評価システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る耐震評価装置は、制御部を備える耐震評価装置であって、前記制御部は、少なくとも1つの継手部で接続された管路の形状を示す管路情報を取得する管路情報取得部と、前記少なくとも1つの継手部における前記管路の差込長を示す差込長情報を取得する差込長情報取得部と、前記差込長情報に基づいて、前記差込長が所定の値以上であるかどうかを判断する差込長判断部と、前記差込長判断部の判断結果に応じて前記継手部の特性を示す継手部情報を取得する継手部情報取得部と、前記管路の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得する地盤情報取得部と、入力地震波を示す地震波情報を取得する地震波情報取得部と、前記管路情報と、前記差込長情報と、前記継手部情報と、前記地盤情報とに応じて前記管路の解析モデルの出力を行う解析モデル出力部と、前記解析モデルと前記地震波情報とに基づいて、前記管路の耐震性を評価する耐震評価部とを備える。
【0007】
また、本発明に係る耐震評価方法は、耐震評価装置が実行する耐震評価方法であって、少なくとも1つの継手部で接続された管路の形状を示す管路情報を取得するステップと、前記少なくとも1つの継手部における前記管路の差込長を示す差込長情報を取得するステップと、前記差込長情報に基づいて、前記差込長が所定の値以上であるかどうかを判断するステップと、前記判断するステップの判断結果に応じて前記継手部の特性を示す継手部情報を取得するステップと、前記管路の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得するステップと、入力地震波を示す地震波情報を取得するステップと、前記管路情報と、前記差込長情報と、前記継手部情報と、前記地盤情報とに応じて前記管路の解析モデルの出力を行うステップと、前記解析モデルと前記地震波情報とに基づいて、前記管路の耐震性を評価するステップとを含む。
【0008】
また、本発明に係る耐震評価システムは、本発明に係る耐震評価装置と、前記少なくとも1つの継手部における前記管路の差込長を計測する計測装置と、を備える。
【0009】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、本発明に係る耐震評価装置として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、継手部における管路の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことが可能な耐震評価装置、耐震評価方法、耐震評価システム及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐震評価システムを説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る耐震評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図3A】通常の差込長を有する継手部の軸方向の引張試験の結果を示す図である。
【
図3B】通常より短い差込長を有する継手部の軸方向の引張試験の結果を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る解析モデルを説明するための図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る計測装置の長手方向の断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る計測装置の短手方向の断面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る耐震評価システムの動作を示す図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る耐震評価システムの動作を示す図である。
【
図7A】変形例1に係る計測装置の長手方向の断面図である。
【
図7B】変形例1に係る計測装置の短手方向の断面図である。
【
図8】変形例2に係るパターン情報を説明するための図である。
【
図9A】変形例2に係る耐震評価システムの動作を示す図である。
【
図9B】変形例2に係る耐震評価システムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0013】
<耐震評価システム1の概略構成>
まず、本発明に係る耐震評価システム1について説明する。
図1は、耐震評価システム1の概要を示す図である。耐震評価システム1は、耐震評価装置10と計測装置20とを備える。耐震評価装置10と計測装置20とは有線又は無線にて接続され、ネットワーク40を介して情報の送受信を行うことができる。計測装置20は、地下に埋設された管路30(30-1,30-2)の内部で使用される。管路30と継手部31とは地下に埋設され、周囲を地盤に取り囲まれている。
図1では、計測装置20が1つである場合を示しているが、これに限られず、計測装置20の数は複数あってもよい。
【0014】
ネットワーク40は、インターネット、少なくとも1つのWAN(Wide Area Network)、少なくとも1つのMAN(Metropolitan Area Network)、又はこれらの組み合わせを含む。ネットワーク40は、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(Local Area Network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。
【0015】
計測装置20は、管路30の差込長を計測する。差込長とは、管路30が端部を継手部
31に差し込まれて接続されているときの、管路30と継手部31との重なっている部分の長さである。
図1では、計測装置20は、管路30-1の継手部31への差込長を計測する。
【0016】
図1において2つの管路30-1,30-2は継手部31を介して接続されている。このように、管路30-1,30-2、長手方向の端部を継手部31に差し込むことで互いに連結される。管路30は例えば通信ケーブルを保護する通信用管路であって、地下に埋設されるものをいう。これに限られず、管路30は水道用管路、ガス用管路、電力用管路等であってもよい。複数の管路30が、複数の継手部31を介して連結されて、マンホール間を結ぶ。管路30の一本の長さは例えば5mであり、マンホール間の距離は例えば300mである。管路30及び継手部31の例は以下の参考文献1及び参考文献2に記載されているため、詳細な説明を省略する。
[参考文献1]
「差込み継手塗覆装鋼管」、JFEスチール株式会社、[online]、[2021年3月8日検索]、インターネット<https://www.jfe-steel.co.jp/products/koukan/catalog/e1j-024.pdf>
[参考文献2]「PV管φ75 直管 L=5m」、株式会社クボタケミックス[online]、[2021年3月8日検索]、インターネット<https://www.kubota-chemix.co.jp/products/pvc_pipes/for_communication_cable/item_1555>
【0017】
耐震評価システム1では、計測装置20が計測した差込長を示す情報が、耐震評価装置10へ送信される。耐震評価装置10には、ユーザによって入力地震波が入力される。耐震評価装置10は、以下に詳細に説明するように、計測装置20から受信した差込長を示す差込長情報、管路30についての管路情報、継手部31の特性を示す継手部情報、及び地盤の特性を示す地盤情報に基づいて、解析モデルを出力する。耐震評価装置10は、当該解析モデルと入力地震波を示す地震波情報とに基づいて、応答変位法等の既知の耐震計算法により管路30の耐震性を評価する。このように耐震評価システム1によれば、管路30及び継手部31の現状に即した耐震性の評価を行うことができる。
【0018】
<耐震評価装置10の構成>
図2を参照して、本実施形態に係る耐震評価装置10の構成を説明する。耐震評価装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、入力部14と、出力部15とを備える。
【0019】
制御部11は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部11は、耐震評価装置10の各部を制御しながら、耐震評価装置10の動作に関わる処理を実行する。制御部11は、外部装置との情報の送受信を、通信部13及びネットワーク40を介して行うことができる。
【0020】
制御部11は、管路情報取得部111と、差込長情報取得部112と、差込長判断部113と、継手部情報取得部114と、地盤情報取得部115と、地震波情報取得部116と、解析モデル出力部117と、耐震評価部118とを備える。
【0021】
管路情報取得部111は、少なくとも1つの継手部31で接続された管路30の形状を示す管路情報を取得する。管路情報取得部111は、複数の継手部31で接続された管路30を対象として、当該管路30についての管路情報を取得してよい。管路情報は例えば、管路30の亘長、曲り角度、又は外径等の管路30の形状を示す各種情報を含む。管路情報はさらに、管路の種類、管路30を覆う防護コンクリートの有無、又は設置年月日等
を示す情報を含んでもよい。管路30の種類とは、例えば硬質塩化ビニル管等を含む。管路30が防護コンクリートで覆われている部分については管路30の耐震性に影響が出やすいことが既知であることから、管路情報は防護コンクリートの有無を示す情報を含むことが望ましい。
【0022】
管路情報の取得には任意の手法が採用可能である。例えば、ユーザが入力部14を介して特定の区間を指定することにより、対象とする管路30が地図データベースから選択され、選択された管路30の管路情報を管路情報取得部111が取得できてもよい。例えば、管路情報取得部111は、記憶部12又は外部装置に格納された任意のデータベースから管路情報を取得してもよい。管路情報取得部111は、管路30の敷設設計図面から形成されたCADデータ等から管路情報を読み出すことで取得してもよい。管路情報取得部111は、カメラ又はジャイロセンサを用いて管路30の3次元形状を把握した情報を管路情報として取得しても良い。カメラを用いる手法は参考文献3に、ジャイロセンサを用いる手法は参考文献4に記載されているため、詳細な説明を省略する。管路情報取得部111は、取得した管路情報を記憶部12に格納する。
[参考文献3]
「耐衝撃型高精度MEMS管路計測装置」、Raito工業株式会社
[参考文献4]
井上裕貴、外3名、「パイプライン管内形状の連続的な三次元画像計測手法」、土木学会論文集F3、Vol.70、No.2、I_243-I_248、2014年
【0023】
差込長情報取得部112は、継手部31における管路30の差込長を示す差込長情報を取得する。差込長情報の取得には任意の方法が採用可能である。例えば差込長情報取得部112は、以下で説明するように、管路30の内部において差込長を計測する計測装置20が計測した結果を、差込長情報として取得してもよい。例えば差込長情報取得部112は、入力部14を介して入力された差込長を示す値を差込長情報として取得してもよい。差込長情報取得部112は、対象とする管路30に設けられた複数の継手部31のそれぞれについて、差込長情報を取得できる。差込長情報取得部112は、取得した差込長情報を記憶部12に格納する。
【0024】
差込長判断部113は、差込長情報取得部112が取得した差込長情報に基づいて、差込長が所定の値以上であるかどうかを判断する。所定の値とは例えば、64mmである。所定の値はこれに限定されず、自由に設定されてよい。差込長判断部113は、判断結果を継手部情報取得部114へ出力する。
【0025】
継手部情報取得部114は、差込長判断部113による判断の結果に応じて、継手部31の特性を示す継手部情報を取得する。継手部情報は、通常の差込長の継手部31と、通常と比較して短い差込長の継手部31とのそれぞれについて耐力試験を行った結果である、継手部31の軸力と変位量との値を含む。「通常の差込長」とは、例えば64mmの差込長をいう。耐力試験は、圧縮強度、引張強度、及び曲げ強度の試験を含んでよい。試験においては、継手部31に圧縮力、引張力、又は曲げ力を作用させ、継手部31が破断した時点の継手部31の軸力と変位量との関係が評価される。耐力試験については、以下の参考文献に記載されているため、詳細な説明を省略する。
[参考文献5]
大家祐一、外3名、「通信用鋼管差込継手の曲げ強度特性に関する実験」、土木学会年次学術講演会、VI-453、2020年
【0026】
継手部情報の取得には任意の方法が採用可能である。継手部情報取得部114は、記憶部12に予め格納されている継手部情報を取得してもよい。継手部情報は、外部装置に格納されていてもよい。
【0027】
図3A及び
図3Bは継手部31の軸方向の引張試験の結果を示す。
図3Aは通常の差込長、具体的には64mm以上の差込長を有する継手部31の軸力と変位量との関係、
図3Bは通常より短い差込長、具体的には64mm未満の差込長を有する継手部31の軸力と変位量との関係を示す。
図3Aを参照すると、引張試験において通常の差込長を有する継手部31が破断した時点での軸力は260kN、変位量は10mmであったことがわかる。
図3Bを参照すると、引張試験において通常より短い差込長を有する継手部31が破断した時点での軸力は60kN、変位量は4.5mmであったことがわかる。継手部情報取得部214は、差込長判断部213により差込長が64mm以上であると判断された場合には、
図3Aに示す情報を継手部情報として取得し、差込長が64mm未満であると判断された場合には場合に
図3Bに示す情報を継手部情報として取得する。継手部情報取得部114は、取得した継手部情報を記憶部12に格納する。
【0028】
地盤情報取得部115は、管路30の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得する。地盤情報は、管路30の周辺地盤が第1種地盤、第2種地盤、及び第3種地盤のいずれに属するかを示す情報を含む。地盤情報の取得には任意の方法が採用可能である。例えば地盤情報取得部115は、外部サーバから、管路設計時の図面、微地形区分等の公知データ又は工事時のボーリングデータを基に作成された情報を、地盤情報として取得してもよい。地盤情報取得部115は、取得した地盤情報を記憶部12に格納する。
【0029】
地震波情報取得部116は、入力地震波を示す地震波情報を取得する。地震波情報取得部116は、ユーザが入力部14を介して入力した、既往地震又は想定地震の地震波の特性に基づき、入力地震波を生成することで地震波情報を取得してもよい。入力地震波は例えば、波長が管路30の長さと同一であり、P波と同様な振動成分を持つ振幅2.5cmの正弦波であってよい。地震波情報取得部116は、取得した地震波情報を記憶部12に格納する。
【0030】
解析モデル出力部117は、記憶部12を参照し、記憶部12に格納された管路情報と、差込長情報と、継手部情報と、地盤情報とに応じて管路30の解析モデルの出力を行う。解析モデル出力部117は、耐震計算法に使用される任意の解析モデルを作成して出力してもよい。耐震計算法は、例えば応答変位法である。解析モデルの作成は、例えばはり要素又はシェル要素により行われてよい。解析モデル出力部117は、管路30及び継手部31の形状、長さ等の情報に基づいて座標位置を決定し、管路30の3次元のモデルを作成してよい。作成された解析モデルは、出力部15を介してユーザが確認することができる。解析モデル出力部117は、作成した解析モデルを耐震評価部118へ出力する。
【0031】
図4に解析モデルの例を示す。
図4中、管路30の継手部31としての継手部311、312及び313が白丸で示される。
図4の管路30は曲率半径r、交角θの曲がりを有し、一部が防護コンクリートで覆われている。
図4において、モデルの周囲の地盤の種別は第2種地盤であることが示される。
【0032】
解析モデルには、継手部情報に基づいて決定された継手ばねモデル、及び管路情報に基づいて決定された地盤ばねモデルがさらに取り付けられてもよい。このとき、管路情報が示す防護コンクリートの有無によって、地盤バネ定数を変化させて、地盤ばねモデルが作成されてもよい。例えば、解析モデル出力部117は、管路情報が示す防護コンクリートの有無によって、地盤バネ定数を変化させて地盤ばねモデルを作成してもよい。
【0033】
耐震評価部118は、出力された解析モデルと地震波情報とに基づいて、応答変位法等の既知の耐震計算法により管路30の耐震性を評価する。応答変位法の解析方法は以下の参考文献に記載されているため、説明を省略する。
[参考文献6]
高田至郎、「ライフライン地震工学」、pp.45-73、共立出版株式会社、1991年
【0034】
例えば耐震評価部118は、周囲の地盤が第2種地盤である
図4のモデルに、入力地震波を作用させた場合の管路30の変位量を算出する。解析は管軸方向と軸直角方向のそれぞれに対して行われてよい。耐震評価部118は、管路30の軸力の変化量を算出してもよい。耐震評価部118は、算出した値が所定の値未満である場合は、管路30の耐震性が高いと評価する。算出した値が所定の値以上である場合は、管路30の耐震性が低いと評価する。耐震評価部118は、このように耐震性を評価した結果である耐震評価結果を出力部15に出力してよい。
【0035】
記憶部12は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部12に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、耐震評価装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部12は、必ずしも耐震評価装置10が内部に備える必要はなく、耐震評価装置10の外部に備える構成としてもよい。
【0036】
通信部13には、少なくとも1つの通信インタフェースが含まれる。通信インタフェースは、例えば、LANインタフェースである。通信部13は、耐震評価装置10の動作に用いられる情報を受信し、また耐震評価装置10の動作によって得られる情報を送信する。
【0037】
入力部14には、少なくとも1つの入力用インタフェースが含まれる。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部14は、耐震評価装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部14は、耐震評価装置10に備えられる代わりに、外部の入力機器として耐震評価装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0038】
出力部15には、少なくとも1つの出力用インタフェースが含まれる。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部15は、耐震評価装置10の動作によって得られる情報を出力する。出力部15は、耐震評価装置10に備えられる代わりに、外部の出力機器として耐震評価装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。出力部15は、耐震評価部118による耐震評価結果を音声又は映像で出力することができる。
【0039】
<計測装置20の構成>
図5A及び
図5Bを参照して、本実施形態に係る計測装置20の構成を説明する。
図5Aでは、計測装置20を長手方向の断面図で概略的に示す。
図5Bでは、計測装置20を短手方向の断面図で概略的に示す。
図5A及び
図5Bに示すように、計測装置20は例えば外径60mmの、円柱様の形状をとってもよい。
図5Aにおいて、管路30が継手部31内に差し込まれており、差込長Lが生じている。
図5A中に示す継手部31の各部の寸法は一例である。
【0040】
計測装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、変位計測部24と、センサ部25と、撮影部26と、タイヤ部27と、照明部28とを備える。
【0041】
記憶部22には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部22には、計測装置20の動作に用いられる情報と、計測装置20の動作によって得られた情報とが記憶される。
【0042】
通信部23には、少なくとも1つの通信インタフェースが含まれる。通信インタフェースは、例えば、LTE、4G規格、若しくは5G規格等の移動通信規格に対応したインタフェースである。通信部23は、計測装置20の動作に用いられる情報を受信し、また計測装置20の動作によって得られる情報を送信する。
【0043】
変位計測部24は、ロッド式変位計であってよい。変位計測部24は、ロッドの管路30の側端部に車輪241を備えてもよい。これにより、計測装置20が管路30内部を移動しながら変位を計測することができる。変位計測部24の数は任意であってよいが、計測装置20の位置が管路30の内部の中心からずれた場合にも、精度よく変位を計測できるよう、3本以上が望ましい。
【0044】
変位計測部24の位置について、計測装置20の下方は、管路30の底面に土砂等が堆積している可能性があるため正確な計測が行えない可能性が高い。よって、
図5Bに示すように、変位計測部24は、例えば計測装置20の上部及び両側方に設けられることが望ましい。
【0045】
センサ部25は、ジャイロセンサ、加速度センサ、ロータリエンコーダ等であってよい。センサ部25は、計測装置20の傾きを検出できる。
【0046】
撮影部26は、計測装置20の周囲を撮影して画像データを生成する。撮影部26による画像データは、制御部21に出力される。撮影部26としてのカメラヘッド径は、例えば20mm~40mmである。
【0047】
タイヤ部27はモータによって回転可能であり、
図5Aの白抜き矢印が示すように、計測装置20が管路30の内部を軸方向に移動することを可能にする。タイヤ部27の数は任意に設定されてよいが、例えば前輪として1つ、後輪として2つ設けられてもよい。タイヤ部27の駆動は、制御部21によって制御されてよい。タイヤ部27は、車輪型のロータリエンコーダを含んでもよい。タイヤ部27の外径は例えば26mm、幅は8mmである。
【0048】
照明部28はLEDランプを含むことができる。照明部28の数は任意に設定されてよく、例えば
図5Bに示すように4か所に設けられてもよい。照明部28の点灯及び消灯は、制御部21によって制御可能である。制御部21は、撮影部26が生成した画像データを取得し、画像の示す明るさが所定の値未満である場合に、照明部28を点灯させてもよい。
【0049】
制御部21は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC、FPGAなどの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部21は、計測装置20の各部を制御しながら、計測装置20の動作に関わる処理を実行する。制御部21は、外部装置との情報の送受信を、通信部23及びネットワーク40を介して行うことがで
きる。
【0050】
図5Aにおいて、制御部21は、変位計測部24及びセンサ部25が検出した変位及び傾きに基づいて、管路30と継手部31との間に生じる段差211と、管路30の内部の最大差込長に当たる部分で生じる段差212とを検出する。制御部21は、段差211と段差212との間の距離Dを測定する。距離Dの測定は任意の方法で行われてよいが、例えば、センサ部25としてのロータリエンコーダからの信号に基づいて測定してもよい。制御部21は、最大差込長の値から距離Dを差し引いた値を、管路30の差込長Lとして算出する。制御部21は、最大差込長の値を予め取得しておいてもよい。例えば、距離Dの値が20mm、最大差込長が91mmである場合、制御部21は91mmから20mmを差し引いた71mmの値を、管路30の差込長Lとして算出する。このようにして制御部21は管路30の差込長を計測する。なお、計測装置20は、管路30の差込長を常時計測していてもよいし、耐震評価装置10からの指示信号に応じて計測を開始してもよい。
【0051】
制御部21は、計測した差込長を示す情報を耐震評価装置10へ送信する。具体的には、計測装置20の制御部21が、通信部23を介して情報を耐震評価装置10に送信する。制御部21は、耐震評価装置10からの指示信号に応じて、差込長を示す情報を耐震評価装置10に送信してもよい。
【0052】
<プログラム>
上述した耐震評価装置10又は計測装置20として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0053】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インタフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インタフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インタフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インタフェースは、外部の装置と通信するためのインタフェースである。
【0054】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0055】
次に、
図3A、
図3B、
図4、
図5A、
図6A及び
図6Bを参照して、本実施形態に係る耐震評価装置10を含む耐震評価システム1の動作について説明する。耐震評価システム1の動作のうち、耐震評価装置10の動作は、本実施形態に係る耐震評価方法に相当する。
図6A及び
図6Bは、耐震評価システム1の動作の一例を示す。
【0056】
図6AのステップS101において、耐震評価装置10の管路情報取得部111は、少なくとも1つの継手部31で接続された管路30の形状を示す管路情報を取得する。管路情報は、管路30の亘長、曲り角度、又は外径等の管路30の形状を示す各種情報を含む。管路情報はさらに、管路の種類、管路30を覆う防護コンクリートの有無、又は設置年月日等を示す情報を含んでもよい。管路情報の取得には任意の手法が採用可能である。例えば、管路情報取得部111は、記憶部12又は外部装置に格納された任意のデータベースから管路情報を取得してもよい。管路情報取得部111は、取得した管路情報を記憶部12に格納する。
【0057】
ステップS102において、計測装置20は、継手部31における管路30の差込長を計測する。計測装置20は、管路30の差込長を常時計測していてもよいし、耐震評価装置10からの指示信号に応じて計測を開始してもよい。差込長の計測には任意の手法が用いられてよい。例えば計測装置20の制御部21は、
図5Aで示すように、変位計測部24及びセンサ部25が検出した変位及び傾きに基づいて、管路30と継手部31との間に生じる段差211と、管路30の内部の最大差込長に当たる部分で生じる段差212とを検出する。制御部21は、段差211と段差212との間の距離Dを測定する。制御部21は、最大差込長の値から距離Dを差し引いた値を、管路30の差込長として算出する。このようにして、管路30の差込長が計測されてよい。
【0058】
ステップS103において、計測装置20は、計測した管路30の差込長を示す情報を耐震評価装置10へ送信する。具体的には、計測装置20の制御部21が、通信部23を介して情報を耐震評価装置10に送信する。制御部21は、耐震評価装置10からの指示信号に応じて差込長を示す情報を耐震評価装置10に送信してもよい。
【0059】
ステップS104において、耐震評価装置10は、差込長を示す情報を計測装置20から受信する。具体的には、耐震評価装置10の制御部11が、通信部13を介して情報を計測装置20から受信する。
【0060】
ステップS105において、差込長情報取得部112は、少なくとも1つの継手部31における管路30の差込長を示す差込長情報を取得する。本例では、差込長情報取得部112は、ステップS104で受信した差込長を示す情報を差込長情報として取得する。
【0061】
ステップS106において、差込長判断部113は、差込長情報に基づいて、差込長が所定の値以上であるかどうかを判断する。所定の値とは例えば64mmである。差込長が所定の値以上である場合、耐震評価装置10の動作はステップS107へ進む。差込長が所定の値未満である場合、耐震評価装置10の動作はステップS108へ進む。
【0062】
ステップS107において、継手部情報取得部114は、通常の差込長の継手部31についての継手部情報を取得する。継手部情報の取得には任意の方法が採用可能である。継手部情報取得部114は、記憶部12又は外部装置に予め格納されている継手部情報を取得してよい。
図3Aは、通常の差込長を有する継手部31の継手部情報の例を示す。継手部情報取得部114は、取得した継手部情報を記憶部12に格納する。そして、耐震評価装置10の動作はステップS109へ進む。
【0063】
ステップS108において、継手部情報取得部114は、通常より短い差込長の継手部31についての継手部情報を取得する。継手部情報の取得には任意の方法が採用可能である。
図3Bは、通常より短い差込長を有する継手部31の継手部情報の例を示す。継手部情報取得部114は、取得した継手部情報を記憶部12に格納する。そして、耐震評価装置10の動作はステップS109へ進む。
【0064】
このように、継手部情報取得部114は、差込長判断部113による判断の結果に応じて、継手部31の特性を示す継手部情報を取得する。
【0065】
ステップS109において、地盤情報取得部115は、管路30の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得する。地盤情報は、管路30の周辺地盤が第1種地盤、第2種地盤、及び第3種地盤のいずれに属するかを示す情報を含んでよい。地盤情報の取得には任意の方法が採用可能である。例えば地盤情報取得部115は、外部サーバから、微地形区分等の公知データ、又は工事時のボーリングデータを基に作成された情報を、地盤情報として取得してもよい。地盤情報取得部115は、取得した地盤情報を記憶部12に格納する。
【0066】
ステップS110において、地震波情報取得部116は、入力地震波を示す地震波情報を取得する。地震波情報取得部116は、ユーザが入力部14を介して入力した、既往地震又は想定地震の地震波の特性に基づき、入力地震波を生成することで地震波情報を取得してもよい。地震波情報取得部116は、取得した地震波情報を記憶部12に格納する。
【0067】
ステップS111において、解析モデル出力部117は、記憶部12を参照し、記憶部12に格納された管路情報と、差込長情報と、継手部情報と、地盤情報とに応じて管路30の解析モデルの出力を行う。解析モデルの出力は、解析モデルを任意の手法により作成することで行ってよい。
図4は、解析モデル出力部117が作成したモデルの例を示す。解析モデル出力部117は、解析モデルを耐震評価部118へ出力する。
【0068】
ステップS112において、耐震評価部118は、解析モデルと地震波情報とに基づいて、管路30の耐震性を評価する。耐震性の評価は、応答変位法等の既知の耐震計算法が採用されてよい。例えば耐震評価部118は、周囲の地盤が第2種地盤である
図4のモデルに、入力地震波を作用させた場合の管路30の変位量を算出する。耐震評価部218は、管路30の軸力の変化量を算出してもよい。耐震評価部118は、算出した値が所定の値未満である場合は、管路30の耐震性が高いと評価する。算出した値が所定の値以上である場合は、管路30の耐震性が低いと評価する。耐震評価部118は、このように耐震性を評価した結果である耐震評価結果を出力部15に出力する。
【0069】
ステップS113において、耐震評価装置10の出力部15は、耐震評価部118が評価した耐震評価結果を出力する。出力は、音声又は映像等、任意の方法により行われてよい。その後、耐震評価システム1の動作は終了する。
【0070】
上述の通り、本実施形態に係る耐震評価装置10は、制御部11を備える耐震評価装置であって、制御部11は、少なくとも1つの継手部31で接続された管路30の形状を示す管路情報を取得する管路情報取得部111と、少なくとも1つの継手部31における管路30の差込長を示す差込長情報を取得する差込長情報取得部112と、差込長情報に基づいて、差込長が所定の値以上であるかどうかを判断する差込長判断部113と、差込長判断部113の判断結果に応じて継手部31の特性を示す継手部情報を取得する継手部情報取得部114と、管路30の周辺地盤の特性を示す地盤情報を取得する地盤情報取得部115と、入力地震波を示す地震波情報を取得する地震波情報取得部116と、管路情報と、差込長情報と、継手部情報と、地盤情報とに応じて管路30の解析モデルの出力を行う解析モデル出力部117と、解析モデルと地震波情報とに基づいて、管路30の耐震性を評価する耐震評価部118とを備える。
【0071】
本実施形態によれば、管路30及び継手部31の現状に即した耐震性の評価を行うことができる。よって、継手部31における管路30の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことができる。また、地震で被害を受ける管路30をあらかじめ把握す
ることが可能となるため、通信ネットワークの信頼性を向上させることができる。
【0072】
上述の通り、本実施形態に係る耐震評価装置10において、管路30の差込長は、継手部31における管路30の最大差込長と、継手部31の内部における継手部31と管路30との段差との差分である。
【0073】
本実施形態によれば、より正確に管路30の差込長を計測することができる。よって、継手部31における管路30の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことができる。
【0074】
上述の通り、本実施形態に係る耐震評価装置10において、解析モデル出力部117は、耐震計算法に使用される解析モデルを出力し、耐震評価部118は、耐震計算法により管路30の耐震性を評価する。
【0075】
本実施形態によれば、管路30及び継手部31の現状を反映させた解析モデルを用いて管路30の耐震性が評価される。よって、継手部31における管路30の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことができる。
【0076】
上述の通り、本実施形態に係る耐震評価装置10において、耐震計算法は、応答変位法である。
【0077】
本実施形態によれば、地盤の影響を考慮して、地中の構造物である管路30について、より精度よく耐震性の評価を行うことができる。応答変位法を用いることで、短時間且つ効率的に計算を行うことができ、管路30の耐震性の評価をより簡便に行うことができる。
【0078】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0079】
(変形例1)
【0080】
本発明の変形例として、計測装置20は、上述した変位計測部24に代えて、又は上述した変位計測部24に加えて、レーザー照射部29を備えてもよい。
【0081】
図7A及び
図7Bを参照して、本変形例に係る計測装置20の構成を説明する。
図7Aでは、計測装置20を長手方向の断面図で概略的に示す。
図7Bでは、計測装置20を短手方向の断面図で概略的に示す。本変形例においては、
図7A及び
図7Bに示すように、撮影部26は管路30及び継手部31の内面壁を撮影できるよう計測装置20の上部に設けられる。
図7A及び
図7B中に示す継手部31の各部の寸法は一例である。
【0082】
レーザー照射部29は、管路30及び継手部31の内面壁に、管路30の長手方向に沿った墨出し線を形成するレーザー光291を照射する。
図7A及び
図7B中のCは、撮影部26が撮影した、レーザー照射部29によるレーザー光291の例を示す。当該例からわかるように、段差211と段差212とにおいてはレーザー光291が曲がり、クランク状の墨出し線が形成される。撮影部26は、
図7Bの矢印で示す方向に、レーザー光291が照射される位置と同じ高さから水平方向に墨出し線を撮影する。
図7BのCにおいて示す、レーザー光291が直角に曲がった距離Tは、管路30と継ぎ手部31との間で生じる段差211、すなわち管路30の厚みに対応する値を示す。例えば、管路30が4.2mmの厚みを有するとき、Tは2.97mm(4.2/√2)となる。
【0083】
レーザー照射部29は、制御部21によりレーザー光291の色、照射の向き等を制御されてよい。
図7Bを参照すると、レーザー照射部29からのレーザー光291は水平方向から45度上方に向かって照射されているが、制御部11によって角度を変更できてよい。撮影部26は、管路30及び継手部31の内面壁に映し出された墨出し線としてのレーザー光291を撮影し、画像データを制御部21に出力する。
【0084】
制御部21は、撮影部26から取得した画像データを任意の画像解析技術により検出し、墨出し線が曲がった部分に相当する、段差211と段差212との間の距離Dを検出する。制御部21は、計測装置20が
図7Aの白抜き矢印の方向に移動中、センサ部25が段差211又は段差212を検出したときに、レーザー光291を照射するようレーザー照射部29を制御してもよい。制御部21は、最大差込長の値から距離Dを差し引いた値を、管路30の差込長Lとして算出する。制御部21は、最大差込長の値は予め取得しておいてもよい。例えば、距離Dの値が20mm、最大差込長が91mmである場合、制御部21は91mmから20mmを差し引いた71mmの値を、管路30の差込長Lとして算出する。このようにして制御部21は管路30の差込長を計測する。
【0085】
本変形例によれば、管路30と継手部31との内面壁に照射したレーザー光291を画像解析することで、管路30の差込長をより正確に計測することができる。よって、継手部31における管路30の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことができる。
【0086】
(変形例2)
本発明の変形例として、解析モデル出力部117は、予め作成された複数の解析モデルのそれぞれについて、複数の入力地震波を作用させた場合の管路30の耐震評価結果を示すパターン情報を取得してもよい。
【0087】
解析モデル出力部117が取得するパターン情報の一例を
図8に示す。
図8ではパターン情報をテーブル形式で示すが、これに限定されない。
図8に示すように、パターン情報は、パターンNo.のそれぞれに対応付けられた、防護コンクリートの有無、マンホール間の管路30における曲線有無、継手部31の差込長、管路30の周辺の地盤の種類、及び各種入力地震波を作用させた場合の管路30の耐震評価結果を示す情報を含む。
図8において、「標準差込」とは、継手部31が通常の差込長を有することを示し、「短差込」とは、継手部31が通常より短い差込長を有することを示す。
【0088】
パターン情報は予め作成され、記憶部12又は外部装置に格納されていてもよい。解析モデル出力部117は、複数の外部装置から情報を取得して統合し、
図8に示すパターン情報を作成してもよい。パターン情報は、耐震評価装置10による過去の耐震評価結果に基づいて作成されてもよい。解析モデル出力部117は、パターン情報を耐震評価部118に出力する。
【0089】
耐震評価部118は、管路情報と、差込長情報と、地盤情報と、地震波情報とに基づいて、パターン情報が示す耐震評価結果を選択することで耐震性を評価する。耐震評価部118は、解析モデル出力部117から出力されたパターン情報が示す複数のパターンのうち、管路情報取得部111が取得した管路情報、差込長情報取得部112が取得した差込長情報、地盤情報取得部115が取得した地盤情報、及び地震波情報取得部116が取得した地震波情報に対応するパターンを選択する。このとき、管路30に複数の継手部31が含まれる場合、耐震評価部118は、標準差込である継手部31の数と短差込である継手部31の数とを比較し、数が多い方の継手部31の差込長に対応するパターンを選択してもよい。
【0090】
例えば、管路30の周囲にコンクリートが存在せず、管路30におけるマンホール間の曲線が無く、管路30が複数の継手部31を有し、一部の継手部31が標準差込であり、一部の継手部31が短差込であり、地盤の種類が第3種地盤であり、ユーザが入力した入力地震波がAであるとする。また、短差込である継手部31の数の方が、標準差込である継手部31の数より多いとする。耐震評価部118は、
図8のパターン情報から、これらの情報に対応するNo.3のパターンを選択する。No.3のパターンにおいて、入力地震波がAである場合の管路30の耐震性の評価は高いとする耐震評価結果が示されている。耐震評価部118は、当該耐震評価結果を選択することで管路30の耐震性を評価する。耐震評価部118は、当該耐震評価結果を出力部15に出力する。
【0091】
図8、
図9A及び
図9Bを参照して、本変形例に係る耐震評価システム1の動作を説明する。耐震評価システム1の動作のうち、耐震評価装置10の動作は、本実施形態に係る耐震評価方法に相当する。
図9A及び
図9Bは、耐震評価システム1の動作の一例を示す。
【0092】
図9AのステップS201~ステップS210までは、上述の実施形態に係る耐震評価システム1の
図6AのステップS101~ステップS110と同様であるため説明を省略する。
【0093】
図9BのステップS211において、解析モデル出力部117は、予め作成された複数の解析モデルのそれぞれについて、複数の入力地震波を作用させた場合の管路30の耐震評価結果を示すパターン情報を取得する。
【0094】
解析モデル出力部117が取得するパターン情報の一例を
図8に示す。パターン情報は予め作成され、記憶部12又は外部装置に格納されていてもよい。解析モデル出力部117は、複数の外部装置から情報を取得して統合し、
図8に示すパターン情報を作成してもよい。パターン情報は、耐震評価装置10による過去の耐震評価結果に基づいて作成されてもよい。解析モデル出力部117は、取得したパターン情報を耐震評価部118に出力する。
【0095】
ステップS212において、耐震評価部118は、管路情報と、差込長情報と、地盤情報と、地震波情報とに基づいて、パターン情報が示す耐震評価結果を選択することで耐震性を評価する。
【0096】
耐震評価部118は、解析モデル出力部117から出力されたパターン情報が示す複数のパターンのうち、管路情報取得部111が取得した管路情報、差込長情報取得部112が取得した差込長情報、地盤情報取得部115が取得した地盤情報、及び地震波情報取得部116が取得した地震波情報に対応するパターンを選択する。このとき、管路30に複数の継手部31が含まれる場合、耐震評価部118は、標準差込である継手部31の数と短差込である継手部31の数とを比較し、数が多い方の継手部31の差込長に対応するパターンを選択してもよい。このようにして耐震評価部118は管路30の耐震性を評価する。耐震評価部118は、選択したパターンが示す耐震評価結果を出力部15に出力する。
【0097】
図9BのステップS213は、上述の実施形態に係る耐震評価システム1の
図6BのステップS113と同様であるため説明を省略する。
【0098】
上述の通り、本変形例に係る耐震評価装置10において、解析モデル出力部117は、予め作成された複数の解析モデルのそれぞれについて、複数の入力地震波を作用させた場
合の管路30の耐震評価結果を示すパターン情報を取得する。耐震評価部118は、管路情報と、差込長情報と、地盤情報と、地震波情報とに基づいて、パターン情報が示す耐震評価結果を選択することで耐震性を評価する。
【0099】
本変形例によれば、解析モデル出力部117が解析モデルを作成する負荷が軽減される。また、耐震評価部118は、パターン情報が示す複数のパターンから、対応する耐震評価結果を選択することができる。よって、耐震評価部118の計算の負荷を減じることができる。パターン情報が複数のパターンを含むことで、対象とする管路30の現状に即した耐震評価結果を選択することができる。よって、継手部31における管路30の差込状態を考慮して、より精度よく耐震性の評価を行うことができる。
【0100】
(変形例3)
本発明の変形例として、計測装置20に代えて、又は計測装置20に加えて、レーザスキャナ又は画像を用いて管路30の差込長が計測されてもよい。レーザスキャナ又は画像を用いた手法の例は以下の参考文献において記載されているため、説明を省略する。
[参考文献7]
戸田健太郎、外3名、「地上型レーザスキャナを用い3次元環境計測における樹高の推定」、日緑工誌、35(1)、pp.69-74、2009年
【0101】
(変形例4)
本発明の変形例として、計測装置20は、管路30及び継手部31の内部の腐食状況又は線形を示す情報をさらに取得してもよい。耐震評価装置10が、計測装置20から当該情報を取得し、解析モデル出力部117が当該情報を解析モデルの作成に反映できてもよい。これにより、管路30の現状に即した状態で、管路30の耐震性の評価を精度よく行うことができる。また、計測装置20の撮影部26が撮影した画像が外部へ出力され、管路30の内部の点検に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 耐震評価システム
10 耐震評価装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 出力部
20 計測装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 変位計測部
25 センサ部
26 撮影部
27 タイヤ部
28 照明部
29 レーザー照射部
30,30-1,30-2 管路
31,311,312,313 継手部
40 ネットワーク
111 管路情報取得部
112 差込長情報取得部
113 差込長判断部
114 継手部情報取得部
115 地盤情報取得部
116 地震波情報取得部
117 解析モデル出力部
118 耐震評価部
211,212 段差
241 車輪
291 レーザー光